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特許7609292エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/56 20060101AFI20241224BHJP
   C08G 59/54 20060101ALI20241224BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20241224BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C08G59/56
C08G59/54
C08J5/24 CFC
C08L63/00 A
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023550595
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2022000151
(87)【国際公開番号】W WO2022208165
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】63/168,738
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/168,717
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/318,249
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】古川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】釜江 俊也
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/020045(WO,A1)
【文献】特開2009-062447(JP,A)
【文献】特開2001-031738(JP,A)
【文献】特開2007-291236(JP,A)
【文献】特開2023-113285(JP,A)
【文献】特開2020-152861(JP,A)
【文献】特表2018-502753(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117465(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/022045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/56
C08G 59/54
C08J 5/24
C08L 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物であって、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]前記第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含み、前記成分[B-1]が、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含み、前記成分[B-2]が、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、及びイソフタル酸ジヒドラジドから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含み、
前記成分[C]が、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、及び、アンモニウム塩から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含み、
前記エポキシ樹脂組成物は、(I)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (I)
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
前記外挿開始温度T及びTは、前記混合物中の[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である前記T及びTの混合物の昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される、エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物が、さらに(II)を満たし、
5.0≦T-T (II)
式中、
は、[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
前記外挿開始温度T及びTは、前記混合物中の[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である前記T及びTの混合物の昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂組成物であって、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]前記第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含み、
[B-1]は、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含み、
[B-2]は、少なくとも1つの有機酸ヒドラジド化合物を含み、
[C]は、[C-1]少なくとも1つの有機ホスフィン化合物、
を含み、前記成分[C-1]は、前記成分[A]と少なくとも1つの硬化剤との反応を促進し、
前記成分[A]は、100質量部数の量で存在し、前記成分[B-2]は、1~20質量部数の量で存在し、前記成分[C-1]は、0.1~10質量部数の量で存在し、
前記成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、前記成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、0.7~1.3であり、
前記エポキシ樹脂組成物は、(I)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (I)
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
前記外挿開始温度T及びTは、前記混合物中の[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である前記T及びTの混合物の昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される、エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂組成物で含浸された強化繊維束を含むプリプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物は、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]前記第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含み、
[B-1]は、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含み、
[B-2]は、少なくとも1つの芳香環構造を有する有機酸ヒドラジド化合物を含み、
[C]は、[C-1]少なくとも1つのホスホニウム塩、
を含み、前記成分[C-1]は、前記成分[A]と少なくとも1つの硬化剤との反応を促進し、
前記成分[A]は、100質量部数の量で存在し、前記成分[B-2]は、1~20質量部数の量で存在し、前記成分[C-1]は、0.1~10質量部数の量で存在し、
前記成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、前記成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、0.7~1.3であり、
前記エポキシ樹脂組成物は、(I)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (I)
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
前記外挿開始温度T及びTは、前記混合物中の[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である前記T及びTの混合物の昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される、エポキシ樹脂組成物で含浸された強化繊維束を含むプリプレグ。
【請求項5】
エポキシ樹脂組成物の硬化物品を含む繊維強化複合材料であって、前記エポキシ樹脂組成物は、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]前記第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含み、
[B-1]は、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含み、
[B-2]は、少なくとも1つの芳香環構造を有する有機酸ヒドラジド化合物を含み、
[C]は、[C-1]少なくとも1つのホスホニウム塩、
を含み、前記成分[C-1]は、前記成分[A]と少なくとも1つの硬化剤との反応を促進し、
前記成分[A]は、100質量部数の量で存在し、前記成分[B-2]は、1~20質量部数の量で存在し、前記成分[C-1]は、0.1~10質量部数の量で存在し、
前記成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、前記成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、0.7~1.3であり、
前記エポキシ樹脂組成物は、(I)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (I)
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
前記外挿開始温度T及びTは、前記混合物中の[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である前記T及びTの混合物の昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される、
エポキシ樹脂組成物の硬化物品を含む繊維強化複合材料。
【請求項6】
80℃で4時間保持した後に測定した前記エポキシ樹脂組成物の粘度(V)の、80℃で1分間保持した後に測定した前記エポキシ樹脂組成物の粘度(V)に対する比(V/V)が、2.5以下である、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記粘度の比(V/V)が、2.0以下である、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記成分[A]が、3つ以上のエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記成分[A]が、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、メタ-又はパラ-アミノフェノールエポキシ樹脂、及びビスナフタレンエポキシ樹脂から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記成分[A]が、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、メタ-又はパラ-アミノフェノールエポキシ樹脂、及びビスナフタレンエポキシ樹脂から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項4に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記成分[B-1]が、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記成分[B-1]が、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを含む、請求項4または10に記載のプリプレグ。
【請求項13】
前記成分[B-1]のすべての活性水素の、前記成分[B-2]のすべての活性水素に対する当量比が、1~10である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記成分[C]が、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、及びテトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートから成る群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
前記成分[C]が、前記成分[A]の100質量部数に対して0.1~10質量部数の量で存在する、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
前記成分[A]が、100質量部数の量で存在し、前記成分[B-2]が、1~20質量部数の量で存在し、前記成分[C]が、0.1~10質量部数の量で存在し、前記成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、前記成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が、0.7~1.3である、請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
前記成分[C-1]が、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって測定した場合、220℃以下の融点を有する、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
前記エポキシ樹脂組成物が、(V)及び(VI)を満たし、
5.0>|T-T| (V)、及び
2.0>|T1p-T5p| (VI)、
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
1pは、[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、
5pは、[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、
前記外挿開始温度T及びT、並びに前記ピーク温度T1p及びT5pは、前記混合物中の[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C-1]対[A]の質量比が1:100である上述の混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項19】
前記成分[C-1]が、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、及びトリフェニルホスフィンオキシドら成る群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項20】
前記成分[C-1]が、トリフェニルホスフィントリフェニルボランである、請求項4または10に記載のプリプレグ。
【請求項21】
少なくとも1つの熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項22】
前記熱可塑性樹脂が、前記成分[A]の100質量部数に対して1~30質量部数の量で存在する、請求項21に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項23】
請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物で含浸された強化繊維束を含むプリプレグ。
【請求項24】
請求項4または10に記載のプリプレグを硬化することによって得られる繊維強化複合材料。
【請求項25】
請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含む混合物を硬化することによって得られるエポキシ樹脂硬化物品を含む繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年3月9日に出願された米国仮特許出願第63/318,249号、2021年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/168,738号、及び2021年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/168,717号の優先権を主張するものであり、これらの全内容は、参照によりすべて本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、非常に優れた潜在性と組成物を短時間で硬化可能なものとする非常に優れた硬化性とを兼ね備えた、繊維強化複合材料に用いることができるエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸することによって形成されるプリプレグ、及びエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含む繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素繊維又はガラス繊維などの強化繊維とエポキシ樹脂又はフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂とを含有する複合材料は、航空宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木及び建築、並びにスポーツ用品などの分野に用途が見出されており、なぜなら、複合材料は、軽量でありながら、強度及び剛直性などの非常に優れた力学特性、耐熱性、並びに耐食性を呈するからである。高い性能を必要とする用途の場合、連続強化繊維を含有する複合材料がよく選択される。強化繊維としては、炭素繊維が非常に優れた比強度及び比弾性率を呈する。マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、特に、炭素繊維と良好に接着するエポキシ樹脂が、その耐熱性、弾性率、耐化学薬品性、及び低硬化収縮のために多くの場合選択される。
【0004】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、酸無水物、及びイミダゾール誘導体が、組み合わされて用いられる場合が多い。特に、高湿度条件下での耐熱性が求められる航空宇宙用途の場合、芳香族アミン化合物が、樹脂組成物中での非常に優れた潜在性及び硬化物中での耐熱性を呈することから望ましい。
【0005】
しかし、芳香族アミン化合物は、一般に、他の硬化剤と比較してエポキシ樹脂との反応性が低く、エポキシ樹脂組成物の成形時には、180℃近い高い硬化温度での長時間にわたる加熱が典型的には必要である。エポキシ樹脂組成物の硬化剤との反応性が低いと、望ましくないことには、長い成形時間に伴う高いエネルギーコストが生じる結果となる。
【0006】
対照的に、複合構造体が低温で硬化可能であることは、様々な利点をもたらす。1つの態様では、複合体を成形するために用いられるモールドなどのツールを、より高い硬化温度に耐えることができるより高価な材料ではなく、よりコストが低い低温材料から作製することができる。さらに、比較的低い温度での硬化は、望ましいことには、ボイドの形成を防止し得る。比較的低い温度での硬化はまた、上述の利点から、バキュームバッグのみの(vacuum bag-only)複合体加工においても好ましいものであり得る。したがって、エポキシ樹脂組成物の硬化を、低温、短時間で可能とする技術は、非常に価値があろう。しかし、複合体、接着剤、及び表面仕上げフィルムに使用するためのマトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂組成物であって、比較的低い温度で硬化することができるが、良好なポットライフ及び力学特性は依然として維持する、エポキシ樹脂組成物は、開発の途中である。
【0007】
エポキシ樹脂組成物の硬化を促進するために促進剤(触媒)を使用することは公知である。ジシアンジアミド、ウレア、イミダゾール、三フッ化ホウ素(BF)、アミン錯体、及び三塩化ホウ素(BCl)が、低温硬化剤及び/又は促進剤として用いられてきた。これらの硬化剤系の一部は、潜在性又は低反応性のいずれかのために、室温で比較的良好な安定性を呈するが(例:約1週間超のタックライフ)、それらはすべて、欠点を伴う。例えば、これらの硬化剤系の中には、望ましくないことには、得られる複合体の力学特性を低下させるものがある一方で、マトリックス樹脂の脆さを、望ましくないことには増加させ、そしてそれが複合体の靭性を低下させるというものもある。別の例では、マトリックス樹脂の弾性率が低下し、及び/又はマトリックス樹脂の吸湿性が増加し、これらは各々、得られる複合体の湿熱力学性能を低下させる。加えて、これらの硬化剤系の一部は、呈する反応性が高過ぎるため、望ましくないことには、マトリックス樹脂のポットライフを短くしてしまう。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0222461(A1)号には、エポキシ樹脂と、1又は複数の有機酸ヒドラジド化合物をヒドラジン系硬化剤として含有する1又は複数の硬化剤、及び1又は複数のアミン官能基を含有する1又は複数の硬化剤の二重硬化系と、を含むエポキシ樹脂組成物が記載されている。ヒドラジド-アミン硬化系は、エポキシ組成物に対して、アミン系硬化剤単独と比較して、より低い温度でのゲル化レベル又は硬化度の上昇を実現させることができる。
【0009】
同様に、米国特許出願公開第2017/0362427(A1)号には、エポキシ樹脂、芳香族アミン化合物、有機酸ヒドラジド化合物、及び熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が記載されている。この組成物は、良好な硬化性と共に潜在性を実現し、80℃で2時間保持した後のエポキシ樹脂組成物の粘度は、80℃での初期粘度よりも最大で2.0倍高い。
【0010】
国際公開第2019/219953(A1)号には、エポキシフェノール樹脂、カルボン酸ヒドラジド硬化剤、及びヒドロキシ置換ウロンを含む硬化性樹脂組成物が記載されているが、上記ヒドラジド、上記ウロン、及びヒドラジドとは異なる第二硬化剤の組み合わせは開示されていない。この組成物は、良好な硬化性と共に潜在性を実現し、80℃で2時間保持した後のエポキシ樹脂組成物の粘度は、80℃での初期粘度よりも最大で2.0倍高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明者らは、少なくとも1つの第一硬化剤、第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤、及び第二硬化剤とエポキシ樹脂との反応は促進するが第一硬化剤とエポキシ樹脂との反応は実質的に促進しない少なくとも1つの促進剤、の特定の組み合わせが、非常に優れた潜在性を、組成物を短時間で硬化可能なものとする非常に優れた硬化性と共に実現することを発見したものであり、これによって、組成物は、繊維強化複合材料、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸することによって形成されるプリプレグ、及びエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有する複合材料の製造にとって望ましいものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含むエポキシ樹脂組成物に関し、前記成分[B-1]が、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含み、前記成分[B-2]が、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、及びイソフタル酸ジヒドラジドから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含み、
前記成分[C]が、ホスフィン化合物ホスホニウム塩、及び、アンモニウム塩から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含み、
エポキシ樹脂組成物は、(I)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (I)、
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
外挿開始温度T及びTは、[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である上述の混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定(DSC)によって特定される。
【0013】
一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、さらに(II)を満たすものであり、
5.0≦T-T (II)
式中、
は、[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
外挿開始温度T及びTは、混合物中の[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100であるT及びTの混合物の昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される。
【0014】
一実施形態では、成分[B-2]は、少なくとも1つの有機酸ヒドラジド化合物を含む。
【0015】
一実施形態では、成分[C]は、有機ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、及びアンモニウム塩から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0016】
一実施形態では、成分[C]は、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、及びテトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネートから成る群より選択される少なくとも1つの化合物である。
【0017】
一実施形態では、成分[C]は、成分[A]の100質量部数に対して0.1~10質量部数の量で存在する。
【0018】
一実施形態では、成分[A]は、100質量部数の量で存在し、成分[B-2]は、1~20質量部数の量で存在し、成分[C]は、0.1~10質量部数の量で存在し、成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、0.7~1.3である。
【0019】
別の態様は、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含むエポキシ樹脂組成物に関し、
[B-1]は、少なくとも1つのアミン化合物を含み、
[B-2]は、少なくとも1つの有機酸ヒドラジド化合物を含み、
[C]は、
[C-1]少なくとも1つの有機ホスフィン化合物またはホスホニウム塩
を含み、
成分[C-1]は、成分[A]と少なくとも1つの硬化剤との反応を促進し、
成分[A]は、100質量部数の量で存在し、成分[B-2]は、1~20質量部数の量で存在し、成分[C-1]は、0.1~10質量部数の量で存在し、
成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、0.7~1.3である。
【0020】
一実施形態では、80℃で4時間保持した後に測定したエポキシ樹脂組成物の粘度(V)の、80℃で1分間保持した後に測定したエポキシ樹脂組成物の粘度(V)に対する比(V/V)は、2.0以下などの2.5以下である。
【0021】
一実施形態では、成分[A]は、3つ以上のエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。
【0022】
一実施形態では、成分[A]は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、メタ-又はパラ-アミノフェノールエポキシ樹脂、及びビスナフタレンエポキシ樹脂から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0023】
一実施形態では、成分[B-1]は、少なくとも1つのアミン化合物を含む。
【0024】
一実施形態では、成分[B-1]は、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含む。
【0025】
一実施形態では、成分[B-1]は、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを含む。
【0026】
一実施形態では、成分[B-2]は、少なくとも1つの芳香環構造を有する。
【0027】
一実施形態では、成分[B-2]は、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、及びイソフタル酸ジヒドラジドから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0028】
一実施形態では、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[B-2]のすべての活性水素に対する当量比は、1~10である。
【0029】
一実施形態では、成分[C-1]は、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって測定した場合、220℃以下の融点を有する。
【0030】
一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、(V)及び(VI)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (V)、及び
2.0>|T1p-T5p| (VI)、
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
1pは、[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、
5pは、[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、
外挿開始温度T及びT、並びにピーク温度T1p及びT5pは、混合物中の[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C-1]対[A]の質量比が1:100である上述の混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される。
【0031】
一実施形態では、成分[C-1]は、少なくとも1つの有機ホスフィン化合物を含む。
【0032】
一実施形態では、成分[C-1]は、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリフェニルホスフィントリフェニルボランから成る群より選択される少なくとも1つの化合物である。
【0033】
一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つの熱可塑性樹脂をさらに含む。
【0034】
一実施形態では、熱可塑性樹脂は、成分[A]の100質量部数に対して1~30質量部数の量で存在する。
【0035】
別の態様は、本明細書で開示されるエポキシ樹脂組成物で含浸された強化繊維束を含むプリプレグに関する。
【0036】
一実施形態では、繊維強化複合材料は、本明細書で開示されるプリプレグを硬化することによって得られる。
【0037】
別の実施形態では、繊維強化複合材料は、本明細書で開示されるエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含む混合物を硬化することによって得られるエポキシ樹脂硬化物品を含む。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる点でその全内容が参照により本明細書に援用される。
【0039】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1又は複数の(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法的対象を意味するために本明細書で用いられる。例えば、「重合体樹脂」とは、1つの重合体樹脂又は2つ以上の重合体樹脂を意味する。本明細書で引用される範囲はいずれも、境界値を含む。「実質的に」及び「約」の用語は、小さい変動を記載し、説明するために用いられる。例えば、それらは、量又は数量の記載した値からの相違が±5%以内であることを意味し得る。
【0040】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」の言及は、その実施形態と関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所に出現する「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」の句は、必ずしもすべて同じ実施形態を意味しているものではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1又は複数の実施形態において、適切ないかなる様式で組み合わされてもよい。
【0041】
特に断りのない場合、「室温」は、本明細書で用いられる場合、23℃の温度を意味する。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「繊維強化複合材料」の用語は、「繊維強化複合体」、「繊維強化重合体材料」、「繊維強化プラスチック材料」、及び「繊維強化プラスチック」の用語と交換可能に用いられ得る。
【0043】
本発明は、エポキシ樹脂組成物であって、それを繊維強化複合材料の製造に有用なものとする、非常に優れた潜在性と組成物を短時間で硬化可能なものとする非常に優れた硬化性とを兼ね備えた、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸することによって形成されるプリプレグ、及びエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含む強化複合材料に関する。
【0044】
本開示によると、繊維強化複合材料を短時間で提供する非常に優れた硬化性と共に非常に優れた潜在性を有するプリプレグを得ることができる。さらに、本開示のプリプレグを用いることにより、力学特性においていかなる著しい問題点も起こすことなく、このプリプレグを硬化することによって炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
【0045】
本開示のエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び炭素繊維強化複合材料について、以下で詳細に記載する。
【0046】
本発明者らは、従来技術に伴う上述の欠点が、あるエポキシ樹脂組成物を繊維強化複合材料用途に用いることによって解決されることを発見したものであり、そのエポキシ樹脂組成物は、
[A]少なくとも1つのエポキシ樹脂、
[B]少なくとも2つの硬化剤であって、
[B-1]少なくとも1つの第一硬化剤と
[B-2]第一硬化剤とは異なる少なくとも1つの第二硬化剤と、
を含む、少なくとも2つの硬化剤、及び
[C]少なくとも1つの促進剤、
を含み、前記成分[B-1]が、少なくとも1つの芳香族アミン化合物を含み、前記成分[B-2]が、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、及びイソフタル酸ジヒドラジドから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含み、
前記成分[C]が、ホスフィン化合物ホスホニウム塩、及び、アンモニウム塩から成る群より選択される少なくとも1つの化合物を含み、
エポキシ樹脂組成物は、(I)及び(II)を満たすものであり、
5.0>|T-T| (I)
5.0≦T-T (II)
式中、
は、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
は、[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、
外挿開始温度T、T、T、及びTは、[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である上述の混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される。
【0047】
以降、例示的なエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、及び本発明のプリプレグを硬化することによって得られる繊維強化複合材料の様々な限定されない実施形態について、より詳細に記載する。本発明の一態様は、少なくとも1つのエポキシ樹脂[A]、少なくとも2つの異なる硬化剤[B]、及び少なくとも1つの促進剤[C]を含むエポキシ樹脂組成物であり、エポキシ樹脂組成物は、上述の関係(I)及び(II)を満たすことを特徴とする。まず、エポキシ樹脂[A]について記載する。
【0048】
[A]エポキシ樹脂
本発明で用いられる成分[A]に関して、特に制限又は限定はなく、分子中に1又は複数のグリシジル基を有するエポキシ樹脂であればよい。
【0049】
実施形態では、成分[A]は、3つ以上のグリシジル基など、4つ以上のグリシジル基など、5つ以上のグリシジル基など、6つ以上のグリシジル基など、7つ以上のグリシジル基などの、2つ以上のグリシジル基を分子中に有する。実施形態では、成分[A]は、2~8つのグリシジル基など、2~5つのグリシジル基など、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のグリシジル基などの、2~10のグリシジル基を有する。分子中のグリシジル基が2つ未満であるエポキシ樹脂の場合、エポキシ樹脂組成物を硬化することによって得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度が低くなる可能性がある。
【0050】
成分[A]の限定されない例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールAD型エポキシ、及びビスフェノールS型エポキシなど)、ブロム化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなど)、ノボラック型エポキシ樹脂(ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(N,N,O-トリグリシジル-m-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,O-トリグリシジル-4-アミノ-3-メチルフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-2,2’-ジエチル-4,4’-メチレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N-ジグリシジルアニリン、及びN,N-ジグリシジル-o-トルイジンなど)、並びにその他のレゾルシンジグリシジルエーテル及びトリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。特に、分子中に3つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂は、高いガラス転移温度及び弾性率を有する硬化されたエポキシ樹脂組成物を形成することができ、したがって、航空宇宙産業での使用に適している。
【0051】
これらのエポキシ樹脂は、硬化されたエポキシ樹脂組成物及び繊維強化複合材料が意図する力学特性及び耐熱性を呈するように、単独で又は適切な混合物として用いられ得る。適切な温度で流動性を示すエポキシ樹脂を、適切な温度で流動性を示さないエポキシ樹脂と組み合わせることは、得られるプリプレグの熱硬化時におけるマトリックス樹脂の流動性制御に有効である。例えば、熱による硬化工程のゲル化開始前にマトリックス樹脂の流動性が高過ぎる場合、強化繊維の配列の歪みが発生する可能性があり、又はマトリックス樹脂が系から流出する可能性があり、このことは、繊維質量含有率を所定の範囲外に外してしまい、その結果、力学特性が低下した炭素繊維強化複合材料となる可能性がある。異なる粘弾性挙動を示す複数のエポキシ樹脂を組み合わせることは、適切なレベルのタック及びドレープ性を有するプリプレグを得るのに有効である。
【0052】
本発明に従うエポキシ樹脂組成物は、耐熱性又は力学特性の著しい低下をもたらさない限り、分子中に1つのみのエポキシ基を含有する樹脂(モノエポキシ樹脂)及び脂環式エポキシ樹脂を含有してもよい。
【0053】
本発明のある特定の実施形態では、成分[A]は、以下に示す一般式(A-1)で表される少なくとも二官能性であるビスナフタレン型エポキシ樹脂、及び上記ビスナフタレン型エポキシ樹脂以外の少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂の選択にあたってそのような手法を採用することは、吸湿条件下で高い耐熱性を呈する硬化されたエポキシ樹脂組成物を形成することができるエポキシ樹脂組成物を得るのに役立つ。
【化1】
【0054】
一般式(A-1)において、Xは、1~8個の炭素原子(1~6個の炭素原子など、1~4個の炭素原子など)を有するアルキレン基又は以下の一般式(A-2)で表される基を表し、R~Rは、各々独立して、以下の一般式(A-3)若しくは(A-4)で表される基、水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br、及びIのうちの1又は複数など)、フェニル基、又は1~4個の炭素原子(1~3個の炭素原子など、1~2個の炭素原子など)を有するアルキル基を表し、R~Rは、2つのナフタレン環の一方の環又は両方の環に結合していてよく、Rは、ベンゼン環の空いている位置のいずれに結合していてもよく、R~Rのうちの3つ以上は、以下の一般式(A-3)で表され、又は別の選択肢として、一般式(A-3)で表される少なくとも1つの基及び一般式(A-4)で表される少なくとも1つの基が、R~Rに含まれている必要があり、残りの置換基R~Rは、互いに同じであっても又は異なっていてもよい。(A-3)及び(A-4)に関して、オキシラニルメチル基、及びグリシジル基のオキシラン環部分は、それぞれ、本明細書においてグリシジル基又はグリシジル官能基、及びエポキシ基又はエポキシ官能基とも称される。
【化2】
【化3】
【化4】
【0055】
一般式(A-1)で表されるエポキシ基の製造には、いかなる製造方法が用いられてもよい。例示的な実施形態では、(A-1)は、ヒドロキシナフタレンとエピハロヒドリンとの反応を通して製造され得る。
【0056】
一実施形態では、ビスナフタレンエポキシ樹脂は、好ましくは2~10の、より好ましくは2~5つのグリシジル基を含有する。存在するグリシジル基が多過ぎると、得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物が、場合によっては耐衝撃性が低下するのに充分に脆性となる可能性がある。
【0057】
ある特定の実施形態では、ビスナフタレン型エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の100質量部数に対して、好ましくは10~50質量部数、より好ましくは20~40質量部数、特に好ましくは25~30質量部数である。10質量部数以上の含有量とすることで、高い耐熱性を呈する硬化されたエポキシ樹脂組成物及び得られる繊維強化複合材料の製造が可能となる。他方、50質量部数以下の含有量とすることで、高い伸びを呈する硬化されたエポキシ樹脂組成物及び得られる繊維強化複合材料の製造が可能となる。
【0058】
ビスナフタレンの具体例としては、限定されるものではないが、EPICLON(登録商標)HP-4700、EPICLON(登録商標)HP-4710、EPICLON(登録商標)HP-4770、EPICLON(登録商標)EXA-4701、及びEPICLON(登録商標)EXA-4750(すべてDIC株式会社製)が挙げられる。
【0059】
一実施形態では、少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂は、分子中に3つ以上のエポキシ基を含有する、ビスナフタレン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂の例としては、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及びアミノフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0060】
別の実施形態では、少なくとも三官能性である上記エポキシ樹脂は、好ましくは3~7つの、より好ましくは3~4つのグリシジル基を含有する。存在するグリシジル基が多過ぎると、得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物が、場合によっては耐衝撃性が低下するのに充分に脆性となり得る可能性がある。
【0061】
少なくとも三官能性であるグリシジルアミン型エポキシ樹脂の例としては、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、及びイソシアヌル酸型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0062】
少なくとも三官能性であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス-ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0063】
さらに、上記の少なくとも三官能性であるグリシジルアミン型エポキシ樹脂及び少なくとも三官能性であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に加えて、少なくとも三官能性である他の適切なエポキシ樹脂としては、アミノフェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これは、分子中にグリシジルアミン基及びグリシジルエーテル基の両方を含有している。
【0064】
上述した少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂の中でも、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂及びアミノフェノール型エポキシ樹脂が、所望される物理的特性間での良好なバランスのために特に好ましい。
【0065】
上記の少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂の含有量が少な過ぎると、繊維強化複合材料の耐熱性が低下し得、一方その含有量が大きすぎると、架橋密度が増加し得、それが脆性材料をもたらした結果、耐衝撃性及び強度の両方が低下した硬化されたエポキシ樹脂組成物及び得られる繊維強化複合材料となる可能性がある。したがって、少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の100質量部数に対して、好ましくは20~80質量部数、より好ましくは30~70質量部数、特に好ましくは40~60質量部数である。
【0066】
少なくとも三官能性であるエポキシ樹脂の具体例としては、限定されるものではないが、SUMI-EPOXY(登録商標)ELM434、SUMI-EPOXY(登録商標)ELM434VL(いずれも住友化学株式会社製)、ARALDITE(登録商標)MY720、ARALDITE(登録商標)MY721、ARALDITE(登録商標)MY9512、ARALDITE(登録商標)MY9655、及びARALDITE(登録商標)MY9663(すべてHuntsman Corporation製)、Epotohto(登録商標)YH-434(新日鉄住金化学株式会社製)、SUMI-EPOXY(登録商標)ELM120及びSUMI-EPOXY(登録商標)ELM100(いずれも住友化学株式会社製)、jER(商標)630(三菱ケミカル株式会社製)、ARALDITE(登録商標)MY0500、ARALDITE(登録商標)MY0510、及びARALDITE(登録商標)MY0600(すべてHuntsman Corporation製)が挙げられる。
【0067】
メタ-キシレンジアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、TETRAD-X(三菱ガス化学株式会社製)が挙げられる。
【0068】
1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂の具体例としては、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社製)が挙げられる。
【0069】
イソシアヌレート型エポキシ樹脂の具体例としては、TEPIC(登録商標)-P(日産化学株式会社製)が挙げられる。
【0070】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、D.E.N.(商標)431及びD.E.N.(商標)438(いずれもThe Dow Chemical Company製)、並びにjER(商標)152(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0071】
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、EOCN-1020(日本化薬株式会社製)及びEPICLON(登録商標)N-660(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0072】
トリス-ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂の具体例としては、Tactix(登録商標)742(Huntsman Corporation製)が挙げられる。
【0073】
テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂の具体例としては、jER(商標)1031S(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0074】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の具体例としては、EPICLON(登録商標)HP-7200(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0075】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の具体例としては、デナコール(商標)EX-201(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0076】
ウレタン変性エポキシ樹脂の具体例としては、AER4152(旭化成イーマテリアルズ株式会社製)が挙げられる。
【0077】
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂の具体例としては、NC-3000(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
【0078】
本発明のある特定の実施形態では、成分[A]は、4個以上の環原子(C、N、O、及び/又はSなど)を含有する1又は複数の環構造、及び環構造に直接結合した少なくとも1つのグリシジルアミン基又はグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂を含み、エポキシ樹脂は、少なくとも三官能性である。そのような手法を採用することは、低温で高い引張強度を有する繊維強化複合材料を形成することができるエポキシ樹脂組成物を得るのに役立つ。本明細書において、「4個以上の環員を含む1又は複数の環構造を有する」の用語は、シクロヘキサン、ベンゼン、及びピリジンなどの各々が4個以上の環原子を有する1若しくは複数の単環式環構造を含有すること、又はフタルイミド、ナフタレン、及びカルバゾールなどの4個以上の環原子を有する少なくとも1つの縮合環構造を含有することのいずれかを意味する。
【0079】
上記で述べたエポキシ樹脂中の環構造に直接結合したグリシジルアミン基又はグリシジルエーテル基は、グリシジルアミン基の窒素(N)原子又はグリシジルエーテル基の酸素(O)原子が、ベンゼン、フタルイミドなどの環構造に結合した構造を有し、このエポキシ樹脂は、グリシジルアミン基を含有する場合は一官能性若しくは二官能性であり、又はグリシジルエーテル基を含有する場合は一官能性である。
【0080】
一実施形態では、上述のエポキシ樹脂は、以下に示す一般式(A-5)で表される構造を有する二官能性のエポキシ樹脂であってよい。
【化5】
【0081】
一般式(A-5)において、R及びRは、各々、水素原子(H)、炭素数1~4(1~2など)の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6(5~6など)の脂環式炭化水素基、炭素数6~10(6など)の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、又はIなど)、アシル基、トリフルオロメチル基、及びニトロ基から成る群より独立して選択される少なくとも1つである。ここで、nは、0~4の整数であり、mは、0~5の整数である。n又はmが2以上の整数である場合、置換基R及びRは、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。Xは、-O-、-S-、-CO-、-C(=O)O-、及び-SO-から成る群より選択される1つを表す。
【0082】
4個以上の環原子を含有する1又は複数の環構造、及び環構造に直接結合した少なくとも1つのグリシジルアミン基又はグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂の含有量が適切である場合、得られる繊維強化複合材料の引張強度及び耐熱性の両方が、良好な影響を受け得る。したがって、上記エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは、エポキシ樹脂組成物中に存在するすべてのエポキシ樹脂の100質量部数に対して5~60質量部数である。
【0083】
一実施形態では、一官能性のエポキシ樹脂を使用することが、より高い引張強度を呈する繊維強化複合材料に繋がり、一方二官能性のエポキシ樹脂を使用することが、より高い耐熱性を呈する繊維強化複合材料に繋がる。
【0084】
一官能性のエポキシ樹脂を使用する場合、上記エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に存在するすべてのエポキシ樹脂の100質量部数に対して、好ましくは10~30質量部数、より好ましくは15~25質量部数である。二官能性のエポキシ樹脂を使用する場合、上記エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に存在するすべてのエポキシ樹脂の100質量部数に対して、好ましくは10~40質量部数、より好ましくは20~30質量部数である。
【0085】
一官能性のエポキシ樹脂の例としては、限定されるものではないが、グリシジルフタルイミド、グリシジル-1,8-ナフタルイミド、グリシジルカルバゾール、グリシジル-3,6-ジブロモカルバゾール、グリシジルインドール、グリシジル-4-アセトキシインドール、グリシジル-3-メチルインドール、グリシジル-3-アセチルインドール、グリシジル-5-メトキシ-2-メチルインドール、o-フェニルフェニルグリシジルエーテル、p-フェニルフェニルグリシジルエーテル、p-(3-メチルフェニル)フェニルグリシジルエーテル、2,6-ジベンジルフェニルグリシジルエーテル、2-ベンジルフェニルグリシジルエーテル、2,6-ジフェニルフェニルグリシジルエーテル、4-α-クミルフェニルグリシジルエーテル、o-フェノキシフェニルグリシジルエーテル、及びp-フェノキシフェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0086】
二官能性のエポキシ樹脂の例としては、限定されるものではないが、N,N-ジグリシジル-4-フェノキシアニリン、N,N-ジグリシジル-4-(4-メチルフェノキシ)アニリン、N,N-ジグリシジル-4-(4-tert-ブチルフェノキシ)アニリン、及びN,N-ジグリシジル-4-(4-フェノキシフェノキシ)アニリンが挙げられる。多くの場合、これらのエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリンをフェノキシアニリン誘導体に添加し、アルカリ化合物で環化することによって製造することができる。分子量の増加と共に粘度が上昇することから、一般式(A-5)で表され、式中のR及びRの両方が水素原子であるN,N-ジグリシジル-4-フェノキシアニリンが、ハンドリング性の観点から特に好ましい。
【0087】
フェノキシアニリン誘導体の例としては、限定されるものではないが、4-フェノキシアニリン、4-(4-メチルフェノキシ)アニリン、4-(3-メチルフェノキシ)アニリン、4-(2-メチルフェノキシ)アニリン、4-(4-エチルフェノキシ)アニリン、4-(3-エチルフェノキシ)アニリン、4-(2-エチルフェノキシ)アニリン、4-(4-プロピルフェノキシ)アニリン、4-(4-tert-ブチルフェノキシ)アニリン、4-(4-シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4-(3-シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4-(2-シクロヘキシルフェノキシ)アニリン、4-(4-メトキシフェノキシ)アニリン、4-(3-メトキシフェノキシ)アニリン、4-(2-メトキシフェノキシ)アニリン、4-(3-フェノキシフェノキシ)アニリン、4-(4-フェノキシフェノキシ)アニリン、4-[4-(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4-[3-(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4-[2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]アニリン、4-(2-ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4-(1-ナフチルオキシフェノキシ)アニリン、4-[(1,1’-ビフェニル-4-イル)オキシ]アニリン、4-(4-ニトロフェノキシ)アニリン、4-(3-ニトロフェノキシ)アニリン、4-(2-ニトロフェノキシ)アニリン、3-ニトロ-4-アミノフェニルフェニルエーテル、2-ニトロ-4-(4-ニトロフェノキシ)アニリン、4-(2,4-ジニトロフェノキシ)アニリン、3-ニトロ-4-フェノキシアニリン、4-(2-クロロフェノキシ)アニリン、4-(3-クロロフェノキシ)アニリン、4-(4-クロロフェノキシ)アニリン、4-(2,4-ジクロロフェノキシ)アニリン、3-クロロ-4-(4-クロロフェノキシ)アニリン、及び4-(4-クロロ-3-トリルオキシ)アニリンが挙げられる。
【0088】
一官能性のエポキシ樹脂の具体例としては、限定されるものではないが、デナコール(商標)EX-731(グリシジルフタルイミド、ナガセケムテックス株式会社製)及びOPP-G(o-フェニルフェニルグリシジルエーテル、三光株式会社製)が挙げられ、二官能性のエポキシ樹脂の具体例としては、GAN(N-ジグリシジルアニリン、日本化薬株式会社製)及びTOREP(登録商標)A-204E(ジグリシジル-p-フェノキシアニリン、東レ・ファインケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0089】
本発明のある特定の実施形態では、成分[A]は、メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂、及び上記メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂以外の、分子中に2つ以上のグリシジル基を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂又はグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかを含む。そのようなエポキシ樹脂を含めることは、高い耐熱性を呈する硬化されたエポキシ樹脂組成物を形成することができるエポキシ樹脂組成物を得るのに役立つ。
【0090】
一実施形態では、優れた靭性、伸び率、及び耐熱性を呈する硬化されたエポキシ樹脂組成物を製造することを目的として、メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に存在するすべてのエポキシ樹脂の100質量部数に対して、好ましくは10~50質量部数、より好ましくは15~40質量部数、なおより好ましくは20~30質量部数である。
【0091】
一実施形態では、メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂は、以下に示す一般式(A-6)で表される構造を有するエポキシ樹脂及びその誘導体から成る群より選択される少なくとも1つであってよい。
【化6】
【0092】
一般式(A-6)において、R及びRは、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下(3、2、又は1など)の脂環式炭化水素基、及びハロゲン原子(F、Cl、Br、又はIなど)から成る群より選択される少なくとも1つを表す。
【0093】
一般式(A-6)におけるR及びRの構造が、立体的に大きすぎると、エポキシ樹脂組成物の粘度が非常に高くなるために、ハンドリング性が低下する結果となる可能性があり、及びメタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂とエポキシ樹脂組成物の他の成分との間の相溶性が低下して、エポキシ樹脂組成物を含有する繊維強化複合材料に伴う所望される力学特性が低下する結果となる可能性がある。
【0094】
メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、限定されるものではないが、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジル-p-アミノフェノール、並びにこれらの誘導体及び異性体が挙げられる。
【0095】
特に、R及びRは、各々、他のエポキシ樹脂との相溶性の観点から、水素原子であることが好ましく、より好ましくは、得られる繊維強化複合材料の弾性率及び耐熱性を改善することを目的として、トリグリシジル-m-アミノフェノール又はトリグリシジル-p-アミノフェノールである。トリグリシジル-メタ-アミノフェノールは、高い弾性率をもたらすことができ、トリグリシジル-p-アミノフェノールは、高い耐熱性をもたらすことができる。難燃性の観点から、R及び/又はRは、Cl及びBrなどのハロゲン原子で置換されていることも好ましい。
【0096】
メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂の具体例としては、限定されるものではないが、SUMI-EPOXY(登録商標)ELM120及びSUMI-EPOXY(登録商標)ELM100(いずれも住友化学株式会社製)、jER(商標)630(三菱ケミカル株式会社製)、及びARALDITE(登録商標)MY0500、ARALDITE(登録商標)MY0510、ARALDITE(登録商標)MY0600、及びARALDITE(登録商標)MY0610(すべてHuntsman Corporation製)が挙げられる。
【0097】
メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂以外の、分子中に2つ以上のグリシジル基を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂の限定されない例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールAD型エポキシ、及びビスフェノールS型エポキシなど)、ブロム化ビスフェノール型エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなど)、並びにその他として、脂環式エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、キシレンジアミン、これらの構造異性体、及び前駆体として用いられるハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル置換基を含有する誘導体中のアミノ基をグリシジル化することによって製造される化合物が挙げられる。そのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、限定されるものではないが、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、及びテトラグリシジルジアミノジフェニルエーテルが挙げられる。
【0098】
一実施形態では、粘度が低い液体ビスフェノールA型エポキシ及びビスフェノールF型エポキシが、他のエポキシ樹脂と組み合わせて好ましくは用いられる。
【0099】
別の実施形態では、液体ビスフェノールA型エポキシと比較して、固体ビスフェノールA型エポキシは、耐熱性は低いが靭性は高い低架橋密度の構造を形成し、したがって、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、液体ビスフェノールA型エポキシ、又はビスフェノールF型エポキシと組み合わせて用いられる。
【0100】
ビスフェノールA型エポキシの具体例としては、限定されるものではないが、jER(商標)825、jER(商標)827、jER(商標)828、jER(商標)834、jER(商標)1001、jER(商標)1004、jER(商標)1004AF、及びjER(商標)1007(すべて三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON(登録商標)850(DIC株式会社製)、Epotohto(登録商標)YD-128(新日鉄住金化学株式会社製)、並びにD.E.R.(商標)331及びD.E.R.(商標)332(いずれもThe Dow Chemical Company製)が挙げられる。
【0101】
ビスフェノールF型エポキシの具体例としては、限定されるものではないが、jER(商標)806、jER(商標)807、jER(商標)1750、jER(商標)4004P、及びjER(商標)4005P(すべて三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON(登録商標)830(DIC株式会社製)、並びにEpotohto(登録商標)YDF-170(新日鉄住金化学株式会社製)が挙げられる。
【0102】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、限定されるものではないが、SUMI-EPOXY(登録商標)ELM434、SUMI-EPOXY(登録商標)ELM434VL(いずれも住友化学株式会社製)、ARALDITE(登録商標)MY720、ARALDITE(登録商標)MY721、ARALDITE(登録商標)MY9512、ARALDITE(登録商標)MY9655、及びARALDITE(登録商標)MY9663(すべてHuntsman Corporation製)、並びにEpotohto(登録商標)YH-434(新日鉄住金化学株式会社製)が挙げられる。
【0103】
メタ-又はパラ-アミノフェノール型エポキシ樹脂と、分子中に2つ以上のグリシジル基を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂又はグリシジルアミン型エポキシ樹脂のいずれかとが組み合わせて用いられる場合において、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂又はグリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有量が低いと、そのようなエポキシ樹脂を含有する繊維強化複合材料の力学特性が負の影響を受ける可能性があり、一方含有量が高過ぎると、ビスフェノール型エポキシ樹脂が用いられる場合は耐熱性が負の影響を受ける可能性があり、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が用いられる場合は靭性が負の影響を受ける可能性がある。
【0104】
上記で述べたように耐熱性及び樹脂粘度の制御の観点から、さらには樹脂の伸び率及び靭性の観点からも、一実施形態では、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び/又はグリシジルアミン型エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂組成物中に存在するすべてのエポキシ樹脂の100質量部数に対して、50~90質量部数の量で存在することが好ましく、より好ましくは55~85質量部数、特に好ましくは60~80質量部数である。
【0105】
一実施形態では、成分[A]は、エポキシ樹脂として、エポキシ環を含有するラダー型シルセスキオキサン化合物を含む。
【0106】
別の実施形態では、エポキシ環を含有するラダー型シルセスキオキサン化合物の構造は、以下の一般式(A-7)で表されるシルセスキオキサン及びその誘導体から選択され得る。これらのラダー型シルセスキオキサンをエポキシ樹脂組成物中にブレンドすることは、難燃性及び耐熱性を高めるのに役立つ。
【化7】
【0107】
エポキシ環構造を含有するラダー型シルセスキオキサン化合物において、エポキシ環基は、一般式(A-7)中の置換基R10の50~100モル%、好ましくは60~100モル%を占める。一般式(A-7)中の置換基R10として存在するエポキシ環基の割合がこの範囲内で制御されると、エポキシ樹脂組成物は、改善されたハンドリング性及び成形性のために適する粘度を呈し、そのことが高いレベルの難燃性、耐熱性、及び力学特性を呈する繊維強化複合材料をもたらす可能性がある。エポキシ環基の割合(モル%)は、以下のように算出することができる。
(ラダー型シルセスキオキサン中のエポキシ基の量(モル))/(ラダー型シルセスキオキサン中の置換基の合計量(モル))×100
【0108】
ラダー型シルセスキオキサン中のエポキシ環基の割合は、エポキシ樹脂組成物の有機元素分析、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)などによって特定することもできる。
【0109】
一実施形態では、一般式(A-7)中の置換基R10の例としては、β-グリシドキシエチル基、γ-グリシドキシプロピル基、及びγ-グリシドキシブチル基など、炭素数が4以下、好ましくは3、2、又は1などの3以下のグリシドキシアルキル基;並びにグリシジル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘプチル)エチル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル基、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル基など、炭素数が5~8でオキシラン基を含有するシクロアルキル基によって置換されたアルキル基であって、中でも、炭素数が5~8でオキシラン基を含有するシクロアルキル基によって置換された3以下の炭素数を有するアルキル基が好ましい、アルキル基、が挙げられる。特に、β-グリシドキシエチル基、γ-グリシドキシプロピル基、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0110】
別の実施形態では、一般式(A-7)中のエポキシ環基を含有しない置換基R10の例としては、水素原子、炭素数1~10(1~8など、1~6など、1~3など)のアルキル基、及び炭素数1~10(1~8など、1~6など、1~3など)のアルコキシ基が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、及びイソブチル基が挙げられる。炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基が挙げられる。
【0111】
本発明で用いられるラダー型シルセスキオキサンは、1,500~30,000の重量平均分子量を有することが好ましく、より好ましくは1,500~15,000、特に好ましくは2,000~8,000である。この範囲内の重量平均分子量を有するラダー型シルセスキオキサンにより、例えば、充分な耐熱性及び伸び率を実現すること、ラダー型シルセスキオキサンと他のエポキシ樹脂との間の相溶性を改善すること、並びに強化繊維のマトリックス樹脂による含浸を改善することが可能となる。本明細書で述べる重量平均分子量は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン基準の分子量である。
【0112】
エポキシ環基を含有するラダー型シルセスキオキサンの具体例としては、SE-01GM(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0113】
ラダー型シルセスキオキサン化合物が、本発明のために用いられるエポキシ樹脂組成物に添加されると、高いレベルの難燃性、耐熱性、及び力学特性を有する繊維強化複合材料が得られる結果となり、この場合、ラダー型シルセスキオキサンは、エポキシ樹脂組成物中のラダー型シルセスキオキサン化合物とすべての他のエポキシ樹脂との100質量部数と見なす合計量に対して、1~40質量部数、好ましくは5~30質量部数、より好ましくは10~20質量部数の量で存在する。
【0114】
[B]硬化剤
本発明において成分[B]として用いられる硬化剤の選択は、本明細書で述べる(I)及び(II)に定められるT、T、T、及びTの間の関係が満たされる限りにおいて、特定のいかなる硬化剤にも限定されず、用途の必要条件に応じて異なり得る。一般的に、第一硬化剤[B-1]及び第一硬化剤[B-1]と異なる第二硬化剤[B-2]は、例えば、これらに限定されるものではないが、アミン化合物、アミドアミン、無水物、カルボジイミド、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジド化合物、ポリアミド、ポリアミン、フェノール系、ポリエステル、ポリイソシアネート、ポリメルカプタン、置換グアニジン、ウレアホルムアルデヒド、及びメラミン樹脂、並びにこれらの混合物から選択され得る。
【0115】
ある特定の実施形態では、第一硬化剤[B-1]は、耐熱性及び力学特性を改善することを目的として、好ましくは芳香族アミン化合物であり、好ましくは分子中に1~4つのフェニル基を有する。さらに、屈曲性を有する分子骨格は、樹脂の弾性率の上昇及び力学特性の改善に寄与し得ることから、第一硬化剤は、好ましくは、骨格中に存在する少なくとも1つのフェニル基がオルソ又はメタ位にアミノ基を有する芳香族アミン化合物である。
【0116】
別の実施形態では、耐熱性を改善することを目的として、2つ以上のフェニル基がパラ位にアミノ基を有する芳香族アミン化合物が好ましい。
【0117】
そのような芳香族アミン化合物の例としては、限定されるものではないが、メタ-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタ-キシリレンジアミン、(パラ-フェニレンメチレン)ジアニリン、アルキル置換体などのこれらの様々な誘導体、及び異なる位置にアミノ基を有する様々な異性体が挙げられる。特に宇宙船及び航空機に適する材料を作製するためには、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン又は3,3’-ジアミノジフェニルスルホンが好ましく、なぜなら、これらの化合物は、高い耐熱性及び弾性率を呈するが、線膨張係数の低下又は吸湿に起因する耐熱性の低下を大きく受けることのない硬化生成物をもたらすからである。芳香族アミン化合物は、単独で用いられてよく、又は2つ以上が組み合わせて用いられてもよい。他の成分と混合される場合、それらは粉末若しくは液体の形態であってよく、又は粉末化された芳香族アミン化合物と液体芳香族アミン化合物とが一緒に混合されてもよい。
【0118】
適切な芳香族アミン化合物の具体例としては、限定されるものではないが、SEIKACURE-S(セイカ株式会社製)、ARADUR(登録商標)976-1、ARADUR(登録商標)9664-1、ARADUR(登録商標)9719-1(すべてHuntsman Corporation製)、3,3’-DAS(三菱化学株式会社製)、LONZACURE(登録商標)M-DIPA及びLONZACURE(登録商標)M-MIPA(いずれもLonza製)が挙げられる。
【0119】
ある特定の実施形態では、第二硬化剤[B-2]は、好ましくは、エポキシ樹脂組成物の潜在性と反応性との間のバランスを達成する目的で、有機酸ヒドラジド化合物である。
【0120】
ある特定の実施形態では、有機酸ヒドラジド化合物は、耐熱性及び力学特性を改善することを目的として、分子中に少なくとも1つの芳香環構造を好ましくは有する。
【0121】
有機酸ヒドラジド化合物の限定されない例としては、カルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド(IDH)、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ドデカン二酸ジヒドラジド(DDH)、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド(NDH)、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、芳香族モノヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、脂肪族モノヒドラジド、脂肪族ジヒドラジド、セバイン酸ジヒドラジド(sebaic acid dihydrazide)、脂肪族トリヒドラジド、脂肪族テトラヒドラジド、芳香族モノヒドラジド、芳香族ジヒドラジド、芳香族トリヒドラジド、及び芳香族テトラヒドラジドが挙げられる。
【0122】
有機酸ヒドラジド化合物の具体例としては、限定されるものではないが、IDH、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド(いずれも大塚化学株式会社製)、Technicure(登録商標)ADH、Technicure(登録商標)DDH-S(いずれもA&C Catalysts,Inc.製)、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)が挙げられる。
【0123】
別の実施形態では、本発明における有機酸ヒドラジド化合物の融点は、190℃以上など、195℃以上など、200℃以上など、205℃以上など、210℃以上など、215℃以上など、及び220℃以上などの185℃以上であってよい。
【0124】
一実施形態では、成分[B-2]は、好ましくは、熱安定性を向上させる目的で、成分[A]に不溶性である粒子の形態である。成分[B-2]が不溶性の状態で成分[A]中に分散されることから、硬化反応は、成分[B-2]が加熱によって溶解されるまで、大きく進行することはない。エポキシ樹脂組成物がある特定の温度以上で加熱されると、成分[B-2]は、溶解し、成分[B-1]と共に、成分[A]との硬化反応を開始する。成分[B-2]の平均粒径は、好ましくは、100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは30μm以下である。成分[B-2]の平均粒径を100μm以下に設定することで、エポキシ樹脂硬化時における成分[B-2]の溶解が促進され、したがって、エポキシ樹脂組成物の硬化性が改善される。さらに、成分[B-2]の平均粒径を100μm以下に設定することで、成分[B-2]が未溶解で残留することに起因する樹脂硬化物の所望される力学特性のいかなる低下も抑制することが可能である。さらに、成分[B-2]の平均粒径は、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらにより好ましくは2μm以上である。成分[B-2]の平均粒径を0.5μm以上に設定することで、樹脂の混練工程時又はプリプレグの製造工程時における成分[B-2]のエポキシ樹脂中への望ましくない溶解に起因する潜在性の低下が抑制される。
【0125】
本明細書で言及される平均粒径は、ISO 13320:2020(E)に従って、レーザー回折散乱法を用いる株式会社堀場製作所製のLA-950で測定される。ARALDITE(登録商標)GY282(成分:ビスフェノールF型エポキシ、Huntsman Corporation製)を分散媒体として用いることによって測定した体積ベースでの結果を、粒径分布の測定結果として用い、得られた粒径分布の累積曲線における50%での粒径(メジアン径)を、平均粒径として用いる。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明における成分[B-2]の融点は、好ましくは、200℃以上など、220℃以上など、250℃以上などの180℃以上である。成分[B-2]の融点が180℃以上である場合、成分[B-2]は、成分[A]中に容易に溶解することがなく、その結果、樹脂の混練工程時又はプリプレグの製造工程時におけるエポキシ樹脂組成物の改善されたポットライフが得られる。ポットライフが改善されると、樹脂組成物の粘度増加に起因する強化繊維中への樹脂の含浸不良又はプリプレグのタック性の低下を抑制することができる。本明細書で言及されるポットライフは、低くは室温から80℃までの温度範囲におけるエポキシ樹脂組成物の粘度安定性である。粘度安定性は、例えば、80℃で4時間保持した後のエポキシ樹脂組成物の粘度変化を、動的粘弾性測定によって評価することで識別することができる。成分[B-2]の融点が250℃超であると、成分[B-2]は、硬化時に成分[A]中に容易に溶解せず、したがって、望ましくないことには、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下し得る。
【0127】
さらに、本明細書で言及される融点は、ASTM D 3418-15に従って、示差走査熱量計(DSC)中、10℃/分の速度で室温から昇温することによって得られる溶融曲線のピーク温度から特定することができる。
【0128】
一実施形態では、有機酸ヒドラジド化合物の含有量は、成分[A]の100質量部数に対して、1~20質量部数、好ましくは2~15質量部数、より好ましくは3~10質量部数であってよい。含有量を1質量部数以上に設定することにより、エポキシ樹脂組成物の反応性を改善する効果を実現することができる。さらに、含有量を20質量部数以下に設定することにより、エポキシ樹脂組成物の潜在性及び得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物の耐熱性の望ましくない低下を抑制することが可能であり得る。
【0129】
別の実施形態では、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[B-2]のすべての活性水素に対する当量比は、用いられる特定の硬化剤[B-1]及び[B-2]に応じて調節されるが、2~8など、3~10など、1~7など、1~5などの1~10の範囲内に含まれる。この範囲の比とすることにより、エポキシ樹脂組成物から、高いレベルの耐熱性及び力学特性を有する繊維強化複合材料を得ることが可能となる。成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[B-2]のすべての活性水素に対する当量比は、以下の式から特定した。
【数1】
【0130】
一実施形態では、芳香族アミン化合物と有機酸ヒドラジド化合物との組み合わせが、それぞれ第一硬化剤[B-1]及び第二硬化剤[B-2]として用いられる場合、成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、耐熱性及び力学特性を改善することを目的として、0.7~1.3、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.9~1.1である。この当量比が0.7未満であると、得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物は、充分に高い架橋密度を有することができない可能性があり、これは適切な弾性率及び耐熱性の欠如に繋がり、及び得られる繊維強化複合材料は、充分な静的強度特性を呈することができない可能性がある。この当量比が1.3超であると、得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物は、過剰に高い架橋密度を有する可能性があり、塑性変形能力の不足に繋がり、及び得られる繊維強化複合材料は、充分な耐衝撃性を呈することができない可能性がある。本明細書で述べる場合、「活性水素」の句は、有機化合物中の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子に共有結合し、エポキシ基との化学反応に関与する水素原子を意味する。例えば、1級アミノ基の活性水素の数は、2であり、一方水酸基又はチオール基の活性水素の数は、1である。ヒドラジドの場合、末端窒素原子と結合した水素原子のみが、エポキシ基との反応に寄与することから、ヒドラジド基1つ当たりの活性水素の数は、2とカウントされる。成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が、上記で述べた所定の範囲内に含まれる場合、非常に優れた耐熱性及び弾性率を呈する樹脂硬化物が得られる結果となる。成分[B-1]及び[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、以下の式から特定した。
【数2】
【0131】
上記式中、「エポキシ樹脂n」は、成分[A]として存在するすべてのエポキシ樹脂成分のうちのn番目のエポキシ樹脂成分を表す。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物において3種類のエポキシ樹脂が用いられる場合、nは、3である。
【0132】
ほとんどの市販の化学化合物において、硬化剤製品の活性水素当量及びエポキシ樹脂製品のエポキシ当量は、それらの製造業者から入手可能である。製品の当量が未知であっても、当量は、製品が純物質である場合は、構造式に基づいて算出することができ、又は製品が混合物である場合は、滴定から特定することができる。
【0133】
[C]促進剤
本発明で用いられる成分[C]は、エポキシ樹脂の硬化剤との反応を促進する少なくとも1つの促進剤である。
【0134】
本発明において成分[C]として用いられる促進剤の選択は、本明細書で述べる関係(I)が満たされる限りにおいて、特定のいかなる促進剤にも限定されない。
【0135】
一実施形態では、成分[C]は、本技術分野において公知の促進剤(触媒)を含み、アミン(3級アミンなど)、有機ホスフィン、ヘテロ環式窒素化合物(イミダゾールなど)、アンモニウム塩(ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなど)、ホスホニウム塩(エチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなど)、カルボン酸塩、アルソニウム塩、スルホニウム塩、及びこれらのいずれかの組み合わせなどである。
【0136】
ある特定の実施形態では、成分[C]は、好ましくは、成分[A]及び少なくとも1つの硬化剤の反応を促進する成分[C-1]としての少なくとも1つの有機リン化合物を含む。
【0137】
本発明における成分[C-1]として用いられる有機リン化合物の選択は、特定のいかなる有機リン化合物にも限定されず、用途の必要条件に応じて異なり得る。
【0138】
本発明の有機リン化合物の限定されない例としては、有機ホスフィン、ホスホニウム塩、有機ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスホラン、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0139】
ある特定の実施形態では、成分[C-1]は、潜在性、エポキシ樹脂組成物の反応性、及びエポキシ樹脂硬化物の所望される力学特性の間のバランスを実現する目的で、好ましくは有機ホスフィンである。
【0140】
有機ホスフィン化合物の具体例としては、限定されるものではないが、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-2,4-キシリルホスフィン、トリ-2,5-キシリルホスフィン、トリ-3,5-キシリルホスフィン、トリス(p-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(o-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、[4-(n,n-ジメチルアミノ)]フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。
【0141】
好ましい有機ホスフィン化合物は、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリフェニルホスフィントリフェニルボランである。
【0142】
ホスホニウム塩の具体例としては、限定されるものではないが、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n-プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、i-プロピルトリフェニルホスホニウムヨージド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、2-カルボキシエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、ジ-tert-ブチル(メチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、n-ブチルジ(tert-ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、及びジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスホニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0143】
別の実施形態では、成分[C]の量は、成分[A]の100質量部数に対して、0.2~5質量部数など、0.5~2質量部数などの0.1~10質量部数である。これより低い濃度の促進剤は、典型的には、充分な促進効果をもたらさず、エポキシ樹脂組成物の反応性が大きく低下する結果となる。これより高い濃度の促進剤は、典型的には、エポキシ樹脂組成物の望ましくないほど高い反応性及び不適切に低い潜在性をもたらす結果となる。
【0144】
一実施形態では、成分[C]の融点は、ASTM D 3418-15に従って、10℃/分の昇温速度でDSCによって測定した場合、220℃以下であることが好ましい。成分[C]の融点が220℃以下である場合、成分[C]は、エポキシ樹脂組成物の硬化時に成分[A]中に溶解することがより容易となり、それによって、成分[A]と少なくとも1つの硬化剤との反応が促進される。成分[C]の融点が220℃超であると、成分[C]は、エポキシ樹脂組成物の硬化時に成分[A]中に完全に溶解することが可能となって、促進効果が不充分である結果となり得る。
【0145】
別の実施形態では、成分[C]の融点は、180℃以下など、160℃以下など、140℃以下など、120℃以下など、100℃以下など、80℃以下などの200℃以下である。
【0146】
熱可塑性樹脂
本発明のある特定の実施形態では、上述したエポキシ樹脂組成物中に少なくとも1つの熱可塑性樹脂を混合又は溶解することが、硬化されたエポキシ樹脂組成物及び得られる繊維強化複合材料の特性を向上させるために、並びに硬化時の最低粘度を上昇させてプロセス特性を改善するために、望ましい場合がある。一般に、熱可塑性樹脂の主鎖中に炭素-炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボナート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合、及び/又はカルボニル結合から成る群より選択される化学結合を有する熱可塑性樹脂が好ましい。さらに、熱可塑性樹脂はまた、部分架橋構造を有していてもよく、結晶又はアモルファスであってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド樹脂(フェニルトリメチルインダン構造又はフェニルインダン構造を有するポリイミド樹脂を含む)、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、及びポリベンズイミダゾールから成る群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂が、エポキシ樹脂組成物中に混合又は溶解されることが適切である又は好ましい。
【0147】
一実施形態では、熱可塑性樹脂は、成分[A]として用いられるエポキシ樹脂中に可溶性であることが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂を組み込むことで、マトリックス樹脂と炭素繊維との間の接着性が改善されることが期待され、したがって、熱可塑性樹脂としては、水素結合に関与することができる官能基を含有する熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。そのような官能基の例としては、水酸基、アミド結合、スルホニル基、カルボニル基、及びカルボキシル基が挙げられる。
【0148】
本明細書で用いられる場合、「エポキシ樹脂中に可溶性である」の表現は、熱可塑性樹脂をエポキシ樹脂[A]と混合し、続いて加熱撹拌した結果として均一相が形成される温度範囲を意味する。「均一相を形成する」の表現は、目視によって相分離が観察されない状態を意味する。ある特定の温度範囲内で均一相を形成することができる限りにおいて、他の温度範囲で相分離が発生してもよい。
【0149】
例えば、加熱した時に熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂中に溶解する場合、それは、たとえ23℃まで冷却した時点で分離が発生したとしても、「エポキシ樹脂中に可溶性である」と見なすことができる。溶解は、以下の方法によって確認され得る。具体的には、熱可塑性樹脂の粉末をエポキシ樹脂と混合し、粘度変化を測定しながら、2時間を例とする数時間にわたって、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満の一定温度で維持する。熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂中に可溶性であるかどうかは、測定した粘度が、同じ一定温度で加熱したエポキシ樹脂単独の粘度よりも5%以上高いかどうかに基づいて判断することができる。
【0150】
アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、さらにはポリビニルアルコール及びフェノキシ樹脂が挙げられる。
【0151】
アミド結合を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0152】
スルホニル基を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0153】
カルボキシル基を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、及びポリアミドイミドが挙げられる。カルボキシル基は、主鎖に位置していてよく、及び/又は鎖末端に位置していてもよい。
【0154】
カルボニル基を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族ポリエーテルケトンが挙げられる。
【0155】
上述した熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリイミド樹脂、及びポリスルホンは、その主鎖中に、エーテル結合、又はカルボニル基などの官能基をさらに含有し得る。ポリアミド化合物の場合、アミド基の窒素原子は置換基を有していてもよい。
【0156】
エポキシ樹脂中に可溶性である熱可塑性樹脂の例としては、ポリアリールエーテル骨格を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリアリールエーテル骨格を有するそのような熱可塑性樹脂を用いることにより、得られるプリプレグのタック、プリプレグの熱硬化時におけるマトリックス樹脂の流動性が制御され、耐熱性又は弾性率を損なうことなく強靭な繊維強化複合材料が得られる。
【0157】
ポリアリールエーテル骨格を有する熱可塑性樹脂の例としては、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリエーテルエーテルスルホンが挙げられ、これらの熱可塑性樹脂は、単独で、又はこれらの2つ以上の混合物として用いられてよい。
【0158】
高い耐熱性を確保するために、ポリアリールエーテル骨格を有する熱可塑性樹脂は、好ましくは、少なくとも150℃以上、より好ましくは170℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。ポリアリールエーテル骨格を有する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が150℃未満であると、それから製造される成形体が熱変形を受け易くなり得る。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、10℃/分の昇温速度、0℃から350℃までの温度範囲で示差走査熱量測定を行い、JIS K7121-1987に従って中間点温度を算出することによって特定される。
【0159】
ポリアリールエーテル骨格を有する熱可塑性樹脂中の末端官能基は、好ましくは、水酸基、カルボキシル基、チオール基、無水物などであり、なぜなら、これらの基は、カチオン重合性化合物と反応することができるからである。
【0160】
ポリアリールエーテル骨格及びさらにはそのような末端官能基も有する熱可塑性樹脂の具体例としては、SUMIKAEXCEL(登録商標)PES3600P、SUMIKAEXCEL(登録商標)PES5003P、SUMIKAEXCEL(登録商標)PES5200P、及びSUMIKAEXCEL(登録商標)PES7200P(すべて住友化学株式会社製)、並びにVirantage(登録商標)VW-10200RFP、Virantage(登録商標)VW-10300FP、及びVirantage(登録商標)VW-10700RFP(すべてSolvay製)などのポリエーテルスルホンが挙げられ、さらには、PCT国際公開第2002/016456(A2)号に記載のようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンとの共重合体オリゴマー、及びUltem(登録商標)1000、Ultem(登録商標)1010、及びUltem(登録商標)1040(すべてSABIC製)などの市販品のポリエーテルイミドも挙げられる。本明細書で言及されるオリゴマーは、互いに結合した有限数の、一般的には10~100のモノマーから構成される重合体である。
【0161】
ある特定の実施形態では、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンを用いることが、エポキシ樹脂中での可溶性を実現すること、並びに耐熱性、耐溶剤性、及び靭性を改善することを目的として、好ましい。
【0162】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量に関して特に制限はないが、好ましくは2,000~60,000g/モル、より好ましくは10,000~55,000g/モル、さらにより好ましくは15,000~50,000g/モル、特に好ましくは15,000~30,000g/モルの範囲内である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が2,000g/モル未満であると、力学特性におけるいずれの改善も僅かとなり、エポキシ樹脂組成物の耐熱性が悪化することになる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が60,000g/モル超であると、エポキシ樹脂組成物との相溶性が低くなる可能性があり、硬化されたエポキシ樹脂組成物又は繊維強化複合材料において力学特性の改善が得られなくなる。加えて、そのような熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂中に溶解された場合、少量がブレンドされた場合であっても、得られる粘度が高くなり過ぎる可能性があり、プリプレグの製造時に、タック性及びドレープ性が低下してしまう。重量平均分子量が2,000~60,000g/モルの熱可塑性樹脂が用いられる場合、エポキシ樹脂組成物との相溶性の改善及びエポキシ樹脂組成物の耐熱性を損なうことのない力学特性の改善が得られる結果となる。さらに、プリプレグの製造時に、適切なタック性及びドレープ性が実現される。
【0163】
本発明で用いられる成分の重量平均分子量及び数平均分子量の特定は、ゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)によって得ることができる。モノマーの数平均分子量は、1つのモノマー単位の分子量に相当する。重量平均分子量及び数平均分子量を測定するための方法の例としては、2つのShodex 80M(登録商標)[カラム](昭和電工製)及び1つのShodex 802(登録商標)[カラム](昭和電工製)を用い、0.3μLのサンプルを注入し、流速1mL/分で測定したサンプルの保持時間を、ポリスチレンから構成された較正サンプルの保持時間を用いることによって分子量に変換する、という方法が挙げられる。液体クロマトグラフィにおいて複数のピークが観察された場合、液体クロマトグラフィによって予め目的の成分を分離し、続いて各成分をGPCに掛け、続いて分子量への変換を行う。
【0164】
エポキシ樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含有する必要はないが、本発明の様々実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1質量部数、少なくとも5質量部数、又は少なくとも10質量部数の熱可塑性樹脂を含む。例えば、熱可塑性樹脂は、成分[A]の100質量部数に対して1~30質量部数を占める。熱可塑性樹脂の量をそのような範囲に設定することにより、エポキシ樹脂組成物の粘度、得られるプリプレグのタック性、及び得られる繊維強化複合材料の力学特性の間のバランスを得ることができる。
【0165】
一実施形態では、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物の耐熱性及び硬化性を大きく低下させない範囲内で、熱可塑性粒子を含み得る。熱可塑性粒子は、繊維強化複合材料の耐衝撃性を増加させるために用いられる。繊維強化複合材料は、一般に積層体構造を取っており、構造に対して衝撃が加えられると、積層体の層間に高い応力が発生して、層間剥離の損傷が引き起こされる。そのような外的衝撃に対する繊維強化複合材料の耐性を改善するためには、したがって、繊維強化複合材料の強化繊維を含んでいる層の間に形成される樹脂層(以降、「層間樹脂層」と称する場合がある)の靭性を改善することが必要なだけである。本発明において、繊維強化複合材料の靭性は、エポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂を添加することによって改善され、さらに繊維強化複合材料の層間樹脂層の靭性を選択的に増加させるために、熱可塑性粒子が好ましくは添加される。
【0166】
本発明で用いられる熱可塑性粒子の例としては、エポキシ樹脂中での使用を意図する例示的な熱可塑性樹脂として既に列挙したものと同じ熱可塑性樹脂が挙げられる。特に、ポリアミド粒子は、その靭性が非常に高いために、高い耐衝撃性を有する繊維強化複合材料の製造に役立つことから、特に好ましい。様々なポリアミド粒子材料の中でも、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド66、ポリアミド6/12共重合体、及び特開平01-104624(A)号の実施例1に記載のように、エポキシ化合物で変性してセミIPN構造としたポリアミド重合体(セミIPNポリアミド)が、エポキシ樹脂に対する特に高い接着性を発現することができる。ここで、IPNは、「相互侵入高分子網目構造」を表し、これは、重合体ブレンドの一種である。架橋重合体がブレンド成分として用いられ、異なる架橋重合体が、部分的に又は完全に交絡して、多重網目構造を形成する。セミIPNは、架橋重合体と直鎖状重合体とから形成される多重網目構造を有する。セミIPN熱可塑性樹脂を主成分として含有する粒子は、例えば、共通の溶媒中に熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを溶解し、それらを均一に混合し、再沈を行うなどによって製造することができる。エポキシ樹脂及びセミIPNポリアミドの粒子を用いることは、高い耐熱性及び高い耐衝撃性を有するプリプレグを製造するのに役立つ。
【0167】
一実施形態では、熱可塑性粒子がエポキシ樹脂中に用いられることが好ましく、なぜなら、マトリックス樹脂として用いられるエポキシ樹脂組成物の接着性が増加し、このことは、改善された耐衝撃性を有する繊維強化複合材料を製造するのに役立つからである。
【0168】
そのような熱可塑性粒子の形状は、球状、非球状、多孔質、針状、ウィスカー状、又はフレーク状であってよい。真球が好ましく、その理由は、真球は、エポキシ樹脂の流動性を低下させず、したがって繊維層中への良好な含浸性を維持することができるからであり、さらには、繊維強化複合材料の落錘衝撃(又は局所衝撃)試験において、局所衝撃に起因する層間剥離の度合いがさらに低下し、それによって、衝撃を受けた後に繊維強化複合材料に応力が掛けられた場合に、局所衝撃に起因して、応力集中に帰する破壊の開始点として作用する層間剥離部分の数が減少することで、高い耐衝撃性を有する繊維強化複合材料を得ることが可能となるからである。
【0169】
ポリアミド粒子の具体例としては、SP-500、SP-10、TR-1、及びTR-2(すべて東レ株式会社製)、Orgasol(登録商標)1002D、Orgasol(登録商標)2001UD、Orgasol(登録商標)2001EXD、Orgasol(登録商標)2002D、Orgasol(登録商標)3202D、Orgasol(登録商標)3501D、及びOrgasol(登録商標)3502D(すべてArkema製)が挙げられる。
【0170】
一実施形態では、熱可塑性粒子のいくつかの種類は、硬化工程時にマトリックス樹脂中に溶解しないことから、より高い改質効果を有する。硬化工程時に溶解しないという特徴は、硬化工程時に樹脂の流動性を維持し、含浸性を改善することにおいても有効である。したがって、硬化工程時にマトリックス樹脂中に溶解しない粒子が、上述の熱可塑性粒子として用いるのに好ましい。
【0171】
一実施形態では、本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明に従うプリプレグを硬化することによって得られる繊維強化複合材料の高い耐衝撃性をさらに高めるために、ゴム粒子を含んでもよい。
【0172】
本発明のために用いられることになるゴム粒子は、天然ゴム製であっても又は合成ゴム製であってもよい。特に、エポキシ樹脂に不溶である架橋ゴムの粒子が好ましい。ゴム粒子がエポキシ樹脂に不溶であると、硬化生成物は、粒子を含まないエポキシ樹脂の硬化生成物とほぼ同じ耐熱性を有することになる。さらに、熱硬化性樹脂の種類又は硬化条件の違いに応じたモルホロジーの変化は起こらず、したがって、熱硬化性樹脂硬化物は、靭性などの安定な物理的特性を有することになる。好ましい架橋ゴム粒子としては、例えば、1又は複数の不飽和化合物との共重合体の粒子、及び1又は複数の不飽和化合物と架橋性モノマーとの共重合を通して製造された粒子が挙げられる。
【0173】
そのような不飽和化合物の例としては、エチレン及びプロピレンなどの脂肪族オレフィン、スチレン及びメチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、ブタジエン、ジメチルブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンなどの共役ジエン化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、及びメタクリル酸ブチルなどの不飽和カルボキシレート、並びにアクリロニトリルなどのシアン化ビニルが挙げられる。
【0174】
さらに、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、又はエポキシ樹脂若しくは硬化剤と反応性である他の官能基を有する化合物を用いることも有効であり得る。好ましい化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸グリシジル、ビニルフェノール、ビニルアニリン、及びアクリルアミドが挙げられる。
【0175】
そのような架橋性モノマーの好ましい例としては、1分子中に複数の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、及びエチレングリコールジメタクリレートなどである。
【0176】
これらの粒子は、例えば乳化重合法及び懸濁重合法を含む公知の従来の重合方法によって製造することができる。典型的な乳化重合プロセスは、過酸化物などのラジカル重合開始剤、メルカプタン及びハロゲン化炭化水素などの分子量調節剤、並びに乳化剤の存在下で、不飽和化合物、架橋性モノマーなどを乳化重合する工程、重合変換の所定の度合いに到達した後に重合反応を停止するために反応停止剤を添加する工程、並びにそれに続く重合系から未反応モノマーを除去するための水蒸気蒸留の工程を含み、それによって、共重合体のラテックスが得られる。乳化重合法によって得られたそのようなラテックスから水が除去されて、架橋ゴム粒子が得られる。
【0177】
そのような架橋ゴム粒子の例としては、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、及びコアシェルゴム粒子が挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、中心部分と表面部分とが異なる重合体から形成されている球状重合体粒子の形態であり、コア相と単一シェル相とから成る単純な二相構造、又はソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、及びハードシェルから成り、中心から表面に向かってこの順番で配置されているものを例とする、複数のシェル相を有する多層構造(多層コアシェルゴム粒子)を有し得る。ここで、ソフト相は、上述したゴムの相を意味し、一方ハード相は、ゴムではない樹脂の相を意味する。これらの異なる種類の架橋ゴム粒子は、単独で用いられてよく、又はこれらの2つ以上の組み合わせとして用いられてもよい。
【0178】
エポキシ樹脂組成物は、本発明の有利な効果を損なわない限りにおいて、熱硬化性樹脂粒子、並びにシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、カーボン粒子、及び金属粉末などの無機フィラーを含有してよい。カーボンブラックの例としては、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、及びケッチェンブラックが挙げられる。
【0179】
ある特定の実施形態では、エポキシ樹脂組成物がプリプレグのマトリックス樹脂として用いられる場合、エポキシ樹脂組成物の80℃での初期粘度は、好ましくは0.5~400Pa・sの範囲内である。本明細書において、80℃での初期粘度とは、以下で述べる方法によって、80℃で1分間保持した後に測定される粘度(V)を意味する。80℃での初期粘度が0.5Pa・s以上である場合、繊維強化複合材料を成形する際に過剰な樹脂流動はほとんど発生せず、強化繊維含有率の所望されない変動が抑制され得る。さらに、80℃での初期粘度が0.5Pa・s以上である場合、繊維強化複合材料の成形時に、エポキシ樹脂組成物中の粉末成分が望ましくない沈降を起こさず、均一に分散され、したがって、良好な均一性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。80℃での初期粘度が400Pa・s以下である場合、プリプレグの製造時にエポキシ樹脂組成物を強化繊維中に適切に含浸させることができ、得られる繊維強化複合材料中にボイドはほとんど発生せず、したがって、繊維強化複合材料の強度の低下が抑制され得る。エポキシ樹脂組成物の80℃での初期粘度は、好ましくは0.5~400Pa・sの範囲内、より好ましくは1~200Pa・sの範囲内、さらにより好ましくは5~150Pa・sの範囲内、特に好ましくは5~100Pa・sの範囲内であり、それによって、プリプレグ製造工程において、エポキシ樹脂組成物が強化繊維中に容易に含浸され、高い繊維質量含有率のプリプレグが製造される。
【0180】
非常に優れた硬化性と共に非常に優れた潜在性を有するために、本発明に従うエポキシ樹脂組成物は、(I)に定められるTとTとの間の関係を満たすことが必須である。エポキシ樹脂組成物が(I)に定められるTとTとの間の関係を満たすと、成分[A]と成分[B-1]との反応は、成分[C]によって実質的に促進されず、その結果、非常に優れたTgの樹脂硬化物が得られる。加えて、エポキシ樹脂組成物が(II)に定められるTとTとの間の関係を満たすと、成分[A]と成分[B-2]との反応が、成分[C]によって促進される。T-Tが5.0未満であると、成分[A]と成分[B-2]との反応は、実質的に促進されない。
5.0>|T-T| (I)
5.0≦T-T (II)
【0181】
[C]が成分[A]と成分[B-2]との反応を促進する場合、Tは常にTよりも小さい。T-Tが絶対値であると、[C]が、実際には成分[A]と成分[B-2]との反応を減速させる、すなわちT>Tという状況が含まれる。したがって、(I)及び(II)の関係をエポキシ樹脂組成物が満たすということは、成分[C]が、成分[A]、[B-1]、[B-2]、及び[C]を含むエポキシ樹脂組成物中において成分[A]と成分[B-2]との反応を選択的に促進する能力を有することを意味し、その結果として、エポキシ樹脂組成物は、非常に優れた硬化性と共に非常に優れた潜在性を呈する。
【0182】
(I)及び(II)の関係において、Tは、[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、Tは、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、Tは、[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)であり、Tは、[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)である。外挿開始温度は、[B-1]又は[B-2]の活性水素の総数が[A]のエポキシ基の総数1.0当量に対して1.0当量であり、[C]対[A]の質量比が1:100である本明細書の「実施例」セクションで述べる混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される。さらに、「|T-T|」は、本明細書で用いられる場合、TとTとの間の差異の絶対値を意味する。
【0183】
ある特定の実施形態では、|T-T|は、3.0未満であることが好ましく、より好ましくは2.0未満であり、さらにより好ましくは1.0未満である。
【0184】
別の実施形態では、T-Tは、7.0以上であることが好ましく、より好ましくは10.0以上であり、さらにより好ましくは12.0以上であり、特に好ましくは15.0以上である。
【0185】
一実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、T1p、T2p、T3p、及びT4pの間の関係(III)及び(IV)を満たし得る。エポキシ樹脂組成物が(III)を満たすと、成分[A]と成分[B-1]との反応は、成分[C]によって実質的に促進されることはなく、その結果、非常に優れたTgの樹脂硬化物が得られる。他方、エポキシ樹脂組成物が(IV)を満たすと、成分[A]と成分[B-2]との反応は、成分[C]によって促進されることになる。T3p-T4pが3.0未満であると、成分[A]と成分[B-2]との反応は、実質的に促進されない。エポキシ樹脂組成物が(III)及び(IV)を満たすと、成分[C]は、より効果的に選択的に促進する能力を示し得る。
2.0>|T1p-T2p| (III)
3.0≦T3p-T4p (IV)
【0186】
定められる(III)及び(IV)の関係において、T1pは、[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、T2pは、[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、T3pは、[A]と[B-2]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、T4pは、[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)である。ピーク温度は、成分[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C]対[A]の質量比が1:100である本明細書の「実施例」セクションで述べる混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定によって特定される。さらに、「|T1p-T2p|」は、本明細書で用いられる場合、T1pとT2pとの間の差異の絶対値を意味する。成分[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、以下の式から特定した。
【数3】
【0187】
上記式中、「エポキシ樹脂n」は、すべてのエポキシ樹脂成分[A]のうちのn番目のエポキシ樹脂成分を表す。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物において3種類のエポキシ樹脂が用いられる場合、nは、3である。
【0188】
ある特定の実施形態では、|T1p-T2p|は、1.5未満であってよく、別の実施形態では、1.0未満であってよく、さらに別の実施形態では、0.5未満であってよい。
【0189】
別の実施形態では、T3p-T4pは、5.0以上であってよく、別の実施形態では7.0以上であってよく、さらに別の実施形態では10.0以上であってよい。
【0190】
一実施形態では、成分[C-1]は、エポキシ樹脂組成物中において、以下の関係(V)及び(VI)を満たす結果となる。
5.0>|T-T| (V)
2.0>|T1p-T5p| (VI)
【0191】
(V)及び(VI)において、Tは、[A]と[B-1]との混合物の反応における開始温度(℃)であり、Tは、[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における開始温度(℃)であり、T1pは、[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)であり、T5pは、[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)である。開始温度及びピーク温度は、成分[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比が1.0であり、[C-1]対[A]の質量比が1:100である本明細書の「実施例」セクションで述べる混合物を用いて、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定(DSC)によって特定される。さらに、「|T-T|」及び「|T1p-T5p|」は、本明細書で用いられる場合、それぞれTとT、及びT1pとT5pの間の差異の絶対値を意味する。成分[B-1]又は[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は、以下の式から特定した。
【数4】
【0192】
上記式中、「エポキシ樹脂n」は、すべての成分[A]のうちのn番目のエポキシ樹脂成分を表す。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物において3種類のエポキシ樹脂が用いられる場合、nは、3である。
【0193】
エポキシ樹脂組成物が関係(V)及び(VI)を満たす場合、非常に優れた硬化性を伴う非常に優れた潜在性、及び非常に優れたTgを有する樹脂硬化物が得られる結果となる可能性が高い。この結果は、成分[C-1]が、成分[A]と成分[B-2]との反応を促進するが、成分[A]と成分[B-1]との反応は(大きくは)促進しないという理由から可能であり得る。後者の反応の方が、前者の反応よりも低い潜在性をもたらす傾向にあることから、前者の反応のみを促進することは、非常に優れた硬化性と共に非常に優れた潜在性を実現するために好都合であるはずである。
【0194】
ある特定の実施形態では、|T-T|は、3.0未満であることが好ましく、より好ましくは2.0未満であり、さらにより好ましくは1.0未満である。
【0195】
別の実施形態では、|T1p-T5p|は、1.5未満であってよく、別の実施形態では、1.0未満であってよく、さらに別の実施形態では、0.5未満であってよい。
【0196】
一実施形態では、80℃で4時間保持した後に測定したエポキシ樹脂組成物の粘度(V)の、80℃で1分間保持した後に測定した粘度(V)に対する比(V/V)は、2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、さらにより好ましくは1.2以下である。80℃での増粘倍率を反映する比V/Vは、混練工程又はプリプレグの製造工程において、エポキシ樹脂組成物のポットライフの指標として用いることができる。すなわち、比V/Vがより小さいと、80℃以下の温度での良好なポットライフが得られる結果となる。比V/Vが2.5以下である場合、エポキシ樹脂組成物の潜在性が高く、プリプレグ製造工程における強化繊維中への樹脂の含浸性が低下せず、その結果、成形品中に存在するボイドが最小限に抑えられる。
【0197】
80℃で1分間(V)及び4時間(V)保持した後のエポキシ樹脂組成物の粘度は、直径40mm(上部)及び50mm(下部)のパラレルプレートを装着した動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)を、パラレルプレートのギャップ0.6mm、角周波数10ラジアン/秒、歪み10%、及び測定温度80℃の条件下で運転して用い、ASTM D 4473-95aに従って測定する。
【0198】
プリプレグ/繊維強化複合材料
本発明のプリプレグは、マトリックス樹脂としての記載した通りのエポキシ樹脂組成物で強化繊維を含浸することによって製造される。強化繊維の好ましい例としては、炭素繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などが挙げられ、これらの繊維の中でも、炭素繊維が特に好ましい。
【0199】
プリプレグは、様々な一般的に知られる方法によって製造することができ、例えば、マトリックス樹脂を、樹脂の粘度を低下させるためにメチルエチルケトン及びメタノールなどの溶媒に溶解し、続いて強化繊維束をその溶液で含浸するウェット法、又はマトリックス樹脂を、樹脂の粘度を低下させるために加熱し、続いて強化繊維束をその樹脂で含浸するホットメルト法である。
【0200】
ウェット法では、プリプレグは、サイジング剤を塗布した炭素繊維束を、マトリックス樹脂を含有する溶液中に浸漬し、続いて強化繊維束を引き上げ、オーブン又は他の装置を用いて溶媒を蒸発させることによって製造される。
【0201】
ホットメルト法では、プリプレグは、熱によって粘度が低下されたマトリックス樹脂で強化繊維束を直接含浸する方法によって、又は別の選択肢として、離型紙上などにマトリックス樹脂組成物のコーティングフィルムを作製し、続いてそのフィルムを、強化炭素繊維束の両面若しくは片面に重ね合わせ、続いてフィルムに加熱加圧を掛けて、強化繊維束をマトリックス樹脂で含浸する方法によって製造される。ホットメルト法は、プリプレグ中に溶媒が残留しないことから、ウェット法よりも好ましい。
【0202】
プリプレグの強化繊維断面密度は、100~1000g/mなど、200~1000g/mなどの50~1000g/mであり得る。断面密度が少なくとも50g/mであると、繊維強化複合材料の成形時に所定の厚さを確保するために積層する必要のあるプリプレグの数を少なくすることができ、これによって、積層プロセスが単純化され得る。他方、断面密度が1000g/m以下であると、プリプレグのドレープ性が良好に維持される。プリプレグの強化繊維質量分率は、いくつかの実施形態では、40~90質量%、他の実施形態では、50~85質量%、又はさらなる他の実施形態では、60~80質量%であってもよい。強化繊維の質量分率が少なくとも40質量%であると、非常に優れた比強度及び比弾性率を有する繊維強化複合材料を提供して、さらには硬化時間の間に繊維強化複合材料が過剰の熱を発生させることを防止するのに充分な繊維含有率である。強化繊維の質量分率が90質量%以下であると、樹脂による強化繊維の含浸によって、繊維強化複合材料中での大量のボイド形成のリスクが低減される。
【0203】
本発明のプリプレグを用いることによって繊維強化複合材料を形成するための方法は、プリプレグを積層し、この積層体に圧力を掛けながらマトリックス樹脂を熱硬化するという方法によって例示される。
【0204】
プリプレグ積層成形法下での加熱加圧の適用は、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などを適宜用いることによって実現され得る。
【0205】
オートクレーブ成形は、プリプレグが所定の形状のツールプレート上で積層され、次にバッギングフィルムで覆われ、続いて空気が積層体から引き抜かれながら加熱加圧が適用されることによる硬化が行われる方法である。この方法は、繊維配向の精密な制御を可能とし、さらには、ボイド含有率を最小限に抑えることによって、非常に優れた力学特性を有する高品質な成形された材料の提供も可能とする。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.3~1.0MPaであってよく、一方成形温度は、90~300℃の範囲内であってよい。
【0206】
ラッピングテープ法は、プリプレグが、マンドレル又は他の何らかの芯金の周りに巻き付けられて、管状繊維強化複合材料が形成される方法である。この方法は、ゴルフシャフト、釣り竿、及び他の棒形状品の製造に用いられ得る。より具体的には、この方法は、プリプレグを固定してそれに圧力を適用する目的で、張力下でプリプレグ上に巻き付けるための熱可塑性フィルムから成るラッピングテープを用いて、マンドレルの周りにプリプレグを巻き付けることを含む。オーブン中での加熱による樹脂の硬化後、マンドレルが取り除かれて、管状体が得られる。ラッピングテープの巻き付けに用いられる張力は、20~100Nであってよい。成形温度は、80~300℃の範囲内であってよい。
【0207】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂チューブ又は他の何らかの内圧アプリケーターの周りにプリプレグを巻き付けることによって得られるプリフォームが、金属モールド内部にセットされ、続いて内圧アプリケーター中に高圧ガスが導入されて圧力が適用され、それに付随して同時に金属モールドが加熱されてプリプレグが成形される方法である。この方法は、ゴルフシャフト、バット、及びテニス又はバドミントンのラケットなどの複雑な形状を有する物体を成形する際に用いられ得る。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.1~2.0MPaの範囲内であってよい。成形温度は、室温~300℃の範囲内、又は180~275℃の範囲内であってよい。
【0208】
本発明のプリプレグから製造される繊維強化複合材料は、本明細書で述べるように、クラスA表面を有し得る。「クラスA表面」の用語は、審美的欠点や欠陥のない極めて高い仕上げ品質特性を呈する表面を意味する。
【0209】
本明細書で述べるエポキシ樹脂組成物を硬化することから得られる硬化されたエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有する繊維強化複合材料は、有利には、スポーツ用途、一般産業用途、及び航空宇宙用途に用いられる。これらの材料が有利に用いられるスポーツ用途としては、限定されるものではないが、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス又はバドミントンのラケット、ホッケースティック、及びスキー用ストックが挙げられる。これらの材料が有利に用いられる一般産業用途としては、限定されるものではないが、輸送手段(自動車、自転車、船舶、及び鉄道車両など)用の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラー、屋根材、ケーブル、及び補修/補強材が挙げられる。
【0210】
本明細書中において、明確で簡潔な明細書の作成が可能となる方法で実施形態を記載してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わされ得ること又は分離され得ることを意図しており、そのことは理解される。例えば、本明細書で述べるすべての好ましい特徴は、本明細書で述べる本発明のすべての態様に適用可能であることは理解される。
【0211】
本発明は、本明細書において具体的な実施形態を参照して説明され、記載されるが、本発明の範囲は、これらの実施形態によって限定されることを意図するものではない。そうではなく、本発明から逸脱することなく請求項の均等物の範囲内で、様々な改変が成されてもよい。
【実施例
【0212】
次に、本発明の実施形態について、例を挙げてより詳細に記載する。様々な特性の測定は、以下で述べる方法を用いて行った。これらの特性は、特に記載のない限り、23℃の温度及び50%の相対湿度を含む環境条件下で測定した。次に、プリプレグは、ホットメルトプリプレグ法を用いて例示的樹脂から作製した。実施例及び比較例で用いた成分は、以下の通りである。
<成分[A]>
ARALDITE(登録商標)MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、Huntsman Corporation製、エポキシ当量114g/当量)
ARALDITE(登録商標)MY0510(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、Huntsman Corporation製、エポキシ当量101g/当量)
EPON(商標)825(ビスフェノールA型エポキシ、Hexion Inc.製、エポキシ当量178g/当量)
EPICLON(登録商標)830(ビスフェノールF型エポキシ、DIC株式会社製、エポキシ当量169g/当量)
EPICLON(登録商標)4770(ビスナフタレン型エポキシ樹脂、DIC株式会社製、エポキシ当量205g/当量)
TOREP(登録商標)A-204E(ジグリシジル-N-フェノキシアニリン、東レ・ファインケミカル株式会社製、エポキシ当量167g/当量)
<成分[B-1]>
SEIKACURE-S(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、セイカ株式会社製、活性水素当量62g/当量)
ARADUR(登録商標)9719-1(3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、Huntsman Corporation製、活性水素当量62g/当量)
<成分[B-2]>
IDH(イソフタル酸ジヒドラジド、大塚化学株式会社製、融点:220℃、活性水素当量49g/当量)
Technicure(登録商標)ADH(アジピン酸ジヒドラジド、A&C Catalysts,Inc.製、融点:180℃、活性水素当量29g/当量)
NDH(2,6-ナフタレンジカルボヒドラジド、融点:>220℃、活性水素当量61g/当量)
<成分[C]>
TBA-OTF(テトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、Sigma-Aldrich,Inc.製、融点:58℃)
EPTS(p-トルエンスルホン酸エチル、Sigma-Aldrich,Inc.製)
ピペリジニウムBF(ピペリジニウムトリフルオロボレート、Sigma-Aldrich,Inc.製)
San-Aid SI-150(4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、三新化学工業株式会社製、融点:149℃)
<成分[C-1]>
TPP(トリフェニルホスフィン、北興化学工業株式会社製、融点:82℃)
TPP-PB(登録商標)(テトラフェニルホスホニウムブロマイド、北興化学工業株式会社製、融点:152℃)
TPP-S(登録商標)(トリフェニルホスフィントリフェニルボレート、北興化学工業株式会社製、融点:213℃)
<熱可塑性樹脂>
Virantage(登録商標)VW-10700RFP(ポリエーテルスルホン、Solvay製、重量平均分子量21,000g/モル、Tg=220℃)
【0213】
(1)エポキシ樹脂組成物の製造
成分[A]のエポキシ樹脂と、表A1~表A4及び表B1~表B5に示す量及び割合の熱可塑性樹脂とをニーダーに供給し、混合しながら150℃に加熱し、続いて熱可塑性樹脂が溶解して透明な粘稠液体を形成するように、1時間撹拌した。この液体を、混合しながら75℃まで放冷し、続いて成分[B-1]及び[B-2]の硬化剤を添加し、次に成分[C]の促進剤を添加し、続いてさらに30分間混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。表A1~表A4及び表B1~表B5に、様々な例示的樹脂組成物の組成及びそれらの反応特性の概要を示す。
【0214】
(2)エポキシ樹脂組成物の外挿開始温度及びピーク温度の特定
以下の外挿開始温度(T~T)及びピーク温度(T1p~T5p)は、示差走査熱量測定(DSC)により、ASTM E 2160-04(2018)に従って特定した。
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
1p:[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
2p:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
3p:[A]と[B-2]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
4p:[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
5p:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
【0215】
上述の混合物は、以下で述べる成分を混合することによって製造した。
【0216】
(実施例A1~A5のT、T1p、T、及びT2p
(比較例A1~A2のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のTOREP(登録商標)A-204Eをニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての50質量部数のSEIKACURE-Sを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT2pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0217】
(実施例A6~A13及び比較例A6~A7のT、T1p、T、及びT2p
(比較例A3~A5のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のTOREP(登録商標)A-204Eをニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての50質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT2pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0218】
(実施例A14のT、T1p、T、及びT2p
(比較例A8のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての60質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び40質量部数のEPON(商標)825をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての48質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT2pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0219】
(実施例A15のT、T1p、T、及びT2p
(比較例A9のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のEPICLON(登録商標)4770をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての48質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT2pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0220】
(実施例A16のT、T1p、T、及びT2p
(比較例A10のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての50質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び50質量部数のARALDITE(登録商標)MY0510をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての45質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT2pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0221】
(実施例A17のT、T1p、T、及びT2p
(比較例A11のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての50質量部数のARALDITE(登録商標)MY0510及び50質量部数のEPICLON(登録商標)830をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての45質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT2pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0222】
(実施例A1~A13及び比較例A6~A7のT、T3p、T、及びT4p
(比較例A1~A5のT及びT3p
及びT3pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のTOREP(登録商標)A-204Eをニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-2]としての40質量部数のIDHを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT4pを特定する場合は、成分[B-2]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT3pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0223】
(実施例A14のT、T3p、T、及びT4p
(比較例A8のT及びT3p
及びT3pを特定するために、成分[A]としての60質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び40質量部数のEPON(商標)825をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-2]としての38質量部数のIDHを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT4pを特定する場合は、成分[B-2]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT3pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0224】
(実施例A15のT、T3p、T、及びT4p
(比較例A9のT及びT3p
及びT3pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のEPICLON(登録商標)4770をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-2]としての38質量部数のIDHを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT4pを特定する場合は、成分[B-2]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT3pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0225】
(実施例A16のT、T3p、T、及びT4p
(比較例A10のT及びT3p
及びT3pを特定するために、成分[A]としての50質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び50質量部数のARALDITE(登録商標)MY0510をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-2]としての36質量部数のIDHを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT4pを特定する場合は、成分[B-2]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT3pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0226】
(実施例A17のT、T3p、T、及びT4p
(比較例A11のT及びT3p
及びT3pを特定するために、成分[A]としての50質量部数のARALDITE(登録商標)MY0510及び50質量部数のEPICLON(登録商標)830をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-2]としての36質量部数のIDHを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-2]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T及びT4pを特定する場合は、成分[B-2]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT3pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0227】
(実施例B1~B5、B18のT、T1p、T、T2p、T、及びT5p
(比較例B1~B3、B16のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のTOREP(登録商標)A-204Eをニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての50質量部数のSEIKACURE-Sを添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T、T2p、T、及びT5pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0228】
(実施例B6~B13及び比較例B8~B10のT、T1p、T、T2p、T、及びT5p
(比較例B4~B7、B11のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のTOREP(登録商標)A-204Eをニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての50質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T、T2p、T、及びT5pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0229】
(実施例B14のT、T1p、T、T2p、T、及びT5p
(比較例B12のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての60質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び40質量部数のEPON(商標)825をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての48質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T、T2p、T、及びT5pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0230】
(実施例B15のT、T1p、T、T2p、T、及びT5p
(比較例B13のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての70質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び30質量部数のEPICLON(登録商標)4770をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての48質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T、T2p、T、及びT5pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0231】
(実施例B16のT、T1p、T、T2p、T、及びT5p
(比較例B14のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての50質量部数のARALDITE(登録商標)MY721及び50質量部数のARALDITE(登録商標)MY0510をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての45質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T、T2p、T、及びT5pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0232】
(実施例B17のT、T1p、T、T2p、T、及びT5p
(比較例B15のT及びT1p
及びT1pを特定するために、成分[A]としての50質量部数のARALDITE(登録商標)MY0510及び50質量部数のEPICLON(登録商標)830をニーダーに供給し、混合しながら75℃に加熱し、続いて成分[B-1]としての45質量部数のARADUR(登録商標)9719-1を添加し、続いて30分間にわたってさらに混合して、混合物を得た。なお、ここで、成分[B-1]のすべての活性水素の、成分[A]のすべてのエポキシ基に対する当量比は1.0である。T、T2p、T、及びT5pを特定する場合は、成分[B-1]の添加後に1.0質量部数の成分[C]を添加したこと以外は、T及びT1pを特定する場合と同じ手順を行って、成分[C]対成分[A]の質量比が1:100である混合物を得た。
【0233】
これらの混合物のおよそ4mgの試料をサンプリングした後、各試料を示差走査熱量計(DSC Q200、TA Instruments製)の窒素雰囲気中に置き、温度を-50℃で1分間維持し、その後、10℃/分の昇温速度で325℃までの温度範囲にわたって一度加熱することによって、熱流対温度のDSC曲線を得た。ASTM E 2160-04(2018)に従って、外挿基線と、最大変化率点に対する接線との交点に相当する温度を、外挿開始温度として報告した。
【0234】
(3)エポキシ樹脂組成物のゲル化時間の特定
エポキシ樹脂組成物のゲル化時間を、Advanced Polymer Analyzer(APA2000、ALPHA Technologies製)を用い、これをダイの種類としてパラレルプレート、ダイギャップ2.583mm、周波数1.67Hz、及び歪み0.7%の条件下で作動させて特定した。測定温度を、1.7℃/分の速度で40℃から105℃まで上昇させ、続いて105℃で12時間保持した。ASTM D 4473-95aに従い、加熱開始時間を0分として、クロスオーバーポイント、すなわち貯蔵弾性率(G’)値が損失弾性率(G’’)値よりも大きくなった点に到達するまでの時間を、ゲル化時間として報告した。
【0235】
(4)エポキシ樹脂組成物の粘度(V及びV)の測定
80℃で1分間(V)及び4時間(V)保持した後のエポキシ樹脂組成物の粘度を、直径40mm(上部)及び50mm(下部)のパラレルプレートを装着した動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)を、パラレルプレートのギャップ0.6mm、角周波数10ラジアン/秒、歪み10%、及び測定温度80℃の条件下で運転して用い、ASTM D 4473-95aに従って測定した。
【0236】
(5)成分の融点の特定
成分[B]及び[C]の融点を、ASTM D 3418-15に従い、各成分の約4mgを試料として用いたDSCによって得た溶融曲線のピーク温度から特定した。
【0237】
実施例A1~A4及び比較例A1
比較例A1は、成分[C]を含有しておらず、一方実施例A1~A4は、様々な量の成分[C]を用いており、エポキシ樹脂組成物は、(I)及び(II)に定められるT、T、T、及びTの関係を満たしていた。実施例A1~A4のゲル化時間は、比較例A1と比べて9%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0238】
実施例A5及び比較例A2
比較例A2は、成分[C]を含有しておらず、一方実施例A5は、成分[C]を用いており、エポキシ樹脂組成物は、(I)及び(II)に定められるT、T、T、及びTの関係を満たしていた。成分[B-2]の量は、実施例A1~A4及び比較例A1の場合よりも少なかった。実施例A5のゲル化時間は、比較例A2と比べて8%短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0239】
実施例A6~A9及び比較例A3~A5
比較例A3~A5は、成分[C]を含有しておらず、一方実施例A6~A9は、様々な量の成分[C]を用いており、エポキシ樹脂組成物は、(I)及び(II)に定められるT、T、T、及びTの関係を満たしていた。成分[B-1]は、実施例A1~A5及び比較例A1~A2で用いたものと異なっていた。比較例A3~A5では、ゲル化時間は、成分[B-2]の量を増加させても短縮されなかった。他方、実施例A6~A9のゲル化時間は、比較例A3~A5と比べて5%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0240】
実施例A10~A13及び比較例A3、A6~A7
比較例A6~A7は、様々な成分[C]を用いているが、エポキシ樹脂組成物は、(I)に定められるT及びTの関係を満たしておらず、一方実施例A10~A13は、様々な成分[C]を用い、エポキシ樹脂組成物は、(I)及び(II)に定められるT、T、T、及びTの関係を満たしていた。実施例A10~A13のゲル化時間は、比較例A3と比べて12%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。他方、比較例A6~A7では、ゲル化時間は、比較例3と比べて充分に短縮されたが、その潜在性は、実施例A10~A13の場合よりも著しく悪化した。
【0241】
実施例A14~A17及び比較例A8~A11
比較例A14~A17は、様々な成分[A]を用いていたが、成分[C]は含有しておらず、一方実施例A14~A17は、様々な成分[A]及び成分[C]を用いており、エポキシ樹脂組成物は、(I)及び(II)に定められるT、T、T、及びTの関係を満たしていた。実施例A14~A17のゲル化時間は、それぞれ比較例A10~A13と比べて7%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0242】
実施例B1~B4及び比較例B1、B3
比較例B1及びB3は、成分[C]を含有していなかったが、一方実施例B1~B4は、様々な量の成分[C]を用いていた。実施例B1~B4のゲル化時間は、比較例B1及びB3と比べて9%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0243】
実施例B5及び比較例B2、B3
比較例B2及びB3は、成分[C]を含有していなかったが、一方実施例B5は、成分[C]を用いていた。ここで、成分[B-2]の量は、実施例B1~B4及び比較例B1の場合よりも少なかった。実施例B5のゲル化時間は、比較例B2及びB3と比べて8%短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0244】
実施例B6~B9及び比較例B4~B7
比較例B4~B7は、成分[C]を含有していなかったが、一方実施例B6~B9は、成分[C]を用いていた。ここで、成分[B-1]は、実施例B1~B5及び比較例B1~B3で用いたものと異なっていた。比較例B5~B7では、ゲル化時間は、成分[B-2]の量を増加させても短縮されなかった。他方、実施例B6~B9のゲル化時間は、比較例B4~B7と比べて5%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0245】
実施例B10~B12及び比較例B5、B8~B10
比較例B8~B10は、成分[C]以外の様々な促進剤を用いており、一方実施例B7~B10は、様々な成分[C]を用いていた。実施例B10~B12のゲル化時間は、比較例B5と比べて19%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。他方、比較例B8~B10では、ゲル化時間は、比較例B5と比べて充分に短縮されたが、その潜在性は、実施例B10~B12の場合よりも大きく悪化した。
【0246】
実施例B13及び比較例B11
比較例B11は、成分[C]を含有していなかったが、一方実施例B13は、成分[C]を用いていた。ここで、成分[B-2]は、実施例B1~B12及び比較例B1~B10で用いたものと異なっていた。実施例B13のゲル化時間は、比較例B11と比べて3%短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【0247】
実施例B14~B17及び比較例B12~B15
比較例B12~B15は、様々な成分[A]を用いていたが、成分[C]は含有しておらず、一方実施例B14~B17は、様々な成分[A]及び成分[C]を用いていた。実施例B14~B17のゲル化時間は、それぞれ比較例B12~B15と比べて7%以上短縮され、一方充分な潜在性は維持された。
【表A1】
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
(I):5.0>|T-T
(II):5.0≦T-T
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
Yは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていることを意味する。
Nは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていないことを意味する。
【表A2】
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
(I):5.0>|T-T
(II):5.0≦T-T
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
Yは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていることを意味する。
Nは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていないことを意味する。
【表A3】
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
(I):5.0>|T-T
(II):5.0≦T-T
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
Yは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていることを意味する。
Nは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていないことを意味する。
【表A4】
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-2]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
(I):5.0>|T-T
(II):5.0≦T-T
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
Yは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていることを意味する。
Nは、例が(I)又は(II)の関係を満たしていないことを意味する。
【表B1】
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
1p:[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
2p:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
5p:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
【表B2】
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
1p:[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
2p:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
5p:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
【表B3】
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
1p:[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
2p:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
5p:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
【表B4】
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
1p:[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
2p:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
5p:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
【表B5】
ゲル化時間減少率:コントロール樹脂に対するゲル化時間の減少率
:80℃で1分間保持した後の粘度
:80℃で4時間保持した後の粘度
:[A]と[B-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応における外挿開始温度(℃)
1p:[A]と[B-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
2p:[A]と[B-1]と[C]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)
5p:[A]と[B-1]と[C-1]との混合物の反応におけるピーク温度(℃)