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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】天窓に太陽電池を搭載した車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20241224BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241224BHJP
   B60J 3/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B60R16/04 U
B60J1/00 W
B60J3/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022123005
(22)【出願日】2022-08-01
(65)【公開番号】P2024020096
(43)【公開日】2024-02-14
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
(72)【発明者】
【氏名】長沼 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】野中 健司
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0359016(US,A1)
【文献】特開2005-313814(JP,A)
【文献】特開2018-032872(JP,A)
【文献】実開平01-130852(JP,U)
【文献】特開2010-023635(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03545014(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
B60J 1/00
B60J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域の光を透過する透明な天窓を有する車両であって、
前記天窓の車室内側にて前記天窓の少なくとも一部を覆うことができるよう構成された開閉可能な可動式のシェードにして、太陽光を吸収して発電する太陽電池が前記天窓に対向した側に設置されているシェードを含み、
前記シェードが前記天窓の少なくとも一部を覆う閉状態にあるときには、前記太陽電池に発電させるよう構成された車両にして、
更に、前記シェードを開閉するシェード開閉手段と、前記車両の使用状況に応じて前記シェードの開閉を制御するシェード開閉制御手段とを含み、前記シェードが前記天窓の少なくとも一部を覆うように前記シェードを少なくとも部分的に閉じた状態にあるときには、前記シェードに於ける前記太陽電池に発電させるよう構成され、
前記シェード開閉制御手段が、乗員が着座していない座席への採光が不要であると判定し、採光が不要であると判定された座席へ光を透過させる天窓の部分を前記シェードで覆うよう構成された車両。
【請求項2】
請求項1の車両であって、前記天窓に可視光領域以外の波長領域の光を吸収して発電する透明な透明太陽電池が設置されている車両。
【請求項3】
請求項2の車両であって、前記天窓に於ける採光が不要であると判定されるときであって、前記透明太陽電池の発電量が所定値を上回っている場合に前記シェードが前記天窓の少なくとも一部を覆うように前記シェードを閉状態とされる車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を搭載した車両に係り、より詳細には、天窓に太陽電池が配置される車両に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の上面に太陽電池を搭載し、車両に於いて発電し、そのエネルギーを車両に於ける種々の作動に利用する試みが為されている(例えば、特許文献1など)。この点に関し、一般的な太陽電池(特許文献2など)の場合には、光を透過させないので、そのような太陽電池を、例えば、車両に於ける採光のための透明な天窓(サンルーフ、パノラマルーフ等)に配置することはできない。しかしながら、近年、可視光領域の波長の光を透過し、紫外線領域又は近赤外線領域の光で発電する透明な太陽電池(特許文献3など)が開発されており、かかる透明な太陽電池は、天窓の窓枠に嵌め込むことにより、或いは、天窓上に設置することにより、採光しつつ、発電できる天窓として利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-10127
【文献】特開2021-168322
【文献】特開2018-32872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如く可視光を通す透明な太陽電池(以下、「透明太陽電池」とする。)を車両の天窓に配置した構成に於いて、透明太陽電池は、可視光を透過するので、可視光のエネルギーは発電に利用されず、その分、太陽光エネルギーの利用効率は、太陽光の広範囲の波長領域に亙る光で発電する太陽電池に比して、低下することとなる。
【0005】
ところで、車両の天窓に於いて遮光或いは車室内の目隠しのために、天窓の車内側に可動式のシェード(光を遮るための内装板又は内装幕)が設けられている場合がある。そのような可動式シェードは、当然に光を透過させないように構成されるので、可動式シェード上に可視光を吸収して発電する「透明ではない」太陽電池(以下、「可視光太陽電池」と称する。)を含め、任意の太陽電池を設置することが可能である。そして、そのような太陽電池の設置されたシェードが天窓を覆っている間に於いては、天窓に入射する可視光のエネルギーも発電に利用することができ、その分、太陽光エネルギーの利用効率が向上できることとなる。また、遮光や目隠しの必要なときだけでなく、車室内への採光の必要のないときに、太陽電池の設置されたシェードが天窓を覆うように構成されていれば、太陽光エネルギーを発電に利用する機会が増え、更に、太陽光エネルギーの利用効率が向上できることとなる。
【0006】
かくして、本発明の課題は、天窓を有する車両に於いて、天窓を覆うことができるよう構成された可動式シェードに太陽電池を設置し、車室内への採光の必要のないときに、天窓を可動式シェードで覆い、可視光のエネルギーも含め、より多くの太陽光エネルギーを発電に利用することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、上記の課題は、可視光領域の光を透過する透明な天窓を有する車両であって、
前記天窓の車室内側にて前記天窓の少なくとも一部を覆うことができるよう構成された開閉可能な可動式のシェードにして、太陽光を吸収して発電する太陽電池が前記天窓に対向した側に設置されているシェードを含み、
前記シェードが前記天窓の少なくとも一部を覆う閉状態にあるときには、前記太陽電池に発電させるよう構成された車両によって達成される。
【0008】
上記の構成に於いて、「天窓」とは、車両の車室の屋根部分に形成された窓枠に透明なガラス又は樹脂が嵌め込まれた状態に形成された領域であり、サンルーフ、パノラマルーフなどと称される窓部分であってよい。「可動式のシェード」は、光を通さない内装板又は幕であり、天窓の車室内側にて、例えば、天窓に沿ってスライド式に摺動されるか、ヒンジ式に天窓に対して枢動されて、天窓の少なくとも一部を覆うことができるよう構成されてよい。シェードは、車両に形成された天窓の形状に合わせて分割されて形成されていてもよい。また、シェードは、天窓全域を覆っていない全開状態と天窓全域を覆っている状態の全閉状態との間で、手動にて或いは自動的に天窓に沿って移動されてよい。なお、シェードについて「閉状態」という場合には、シェードが天窓の少なくとも一部を覆っている状態を言うものとする。「太陽電池」は、シェードの天窓に対向した側に設置された板状、シート状又はフィルム状の任意の形式の太陽電池であってよく、可視光領域の波長(380nm~780nm)の光を吸収して発電する可視光太陽電池であってよい。そして、可動式のシェードが天窓の少なくとも一部を覆っている状態に於いて、太陽電池に天窓を透過した光が入射することにより、太陽電池が発電することとなる。
【0009】
上記の本発明の構成によれば、車両の天窓の車室内側から、天窓の少なくとも一部を覆うシェードに太陽電池が設けられていることにより、車室内への採光の必要のないときなどに、シェードを閉状態とすることにより、天窓を透過してきた可視光を含む太陽光を発電に利用することが可能となり、太陽光エネルギーの利用効率が向上されることとなる。
【0010】
上記の本発明の構成に於いて、シェードの開閉は、車両の使用状況に応じて自動的に実行されてよい。その場合には、シェードを開閉するシェード開閉手段と、車両の使用状況に応じてシェードの開閉を制御するシェード開閉制御手段とが設けられ、シェードが天窓の少なくとも一部を覆うようにシェードを少なくとも部分的に閉じた状態にあるときには、シェードに於ける太陽電池に発電させるよう構成されていてよい。ここに於いて、シェード開閉手段は、窓部に対するシェードの位置を移動する電動式のモータ又はアクチュエータであってよい。シェードの開閉状態を決定する車両の使用状況としては、天窓に於ける採光が不要であるか否か、バッテリ残量や発電の必要性などの状況であってよい。かかる構成によれば、車両の使用状況に応じて、天窓による採光の必要性、バッテリ残量、発電の必要性になどによって自動的にシェードが開閉され、シェードが少なくとも部分的に閉じた状態にあるときに太陽光エネルギーの利用効率が向上されることとなる。
【0011】
上記の構成に於いて、天窓に於ける採光が不要であるか否かは、具体的には、車両の乗員の有無、乗員の着座位置に応じて判定されてよい。例えば、車両に乗員がいなければ、天窓全域に於ける採光が不要であると判定され、シェードが全閉状態とされてよい。また、シェード開閉制御手段は、乗員が着座していない座席への採光が不要であると判定し、採光が不要であると判定された座席へ光を透過させる天窓の部分をシェードで覆うよう構成されていてよい。例えば、車両の後部座席に乗員が着座していない場合には、シェード開閉制御手段は、後部座席へ入射する光を透過する天窓の後方領域からの採光が不要であると判断して、かかる領域をシェードで覆うように構成されていてよい。各座席の乗員の有無は、体重検知センサ(シートベルトリマインダー用であってよい。)、乗員位置を検知する電波センサ(幼児置き去り防止用であってよい。)などを用いて検出されてよい。なお、乗員の指示により採光が不要とした天窓の領域のシェードが閉状態とされてもよい。
【0012】
また、上記の如く、車両の使用状況として、バッテリ残量や発電の必要性などの状況が参照されてシェードの開閉状態が制御されてよい。具体的には、車両の走行モードが発電モードであるとき或いはバッテリ残量が(任意に設定されてよい)所定値以下であるときには、シェードが閉状態とされてよい。
【0013】
なお、上記の本発明の構成に於いて、シェードに設置される太陽電池の表面は、任意に設定されてよい所定の色の光を反射する反射層にて被覆されていてよい。例えば、太陽電池の表面に、車体のその他の部位の表面と同じ色を反射するダイクロミラー層や加飾層が適用されていれば、シェードが閉状態にあり、天窓から太陽電池が見える状態にある場合でも、太陽電池の部分が車体のその他の部位の表面と同様の外観を有することとなり、意匠性が向上される。また、シェードに設置される太陽電池の表面は、光の反射を抑制する反射抑制層(ARコート)にて被覆されていてもよい。これにより、シェードが閉状態にあり、太陽電池へ光が入射する状態にあるときに、太陽電池の表面で反射されずに太陽電池に吸収される光量が増大し、太陽光エネルギーの利用効率が向上されることとなる。
【0014】
更に、上記の構成に於いて、シェードの開閉状態を検知するセンサが設けられ、シェードが全開状態にあるときには、シェードに設置された太陽電池の作動を停止できるようになっていてよい。これにより、シェードに設置された太陽電池に光が入射していないときには、かかる太陽電池の駆動装置(ECUなど)が停止され、太陽電池の駆動に要する電力の節約が可能となる。
【0015】
ところで、上記の本発明の車両の天窓に於いて、可視光領域以外の波長領域(近赤外線或いは紫外線)の光を吸収して発電する透明な透明太陽電池が設置されていてよい。かかる構成によれば、シェードが天窓を覆っていない場合にも、太陽光による発電が実行され、太陽光エネルギーの利用効率が向上されることとなる。また、天窓に透明太陽電池が設置されている構成に於いては、透明太陽電池の発電量が所定値を上回っている場合に、シェードが天窓の少なくとも一部を覆うようにシェードを閉状態とされるようになっていてよい。これにより、透明太陽電池の発電量が所定値を下回っているとき、即ち、太陽の光量がさほどに多くないときにシェードを無用に閉じるためのシェードの移動が回避でき、電力消費を節約できることとなる。透明太陽電池の発電量に対する所定値は、適宜、設定されてよい。
【発明の効果】
【0016】
かくして、上記の本発明では、車両の天窓に於いて、遮光や目隠しのために設置されるシェードに太陽電池を設置し、天窓からの採光が不要であるときやバッテリ残量が少なくなったときなどに、天窓をシェードで覆うように閉じることにより、シェードに設置された太陽電池にて太陽光発電が実行され、より多くの太陽光エネルギーを車両の駆動やその他の用途に利用できることとなる。本発明の構成は、天窓を有する種々の車両に適用されてよい。
【0017】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(A)、(B)は、本実施形態による天窓のシェードが適用される車両の模式的な側面図、斜視図である。図1(C)は、本実施形態による車両に於ける天窓とシェードとの模式図である。
図2図2は、本実施形態による天窓のシェードの開閉制御に関わるシステムの構成をブロック図の形式で表わした図である。
図3図3は、本実施形態による天窓のシェードの開閉制御の処理をフローチャートの形式で表わした図である。
【符号の説明】
【0019】
1…車両
2…天窓
2a…透明太陽電池
3…シェード
4…内装材
5…太陽電池
6…シェード駆動装置
10…シェード位置決定
11…乗員位置検知センサ
12…シェード開閉スイッチ
13…バッテリ残量センサ/発電モードセンサ
14…シェード位置センサ
20…シェード太陽電池駆動装置
30…天窓太陽電池駆動装置
vl…可視光
irl…近赤外線
S…太陽
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
車両に於ける天窓とシェードの構成
図1(A)~(C)を参照して、本実施形態は、パノラマルーフ、サンルーフなどと称される天窓2が屋根に備えられた自動車等の車両1に適用される。図示されている如く、本実施形態の車両1に於いては、屋根1aに窓枠1wが形成され、窓枠1wに透明なガラス又は樹脂から成る天窓2が嵌めこまれ、天窓2を通して太陽Sからの光が車室内に採り入れられるよう構成される。天窓2の車室内側1bには、光を通さない板状又は幕状の部材であるシェード3が、天窓2に沿って、X方向に摺動可能に設置され、適宜、天窓2を覆い、車室内への光の進入を遮ることができるように構成される。なお、図示していないが、シェード3は、ヒンジ式に枢動されて天窓2を覆うことができるようになっていてもよい。なお、ここに於いて、シェード3が天窓2の全域を覆い、天窓2の全域からの車室内への光が遮光されている状態がシェードの「全閉状態」とし、シェード3が天窓2の前部座席の上方を覆っている状態をシェードの「前部半閉状態」とし、シェード3が天窓2の後部座席の上方を覆っている状態をシェードの「後部半閉状態」とし、シェード3が天窓2の全域を覆っていない状態をシェードの「全開状態」とする。シェード3の開閉動作は、乗員の手動で行われてもよいが、後で説明される如く、車両の使用状況に応じてアクチュエータ又はモータ6により自動的に実行されてよい。
【0021】
そして、本実施形態に於いては、シェード3を形成する内装材4の天窓2に対向する側に太陽電池5が設置され、シェード3が天窓2の少なくとも一部を覆っている際には、太陽電池5が太陽光を吸収して発電するように構成され、ここで得られた電気エネルギーが、車両の駆動や各部の作動に利用され、或いは、そのために、バッテリに充電されるようになっていてよい。かかる構成によれば、例えば、乗員が乗っていないとき、乗員が採光を望んでいないときなどの、天窓2からの採光が不要なときや、車両1に於けるバッテリ残量が少ないとき、発電モードが選択されているときに、シェード3を全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態とし、シェード3に設置された太陽電池5により、太陽光エネルギーを、より多く、電気エネルギーとして回収することが可能となる。
【0022】
上記の構成に於いて、内装材4は、シェード3に通常に使用される任意の材料で形成されてよい。例えば、内装材4は、柔軟な幕部材で形成されてよく、その場合には、天窓の縁に巻き取られて収納できるようになっていてよい。また、内装材4は、板状部材で形成されていてよく、その場合には、窓枠の外側に摺動されて或いは折り畳まれて収納できるようになっていてよい。太陽電池5は、内装材4に追従して、巻取り又は折り畳みが可能なフィルム型の太陽電池であってよい。なお、太陽電池5は、後に説明される如く、光を透過しない太陽電池であってよい。また、シェード3が全開状態にあるか否かを検知するセンサ14が設けられていてよい。シェード3が全開状態にあるときには、太陽電池5を作動するための駆動装置の作動が停止され、駆動装置の作動に要する電力を節約できるようになっていてよい。
【0023】
更に、上記の構成に於いて、太陽電池5の表面は、任意に設定されてよい所定の色の光を反射する反射層にて被覆されていてよい。一つの態様に於いては、太陽電池5の表面は、車体のその他の部位の表面と同じ色を反射するダイクロミラー層や加飾層で被覆されていてよい。この場合、シェードが閉じられて、太陽電池5が車外ら見える状態であっても、太陽電池の部分が車体のその他の部位の表面と同様の外観を有することとなり、意匠性が向上される。或いは、太陽電池5の表面は、光の反射を抑制する反射抑制層(ARコート)にて被覆されていてもよい。これにより、シェードが閉状態にあり、太陽電池へ光が入射する状態にあるときに、太陽電池の表面で反射されずに太陽電池に吸収される光量が増大し、太陽光エネルギーの利用効率が向上されることとなる。
【0024】
ところで、上記の天窓2に於いて、可視光vlを透過し、可視光領域以外の波長領域(近赤外線又は紫外線)の光irlで発電する透明太陽電池2a(特許文献3など)が設置されていてよい。かかる構成によれば、太陽光が天窓2へ入射しているときには、車室内1bへ可視光vlが採光されつつ、透明太陽電池2aが可視光以外の光irlで発電するので、太陽光エネルギーを、より多く、電気エネルギーとして回収することが可能となる。この点に関し、透明太陽電池2aは、可視光を透過するので、天窓2を覆うシェード3に設置された太陽電池は、可視光で発電する可視光太陽電池であってよい。かかる構成の場合、シェード3が全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態であるときには、透明太陽電池2aにより、可視光以外の光で発電し、シェード3に設置された太陽電池が可視光で発電することとなり、太陽光エネルギーを、更により多く、電気エネルギーとして回収することが可能となる。
【0025】
シェードの開閉制御装置の構成
上記に触れた如く、本実施形態に於いて、シェード3は、車両の使用状況、より具体的には、天窓2からの採光が不要か否か、発電の必要性などに基づいて開閉が自動的に実行されてよい。シェード3の開閉を制御するシステムは、電子制御装置或いはコンピュータ装置であってよく、プログラムに従った作動により実現されてよい。
【0026】
図2を参照して、かかるシェード3の開閉を制御するシステムの構成に於いて、より詳細には、シェード3の開閉位置を決定するシェード位置決定部10へ、車内の乗員の有無又は位置を検知する乗員位置検知センサ11、シェード開閉スイッチ12、車両のバッテリ残量センサ或いは発電モードセンサ13の各出力が入力されてよい。乗員位置検知センサ11としては、例えば、シートベルトリマインダー用の各座席の体重検知センサや幼児置き去り防止用などに用いられる乗員位置を検知する電波センサが用いられてよく、かかるセンサの出力から、前部座席及び後部座席のそれぞれに於ける乗員の有無が判定されてよい。或いは、車外からロック動作があったときに、乗員がいないと判定されてもよい。シェード開閉スイッチ12は、乗員がシェードの開閉状態を選択できるように操作されるスイッチである。バッテリ残量センサ/発電モードセンサ13は、車載バッテリの残量を検出するセンサ又は車両のモードが発電モードにあるか否かを検出するセンサである。シェード位置決定部10は、基本的には、これらのセンサの出力に基づき、後に説明されるように、シェード3の開閉位置を決定するよう構成されてよい。また、天窓2に透明太陽電池2aが設置されている場合には、透明太陽電池2aの発電量の値が、その駆動装置30を通じて、シェード位置決定部10へ入力されてよい。かかる構成によれば、後に説明される如く、透明太陽電池2aの発電量の値が少ないときには、太陽光の照射量が少ないことになるので(夜間又は日陰)、シェード3を積極的に閉じる必要がなく、太陽電池5を駆動する必要のない状態であることが把握できることとなる。更に、シェード位置決定部10へシェード位置センサ14の出力が入力され、シェード3の開閉状態が検知できるようになっていてよい。
【0027】
シェード位置決定部10は、上記のセンサから情報に基づき、シェード3の開閉状態を決定すると、シェード3の位置を変更するアクチュエータ6へ指令を送り、シェード3が移動されることとなる。そして、シェード3の太陽電池5を作動する作動装置20は、シェード位置センサ14又はシェード位置決定部10からの情報により、シェードが全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態であるときに、太陽電池5を作動するよう構成される。一方、シェード位置センサ14の出力によりシェード3の全開状態にあることが検知されているときには、太陽電池5の駆動装置20が停止される。
【0028】
シェードの開閉制御の作動
本実施形態に於いて、シェード3の開閉は、以下の如く制御されてよい。
(a)車両に乗員がいないとき→シェード3が全閉状態にされる。
(b)後部座席に乗員がいないとき→シェード3が後部閉状態にされる。
(c)前部座席(運転席及び助手席)に乗員がいないとき→シェード3が前部閉状態にされる。
(d)乗員がスイッチ12を通じてシェード3の全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態を指示したとき→指示に応じて、シェード3が全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態にされる。
(e)バッテリ残量が所定値を下回ったとき→シェード3が全閉状態にされる。
(f)発電モードのとき(乗員による選択、プラグイン充電時)→シェード3が全閉状態にされる。
なお、上記の各処理は、単独で実行されてもよく、組み合わせて実行されてもよい。また、透明太陽電池2aの発電量の値が所定値を下回るときには、太陽光量が少ないので、シェード3の自動的な開閉は実行されてなくてよい。そして、シェード3が全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態にあるときに、太陽電池5が駆動されて、発電が実行される。
【0029】
図3を参照して、上記の(a)~(f)の処理を組み合わせた場合は、下記の如く、シェード3の開閉制御が実行されてよい。まず、天窓2に設置された太陽電池2aの発電量が所定値を上回っていないときには(ステップ1)、シェード3の開閉制御が実行されなくてよく(シェードの状態が変更されなくてよい。)、太陽電池5の駆動装置20が停止されてよい。太陽電池2aの発電量が所定値を上回っているときには、全席に乗員がいないときには(ステップ2)、天窓2の全域からの採光は不要であるので、シェード3が全閉状態とされ、太陽電池5の駆動装置20が作動される(ステップ3)。乗員がいるが、後部座席に乗員がいないときには(ステップ4)、天窓2の後部座席上方の領域からの採光は不要であるので、シェード3が後部閉状態とされ、太陽電池5の駆動装置20が作動される(ステップ5)。一方、後部座席に乗員がいるが、前部座席に乗員がいないときには(ステップ6)、天窓2の前部座席上方の領域からの採光は不要であるので、シェード3が前部閉状態とされ、太陽電池5の駆動装置20が作動される(ステップ7)。更に、シェード開閉スイッチ12を通じて全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態の指示があったときには(ステップ8)、その指示通りに、シェード3が制御されてよい。その他、発電モードが選択されている場合(ステップ9)或いはバッテリ残量が所定量を下回っているとき(ステップ10)には、シェード3が全閉状態とされ、太陽電池5の駆動装置20が作動される(ステップ3)。シェード開閉スイッチ12から全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態の指示がなく(或いはシェードを全開の指示があるとき)、発電モードが選択されておらず、バッテリ残量が所定量を下回っていないときには、シェード3は、全開状態にされ、太陽電池5の駆動装置20が停止されてよい(ステップ11)。なお、乗員の有無の判定(ステップ2、4、6)によりシェード3の開閉を行う場合、乗員が短時間に乗降を繰返す可能性があるので、乗員の有無の判定後、任意に設定されてよい所定時間の経過後に実行されてよい。車外に離れる乗員にシェードの閉じる動作を見せない場合には、所定時間は長めに設定されてよい。
【0030】
シェード3が手動で開閉される場合には、シェード位置センサ14の出力によりシェード3が全閉状態、前部閉状態又は後部閉状態であることが検知されると、これに対応して、太陽電池5の駆動装置20が作動されて、発電が実行されてよい。
【0031】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3