(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】延伸ポリオレフィンフィルム及びその製造方法、ビルドアップフィルム用保護フィルム
(51)【国際特許分類】
B29C 55/14 20060101AFI20241224BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241224BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B29C55/14
B32B27/32 Z
C08J5/18 CES
(21)【出願番号】P 2023181027
(22)【出願日】2023-10-20
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓明
(72)【発明者】
【氏名】中尾 晃大
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-143695(JP,A)
【文献】特開2023-143609(JP,A)
【文献】特開2022-069137(JP,A)
【文献】特開2020-033551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00
B32B 27/32
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂を含有する延伸ポリオレフィンフィルムであって、
MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸されており、
少なくとも一方の面の表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である、延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂を含有する、請求項1に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
無機系のアンチブロッキング剤を含有しない、請求項1に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
MD方向及びTD方向の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムである、請求項1に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項5】
ビルドアップフィルムの保護フィルムとして用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の延伸ポリオレフィンフィルムを備える、ビルドアップフィルム用保護フィルム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法であって、
前記ポリオレフィン樹脂を含む原反シートを、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸処理を行う工程を備え、
前記延伸処理における原反シートの予熱温度が155℃以上である、延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸ポリオレフィンフィルム及びその製造方法、並びにビルドアップフィルム用保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等に代表されるポリオレフィンフィルムは、電子機器等の保護フィルムの他、包装フィルム、光学フィルム等の各種分野に広く利用されており、利用価値の極めて高い材料である。
【0003】
例えば、ポリオレフィンフィルムは、ビルドアップ工法で使用されるビルドアップフィルムの保護フィルムとして好適であることが知られている(例えば、特許文献1等)。ビルドアップ工法とは、プリント配線板の高集積化において欠かせない技術である。斯かるビルドアップ工法では、回路基板にビルドアップフィルムを貼合し、熱によりビルドアップフィルム中の樹脂を硬化させた後、レーザー加工によりビアを形成すると共に発生した樹脂残渣を除去し、次いで、銅メッキ及びパターニングが行われる。この操作を繰り返し行うことでプリント配線板の高集積化が実現される。
【0004】
ビルドアップ工法で使用されるビルドアップフィルムは、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する粘着層で形成されるものであり、絶縁性を有する材料である。斯かる粘着層の一方の面には、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるベースフィルムが設けられ、他方の面には、前述のポリオレフィンフィルム等からなる保護フィルムが設けられている。ビルドアップ工法では、ビルドアップフィルムに設けられている前記保護フィルムをあらかじめ剥離して粘着層(ビルドアップフィルム)を露出させてから、前述のように回路基板にビルドアップフィルムを貼合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-122472号公報
【文献】特開2019-163358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的なポリオレフィンフィルムには、フィルムのブロッキングを防止させるべく、アンチブロッキング剤が含まれている(例えば、上記特許文献2)。このため、ポリオレフィンフィルムからアンチブロッキング剤が脱落することがあった。このように脱落したアンチブロッキング剤が他の部材に付着、転移等することで、他の部材の性能低下等の問題を引き起こすことがあった。例えば、上記のビルドアップフィルムの場合では、ポリオレフィンフィルムで形成される保護フィルムをビルドアップフィルム(粘着層)から剥離させると、ポリオレフィンフィルムに存在するアンチブロッキング剤が脱落し、粘着層に転移し得る。粘着層にアンチブロッキング剤が転移することで、粘着層の厚みが不均一になり、絶縁性能の低下を引き起こし得るという問題を有していた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、アンチブロッキング剤を含有せずともブロッキングを防止することができる延伸ポリオレフィンフィルム及びその製造方法並びにビルドアップフィルム用保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸し、かつ、少なくとも一方の面の表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)を1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)を0.04μm以上とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ポリオレフィン樹脂を含有する延伸ポリオレフィンフィルムであって、
MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸されており、
少なくとも一方の面の表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である、延伸ポリオレフィンフィルム。
項2
前記ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂を含有する、項1に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
項3
無機系のアンチブロッキング剤を含有しない、項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
項4
MD方向及びTD方向の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムである、項1~3のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
項5
ビルドアップフィルムの保護フィルムとして用いられる、項1~4のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィルム。
項6
項5に記載の延伸ポリオレフィンフィルムを備える、ビルドアップフィルム用保護フィルム。
項7
項1~6のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法であって、
前記ポリオレフィン樹脂を含む原反シートを、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸処理を行う工程を備え、
前記延伸処理における原反シートの予熱温度が155℃以上である、延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、アンチブロッキング剤を含有せずともブロッキングを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.延伸ポリオレフィンフィルム
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸されており、少なくとも一方の面の表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である。
【0013】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、アンチブロッキング剤を含有せずともブロッキングを防止することができる。一般的に延伸フィルムは、フラットに形成されやすいので、延伸フィルムの面どうしのブロッキングが生じやすい。これを防止すべく、延伸フィルムにはアンチブロッキング剤を含有させることが必要とされている。この点、本発明では、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸された延伸ポリオレフィンフィルムにおいて、表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)を1.0以下、かつ、表面粗さ測定で計測されるコア部の高さを0.04μm以上に制御している。斯かる制御を行ったことで、アンチブロッキング剤を含有せずともブロッキングを防止することができる延伸ポリオレフィンフィルムを提供できることを本発明者らが初めて見出し、本発明の完成に至っている。
【0014】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、種々の用途に適用することができ、とりわけアンチブロッキング剤の脱落が問題となっていた分野に広く適用することができる。中でも、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、ビルドアップフィルムの保護フィルムとして特に好適である。
【0015】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン樹脂を含有する。具体的には、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン樹脂を主成分とする樹脂で形成された延伸フィルムである。
【0016】
ポリオレフィン樹脂は、例えば、延伸フィルムを製造するために用いられるポリオレフィン樹脂を広く挙げることができる。例えば、ポリオレフィン樹脂として、オレフィン化合物を重合してなるポリマーを挙げることができる。斯かるオレフィン化合物としては、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数3~6のオレフィン化合物を挙げることができる。具体的なポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(1-ブテン)樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリ(1-ペンテン)樹脂、ポリ(4-メチルペンテン-1)樹脂が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂は、エチレン-プロピレン共重合体等、異なるオレフィン化合物に由来する構造単位を2種以上含む共重合体であってもよい。
【0017】
中でも、延伸ポリオレフィンフィルムのスキューネス(Ssk)の値及びコア部の高さ(Sk)の値が所望の範囲に調整されやすく、ブロッキングがより防止されやすい点で、ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエチレン樹脂を含むことがより好ましい。ポリエチレン樹脂の中でも、好ましくは低密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンであり、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン、いわゆるLLDPEである。
【0018】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムに含まれるポリオレフィン樹脂は、本発明の効果が阻害されない限り、他の樹脂を含有することもできる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂は、前記ポリエチレン樹脂を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましく、99質量%以上含有することが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂のみからなるものであってもよい。
【0020】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、無機系のアンチブロッキング剤を含有しなくてもよい。上述のように、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、スキューネス(Ssk)の値及びコア部の高さ(Sk)の値が適正範囲に調整されているので、ブロッキングの発生が抑制されるからである。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが無機系アンチブロッキング剤を含有する場合、その含有割合は延伸ポリオレフィンフィルムの全質量に対して5質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%、すなわち、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが無機系のアンチブロッキング剤を含有しないことである。
【0021】
なお、本発明の延伸ポリオレフィンフィルム、本発明の効果が阻害されない限り、有機系のアンチブロッキング剤の含有することは可能である。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが有機系アンチブロッキング剤を含有する場合、その含有割合は延伸ポリオレフィンフィルムの全質量に対して5質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%、すなわち、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、有機系のアンチブロッキング剤も含有しないことである。
【0022】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、本発明の効果が阻害されない限り、前記ポリオレフィン樹脂以外の他の成分(アンチブロッキング剤を除く)を含有することができる。他の成分として、例えば、公知の延伸フィルムに含まれている添加剤を広く挙げることができ、熱安定剤、酸化防止剤、有機及び無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤、防曇剤、加水分解抑制剤等が挙げられる。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが前記他の成分(アンチブロッキング剤を除く)を含有する場合、その含有割合は、延伸ポリオレフィンフィルムの全質量に対して10量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%である。
【0023】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、前述のように、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸されてなる。好ましくは、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、少なくともTD方向に延伸されていることが好ましい。
【0024】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、一軸方向に延伸されてなる一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸方向に延伸されてなる二軸延伸フィルムであってもよい。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが二軸延伸フィルムである場合、MD方向及びTD方向の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0025】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは単層構造とすることができ、あるいは、多層構造をすることができる。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが多層構造である場合は、各層は前述のポリオレフィン樹脂を含む。この場合において、各層に含まれるポリオレフィン樹脂は互いに同一であってもよいし、少なくとも一つ又は全部が異なるものであってもよい。
【0026】
上記の多層構造を有する延伸ポリオレフィンフィルムの具体例として、基材層と、その両面にそれぞれ形成された表層とを有する延伸ポリオレフィンフィルムが挙げられる。基材層及び両面に形成された表層はいずれもポリオレフィン樹脂を含有する層である。各層に含まれるポリオレフィン樹脂は互いに同一であってもよいし、少なくとも一つ又は全部が異なるものであってもよい。多層構造を有する延伸ポリオレフィンフィルムの具体例を挙げるとすれば、すべての層がLLDPEである延伸ポリオレフィンフィルム、基材層がHDPEで両面の表層がLLDPEである延伸ポリオレフィンフィルム、基材層がポリプロピレンで両面の表層がLLDPEである延伸ポリオレフィンフィルムである。基材層と表層との間には何らの層が形成されていないことが好ましい。
【0027】
基材層と表層の厚みの比は特に限定されず、例えば、表層の厚みを3としたとき、基材層の厚みは4~50であることが好ましく、7~40であることがより好ましく、10~30であることがさらに好ましい。基材層の両面に形成されている表層の厚みは同一であることが好ましい。
【0028】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが多層構造である場合、斯かる多層構造の好ましい一態様として、基材層がポリエチレン樹脂、該基材層の両面に設けられた一対の表層もポリエチレン樹脂で形成されている延伸ポリオレフィンフィルムが挙げられる。この場合において、すべての層が同種のLLDPEで形成されていることが特に好ましい。
【0029】
ここで、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの面のうち、一方の面を表面A、他方の面を表面Bと表記する。なお、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムが前述のように基材層及び該基材層の両面それぞれに表層を有してなる場合は、一方の表層の露出面が表面A、他方の表層の露出面が表面Bである。
【0030】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、表面A及び表面Bのうちの少なくとも一方が、表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、表面粗さ測定で計測されるコア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である。これにより、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、アンチブロッキング剤を含まずとも、フィルムどうしのブロッキングが抑制される。
【0031】
スキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)は、ISO 25178で規定される面粗さの指標の一つであり、これらはいずれも市販の表面粗さ測定機にて測定することが可能である。特に本発明では、(株)菱化システム社製の光干渉式非接触表面形状表面粗さ測定機「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を用いて延伸ポリオレフィンフィルムのスキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を測定することができる。
【0032】
前記スキューネス(Ssk)の値は、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。前記スキューネス(Ssk)の値は、0より小さくてもよい。前記スキューネス(Ssk)の値の下限は特に限定されず、例えば、-1.5以上であることが好ましく、-1.1以上であることがより好ましい。
【0033】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、表面A及び表面Bの両方の面が1.0以下のスキューネス(Ssk)値を有することが好ましい。
【0034】
前記コア部の高さ(Sk)の値は、フィルムどうしのブロッキングがさらに抑制されやすくなる点で、0.05μm以上であることが好ましく、0.06μm以上であることがさらに好ましい。前記コア部の高さ(Sk)の値の上限は特に限定されず、例えば、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.15μm以下であることが特に好ましい。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムにおいて、0.04μm以上のコア部の高さ(Sk)を有するのは、表面A及び表面Bの一方の面のみであってもよく、両面であってもよい。
【0035】
以上より、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、表面A及び表面Bのうちの少なくとも一方の面が、表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上であり、中でも、表面A及び表面Bの両方の面が1.0以下のスキューネス(Ssk)値を有し、かつ、少なくとも片面におけるコア部の高さ(Sk)が0.04μm以上であることが好ましい態様である。
【0036】
スキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を調節する方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。好ましくは、後記するように、延伸ポリオレフィンフィルムの製造工程において、原反シートを延伸処理する際に行われる予熱処理の温度、及び、その後に行われる緩和処理の温度を調節することで、スキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を調節することができる。これについては延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法の項で詳述する。
【0037】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの突出山部高さ(Spk)の値は特に限定されず、例えば、表面A及び表面Bのうちの少なくとも一方の面の突出山部高さ(Spk)が0.015μm以上とすることができる。特に、スキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上を満たす面が、0.015μm以上の突出山部高さ(Spk)を有することが好ましい。突出山部高さ(Spk)の上限は特に限定されず、例えば、0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下である。
【0038】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの突出谷部高さ(Svk)の値は特に限定されず、例えば、表面A及び表面Bのうちの少なくとも一方の面の突出山部高さ(Spk)が0.015μm以上とすることができる。特に、スキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上を満たす面が0.015μm以上の突出谷部高さ(Svk)を有することが好ましい。突出谷部高さ(Svk)の上限は特に限定されず、例えば、0.1μm以下、好ましくは0.08μm以下である。
【0039】
なお、突出山部高さ(Spk)及び突出谷部高さ(Svk)も、ISO 25178で規定される面粗さの指標の一つであって、例えば、上述の市販の表面粗さ測定機にて測定することが可能である。
【0040】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの厚さは特に限定されず、目的の用途に応じて所望の厚さとすることができる。例えば、延伸ポリオレフィンフィルムがビルドアップフィルムの保護フィルムとして用いられる場合、延伸ポリオレフィンフィルムの厚さは、5~100μmとすることができ、10~50μmであることが好ましく、15~30μmであることがより好ましい。なお、延伸ポリオレフィンフィルムが前述の多層構造である場合は、延伸ポリオレフィンフィルムの厚さとは、各層の厚さを合計した値を意味する。
【0041】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、アンチブロッキング剤を含まずともブロッキングが起こりにくいものであることから、種々の用途に適用することができ、とりわけアンチブロッキング剤の脱落が問題となっていた分野に広く適用することができる。中でも、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、ビルドアップフィルムの保護フィルムとして用いられることが特に好ましい。すなわち、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムは、ビルドアップフィルム用保護フィルムとして特に好適に使用することができる。
【0042】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムを保護フィルムとして適用できるビルドアップフィルムの種類は特に限定されず、例えば、公知のビルドアップフィルムに広く適用することができる。斯かる保護フィルムは、ビルドアップフィルムの粘着層を保護するために設けられる。
【0043】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムを保護フィルムとして備えるビルドアップフィルムは、保護フィルムを剥離してもアンチブロッキング剤の脱落による粘着層への転移等が起こらない。このため、ビルドアップフィルムは、絶縁性能の低下を引き起こしにくく、ビルドアップ工法に適したものとなる。
【0044】
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの剥離力は、時に限定されない。例えば、被着体に対する密着性を高めやすい観点からスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である面の剥離力は、好ましくは0.005N/25mm以上、より好ましくは0.01N/25mm以上、さらに好ましくは0.02N/25mm以上である。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの表面A及び表面BにLLDPEが含まれる場合、前記剥離力は、好ましくは1.2N/25mm以下であり、より好ましくは0.9N/25mm以下であり、さらに好ましくは0.6N/25mm以下である。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの表面A及び表面BにHDPEが含まれる場合、前記剥離力は、好ましくは4N/25mm以下であり、より好ましくは3N/25mm以下である。本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの表面A及び表面Bにポリプロピレンが含まれる場合、前記剥離力は、好ましくは6N/25mm以下であり、より好ましくは5N/25mm以下である。
【0045】
2.延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法
本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の延伸フィルムと同様の方法を広く採用することができる。具体的には、前記ポリオレフィン樹脂を含む原反シートを、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸処理を行う工程を備える製造方法により、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムを製造することができる。
【0046】
前記原反シートを製造する方法は特に限定されず、公知の方法と同様の方法で原反シートを得ることができる。具体的には、前記ポリオレフィン樹脂を含む原料を、押出機を用いて押出成形することで、原反シートを形成することができる。
【0047】
多層構造を有する延伸ポリオレフィンフィルムを製造する場合にあっても、斯かるフィルムを製造するための原反シートは公知の方法で製造することができる。例えば、基材層の両面に表層を有してなる延伸ポリオレフィンフィルムを製造する場合、基材層を形成するためのポリオレフィン樹脂と、表層を形成するためのポリオレフィン樹脂とを用いて積層構造を有する原反シートを形成できる。積層構造を有する原反シートは、例えば、共押出法、ラミネート法、ヒートシール法等を用いることができる。前記共押出法としては、溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型、例えばマルチマニホールドダイの内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法等が挙げられる。例えばダイ内積層法の場合には、3層マルチマニホールドダイ等の多層ダイを用いることができる。ポリオレフィン樹脂から形成された原反シートは、冷却ドラムで冷却された後、巻き取られる。
【0048】
原反シートは、適宜の条件で延伸処理され、これにより目的の延伸ポリオレフィンフィルムを得ることができる。延伸処理の方法は特に限定されず、公知の方法を広く採用することができる。例えば、延伸方法としては、周速差を設けたロール間で延伸する方法、テンター法、チューブラー法等公知の方法を用いることができる。
【0049】
延伸方向は、一軸延伸又は二軸延伸とすることができる。延伸方向は、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向であることが好ましい。延伸ポリオレフィンフィルムが一軸延伸フィルムである場合には、原反シートをTD方向に延伸することがより好ましく、二軸延伸フィルムである場合には、原反シートをMD方向及びTD方向それぞれに延伸することが好ましい。
【0050】
一軸延伸の場合は、原反シートをMD方向又はTD方向に延伸する。この場合において、原反シートはあらかじめ予熱処理を行う。予熱処理の温度は、155℃以上とすることが好ましい。延伸処理における原反シートの予熱温度が155℃以上であることで、得られる延伸ポリオレフィンフィルムは、前述の所望のスキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を満たすことが容易なる。とりわけ、一軸延伸フィルムである場合は、原反シートをTD方向に延伸することが好ましく、かつ、原反シートの予熱処理の温度を155℃以上とすることが好ましい。一軸延伸におけるより好ましい予熱処理の温度は160℃以上、さらに好ましい予熱処理の温度は165℃以上である。予熱処理の温度は特に制限されないが、予熱温度を抑えることでTD方向の厚み精度が増すという観点から、二軸延伸での予熱処理の温度は190℃以下とすることが好ましく、185℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが更に好ましい。
【0051】
原反シートの予熱処理の方法としては、公知の方法を広く採用することができ、具体的には、テンターにて所定の温度に加熱したオーブンの熱風によって、原反シートを所定の温度にて予熱処理する方法、金属ロール間に設けられたIRヒーターによって、所定の温度にて予熱処理する方法等が挙げられる。この予熱処理の後、原反シートを延伸ゾーンにて延伸処理を行う。延伸ゾーンの温度は限定されず、例えば、110~130℃である。
【0052】
一軸延伸による原反シートの延伸倍率は特に限定されず、例えば、延伸倍率を1.1~15倍とすることができる。
【0053】
原反シートを一軸延伸した後は、得られた延伸フィルムの緩和処理を行う。緩和処理方法は特に限定されず、公知の緩和処理の方法を広く採用することができる。一軸延伸において、緩和処理の温度は、例えば、100℃以上とすることができ、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。これにより、得られる一軸延伸ポリオレフィンフィルムは、前述の所望のスキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を満たすことがより容易になる。ただし、前述の予熱処理の温度が160℃以下の場合は、緩和処理の温度は、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがよりさらに好ましく、165℃以上であることが特に好ましい。
【0054】
緩和処理の方法としては、公知の方法を広く採用することができ、具体的には、テンターにて所定の温度に加熱したオーブンの熱風によって、延伸フィルムを緩和処理することができる。
【0055】
一方、延伸処理が前述の二軸延伸の場合、二軸延伸の方法としては、例えば、逐次延伸及び同時延伸がいずれも適用可能である。これらのうち所望の延伸フィルムが得られ易い点から、テンター法による同時二軸延伸法、テンター法による逐次二軸延伸法、及び周速差を設けたロール間で縦(流れ、MD)延伸した後テンター法にて横(巾、TD)延伸する逐次二軸延伸法が好ましい。
【0056】
二軸延伸の場合は、原反シートをMD方向及びTD方向に延伸する。例えば、最初にMD方向、次いでTD方向に延伸する。
【0057】
二軸延伸の場合にあっても、原反シートはあらかじめ予熱処理を行う。二軸延伸における予熱処理の温度は、155℃以上とすることが好ましい。二軸延伸処理における原反シートの予熱温度が155℃以上であることにより、得られる延伸ポリオレフィンフィルムは、前述の所望のスキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を満たすことが容易になる。二軸延伸におけるMD方向に延伸する際の予熱処理の温度は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。予熱処理の温度は特に制限されないが、予熱温度を抑えることで金属ロールへの粘着を抑制できるという観点から、二軸延伸でのMD延伸における予熱処理の温度は120℃以下とすることが好ましく、115℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが更に好ましい。TD方向に延伸する際の予熱処理の温度は155℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、165℃以上であることがさらに好ましい。予熱処理の温度は特に制限されないが、予熱温度を抑えることでTD方向の厚み精度が増すという観点から、二軸延伸での予熱処理の温度は190℃以下とすることが好ましく、185℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることが更に好ましい。
【0058】
二軸延伸において、原反シートの予熱処理の方法も公知の方法を広く採用することができ、具体的には、テンターにて所定の温度に加熱したオーブンの熱風によって、原反シートを所定の温度にて予熱処理する方法、金属ロール間に設けられたIRヒーターによって、所定の温度にて予熱処理する方法等が挙げられる。この予熱処理の後、原反シートを延伸ゾーンにて延伸処理を行う。延伸ゾーンの温度は限定されず、例えば、110~130℃である。
【0059】
二軸延伸による原反シートの延伸倍率が特に限定されず、例えば、MD方向の延伸倍率を2~10倍とすることができ、また、TD方向の延伸倍率を2~15倍とすることができる。
【0060】
原反シートを二軸延伸した後は、得られた延伸フィルムの緩和処理を行う。緩和処理方法は特に限定されず、公知の緩和処理の方法を広く採用することができる。緩和処理は、MD方向に延伸した後、及び、TD方向に延伸した後のそれぞれにおいて実施する。
【0061】
二軸延伸における各方向に延伸した後の緩和処理の温度は、例えば、100℃以上とすることができ、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。これにより、得られる延伸ポリオレフィンフィルムは、前述の所望のスキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を満たすことがより容易になる。ただし、前述の予熱処理の温度が160℃以下の場合は、緩和処理の温度は、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがよりさらに好ましく、165℃以上であることが特に好ましい。
【0062】
緩和処理の方法としては、公知の方法を広く採用することができ、具体的には、テンターにて所定の温度に加熱したオーブンの熱風によって、延伸フィルムを緩和処理することができる。
【0063】
一軸延伸又は二軸延伸されて得られる延伸フィルムは、巻き取りが行われ、次いで、エージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。
【0064】
以上のように、本発明の延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法の好ましい態様は、前記ポリオレフィン樹脂を含む原反シートを、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸処理を行う工程を備え、前記延伸処理における原反シートの予熱温度が155℃以上であることである。これによって、得られる延伸ポリオレフィンフィルムは、前述の所望のスキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を容易に満たすことができる。中でも、原反シートに含まれるすべてのポリオレフィン樹脂がLLDPEである場合は、スキューネス(Ssk)及びコア部の高さ(Sk)を所望の範囲に調節することが特に容易である。
【0065】
上記製造方法で得られた延伸ポリオレフィンフィルムにあっては、その製造工程において、前述のように原反シートは冷却のために冷却ドラムに接触する。このとき冷却ドラムに接触した面とは逆側の面が、「スキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上」を満たすものとなる。例えば、延伸ポリオレフィンフィルムの表面Bが冷却ドラムに接触していた場合は、逆側の面である表面Aが「スキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上」を満たすものとなる。もちろん表面Aと共に表面B(すなわち、冷却ドラムに接した面)もスキューネス(Ssk)が1.0以下を満たすこともあり、また、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上を満たすこともある。
【0066】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0068】
実施例及び比較例で用いたポリオレフィン樹脂は、以下の通りである。
・PE-1:ダウ・ケミカル社製「TF80」(LLDPE)
・PE-2:SABIC社製「BX202」(LLDPE)
・PE-3:株式会社LG化学製「LO4904P」(HDPE)
・PP-1:株式会社プライムポリマー製「F-300SP」
【0069】
(実施例1)
後掲の表1に示すように、基材層の両面に表層A及び表層Bがそれぞれ配置されてなる延伸ポリオレフィンフィルムを製造した。まず、基材層を形成するためのポリオレフィン樹脂として100質量部のPE-1(以下、ペレット1と表記する)と、表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂として100質量部のPE-1(以下、ペレット2と表記する)とを準備した。ペレット1を、一軸スクリュータイプ押出機aにホッパーから投入し、また、ペレット2を、押出機aとは別の一軸スクリュータイプ押出機bにホッパーから投入した。上記ペレット1及び上記ペレット2をそれぞれ溶融させ、これらを3層マルチマニホールドダイ内部にて3層構成に積層し、次いで、冷却ドラム上にエアナイフを用い空気圧で押しつけながら冷却固化した。これにより、ペレット1由来のPE-1の層の両面に、ペレット2由来のPE-2の層が直接形成されてなる原反シートを得た。
【0070】
次いで、テンター式逐次二軸延伸機を用いて原反シートの延伸処理を行った。斯かる延伸処理において、MD方向へ延伸する際の予熱温度は100℃、また、TD方向へ延伸する際の予熱温度は165℃、TD方向へ延伸した後の緩和温度は120℃とした。具体的には、原反シートを縦延伸ロールにて100℃で予熱し、MD方向へ延伸倍率6倍で延伸した。この延伸された原反シートをテンターにて165℃のオーブンで予熱処理してから、125℃の延伸ゾーンにてTD方向へ延伸倍率7.8倍で延伸した。これにより得られた延伸フィルムを120℃にてTD方向に10%緩和処理し、厚さ20μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムは、表層A、基材層及び表層Bがこの順に積層され、厚みの比が3:14:3(表層A:基材層:表層B)である延伸ポリオレフィンフィルムであった。斯かる延伸ポリオレフィンフィルムにおいて、表層Bは、冷却ドラムに直接接触させた層であり、表層Aは、冷却ドラムに接触させなかった層である。
【0071】
(実施例2)
TD方向へ延伸する際の予熱温度を175℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0072】
(実施例3)
基材層を形成するためのポリオレフィン樹脂をPE-2に、表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂をPE-2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0073】
(実施例4)
基材層を形成するためのポリオレフィン樹脂をPE-2に、表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂をPE-2に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0074】
(実施例5)
表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂をPE-2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0075】
(実施例6)
MD方向へ延伸倍率5倍に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0076】
(実施例7)
MD方向へ延伸倍率5倍に変更し、TD方向へ延伸倍率10倍に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0077】
(実施例8)
後掲の表1に示すように、基材層の両面に表層A及び表層Bがそれぞれ配置されてなる延伸ポリオレフィンフィルムを製造した。まず、基材層を形成するためのポリオレフィン樹脂として100質量部のPE-1(以下、ペレット1と表記する)と、表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂として100質量部のPE-1(以下、ペレット2と表記する)とを準備した。ペレット1を、一軸スクリュータイプ押出機aにホッパーから投入し、また、ペレット2を、押出機aとは別の一軸スクリュータイプ押出機bにホッパーから投入した。上記ペレット1及び上記ペレット2をそれぞれ溶融させ、これらを3層マルチマニホールドダイ内部にて3層構成に積層し、次いで、冷却ドラム上にエアナイフを用い空気圧で押しつけながら冷却固化した。これにより、ペレット1由来のPE-1の層の両面に、ペレット2由来のPE-2の層が直接形成されてなる原反シートを得た。
【0078】
次いで、一軸延伸機を用いて原反シートの延伸処理を行った。斯かる延伸処理では、TD方向へのみ延伸し、延伸する際の予熱温度は165℃、延伸温度は125℃、延伸した後の緩和温度は120℃とした。具体的には、テンターにて原反シートを165℃のオーブンで予熱処理してから、125℃の延伸ゾーンにてTD方向へ延伸倍率10倍で延伸した。これにより得られた延伸フィルムを120℃にてTD方向に10%緩和処理し、厚さ20μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムは、表層A、基材層及び表層Bがこの順に積層され、厚みの比が3:14:3(表層A:基材層:表層B)である延伸ポリオレフィンフィルムであった。
【0079】
(実施例9)
TD方向へ延伸する際の予熱温度を155℃に変更し、TD方向へ延伸した後の緩和温度を165℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0080】
(実施例10)
表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂をPE-3に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0081】
(実施例11)
表層A及び表層Bを形成するためのポリオレフィン樹脂をPP-1に変更し、TD方向へ延伸する際の予熱温度を185℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0082】
(比較例1)
TD方向へ延伸する際の予熱温度を155℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0083】
(比較例2)
TD方向へ延伸する際の予熱温度を155℃に変更したこと以外は実施例3と同様の方法で延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
【0084】
(比較例3)
ポリオレフィン樹脂としてPE-1を99.7質量部と、アンチブロッキング剤(AB-1)として0.3質量部の「サイリシア430」(富士シリシア化学株社製)とを混合し、ペレット3を調製した。このペレットを用いて原反シートを得た。次いで、テンター式逐次二軸延伸機を用いて原反シートの延伸処理を行った。斯かる延伸処理において、MD方向へ延伸する際の予熱温度は100℃、TD方向へ延伸する際の予熱温度は155℃、TD延伸ゾーンの温度は125℃、TD方向へ延伸した後の緩和温度は120℃とした。具体的には、原反シートを縦延伸ロールにて100℃で予熱し、MD方向へ延伸倍率6倍で延伸した。この延伸された原反シートをテンターにて原反シートを155℃のオーブンで予熱処理してから、125℃のオーブンにてTD方向へ延伸倍率7.8倍で延伸した。これにより得られた延伸フィルムを120℃にてTD方向に10%緩和処理し、厚さ20μmの延伸フィルムを得た。
【0085】
(表面粗さ測定)
表面粗さ測定には、光干渉式非接触表面形状測定機として(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を使用した。測定用サンプルとして、実施例及び比較例の各フィルムを、それぞれ20cm四方程度の任意の大きさに切り出し、シワがなくなるようにシワを十分に伸ばした状態で、静電密着板などを利用して測定ステージにセットした。まず、計測にはWAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、10倍対物レンズを用いて、一視野あたり(470μm×353μm)の計測を行った。この操作を対象試料フィルムのスキン層の表面の流れ方向・幅方向ともに中央となる箇所から流れ方向に1cm間隔で10箇所について行った。次に、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS-Viewer」のプラグイン機能「ベアリング」にある、「ISOパラメータ」を用いて解析を行い、Ssk、Sk(μm)、Spk(μm)、Svk(μm)を求め、上記10箇所で得られた各値の平均値を算出した。
【0086】
(アンチブロッキング剤(AB剤)の脱落)
前記表面粗さ測定において、AB剤のサイズに応じた凸形状を観測することでAB剤の脱落の有無を評価した。具体的には、AB剤の脱落した部分は同等のサイズの凹みとなるので、この凹みを目印として凸形状部分を観測した。凸形状部分を最大で10箇所を確認し、少なくとも一方の面で1点以上の凸形状部分を観測できた場合は×、観測できなかった場合は〇とした。
【0087】
(耐ブロッキング性の評価)
延伸フィルムを5×10cmのサイズに切りだし、フィルムの表裏面を重ね合わせ、1kg/cm2の荷重を加えて30℃24時間静置した。その後、重ね合わせたフィルム片を持ち、せん断方向にスライドさせ、その際の負荷で耐ブロッキング性を下記基準で評価した。
◎;容易に剥がれる。
〇;抵抗はあるが剥がれる。
×;剥がれない。
【0088】
(剥離力の評価)
剥離性フィルムの表面層側のフィルム表面に、幅50mm×長さ150mmの粘着テープ(日東電工株式会社製NO.31Bテープ、アクリル系粘着剤)を、2kgのローラーを2往復させることにより貼付し、積層体を得た。なお、延伸フィルムが、スキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である面を有する場合は、その面に粘着テープを貼り合わせた。得られた積層体を、温度70℃、湿度50%の環境下で20時間静置した後、25mm幅に切り出し、これを測定試料とした。当該測定試料を引っ張り試験機(ミネベア株式会社製万能引張試験機「テクノグラフTGI-1kN」)を用いて50mm/分の速度で180°剥離を行い、その際の剥離力を測定した。
【0089】
(評価結果)
表1には、各実施例及び比較例で得たフィルムの作製条件と、評価結果を示している。表1において、表層Aは、延伸ポリオレフィンフィルムの製造において延伸処理時に縦延伸ロール及び横延伸ロールのいずれにも接触させなかった層であり、表層Bは、縦延伸ロール及び横延伸ロールに直接接触させた層である。表層Aは前述の表面A、表層Bは前述の表面Bを有する層である。
【0090】
【0091】
各実施例で得られた延伸ポリオレフィンフィルムは、少なくとも一方の面(特に予熱処理においてロールに接した面とは逆側の面)の表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上であったことが表1からわかる。また、各実施例で得られた延伸ポリオレフィンフィルムは、ブロッキングが発生しないものであった。これに対し、比較例1及び2で得られた延伸ポリオレフィンフィルムは、少なくとも一方の面スキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上を満たさないものであるため、ブロッキングの発生が顕著であった。比較例3はブロッキングの発生が起こらないものの、アンチブロッキング剤(AB剤)を含むことから、フィルムからのアンチブロッキング剤の脱落が見られた。
【0092】
以上より、実施例で得られた延伸ポリオレフィンフィルムは、所定のスキューネス(Ssk)の値、かつ、コア部の高さ(Sk)の値を有するものであることから、アンチブロッキング剤を含有せずともブロッキングを防止することができるものであることが実証された。
【要約】
【課題】アンチブロッキング剤を含有せずともブロッキングを防止することができる延伸ポリオレフィンフィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、ポリオレフィン樹脂を含有する延伸ポリオレフィンフィルムであって、MD方向及びTD方向の少なくとも一軸方向に延伸されており、少なくとも一方の面の表面粗さ測定で計測されるスキューネス(Ssk)が1.0以下、かつ、コア部の高さ(Sk)が0.04μm以上である。
【選択図】なし