(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】乗客コンベアの給油装置及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20241224BHJP
B66B 23/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B66B31/00 F
B66B23/00 Z
(21)【出願番号】P 2024063057
(22)【出願日】2024-04-10
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】土居 真吾
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077933(JP,A)
【文献】特開平08-085692(JP,A)
【文献】特開2011-073837(JP,A)
【文献】特開2007-186336(JP,A)
【文献】特開2009-107837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段チェーン及び手摺チェーンにそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベアの給油装置であって、
前記踏段チェーンに潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパンと、
前記手摺チェーン用オイルパンに設けられ、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を前記踏段チェーンに供給する余剰油給油パイプと、
を備える乗客コンベアの給油装置。
【請求項2】
前記手摺チェーンに給油する給油量を、前記踏段チェーンに給油する給油量に基づいて給油する
請求項1に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項3】
前記踏段チェーンに必要な給油量を、前記踏段チェーン
に給油し、前記踏段チェーンに必要な給油量を、前記手摺チェーン
に給油する
請求項1に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項4】
前記踏段チェーン及び前記手摺チェーンに供給するための潤滑油が格納される1つの給油タンクを備え、
前記踏段チェーン用給油パイプは、前記給油タンクから前記踏段チェーンに潤滑油を供給し、
前記手摺チェーン用給油パイプは、前記給油タンクから前記手摺チェーンに潤滑油を供給する
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項5】
前記手摺チェーン用オイルパン内において、前記余剰油給油パイプの入口を覆うように設けられたフィルターを備える
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項6】
前記余剰油給油パイプは、前記手摺チェーン用オイルパンの底面より高い位置に設けられる
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項7】
前記踏段チェーンは踏段の幅方向の左右にそれぞれ設けられており、
前記余剰油給油パイプは、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を、踏段の幅方向の左右に設けられた前記踏段チェーンにそれぞれ供給する
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項8】
前記手摺チェーン用オイルパンにおいて、前記余剰油給油パイプより高い位置に設けられ、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーン用オイルパンに排出する余剰油排出パイプを備える
請求項1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
【請求項9】
踏段チェーン及び手摺チェーンにそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベアの給油装置を備える乗客コンベアであって、
前記踏段チェーンに潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパンと、
前記手摺チェーン用オイルパンに設けられ、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を前記踏段チェーンに供給する余剰油給油パイプと、
を備える乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は乗客コンベアの給油装置及び乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアに設けられる複数の踏段は、踏段チェーンによって、建物の上階階床と下階階床との間に跨って設置されたトラス内全域を循環移動する。また、乗客コンベアに設けられる移動手摺は、手摺チェーンによって、トラス内の上端部を循環移動する。
【0003】
ここで、従来の乗客コンベアの給油装置では、踏段チェーン及び手摺チェーンに潤滑油が供給され、トラスの床面のほぼ全面にわたって設けられたオイルパンが踏段チェーンや手摺チェーン等から滴下される潤滑油を受ける構成となっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、トラス内全域を循環できる長さである踏段チェーンは、トラス内の一部を循環できる長さである手摺チェーンよりも長い。そのため、踏段チェーンに必要な量の潤滑油を供給すると、手摺チェーンには必要な量以上の潤滑油が供給される。よって、手摺チェーンからオイルパンに余剰油が多く排出されてしまっていた。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、手摺チェーンで余剰となった潤滑油を再利用することができる乗客コンベアの給油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る乗客コンベアの給油装置は、踏段チェーン及び手摺チェーンにそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベアの給油装置であって、踏段チェーンに潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプと、手摺チェーンに潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプと、手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパンと、手摺チェーン用オイルパンに設けられ、手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーンに供給する余剰油給油パイプと、を備える。
【0008】
本開示に係る乗客コンベアは、踏段チェーン及び手摺チェーンにそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベアの給油装置を備える乗客コンベアであって、踏段チェーンに潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプと、手摺チェーンに潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプと、手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパンと、手摺チェーン用オイルパンに設けられ、手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーンに供給する余剰油給油パイプと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、手摺チェーンで余剰となった潤滑油を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係るトラス内の上端部の構成を示す図である。
【
図4】
図3における給油装置周辺を紙面上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1に係る乗客コンベア1の構成を説明する。
図1は実施の形態1に係る乗客コンベア1の構成を示す図である。
図2は
図1のA-A断面図(ただし、欄干5は図示せず)である。
【0012】
図1において、乗客コンベア1は、建物の下階階床2aと上階階床2bとの間に跨って設置されたトラス3と、トラス3上に設けられる一対の欄干5と、一対の欄干5に沿って移動する移動手摺6と、一対の欄干5の下部に設けられるスカートガード7と、乗客コンベア1に乗客が乗降するために下階階床2a及び上階階床2bに設けられた乗降板8a及び乗降板8bと、を備える。
【0013】
図1に示すように、トラス3内の全域には、複数の踏段4と、踏段チェーン11と、踏段4が移動するための案内レール12と、が設けられる。また、トラス3内の上端部には、回転可能な歯車状の部材である踏段用駆動スプロケット9aと、乗客コンベア1内の部材に動力を供給する駆動装置10と、駆動装置10から動力を受け取り部材に伝達する駆動スプロケット9cと、踏段用駆動スプロケット9aと駆動スプロケット9cを繋ぐ主軸9d(
図1に図示せず)と、が設けられる。また、トラス3内の下端部には、踏段チェーン11の回転によって回転する歯車状の部材である踏段用従動スプロケット9bが設けられる。
【0014】
図1に示すように、複数の踏段4は、トラス3内を循環移動するように無端状に連結されている。また、
図1及び
図2に示すように、各踏段4は、移動方向前側の端部に前輪13aが取り付けられており、移動方向後側の端部に後輪13bが取り付けられている。前輪13aおよび後輪13bは、各踏段4の幅方向の左右にそれぞれ1つずつ取付けられている。また、
図2に示すように、各踏段4の移動方向前側は、踏段チェーン11に取り付けた踏段軸14に支持されている。また、各踏段4の移動方向後側は後輪13bに支持されている。踏段4に乗客が乗ると、乗客の荷重は前輪13a及び後輪13bが支持する。
【0015】
踏段チェーン11は、一連のリンクから構成されており、それぞれのリンクはピンで接続されている。また、踏段チェーン11は、踏段用駆動スプロケット9aと踏段用従動スプロケット9bに巻き掛けられており、複数の踏段4と連結している。
【0016】
ここで、複数の踏段4が移動する動作について説明する。最初に、駆動スプロケット9cが駆動装置10から動力を受け取る。この動力は駆動スプロケット9cから、駆動スプロケット9cと踏段用駆動スプロケット9aを繋ぐ主軸9dを介して踏段用駆動スプロケット9aへ伝達される。この動力によって、踏段用駆動スプロケット9aが回転し、踏段用駆動スプロケット9aの歯車と踏段チェーン11のリンクのピンがかみ合い、踏段チェーン11が回転する。踏段チェーン11が回転すると、踏段用従動スプロケット9bも回転する。このように、各スプロケットにより一定速度で踏段チェーン11が回転すると、踏段チェーン11に連結された複数の踏段4に動力が伝達され、複数の踏段4は案内レール12上を移動する。
【0017】
トラス3内の上端部の構成について、より詳細に説明する。
図3は、実施の形態1に係るトラス3内の上端部の構成を示す図である。なお、
図3において、一部の踏段4及び案内レール12の図示を省略している。
図4は、
図3における給油装置100周辺を紙面上側から見た図である。
【0018】
図3及び
図4に示すように、トラス3内の上端部には、駆動装置10と、駆動スプロケット9cと、踏段用駆動スプロケット9aと、踏段チェーン11と、手摺用駆動スプロケット15aと、手摺用従動スプロケット15bと、手摺チェーン16と、シーブ17と、駆動スプロケット9cと踏段用駆動スプロケット9a、及び、駆動スプロケット9cと手摺用駆動スプロケット15aを繋ぐ主軸9dと、手摺用従動スプロケット15bとシーブ17を繋ぐ手摺用主軸15cと、踏段チェーン11及び手摺チェーン16に潤滑油を供給する給油装置100と、を備える。
【0019】
手摺用駆動スプロケット15aは、回転可能な歯車状の部材であり、駆動装置10から動力を受け取る。手摺用従動スプロケット15bは、回転可能な歯車状の部材であり、手摺チェーン16の回転によって、回転する。手摺チェーン16は、一連のリンクから構成されており、それぞれのリンクはピンで接続されている。手摺チェーン16は、手摺用駆動スプロケット15aと手摺用従動スプロケット15bに巻き掛けられている。シーブ17は、円盤状の部材であり、手摺チェーン16が回転することで回転し、移動手摺6に動力が伝達され、移動手摺6を移動させる。
【0020】
ここで、移動手摺6が移動する動作について説明する。最初に、駆動スプロケット9cが駆動装置10から動力を受け取る。この動力は駆動スプロケット9cから、駆動スプロケット9cと手摺用駆動スプロケット15aを繋ぐ主軸9dを介して手摺用駆動スプロケット15aへ伝達される。この動力によって、手摺用駆動スプロケット15aが回転し、手摺用駆動スプロケット15aの歯車と手摺チェーン16のリンクのピンがかみ合い、手摺チェーン16が回転する。また、手摺チェーン16の回転によって、手摺用従動スプロケット15bも回転する。手摺用従動スプロケット15bとシーブ17は手摺用主軸15cを介して繋がっており、手摺用従動スプロケット15bが回転すると、シーブ17が回転する。シーブ17によって移動手摺6に動力が伝達されると、移動手摺6が移動する。
【0021】
給油装置100は、給油タンク101と、踏段チェーン用給油パイプ102aと、手摺チェーン用給油パイプ102bと、踏段チェーン用給油ノズル103aと、手摺チェーン用給油ノズル103bと、踏段チェーン用オイルパン104aと、手摺チェーン用オイルパン104bと、余剰油給油パイプ105と、余剰油給油ノズル106と、フィルター107と、余剰油排出パイプ108と、を備える。
【0022】
給油タンク101には、踏段チェーン11及び手摺チェーン16に供給するための潤滑油が格納される。この潤滑油は、チェーンの摩擦や摩耗を軽減してチェーンの寿命を延ばすことや、チェーンに生じる錆を防ぐことを目的として、各チェーンに供給される。給油タンク101には、踏段チェーン11及び手摺チェーン16に上部から潤滑油を供給するための給油パイプが設けられており、給油パイプから潤滑油が供給され、余剰油は重力によってオイルパンに排出される。
【0023】
具体的には、踏段チェーン11には、踏段チェーン用給油パイプ102aから潤滑油が供給され、踏段チェーンで発生する余剰油は踏段チェーン用オイルパン104aに排出される。このとき、
図3に示すように、踏段チェーン用給油パイプ102aに踏段チェーン用給油ノズル103aが設けられた場合は、踏段チェーン用給油ノズル103aによって踏段チェーン用オイルパン104aに排出される余剰油の流量を調節可能である。
【0024】
また、手摺チェーン16には、手摺チェーン用給油パイプ102bから潤滑油が供給され、余剰油は手摺チェーン用オイルパン104bに排出される。このとき、
図3に示すように、手摺チェーン用給油パイプ102bに手摺チェーン用給油ノズル103bが設けられた場合は、手摺チェーン用給油ノズル103bによって手摺チェーン用オイルパン104bに排出される余剰油の流量を調節可能である。
【0025】
なお、踏段チェーン用オイルパン104aは踏段チェーン11から排出される余剰油を受けられるように、帰路に設けられた案内レール12の長手方向に沿って配置される。また、手摺チェーン用オイルパン104bは手摺チェーン16から排出される余剰油を受けられるように、手摺チェーン16全体の下に設けられる。
【0026】
ここで、給油装置100において、供給する油量を調整する装置を用いない場合は、給油タンク101から踏段チェーン11及び手摺チェーン16に対して、定期的に同じ量だけ給油される。一般的に、トラス3内全域を循環できる長さである踏段チェーン11は、トラス3内の一部を循環できる長さである手摺チェーン16よりも長い。よって、踏段チェーン11及び手摺チェーン16への給油量は、踏段チェーン11に必要な給油量に基づいて設定される。そのため、踏段チェーン11に必要な量の潤滑油を供給すると、手摺チェーン16には必要な量以上の潤滑油が供給される。そして、手摺チェーン16から手摺チェーン用オイルパン104bに、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油(以下、余剰油)が多く排出されてしまう。
【0027】
そこで、実施の形態1に係る給油装置100では、現状廃棄されている手摺チェーン用オイルパン104bに排出された余剰油を、手摺チェーン用オイルパン104bに設けられた余剰油給油パイプ105から重力により踏段チェーン11へ供給し、再利用する構成を備える。なお、
図3及び
図4に示すように、余剰油給油パイプ105に余剰油給油ノズル106が設けられた場合は、余剰油給油ノズル106によって踏段チェーン11に排出される余剰油の流量を調節可能である。
【0028】
図4において、余剰油給油パイプ105は、余剰油を排出する側の端部が左右に分岐した形状をしている。手摺チェーン用オイルパン104bから供給される余剰油は、上記形状を有する余剰油給油パイプ105によって、各踏段4の幅方向の左右に設けられた踏段チェーン11にそれぞれ供給される。
【0029】
また、
図3に示すように、余剰油給油パイプ105は、手摺チェーン用オイルパン104bの底面より高い位置に設けられる。この構成によって、手摺チェーン用オイルパン104bの底面付近に沈殿した雑芥やほこり等が余剰油給油パイプ105内へ進入することを低減できる。
【0030】
図3及び
図4に示すように、フィルター107は、手摺チェーン用オイルパン104b内において、余剰油給油パイプ105の入口を覆うように設けられる。フィルター107は、例えばスポンジ状である。フィルター107は、手摺チェーン用オイルパン104b上に混入した雑芥やほこり等を捕捉しつつ、余剰油を通過させる。フィルター107を通過した余剰油は、余剰油給油パイプ105内に流れる。したがって、この構成によって、余剰油に含まれた雑芥やほこり等が余剰油給油パイプ105内へ進入することを低減できる。
【0031】
図3及び
図4に示すように、余剰油排出パイプ108は、手摺チェーン用オイルパン104bにおいて、余剰油給油パイプ105より高い位置に設けられ、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーン用オイルパン104aに排出する。この構成によって、余剰油給油パイプ105の入口が何らかの要因で塞がれ、余剰油が余剰油給油パイプ105に流れなかった場合においても、余剰油を踏段チェーン用オイルパン104aに排出することができ、余剰油が手摺チェーン用オイルパン104bからあふれ出すことを防止できる。なお、余剰油給油パイプ105の入口が塞がれる例としては、余剰油給油パイプ105の入口に雑芥が落ちる場合や、フィルター107が目詰まりをする場合が挙げられる。
【0032】
以上より、実施の形態1に係る乗客コンベアの給油装置100は、踏段チェーン11及び手摺チェーン16にそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベア1の給油装置100であって、踏段チェーン11に潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプ102aと、手摺チェーン16に潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプ102bと、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパン104bと、手摺チェーン用オイルパン104bに設けられ、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーン11に供給する余剰油給油パイプ105と、を備えることで、手摺チェーン16で余剰となった潤滑油を再利用することができる。
【0033】
また、実施の形態1に係る乗客コンベアの給油装置100は、踏段チェーン11に必要な給油量を、踏段チェーン11及び手摺チェーン16にそれぞれ給油してもよい。
【0034】
なお、手摺チェーン用オイルパン104bに排出された余剰油は、踏段チェーン11へ供給できればよく、余剰油を踏段チェーン11に供給するために経由する部材は限定されない。例えば、余剰油給油ノズル106は用いず、余剰油給油パイプ105のみを用いてもよい。また、給油タンク101から供給される潤滑油は、踏段チェーン11及び手摺チェーン16に供給できればよく、潤滑油を踏段チェーン11及び手摺チェーン16に供給するために経由する部材は限定されない。例えば、踏段チェーン用給油ノズル103aは用いず、踏段チェーン用給油パイプ102aのみを用いてもよく、手摺チェーン用給油ノズル103bは用いず、手摺チェーン用給油パイプ102bのみを用いてもよい。
【0035】
また、実施の形態1に係る乗客コンベアの給油装置100では、手摺チェーン16に給油する給油量を、踏段チェーン11に給油する給油量に基づいて給油してもよい。給油量が調整されることで、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油を、踏段チェーン11に対して過剰に供給されることを防ぐことができる。また、給油量が調整されることで、踏段チェーン11及び手摺チェーン16へ供給する潤滑油の総量を抑えることができる。
【0036】
また、踏段チェーン11及び手摺チェーン16に供給するための潤滑油が格納される1つの給油タンク101を備え、踏段チェーン用給油パイプ102aは、給油タンク101から踏段チェーン11に潤滑油を供給し、手摺チェーン用給油パイプ102bは、給油タンク101から手摺チェーンに潤滑油を供給してもよい。給油タンク101を1つに集約することで、給油装置100において必要な部材を低減することが可能である。
【0037】
さらに、余剰油給油パイプ105は、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油を、踏段4の幅方向の左右に設けられた踏段チェーン11にそれぞれ供給することで、余剰油を無駄なく有効活用することができる。ここで、余剰油給油パイプ105は、左右に分岐した形状をしており、余剰油を、踏段4の幅方向の左右に設けられた踏段チェーン11にそれぞれ供給してもよい。また、余剰油給油パイプ105は、2本設けられ、余剰油を、踏段4の幅方向の左右に設けられた踏段チェーン11にそれぞれ供給してもよい。
【0038】
また、余剰油給油パイプ105は、左右に供給する余剰油の量を調整できる構成としてもよい。例えば、余剰油給油パイプ105は、左右に分岐したパイプの径が異なるものを使用してもよい。例えば、余剰油給油パイプ105は、左右に分岐したパイプに余剰油給油ノズル106がそれぞれ設けられ、余剰油給油ノズル106によって給油量を調整できるものであってもよい。
【0039】
なお、余剰油給油パイプ105の形状は限定されない。例えば、分岐を有さない中空円筒状の余剰油給油パイプ105を用いる場合は、各踏段4の幅方向の左右いずれかに設けられた踏段チェーン11に余剰油を供給する構成としてもよい。
【0040】
また、余剰油給油パイプ105は、手摺チェーン用オイルパン104bの底面より高い位置に設けられることで、手摺チェーン用オイルパン104bの底面付近に沈殿した雑芥やほこり等が余剰油給油パイプ105内へ進入することを防止できる。
【0041】
また、フィルター107が、手摺チェーン用オイルパン104b内において、余剰油給油パイプ105の入口を覆うように設けられることで、余剰油に含まれた雑芥やほこり等が余剰油給油パイプ105内へ進入することを防止できる。
【0042】
なお、フィルター107の形状は、手摺チェーン用オイルパン104b内において、余剰油給油パイプ105の入口を覆うように設けられれば、限定されない。例えば、網状のフィルター107を手摺チェーン用オイルパン104bの内部の底面全体を覆うように設置してもよい。この場合、余剰油給油パイプ105は、手摺チェーン用オイルパン104bの底面の真下に設けても、雑芥やほこり等が混入していない余剰油を踏段チェーン11に供給することが可能である。
【0043】
また、余剰油排出パイプ108は、手摺チェーン用オイルパン104bにおいて、余剰油給油パイプより高い位置に設けられ、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーン用オイルパン104aに排出する。この構成によって、余剰油給油パイプ105の入口が塞がれ、余剰油が余剰油給油パイプ105に流れなかった場合においても、余剰油が手摺チェーン用オイルパン104bからあふれ出すことを防止できる。
【0044】
なお、実施の形態1では、給油装置100がフィルター107、余剰油排出パイプ108を備える例について説明したが、給油装置100は少なくとも踏段チェーン用給油パイプ102a、手摺チェーン用給油パイプ102b、手摺チェーン用オイルパン104b、余剰油給油パイプ105を備えていればよい。
【0045】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
踏段チェーン及び手摺チェーンにそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベアの給油装置であって、
前記踏段チェーンに潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパンと、
前記手摺チェーン用オイルパンに設けられ、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を前記踏段チェーンに供給する余剰油給油パイプと、
を備える乗客コンベアの給油装置。
(付記2)
前記手摺チェーンに給油する給油量を、前記踏段チェーンに給油する給油量に基づいて給油する
付記1に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記3)
前記踏段チェーンに必要な給油量を、前記踏段チェーン及び前記手摺チェーンにそれぞれ給油する
付記1に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記4)
前記踏段チェーン及び前記手摺チェーンに供給するための潤滑油が格納される1つの給油タンクを備え、
前記踏段チェーン用給油パイプは、前記給油タンクから前記踏段チェーンに潤滑油を供給し、
前記手摺チェーン用給油パイプは、前記給油タンクから前記手摺チェーンに潤滑油を供給する
付記1から3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記5)
前記手摺チェーン用オイルパン内において、前記余剰油給油パイプの入口を覆うように設けられたフィルターを備える
付記1から4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記6)
前記余剰油給油パイプは、前記手摺チェーン用オイルパンの底面より高い位置に設けられる
付記1から5のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記7)
前記踏段チェーンは踏段の幅方向の左右にそれぞれ設けられており、
前記余剰油給油パイプは、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を、踏段の幅方向の左右に設けられた前記踏段チェーンにそれぞれ供給する
付記1から6のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記8)
前記手摺チェーン用オイルパンにおいて、前記余剰油給油パイプより高い位置に設けられ、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーン用オイルパンに排出する余剰油排出パイプを備える
付記1から7のいずれか1項に記載の乗客コンベアの給油装置。
(付記9)
踏段チェーン及び手摺チェーンにそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベアの給油装置を備える乗客コンベアであって、
前記踏段チェーンに潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプと、
前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパンと、
前記手摺チェーン用オイルパンに設けられ、前記手摺チェーンに供給された潤滑油の余剰油を前記踏段チェーンに供給する余剰油給油パイプと、
を備える乗客コンベア。
【符号の説明】
【0046】
1 乗客コンベア、2a 下階階床、2b 上階階床、3 トラス、4 踏段、5 欄干、6 移動手摺、7 スカートガード、8a、8b 乗降板、9a 踏段用駆動スプロケット、9b 踏段用従動スプロケット、9c 駆動スプロケット、9d 主軸、10 駆動装置、11 踏段チェーン、12 案内レール、13a 前輪、13b 後輪、14 踏段軸、15a 手摺用駆動スプロケット、15b 手摺用従動スプロケット、15c 手摺用主軸、16 手摺チェーン、17 シーブ、100 給油装置、101 給油タンク、102a 踏段チェーン用給油パイプ、102b 手摺チェーン用給油パイプ、103a 踏段チェーン用給油ノズル、103b 手摺チェーン用給油ノズル、104a 踏段チェーン用オイルパン、104b 手摺チェーン用オイルパン、105 余剰油給油パイプ、106 余剰油給油ノズル、107 フィルター、108 余剰油排出パイプ
【要約】
【課題】手摺チェーンで余剰となった潤滑油を再利用することができる乗客コンベアの給油装置を提供することを目的とする。
【解決手段】踏段チェーン11及び手摺チェーン16にそれぞれ潤滑油を給油する乗客コンベア1の給油装置100であって、踏段チェーン11に潤滑油を供給する踏段チェーン用給油パイプ102aと、手摺チェーン16に潤滑油を供給する手摺チェーン用給油パイプ102bと、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油が排出される手摺チェーン用オイルパン104bと、手摺チェーン用オイルパン104bに設けられ、手摺チェーン16に供給された潤滑油の余剰油を踏段チェーン11に供給する余剰油給油パイプ105と、を備える。
【選択図】
図3