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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】関節機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B25J17/02 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022088850
(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公開番号】P2023176524
(43)【公開日】2023-12-13
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】西井 一敏
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113400291(CN,A)
【文献】特許第6545768(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1関節部と、
該第1関節部に対し、連結部材介して、該連結部材の軸線周りに相対回転可能なように連結された第2関節部と、
一端側が夫々直線状に並んでおり前記第1関節部から前記第2関節部に向けて延びており、他端側が前記第2関節部に円周状に夫々取付けられると共に、引張される複数のワイヤーと、
前記第1関節部と前記第2関節部との間に設けられ、前記ワイヤーが経由することで、前記直線状に並んだワイヤーの一端側を相互にオフセットさせるオフセット部材と、
を備え
前記オフセット部材は、
前記直線状に並んだワイヤーの一端側の端を、相互に離すように円周状にオフセットさせ、
前記直線状に並んだワイヤーの一端側を、前記ワイヤーの他端側を円周状に固定した際の該円と同芯円状にオフセットさせる、
関節機構。
【請求項2】
請求項記載の関節機構であって、
前記第1関節部はロボットの肘関節部であり、第2関節部はロボットの手首関節部である、
関節機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットなどの関節機構に関する。
【背景技術】
【0002】
第1関節部と、第1関節部に対し、連結部材介して、連結部材の軸線周りに相対回転可能なように連結された第2関節部と、一端側が夫々直線状に並んでおり第1関節部から第2関節部に向けて延びており、他端側が第2関節部に円周状に夫々固定されると共に、引張される複数のワイヤーと、を備える関節機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6545768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記関節機構においては、第1関節部に対し第2関節部が一定角度以上で相対回転すると、ワイヤー同士が干渉する虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、第1関節部に対し第2関節部が一定角度以上で相対回転しても、ワイヤー同士の干渉を回避できる関節機構を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
第1関節部と、
該第1関節部に対し、連結部材介して、該連結部材の軸線周りに相対回転可能なように連結された第2関節部と、
一端側が夫々直線状に並んでおり前記第1関節部から前記第2関節部に向けて延びており、他端側が前記第2関節部に円周状に夫々取付けられると共に、引張される複数のワイヤーと、
前記第1関節部と前記第2関節部との間に設けられ、前記ワイヤーが経由することで、前記直線状に並んだワイヤーの一端側を相互にオフセットさせるオフセット部材と、
を備える関節機構
である。
この一態様において、
前記オフセット部材は、前記直線状に並んだワイヤーの一端側を、円周状にオフセットさせてもよい。
この一態様において、
前記オフセット部材は、前記直線状に並んだワイヤーの一端側を、前記ワイヤーの他端側を円周状に固定した際の該円と同芯円状にオフセットさせてもよい。
この一態様において、
前記第1関節部はロボットの肘関節部であり、第2関節部はロボットの手首関節部であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1関節部に対し第2関節部が一定角度以上で相対回転しても、ワイヤー同士の干渉を回避できる関節機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る関節機構の概略的な構成を示す斜視図である。
図2】ワイヤーの干渉を示す図である。
図3】肘関節部側から手首関節部側へワイヤーを見た上面視図である。
図4】オフセット部材により4本のワイヤーがオフセットした状態を示す図である。
図5】本実施形態に係るワイヤーの干渉のシミュレーション結果を示す図である。
図6】本実施形態に係るワイヤーの干渉のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る関節機構は、例えば、ロボットアームなどに設けられる。図1は、本実施形態に係る関節機構の概略的な構成を示す斜視図である。
【0010】
本実施形態に係る関節機構1は、例えば、肘関節部2と、肘関節部2に対し、連結部材(不図示)を介して、連結部材の軸線周りに相対回転可能なように連結された手首関節部3と、肘関節部2から手首関節部3に向けて延びると共に引張される複数のワイヤー4と、を備えている。
【0011】
肘関節部2は、第1関節部の一具体例である。手首関節部3は第2関節部の一具体例である。連結部材は、例えば、リンクやフレームなどで構成される。手首関節部3は、肘関節部2に対して、連結部材の軸線周り、すなわち、ヨー軸周りに相対回転可能なように構成されている。
【0012】
肘関節部2から手首関節部3まで、例えば、4本のワイヤー4が設けられている。なお、本実施形態においては、4本のワイヤー4が設けられているが、これに限定されず、任意の本数のワイヤー4が設けられていてもよい。
【0013】
肘関節部2にプーリー21が設けられている。各ワイヤー4の一端側は、プーリー21に巻き付けられている。したがって、各ワイヤー4の一端側は、夫々直線状に横一列に所定間隔を空けて並んでおり肘関節部2のプーリー21から手首関節部3に向けて延びている。一方で、各ワイヤー4の他端側は、手首関節部3の端部に円周状に夫々取付けられている。各ワイヤー4の一端側が引張されることで、例えば、手首関節部3はロール軸周りあるいはピッチ軸周りに回転駆動するように構成されている。
【0014】
ここで、従来、図2の(a)に示す如く、4本のワイヤー4の配置において、手首側を肘側に対してヨー軸周りに大きく相対回転させた場合、ワイヤー4同士が干渉する虞がある。このため、ヨー軸周りの回転範囲は、図2(b)に示す-90degから図1(c)に示す+90degまでの180degの範囲に制限される。
【0015】
しかし、実際の人における、手首関節の肘関節に対するヨー軸周りの回転範囲は、270deg程度であり上記よりも広く、より広いヨー軸周りの回転範囲を実現したい。
【0016】
これに対し、本実施形態に係る関節機構1は、図1に示す如く、肘関節部2と手首関節部3との間に設けられ、ワイヤー4が経由することで、直線状に並んだワイヤー4の一端側を相互にオフセットさせるオフセット部材5を更に備えている。
【0017】
肘関節部2と手首関節部3との間で、オフセット部材5は、肘関節部2に対し手首関節部3が一定角度以上で相対回転しても、ワイヤー4同士の干渉を回避するようにワイヤー4をオフセットさせる。したがって、肘関節部2に対し手首関節部3が一定角度以上で相対回転しても、ワイヤー4同士の干渉を回避できる。
【0018】
オフセット部材5には、略円柱状の部材であり、4本のワイヤー4に対応させて、円周状に4つの貫通孔51が夫々形成されている。貫通孔51は、ヨー軸線方向に延びている。 肘関節部2のプーリー21から延びる各ワイヤー4は、オフセット部材5の貫通孔51を通過することで、円周状にオフセットする。円周状にオフセットしたワイヤー4は、その状態で延び、手首関節部3に円周状に取り付けられている。
【0019】
続いて、上述したワイヤー4のオフセット方法について詳細に説明する。図3は、肘関節部側から手首関節部側へワイヤーを見た上面視図である。
【0020】
まず、分かり易いように、2本のワイヤーL1、L2のオフセットを想定する。図3(a)に示す如く、手首関節部3を、肘関節部2に対して、ヨー軸周りに90deg回転させた場合、ワイヤーL1、L2の太さにより、ワイヤーL1の動作領域X1とワイヤーL2の動作領域X2とは重複する領域が生じ、相互に干渉する。
【0021】
一方で、図3(b)に示す如く、ワイヤーL1、L2の肘関節部側の端を相互に離すようにオフセットさせる。この場合、ワイヤーL1の動作領域X1とワイヤーL2の動作領域X2とは重複する領域が生じず、ワイヤーL1とワイヤーL2とは相互に干渉しない。
【0022】
続いて、4本のワイヤーL1、L2、L3、L4のオフセットを想定する。図3(c)に示す如く、ワイヤーL1、L2、L3、L4の肘関節部側の端を相互に離すように円周状にオフセットさせる。この場合、ワイヤーL1の動作領域X1と、ワイヤーL2の動作領域X2と、ワイヤーL3の動作領域X3と、ワイヤーL4の動作領域X4と、は重複する領域が生じず、ワイヤーL1、L2、L3、L4は相互に干渉しない。
【0023】
図4は、オフセット部材により4本のワイヤーがオフセットした状態を示す図である。 4本のワイヤーL1、L2、L3、L4は、直線状に並んだ状態で肘関節部2のプーリー21から手首関節部3に向けて夫々延びている。
【0024】
手首関節部3と肘関節部2との間に設けられたオフセット部材5には、上述の如く、各ワイヤーL1、L2、L3、L4に対応させて、円周状に4つの貫通孔が形成されている。したがって、肘関節部2のプーリー21から延びるワイヤーL1、L2、L3、L4が、この貫通孔を通ることで、ワイヤーL1、L2、L3、L4は、円周状にオフセットし、円周状にオフセットした状態で手首関節部3まで延び、他端側が手首関節部3に円周状に夫々取り付けられる。
【0025】
なお、オフセット部材5は、直線状に並んだワイヤーL1、L2、L3、L4の一端側を、ワイヤーL1、L2、L3、L4の他端側を円周状に手首関節部3に固定した際の円と同芯円状にオフセットさせるのが好ましい。これにより、肘関節部2に対し手首関節部3が一定角度以上で相対回転しても、ワイヤーL1、L2、L3、L4同士の干渉を回避できる。
【0026】
オフセット部材5は、例えば、リンクなどに固定されている。このため、手首関節部3を、肘関節部2に対して、ヨー軸周りに相対回転させた場合、図4に示す如く、ワイヤーL1、L2、L3、L4の、肘関節部2のプーリー21からオフセット部材5までの部分Yは、動作しないため、相互に干渉することはない。
【0027】
一方で、ワイヤーL1、L2、L3、L4の、オフセット部材5から手首関節部3までの部分は、動作領域の範囲で動作する。しかし、上述の如く、オフセット部材5により円周状にオフセットしているため、図4に示す如く、ワイヤーL1の動作領域X1と、ワイヤーL2の動作領域X2と、ワイヤーL3の動作領域X3と、ワイヤーL4の動作領域X4と、は重複せず、ワイヤーL1、L2、L3、L4は相互に干渉しない。
【0028】
図5及び図6は本実施形態に係るワイヤーの干渉のシミュレーション結果を示す図である。図5及び図6において、矢印の左側はワイヤーL1、L2、L3、L4の初期状態を示す図であり、矢印の右側はワイヤーL1、L2、L3、L4の動作後の状態を示す図である。図5は、各ワイヤーL1、L2、L3、L4を反時計方向へ回転させた図であり、図6は、各ワイヤーL1、L2、L3、L4を時計方向へ回転させた図である。
【0029】
図5に示す如く、初期状態から、手首関節部3を、肘関節部2に対して、ヨー軸周りに相対回転させ、各ワイヤーL1、L2、L3、L4を反時計回りに-135degだけ回転させても、ワイヤーL1、L2、L3、L4同士の干渉を回避できていることが分かる。
【0030】
同様に、図6に示す如く、初期状態から、手首関節部3を、肘関節部2に対して、ヨー軸周りに相対回転させ、各ワイヤーL1、L2、L3、L4を時計回りに+180degだけ回転させても、ワイヤーL1、L2、L3、L4同士の干渉を回避できていることが分かる。このように、本実施形態に係るオフセット部材5により、ワイヤーL1、L2、L3、L4を円周状にフセットさせることで、手首関節部3を、肘関節部2に対して、ヨー軸周りに、-135deg~+180deg(角度範囲315deg)の広範囲で回転させても、ワイヤーL1、L2、L3、L4同士の干渉を回避できる。
【0031】
以上、本実施形態に係る関節機構1は、肘関節部2と手首関節部3との間に設けられ、ワイヤー4が経由することで、直線状に並んだワイヤー4の一端側を相互にオフセットさせるオフセット部材5を更に備えている。これにより、肘関節部2に対し手首関節部3が一定角度以上で相対回転しても、ワイヤー4同士の干渉を回避できる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 関節機構、2 肘関節部、3 手首関節部、4 ワイヤー、5 オフセット部材、21 プーリー、51 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6