IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7609134保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム
<>
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図1
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図2
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図3
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図4
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図5
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図6
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図7
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図8
  • 特許-保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20241224BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20241224BHJP
【FI】
B65G1/137 B
G06Q10/087
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022109605
(22)【出願日】2022-07-07
(65)【公開番号】P2024008069
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2024-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】森國 洋平
(72)【発明者】
【氏名】河村 芳海
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-134030(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187207(JP,U)
【文献】特開2014-034442(JP,A)
【文献】特開2002-288248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
G06Q 10/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、前記物品を示す物品情報と、前記物品を保管する場合の保管位置を示す保管位置情報と、前記物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す搬入出情報と、前記搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す移動経路情報と、を入力する入力処理を実行し、
前記移動経路情報が示す移動距離を増やさない第1条件を満たすように、前記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する算出処理を実行し、
前記候補が算出された前記物品である候補算出物品について、前記候補の中から変更先を決定する決定処理を実行する、
保管位置決定システム。
【請求項2】
前記第1条件は、前記移動経路情報が示す移動経路に沿った移動が可能な保管位置である条件を含み、
前記算出処理は、前記条件を満たすように前記候補の少なくとも1つを算出する、
請求項1に記載の保管位置決定システム。
【請求項3】
前記算出処理は、前記条件を満たすように、前記移動経路情報が示す移動経路の少なくとも一部が互いに重なる保管位置を、前記候補の少なくとも1つとして算出する、
請求項2に記載の保管位置決定システム。
【請求項4】
前記物品情報は、前記物品のサイズを示す情報を含み、
前記算出処理は、前記物品情報が示す前記物品が収納できる保管位置の中から前記候補を算出する、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項5】
前記移動経路情報が示す移動経路はいずれも、保管位置に対して予め定められた方向から移動することに限定された経路である、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項6】
前記算出処理は、前記複数の物品のうち、前記搬入出情報に含まれない物品又は前記搬入出情報における搬入数及び搬出数がゼロの物品については、前記候補の算出を行わないか、あるいは、前記候補として保管位置と同じ保管位置を前記候補として算出する、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項7】
前記決定処理は、前記所定領域内にある保管位置に対して搬入及び搬出に要する作業量が、各保管位置について分散されるように前記候補の中から変更先を決定する、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項8】
前記物品情報は、前記物品のサイズを示す情報を含み、
前記保管位置情報は、保管領域のサイズ又は前記複数の物品のそれぞれについての収納可能数を示す情報を含み、
前記決定処理は、前記物品情報及び前記保管位置情報に基づき、前記候補の中から前記候補算出物品が収納可能な保管位置を変更先として決定する、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項9】
前記物品情報は、前記物品の搬送に注意を要するレベルを示す情報を含み、
前記決定処理は、前記レベルを示す情報に基づき、前記候補の中から前記候補算出物品が破損なく搬送されて収納できる保管位置を変更先として決定する、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項10】
入力される前記移動経路情報が示す移動経路の少なくとも1つは、前記搬送対象物品を搬入又は搬出する場合に辿ると推定される経路として算出された経路である、
請求項1又は2に記載の保管位置決定システム。
【請求項11】
所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、前記物品を示す物品情報と、前記物品を保管する場合の保管位置を示す保管位置情報と、前記物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す搬入出情報と、前記搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す移動経路情報と、を入力する入力処理を実行し、
前記移動経路情報が示す移動距離を増やさない第1条件を満たすように、前記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する算出処理を実行し、
前記候補が算出された前記物品である候補算出物品について、前記候補の中から変更先を決定する決定処理を実行する、
保管位置決定方法。
【請求項12】
コンピュータに、
所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、前記物品を示す物品情報と、前記物品を保管する場合の保管位置を示す保管位置情報と、前記物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す搬入出情報と、前記搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す移動経路情報と、を入力する入力処理を実行し、
前記移動経路情報が示す移動距離を増やさない第1条件を満たすように、前記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する算出処理を実行し、
前記候補が算出された前記物品である候補算出物品について、前記候補の中から変更先を決定する決定処理を実行する、
保管位置決定処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業者の作業効率を向上させることを目的とした、ピッキング作業場での物品管理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-034004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、作業の歩行距離増加と混雑を回避するために、物品の保管位置の組み合わせを順次変化させながらシミュレーションを行っているため、歩行距離を増やさずに混雑を回避する保管位置の組み合わせを見つけるには、全ての組み合わせをシミュレーションする必要が生じる可能性がある。よって、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の配置を、処理量が少ない演算で決定することが望まれる。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的は、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の配置を、処理量が少ない演算で決定することが可能な保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る保管位置決定システムは、所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、前記物品を示す物品情報と、前記物品を保管する場合の保管位置を示す保管位置情報と、前記物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す搬入出情報と、前記搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す移動経路情報と、を入力する入力処理を実行し、前記移動経路情報が示す移動距離を増やさない第1条件を満たすように、前記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する算出処理を実行し、前記候補が算出された前記物品である候補算出物品について、前記候補の中から変更先を決定する決定処理を実行する、ものである。前記保管位置決定システムは、このような構成により、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の配置を、処理量が少ない演算で決定することができる。
【0007】
本開示に係る保管位置決定方法は、所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、前記物品を示す物品情報と、前記物品を保管する場合の保管位置を示す保管位置情報と、前記物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す搬入出情報と、前記搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す移動経路情報と、を入力する入力処理を実行し、前記移動経路情報が示す移動距離を増やさない第1条件を満たすように、前記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する算出処理を実行し、前記候補が算出された前記物品である候補算出物品について、前記候補の中から変更先を決定する決定処理を実行する、ものである。前記保管位置決定方法は、このような構成により、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の配置を、処理量が少ない演算で決定することができる。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、前記物品を示す物品情報と、前記物品を保管する場合の保管位置を示す保管位置情報と、前記物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す搬入出情報と、前記搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す移動経路情報と、を入力する入力処理を実行し、前記移動経路情報が示す移動距離を増やさない第1条件を満たすように、前記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する算出処理を実行し、前記候補が算出された前記物品である候補算出物品について、前記候補の中から変更先を決定する決定処理を実行する、保管位置決定処理を実行させるためのプログラムである。前記プログラムは、このような構成により、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の配置を、処理量が少ない演算で決定することができる。
【0009】
前記保管位置決定システム、前記保管位置決定方法、及び前記プログラムのいずれにおいても、以下のような様々な構成の1又は複数を適用することができる。
【0010】
前記第1条件は、前記移動経路情報が示す移動経路に沿った移動が可能な保管位置である条件を含み、前記算出処理は、前記条件を満たすように前記候補の少なくとも1つを算出するようにしてもよい。
【0011】
ここで、前記算出処理は、前記条件を満たすように、前記移動経路情報が示す移動経路の少なくとも一部が互いに重なる保管位置を、前記候補の少なくとも1つとして算出するようにしてもよい。
【0012】
前記物品情報は、前記物品のサイズを示す情報を含み、前記算出処理は、前記物品情報が示す前記物品が収納できる保管位置の中から前記候補を算出するようにしてもよい。
【0013】
前記移動経路情報が示す移動経路はいずれも、保管位置に対して予め定められた方向から移動することに限定された経路であるようにしてもよい。
【0014】
前記算出処理は、前記複数の物品のうち、前記搬入出情報に含まれない物品又は前記搬入出情報における搬入数及び搬出数がゼロの物品については、前記候補の算出を行わないか、あるいは、前記候補として保管位置と同じ保管位置を前記候補として算出するようにしてもよい。
【0015】
前記決定処理は、前記所定領域内にある保管位置に対して搬入及び搬出に要する作業量が、各保管位置について分散されるように前記候補の中から変更先を決定するようにしてもよい。
【0016】
前記物品情報は、前記物品のサイズを示す情報を含み、前記保管位置情報は、保管領域のサイズ又は前記複数の物品のそれぞれについての収納可能数を示す情報を含み、前記決定処理は、前記物品情報及び前記保管位置情報に基づき、前記候補の中から前記候補算出物品が収納可能な保管位置を変更先として決定するようにしてもよい。
【0017】
前記物品情報は、前記物品の搬送に注意を要するレベルを示す情報を含み、前記決定処理は、前記レベルを示す情報に基づき、前記候補の中から前記候補算出物品が破損なく搬送されて収納できる保管位置を変更先として決定するようにしてもよい。
【0018】
入力される前記移動経路情報が示す移動経路の少なくとも1つは、前記搬送対象物品を搬入又は搬出する場合に辿ると推定される経路として算出された経路であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示により、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の配置を、処理量が少ない演算で決定することが可能な保管位置決定システム、保管位置決定方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態に係る保管位置決定システムの一構成例を示すブロック図である。
図2図1の保管位置決定システムで実行される保管位置決定処理の一例を説明するための模式図である。
図3】倉庫における棚のレイアウト及び物品の配置の一例を示す模式図である。
図4】作業オーダーの一例を示す図である。
図5図1の保管位置決定システムで実行される保管位置決定処理のより具体的な例を説明するためのフロー図である。
図6図3の例において物品の割付先候補を算出する処理の一例を説明するための模式図である。
図7図6の処理例において算出される割付先候補の一例を示す図である。
図8図1の保管位置決定システムで実行される保管位置決定処理のより具体的な他の例を説明するためのフロー図である。
図9】装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0022】
(実施の形態)
図1図8を参照して、本実施の形態に係る保管位置決定システムの一構成例について説明する。まず、本実施の形態に係る保管位置決定システムの一構成例について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る保管位置決定システム(以下、本システム)の一構成例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示す本システム10は、所定領域内で保管される対象となる複数の物品のそれぞれについて、保管位置を決定するシステムであり、複数の装置に機能を分散して構成することも単体の装置で構成することもできる。
【0024】
保管対象となる複数の物品は、それぞれが互いに異なる物品として取り扱う物品であればよく、よって互いのサイズや重さが異なるものを含むことができる。典型的には、保管対象となる複数の物品は、それぞれの物品が互いに種類(型番など)が異なる物品とすることができ、この場合、保管対象の複数種類の物品に該当する。但し、実際には同じ種類の物品であっても異なる物品として取り扱うこともできる。また、保管対象となる物品には、例えば、或る製品を製造するための1種類の部品を複数個まとめたセットや、或る製品を製造するための複数種類の部品のセットなどを含むこともできる。
【0025】
所定領域とは、例えば1つの倉庫、同一敷地内にある複数の倉庫などが挙げられるが、これに限らない。また、物品の保管先は、複数存在することになるが、各保管先のサイズや形状は一部又は全部が異なってもよい。物品の保管先は棚などとすることができるが、これに限らない。
【0026】
また、物品の保管作業は、作業者が実行すること、あるいは作業ロボットとしての自律移動ロボットが実行すること、あるいは双方が実行することができる。
【0027】
図1に示すように、本システム10は、情報の入力処理を実行する入力部11、算出処理を実行する算出部12、及び決定処理を実行する決定部13を備えることができ、これらの処理に用いる情報等を記憶する記憶装置でなる記憶部14も備えることができる。入力処理、算出処理、及び決定処理については後述する。
【0028】
入力部11は、例えば、記憶部14から情報を入力するための入力インタフェース、あるいは、本システム10の外部に接続されたサーバ装置等の外部装置から情報を受信する通信インタフェースなどのインタフェースと、情報の入力を制御する入力制御部と、で構成されることができる。
【0029】
入力制御部、算出部12、及び決定部13は、本システム10の全体を制御する制御部として具備されることができる。この制御部は、例えば、集積回路(Integrated Circuit)によって実現されることができ、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、作業用メモリ、及び不揮発性の記憶装置などによって実現されることができる。この記憶装置にプロセッサによって実行される制御用のプログラムを格納しておき、プロセッサがそのプログラムを作業用メモリに読み出して実行することで、入力制御部での入力制御機能、算出部12の機能、及び決定部13の機能を果たすことができる。なお、記憶部14は、この記憶装置の一部の記憶領域を利用することができる。
【0030】
入力部11は、入力処理として、上記複数の物品のそれぞれについて、物品情報、保管位置情報、搬入出情報、及び移動経路情報を入力する処理を実行する。これらの情報は、記憶部14に記憶され、記憶部14から入力されることができ、以下ではそのような例を挙げるが、上記の外部装置に記憶され、外部装置から入力されることもできる。入力部11は、入力された情報の一部又は全部を、算出部12及び決定部13へ渡す。
【0031】
物品情報は、物品を示す情報であり、他の物品と識別可能な物品番号等の情報とすることができる。保管位置情報は、各物品について、物品を保管する場合の保管位置を示す情報であり、例えば保管位置として複数の棚が設けられていた場合、棚を他の棚と識別可能な棚番号等の情報を含むことができる。また、保管位置情報は、物品が保管される保管位置については物品情報を含むか、あるいは物品情報が関連付けられる。入力部11で入力される保管位置情報は、あくまで物品の最終的な保管位置を決定する前の保管位置を示す情報である。なお、保管位置情報は、保管できる位置を示す情報を含み、物品情報を含むことや物品情報との関連付けがなされない情報とすることもでき、その場合には、物品情報は、保管位置を示す情報を含むか、あるいは保管位置情報と関連付けられていればよい。
【0032】
搬入出情報は、物品の時系列での搬入数及び搬出数を示す情報である。例えば、上記複数の物品において、同じ物品として取り扱われる物品が複数個存在する場合には、ある日時におけるその物品の搬入数や搬出数は複数個となり得る。
【0033】
移動経路情報は、搬入出情報が示す同時に搬入又は搬出を行う対象の1又は複数の物品である搬送対象物品について、その作業時の移動経路を示す情報である。単純な例を挙げると、同時に搬送又は搬出する複数の物品の移動経路は、次のように求めておくことができる。即ち、例えば、搬送開始位置又は回収開始位置から、保管位置情報が示す保管位置が最も近い物品についてその保管位置まで最も短い距離となる最短経路、その物品の保管位置から最も近い他の物品の保管位置まで最も短い距離となる最短経路など、物品間の最短経路を繋いだ経路などとして、予め求めておくことができる。また、同時に搬送又は搬出する複数の物品の移動経路は、これらの物品のそれぞれの保管位置に基づき最短距離となるような最適化問題を解くなどして、予め求めておくこともできる。なお、搬送開始位置とは物品を保管位置へ搬送し配置する作業を開始する位置を指し、回収開始位置とは物品をピックアップするために保管位置へ向かいピックアップする作業を開始する位置を指す。
【0034】
移動経路情報は、このように同時に搬入又は搬出を行う搬送対象物品についての作業時の移動経路を示す情報であり、搬送日時を示す情報を含む必要はない。移動経路情報を生成するに際し、各物品の搬送期限あるいは移動日時などが分かっているなど、同時に搬入又は搬出する物品が分かっていれば済む。但し、移動経路情報自体に移動日時を示す情報を含んでおくこともでき、この場合でも、この情報を使用する必要はない。
【0035】
算出部12は、算出処理として、入力部11で入力された移動経路情報が示す移動距離を増やさない条件(以下、第1条件)を満たすように、上記複数の物品のうちの少なくとも1つについて保管位置の変更先の候補を算出する処理を実行する。算出部12は、移動経路情報だけでなく、入力部11で入力された移動経路情報以外の情報である物品情報、保管位置情報、及び搬入出情報も参照して、この算出処理を実行することができる。このように、算出部12は、入力部11で入力された情報の全部又は一部を用いて候補を算出することができる。
【0036】
なお、移動距離とは、作業者が歩いて搬送する場合には歩行距離を指し、作業者が移動体に搭乗して搬送する場合には作業者の歩行距離と移動体の移動距離との合計の移動距離を指す。また、作業ロボットが搬送する場合には、移動距離は作業ロボットの移動距離を指す。
【0037】
ここで、或る物品についての保管位置、つまり保管先は、その物品の配置を割り付ける割付先と称することもでき、変更先の候補とは割付先の候補を指す。このように、算出部12は、割付先の候補を算出により取得するため、割付先候補取得部と称することもできる。
【0038】
第1条件は、移動距離を増やさないという条件であるため、入力された移動経路情報が示す搬送対象物品が1つである場合には、当然、移動経路情報が示す移動距離が増えないことを意味する。入力された移動経路情報が示す搬送対象物品が複数である場合には、第1条件は、移動経路情報が示す、複数物品を移動させるための移動距離が増えないことを意味する。
【0039】
決定部13は、決定処理として、算出部12において候補が算出された物品である候補算出物品について、候補の中から変更先、つまり新たな割付先を決定する処理を実行する。決定部13は、候補算出物品の候補である割付先候補を示す情報と、入力部11で入力された情報の全部又は一部を用いて、候補算出物品についての新たな割付先を決定することができる。
【0040】
その後、本システム10は、決定処理で決定された変更先に基づき保管位置情報を変更する変更処理を実行するように構成することができる。ここでは、決定部13がこの変更処理も行うものとして説明する。つまり、決定部13は、候補算出物品について割付先を決定し、その決定に従い、割付先を変更することで保管位置情報を変更する。そのため、決定部13は、割付先変更部と称することができる。作業者又は作業ロボットは、変更後の保管位置情報に基づき、各物品を保管することができる。
【0041】
本システム10では、上述のような構成により、既存の保管位置から作業者又は作業ロボットの移動距離を増やさずに、新しい保管位置を、少ない演算量で求めることができる。つまり、本システム10によれば、物品保管にかかる作業の効率を向上させるような物品の保管位置を、処理量が少ない演算で決定することができる。また、本システム10では、移動経路情報に作業量を示す情報を暗に又は明示的に含めることができ、そのような移動経路情報に基づき新しい保管位置(保管先)を決定するため、決定後の保管位置は作業者又は作業ロボットの作業が集中することを防ぐことができ、混雑の可能性が低くなる。
【0042】
次に、本システム10で実行される保管位置決定処理の一例について、図2を参照しながら説明する。図2は、図1の保管位置決定システム10で実行される保管位置決定処理の一例を説明するための模式図である。
【0043】
図2の例は、記憶部14に、上記複数の物品のそれぞれについての物品情報14b、保管位置情報の一例としての棚情報14c、搬入出情報の一例としての入出庫オーダー情報14a、及び移動経路情報の一例としての作業量情報14dが記憶されるものとして説明する。記憶部14において、各情報14a~14dはデータベース型式で格納されることができる。
【0044】
入出庫オーダー情報14aは、搬入、搬出がそれぞれ倉庫に対する搬入、搬出である場合における搬入出情報であり、入出庫作業のオーダーを示す情報である。つまり、ここでは物品は所定領域の一例としての倉庫で管理される例を挙げている。また、棚情報14cは、保管位置が倉庫内の棚である場合における保管位置情報である。つまり、ここでは保管位置としては倉庫内に複数設置された棚のうちいずれかが利用される例を挙げている。便宜上、以降も物品を保管するための割付先として棚を挙げて説明するが、物品を保管するための割付先は棚に限定されるものではない。
【0045】
また、作業量情報14dは、搬送に要する、移動距離を含む作業量を示す情報であり、移動経路情報として入力されることができる。あるいは作業量情報14bは、入力された移動経路情報に基づき算出した結果として格納しておくことができる。作業量情報14dは、入出庫についての過去の実績や予測データから得られる、物品毎の、移動距離を含む作業量を示す情報とすることができる。
【0046】
まず、本システム10では、入力部11などが、既存の割付先についての事前設定を行う(ステップS1)。ステップS1では、既存の割付先を示す情報である既存割付先情報が記憶部14に記憶されるが、記憶されるタイミングはステップS2の前であればよい。既存割付先情報は、棚情報14cを含み、加えて、物品情報14b、入出庫オーダー情報14a、及び作業量情報14dを含むこともできる。
【0047】
ここで、既存の割付先の事前設定とは、予め人によって決定されて本システム10に物品についての既存の割付先が入力されること、あるいは、本システム10又は外部システムに別途備えた機能によって自動的に既存の割付先が設定されることなどを指す。
【0048】
また、既存の割付先とは、物品について倉庫内などの所定領域内で実際に配置されている割付先、物品について倉庫内などの所定領域内で実際に配置しようと計画している割付先、及びその双方を含むこともできる。但し、双方の割付先を含む場合は前者の割付先の対象となる物品と後者の割付先の対象となる物品とは異なる。補足すると、本システム10では、後述するステップS2~S6の処理により、前者の場合には実際の配置を変更することが作業上好ましいような変更先に決定されることになり、後者の場合には計画している配置を変更することが作業上好ましいような変更先に決定されることになる。
【0049】
次いで、入力部11が既存割付先情報を入力し、算出部12に渡す(ステップS2)。算出部12は、既存割付先情報に基づいて、第1条件を満たすような割付先候補を算出し、決定部13に渡す(ステップS3)。
【0050】
ステップS3において、算出部12は、例えば次のようにして割付先候補を算出することができる。まず、算出部12は、入出庫オーダー情報14a、物品情報14b、及び棚情報14cに基づいて、入出庫オーダー情報14aに含まれる物品のそれぞれについて、割付先の予備候補を算出し、各予備候補の割付先であった場合の各入出庫オーダーの作業時の移動経路を算出する処理を実行する。次いで算出部12は、各予備候補の割付先を使用した場合の移動経路の中から既存割付先情報における作業量情報14dが示す移動距離を超えないような移動経路を抽出し、その移動経路が示す予備候補の割付先のそれぞれを、割付先候補として算出する。
【0051】
このように、ステップS3では、算出部12は、既存割付先情報に基づいて、各入出庫オーダーが示す作業の移動経路について、既存の割付先での移動経路よりも移動距離を増大させないような割付先候補を、入出庫オーダー情報14aに含まれる物品毎に算出する。ここで、算出部12は、移動距離を増大させないといった第1条件を満たさない物品が、入出庫オーダー情報14aに含まれていた場合には、その物品について割付先候補は無かったものとすることができる。なお、この算出部12における割付先候補の算出は、例えば学習モデルを用いて実行することもでき、そのアルゴリズム等は問わない。
【0052】
ステップS3に次いで、決定部13が、算出部12において割付先候補が算出された物品(候補算出物品)について、割付先候補の中から変更先(新たな物品割付先)を決定し、一時的に記憶する(ステップS4)。
【0053】
変更先の決定は例えば次のように行うことができる。即ち、決定部13は、物品毎に求められた割付先候補を示す情報と、棚情報14cにおける棚の位置等を示す情報と、入出庫についての過去の実績や予測データから得られる物品毎の作業量情報14dと、に基づいて、物品毎の割付先候補の範囲で、作業回数もしくは時間が特定の棚に集中しないような新たな物品割付先を算出する。
【0054】
ステップS4では、保管する物品の入出庫状況が変化した場合において、新たな物品割付先が決定されることになるが、既存の割付先として、保管する物品を追加や削除などにより変更した場合などにおいても、新たな物品割付先が決定されることになる。なお、この決定部13における新たな割付先の算出は、例えば学習モデルを用いて実行することもでき、そのアルゴリズム等は問わない。
【0055】
また、決定部13は、ステップS4で決定し一時記憶した新たな物品割付先を読み出し(ステップS5)、既存割付先情報における棚情報14cをこの新たな物品割付先に基づき更新することで、本システム10上での物品配置を変更する(ステップS6)。
【0056】
本システム10は、このような処理により、作業者又は作業ロボットの移動距離を既存の割付先の状態から増やさずに、特定の棚に作業が集中しない、混雑の可能性が低い新しい物品割付先を得ることができる。
【0057】
また、ステップS6において物品配置、つまり物品割付先に変更が生じた場合、ステップS2へ戻り変更された割付先を既存の割付先とし、同様の処理を実行することもできる。これにより、再び混雑の可能性が少ない割付先を求めることができる。
【0058】
また、本システム10では、前回の割付先変更から入出庫オーダー情報14aが或る程度蓄積された時点で再演算を行い、新しい物品割付先を決定して変更を行うとよい。なお、再演算時点では、例えば入出庫オーダー情報14aのうち再演算時点から所定期間遡った情報のみを用いて再演算を行うこと、あるいは入出庫オーダー情報14aのうち新しい情報ほど重みを持たせて再演算を行うことで、最近の情報を加味した物品割付先に決定することができる。
【0059】
具体的に、図3図7を参照しながら、本システム10のより詳細な例について説明する。図3は倉庫における棚のレイアウト及び物品の配置の一例を示す模式図である。図4は、作業オーダーの一例を示す図である。図5は、本システム10で実行される保管位置決定処理のより具体的な例を説明するためのフロー図である。また、図6は、図3の例において物品の割付先候補を算出する処理の一例を説明するための模式図で、図7図6の処理例において算出される割付先候補の一例を示す図である。
【0060】
まず、入力部11は、入力情報として、例えば以下の(i)~(iv)の情報を取得し、算出部12に渡すことができる。算出部12は、これらの情報に基づいて、各入出庫オーダーの作業に掛かる移動距離を既存の割付先よりも増大させないように割付先を変更することができる棚(割付先候補)を物品毎に算出する。
【0061】
(i)棚情報14cの一部としての、各部品の既存の割付先を示す情報。
(ii)物品情報14bとしての、保管する物品を示す情報と物品の大きさ(サイズ)等の割付先の設定に必要な割付先条件を示す情報。
(iii)入出庫オーダー情報14aとしての、過去に行われた、もしくは、今後行われると予測される物品の入出庫オーダーを示す情報。
(iv)棚情報14cの一部としての、棚の配置レイアウトを示す情報、通行路を示す情報、及び、割付先の設定に必要な棚の大きさ(サイズ)等の割付先条件を示す情報。通行路を示す情報には、通行禁止や一方通行などの通行路の情報や作業者又は作業ロボットの搬送ルール(作業を行う順や経路選択の方法等)の情報が含まれる。
【0062】
上記(iii)に関し、入出庫オーダーは1作業につき1つの物品もしくは複数の物品の組で与えられ、作業者又は作業ロボットは入庫オーダー又は出庫オーダーの1つを与えられたとき、作業開始位置から与えられた入出庫オーダーに含まれる物品毎に割り付けられている棚まで搬送し、入出庫オーダーに対応する入庫作業又は出庫作業を行い、全ての物品の作業が終了したら作業終了位置へ戻るとする。
【0063】
以下では、説明の簡略化のため、次に示す第一~第六の前提を満たす場面を例示して、算出部12による処理例について説明する。なお、決定部13による処理についてもこの場面を例示して後述する。
【0064】
第一に、図3で示すように、棚SHは倉庫WHにおいて4行6列のレイアウトで配置され、各棚SHには行番号1~4と列番号A~Fの組み合わせで番号が振られて、各棚SHは図5において下方に位置する側の通路で保管や取り出しが可能となっている。なお、図3において<>内に示す数字が行番号であり、<>内に示すアルファベットが列番号である。第二に、物品はα,β,γ,δ,ε,ζ,η,θの8つで、それぞれの既存の割付先は図3に示す保管位置で与えられるものとする。例えば物品α,θはいずれも棚SHのうちの1行C列にある棚に保管されるものとして既存の割付先が設定されている。第三に、入出庫オーダー情報14aとしては図4で例示する情報が与えられるものとする。
【0065】
第四に、棚は十分大きく、どの物品も割り付けでき、且つ、棚は一段であるかあるいは複数段であっても管理上の区別が無いものとする。第五に、作業は図3に示す作業開始・終了位置SGから出発し、作業開始・終了位置SGに戻ってくるものとする。第六に、作業者又は作業ロボットは、図3において矢印がある通路は矢印の方向にのみ移動できるものとする。
【0066】
このような場面において、算出部12は、上記第1条件を満たすように割付先候補を算出する。上記第1条件は、入力部11で入力された移動経路情報が示す移動距離を増やさないといった条件であり、この場面では、図3で示す既存の割付先での移動距離よりも移動距離を増大させないといった条件に該当する。
【0067】
ここで、既存の割付先よりも移動距離を増大させないように割付先を変更することができる位置を求める基本的な考え方の例として、他の考え方を採用することもできるが、ここでは次のような考え方を採用する例を挙げる。即ち、ある1つの物品(仮に物品OBとする)について考えたとき、物品OBが含まれる作業オーダーの全てについての移動経路を求め、求めた移動経路が全て重なる位置にある棚を求め、求めた棚の中で物品OBの大きさ(サイズ)等の割付先条件を満たした割付可能な棚が物品OBの移動距離を増大させない割付先候補となる。
【0068】
まず、入力部11は、物品情報14bから割付対象の物品を全て取得し、リストLとして算出部12へ渡す(ステップS11)。割付対象の物品は、倉庫WH内で管理される全ての物品とすることができる。次いで、算出部12は、物品のリストLから物品OBを一つ選択する(ステップS12)。例えば、物品OBとして、図3に示される位置にある物品αが選択されることができる。次いで、算出部12は、選択した物品OBが含まれる作業オーダーを、入出庫オーダー情報14aから取得する(ステップS13)。選択された物品OBが物品αである場合は、図4のNo.1,2,4の3つの作業オーダーが取得されることになる。
【0069】
次いで、算出部12は、取得した作業オーダーのそれぞれの移動経路を予め決められた搬送ルールに従って求める(ステップS14)。なお、移動経路は、作業時の移動経路であり作業経路と称することもできる。図4における作業オーダーNo.1,2,4については、それぞれ図6の実線、破線、一点鎖線のような経路になる。
【0070】
次いで、算出部12は、求めた全ての移動経路が重なる位置にある棚を求める(ステップS15)。作業オーダーNo.1,2,4の全ての移動経路が重なる位置は図6において斜線で示す位置となり、斜線の位置にある棚1A,1B,1C,4A,4B,4Cが求める棚となる。その後、算出部12は、求めた棚の中から物品の割付可能なものを抽出する(ステップS16)。物品αの場合、棚1A,1B,1C,4A,4B,4Cが抽出されることになる。
【0071】
算出部12は、抽出した棚を、対象としている物品の割付先候補として設定する(ステップS17)。物品αの場合、棚1A,1B,1C,4A,4B,4Cが割付先候補として与えられ、設定されることになる。
【0072】
このような処理により求めた物品の割付先候補は、物品が含まれる全ての作業オーダーの移動経路上になるため、少なくとも求めた割付先候補の中で割付先を変更しても移動距離は増加しない。
【0073】
次に、算出部12は、リストLに未処理の物品が残っているか否かを判定し(ステップS18)、残っている場合、ステップS12へ戻り、ステップS18でNOとなるまで、つまり全ての物品に対して処理が完了するまで、処理がなされる。
【0074】
このようにして、算出部12は全ての物品に対しての割付先候補を求める。但し、作業オーダーに含まれない物品(図3の例の場合、物品ζ)については、既存の割付先の設定の位置のみを割付先変更候補とする。このように、算出部12は、上記複数の物品のうち、入力された搬入出情報に含まれない物品又は入力された搬入出情報における搬入数及び搬出数がゼロの物品については、割付先候補として保管位置と同じ保管位置を候補として算出することができる。あるいは、算出部12は、このような物品については、割付先候補の算出を行わないようにしておくこともできる。
【0075】
図5で例示した処理により、図3の例に対しては、各物品の割付先変更候補は図7で与えられることになる。
【0076】
次に、決定部13の詳細な例について説明する。
まず、算出部12は、以下の(I)の情報を決定部13に渡し、入力部11は、入力情報として、例えば以下の(II),(III)の情報を取得し、決定部13に渡すことができる。決定部13は、これらの情報に基づいて、各物品の割付先を割付先候補に制限した上で、各棚で行われる作業量が分散するように物品割付先を求める。
【0077】
(I)算出部12で求めた物品毎の割付先候補を示す情報。
(II)棚情報14cの一部としての、棚に割り付けることができる物品の個数などの棚の情報。
(III)作業量情報14dとしての、各物品に要する作業量を示す情報。
【0078】
ここで、各物品に要する作業量とは、物品を棚から入出庫するのにかかる時間や、決められた期間で物品が入出庫される個数、上記の時間と個数の積などであり、目的に応じて選択されることができる。また、物品のこれらの値は過去の入出庫実績や予測などで予め与えられているものとする。
【0079】
作業量が分散するような物品割付先は、下式(1)で示される作業量の分散の値Vが最小となる物品の割付先である。ここで、式(1)において、Sは棚の集合、|S|は棚の数、Wsは棚s∈Sの作業量を表す。Wsは棚sに割り付けられている物品の作業量の合計値で与えられる。
【0080】
【数1】
【0081】
決定部13は、例えば、物品の割付先を求める方法として、次のような方法を採用して新しい物品割付先を決定することができる。即ち、決定部13は、目的関数を上記のVとした、物品の割付先を割付先候補に制限した組み合わせ最適化問題を構成し、分技限定法などの探索手法や焼きなまし法などの近似アルゴリズムなどの組み合わせ最適化問題を解く手法を用いることで、厳密解もしくは許容解として新しい物品割付先を求めることができる。
【0082】
このように、決定部13は、所定領域内にある保管位置に対して搬入及び搬出に要する作業量が、各保管位置について分散されるように割付先候補の中から新しい物品割付先を決定するようにしてもよい。上述したように、この作業量を示す情報は搬送経路情報に暗に(搬送経路情報から算出可能に)又は直接的に含めておくことができる。ここで各保管位置について作業量が分散するとは、例えば作業量の合計が均等になることを指すことができる。よって、決定部13は、変形例として、例えば次の2例のような処理を行うこともできる。
【0083】
上述した例では、決定部13が各棚SHで行われる作業量が分散するように物品割付先を求めるため、棚の作業量の分散である上式(1)を目的関数として与えている。これに対して、棚の数|S|と全ての棚の作業量の合計である上式(2)のTotalは割り付けに依らず一定であるため、変形例に係る決定部13では、分散Vの代わりに、上式(3)の量V′を目的関数として用いて新しい物品割付先を求める。このような目的関数を使用しても、分散の値Vを用いた場合と最適化問題として等価である。
【0084】
また、全ての棚SHの作業量の合計が一定であることから、作業量が多い棚SHが少なくなれば、棚SHでの作業量が分散される。そのため、決定部13は、他の変形例として、上記のVやV′以外の目的関数として、恒等関数以外の狭義単調増加関数fを用いて、上式(4)で与えられる量V″を目的関数として用いることでも、同様の目的を達成することができる。
【0085】
以上に説明したように、本システム10は、与えられた物品の保管位置と物品の入出庫に関する搬入出情報をもとに、現在のピッキング等の作業の作業者又は作業ロボットの移動距離を増やさずに、且つ例えば各保管位置での入出庫作業回数が均等になるような物品の保管位置が決定できる。
【0086】
この効果を説明するために、本実施の形態を採用しない比較例として、単に、物品を保管する倉庫などにおいて、作業効率向上のためにピッキング又は収納に要する移動距離が短くなるように物品の保管位置を決定する例を想定する。この比較例では、物品の保管位置が特定の一部分に集中し、複数の作業者又は作業ロボットが同じ場所で同時にピッキング等を行おうとする可能性が高まり、作業の順番待ち等の混雑により作業効率が低下してしまう。しかし、上述したように、本システム10では、移動経路を推定するなどして得ておき、その移動経路上にある保管位置を求め、求めた保管位置の中で作業量が均等になるように物品の保管位置を求めることができる。
【0087】
また、本システム10での処理は、作業オーダーの時系列のような時間の情報を必要とすることなく、作業オーダーで作業を行う物品の組み合わせを示す情報があれば十分である。そのため、本システム10は、倉庫の新規立ち上げた時などの時系列情報が不明な場合にも使用することができる。
【0088】
また、上述したように、第1条件は、移動経路情報が示す移動経路に沿った移動が可能な保管位置である条件を含み、算出部12はこの条件を満たすように割付先候補の少なくとも1つを算出することができる。さらに、上述したように、算出部12は、この条件を満たすように、入力された移動経路情報が示す移動経路の少なくとも一部が互いに重なる保管位置を、割付先候補の少なくとも1つとして算出することもできる。
【0089】
また、上述の場面では、上記(iv)における通行路を示す情報として、図3において矢印がある通路が矢印の方向にのみ移動(搬送)できることを想定した。つまり、入力された移動経路情報が示す移動経路はいずれも、保管位置に対して予め定められた方向から移動することに限定された経路とすること、つまり一方通行とすることができる。但し、本実施の形態は、このような制限が課される場面の適用に限定されるものではなく、移動経路情報が示す移動経路は、双方向の通行が可能な経路を含むこともできる。
【0090】
また、上述したように、移動経路情報が示す移動経路の少なくとも1つは、搬送対象物品を搬入又は搬出する場合に辿ると推定される経路として算出された経路であるようにしてもよい。但し、入力される移動経路情報が示す移動経路の少なくとも1つは、事前に管理者等が決定して入力した移動経路とすることもできる。
【0091】
また、上記の場面では、棚は一段であるか、あるいは複数段であっても管理上の区別が無いことを前提として説明したが、これに限ったものではない。例えば棚は、複数段で設けられ且つ管理上の区別をもたせていても、棚の水平方向位置及び段数(又は垂直方向位置)など、各棚の位置が特定できればよい。この場合にも基本的に棚の水平方向位置が物品の搬送には影響を与えることになるため、物品を配置する棚の水平方向位置だけを考慮して、割付先候補の算出などを行えばよい。
【0092】
また、上記の場面では、棚は十分大きく、どの物品も割り付けできることを前提として説明したが、これに限ったものではない。例えば、物品情報14bは、物品のサイズを示す情報を含むことができる。この場合、算出部12は、物品情報が示す物品が収納できる保管位置の中から候補を算出するようにしてもよい。この場合、ステップS16においては、物品αの場合、棚1A,1B,1C,4A,4B,4Cのうち、棚SHと物品αとのサイズの比較により、ステップS15で求めた棚SHのうち割付が不能となる棚SHが存在すれば、そのような棚SHは抽出されないことになる。
【0093】
物品情報14bに物品のサイズを示す情報を含む場合、保管位置情報は、保管領域のサイズ又は上記複数の物品のそれぞれについての収納可能数を示す情報を含むことができる。そして、決定部13は、物品情報及び保管位置情報に基づき、候補の中から候補算出物品が収納可能な保管位置を変更先として決定することができる。
【0094】
また、物品のサイズについてのみ考慮したが、物品情報14bに物品の重量を示す情報を含み且つ保管位置情報に保管領域での保管制限重量を示す情報を含み、決定部13はそれらの情報も考慮して決定処理を実行することもできる。つまり、決定部13は、共に重量に関する情報を含んだ物品情報及び保管位置情報に基づき、割付先候補の中から候補算出物品が収納可能な保管位置を変更先として決定することができる。
【0095】
また、物品情報14bは、物品の搬送に注意を要するレベルを示す情報を含むことができる。この場合、決定部13は、そのレベルを示す情報に基づき、候補の中から候補算出物品が破損なく搬送されて収納できる保管位置を変更先として決定するようにしてもよい。
【0096】
次に、図5の処理例の代替例について説明する。
図5の処理例では、算出部12で全ての物品の割付先候補を求めた後、決定部13で全ての物品を考慮して混雑の少ない割付先を求めた。この代替処理として、「全ての物品」の代わりに「一部の物品」について処理を行い、この処理を繰り返すことでも移動距離を増加させずに混雑が少ない割付先を求めることができる。つまり、本実施の形態では、算出部12で一部の物品の割付先候補を求めた後、決定部13で上記一部の物品を考慮して混雑の少ない割付先を求め、このような処理を例えば全ての部品について終了するまでなど、必要な分だけ繰り返すことでも、同様の効果が得られる。
【0097】
このような処理例について、図8を参照しながら説明する。図8は、図1の保管位置決定システム10で実行される保管位置決定処理のより具体的な他の例を説明するためのフロー図である。
【0098】
まず、入力部11は、変数Xに既存の割付先を代入する(ステップS21)。例えば図3の1行C列の棚SHを代入する。次いで、入力部11は、変数Xに代入した割付先にある物品(上述の例では物品α,θ)の中からいくつかの物品を取得し、リストL′として算出部12へ渡す(ステップS22)。ここで取得する物品はランダムに選ぶか、あるいは物品既存の割付先において最も作業量が多い棚に割り付けられている物品とすることができる。
【0099】
次いで、算出部12は、図5で説明した同様の算出方法を用いて、リストL′にある物品の割付先候補を求め、決定部13へ渡す(ステップS22,S23)。具体的には、図5のステップS11で読み込む割付対象の物品のリストLの代わりにリストL′を用い、図5の処理を実行してリストL′内の全ての物品について割付先候補を算出し設定し、その結果を決定部13へ渡す。
【0100】
次いで、決定部13は、リストL′に含まれる物品の割付先候補を用いて、上述の決定部13と同様の方法で作業量が分散した新しい割付先を求める(ステップS24)。但し、リストL′に含まれない物品については、割付先を変更しないようにする。そして、入力部11は、変数Xに新しい割付先を代入する(ステップS25)。
【0101】
本システム10では、ステップS22~S25を、繰り返しが規定した回数まで到達するまで繰り返し行う。そのため、入力部11は、繰り返し回数が規定回数に到達したか否かを判定し(ステップS26)、未到達の場合にはステップS22へ戻る。入力部11は、繰り返し回数が規定回数に到達した場合(ステップS26でYESの場合)、その旨を決定部13に伝え、決定部13が、変数Xにある割付先を変更する新たな割付先として採用し、既存の割付先を新たな割付先に変更し(ステップS27)、処理を終了する。このように決定された新たな割付先は、既存の割付先から移動距離を増大せずに混雑が少ない割り付けとなっている。
【0102】
ここで、繰り返しの是非は、規定回数との閾値処理で判定しなくても、例えば規定時間との閾値処理で判定することもできる。つまり、ステップS26では、繰り返しが規定した時間まで到達したか否かを判定してもよい。
【0103】
(代替例等)
上記実施の形態では、本システム10について説明したが、保管位置決定システムは例示する構成に限らず、その機能が果たせればよい。また、保管位置決定システムで取り扱われる各情報は、例示したものに限らず、同等の演算が行える情報であればよい。
【0104】
保管位置決定システムは、本システム10について説明したように、複数の装置に機能を分散して構成することも単体の装置で構成することもできる。これらの複数の装置や単体の装置はいずれも、例えば次のようなハードウェア構成を備えることができる。図9は、かかる装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0105】
図9に示す装置100は、いずれも、プロセッサ101、メモリ102、及びインタフェース103を備えることができる。例えば、装置100がコンピュータである場合、インタフェース103は、ユーザ操作を受け付ける操作機器とのインタフェース、情報を表示する表示機器とのインタフェース、情報の送受のための通信インタフェースなどを含むことができる。
【0106】
プロセッサ101は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサとも称されるMPU(Micro Processor Unit)などであってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ102は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。上述した複数の装置や単体の装置における機能は、プロセッサ101がメモリ102に記憶された制御用のプログラムを読み込んで、インタフェース103を介して必要な情報をやり取りしながら実行することにより実現される。
【0107】
このプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0108】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、上記実施の形態におけるそれぞれの例を適宜組み合わせて実施されることを含む。
【符号の説明】
【0109】
SG 作業開始・終了位置
SH 棚
WH 倉庫
10 保管位置決定システム
11 入力部
12 算出部
13 決定部
14 記憶部
14a 入出庫オーダー情報
14b 物品情報
14c 棚情報
14d 作業量情報
100 装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9