(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/178 20210101AFI20241224BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20241224BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241224BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20241224BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241224BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20241224BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20241224BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241224BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241224BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/531
H01M50/105
H01M50/124
H01M50/119
H01M50/557
H01M50/562
H01M10/0562
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022113903
(22)【出願日】2022-07-15
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】永田 佑佳
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-158264(JP,A)
【文献】特開2018-160310(JP,A)
【文献】特開2014-017175(JP,A)
【文献】特開2014-179193(JP,A)
【文献】特開2007-018881(JP,A)
【文献】特開2002-025535(JP,A)
【文献】国際公開第2022/004729(WO,A1)
【文献】特開2020-155301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体の側面部に配置された集電端子と、
前記電極体および前記集電端子を覆うラミネートフィルムと、
を備える電池であって、
前記電極体は、集電タブを有し、
前記集電タブおよび前記集電端子は、電気的に接続され、
前記ラミネートフィルムは、金属層と、前記金属層より前記集電端子側に位置する内側樹脂層と、を有し、
前記集電端子は、基部と、前記基部より前記ラミネートフィルム側に位置する多孔質部と、を有し、
前記基部および金属層の間に、前記内側樹脂層を含む樹脂層が配置され、
前記多孔質部および前記樹脂層は接触し、
前記樹脂層
の一部は、前記多孔質部の内部に充填されて
おり、
前記集電端子は、アルミニウムを含有し、
前記多孔質部は、アルマイト部であり、
前記電極体は、硫化物固体電解質を含有し、
前記金属層と、前記集電端子との間に存在する前記樹脂層の厚さをT
1
とし、前記多孔質部に充填された前記樹脂層の厚さをT
2
とした場合、
前記T
1
は、20μm以上、60μm以下であり、
前記T
2
は、100nm以上、300nm以下であり、
前記樹脂層は、前記多孔質部における前記金属層側の一部の領域に充填されている、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を有する電極体を備える。電極体は、例えば、外装材に囲まれた内部空間に封止される。特許文献1には、電極体と、ラミネート外装材と、タブフィルムと、を備えるラミネート型電池が開示され、電極体における端子部と、ラミネート外装材の縁部との間に、タブフィルムを配置することが開示されている。特許文献2には、メッキ層を介在させて重ねられた、内部端子の面と、外部端子の面と、のうち少なくとも一方の面に、複数の凹部を有する粗面(例えばアルマイト層)が形成されており、メッキ層の一部が凹部に侵入している、密閉型電池が開示されている。特許文献3には、樹脂製の端子ホルダと、集電端子と、を熱カシメにより固定した非水電解質二次電池が開示され、集電端子の端子ホルダ側の表面にアルマイト処理することが開示されている。特許文献4には、双極型電極を積層する積層方向に沿って発電要素の両端のそれぞれに配置された集電板を有する双極型電池が開示され、集電板の外表面にアルマイト処理を施すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-194949号公報
【文献】特開2020-140887号公報
【文献】特開2014-154397号公報
【文献】特開2011-060456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1には、電極体における端子部(集電端子)と、ラミネート外装材(ラミネートフィルム)の縁部との間に、タブフィルムを配置することが開示されている。タブフィルムを設けることで、集電端子と、ラミネートフィルムとの密着性は向上する。一方、タブフィルム等の樹脂層を介して、水分が、ラミネートフィルムで封止された内部領域まで侵入しやすくなる。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、水分の侵入を抑制可能な電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
電極体と、上記電極体の側面部に配置された集電端子と、上記電極体および上記集電端子を覆うラミネートフィルムと、を備える電池であって、上記電極体は、集電タブを有し、上記集電タブおよび上記集電端子は、電気的に接続され、上記ラミネートフィルムは、金属層と、上記金属層より上記集電端子側に位置する内側樹脂層と、を有し、上記集電端子は、基部と、上記基部より上記ラミネートフィルム側に位置する多孔質部と、を有し、上記基部および金属層の間に、上記内側樹脂層を含む樹脂層が配置され、上記多孔質部および上記樹脂層は接触し、上記樹脂層の少なくとも一部は、上記多孔質部の内部に充填されている、電池。
【0007】
[2]
上記集電端子は、アルミニウムを含有し、上記多孔質部は、アルマイト部である、[1]に記載の電池。
【0008】
[3]
上記電極体は、固体電解質を含有する、[1]または[2]に記載の電池。
【0009】
[4]
上記固体電解質が、硫化物固体電解質である、[3]に記載の電池。
【発明の効果】
【0010】
本開示における電池は、水分の侵入を抑制可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示における電池を例示する概略断面図である。
【
図2】
図1における領域Aを拡大した拡大図である。
【
図3】本開示における課題を例示する説明図である。
【
図4】本開示における電極体を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図5】本開示における集電端子の一部を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における集電端子を例示する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0013】
図1は、本開示における電池を例示する概略断面図である。
図1に示す電池100は、電極体10と、電極体10の側面部に配置された集電端子20と、電極体10および集電端子20を覆うラミネートフィルム30と、を備える。電極体10は集電タブTを有し、集電タブTおよび集電端子20は電気的に接続されている。
【0014】
図2は、
図1における領域Aを拡大した拡大図である。
図2に示すように、ラミネートフィルム30は、金属層31と、金属層31より集電端子20側に位置する内側樹脂層32と、を有する。一方、集電端子20は、基部21と、基部21よりラミネートフィルム30側に位置する多孔質部22と、を有する。基部21および金属層31の間に、内側樹脂層32を含む樹脂層Xが配置されている。多孔質部22および樹脂層Xは接触し、樹脂層Xの少なくとも一部は、多孔質部22の内部に充填されている。
【0015】
本開示によれば、樹脂層の少なくとも一部が、多孔質部の内部に充填されることにより、水分の侵入を抑制可能な電池となる。上述したように、特許文献1には、電極体における端子部(集電端子)と、ラミネート外装材(ラミネートフィルム)の縁部との間に、タブフィルムを配置することが開示されている。タブフィルムを設けることで、集電端子と、ラミネートフィルムとの密着性は向上する。一方、タブフィルム等の樹脂層を介して、水分が、ラミネートフィルムで封止された内部領域まで侵入しやすくなる。
【0016】
例えば
図3(a)に示すように、ラミネートフィルム30と、集電端子20とを、タブフィルム40を介して溶着すると、ラミネートフィルム30および集電端子20の密着性は向上する。また、ラミネートフィルム30における金属層31は、通常、水分透過性を有しないため、金属層31にクラック等の破損が生じない限り、ラミネートフィルム30の外部から、ラミネートフィルム30の内部に、水分が侵入することはない。
【0017】
一方、ラミネートフィルム30における内側樹脂層32と、タブフィルム40とは、金属層31に比べて、水分透過性が高い。そのため、厚さ方向D
Tに直交する方向D
Xにおいて、水分の侵入が生じる。方向D
Xにおける水分の侵入は、方向D
Xにおける樹脂層(内側樹脂層32およびタブフィルム40)の断面積に依存する。この断面積が大きいほど、水分は侵入しやすい。これに対して、
図2に示すように、集電端子20に多孔質部22を設け、多孔質部22の内部に、樹脂層Xを充填することで、方向D
Xにおける樹脂層X(内側樹脂層32)の断面積が小さくなる。そのため、水分の侵入を抑制可能な電池となる。
【0018】
図3(b)に示すように、集電端子20および内側樹脂層32を接触させた場合、方向D
Xにおける樹脂層X(内側樹脂層32)の断面積は、タブフィルムを用いた場合に比べて小さくなる。一方、集電端子と、ラミネートフィルムとの密着性は、タブフィルムを用いた場合に比べて低くなる。これに対して、
図2に示すように、集電端子20に多孔質部22を設け、多孔質部22の内部に、樹脂層Xを充填することで、アンカー効果が生じ、集電端子20と、ラミネートフィルム30との密着性が高くなる。
【0019】
1.電池の構成
本開示における電池は、電極体と、集電端子と、ラミネートフィルムと、を少なくとも備える。
【0020】
(1)電極体
本開示における電極体は、電池の発電要素として機能する。例えば
図4に示すように、電極体10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に配置された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5とを有する。また、
図4に示す電極体10は、正極集電体4、正極活物質層1、電解質層3、負極活物質層2および負極集電体5を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。
【0021】
図4に示すように、電極体10は、頂面部TSと、頂面部TSに対向する底面部BSと、頂面部TSおよび底面部BSを連結する、4つの側面部SS(第1側面部SS
1、第2側面部SS
2、第3側面部SS
3および第4側面部SS
4)と、を有していてもよい。頂面部および底面部は、いずれも電極体の主面に該当し、主面の法線方向を、厚さ方向と定義することができる。
【0022】
頂面部の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。また、頂面部の形状は、四角形以外の多角形であってもよく、円形等の曲線を有する形状であってもよい。また、底面部の形状については、頂面部の形状と同様である。側面部の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。
【0023】
図4に示すように、電極体10は、正極集電端子(図示せず)と接続するための正極集電タブ4tと、負極集電端子(図示せず)と接続するための負極集電タブ5tと、を有する。正極集電タブ4tは、正極集電端子(図示せず)と対向する第1側面部SS
1から、厚さ方向D
Tに交差する方向に延在している。負極集電タブ5tは、負極集電端子(図示せず)と対向する第3側面部SS
3から、厚さ方向D
Tに交差する方向に延在している。
【0024】
(2)ラミネートフィルムおよび集電端子
本開示におけるラミネートフィルムは、電極体および集電端子を覆う部材である。
図2に示すように、ラミネートフィルム30は、金属層31と、金属層31より集電端子20側に位置する内側樹脂層32と、を有する。図示しないが、ラミネートフィルムは、金属層を基準として、内側樹脂層とは反対側に、外側樹脂層を有していてもよい。
【0025】
本開示における集電端子は、電極体の側面部に配置される。本開示における電池は、1つの電極体に対して、2つの集電端子を備えていることが好ましい。例えば
図1に示すように、電極体10に対して、一対の集電端子20(正極集電端子20Aおよび負極集電端子20B)が、対向するように配置されていてもよい。また、
図1では、一対の集電端子20が、電極体10の長手方向において、対向するように配置されていている。
【0026】
図2に示すように、集電端子20は、基部21と、基部21よりラミネートフィルム30側に位置する多孔質部22と、を有する。多孔質部22は、多数の孔部(ポア)を有する部位である。多数の孔部(ポア)は、三次元に連結されていてもよい。ポアの平均細孔孔は、例えば1nm以上、1000nm以下である。5nm以上、500nm以下であってもよい。10nm以上、100nm以下であってもよい。ポアの平均細孔孔は、例えば、水銀圧入式ポロシメータにより求められる。基部21および多孔質部22は、連続的に形成されていることが好ましい。
【0027】
多孔質部の形成方法としては、例えば、陽極酸化処理が挙げられる。陽極酸化処理は、陽極における電気化学的な酸化を利用した処理である。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。アルマイト処理は、電気化学的な酸化を利用してアルミニウムの表面に酸化被膜(陽極酸化被膜)を形成する方法である。本開示における集電端子は、アルミニウムを含有し、多孔質部は、アルマイト部であることが好ましい。アルマイト部は、酸化アルミニウムを含有する。
【0028】
図5に示すように、集電端子20における基部21と、ラミネートフィルム30における金属層31との間に、内側樹脂層32を含む樹脂層Xが配置される。
図5に示すように、樹脂層Xは、内側樹脂層32のみであってもよい。内側樹脂層32は、単層であってもよく、複数の層であってよい。また、特に図示しないが、内側樹脂層および基部21の間に、他の樹脂層Yが配置されていてもよい。樹脂層Yが配置された場合であっても、多孔質部を有しない集電端子に用いた場合に比べて、多孔質部を有する集電端子に用いることで、水分の侵入を抑制可能な電池が得られる。
【0029】
図5に示すように、多孔質部22および樹脂層Xは接触し、樹脂層Xの少なくとも一部は、多孔質部22の内部に充填されている。樹脂層Xの一部が、多孔質部22の内部に充填されていてもよく、樹脂層Xの全部が、多孔質部22の内部に充填されていてもよい。ここで、金属層31と、集電端子20との間に存在する樹脂層Xの厚さをT
1とし、多孔質部22に充填された樹脂層Xの厚さをT
2とする。T
1は、0であってもよく、0より大きくてもよい。後者の場合、T
1は、例えば、10μm以上であり、20μm以上であってもよい。一方、T
1は、例えば、100μm以下であり、80μm以下であってもよく、60μm以下であってもよい。T
2は、通常、0より大きく、50nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。一方、T
2は、例えば1μm以下であり、300nm以下であってもよい。また、T
1は、T
2より大きくてもよい。また、
図5に示すように、樹脂層Xは、多孔質部22における金属層31側の一部の領域に充填されていてもよい。一方、特に図示しないが、樹脂層Xは、多孔質部の全体に充填されていてもよい。
【0030】
図6に示すように、集電端子20は、電極体と対向する第1面S
1と、第1面S
1の外縁を構成する複数の面(第2面S
2~第5面S
5)と、を有していてもよい。さらに、
図6に示す集電端子20は、第1面S
1と対向する第6面S
6を有する。
図6に示す集電端子20は、主面として、第2面S
2および第4面S
4を有する。
【0031】
図6に示すように、集電端子20が、第2面S
2~第5面S
5を有する場合、第2面S
2~第5面S
5の少なくとも一つの面に、上述した多孔質部が形成されていることが好ましい。第2面S
2および第4面S
4は、それぞれ、その法線方向が、厚さ方向D
Tと平行な面であってもよい。「平行」とは、2つ方向のなす角度(鋭角側)が、10°以下である関係をいう。多孔質部は、第2面S
2および第4面S
4のみに形成されていてもよい。第3面S
3および第5面S
5は、それぞれ、その法線方向が、厚さ方向D
Tと直交する面であってもよい。「直交」とは、2つ方向のなす角度(鋭角側)が、80°以上90°以下である関係をいう。多孔質部は、第3面S
3および第5面S
5のみに形成されていてもよい。なお、
図6に示す第3面S
3および第5面S
5は、厚さ方向D
Tにおける長さが短い(集電端子20の厚さが小さい)が、厚さ方向D
Tにおける長さは、より大きくてもよい。また、集電端子20は、表面全体に多孔質部が形成されていてもよい。
【0032】
本開示における集電端子は、集電タブと接合するための接合領域を有する。接合領域には、多孔質部が形成されていないことが好ましい。例えば、多孔質部が金属酸化物である場合、抵抗低減の観点から、接合領域に多孔質部が形成されていないことが好ましい。例えば、
図6に示す第2面S
2に、接合領域が形成される場合、その接合領域に、多孔質部が形成されておらず、接合領域の外側(電極体とは反対側)に、多孔質部が形成されていてもよい。このように、一つの面において、多孔質部がパターン状に形成されていてもよい。また、例えば、
図6に示す第1面S
1に、接合領域が形成される場合、その接合領域に、多孔質部が形成されておらず、第1面S
1の外縁を構成する複数の面(第2面S
2~第5面S
5)の少なくとも一つの面に、多孔質部が形成されていてもよい。この場合、第1面S
1に、多孔質部が全く形成されていなくてもよい。
【0033】
2.電池の部材
本開示における電池は、電極体、集電端子およびラミネートフィルムを備える。
【0034】
(1)電極体
本開示における電極体は、例えば
図4に示すように、電極体10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に配置された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5とを有する。電極体10は、バイポーラ電極を有していてもよく、バイポーラ電極を有していなくてもよい。
【0035】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4等のスピネル型活物質、LiFePO4等のオリビン型活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。
【0036】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。固体電解質は、ゲル電解質等の有機固体電解質であってもよく、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等の無機固体電解質であってもよい。特に、硫化物固体電解質は、水分による性能低下が大きいため、硫化物固体電解質を含有する電極体には、水分の侵入防止が求められる。また、液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF6等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0037】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Li4Ti5O12等の酸化物活物質が挙げられる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、箔状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0038】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。電解質については、上述した内容と同様である。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
【0039】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル等の金属が挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。正極集電体は、正極集電端子と接続するための正極集電タブを有する。
図4に示すように、正極集電タブ4tは、正極集電体4から連続的に形成されていてもよい。電極体10を厚さ方向D
Tから見た場合に、正極集電タブ4tは、正極活物質層1とは重複しない位置に配置される。
【0040】
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。負極集電体は、負極集電端子と接続するための負極集電タブを有する。
図4に示すように、負極集電タブ5tは、負極集電体5から連続的に形成されていてもよい。電極体10を厚さ方向D
Tから見た場合に、負極集電タブ5tは、負極活物質層2とは重複しない位置に配置される。
【0041】
(2)集電端子
本開示における集電端子は、電極体の側面部に配置される。また、電極体の厚さ方向DTから平面視した場合に、集電端子は、電極体(集電タブを除く)と重複しない位置に配置されていてもよい。本開示における電池は、通常、集電端子として、正極集電端子および負極集電端子を有する。集電端子は、少なくとも一部に集電部を有する。集電部および電極体は、集電タブを介して、電気的に接続されている。集電端子は、全体が集電部であってもよく、一部が集電部であってもよい。集電端子の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
【0042】
(3)ラミネートフィルム
本開示におけるラミネートフィルムは、金属層と、上記金属層の一方の面に位置する内側樹脂層と、を有する。ラミネートフィルムは、金属層の内側樹脂層とは反対側の面に位置する外側樹脂層を有していてもよい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。金属層の厚さは、例えば、30μm以上60μm以下である。内側樹脂層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。内側樹脂層の厚さは、例えば、40μm以上100μm以下である。外側樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のエステル系樹脂、ナイロン等のアミド系樹脂が挙げられる。外側樹脂層の厚さは、例えば、20μm以上60μm以下である。また、ラミネートフィルムの厚さは、例えば、80μm以上250μm以下である。
【0043】
(4)電池
本開示における電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。また、本開示における電池は、全固体電池であることが好ましい。全固体電池は、電解液の代わりに、固体電解質(特に無機固体電解質)を用いた電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0044】
本開示における電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、電極体および集電端子を、集電タブを介して接続し、得られた部材を、ラミネートフィルムで被覆し、減圧環境下で、ラミネートフィルムを熱シールすることで、電池が得られる。ラミネートフィルムにおける内側樹脂層は、加熱されることで、集電端子等の他の部材と溶着する。また、ラミネートフィルムにおける内側樹脂層同士が接触している領域では、加熱により、内側樹脂層同士が溶着する。
【0045】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
1…正極活物質層
2…負極活物質層
3…電解質層
4…正極集電体
5…負極集電体
10…電極体
20…集電端子
30…ラミネートフィルム
100…電池