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特許7609331シナリオ作成装置、シナリオ作成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】シナリオ作成装置、シナリオ作成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 180
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024105400
(22)【出願日】2024-06-28
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 巨己
(72)【発明者】
【氏名】新井 馨
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-159239(JP,A)
【文献】特開2023-136289(JP,A)
【文献】特開2024-029406(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151278(WO,A1)
【文献】特開2019-082935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用する発電設備と蓄電池とを組み合わせた電気設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える不確実項目の値を、気象にかかる情報を用いて予測する予測部と、
前記電力売買取引日における前記不確実項目の予測値を含む複数のシナリオ候補を作成するシナリオ候補作成部と、
前記複数のシナリオ候補の中から、前記取引計画を作成するときに用いる、前記複数のシナリオ候補の数よりも少ない数のシナリオを選定するシナリオ選定部と、
を含み、
前記不確実項目は、前記電力市場の電力市場価格と、前記発電設備の発電量とを含み、
前記シナリオ選定部は、前記電力市場価格の予測値の大きさの順又は前記発電量の予測値の大きさの順に並ぶ前記複数のシナリオ候補の中から、前記電力市場価格の予測値が最安値、最高値、最安値及び最高値の付近の値となる前記シナリオ候補を除くか、或いは、前記発電量の予測値が最小値、最大値、最小値及び最大値の付近の値となる前記シナリオ候補を除いて、等間隔で離れた前記シナリオ候補を前記シナリオとして選定する
シナリオ作成装置。
【請求項2】
請求項に記載のシナリオ作成装置であって、
前記発電設備は、太陽光発電設備又は風力発電設備であり、
前記発電量は、前記太陽光発電設備の発電量又は前記風力発電設備の発電量である
シナリオ作成装置。
【請求項3】
請求項に記載のシナリオ作成装置であって、
前記発電設備は、太陽光発電設備及び風力発電設備であり、
前記発電量は、前記太陽光発電設備の発電量及び前記風力発電設備の発電量の合計値である
シナリオ作成装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシナリオ作成装置であって、
前記気象にかかる情報は、アンサンブル気象予報にかかる情報である
シナリオ作成装置。
【請求項5】
シナリオ作成装置のシナリオ作成方法であって、
再生可能エネルギーを利用する発電設備と蓄電池とを組み合わせた電気設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える不確実項目の値を、気象にかかる情報を用いて予測する予測ステップと、
前記電力売買取引日における前記不確実項目の予測値を含む複数のシナリオ候補を作成する作成ステップと、
前記複数のシナリオ候補の中から、前記取引計画を作成するときに用いる、前記複数のシナリオ候補の数よりも少ない数のシナリオを選定する選定ステップと、
を含み、
前記不確実項目は、前記電力市場の電力市場価格と、前記発電設備の発電量とを含み、
前記選定ステップでは、前記電力市場価格の予測値の大きさの順又は前記発電量の予測値の大きさの順に並ぶ前記複数のシナリオ候補の中から、前記電力市場価格の予測値が最安値、最高値、最安値及び最高値の付近の値となる前記シナリオ候補を除くか、或いは、前記発電量の予測値が最小値、最大値、最小値及び最大値の付近の値となる前記シナリオ候補を除いて、等間隔で離れた前記シナリオ候補を前記シナリオとして選定する
シナリオ作成方法。
【請求項6】
コンピュータに、
再生可能エネルギーを利用する発電設備と蓄電池とを組み合わせた電気設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える不確実項目の値を、気象にかかる情報を用いて予測する予測処理と、
前記電力売買取引日における前記不確実項目の予測値を含む複数のシナリオ候補を作成する作成処理と、
前記複数のシナリオ候補の中から、前記取引計画を作成するときに用いる、前記複数のシナリオ候補の数よりも少ない数のシナリオを選定する選定処理と、
を実行させ
前記不確実項目は、前記電力市場の電力市場価格と、前記発電設備の発電量とを含み、
前記選定処理では、前記電力市場価格の予測値の大きさの順又は前記発電量の予測値の大きさの順に並ぶ前記複数のシナリオ候補の中から、前記電力市場価格の予測値が最安値、最高値、最安値及び最高値の付近の値となる前記シナリオ候補を除くか、或いは、前記発電量の予測値が最小値、最大値、最小値及び最大値の付近の値となる前記シナリオ候補を除いて、等間隔で離れた前記シナリオ候補を前記シナリオとして選定する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シナリオ作成装置、シナリオ作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを利用する発電設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画を作成する際に、電力売買取引日における電力価格や発電装置の発電量等の不確実項目の値を含むシナリオを事前に用意し、このシナリオを基に取引計画を作成する技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-74886号公報
【文献】特開2005-25377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、不確実項目を含む複数のシナリオを事前に用意し、複数のシナリオの全てを2つずつのシナリオの組み合わせに分割し、2つずつのシナリオの組み合わせのそれぞれについて、シナリオ間の類似度合いを表す重複度を評価し、重複度が予め設定した閾値以上となる一組のシナリオのうちの一方を削除する演算処理を行うことで、シナリオの数を削減している。しかし、特許文献1では、取引計画を作成する前に、最適なシナリオを評価することができるまで、上記の分割及び重複度の評価の演算処理を繰り返す必要があり、最適なシナリオを評価するまでの演算時間が長くなる虞があった。
【0005】
また、特許文献2の場合、複数のシナリオのそれぞれに基づいて市場取引結果である電力価格及び電力取引量のシミュレート結果を算出し、このシミュレート結果を表示手段に対比して表示することで、最適な入札戦略を立てるようにしている。しかし、特許文献2では、シミュレート結果を表示手段に表示することでシナリオを評価することから、最適なシナリオを評価するまでの時間が長くなる虞があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、不確定項目を含む複数のシナリオ候補の中から適切なシナリオ候補を選択するまでの時間を短縮することができるシナリオ作成装置、シナリオ作成方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する本発明の第1の態様のシナリオ作成装置は、再生可能エネルギーを利用する発電設備と蓄電池とを組み合わせた電気設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える不確実項目の値を、気象にかかる情報を用いて予測する予測部と、前記電力売買取引日における前記不確実項目の予測値を含む複数のシナリオ候補を作成するシナリオ候補作成部と、前記複数のシナリオ候補の中から、前記取引計画を作成するときに用いる、前記複数のシナリオ候補の数よりも少ない数のシナリオを選定するシナリオ選定部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力市場での電力売買取引日の不確実項目を含む複数のシナリオ候補の中から、適切なシナリオを選定するまでの時間を短縮できるシナリオ作成装置、シナリオ作成方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】シナリオ作成装置700を含む市場取引計画システム100と、その周囲の概略的な構成とを示すブロック図である。
図2】市場取引計画システム100の機能を示すブロック図である。
図3】シナリオ作成装置700の機能を示すブロック図である。
図4】市場価格要因DB710に記憶されるデータ群の一例を示す図である。
図5】気象予報DB720に記憶されるデータ群の一例を示す図である。
図6】価格予測部730によるX個の電力市場価格の予測値の一例を示すグラフである。
図7】発電予測部740による太陽光発電設備200におけるX個の発電量の予測値の一例を示すグラフである。
図8】シナリオ候補DB760に記憶されたデータ群の一例を示す図である。
図9】シナリオ候補DB760に記憶されるデータ群として、X個の電力市場価格の予測値と、太陽光発電設備200のX個の発電量の予測値とを、シナリオ候補1~Xごとに組み合わせてグラフ化した一例を示す図である。
図10】シナリオ選定部750による選定動作の一例を示すフローチャートである。
図11】シナリオDB770に記憶されるデータ群の一例を示す図である。
図12】取引計画作成装置800の機能を示すブロック図である。
図13】シナリオ選定部750によって選定された3個のシナリオ候補A,B,Cのそれぞれについて作成された取引計画A’,B’,C’の一例を示す図である。
図14】取引計画評価装置900の機能を示すブロック図である。
図15】取引計画A’ ,B’,C’の何れの収支が最大となるのかを評価する一例を示す図である。
図16】シナリオ作成装置700、取引計画作成装置800、取引計画評価装置900の機能を実現する情報処理装置1000のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<<市場取引計画システム100>>
図1は、シナリオ作成装置700を含む市場取引計画システム100と、その周囲の概略的な構成とを示すブロック図である。尚、本実施形態では、電力市場は、例えば、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電設備(以下、「再生可能エネルギー利用型発電設備」と称する。)の所有者である発電事業者と一般送配電事業者との間で電力の売買取引を行う市場であって、発電事業者が電力売買取引日の前日までに取引計画を基にスポット入札を行って電力売買を成立させる卸電力市場であることとする。また、本実施形態では、再生可能エネルギー利用型発電設備は、太陽光を利用して発電を行う太陽光発電設備200であることとするが、これに限定されない。例えば、再生可能エネルギー利用型発電設備は、太陽光発電設備200の代わりに、風力を利用して発電を行う風力発電設備、水力を利用して発電を行う水力発電設備、地熱を利用して発電を行う地熱発電設備、バイオマスを燃料として発電を行うバイオマス発電設備等の何れかであってもよいし、或いは、太陽光発電設備200に対して、風力発電設備、水力発電設備、地熱発電設備、バイオマス発電設備等の何れかを組み合わせたものであってもよい。後者の太陽光発電設備200と他の発電設備とを組み合わせた場合、発電設備の発電量の予測値とは、太陽光発電設備200の発電量の予測値と、組み合わされる他の発電設備の発電量の予測値との合計値であることとする。
【0012】
電気設備である太陽光発電設備200及び蓄電池400は、電力の買電及び売電を行うために電力系統300に連系されている。また、太陽光発電設備200及び蓄電池400は、蓄電池400が太陽光発電設備200の発電電力を直接充電することができるように電力系統300を介さずに接続されている。本実施形態では、説明の便宜上、電力市場において電力を買電するときは、電力系統300から蓄電池400へ電力の充電を行い、電力市場において電力を売電するときは、蓄電池400から電力系統300へ電力の放電を行うこととして説明を行う。
【0013】
太陽光発電設備200は、例えば、多結晶シリコン型発電素子、単結晶シリコン型発電素子、薄膜型発電素子等を用いて構成される太陽光発電パネル(不図示)を備える。また、太陽光発電設備200は、太陽光発電パネルによって発電された電力を直流から交流に変換して電力系統300に供給するパワーコンディショナ(以下、「PCS」と称する。)210を備える。PCSとは、Power Conditioning Subsystemの略である。
【0014】
蓄電池400は、例えば、鉛電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、ニッケル水素電池、レドックスフロー電池、キャパシタ電池等である。蓄電池400は、電力系統300との間で充放電を行うためのPCS410を備える。PCS410は、蓄電池400に充電されている電力を電力系統300に放電する場合、蓄電池400に充電されている電力を直流から交流に変換し、電力系統300からの電力を蓄電池400に充電する場合、電力系統300からの電力を交流から直流に変換する。
【0015】
例えば、電力売買取引日の前日までにスポット入札を行うための取引計画の中で、電力の買電を計画している買電期間では、電力系統300から買電した電力はPCS410を介して蓄電池400に充電される。一方、この取引計画の中で、電力の売電を計画している売電期間では、蓄電池400に充電されている電力をPCS410を介して電力系統300に向けて放電する。尚、太陽光発電設備200の発電電力は、PCS210,410を介さずに蓄電池400にそのまま充電される。
【0016】
蓄電池制御装置420は、最終的に決定された取引計画に基づくスポット入札に従って、電力を買電する買電期間では、電力系統300から買電した電力を蓄電池400に充電し、一方、電力を売電する売電期間では、蓄電池400に充電されている電力を電力系統300に向けて放電し、更に、太陽光発電設備200が発電を行ったことを契機として太陽光発電設備200の発電電力を蓄電池400に充電するように、蓄電池400の充放電動作を制御する。
【0017】
市場取引計画システム100は、電力市場において電力売買取引日の前日までにスポット入札を行うために必要となる、発電事業者にとって最適となる取引計画の作成を支援するシステムである。市場取引計画システム100は、発電事業者が最終的に決定された取引計画に従ってスポット入札を行うために、通信ネットワーク500を介して、スポット入札に含まれる電力の売買情報を受信して電力の売買にかかる管理を行う電力市場側のコンピュータ600と通信可能に接続されている。尚、通信ネットワーク500は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、専用線、電力線通信網、各種公衆通信網等である。
【0018】
図2は、市場取引計画システム100の機能を示すブロック図である。
市場取引計画システム100は、上記の機能を実現するための手段として、シナリオ作成装置700、取引計画作成装置800、取引計画評価装置900を含んで構成される。
【0019】
<<シナリオ作成装置700>>
図3は、シナリオ作成装置700の機能を示すブロック図である。
太陽光発電設備200の発電量は、太陽光発電パネルに照射される日射量によって異なる。つまり、太陽光発電設備200の発電量は、太陽光発電設備200が設置されている地域の天候の影響を受けて変動する一つ目の不確実項目となる。
【0020】
電力市場価格は、発電設備全般で使用される燃料費が安価になると低下し、燃料費が高価になると上昇することが多い。また、電力市場価格は、天候が晴れて日射量が多くなる場合は、太陽光発電設備200の発電電力が増加することに伴って低下し、天候が雨や曇りとなって日射量が少なくなる場合は、太陽光発電設備200の発電電力が減少することに伴って上昇することが多い。また、電力市場価格は、電力の需要量が電力の供給量を上回ると上昇し、電力の需要量が電力の供給量を下回ると低下することが多い。また、電力市場価格は、一日の中で昼間の時間帯では、太陽光発電設備200の発電電力が増加することに伴って低下し、一日の中で夜間の時間帯では、太陽光発電設備200の発電が停止することに伴って上昇することが多い。このように、電力市場価格は、燃料費、天候、電力の需給バランス、一日における昼間、夜間の時間帯等の影響を受けて変動する二つ目の不確実項目となる。
【0021】
シナリオ作成装置700は、電力市場の電力売買取引日における、一つ目の不確実項目である太陽光発電設備200の発電量と、二つ目の不確実項目である電力市場価格とを、所定の時間間隔で予測した複数のシナリオ候補を作成し、複数のシナリオ候補の中から発電事業者にとって最適な取引計画を作成するために必要となる少数のシナリオを選定する装置である。本実施形態では、所定の時間間隔は例えば1時間であることとする。つまり、一日分のシナリオ候補について、太陽光発電設備200の発電量及び電力市場価格のそれぞれは、0時から24時まで1時間間隔で24個予測されることとなる。尚、所定の時間間隔は、1時間以外の例えば30分、2時間等であってもよい。所定の時間間隔が30分である場合、一日分のシナリオ候補について、太陽光発電設備200の発電量及び電力市場価格のそれぞれは、0時から24時まで1時間間隔で48個予測されることとなる。また、所定の時間間隔が2時間である場合、一日分のシナリオ候補について、太陽光発電設備200の発電量及び電力市場価格のそれぞれは、0時から24時まで1時間間隔で12個予測されることとなる。
【0022】
シナリオ作成装置700は、上記の機能を実現する手段として、市場価格要因データベース(以下、「市場価格要因DB」と称する。)710、気象予報データベース(以下、「気象予報DB」と称する。)720、価格予測部730、発電予測部740、シナリオ候補作成部745、シナリオ選定部750、シナリオ候補データベース(以下、「シナリオ候補DB」と称する。)760、シナリオデータベース(以下、「シナリオDB」と称する。)770、選定数設定部780、入力部790、出力部795を含んで構成される。ここで、市場価格要因DB710、気象予報DB720、シナリオ候補DB760、シナリオDB770は、個別の記憶装置で構成されていてもよいし、或いは、1つの記憶装置の全記憶領域を4つの領域に区分したそれぞれの領域を利用して構成されるものであってもよい。
【0023】
市場価格要因DB710には、価格予測部730が電力市場での電力売買取引日における電力市場価格を前日(スポット入札日)までに予測するために参照するデータ群が記憶されている。市場価格要因DB710に記憶されるデータ群の一例を図4に示す。
【0024】
市場価格要因DB710には、スポット入札日よりも前の複数の過去日における電力市場価格が記憶されている。例えば、スポット入札日よりも1日前の電力売買取引日と、スポット入札日よりも2日前の電力売買取引日と、スポット入札日よりも3日前の電力売買取引日と、における0時から24時までの確定した電力市場価格(円/kWh)が1時間ごとに区切られて記憶されている。
【0025】
また、市場価格要因DB710には、太陽光発電設備200及び蓄電池400が連系する電力系統300内の複数の連系線における、電力の売買取引を行うことが可能な空容量が記憶されている。例えば、スポット入札日の前日(電力売買取引日の前々日)時点における、異なる連系線1~4のそれぞれの0時から24時までの空容量(MW)が1時間ごとに区切られて記憶されている。
【0026】
また、市場価格要因DB710には、電力系統300に供給される電力を発電する電力会社の大型発電機の中で、メンテナンス、故障等によって発電を停止している大型発電機の容量が記憶されている。例えば、スポット入札日の前日時点において、連系線1~4における電力の売買取引に影響を与える大型発電機の0時から24時までの容量(MW)が1時間ごとに区切られて記憶されている。複数の大型発電機が発電を停止中である場合、複数の大型発電機の容量の合計値が記憶されることとなる。
【0027】
市場価格要因DB710に記憶されるデータ群は、上記に限定されるものではない。市場価格要因DB710には、価格予測部730が電力市場価格を予測する精度を向上させる可能性のある要因であれば、その要因を示すデータを上記データ群のほかに新たに記憶するか、或いは、上記データ群の少なくとも一部の代わりに書き換えて記憶するようにしてもよい。
【0028】
尚、過去の電力市場価格、ある時点における停止中の大型発電機の容量については、例えば日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)から取得することができ、ある時点における連系線の空容量については、例えば電力広域的運営推進機関(OCCTO:Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, JAPAN)から取得することができる。
【0029】
気象予報DB720には、価格予測部730が電力市場の電力市場価格を電力売買取引日の前日までに予測し、また、発電予測部740が太陽光発電設備200の発電量を電力売買取引日の前日までに予測するために参照するデータ群が記憶されている。気象予報DB720に記憶されるデータ群の一例を図5に示す。
【0030】
数値計算によって将来の気象を予測する手法として、例えばアンサンブル気象予報が知られている。アンサンブル気象予報では、予測対象(例えば風速、気温、気圧、降水量、日射量)を予測するのに必要となる観測誤差と同程度の小さい誤差を含む複数の初期値を用意し、複数の初期値のそれぞれに対応する予測対象の計算結果を統計的に処理することにより、将来の気象を予測する。本実施形態では、気象予報DB720には、複数の初期値(X個)のそれぞれに対応する予測対象の計算結果(X個)が記憶されることとする。
【0031】
予測対象の計算結果をそれぞれメンバー1~Xのグループに分けると、気象予報DB720には、メンバー1~Xのそれぞれについて、太陽光発電設備200が設置されている地域における電力売買取引日の風速(m/s)、気温(℃)、気圧(hPa)、降水量(mm)、日射量(W/m2)を示す0時から24時までのデータが1時間ごとに区切られて記憶されている。
【0032】
上記のデータ群は、例えば気象業務支援センターから取得することができる。上記のメンバー1~Xのそれぞれにおいて、予測対象は風速、気温、気圧、降水量、日射量となっているが、これに限定されない。予測対象を構成する項目として、気象業務支援センターから取得可能な項目の中から、風速、気温、気圧、降水量、日射量以外の項目を選択して予測対象に追加して記憶するか、或いは、予測対象の少なくとも一部の代わりに書き換えて記憶するようにしてもよい。
【0033】
価格予測部730は、市場価格要因DB710及び気象予報DB720に記憶されたデータ群に基づいて、電力売買取引日における電力市場価格を0時から24時まで1時間ごとに予測する。価格予測部730が電力市場価格を予測する方法としては、例えば深層ニューラルネットワークやJust-In-Timeモデリング等を用いる方法を採用することができる。また、気象予報DB720には、メンバー1~Xに対応する合計X個の予測対象のデータが記憶されていることから、価格予測部730が予測する電力市場価格の予測値は、メンバー1~Xのそれぞれに対応してX個となる。
【0034】
図6は、価格予測部730によるX個の電力市場価格の予測値の一例を示すグラフである。図6において、横軸は電力売買取引日の0時から24時までの時間(時)を示し、縦軸は電力市場価格の予測値(円/kWh)を示す。X個の電力市場価格の予測値は、市場価格要因DB710及び気象予報DB720に記憶されたデータ群の値に応じた変化を示し、具体的には、電力売買取引日よりも数日前の過去の電力市場価格、連系線における空容量、停止中の大型発電機の容量、電力売買取引日の予測される風速、気温、気圧、降水量、日射量等に応じた変化を示す。図6の一例では、X個の電力市場価格の予測値は、日射量が観測される日中の時間帯では比較的安値となる変化を示し、一方、日射量が観測されない夜間の時間帯では比較的高値となる変化を示している。ここで、メンバー1~Xのそれぞれに対応する電力市場価格の予測値をシナリオ候補1~Xとする。
【0035】
発電予測部740は、気象予報DB720に記憶されたデータ群に基づいて、電力売買取引日における太陽光発電設備200の発電量を0時から24時まで1時間ごとに予測する。発電予測部740が電力売買取引日における太陽光発電設備200の発電量を予測する方法としては、例えばメンバー1~Xのそれぞれにおける風速、気温、気圧、降水量、日射量の少なくとも何れかをパラメーターとして太陽光発電設備200の発電量を予測する様々な方法を採用することができる。また、気象予報DB720には、メンバー1~Xに対応する合計X個の予測対象のデータが記憶されていることから、発電予測部740が予測する太陽光発電設備200の発電量の予測値は、メンバー1~Xのそれぞれに対応してX個となる。
【0036】
図7は、発電予測部740による太陽光発電設備200におけるX個の発電量の予測値の一例を示すグラフである。図7において、横軸は電力売買取引日の0時から24時までの時間(時)を示し、縦軸は太陽光発電設備200の発電量の予測値(kWh)を示す。太陽光発電設備200のX個の発電量の予測値は、気象予報DB720に記憶されたデータ群の値に応じた変化を示し、具体的には、電力売買取引日の予測される風速、気温、気圧、降水量、日射量に応じた変化を示す。図7の一例では、太陽光発電設備200のX個の発電量の予測値は、日射量が観測される日中の時間帯では日射量に応じた変化を示し、一方、日射量が観測されない夜間の時間帯ではゼロを示している。ここで、メンバー1~Xのそれぞれに対応する太陽光発電設備200の発電量の予測値をシナリオ候補1~Xとする。
【0037】
シナリオ候補作成部745は、価格予測部730及び発電予測部740の予測結果に基づいて、下記の図8及び図9に示すシナリオ候補1~Xを作成する。
図8は、シナリオ候補DB760に記憶されたデータ群の一例を示す図である。シナリオ候補DB760には、価格予測部730が予測したX個の電力市場価格と、発電予測部740が予測した太陽光発電設備200のX個の発電量の予測値と、の0時から24時までの予測値が、シナリオ候補1~Xごとに組み合わされて1時間ごとに区切って記憶されている。
【0038】
図9は、シナリオ候補DB760に記憶されるデータ群として、X個の電力市場価格の予測値と、太陽光発電設備200のX個の発電量の予測値とを、シナリオ候補1~Xごとに組み合わせてグラフ化した一例を示す図である。図9は、例えば、シナリオ候補1~Xのそれぞれについて、図6の中でシナリオ候補1~Xのそれぞれに対応する電力市場価格の予測値を示すグラフと、図7の中でシナリオ候補1~Xのそれぞれに対応する太陽光発電設備200の発電量の予測値を示すグラフと、を組み合わせたものである。シナリオ候補DB760には、図8に示すデータ群のほかに、図9に示すデータ群を記憶するようにしてもよい。
【0039】
選定数設定部780には、入力部790を通して、図8及び図9に示すシナリオ候補1~Xの中から最終的に選定したいシナリオの数が設定される。
【0040】
シナリオ選定部750は、選定数設定部780に選定したいシナリオの数が設定されると、後述する図10の処理手順に従って、シナリオ候補1~Xの中からシナリオを選定数分だけ選定する。ここで、シナリオ選定部750は、シナリオ候補1~Xの中からシナリオを選定数分だけ選定するにあたり、シナリオ候補1~Xを、電力市場価格の予測値が高い順又は低い順に並べ替えるか、或いは、太陽光発電設備200の発電量の予測値が大きい順又は小さい順に並べ替える。シナリオ候補1~Xのそれぞれにおいて、電力市場価格の予測値と太陽光発電設備200の発電量の予測値とは一対一に紐づけられているので、電力市場価格の予測値又は太陽光発電設備200の発電量の予測値の何れか一方について並べ替えを行えばよい。これにより、シナリオ候補1~Xが、電力市場価格の予測値又は太陽光発電設備200の発電量の予測値の何れかの大きさについて順番に並べ替えられると、シナリオ選定部750は、並べ替え後のシナリオ候補1~Xの順序を示すデータをメモリ751に記憶する。
【0041】
図10は、シナリオ選定部750による選定動作の一例を示すフローチャートである。ここで、シナリオ候補1~Xの総数をm、シナリオ候補1~Xの中からシナリオを選定する選定数をn、シナリオの選定数nのうち、何番目のシナリオの選定を行っているのかを示す数をiとする。また、ステップS130に示される式kiは、並べ替えられたシナリオ候補1~Xの中から、選定するシナリオの順番を求める式であり、式kiの計算結果が少数を含む場合は、少数を切り上げた計算結果を、選定するシナリオの順番と定める。
【0042】
先ず、シナリオ選定部750は、シナリオ候補DB760を参照してシナリオ候補1~Xの総数mを取得し、選定数設定部780を参照してシナリオ候補1~Xの中から選択するシナリオの選定数nを取得する(ステップS110)。
【0043】
次に、シナリオ選定部750は、シナリオ候補1~Xの中から順番が1番目となるシナリオを選定することから、i=1に設定する(S120)。
【0044】
次に、シナリオ選定部750は、式kiのm,n,iに該当する数字を当てはめて計算を行い、1番目に選定することとなるシナリオに該当するシナリオ候補1~X中の順番を求める(S130)。
【0045】
次に、シナリオ選定部750は、並べ替えられたシナリオ候補1~Xの中から1番目に選定するシナリオの順番を示すデータをメモリ751に記憶する(S140)。
【0046】
次に、シナリオ選定部750は、i=nになったかどうかを判定する(S150)。i=nではない場合(S150:NO)、シナリオ選定部750は、iに1を加算して(S160)、i=nになるまで上記のステップS130~S150を繰り返し実行する。
【0047】
そして、i=nになると(S150:YES)、一連の処理を終了する。
上記のステップS110~S160を実行することにより、シナリオ候補1~Xの中から、n個のシナリオを選定することができる。
【0048】
例えば、m=100、n=3の場合について説明する。尚、説明の便宜上、kiの計算結果が小数第3位を含む場合、小数第3位を四捨五入して小数第2位まで記載することとする。
【0049】
i=1のとき、k1=16.67
i=2のとき、k2=50
i=3のとき、k3=83.33
となる。つまり、並べ替えられた順番となっているシナリオ候補1~Xの中から、17番目、50番目、84番目の順に3つのシナリオが選定される。
【0050】
また、例えば、m=100、n=4の場合について説明する。
i=1のとき、k1=12.5
i=2のとき、k2=37.5
i=3のとき、k3=62.5
i=4のとき、k4=87.6
となる。つまり、並べ替えられた順番となっているシナリオ候補1~Xの中から、13番目、38番目、63番目、88番目の順に4つのシナリオが選定される。
【0051】
また、例えば、m=100、n=5の場合について説明する。
i=1のとき、k1=10
i=2のとき、k2=30
i=3のとき、k3=50
i=4のとき、k4=70
i=5のとき、k5=90
となる。つまり、並べ替えられた順番となっているシナリオ候補1~Xの中から、10番目、30番目、50番目、70番目、90番目の順に5つのシナリオが選定される。
【0052】
このように、並べ替えられたシナリオ候補1~Xから選定されるn個のシナリオは、電力市場価格の予測値が最安値又は最高値になるか、或いは、太陽光発電設備200の発電量の予測値が最大値又は最小値となる1番目及び100番目とその付近のシナリオ候補を含むことなく、それ以外のところで等間隔で離れたシナリオ候補を含むこととなる。
【0053】
図11は、シナリオDB770に記憶されるデータ群の一例を示す図である。シナリオDB770には、シナリオ選定部750によってシナリオ候補1~Xの中から選定されたn個のシナリオに含まれる電力市場価格と太陽光発電設備200の発電量との0時から24時までの予測値が1時間ごとに区切られて記憶されている。例えば、n=3の場合、並べ替えられたシナリオ候補1~Xの中から17番目、50番目、84番目のシナリオA,B,Cがシナリオ候補DB760から抽出されてシナリオDB770に記憶される。シナリオDB770に記憶されたデータ群は、出力部795を介して後段の取引計画作成装置800に提供される。
【0054】
<<取引計画作成装置800>>
図12は、取引計画作成装置800の機能を示すブロック図である。
取引計画作成装置800は、シナリオ作成装置700のシナリオ選定部750によってシナリオ候補1~Xの中から選定されたn個のシナリオを用いて、太陽光発電設備200を所有する発電事業者の収益が最大となるような買電及び売電のn個の取引計画を作成する装置である。以下の説明において、シナリオ選定部750によって選定されるシナリオの数nは例えば3個であることとする。また、説明の便宜上、電力市場価格の予測値が最安値となる時刻は、シナリオ選定部750が選定するシナリオA,C,Bの順に到来することとし、電力市場価格の予測値が最高値となる時刻は、シナリオC,B,Aの順に到来することとし、図6に示す一例とは異なるものとしている。また、シナリオA,B,Cは、それぞれ実線、破線、一点鎖線で示すこととする。
【0055】
取引計画作成装置800は、上記の機能を実現する手段として、入力部810、出力部820、取引計画作成部830を含んで構成される。
【0056】
図13は、シナリオ選定部750によって選定された3個のシナリオA,B,Cのそれぞれについて作成された取引計画A’,B’,C’の一例を示す図である。図13において、左側のグラフは、シナリオA,B,Cを示している。左側のグラフにおいて、横軸は電力売買取引日における0時から24時までの時間(時)を示し、縦軸は電力売買取引日における電力市場価格(円/kWh)を示している。また、図13において、右側上段のグラフは、シナリオAを用いて作成された最適とされる取引計画A’を示し、右側中段のグラフは、シナリオBを用いて作成された最適とされる取引計画B’を示し、右側下段のグラフは、シナリオCを用いて作成された最適とされる取引計画C’を示している。右側上中下段のそれぞれのグラフにおいて、横軸は電力売買取引日における0時から24時までの時間(時)を示し、右側の縦軸は電力売買取引日の電力市場価格の予測値(円/kWh)を示し、左側の縦軸は電力売買取引日における電力の売買取引量(kWh)の計画値を示している。
【0057】
取引計画作成部830は、入力部810を介して、シナリオA,B,Cを示すデータを取得する。また、取引計画作成部830は、入力部810を介して、蓄電池制御装置420から蓄電池400の充電可能な空容量を示すデータを取得する。そして、取引計画作成部830は、シナリオA,B,Cに含まれる電力売買取引日における電力市場価格の予測値及び太陽光発電設備200の発電量の予測値と、スポット入札を行う時点における蓄電池400の充電可能な空容量とに基づいて、シナリオA,B,Cのそれぞれについて買電及び売電を行うのに最適とされる時間帯を検出し、その時間帯に買電及び売電を行う取引計画A’,B’,C’を作成する。図13の一例では、説明の便宜上、取引計画A’ ,B’,C’において買電を行う時間帯は、電力市場価格の予測値が最安値となる時間を含む時間帯(例えば2時間)であることとし、一方、取引計画A’ ,B’,C’において売電を行う時間帯は、電力市場価格の予測値が最高値となる時間を含む時間帯(例えば2時間)であることとする。取引計画作成部830は、作成した取引計画A’ ,B’,C’を示すデータをメモリ831に記憶する。
【0058】
メモリ831に記憶されたデータ群は、出力部820を介して後段の取引計画評価装置900に提供される。
【0059】
<<取引計画評価装置900>>
図14は、取引計画評価装置900の機能を示すブロック図である。
取引計画評価装置900は、取引計画作成装置800で作成された取引計画A’ ,B’,C’のうちどの取引計画の収益が最も期待できるのかを評価する装置である。
【0060】
取引計画評価装置900は、上記の機能を実現するための手段として、入力部910、出力部920、取引計画評価部930を含んで構成される。
【0061】
図15は、取引計画A’ ,B’,C’の何れの収支が最大となるのかを評価する一例を示す図である。図15の上段は、取引計画A’をシナリオA,B,Cのそれぞれに対して実行した場合における収支の期待値EA1,EB1,EC1と、収支の期待値EA1,EB1,EC1の平均収支の期待値AV1とを説明する図である。図15の中段は、取引計画B’をシナリオA,B,Cのそれぞれに対して実行した場合における収支の期待値EA2,EB2,EC2と、収支の期待値EA2,EB2,EC2の平均収支の期待値AV2とを説明する図である。図15の下段は、取引計画C’をシナリオA,B,Cのそれぞれに対して実行した場合における収支の期待値EA3,EB3,EC3と、収支の期待値EA3,EB3,EC3の平均収支の期待値AV3とを説明する図である。
【0062】
取引計画評価装置900は、シナリオ作成装置700のシナリオDB770からシナリオA,B,Cを示すデータを取得する。具体的には、取引計画評価部930は、取引計画A’,B’,C’の評価を開始することを契機として、シナリオDB770から送信されてくるシナリオA,B,Cを示すデータを、入力部910を通して取得する。
【0063】
先ず、取引計画評価部930は、シナリオAが最適な計画であるかどうかを評価するために、収支の期待値EA1と、収支の期待値EB1と、収支の期待値EC1と、収支の期待値EA1,EB1,EC1の平均収支の期待値AV1とを求める。例えば、収支の期待値EA1は90(円)、収支の期待値EB1は0(円)、収支の期待値EC1は0(円)であり、平均収支の期待値AV1は30(円)と算出される。
【0064】
次に、取引計画評価部930は、シナリオBが最適な計画であるかどうかを評価するために、収支の期待値EA2と、収支の期待値EB2と、収支の期待値EC2と、収支の期待値EA2,EB2,EC2の平均収支の期待値AV2とを求める。例えば、収支の期待値EA2は0(円)、収支の期待値EB2は75(円)、収支の期待値EC2は-30(円)であり、平均収支の期待値AV2は15(円)と算出される。
【0065】
次に、取引計画評価部930は、シナリオCが最適な計画であるかどうかを評価するために、収支の期待値EA3と、収支の期待値EB3と、収支の期待値EC3と、収支の期待値EA3,EB3,EC3の平均収支の期待値AV3とを求める。例えば、収支の期待値EA3は-25(円)、収支の期待値EB3は-10(円)、収支の期待値EC3は20(円)であり、平均収支の期待値AV3は-5(円)と算出される。
【0066】
上記の算出結果は、メモリ931に記憶される。
このように、取引計画評価部930では、取引計画A’ ,B’,C’のうちどの取引計画の収益が最も期待できるのかを定量化することができる。この事例では、収支の期待値EA1が最大となり、平均収支の期待値AV1が最大となることから、シナリオAに対して取引計画A’を実行すれば、収益が最大となる可能性が高くなることが分かる。
【0067】
収支の期待値EA1,EB1,EC1,EA2,EB2,EC2,EA3,EB3,EC3と、平均収支の期待値AV1,AV2,AV3とは、太陽光発電設備200の所有者が取引計画A’ ,B’,C’の何れかを最適な取引計画として選択することを支援できるような形態(例えば図15に示す内容をディスプレイに表示する形態)で、出力部920から出力される。
【0068】
図16は、シナリオ作成装置700、取引計画作成装置800、取引計画評価装置900の機能を実現する情報処理装置1000のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【0069】
情報処理装置1000は、プロセッサ1010、主記憶装置1020、補助記憶装置1030、入力装置1040、出力装置1050、通信装置1060を備える。
【0070】
情報処理装置1000は、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等である。情報処理装置1000は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。シナリオ作成装置700、取引計画作成装置800、取引計画評価装置900は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現されるものであってもよい。
【0071】
プロセッサ1010は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成される。
【0072】
主記憶装置1020は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0073】
補助記憶装置1030は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカード、光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置1030には、記録媒体の読取装置や通信装置1060を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置1030に記憶されているプログラムやデータは主記憶装置1020に随時読み込まれる。
【0074】
入力装置1040は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0075】
出力装置1050は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置1050は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、情報処理装置1000は、通信装置1060を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0076】
入力装置1040及び出力装置1050は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0077】
通信装置1060は、通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0078】
尚、情報処理装置1000には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(Data Base Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0079】
シナリオ作成装置700、取引計画作成装置800、取引計画評価装置900が備える機能は、情報処理装置1000のプロセッサ1010が、主記憶装置1020に記憶されている制御プログラムを読み出して実行する。例えば、シナリオ作成装置700における価格予測部730、発電予測部740、シナリオ選定部750、選定数設定部780と、取引計画作成装置800における取引計画作成部830と、取引計画評価装置900における取引計画評価部930との機能は、プロセッサ1010によって実現される。また、シナリオ作成装置700における市場価格要因DB710、気象予報DB720、シナリオ候補DB760、シナリオDB770、メモリ751と、取引計画作成装置800におけるメモリ831と、取引計画評価装置900におけるメモリ931とは、主記憶装置1020及び補助記憶装置1030によって実現され、シナリオ作成装置700における入力部790と、取引計画作成装置800における入力部810と、取引計画評価装置900における入力部910とは、入力装置1040によって実現され、シナリオ作成装置700における出力部795と、取引計画作成装置800における出力部820と、取引計画評価装置900における出力部920とは、出力装置1050によって実現される。
【0080】
<<まとめ>>
以上説明したように、シナリオ作成装置700は、太陽光発電設備200と蓄電池400とを組み合わせた電気設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える二つの不確実項目のうち、一つ目の不確実項目である電力市場での電力売買取引日の電力市場価格の値を、市場価格要因DB710及び気象予報DB720に記憶されたデータ群を用いて予測する価格予測部730と、二つ目の不確実項目である太陽光発電設備200の発電量の値を、気象予報DB720に記憶されたデータ群を用いて予測する発電予測部740と、電力売買取引日における上記の不確実項目の予測値を含む複数のシナリオ候補1~Xを作成するシナリオ候補作成部745と、複数のシナリオ候補1~Xの中から、取引計画を作成するときに用いる、複数のシナリオ候補1~Xの数よりも少ない数(n個)のシナリオを選定するシナリオ選定部750と、を含む。
【0081】
シナリオ作成装置700では、上記の不確実項目を含む複数のシナリオ候補1~Xの中から、適切なシナリオを短時間で選定することができる。また、シナリオ作成装置700では、上記の不確実項目を含む複数のシナリオ候補1~Xの中から、予測値が互いに似かよることなくある程度ばらついている多様性の大きいシナリオを選定することができる。
【0082】
また、再生可能エネルギー利用型発電設備として、太陽光発電設備200の代わりに例えば風力発電設備を活用してもよいし、或いは、太陽光発電設備200と風力発電設備の双方を活用してもよい。風力発電設備の発電効率は30~40%と比較的高いことから、選定されたシナリオに基づいて発電事業者の収益を向上させることができる。
【0083】
また、気象予報DB720に記憶されたデータ群は、例えば、複数の数値予報の結果を統計的に処理したアンサンブル気象予報のデータ群であって、複数のメンバーの数に対応する数のシナリオ候補1~Xを作成することができ、シナリオ候補1~Xの中から選定するシナリオの選択肢を広げることができる。
【0084】
尚、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0085】
100 市場取引計画システム
200 太陽光発電設備
210,410 PCS
300 電力系統
400 蓄電池
500 通信ネットワーク
600 コンピュータ
700 シナリオ作成装置
710 市場価格要因DB
720 気象予報DB
730 価格予測部
740 発電予測部
745 シナリオ候補作成部
750 シナリオ選定部
751,831,931 メモリ
760 シナリオ候補DB
770 シナリオDB
780 選定数設定部
790,810,910 入力部
795,820,920 出力部
800 取引計画作成装置
830 取引計画作成部
900 取引計画評価装置
930 取引計画評価部
【要約】
【課題】電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える不確実項目を含む複数のシナリオ候補の中から、適切なシナリオ候補を短時間で選択する。
【解決手段】再生可能エネルギーを利用する発電設備と蓄電池とを組み合わせた電気設備における電力市場での電力売買取引日の取引計画に影響を与える不確実項目の値を、気象にかかる情報を用いて予測する予測部と、前記電力売買取引日における前記不確実項目の予測値を含む複数のシナリオ候補を作成するシナリオ候補作成部と、前記複数のシナリオ候補の中から、前記取引計画を作成するときに用いる、前記複数のシナリオ候補の数よりも少ない数のシナリオ候補を選定するシナリオ選定部と、を含むシナリオ作成装置。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16