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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】電子調光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/163 20060101AFI20241224BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20241224BHJP
【FI】
G02F1/163
G02F1/15 503
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024047307
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】西野 哲史
(72)【発明者】
【氏名】松井 智紀
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221148(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0350261(US,A1)
【文献】国際公開第2021/157247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/163
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有するとともに、発色動作期間に印加される電圧により透過率が変化し、前記発色動作期間後の発色保持期間においてエレクトロクロミック回路が開放されることにより透過率が保持されるエレクトロクロミック素子である第1素子および第2素子と、
前記第1素子の開放電圧および前記第2素子の開放電圧を測定する電圧測定部と、
前記第1素子の前記開放電圧および前記第2素子の前記開放電圧に基づいて前記第1素子の透過率および前記第2素子の透過率を推定し、前記発色保持期間における前記第1素子の推定された透過率と前記第2素子の推定された透過率との差が小さくなるように、前記発色保持期間の一部において前記第1素子に印加される発色保持電圧および前記発色保持電圧の印加時間を決定する電圧決定部と、
前記発色保持期間において、前記第1素子に対し、前記発色保持電圧を前記印加時間で印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴とする電子調光デバイス。
【請求項2】
光透過性を有するとともに、発色動作期間に印加される電圧により透過率が変化し、前記発色動作期間後の発色保持期間においてエレクトロクロミック回路が開放されることにより透過率が保持されるエレクトロクロミック素子と、
前記エレクトロクロミック素子の開放電圧を測定する電圧測定部と、
前記開放電圧と基準値との比較結果に基づいて、前記発色保持期間における透過率と目標値との差が小さくなるように、前記発色保持期間の一部において前記エレクトロクロミック素子に印加される発色保持電圧および前記発色保持電圧の印加時間を決定する電圧決定部と、
前記発色保持期間において、前記エレクトロクロミック素子に対し、前記発色保持電圧を前記印加時間で印加する電圧印加部と、
を備え
前記電圧決定部は、前記開放電圧と前記エレクトロクロミック素子の透過率との相関関係を記憶し、測定された前記開放電圧と前記相関関係とに基づいて、前記発色保持電圧および前記印加時間を決定することを特徴とする電子調光デバイス。
【請求項3】
前記エレクトロクロミック素子である第1素子および第2素子を備え、
前記電圧決定部は、前記第1素子に固有の前記相関関係に基づいて、前記第1素子に印加される前記発色保持電圧および前記印加時間を決定し、前記第2素子に固有の前記相関関係に基づいて、前記第2素子に印加される前記発色保持電圧および前記印加時間を決定する請求項に記載の電子調光デバイス。
【請求項4】
前記電圧決定部は、累積駆動時間に応じて、前記相関関係を変化させる機能を有する請求項3に記載の電子調光デバイス。
【請求項5】
前記発色保持電圧は、前記発色保持期間が開始された直後の前記開放電圧の60%以上130%以下である請求項1に記載の電子調光デバイス。
【請求項6】
前記印加時間は、連続で1秒以上30秒以下である請求項1または2に記載の電子調光デバイス。
【請求項7】
前記印加時間が、1つの前記発色保持期間内に複数設定されている請求項1または2に記載の電子調光デバイス。
【請求項8】
前記電圧測定部は、前記発色保持期間が開始された後、所定時間経過後に、前記開放電圧を測定する請求項1または2に記載の電子調光デバイス。
【請求項9】
眼鏡として用いられる請求項1または2に記載の電子調光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子調光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の基板と、これらの間に配置されているエレクトロクロミック媒体と、を有するエレクトロクロミック素子が開示されている。一対の基板に設けられた電極に電圧を印加すると、エレクトロクロミック媒体内の化合物の透過率が変化する。これにより、エレクトロクロミック素子を通過する光の光量を調整することができる。
【0003】
エレクトロクロミック素子には、電圧の印加によって透過率を変化させた後、電極間が電気的に開放されたとき、透過率を維持する機能(メモリー機能)を有するものがある。このようなエレクトロクロミック素子は、電圧を印加しなくても透過率を維持できる(発色保持が可能である)ため、省電力の電子調光デバイスの実現に寄与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-167317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電極間が電気的に開放されている状態でも、時間の経過とともに、透過率が徐々に変化することがある。透過率が意図せず変化すると、エレクトロクロミック素子の品質や使い勝手が低下する。
【0006】
本発明の目的は、発色保持期間における透過率の変化を抑制し得る電子調光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 光透過性を有するとともに、発色動作期間に印加される電圧により透過率が変化し、前記発色動作期間後の発色保持期間においてエレクトロクロミック回路が開放されることにより透過率が保持されるエレクトロクロミック素子である第1素子および第2素子と、
前記第1素子の開放電圧および前記第2素子の開放電圧を測定する電圧測定部と、
前記第1素子の前記開放電圧および前記第2素子の前記開放電圧に基づいて前記第1素子の透過率および前記第2素子の透過率を推定し、前記発色保持期間における前記第1素子の推定された透過率と前記第2素子の推定された透過率との差が小さくなるように、前記発色保持期間の一部において前記第1素子に印加される発色保持電圧および前記発色保持電圧の印加時間を決定する電圧決定部と、
前記発色保持期間において、前記第1素子に対し、前記発色保持電圧を前記印加時間で印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴とする電子調光デバイス。
【0008】
(2) 光透過性を有するとともに、発色動作期間に印加される電圧により透過率が変化し、前記発色動作期間後の発色保持期間においてエレクトロクロミック回路が開放されることにより透過率が保持されるエレクトロクロミック素子と、
前記エレクトロクロミック素子の開放電圧を測定する電圧測定部と、
前記開放電圧と基準値との比較結果に基づいて、前記発色保持期間における透過率と目標値との差が小さくなるように、前記発色保持期間の一部において前記エレクトロクロミック素子に印加される発色保持電圧および前記発色保持電圧の印加時間を決定する電圧決定部と、
前記発色保持期間において、前記エレクトロクロミック素子に対し、前記発色保持電圧を前記印加時間で印加する電圧印加部と、
を備え、
前記電圧決定部は、前記開放電圧と前記エレクトロクロミック素子の透過率との相関関係を記憶し、測定された前記開放電圧と前記相関関係とに基づいて、前記発色保持電圧および前記印加時間を決定することを特徴とする電子調光デバイス。
【0009】
(3) 前記エレクトロクロミック素子である第1素子および第2素子を備え、
前記電圧決定部は、前記第1素子に固有の前記相関関係に基づいて、前記第1素子に印加される前記発色保持電圧および前記印加時間を決定し、前記第2素子に固有の前記相関関係に基づいて、前記第2素子に印加される前記発色保持電圧および前記印加時間を決定する上記(2)に記載の電子調光デバイス。
【0010】
(4) 前記電圧決定部は、累積駆動時間に応じて、前記相関関係を変化させる機能を有する上記(3)に記載の電子調光デバイス。
【0011】
(5) 前記発色保持電圧は、前記発色保持期間が開始された直後の前記開放電圧の60%以上130%以下である上記(1)に記載の電子調光デバイス。
【0012】
(6) 前記印加時間は、連続で1秒以上30秒以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の電子調光デバイス。
【0013】
(7) 前記印加時間が、1つの前記発色保持期間内に複数設定されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の電子調光デバイス。
【0014】
(8) 前記電圧測定部は、前記発色保持期間が開始された後、所定時間経過後に、前記開放電圧を測定する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電子調光デバイス。
【0015】
(9) 眼鏡として用いられる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の電子調光デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発色保持期間における透過率の変化を抑制し得る電子調光デバイスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス(眼鏡)を示す斜視図である。
図2図1に示す第1レンズの斜視図である。
図3図2に示す第1レンズの断面図である。
図4図3に示すEC機能部の部分拡大図である。
図5図1に示す制御部の機能ブロック図である。
図6】発色保持期間および消色期間において、第1エレクトロクロミック素子で測定される電圧の変化の一例を示すグラフである。
図7図6に示す発色保持期間および消色期間において、第1エレクトロクロミック素子の透過率の変化を表すグラフである。
図8図6に示す発色保持期間において、劣化時の第1エレクトロクロミック素子に発色保持電圧を印加した場合の開放電圧の変化および発色保持電圧を印加しなかった場合の開放電圧の変化の一例を示すグラフである。
図9図8に示す発色保持期間において、劣化時の第1エレクトロクロミック素子に発色保持電圧を印加した場合の透過率の変化および発色保持電圧を印加しなかった場合の透過率の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電子調光デバイスについて添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
1.電子調光デバイスの構成
図1は、実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100(眼鏡)を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すサングラス100は、フレーム20と、第1レンズ31および第2レンズ32と、制御部40と、を備える。なお、以下の説明では、サングラス100が使用者の頭部に装着されたとき、第1レンズ31および第2レンズ32の使用者側を「裏」といい、その反対側を「表」という。また、以下の説明において「レンズ」には、光の集束や発散の機能を有する光学要素だけでなく、単に光を透過させる機能を有する光学要素も含む。
【0021】
1.1.フレーム
図1に示すフレーム20は、2つのリム部21、21と、ブリッジ部22と、2本のテンプル部23、23と、2つのノーズパッド部24、24と、を有する。
【0022】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、第1レンズ31および第2レンズ32を使用者の目の近くに配置する。
【0023】
各リム部21は、リング状をなしている。一方のリム部21の内側には第1レンズ31がはめ込まれ、他方のリム部21の内側には第2レンズ32がはめ込まれている。
【0024】
ブリッジ部22は、棒状をなし、リム部21同士を連結している。
各テンプル部23は、つる状をなし、一端が各リム部21に接続され、他端は自由端になっている。
【0025】
また、テンプル部23には、制御部40が設けられている。制御部40は、第1レンズ31および第2レンズ32に電圧を印加し、その作動を制御する。
【0026】
ノーズパッド部24は、各リム部21の縁部に設けられ、サングラス100の使用者の鼻に支持される。
【0027】
フレーム20の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料、各種樹脂材料等が挙げられる。また、これらを含む複合材料であってもよい。
【0028】
フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着可能な形状であれば、図示の形状に限定されない。例えば、リム部21やテンプル部23が省略されていてもよい。また、フレーム20全体が省略され、第1レンズ31および第2レンズ32が単独で用いられるようになっていてもよい。
【0029】
さらに、本発明に係る電子調光デバイスは、サングラス以外の眼鏡、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、ゴーグル等に適用されていてもよい。また、本発明に係る電子調光デバイスには、第1レンズ31や第2レンズ32と同様のレンズが1つ以上追加されていてもよい。
【0030】
1.2.第1レンズおよび第2レンズ
次に、第1レンズ31および第2レンズ32について説明する。
【0031】
図1に示すように、第1レンズ31は、第1エレクトロクロミック素子1を有する。また、第2レンズ32は、第1エレクトロクロミック素子1とは別の第2エレクトロクロミック素子2を有する。なお、第2レンズ32の構成および第2エレクトロクロミック素子2の構成は、第1レンズ31の構成および第1エレクトロクロミック素子1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0032】
図2は、図1に示す第1レンズ31の斜視図である。
図2に示す第1レンズ31は、第1エレクトロクロミック素子1と、その裏面に設けられた樹脂層35と、を有する。
【0033】
第1エレクトロクロミック素子1は、光透過性を有するとともに、電圧が印加されることにより、発色する機能を有する。また、電圧の印加状態を切り替えることにより、発色と消色とを可逆的に切り替えることができる。第1エレクトロクロミック素子1が作動するのに必要な電力は、制御部40から供給される。また、制御部40は、電圧の印加状態の切り替えも担う。
【0034】
例えば、サングラス100が使用されるとき、第1エレクトロクロミック素子1の発色や消色を切り替えたり、発色濃度を変化させたりすることにより、第1レンズ31を通過する光の量(透過率)を制御できる。第1エレクトロクロミック素子1に電圧を印加して発色濃度を変化させる期間を「発色動作期間」という。また、発色動作期間が終了すると、電圧の印加を停止し、第1エレクトロクロミック素子1が備えるエレクトロクロミック回路を開放する。なお、以下の説明では、エレクトロクロミック回路を開放することを「素子を開放」ということがある。また、エレクトロクロミック回路を短絡させることを「素子を短絡」ということがある。
【0035】
発色動作期間の終了後は、第1エレクトロクロミック素子1のメモリー効果によって発色濃度が維持される。この期間を「発色保持期間」という。その後、必要に応じて、第1エレクトロクロミック素子1を短絡させることにより、発色状態が解消され、消色される。消色されている期間を「消色期間」という。
【0036】
なお、本実施形態としてサングラス100を例示したが、本発明に係る電子調光デバイスは、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等の各種眼鏡に適用されていてもよい。
【0037】
図3は、図2に示す第1レンズ31の断面図である。
図3に示す第1エレクトロクロミック素子1は、第1基板11と、第2基板12と、第1電極13と、第2電極14と、EC機能部60と、封止部55と、第1補助電極15と、第2補助電極16と、を備える。
【0038】
1.2.1.第1基板
第1基板11は、EC機能部60等、他の部材を支持する。また、第1基板11は、第1エレクトロクロミック素子1の最外層となり、EC機能部60等を保護する。
【0039】
第1基板11の構成材料は、透明な樹脂材料であれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂を含む材料が好ましい。
【0040】
透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上の混合物が用いられる。これらの中でも、透明樹脂は、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのがより好ましい。これらは、透明性(透光性)や機械的特性に優れ、さらに耐熱性および成形性に優れる。このため、第1基板11の透明性や形状精度および第1基板11の耐衝撃性や耐熱性を向上させることができる。
【0041】
また、ポリカーボネート系樹脂は、特に、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、主鎖に芳香環を有し、第1基板11の機械的強度の向上に寄与する。
【0042】
第1基板11は、必要に応じて、染料、顔料、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
第1基板11の厚さは、好ましくは0.1mm以上10.0mm以下とされ、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下とされる。第1基板11の厚さが前記範囲内であれば、第1エレクトロクロミック素子1の薄型化と機械的強度との両立を図ることができる。
【0044】
1.2.2.第2基板
第2基板12は、EC機能部60を介して第1基板11に対向配置され、EC機能部60等、他の部材を支持する。また、第2基板12は、第1エレクトロクロミック素子1の最外層となり、EC機能部60等を保護する。なお、以下の説明では、第1基板11と第2基板12との間を「内側」ともいう。
【0045】
第2基板12の構成材料は、透明な構成材料であれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂を含む材料が好ましい。透明樹脂としては、第1基板11の構成材料と同様である。
【0046】
第2基板12の厚さは、第1基板11の厚さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
第2基板12の厚さは、好ましくは0.1mm以上10.0mm以下とされ、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下とされる。第2基板12の厚さが前記範囲内であれば、第1エレクトロクロミック素子1の薄型化と機械的強度との両立を図ることができる。
【0048】
1.2.3.EC機能部
図4は、図3に示すEC機能部60の部分拡大図である。
【0049】
図4に示すEC機能部60(エレクトロクロミック回路)は、第1基板11の内側に順次積層されている第1電極13および第1エレクトロクロミック層63と、第2基板12の内側に順次積層されている第2電極14および第2エレクトロクロミック層64と、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に充填された電解質層65と、を有する。
【0050】
第1電極13および第2電極14は、制御部40と電気的に接続されている。制御部40により、第1電極13および第2電極14の各電位が制御され、第1エレクトロクロミック層63および第2エレクトロクロミック層64に対する電荷の注入や取り出しが行われる。これにより、EC機能部60は、発色動作、保持動作および消色動作を行うことができる。
【0051】
第1電極13および第2電極14の各構成材料としては、透明性を有する導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(F-doped Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
第1電極13および第2電極14の各厚さは、必要な導電率に応じて適宜設定されるが、例えば、第1電極13および第2電極14の各構成材料としてITOを用いた場合には、好ましくは50nm以上200nm以下程度とされ、より好ましくは100nm以上150nm以下程度とされる。
【0053】
第1エレクトロクロミック層63は、酸化反応によって発色する材料を含有する。
酸化反応によって発色する材料としては、特に限定されないが、例えば、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物、トリフェニルアミンのようなトリアリールアミン誘導体、ビスアクリダン化合物、プルシアンブルー型錯体、ベンジジン、酸化ニッケル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
プルシアンブルー型錯体としては、例えば、Fe(III)[Fe(II)(CN)からなる材料が挙げられる。
【0055】
これらの中でも、定電圧で動作可能であり、繰返し耐久性に優れ、高コントラストなエレクトロクロミック素子が得られる点から、特に、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物が好ましく用いられる。
【0056】
なお、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物を含み、かかる組成物を重合した重合物は、これらのラジカル重合性化合物が架橋した架橋物で構成されていてもよい。
【0057】
第1エレクトロクロミック層63の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上30μm以下程度であるのが好ましく、0.4μm以上10μm以下程度であるのがより好ましい。
【0058】
第2エレクトロクロミック層64は、還元反応によって発色する材料を含有する。
還元反応によって発色する材料としては、特に限定されないが、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、導電性ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタン等が挙げられ、特に、酸化タングステンが好ましく用いられる。酸化タングステンは、還元電位が低いため、発消色電位が低く、さらに、無機材料であるため耐久性に優れる。
【0060】
有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系のような低分子系有機エレクトロクロミック化合物等が挙げられるが、特に、ビオロゲン系化合物またはジピリジン系化合物が好ましく用いられる。これらの化合物は、発消色電位が低く、良好な色値を示す。
【0061】
ビオロゲン系化合物としては、例えば、特許第3955641号公報、特開2007-171781号公報等に記載された化合物が挙げられる。
【0062】
ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007-171781号公報、特開2008-116718号公報等に記載された化合物が挙げられる。
【0063】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、またはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0064】
また、還元反応によって発色する材料には、前述した酸化反応によって発色する材料と同じ色調で発色する材料が好ましく用いられる。これにより、最大発色濃度の向上が図られ、その結果、発色時のコントラストを改善することできる。
【0065】
一方、酸化反応によって発色する材料と還元反応によって発色する材料とで、互いに色調が異なる材料を用いた場合には、混色による発色の制御が可能になる。
【0066】
また、第1エレクトロクロミック層63および第2エレクトロクロミック層64のいずれか一方は、発色しないように設定されていてもよいが、双方が発色することにより、発色濃度を高められる。これにより、EC機能部60に印加される駆動電圧を低下させることもでき、発色動作を繰り返すことに伴う第1エレクトロクロミック素子1の耐久性を高めることができる。
【0067】
第2エレクトロクロミック層64の厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上5.0μm以下程度であるのが好ましく、1.0μm以上4.0μm以下程度であるのがより好ましい。
【0068】
電解質層65は、第1エレクトロクロミック層63と第2エレクトロクロミック層64との間に充填され、イオン伝導性を有する電解質を含有する。
【0069】
電解質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩等が挙げられる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、電解質の材料には、イオン性液体を用いることもできる。イオン性液体の中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示すことから、取り扱いが容易である。
【0071】
有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系等が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO、(SOF)等が挙げられる。
【0072】
このような電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体であってもよい。
【0073】
イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマーおよび液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、これらの材料に対する溶解性が悪い場合には、少量の溶媒に溶解させた溶液を得た後に、この溶液を光重合性モノマー、オリゴマーおよび液晶材料のいずれかと混合することで溶解させてもよい。
【0074】
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類等、またはこれらの2種以上を含む混合溶媒が挙げられる。
【0075】
また、電解質の形態には、低粘性の液体の他、例えば、ゲル状、高分子架橋型、液晶分散型等が挙げられる。このうち、電解質の形態は、ゲル状または固体状であることが好ましい。これにより、EC機能部60の機械的強度や信頼性を高められる。
【0076】
電解質層65の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上100μm以下程度、より好ましくは20μm以上80μm以下程度に設定される。
【0077】
なお、第1電極13と第2電極14との間には、必要に応じて、例えば、絶縁性多孔質層、保護層等の中間層が設けられていてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、EC機能部60が第1エレクトロクロミック層63および第2エレクトロクロミック層64を有するが、これらのうち、いずれか一方が省略されていてもよい。
【0079】
1.2.4.封止部
封止部55は、図3に示すように、第1基板11と第2基板12との間に配置され、着色領域70を画定している。これにより、着色領域70にEC機能部60を封入することができる。図3に示す第1電極13および第2電極14は、封止部55を超えて着色領域70の外側まで延在している。
【0080】
封止部55の構成材料としては、透明性を有する絶縁材料であれば、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂材料、シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)、アルミニウム酸化物(Al)等の無機酸化物等が挙げられる。
【0081】
封止部55の厚さが、EC機能部60の厚さに応じて調整されるが、例えば、20μm以上100μm以下程度であることが好ましく、40μm以上80μm以下程度であることがより好ましい。
【0082】
1.2.5.第1補助電極
第1補助電極15は、着色領域70の外側まで延在している第1電極13に積層して設けられている。第1補助電極15の構成材料には、第1電極13よりも導電率が高い材料が用いられる。これにより、第1電極13の電位を制御する効率を高められる。
【0083】
第1補助電極15の構成材料としては、第1電極13よりも導電率が高い材料であれば、特に限定されないが、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロム、モリブデン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、第1補助電極15は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0084】
1.2.6.第2補助電極
第2補助電極16は、着色領域70の外側まで延在している第2電極14に積層して設けられている。第2補助電極16の構成材料には、第2電極14よりも導電率が高い材料が用いられる。これにより、第2電極14の電位を制御する効率を高められる。
【0085】
第2補助電極16の構成材料としては、第2電極14よりも導電率が高い材料であれば、特に限定されないが、例えば、銀、アルミニウム、銅、クロム、モリブデン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、第2補助電極16は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0086】
1.3.制御部
制御部40は、テンプル部23に設けられ、第1エレクトロクロミック素子1および第2エレクトロクロミック素子2の各作動を制御する。
【0087】
図5は、図1に示す制御部40の機能ブロック図である。
図5に示す制御部40は、機能部として、電圧測定部42、電圧決定部44および電圧印加部46を有する。
【0088】
電圧測定部42は、第1エレクトロクロミック素子1の開放電圧、および、第2エレクトロクロミック素子2の開放電圧を測定する。これらの開放電圧は、第1エレクトロクロミック素子1および第2エレクトロクロミック素子2がそれぞれ開放されたときに測定される、第1電極13と第2電極14との間の電圧(開回路電圧)である。
【0089】
電圧決定部44は、発色動作期間において第1エレクトロクロミック素子1および第2エレクトロクロミック素子2に印加される発色動作電圧およびその印加時間を決定する。
【0090】
また、電圧決定部44は、第1エレクトロクロミック素子1の開放電圧と基準値との比較結果に基づいて、発色保持期間の一部において第1エレクトロクロミック素子1に印加される発色保持電圧およびその印加時間を決定する。同様に、電圧決定部44は、第2エレクトロクロミック素子2の開放電圧と基準値との比較結果に基づいて、発色保持期間の一部において第2エレクトロクロミック素子2に印加される発色保持電圧およびその印加時間を決定する。
【0091】
なお、電圧決定部44の機能は、例えば、CPU、メモリーおよびインターフェースを備えるハードウェアによって実現される。かかるハードウェアとして、例えばマイコンが挙げられる。CPUは、Central Processing Unitである。メモリーとしては、例えば任意の不揮発性記憶素子(ROM)、任意の揮発性記憶素子(RAM)、着脱式の外部記憶素子等が挙げられる。インターフェースとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等が挙げられる。あらかじめメモリーに展開されているプログラムをCPUが実行することにより、電圧決定部44の機能が実現される。なお、CPUがプログラムを実行して上記機能を実現する方式に代えて、または、その方式とともに、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアが上記機能を実現する方式が用いられていてもよい。
【0092】
電圧印加部46は、発色動作期間において、上記で決定された発色動作電圧を第1エレクトロクロミック素子1および第2エレクトロクロミック素子2に印加する。
【0093】
また、電圧印加部46は、上記で決定された発色保持電圧を、発色保持期間の一部に設定された上記の印加時間において第1エレクトロクロミック素子1および第2エレクトロクロミック素子2に印加する。なお、第1エレクトロクロミック素子1に印加される発色保持電圧およびその印加時間、ならびに、第2エレクトロクロミック素子2に印加される発色保持電圧およびその印加時間は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、いずれか一方の素子には、発色保持電圧が印加されないようになっていてもよい。
【0094】
電圧印加部46は、例えば、直流電源と、電圧変換器と、スイッチと、を有する。直流電源は、所定の直流電圧を発生させる電源であって、例えば、一次電池、二次電池、外部電源等で構成される。電圧変換器は、直流電源が発生させた直流電圧を目的とする値に変換する。なお、電圧変換器は、直流電圧からパルス幅変調電圧を生成するとともに、そのデューティー比を変化させて実効電圧を目的とする値に近づける機能を有していてもよい。スイッチは、使用者の操作を受けて、発色動作期間、発色保持期間および消色期間を切り替える。
【0095】
2.電子調光デバイスの作動
次に、サングラス100の作動について説明する。なお、以下の説明では、第1エレクトロクロミック素子1の作動について説明する。第2エレクトロクロミック素子2の作動は、第1エレクトロクロミック素子1と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
図6は、発色保持期間T2および消色期間T3において、第1エレクトロクロミック素子1で測定される電圧の変化の一例を示すグラフである。図6では、第1エレクトロクロミック素子1の正常時における電圧変化をV-OKとし、劣化時における電圧変化をV-NGとする。図6の横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0097】
図7は、図6に示す発色保持期間T2および消色期間T3において、第1エレクトロクロミック素子1の透過率の変化を表すグラフである。図7では、第1エレクトロクロミック素子1の正常時における透過率変化をTR-OKとし、劣化時における透過率変化をTR-NGとする。図7の横軸は時間であり、縦軸は透過率である。
【0098】
なお、第1エレクトロクロミック素子1の正常時とは、第1エレクトロクロミック素子1に初期異常や経時劣化等が生じていない状態をいう。また、第1エレクトロクロミック素子1の劣化時とは、正常時とは異なる状態であって、初期異常や経時劣化等が生じている状態をいう。
【0099】
図6に示す発色動作期間T1では、正常時および劣化時のいずれにおいても所定の電圧が印加される。これにより、第1エレクトロクロミック素子1に電荷が注入され、発色濃度が上昇する。その結果、図7の発色動作期間T1に示すように、例えば10%前後の低い透過率TR-OK、TR-NGの発色動作が行われる。
【0100】
図6に示す例では、発色動作期間T1の終了後、第1エレクトロクロミック素子1を開放し、発色保持期間T2に移行する。
【0101】
図7に示す例では、発色保持期間T2の開始直後は、メモリー効果により、発色動作期間T1の終了直後の透過率TR-OK、TR-NGが維持されている。
【0102】
その後、正常な第1エレクトロクロミック素子1では、メモリー効果が十分に働いていることから、発色保持期間T2内で時間が経過しても、透過率TR-OKが低い値に維持されている。一方、劣化した第1エレクトロクロミック素子1では、メモリー効果が十分に働かず、透過率TR-NGが経時的に上昇している。
【0103】
このように、第1エレクトロクロミック素子1が劣化すると、発色保持期間T2において透過率TR-NGが経時的に上昇する。透過率TR-NGが上昇すると、意図せず発色濃度が低下(透過率が上昇)するため、サングラス100の品質や使い勝手が低下してしまう。
【0104】
上記のようなメモリー効果の差異は、図6に示す電圧V-OK、V-NGの変化に現れている。発色保持期間T2における電圧V-OK、V-NGを「開放電圧」という。発色保持期間T2における電圧V-OK、V-NGの変化(開放電圧の変化)を見ると、正常時では、図6に示すように、電圧V-OKが一定(低下幅がゼロ)であるか、低下幅が小さく抑えられている。
【0105】
これに対し、劣化時では、図6に示すように、電圧V-NGの低下幅が大きくなっている。そして、図7に示す透過率TR-NGの上昇幅も大きくなっている。したがって、開放電圧の低下幅と透過率の上昇幅との間には、正の相関関係があることがわかる。
【0106】
本発明者の検討の結果、電圧V-NGの低下幅に基づいて、第1エレクトロクロミック素子1の劣化の有無を検出し得ることが見出された。また、上記の相関関係を利用することにより、電圧V-NGの低下幅に基づいて、透過率TR-NGの上昇幅を推定し得ることも見出された。
【0107】
そこで、本実施形態では、制御部40が次のように作動することで、上記の課題を解決する。
【0108】
2.1.開放電圧の測定
まず、発色保持期間T2において、電圧測定部42が、電圧V-OK、V-NG(開放電圧)を測定する。
【0109】
開放電圧は、第1エレクトロクロミック素子1が開放されているとき、つまり、発色保持期間T2において電圧測定部42で測定される電圧V-OK、V-NGであればよい。ただし、開放直後は、電圧V-OK、V-NGが安定しない場合がある。そこで、電圧測定部42は、発色動作期間T1が終了(発色保持期間T2が開始)した後、図6に示すように、所定時間tが経過したとき、電圧V-OK、V-NGを測定し、その測定値を初回の開放電圧OCV-OKおよび開放電圧OCV-NGとするように動作してもよい。これにより、異常値の少ない開放電圧OCV-OKおよび開放電圧OCV-NGを取得することができる。
【0110】
所定時間tは、特に限定されないが、1秒以上500秒以下が好ましく、5秒以上300秒以下がより好ましい。これにより、異常値が特に少なく、かつ、経時的な変化による不安定性が抑えられた測定値を取得できる。
【0111】
なお、所定時間tが前記下限値を下回ると、所定時間tが短すぎて、初回の開放電圧OCV-OK、OCV-NGに異常値が混ざるおそれがある。一方、所定時間tが前記上限値を上回ると、所定時間tが長すぎるため、電圧V-NGが大きく低下していた場合、初回の開放電圧OCV-OK、OCV-NGが異常値となるおそれがある。
【0112】
また、電圧測定部42は、発色保持期間T2において、所定の時間間隔を空けながら開放電圧OCV-OK、OCV-NGを複数回測定するように動作してもよいし、時間的に連続して開放電圧OCV-OK、OCV-NGを測定するように動作してもよい
【0113】
2.2.発色保持電圧の決定
次に、電圧決定部44が、開放電圧OCV-OK、OCV-NGと基準値とを比較する。この基準値には、例えば、発色保持期間T2において第1エレクトロクロミック素子1の透過率が徐々に上昇するとき、許容できる上限値が採用される。そして、電圧決定部44は、開放電圧OCV-OK、OCV-NGと基準値との比較を繰り返すことにより、開放電圧OCV-OK、OCV-NGが基準値を下回るか否かをモニターする。そして、基準値を下回った場合には、電圧決定部44は、透過率が目標値に近づくように、発色保持期間T2で第1エレクトロクロミック素子1に印加すべき発色保持電圧を決定する。発色保持電圧とは、発色保持期間T2の一部において第1エレクトロクロミック素子1に追加的に印加する電圧のことをいう。この発色保持電圧が後述する電圧印加部46から印加されることにより、第1エレクトロクロミック素子1が劣化している場合でも、一時的に発色濃度を回復(上昇)させ、透過率TR-NGを目標値に近づけることができる。
【0114】
図8は、図6に示す発色保持期間T2において、劣化時の第1エレクトロクロミック素子1に発色保持電圧KVを印加した場合の開放電圧OCV-Kの変化および発色保持電圧KVを印加しなかった場合の開放電圧OCV-NGの変化の一例を示すグラフである。図8では、矢印で示す2回の発色保持電圧KVの印加によって、徐々に低下していた開放電圧OCV-NGが開放電圧OCV-Kへと上昇している様子を示している。図8の横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0115】
図9は、図8に示す発色保持期間T2において、劣化時の第1エレクトロクロミック素子1に発色保持電圧KVを印加した場合の透過率TR-Kの変化および発色保持電圧KVを印加しなかった場合の透過率TR-NGの変化の一例を示すグラフである。図9では、矢印で示す2回の発色保持電圧KVの印加によって、徐々に上昇していた透過率TR-NGが透過率TR-Kへと低下している様子を示している。図9の横軸は時間であり、縦軸は透過率である。
【0116】
図8に示す例では、電圧測定部42が開放電圧OCV-NGを常時または断続的に測定し、電圧決定部44が測定された開放電圧OCV-NGと基準値DLとを比較する。
【0117】
一方、電圧決定部44では、例えば、図8に示す基準値DLがあらかじめ設定されている。そして、電圧決定部44は、電圧測定部42により測定されている開放電圧OCV-NGと基準値DLとの比較の結果、開放電圧OCV-NGが基準値DLを下回ったとき、発色保持電圧KVを印加するように決定する。
【0118】
基準値DLは、発色保持電圧KVの印加を決定するときの「しきい値」であり、第1エレクトロクロミック素子1の構成、発色動作電圧、外部環境等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、例えば、任意の電圧値、発色動作期間T1で印加する発色動作電圧に基づいて算出された電圧値等が挙げられる。
【0119】
このうち、任意の電圧値としては、例えば、第1エレクトロクロミック素子1において許容できる発色濃度の下限値に対応する電圧値、換言すれば、許容できる透過率TR-NGの上限値に対応する電圧値が挙げられる。この電圧値を基準値DLとすれば、使用者に違和感を与えず、かつ、発色保持電圧KVの印加回数を必要以上に多くすることが抑制され、消費電力や劣化の少ないサングラス100を実現できる。
【0120】
また、上記のように、発色動作期間T1で印加する発色動作電圧に基づいて基準値DLを設定した場合には、発色動作期間T1における透過率を基準にして、発色保持期間T2における透過率の変化を抑制できる。具体例を挙げると、発色動作期間T1で印加する発色動作電圧の最大値(最大電圧)を100%とした場合、好ましくは60~99%に相当する電圧値を基準値DLとしてもよく、より好ましくは70~90%に相当する電圧値を基準値DLとしてもよい。これにより、発色保持電圧KVを印加したとき、発色動作期間T1における発色濃度との差を抑えられるため、違和感の少ないサングラス100を実現できる。
【0121】
電圧決定部44は、開放電圧OCV-NGが基準値DL以下となった場合に、発色保持電圧KVを印加するように構成されていればよいが、その電圧値や印加時間は、例えば、透過率TR-NGの目標値TLを設定し、透過率TR-NGを目標値TLに近づける発色保持電圧KVを決定するように構成されているのが好ましい。
【0122】
図9に示す例では、電圧決定部44において目標値TLがあらかじめ設定されている。目標値TLとは、発色保持電圧KVを印加することによって、発色濃度を引き上げる(透過率TR-NGを引き下げる)とき、その到達目標を指している。目標値TLは、例えば、発色保持期間T2が開始された直後(発色動作期間T1が終了する直前)の透過率TR-NGであってもよいし、第2エレクトロクロミック素子2で測定された開放電圧に基づいて推定された透過率であってもよい。
【0123】
前者の場合には、第1エレクトロクロミック素子1において、発色動作期間T1から発色保持期間T2に移行するときの透過率の変化を最小限に抑えることができる。これにより、透過率の変化に伴う違和感が抑制されたサングラス100を実現できる。
【0124】
後者の場合には、第1エレクトロクロミック素子1の透過率と、第2エレクトロクロミック素子2の透過率と、を揃えることができる。サングラス100のような各種眼鏡の場合、左右のレンズに組み込まれた第1エレクトロクロミック素子1と第2エレクトロクロミック素子2との間で生じる透過率のずれを抑えることは、サングラス100の品質(見栄え)や使い勝手において特に重要である。
【0125】
電圧決定部44は、発色保持電圧KVの決定に必要なパラメーター、例えば、開放電圧の低下幅と透過率の上昇幅との相関関係、透過率の目標値TL、基準値DL等を記憶している。このうち、相関関係は、例えば、計算式やデータベース等の形式で記憶されていればよい。
【0126】
電圧決定部44による発色保持電圧KVの決定は、記憶されているパラメーター等に基づき、例えば、次のようにして行う。
【0127】
まず、前述したようにして基準値DL(しきい値)を設定する。このとき、必要に応じて、設定した基準値DLを、電圧決定部44が記憶している相関関係に照らし、基準値DLに対応する透過率TR-NGを求める。これにより、開放電圧OCV-NGが基準値DLまで低下したときの透過率TR-NGを推定できる。
【0128】
次に、記憶している透過率の目標値TLと推定した透過率TR-NGとの差分を算出する。
【0129】
一方、エレクトロクロミック素子には、印加される電圧が高いほど、発色濃度が高くなる(透過率が低下する)特性がある。このような特性を「調光特性」という。電圧決定部44は、あらかじめ第1エレクトロクロミック素子1の固有の調光特性も記憶している。
【0130】
電圧決定部44は、記憶している第1エレクトロクロミック素子1の調光特性に照らして、算出した透過率の差分をゼロにする(透過率TR-NGを目標値TLに近づける)ために必要な発色保持電圧KVを導出する。これにより、発色保持電圧KVを決定できる。
【0131】
なお、発色保持電圧KVの決定方法は、上記に限定されない。例えば、目標値TLを設定せず、基準値DLと発色保持電圧KVとを一対一に対応させたデータベースに基づいて、発色保持電圧KVが決定されるようになっていてもよいし、基準値DLも考慮せず、一律の発色保持電圧KVが決定されるようになっていてもよい。
【0132】
また、印加時間は、例えば、あらかじめ取得した実験データ、シミュレーション、計算等に基づいて決定される。なお、第1エレクトロクロミック素子1における電荷の移動速度等が速い場合には、発色保持電圧KVが同じ場合でも、印加時間を短くできる。一方、電荷の移動速度が遅い場合には、印加時間を長くする必要がある。これらの要素も踏まえて、印加時間を決定すればよい。
【0133】
なお、印加時間の決定方法も、上記に限定されない。例えば、発色保持電圧KVと印加時間とを一対一に対応させたデータベースに基づいて、印加時間が決定されるようになっていてもよいし、発色保持電圧KVも考慮せず、一律の印加時間が決定されるようになっていてもよい。
【0134】
また、発色動作期間T1から発色保持期間T2に移行するとき、透過率の変化をできるだけ抑えるという観点では、発色保持電圧KVは、発色保持期間T2が開始された直後の開放電圧OCV-NGと同程度であることが好ましい。具体的には、発色保持電圧KVは、発色保持期間T2が開始された直後の開放電圧OCV-NGの60%以上130%以下であることが好ましく、80%以上125%以下であることがより好ましく、90%以上110%以下であることがさらに好ましい。これにより、透過率TR-NGの変動が特に少ないサングラス100を実現できる。
【0135】
また、1回の印加時間は、発色保持電圧KV等に応じて変わるため、特に限定されないが、一例として連続で0.01秒以上30秒以下であることが好ましく、0.1秒以上25秒以下程度であることがより好ましく、1秒以上20秒以下程度であることがさらに好ましい。これにより、透過率TR-Kを安定させやすくなる。
【0136】
2.3.発色保持電圧の印加
次に、電圧印加部46は、発色保持期間T2において、決定された発色保持電圧KVを、決定された印加時間で、第1エレクトロクロミック素子1に印加する。これにより、図9に示すように、右肩上がりの透過率TR-NGを、透過率TR-KVとして示すように低透過率側にシフトさせ、透過率TR-Kに移行させることができる。これにより、劣化した第1エレクトロクロミック素子1であっても、発色保持期間T2における透過率TR-NGの意図しない上昇が抑制され、品質や使い勝手が良好なサングラス100を実現できる。
【0137】
また、目標値TLとして第2エレクトロクロミック素子2で測定された開放電圧に基づいて推定された透過率を採用した場合には、発色保持電圧KVの印加により、第1エレクトロクロミック素子1の透過率と第2エレクトロクロミック素子2の透過率とを揃えることができる。
【0138】
電圧印加部46は、図8に示すように、1つの発色保持期間T2において、発色保持電圧KVの印加時間を複数設定するように構成されていてもよい。これにより、発色保持期間T2が長い場合でも、透過率TR-Kを安定させやすくなる。また、発色保持電圧KVは、一定であることが好ましいが、経時的に変化するように設定されていてもよい。
【0139】
なお、電圧決定部44は、前述したように、開放電圧の低下幅と透過率の上昇幅との相関関係を記憶しているが、サングラス100のように2つのエレクトロクロミック素子(第1エレクトロクロミック素子1および第2エレクトロクロミック素子2)を備える場合、これらに共通の相関関係を記憶していてもよいし、個別の相関関係を記憶していてもよい。
【0140】
このうち、前者の場合、2つのエレクトロクロミック素子で共通の相関関係を利用することから、例えば、2つのエレクトロクロミック素子の透過率を揃える場合には、互いに開放電圧を近づけるように発色保持電圧KVおよび印加時間を決定すればよい。この場合、透過率を推定することなく、互いに透過率を揃えることができるので、電圧決定部44の処理の負荷を軽減できる。
【0141】
一方、後者の場合、各エレクトロクロミック素子に固有の相関関係に基づいて、発色保持電圧KVおよび印加時間を決定できる。これにより、開放電圧から推定される透過率の推定精度を高めることができる。その結果、2つのエレクトロクロミック素子で透過率を精度よく揃えることができ、サングラス100の高品質化を図ることができる。
【0142】
また、電圧決定部44は、各種の要素に応じて、上記の相関関係を逐次変更する機能を有していてもよい。各種の要素としては、例えば、気温、累積気温、連続駆動時間、累積駆動時間等が挙げられる。これらの要素は、上記の相関関係を乱す原因となる場合がある。そこで、電圧決定部44が、これらの要素を取得し、取得結果を相関関係に反映させる(相関関係を変化させる)ように構成されていれば、仮に、上記の相関関係が実態から乖離した場合でも、相関関係を修正することができる。これにより、上記の要素に伴う透過率の推定精度の低下を抑制できる。
【0143】
3.前記実施形態が奏する効果
前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100は、第1エレクトロクロミック素子1と、電圧測定部42と、電圧決定部44と、電圧印加部46と、を備える。第1エレクトロクロミック素子1は、光透過性を有するとともに、発色動作期間T1に印加される電圧により透過率が変化し、発色動作期間T1終了後の発色保持期間T2においてエレクトロクロミック回路が開放されることにより透過率が保持される。電圧測定部42は、第1エレクトロクロミック素子1の開放電圧を測定する。電圧決定部44は、開放電圧と基準値DLとの比較結果に基づいて、発色保持期間T2における透過率と目標値TLとの差が小さくなるように、発色保持期間T2の一部において第1エレクトロクロミック素子1に印加される発色保持電圧KVおよび発色保持電圧KVの印加時間を決定する。電圧印加部46は、発色保持期間T2において、第1エレクトロクロミック素子1に対し、発色保持電圧KVを印加時間で印加する。
【0144】
このような構成によれば、第1エレクトロクロミック素子1が劣化している場合でも、発色保持期間T2において、透過率の変化を抑制することができる。これにより、品質や使い勝手が良好なサングラス100(電子調光デバイス)を実現できる。
【0145】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100は、第1エレクトロクロミック素子1(第1素子)および第2エレクトロクロミック素子2(第2素子)を備える。電圧測定部42は、第1エレクトロクロミック素子1の開放電圧および第2エレクトロクロミック素子2の開放電圧を測定する。電圧決定部44は、第2エレクトロクロミック素子2の開放電圧に基づいて第2エレクトロクロミック素子2の透過率を推定し、推定した第2エレクトロクロミック素子2の透過率を目標値TLとして、第1エレクトロクロミック素子1の発色保持電圧KVおよび印加時間を決定する。
【0146】
このような構成によれば、第1エレクトロクロミック素子1の透過率と第2エレクトロクロミック素子2の透過率とを揃えることができる。これにより、例えば、左右のレンズに組み込まれた第1エレクトロクロミック素子1と第2エレクトロクロミック素子2との間で生じる透過率のずれを抑え、品質(見栄え)や使い勝手が良好なサングラス100(眼鏡)を実現できる。
【0147】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100では、電圧決定部44は、開放電圧とエレクトロクロミック素子の透過率との相関関係を記憶する。電圧決定部44は、この相関関係に基づいて、発色保持電圧KVおよび印加時間を決定する。
【0148】
このような構成によれば、相関関係を利用して、開放電圧から透過率を精度よく推定できる。これにより、透過率を目標値TLに精度よく近づけることができる。
【0149】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100では、電圧決定部44は、累積駆動時間に応じて、相関関係を変化させる機能を有する。
【0150】
このような構成によれば、仮に、上記の相関関係が実態から乖離した場合でも、相関関係を修正することができる。これにより、累積駆動時間に伴う透過率のずれを低減できる。
【0151】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100では、発色保持電圧KVは、発色保持期間T2が開始された直後の開放電圧の60%以上130%以下である。
このような構成によれば、透過率の変動が特に少ないサングラス100を実現できる。
【0152】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100では、印加時間は、連続で1秒以上30秒以下である。
このような構成によれば、透過率を安定させやすくなる。
【0153】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100では、印加時間が、1つの発色保持期間T2内に複数設定されている。
【0154】
このような構成によれば、発色保持期間T2が長い場合でも、透過率を安定させやすくなる。
【0155】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100では、電圧測定部42は、発色保持期間T2が開始された後、所定時間経過後に、開放電圧を測定する。
このような構成によれば、異常値の少ない開放電圧を取得することができる。
【0156】
また、前記実施形態に係る電子調光デバイスが適用されたサングラス100は、眼鏡として用いられる。
【0157】
このような構成によれば、意図しない発色濃度の低下(透過率の上昇)に伴う違和感を使用者に与えにくい眼鏡を実現できる。
【0158】
以上、本発明の電子調光デバイスについて説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
【0159】
例えば、本発明の電子調光デバイスには、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成物で置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0160】
1 第1エレクトロクロミック素子
2 第2エレクトロクロミック素子
11 第1基板
12 第2基板
13 第1電極
14 第2電極
15 第1補助電極
16 第2補助電極
20 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
31 第1レンズ
32 第2レンズ
35 樹脂層
40 制御部
42 電圧測定部
44 電圧決定部
46 電圧印加部
55 封止部
60 EC機能部
63 第1エレクトロクロミック層
64 第2エレクトロクロミック層
65 電解質層
70 着色領域
100 サングラス
DL 基準値
KV 発色保持電圧
OCV-K 開放電圧
OCV-NG 開放電圧
OCV-OK 開放電圧
V-NG 電圧
V-OK 電圧
t 所定時間
T1 発色動作期間
T2 発色保持期間
T3 消色期間
TL 目標値
TR-K 透過率
TR-KV 透過率
TR-NG 透過率
TR-OK 透過率
【要約】
【課題】発色保持期間における透過率の変化を抑制し得る電子調光デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明の電子調光デバイスは、光透過性を有するとともに、発色動作期間に印加される電圧により透過率が変化し、前記発色動作期間後の発色保持期間においてエレクトロクロミック回路が開放されることにより前記透過率が保持されるエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子の開放電圧を測定する電圧測定部と、前記開放電圧と基準値との比較結果に基づいて、前記発色保持期間における前記透過率と目標値との差が小さくなるように、前記発色保持期間の一部において前記エレクトロクロミック素子に印加される発色保持電圧および前記発色保持電圧の印加時間を決定する電圧決定部と、前記発色保持期間において、前記エレクトロクロミック素子に対し、前記発色保持電圧を前記印加時間で印加する電圧印加部と、を備える。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9