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特許7609133車両、充電方法、プログラム、コンピュータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】車両、充電方法、プログラム、コンピュータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241224BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20241224BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20241224BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241224BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02H7/00 K
H02H7/00 L
H02J7/00 P
B60L53/30
B60L3/00 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022105770
(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公開番号】P2024005554
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保男
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-078185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0391606(US,A1)
【文献】特開2013-027095(JP,A)
【文献】特開2019-198157(JP,A)
【文献】特開2022-051102(JP,A)
【文献】特開2013-030351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 7/00
B60L 53/30
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部からの電力が入力される充電口と、蓄電装置と、充電器と、前記充電器を制御する制御装置とを備える車両であって、
前記充電器は、第1充電器および第2充電器を含み、
前記第1充電器は、前記充電口から当該第1充電器を介して前記蓄電装置までつながる第1充電路が接続された状態で、前記充電口からの電力を用いて前記蓄電装置を充電するように構成され、
前記第2充電器は、前記充電口から当該第2充電器を介して前記蓄電装置までつながる第2充電路が接続された状態で、前記充電口からの電力を用いて前記蓄電装置を充電するように構成され、
前記第2充電路には、当該第2充電路の接続/遮断を切り替える切替装置が設けられており、
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電前に前記切替装置によって前記第2充電路を遮断し、前記第2充電路が遮断され、かつ、前記第1充電路が接続された状態で前記第1充電器に対するプリチャージを完了させた後、前記切替装置によって前記第2充電路を接続する、車両。
【請求項2】
前記第1充電器は、前記プリチャージによって電気が蓄えられるコンデンサを含み、
前記制御装置は、前記第1充電器に対するプリチャージ中に、前記第1充電器に流れる電流が第1基準値よりも小さく、かつ、前記コンデンサの電圧が第2基準値よりも高くなったときに、前記第1充電器に対するプリチャージが完了したと判断する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、所定の条件が成立する場合には、前記第1充電器に対するプリチャージが完了すると、前記切替装置によって前記第2充電路を接続し、前記所定の条件が成立しない場合には、前記第1充電器に対するプリチャージが完了しても、前記切替装置によって前記第2充電路を接続しないように構成され、
前記所定の条件は、前記充電口に接続された車両外部の給電設備の定格出力電力が所定値を超えることを含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
当該車両は、車両外部へ電力を出力する給電口をさらに備え、
前記第2充電器は、前記蓄電装置から当該第2充電器を介して前記給電口までつながる第2給電路が接続された状態で、前記蓄電装置からの電力を用いて前記給電口に給電するように構成され、
前記切替装置は、前記第2充電路と前記第2給電路とのいずれか一方を接続し、他方を遮断するC接点リレーを含む、請求項1または2に記載の車両。
【請求項5】
前記第1充電器は、前記蓄電装置から当該第1充電器を介して前記給電口までつながる第1給電路が接続された状態で、前記蓄電装置からの電力を用いて前記給電口に給電するように構成され、
前記第1充電路には、前記第1充電路と前記第1給電路とのいずれか一方を接続し、他方を遮断するC接点リレーが設けられている、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、所定の条件が成立する場合には、前記第1充電器に対するプリチャージが完了すると、前記切替装置によって前記第2充電路を接続し、前記所定の条件が成立しない場合には、前記第1充電器に対するプリチャージが完了しても、前記切替装置によって前記第2充電路を接続しないように構成され、
前記所定の条件は、前記第2充電器が使用可能であることを含む、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
車両の充電口に入力される電力を用いて、前記車両に搭載された蓄電装置を充電する方法であって、
前記充電口から第1充電器を介して前記蓄電装置までつながる第1充電路を接続し、前記充電口から第2充電器を介して前記蓄電装置までつながる第2充電路を遮断することと、
前記第2充電路が遮断され、かつ、前記第1充電路が接続された状態で前記第1充電器に対するプリチャージを実行することと、
前記第1充電器に対するプリチャージが完了したか否かを判断することと、
前記第1充電器に対するプリチャージが完了したと判断された場合に、前記第1充電路および前記第2充電路の両方を接続することと、
を含む、充電方法。
【請求項8】
請求項7に記載の充電方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記憶する記憶装置と、前記プログラムを実行するプロセッサとを備える、コンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両、充電方法、プログラム、およびコンピュータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-017917号公報(特許文献1)には、車載バッテリを充電するための充電器と、充電器を制御する制御装置とを備える車載用電源装置が開示されている。制御装置は、充電開始前に充電器に対するプリチャージを実行する。このプリチャージによって、充電器に含まれる平滑コンデンサの電圧が上昇する。これにより、充電開始時の突入電流が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-017917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにプリチャージを行うことで、充電開始時の突入電流を抑制することができる。しかしながら、車両のインレットから充電器を経由して蓄電装置(車載バッテリ)に供給される充電電力が大きくなると、プリチャージ時の突入電流が大きくなるため、上記特許文献1に記載される技術によって突入電流を十分に抑制することが難しくなる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両のインレットから充電器を経由して蓄電装置へ供給される充電電力が大きい場合でも、プリチャージ時の突入電流を十分に抑制しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係る形態に従うと、以下に示す車両が提供される。
(第1項)当該車両は、車両外部からの電力が入力される充電口と、蓄電装置と、充電器と、充電器を制御する制御装置とを備える。充電器は、第1充電器および第2充電器を含む。第1充電器は、充電口から当該第1充電器を介して蓄電装置までつながる第1充電路が接続された状態で、充電口からの電力を用いて蓄電装置を充電するように構成される。第2充電器は、充電口から当該第2充電器を介して蓄電装置までつながる第2充電路が接続された状態で、充電口からの電力を用いて蓄電装置を充電するように構成される。第2充電路には、当該第2充電路の接続/遮断を切り替える切替装置が設けられている。制御装置は、蓄電装置の充電前に切替装置によって第2充電路を遮断し、第2充電路が遮断され、かつ、第1充電路が接続された状態で第1充電器に対するプリチャージを完了させた後、切替装置によって第2充電路を接続する。
【0007】
上記車両は複数の充電器を備える。例えば、車両が備える充電器の数が2つである形態、すなわち車両が上記2つの充電器(第1充電器および第2充電器)のみを備える形態では、第1充電路に流れる電力(以下、「第1充電電力」とも称する)と第2充電路に流れる電力(以下、「第2充電電力」とも称する)との合計が、車両のインレットから充電器を経由して蓄電装置へ供給される充電電力(以下、「総充電電力」とも称する)に相当する。各充電器に対するプリチャージが完了した後、総充電電力によって蓄電装置が充電される。第1充電電力および第2充電電力の各々は、総充電電力よりも小さくなる。
【0008】
第1充電器と第2充電器との両方に対して同時にプリチャージを実行すると、総充電電力に対応する突入電流がプリチャージ時に生じるため、プリチャージ時の突入電流が大きくなる。この点、上記構成では、複数の充電器を1つずつプリチャージする。具体的には、第2充電路が遮断され、かつ、第1充電路が接続された状態で、制御装置が、第1充電器に対するプリチャージを完了させた後、第2充電路を接続する。こうした制御によれば、第1充電器に対するプリチャージ時には、総充電電力よりも小さい第1充電電力に対応する突入電流が生じるようになるため、プリチャージ時の突入電流を抑制することができる。このように、上記構成によれば、車両のインレットから充電器を経由して蓄電装置へ供給される充電電力が大きい場合でも、プリチャージ時の突入電流を十分に抑制しやすくなる。
【0009】
なお、車両が備える充電器の数は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。上記車両は、第1充電器および第2充電器に加えて、第3充電器を備えてもよい。
【0010】
車両は、電力を動力源の全てまたは一部として利用する電動車両(xEV)であってもよい。xEVには、BEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)などが含まれる。
【0011】
上記第1項に記載の車両は、以下に示す第2項~第6項のいずれか1項に記載の構成を有し得る。
【0012】
(第2項)第1項に記載の車両が以下の特徴をさらに有する。第1充電器は、プリチャージによって電気が蓄えられるコンデンサを含む。制御装置は、第1充電器に対するプリチャージ中に、第1充電器に流れる電流が第1基準値よりも小さく、かつ、コンデンサの電圧が第2基準値よりも高くなったときに、第1充電器に対するプリチャージが完了したと判断する。
【0013】
上記構成によれば、プリチャージによって第1充電器のコンデンサに電気が蓄えられ、コンデンサの電圧が上昇する。また、コンデンサの電圧の上昇に伴い、第1充電器に流入する突入電流は小さくなる。このため、上記制御装置は、第1充電器に流れる電流とコンデンサの電圧とに基づいて、第1充電器に対するプリチャージが完了したか否かを適切に判断することができる。
【0014】
(第3項)第1項または第2項に記載の車両が以下の特徴をさらに有する。制御装置は、所定の条件が成立する場合には、第1充電器に対するプリチャージが完了すると、切替装置によって第2充電路を接続する。制御装置は、上記所定の条件が成立しない場合には、第1充電器に対するプリチャージが完了しても、切替装置によって第2充電路を接続しない。上記所定の条件は、充電口に接続された車両外部の給電設備の定格出力電力が所定値を超えることを含む。
【0015】
充電口に接続された車両外部の給電設備の定格出力電力(ひいては、給電設備から車両のインレットに入力される電力)が十分小さければ、第1充電器のみで蓄電装置を充電しても、過電流にはならないと考えられる。そこで、上記構成では、給電設備の定格出力電力が所定値を超えることを含む所定の条件が成立する場合には、第1充電器に対するプリチャージが完了した後に第2充電路を接続するが、上記所定の条件が成立しない場合には、第2充電路を接続しない。第2充電器を使用する必要がない場合には第2充電路を接続しないことで、早期に充電を開始することが可能になる。
【0016】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の車両が以下の特徴をさらに有する。当該車両は、車両外部へ電力を出力する給電口をさらに備える。第2充電器は、蓄電装置から当該第2充電器を介して給電口までつながる第2給電路が接続された状態で、蓄電装置からの電力を用いて給電口に給電するように構成される。切替装置は、第2充電路と第2給電路とのいずれか一方を接続し、他方を遮断するC接点リレーを含む。
【0017】
上記構成によれば、充電/給電を切り替えるC接点リレーによって、第2充電路の接続/遮断を切り替えることができる。このため、回路構成を簡素化しやすくなる。
【0018】
(第5項)第4項に記載の車両が以下の特徴をさらに有する。第1充電器は、蓄電装置から当該第1充電器を介して給電口までつながる第1給電路が接続された状態で、蓄電装置からの電力を用いて給電口に給電するように構成される。第1充電路には、第1充電路と第1給電路とのいずれか一方を接続し、他方を遮断するC接点リレーが設けられている。
【0019】
上記構成によれば、第1充電器と第2充電器とのいずれか一方だけでも、充電および給電の両方を行うことが可能になる。このため、第1充電器と第2充電器とのいずれか一方の充電器に異常が生じた場合でも、他方の充電器によって充電および給電を行うことが可能になる。また、車両購入時に、第1充電器を標準装備、第2充電器をオプションにすることも可能になる。
【0020】
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載の車両が以下の特徴をさらに有する。制御装置は、所定の条件が成立する場合には、第1充電器に対するプリチャージが完了すると、切替装置によって第2充電路を接続する。制御装置は、上記所定の条件が成立しない場合には、第1充電器に対するプリチャージが完了しても、切替装置によって第2充電路を接続しない。上記所定の条件は、第2充電器が使用可能であることを含む。
【0021】
上記構成では、第2充電器が使用可能であることを含む所定の条件が成立する場合には、第1充電器に対するプリチャージが完了した後に第2充電路を接続するが、上記所定の条件が成立しない場合には、第2充電路を接続しない。第2充電器を使用できない場合には第2充電路を接続しないことで、早期に充電を開始することが可能になる。第2充電器が使用できないことには、第2充電器に異常が生じたことと、車両が第2充電器を備えないこととの少なくとも一方が含まれてもよい。
【0022】
本開示の第2の観点に係る形態に従うと、以下に示す充電方法が提供される。
(第7項)当該充電方法は、車両の充電口に入力される電力を用いて、車両に搭載された蓄電装置を充電する方法であって、充電口から第1充電器を介して蓄電装置までつながる第1充電路を接続し、充電口から第2充電器を介して蓄電装置までつながる第2充電路を遮断することと、第2充電路が遮断され、かつ、第1充電路が接続された状態で第1充電器に対するプリチャージを実行することと、第1充電器に対するプリチャージが完了したか否かを判断することと、第1充電器に対するプリチャージが完了したと判断された場合に、第1充電路および第2充電路の両方を接続することとを含む。
【0023】
上記充電方法でも、前述した車両と同様、車両のインレットから充電器を経由して蓄電装置へ供給される充電電力が大きい場合でも、プリチャージ時の突入電流を十分に抑制しやすくする。
【0024】
他の観点に係る形態に従うと、第7項に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。ある形態においては、上記プログラムを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶されたプログラムを実行するプロセッサとを備えるコンピュータ装置が提供される。他の形態においては、上記プログラムを配信するコンピュータ装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、車両のインレットから充電器を経由して蓄電装置へ供給される充電電力が大きい場合でも、プリチャージ時の突入電流を十分に抑制しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の実施の形態に係る車両の構成を示す図である。
図2図1に示した車両が備える第1充放電器の回路構成を示す図である。
図3図1に示した車両が備える第2充放電器の回路構成を示す図である。
図4】本開示の実施の形態に係る充電方法を示すフローチャートである。
図5図1に示した車両において、第2充電路が遮断され、かつ、第1充電路が接続された状態を示す図である。
図6図1に示した車両において第1充電路および第2充電路の両方が接続された状態を示す図である。
図7図4に示したプリチャージ制御において第2充電器使用条件が成立する場合の第1および第2充放電器の状態推移を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
図1は、この実施の形態に係る車両の構成を示す図である。図1を参照して、この実施の形態に係る車両100は、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)900を用いて充電可能なバッテリ11を備える。車両100は、バッテリ11に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。この実施の形態に係る車両100は、PHEV(プラグインハイブリッド車)である。ただしこれに限られず、車両100はPHEV以外の電動車両(xEV)であってもよい。バッテリ11としては、公知の車両用蓄電装置(例えば、液式二次電池、全固体二次電池、または組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。バッテリ11は、本開示に係る「蓄電装置」の一例に相当する。
【0029】
車両100は、EVSE900のコネクタ920aが着脱可能なインレット71をさらに備える。インレット71は、本開示に係る「充電口」の一例に相当する。インレット71には、車両外部からの電力が入力される。EVSE900の本体につながる充電ケーブル920のコネクタ920a(プラグ)が駐車状態の車両100のインレット71に接続されることで、車両100はEVSE900と電気的に接続された状態(以下、「プラグイン状態」とも称する)になる。一方、例えば車両100の走行中においては、車両100がEVSE900と電気的に接続されていない状態(以下、「プラグアウト状態」とも称する)になる。なお、図1には、EVSE900の給電方式に対応するインレット71のみを示しているが、車両100は、複数種の給電方式(例えば、AC方式およびDC方式)に対応できるように複数のインレットを備えてもよい。
【0030】
EVSE900は、外部電源(例えば、図示しない電力系統)から電力の供給を受けて給電を行うように構成される。EVSE900の本体は、電源回路911と、電源回路911を制御する制御装置912とを内蔵する。電源回路911は、外部電源と電気的に接続されている。電源回路911は、外部電源から供給される電力を、車両100への給電に適した電力に変換して、変換後の電力を充電ケーブル920に出力する。EVSE900は、車両100へ供給するための電力をコネクタ920a(充電ケーブル920の先端部)から出力する。
【0031】
車両100は、アウトレット72をさらに備える。アウトレット72は、本開示に係る「給電口」の一例に相当する。アウトレット72は、車両外部へ電力を出力する。アウトレット72は、所定の電圧(例えば、100Vまたは200V)の交流電力を出力するコンセントであってもよい。アウトレット72は、車両100のトランクルームTrに配置されてもよい。アウトレット72は、例えばトランクルームTrの壁面または床面に設けられる。トランクリッド73はユーザによって開閉可能に構成される。なお、アウトレット72の位置は適宜変更可能であり、例えば車室内にアウトレット72が配置されてもよい。
【0032】
車両100は、BMS(Battery Management System)11aと、SMR(System Main Relay)12と、PCU(Power Control Unit)20と、MG(Motor Generator)21,22と、プラネタリギヤ23と、ドリブンギヤ24と、デファレンシャルギヤ25と、エンジン30と、ドライブシャフト41と、駆動輪42と、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と表記する)50と、充放電器61,62と、起動スイッチ80と、HMI(Human Machine Interface)81と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)82と、通信装置90とをさらに備える。
【0033】
ECU50は、例えば、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、および記憶装置を含むコンピュータである。記憶装置は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(例えば、マップ、数式、および各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、ECU50における各種制御(例えば、後述する図4に示す制御)が実行される。ECU50は、本開示に係る「制御装置」の一例に相当する。
【0034】
ECU50は、通信装置90を通じて車両100の外部の装置と通信を行なう。通信装置90は、ECU50がEVSE900の制御装置912と通信するための通信I/F(インターフェース)を含む。
【0035】
プラネタリギヤ23は、動力分割機構として機能する。プラネタリギヤ23は、例えばシングルピニオン型のプラネタリギヤであり、ピニオンギヤとキャリヤ(入力要素)とサンギヤ(反力要素)とリングギヤ(出力要素)とを有する。エンジン30の出力軸、MG21のロータ軸は、それぞれプラネタリギヤ23のキャリヤ、サンギヤに連結されている。プラネタリギヤ23は、エンジン30からのトルクをサンギヤとリングギヤとに分割して出力する。
【0036】
MG22、プラネタリギヤ23、ドリブンギヤ24、およびデファレンシャルギヤ25は、上記リングギヤに出力される動力とMG22のロータ軸に出力される動力とが合わさって駆動輪42に伝達されるように構成される。より具体的には、ドリブンギヤ24が、プラネタリギヤ23(リングギヤ)からの動力とMG22からの動力とを合成するように作用する。このように合成された駆動トルクは、デファレンシャルギヤ25に伝達され、さらに、デファレンシャルギヤ25から左右に延びたドライブシャフト41を介して駆動輪42に伝達される。
【0037】
エンジン30としては任意の内燃機関を採用可能であるが、この実施の形態では、複数の気筒を含む火花点火式内燃機関を、エンジン30として採用する。エンジン30は、各気筒内で燃料(例えば、ガソリン)を燃焼させることによって動力を生成し、生成された動力によって全ての気筒に共通のクランクシャフト(図示せず)を回転させる。なお、エンジン30は、ガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであってもよいし、水素エンジンであってもよい。
【0038】
この実施の形態では、MG21,22の各々として交流モータ(例えば、永久磁石式同期モータまたは誘導モータ)が用いられる。MG21,22は、車両100の走行用モータとして機能する。MG21,22は、PCU20によって駆動され、車両100の駆動輪42を回転させる。また、MG21,22は、状況に応じて発電を行い、発電した電力をバッテリ11へ出力する。MG21は、エンジン30からの動力によって発電し得る。
【0039】
PCU20は、バッテリ11から供給される電力を用いてMG20を駆動する。PCU20は、MG21およびMG22の状態を別々に制御可能に構成され、例えば、MG21を発電状態にしつつ、MG22を力行状態にすることができる。PCU20は、例えばインバータとDC/DCコンバータとを含む。SMR12は、バッテリ11からPCU20までの電路の接続/遮断を切り替える。SMR12およびPCU20の各々は、ECU50によって制御される。SMR12は、車両100の走行時に閉状態(接続状態)にされる。また、バッテリ11と車両外部(インレット71またはアウトレット72)との間で電力のやり取りが行われるときも、SMR12は閉状態にされる。
【0040】
BMS11aは、バッテリ11の状態を監視する。詳しくは、BMS11aは、バッテリ11の状態(例えば、電圧、電流、および温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU50へ出力する。ECU50は、BMS11aの出力に基づいてバッテリ11の状態(例えば、温度、電流、電圧、およびSOC)を取得することができる。SOC(State Of Charge)は、蓄電残量を示し、例えば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0041】
充放電器61および充放電器62は、互いに並列に接続されている。充放電器61,62の各々は、インレット71およびアウトレット72の各々とバッテリ11との間に位置する。この実施の形態では、充放電器61、充放電器62が、それぞれ本開示に係る「第1充電器」、「第2充電器」の一例に相当する。
【0042】
充放電器61,62の各々は、ECU50によって制御され、充電器(充電回路)および放電器(放電回路)の両方として機能する。充放電器61,62の各々は、車両外部からインレット71に入力された電力を用いてバッテリ11を充電する。また、充放電器61,62の各々は、バッテリ11の電力をアウトレット72を通じて車両外部へ放電する。回路構成の詳細については後述するが、充放電器61,62の各々は、AC(交流)/DC(直流)変換を双方向に行う。
【0043】
プラグイン状態の車両100では、外部充電(すなわち、車両外部からの電力によるバッテリ11の充電)と外部給電(すなわち、バッテリ11の電力による車両外部への給電)とが可能になる。外部充電のための電力は、例えばEVSE900からインレット71に供給される。充放電器61,62の各々は、インレット71が受電した電力(例えば、交流電力)をバッテリ11の充電に適した電力(例えば、直流電力)に変換し、変換された電力をバッテリ11へ出力する。外部給電のための電力は、バッテリ11から充放電器61,62の各々に供給される。充放電器61,62の各々は、バッテリ11から供給される直流電力を外部給電に適した電力(例えば、交流電力)に変換し、変換された電力をアウトレット72へ出力する。
【0044】
ECU50を含む車両システム(車両100を制御するシステム)のオン(作動)/オフ(停止)は、ユーザが起動スイッチ80を操作することによって切り替わる。起動スイッチ80は、例えば車両100の車室内に設置される。一般に、車両の起動スイッチは「パワースイッチ」または「イグニッションスイッチ」などと称される。
【0045】
HMI81は、入力装置および表示装置を含む。HMI81は、タッチパネルディスプレイを含んでもよい。HMI81は、メータパネルおよび/またはヘッドアップディスプレイを含んでもよい。NAVI82は、例えばGPS(Global Positioning System)を利用して車両100の位置を検出し、地図上に車両100の位置をリアルタイムで表示する。また、NAVI82は、地図情報を参照して経路探索を行う。
【0046】
図2は、充放電器61の回路構成を示す図である。図2を参照して、充放電器61は、切替装置200を含む回路を備える。この回路は、切替装置200が配置された位置で分岐しており、この分岐点(切替装置200)を基準にして、インレット71側の回路(以下、「入力回路」と称する)と、アウトレット72側の回路(以下、「出力回路」と称する)と、バッテリ11側の回路(以下、「バッテリ回路」と称する)とに大別できる。切替装置200は、ECU50によって制御される一対のC接点リレーを含む。このC接点リレーは、入力回路と出力回路とのいずれか一方をバッテリ回路に接続し、他方をバッテリ回路から切り離すように構成される。
【0047】
充放電器61の入力回路は、ヒューズ回路211と、AC入力フィルタ212と、SPD(Surge Protective Device)213とを含む。SPD213は、AC入力フィルタ212に接続され、AC電源における雷サージ対策回路として機能する。SPD213は、例えばバリスタおよびアレスタを含む。入力回路からバッテリ回路に印加される電圧は、電圧センサSv11によって検出され、その検出結果はECU50へ出力される。
【0048】
充放電器61の出力回路は、AC出力フィルタ220を含む。バッテリ回路から出力回路(AC出力フィルタ220)に印加される電圧は、電圧センサSv12によって検出され、その検出結果はECU50へ出力される。
【0049】
充放電器61のバッテリ回路は、切替装置200からバッテリ11に向かって、ZCT(零相変流器)310と、フィルタ320と、プリチャージ回路330と、PFC(Power Factor Correction)回路340と、平滑コンデンサ350と、絶縁回路360と、AC/DC変換回路370と、平滑コンデンサ380とを、この順で含む。
【0050】
ZCT310は、上記入力回路からフィルタ320に入力される電力と、フィルタ320から上記出力回路へ出力される電力との各々について、地絡電流を検出し、その検出結果をECU50へ出力する。
【0051】
プリチャージ回路330は、制限抵抗331と、制限抵抗331に直列に接続されたヒューズ332と、制限抵抗331に並列に接続されたスイッチ333とを含む。スイッチ333は、制限抵抗331をバイパスする電路に配置されている。スイッチ333が開状態(遮断状態)である状態(以下、「制限抵抗ON状態」とも称する)では、制限抵抗331によってプリチャージ回路330の電気抵抗が高くなる。スイッチ333が閉状態(接続状態)である状態(以下、「制限抵抗OFF状態」とも称する)では、プリチャージ回路330の電気抵抗が制限抵抗ON状態の値よりも低くなる。
【0052】
PFC回路340は、双方向に電力変換を行うインバータを含む。PFC回路340は、双方向に電力波形を変換するように構成される。PFC回路340の切替装置200側の電流および電圧は、それぞれ電流センサIおよび電圧センサSv13によって検出され、その検出結果はECU50へ出力される。PFC回路340のバッテリ11側の電圧は電圧センサSv14によって検出され、その検出結果はECU50へ出力される。ECU50は、電圧センサSv11~Sv14および電流センサIによって電圧および電流を確認しながら、目標とする電力波形が得られるようにPFC回路340を制御する。
【0053】
PFC回路340と絶縁回路360との間には平滑コンデンサ350が配置されている。電圧センサSv14による検出値は、平滑コンデンサ350の端子間電圧に相当する。バッテリ11の外部充電開始時には、PFC回路340から絶縁回路360に入力される電力によって平滑コンデンサ350に電気が蓄えられる。絶縁回路360は、例えば絶縁トランスである。絶縁トランスは、1次コイルと2次コイルとの巻数比に応じた比率で変圧を行なう。
【0054】
AC/DC変換回路370は、双方向にAC/DC変換を行う。AC/DC変換回路370は、切替装置200側に交流電力を出力し、バッテリ11側に直流電力を出力する。AC/DC変換回路370とSMR12との間には平滑コンデンサ380が配置されている。
【0055】
上述した構成を有する充放電器61は、電線EL21を介して、PCU20(図1)とSMR12とをつなぐ電線EL20に電気的に接続されている。バッテリ11の外部充電中は、SMR12が閉状態にされ、AC/DC変換回路370から出力される直流電力が平滑コンデンサ380およびSMR12を経てバッテリ11に入力される。
【0056】
インレット71、アウトレット72は、それぞれ電線EL11,EL12を介して充放電器62と電気的に接続されている。また、充放電器62は、電線EL22を介して電線EL20に電気的に接続されている。
【0057】
図3は、充放電器62の回路構成を示す図である。図3を参照して、充放電器62は、前述した充放電器61と同様の構成を有する。充放電器62においては、切替装置400、ヒューズ回路411、AC入力フィルタ412、SPD413、AC出力フィルタ420、ZCT510、フィルタ520、プリチャージ回路530(制限抵抗531、ヒューズ532、スイッチ533)、PFC回路540、平滑コンデンサ550、絶縁回路560、AC/DC変換回路570、平滑コンデンサ580、電圧センサSv21~Sv24、電流センサIが、それぞれ充放電器61における切替装置200、ヒューズ回路211、AC入力フィルタ212、SPD213、AC出力フィルタ220、ZCT310、フィルタ320、プリチャージ回路330(制限抵抗331、ヒューズ332、スイッチ333)、PFC回路340、平滑コンデンサ350、絶縁回路360、AC/DC変換回路370、平滑コンデンサ380、電圧センサSv11~Sv14、電流センサIに対応する。
【0058】
図4は、この実施の形態に係るECU50によって実行されるプリチャージ制御を示すフローチャートである。なお、フローチャート中の「S」は、ステップを意味する。このフローチャートに示される処理は、車両100がプラグイン状態であることを含む所定の充電開始条件が成立すると、開始される。充電開始条件は、車両100がプラグアウト状態からプラグイン状態になったときに成立してもよいし、プラグイン状態の車両100においてタイマ充電の開始時刻(ECU50に設定された時刻)が到来したときに成立してもよい。また、プラグイン状態の車両100のECU50がHMI81またはEVSE900から充電指示を受け取ったときに、充電開始条件が成立してもよい。この実施の形態では、バッテリ11と車両外部(インレット71またはアウトレット72)との間で電力のやり取りが行われない期間において、平滑コンデンサ350,550の各々が放電される。このため、図4に示す一連の処理を開始するタイミングにおいては、平滑コンデンサ350,550の各々が空状態(蓄電されていない状態)になっている。
【0059】
図1図3とともに図4を参照して、S11では、ECU50が、第1充電路(後述する図5図6に示す第1充電路CL1)と第2充電路(後述する図6に示す第2充電路CL2)との各々を遮断する。第1充電路は、インレット71(充電口)から充放電器61(第1充電器)を介してバッテリ11(蓄電装置)までつながる電路である。この実施の形態に係る第1充電路には、当該第1充電路の接続/遮断を切り替える切替装置200が設けられている(図2参照)。第2充電路は、インレット71(充電口)から充放電器62(第2充電器)を介してバッテリ11(蓄電装置)までつながる電路である。この実施の形態に係る第2充電路には、当該第2充電路の接続/遮断を切り替える切替装置400が設けられている(図3参照)。
【0060】
具体的には、ECU50は、充放電器61において、出力回路(AC出力フィルタ220を含む)をバッテリ回路(PFC回路340を含む)に接続し、入力回路(AC入力フィルタ212を含む)を上記バッテリ回路から切り離すように、切替装置200(一対のC接点リレー)を制御する。また、ECU50は、充放電器62において、出力回路(AC出力フィルタ420を含む)をバッテリ回路(PFC回路540を含む)に接続し、入力回路(AC入力フィルタ412を含む)を上記バッテリ回路から切り離すように、切替装置400(一対のC接点リレー)を制御する。これにより、第1充電路は、充放電器61において入力回路と出力回路とに分かれる分岐点(切替装置200)で遮断され、かつ、第2充電路は、充放電器62において入力回路と出力回路とに分かれる分岐点(切替装置400)で遮断される。このように、ECU50は、バッテリ11の充電前に、切替装置200によって第1充電路を遮断するとともに、切替装置400によって第2充電路を遮断する。
【0061】
続くS12では、ECU50が、充放電器61を制限抵抗ON状態にする。具体的には、ECU50はスイッチ333(図2)を開状態にする。これにより、第1充電路の電気抵抗が制限抵抗331によって高められる。
【0062】
続くS13では、ECU50が、上記第1充電路を接続する。具体的には、ECU50は、充放電器61において、入力回路をバッテリ回路に接続し、出力回路をバッテリ回路から切り離すように、切替装置200(一対のC接点リレー)を制御する。これにより、車両100は、第2充電路が遮断され、かつ、第1充電路が接続された状態になる。
【0063】
図5は、車両100において、第2充電路が遮断され、かつ、第1充電路が接続された状態を示す図である。図5を参照して、充放電器61において、切替装置200(より特定的には、C接点リレー)は、第1充電路と第1給電路とのいずれか一方を接続し、他方を遮断するように構成される。第1給電路は、バッテリ11(蓄電装置)から充放電器61(第1充電器)を介してアウトレット72(給電口)までつながる電路である。
【0064】
また、充放電器62において、切替装置400(より特定的には、C接点リレー)は、第2充電路と第2給電路とのいずれか一方を接続し、他方を遮断するように構成される。第2給電路は、バッテリ11(蓄電装置)から充放電器62(第2充電器)を介してアウトレット72(給電口)までつながる電路である。
【0065】
図5に示す状態では、切替装置200が第1充電路CL1を接続している。また、切替装置400は第2給電路SL2を接続している。これにより、第2充電路および第1給電路の各々が遮断され、かつ、第1充電路CL1および第2給電路SL2の各々が接続されている。
【0066】
再び図1図3とともに図4を参照して、ECU50は、S13において、第1充電路CL1(図5)を接続した後、充放電器61(第1充電器)に対するプリチャージを開始する。具体的には、ECU50は、EVSE900(制御装置912)に、充放電器61に対応する給電電力(例えば、2.5kW~5kWの給電電力)を要求する。続けて、ECU50は、S14において、第1充電路CL1が接続された状態で充放電器61に対するプリチャージを実行しつつ、当該プリチャージが完了したか否かを判断する。具体的には、充放電器61に対するプリチャージによって平滑コンデンサ350に電気が蓄えられる。ECU50は、所定の第1プリチャージ完了条件が成立するか否かに基づいて、充放電器61に対するプリチャージが完了したか否かを判断する。この実施の形態では、充放電器61に対するプリチャージ中に、電流センサIで検出される電流値IAC_A(充放電器61に流れる電流)が所定の第1基準値(Th1)よりも小さいこと(第1電流要件)と、電圧センサSv14で検出される電圧値VH_A(平滑コンデンサ350の電圧)が所定の第2基準値(Th2)よりも高いこと(第1電圧要件)との両方を満たす場合に、第1プリチャージ完了条件が成立する。他方、いずれかの要件を満たさない場合には、第1プリチャージ完了条件は成立しない。こうした第1プリチャージ完了条件によれば、プリチャージが完了したか否かを的確に判断しやすくなる。
【0067】
なお、第1プリチャージ完了条件は、上記に限られず任意に設定できる。例えば、プリチャージ開始から所定時間以上経過したときに、第1プリチャージ完了条件が成立するようにしてもよい。
【0068】
第1プリチャージ完了条件が成立しない間は(S14にてNO)、ECU50は充放電器61に対するプリチャージを継続し、第1プリチャージ完了条件が成立すると(S14にてYES)、処理はS15に進む。S15では、ECU50が、充放電器61を制限抵抗OFF状態にする。具体的には、ECU50はスイッチ333(図2)を閉状態にする。これにより、第1充電路CL1の電気抵抗が低くなり、バッテリ11に十分な電力を供給しやすくなる。
【0069】
続くS16では、所定の第2充電器使用条件が成立するか否かを、ECU50が判断する。この実施の形態では、充放電器62(第2充電器)が使用可能であること(第1使用要件)と、EVSE900の定格出力電力が所定値を超えること(第2使用要件)との両方を満たす場合に、第2充電器使用条件が成立する。他方、いずれかの要件を満たさない場合には、第2充電器使用条件は成立しない。
【0070】
車両100において充放電器62が使用可能な状態であれば、ECU50は第1使用要件を満たすと判断する。他方、充放電器62に異常が生じている場合には、ECU50は第1使用要件を満たさないと判断する。なお、車両100は、仮に充放電器62を備えなかったとしても、充放電器61を備えていれば、外部充電および外部給電を行うことができる。こうした車種に関しては、充放電器61が標準装備で、充放電器62がオプション品かもしれない。オプション品を車両に搭載するか否かは、車両購入時にユーザが選択できる。ただし、充放電器62(オプション品)を備えない車両は、第1使用要件を満たさない。
【0071】
この実施の形態では、ECU50が、EVSE900の仕様に関する情報(定格出力電力を含む)を制御装置912から受信する。定格出力電力は、給電設備の給電性能を示す。EVSE900(インレット71に接続された車両外部の給電設備)は、公共の給電設備であってもよい。公共の給電設備には、様々な定格出力電力の給電設備がある。所定値を超える定格出力電力の給電設備がインレット71に接続された場合に、ECU50は第2使用要件を満たすと判断する。所定値は、充放電器61の充電性能に応じた値であってもよい。
【0072】
なお、第2充電器使用条件は、上記に限られず任意に設定できる。例えば、第1使用要件と第2使用要件とのいずれか一方を省略してもよい。また、インレット71に接続されるEVSE900は、非公共の給電設備(例えば、自宅または職場に設置された給電設備)であってもよい。
【0073】
第2充電器使用条件が成立する場合には(S16にてYES)、処理はS17に進む。S17では、ECU50が、充放電器62を制限抵抗ON状態にする。具体的には、ECU50はスイッチ533(図2)を開状態にする。これにより、第2充電路の電気抵抗が制限抵抗531によって高められる。
【0074】
続くS18では、ECU50が、第2充電路を接続する。具体的には、ECU50は、充放電器62において、入力回路をバッテリ回路に接続し、出力回路をバッテリ回路から切り離すように、切替装置400(一対のC接点リレー)を制御する。これにより、車両100は、第1充電路および第2充電路の両方が接続された状態になる。
【0075】
図6は、車両100において第1充電路および第2充電路の両方が接続された状態を示す図である。図6を参照して、充放電器61において、切替装置200(より特定的には、C接点リレー)は、第1充電路CL1を接続している。また、充放電器62において、切替装置400(より特定的には、C接点リレー)は、第2充電路CL2を接続している。図6に示す状態では、第1給電路および第2給電路の両方が遮断され、かつ、第1充電路CL1および第2充電路CL2の両方が接続されている。
【0076】
再び図1図3とともに図4を参照して、ECU50は、S18において、第2充電路CL2(図6)を接続した後、充放電器62(第2充電器)に対するプリチャージを開始する。具体的には、ECU50は、EVSE900(制御装置912)に、充放電器61,62の両方に対応する給電電力(例えば、5kW~10kWの給電電力)を要求する。続けて、ECU50は、S19において、第1充電路CL1および第2充電路CL2の両方が接続された状態で充放電器62に対するプリチャージを実行しつつ、当該プリチャージが完了したか否かを判断する。具体的には、充放電器62に対するプリチャージによって平滑コンデンサ550に電気が蓄えられる。ECU50は、所定の第2プリチャージ完了条件が成立するか否かに基づいて、充放電器62に対するプリチャージが完了したか否かを判断する。第2プリチャージ完了条件は、前述した第1プリチャージ完了条件に準ずる条件であってもよい。この実施の形態では、充放電器62に対するプリチャージ中に、電流センサIで検出される電流値IAC_B(充放電器62に流れる電流)が所定の第3基準値(Th3)よりも小さいこと(第2電流要件)と、電圧センサSv24で検出される電圧値VH_B(平滑コンデンサ550の電圧)が所定の第4基準値(Th4)よりも高いこと(第2電圧要件)との両方を満たす場合に、第2プリチャージ完了条件が成立する。他方、いずれかの要件を満たさない場合には、第2プリチャージ完了条件は成立しない。こうした第2プリチャージ完了条件によれば、プリチャージが完了したか否かを的確に判断しやすくなる。なお、第2プリチャージ完了条件は、上記に限られず任意に設定できる。
【0077】
第2プリチャージ完了条件が成立しない間は(S19にてNO)、ECU50は充放電器62に対するプリチャージを継続し、第2プリチャージ完了条件が成立すると(S19にてYES)、処理はS20に進む。S20では、ECU50が、充放電器62を制限抵抗OFF状態にする。具体的には、ECU50はスイッチ533(図2)を閉状態にする。これにより、第2充電路CL2の電気抵抗が低くなり、バッテリ11に十分な電力を供給しやすくなる。
【0078】
S20の処理後、ECU50は、S21において、プリチャージが完了したと判断し、プリチャージ完了後の充電制御に移行する。他方、第2充電器使用条件が成立しない場合には(S16にてNO)、S17~S20の処理が行われることなく、ECU50が、S21においてプリチャージ完了後の充電制御に移行する。S21の処理によってプリチャージ完了後の充電制御に移行されると、図4に示す一連の処理は終了する。
【0079】
第2充電器使用条件が成立する場合のプリチャージ完了後の充電制御では、第1充電路CL1および第2充電路CL2の両方が接続された状態で、車両100のインレット71から充放電器61,62を経由してバッテリ11に電力が供給される。詳しくは、第1充電路CL1に流れる電力(第1充電電力)と第2充電路CL2に流れる電力(第2充電電力)とを合わせた総充電電力(IAC)がバッテリ11に供給される。例えば、所定の終了条件が成立するまでバッテリ11の外部充電は継続される。そして、終了条件が成立すると、外部充電が停止される。例えば、バッテリ11が満充電になったときに終了条件が成立してもよい。充電中、ECU50は充放電器61,62を制御する。また、ECU50は、充放電器61,62を使用した充電中に、大電力で充電していることをユーザに報知するように報知装置(例えば、HMI81またはNAVI82)を制御してもよい。
【0080】
第2充電器使用条件が成立しない場合のプリチャージ完了後の充電制御では、第1充電路CL1が接続され、かつ、第2充電路CL2が遮断された状態で、車両100のインレット71から充放電器61を経由してバッテリ11に電力が供給される。詳しくは、第1充電路CL1に流れる電力(第1充電電力)が総充電電力(IAC)としてバッテリ11に供給される。そして、所定の終了条件が成立するまでバッテリ11の外部充電は継続される。充電中、ECU50は充放電器61を制御する。また、ECU50は、充放電器61のみを使用した充電中に、小電力で充電していることをユーザに報知するように報知装置(例えば、HMI81またはNAVI82)を制御してもよい。
【0081】
バッテリ11を充電していないときに所定の給電条件が成立すると、ECU50は、切替装置200,400によって第1給電路および第2給電路の両方を接続する。ECU50がHMI81から給電指示を受け取ったときに給電条件が成立してもよい。充放電器61は、第1給電路が接続された状態で、バッテリ11からの電力を用いてアウトレット72に給電する。充放電器62は、第2給電路が接続された状態で、バッテリ11からの電力を用いてアウトレット72に給電する。第1給電路および第2給電路の両方が接続されたときに、ECU50は、給電準備が完了したことをユーザに報知するように報知装置(例えば、HMI81またはNAVI82)を制御してもよい。ユーザは、トランクリッド73(図1)を開き、図示しない電力負荷(例えば、照明装置または調理器具のような電気機器)の電源コードのプラグをアウトレット72(コンセント)に差し込むことで、アウトレット72が出力する交流電力を電力負荷に供給できる。
【0082】
図7は、前述したプリチャージ制御(図4)において第2充電器使用条件が成立する場合の充放電器61,62の状態推移を示すタイムチャートである。図7において、線L11、L12、L13、L14、L15、L16、L17は、それぞれ電流値IAC_A(充放電器61に流れる電流)、電流値IAC_B(充放電器62に流れる電流)、電流値IAC(充放電器61,62に流れる総充電電力)、電圧値VH_A(平滑コンデンサ350の電圧)、電圧値VH_B(平滑コンデンサ550の電圧)、第1充電路CL1の状態(接続/遮断)、第2充電路CL2の状態(接続/遮断)を示す。なお、タイムチャート中の「t」は、タイミングを意味する。
【0083】
図7を参照して、t10で、図4に示したプリチャージ制御が開始されると、第1充電路CL1および第2充電路CL2の両方が遮断される(線L16,L17)。その後、t11で、第1充電路CL1(線L16)が接続され、充放電器61に対するプリチャージが開始される(図4のS13)。これにより、充放電器61に流れる電流(線L11)と、平滑コンデンサ350の電圧(線L14)と、総充電電力(線L13)とが上昇する。平滑コンデンサ350の電圧の上昇に伴い、充放電器61に流入する突入電流は小さくなる。その後、t12で充放電器61に対するプリチャージが完了すると、第2充電路CL2(線L17)が接続され、充放電器62に対するプリチャージが開始される(図4のS18)。これにより、充放電器62に流れる電流(線L12)と、平滑コンデンサ550の電圧(線L15)と、総充電電力(線L13)とが上昇する。平滑コンデンサ550の電圧の上昇に伴い、充放電器62に流入する突入電流は小さくなる。ECU50は、バッテリ11の充電前に切替装置400によって第2充電路CL2を遮断し、第2充電路CL2が遮断され、かつ、第1充電路CL1が接続された状態(図5参照)で充放電器61に対するプリチャージを完了させた後、切替装置400によって第2充電路CL2を接続する(図6参照)。
【0084】
以上説明したように、この実施の形態に係る充電方法は、図4に示した一連の処理を含む。S11~S13では、ECU50が、第1充電路CL1を接続し、第2充電路CL2を遮断する。S13~S14では、第2充電路CL2が遮断され、かつ、第1充電路CL1が接続された状態で、ECU50が充放電器61に対するプリチャージを実行する。S14では、ECU50が、充放電器61に対するプリチャージが完了したか否かを判断する。S18では、充放電器61に対するプリチャージが完了したと判断された場合に、ECU50が第1充電路CL1および第2充電路CL2の両方を接続する。
【0085】
上記方法では、充放電器61,62(複数の充電器)を1つずつプリチャージする。具体的には、第2充電路CL2が遮断され、かつ、第1充電路CL1が接続された状態で、ECU50が、充放電器61に対するプリチャージを完了させた後、第2充電路CL2を接続する。こうした制御によれば、車両100のインレット71から充電器(充放電器61,62)を経由してバッテリ11へ供給される充電電力(充放電器61,62の総充電電力)が大きい場合でも、プリチャージ時の突入電流を十分に抑制しやすくなる。
【0086】
車両の構成は、前述した構成(図1図3)に限られない。図1には、前輪駆動の4輪自動車を示しているが、車輪の数及び駆動方式は適宜変更可能である。駆動方式は後輪駆動または4輪駆動でもよい。車輪の数は3輪又は5輪以上でもよい。車両は、乗用車に限られず、バスまたはトラックでもよい。車両は、PHEVに限られず、内燃機関を備えないBEVであってもよいし、他のxEVであってもよい。
【0087】
車両が備える制御装置(プロセッサ)の数は任意である。例えば、充放電器61,62とECU50との間(または、充放電器61,62の内部)に、ECU50からの指示に従って充放電器61,62を制御するコントローラが設けられてもよい。また、PFC回路340,540の異常を検出するためのセンサ(例えば、高温異常を検出するための温度センサ)が設けられてもよい。車両が外部給電を行うことは必須ではない。車両は、充放電器の代わりに充電器(充電回路)を備えてもよい。また、車両が備える充電器の数は2つに限られない。3つ以上の充電器が並列に接続されてもよい。
【0088】
車両はソーラーパネルを備えてもよい。車両は非接触充電可能に構成されてもよい。非接触充電(ワイヤレス充電)を行う車両は、給電設備側の送電部(例えば、送電コイル)と車両側の受電部(例えば、受電コイル)との位置合わせが完了したときに、前述した「プラグイン状態」に準ずる状態になったとみなされてもよい。こうした車両では、上記受電部が充電口に相当する。車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、無人で走行可能な車両(例えば、無人搬送車または農業機械)であってもよい。
【0089】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
11 バッテリ、12 SMR、30 エンジン、50 ECU、61,62 充放電器、71 インレット、72 アウトレット、100 車両、200,400 切替装置、331,531 制限抵抗、332,532 ヒューズ、333,533 スイッチ、340,540 PFC回路、350,550 平滑コンデンサ、900 EVSE、CL1 第1充電路、CL2 第2充電路、SL2 第2給電路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7