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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241224BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20241224BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/04 Z
H01L25/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024550574
(86)(22)【出願日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2024015299
【審査請求日】2024-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 有矢
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】隈 高宏
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-179252(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198199(WO,A1)
【文献】特開2013-197176(JP,A)
【文献】特開2006-32470(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008424(WO,A1)
【文献】特開2017-55043(JP,A)
【文献】特開平9-293802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/04
H01L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のベース板と、
前記第1のベース板に導電性の接合材により接合され、前記第1のベース板よりも熱伝導率が低い第2のベース板と、
前記第1のベース板の上に設けられた半導体チップと、
前記第2のベース板の上に設けられた電子部品と、
前記第1のベース板及び前記第2のベース板の上に設けられ、前記半導体チップ及び前記電子部品を囲む外枠と、
前記外枠の上に接合され、前記半導体チップ及び前記電子部品を気密封止するキャップとを備え
前記第1のベース板と前記第2のベース板の接合面が傾斜していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記接合面は前記第1のベース板の底面に対して45度傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1のベース板と、
前記第1のベース板に導電性の接合材により接合され、前記第1のベース板よりも熱伝導率が低い第2のベース板と、
前記第1のベース板の上に設けられた半導体チップと、
前記第2のベース板の上に設けられた電子部品と、
前記第1のベース板及び前記第2のベース板の上に設けられ、前記半導体チップ及び前記電子部品を囲む外枠と、
前記外枠の上に接合され、前記半導体チップ及び前記電子部品を気密封止するキャップとを備え、
前記第1のベース板の接合面の下側領域と前記第2のベース板の接合面の下側領域が前記接合材により接合され、
前記第1のベース板又は前記第2のベース板の接合面の上側領域に前記接合材の濡れ広がりを防ぐ処理が施され、
前記第1のベース板の接合面の上側領域と前記第2のベース板の接合面の上側領域の間に空気層が存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
第1のベース板と、
前記第1のベース板に導電性の接合材により接合され、前記第1のベース板よりも熱伝導率が低い第2のベース板と、
前記第1のベース板の上に設けられた半導体チップと、
前記第2のベース板の上に設けられた電子部品と、
前記第1のベース板及び前記第2のベース板の上に設けられ、前記半導体チップ及び前記電子部品を囲む外枠と、
前記外枠の上に接合され、前記半導体チップ及び前記電子部品を気密封止するキャップとを備え、
前記第2のベース板は、前記第1のベース板の上に配置され、開口部を有し、
前記半導体チップは、前記開口部において前記第1のベース板の上に設けられ、
前記電子部品の下方において、前記第1のベース板の上面に前記接合材の濡れ広がりを防ぐ処理が施され、前記第1のベース板と前記第2のベース板の間に空気層が存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記空気層を囲む領域において前記第1のベース板と前記第2のベース板が前記接合材により接合されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のベース板と前記第2のベース板は前記接合材を介して電気的に接続され、
前記半導体チップの下面電極は前記第1のベース板に電気的に接続され、
前記電子部品の下面電極は前記第2のベース板に電気的に接続され、
前記半導体チップの上面電極と前記電子部品の上面電極はワイヤにより電気的に接続されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップは高周波増幅器であり、
前記電子部品はコンデンサであることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電子部品は高誘電率系のチタン酸バリウム系材料を使用したセラミックコンデンサであることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体チップはGaNデバイスであることを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベース板の上に半導体チップと電子部品が実装された半導体装置において、発熱源である半導体チップからベース板を介して電子部品に熱が伝わる。このため、発熱量の大きい半導体チップを用いた場合、定格温度の低い電子部品は使用できない。これに対して、チップと電子部品の間においてベース板を分離して伝熱を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2002/017400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップと電子部品をパッケージ内で気密封止する半導体装置においてベース板を分離すると気密性が損なわれてしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は半導体チップから電子部品への伝熱を抑制しつつ気密性を確保することができる半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、第1のベース板と、前記第1のベース板に導電性の接合材により接合され、前記第1のベース板よりも熱伝導率が低い第2のベース板と、前記第1のベース板の上に設けられた半導体チップと、前記第2のベース板の上に設けられた電子部品と、前記第1のベース板及び前記第2のベース板の上に設けられ、前記半導体チップ及び前記電子部品を囲む外枠と、前記外枠の上に接合され、前記半導体チップ及び前記電子部品を気密封止するキャップとを備え、前記第1のベース板と前記第2のベース板の接合面が傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、半導体チップが実装された第1のベース板よりも、電子部品が実装された第2のベース板の方が熱伝導率が低い。これにより、半導体チップから電子部品への伝熱を抑制することができる。また、第1のベース板と第2のベース板を接合材で接合しているため、パッケージ内を気密封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る半導体装置を示す断面図である。
図2】実施の形態1に係る第1及び第2のベース板の上面を示す図である。
図3】実施の形態2に係る半導体装置を示す断面図である。
図4】実施の形態3に係る半導体装置を示す断面図である。
図5】実施の形態3に係る第1及び第2のベース板の上面を示す図である。
図6図5のA-A´に沿った断面図である。
図7図5のB-B´に沿った断面図である。
図8】実施の形態4に係る半導体装置を示す断面図である。
図9】実施の形態4に係る第1及び第2のベース板の上面を示す図である。
図10】実施の形態5に係る半導体装置を示す断面図である。
図11】実施の形態5に係る第1のベース板の上面を示す図である。
図12】実施の形態6に係る半導体装置を示す断面図である。
図13】実施の形態6に係る第1のベース板の上面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係る半導体装置を示す断面図である。図2は、実施の形態1に係る第1及び第2のベース板の上面を示す図である。第1のベース板1と第2のベース板2が導電性の接合材3により接合されている。接合材3はAgろう材又はAuSnはんだ等である。第1のベース板1は例えばCu-Mo合金からなる。第2のベース板2はFe-Ni-Co合金からなる。第2のベース板2は第1のベース板1よりも熱伝導率が低い。低放熱性の第2のベース板2には高放熱性の第1のベース板1よりも安価な材料を選択できるため、コストを削減できる。
【0011】
半導体チップ4が第1のベース板1の上に設けられている。電子部品5が第2のベース板2の上に設けられている。半導体チップ4の下面電極4aは第1のベース板1に接合材6を介して電気的に接続されている。電子部品5の下面電極5aは第2のベース板2に接合材7を介して電気的に接続されている。第1のベース板1と第2のベース板2は接合材3を介して電気的に接続されているため、半導体チップ4の下面電極4a及び電子部品5の下面電極5aを共通の接地電位に接続することができる。
【0012】
半導体チップ4の上面電極4bと電子部品5の上面電極5bはワイヤ8により電気的に接続されている。半導体チップ4は例えばモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)の高周波増幅器である。電子部品5は、例えば、半導体チップ4の入力側にシャント接続されたコンデンサである。
【0013】
外枠9が、第1のベース板1及び第2のベース板2の上に設けられ、半導体チップ4及び電子部品5を囲んでいる。外枠9は、3層構造のセラミック9a~9cとシールリング9dを有する。上段のセラミック9cの上面がメタライズされ、シールリング9dの下面に接合材10で接合されている。中段のセラミック9bの下面がメタライズされ、第1のベース板1及び第2のベース板2の上面外周部に接合材11で接合されている。キャップ12がシールリング9dの上面に接合材13により接合され、パッケージ内の半導体チップ4及び電子部品5を気密封止する。なお、第1のベース板1と第2のベース板2の間は接合材3で完全に充填され、中段のセラミック9bと第1のベース板1及び第2のベース板2の間も接合材11で完全に充填され、それぞれ気密が取れている。
【0014】
接合材3,6,7,10,11,13として同じ材料を用いてもよい。ただし、ろう材は金属とセラミックの接合に使用できるが、はんだはそのままでは使用できない。従って、接合材10,11としてはんだを用いる場合は、上段のセラミック9cの上面及び中段のセラミック9bの下面をメタライズしておく必要がある。
【0015】
以上説明したように、本実施の形態では、半導体チップ4が実装された第1のベース板1よりも、電子部品5が実装された第2のベース板2の方が熱伝導率が低い。これにより、半導体チップ4の熱を放熱しつつ、半導体チップ4から電子部品5への伝熱を抑制することができる。この結果、発熱量の大きい半導体チップ4を用いた場合でも定格温度の低い電子部品5を使用することができる。また、第1のベース板1と第2のベース板2を接合材3で接合しているため、パッケージ内を気密封止することができる。これにより、パッケージ外部の水分又はガスによる半導体チップ4の劣化を防止することができる。
【0016】
高周波デバイスで使用するセラミックコンデンサは主に高誘電率系のチタン酸バリウム系材料を使用している。この材料は温度特性を持っており、高温域で静電容量変化が大きいため定格温度が低い。従って、電子部品5が高誘電率系のチタン酸バリウム系材料を使用したセラミックコンデンサである場合に本実施の形態は特に有効である。
【0017】
GaNのバンドギャップ3.4eVは、GaAsのバンドギャップ1.424eVよりも大きい。半導体材料のバンドギャップが高いと絶縁破壊電圧が高く、高電圧で動作可能である。GaNデバイスはGaAsデバイスよりも発熱量の大きいため、半導体チップ4がGaNデバイスの場合に本実施の形態は特に有効である。
【0018】
実施の形態2
図3は、実施の形態2に係る半導体装置を示す断面図である。第1のベース板1と第2のベース板2の接合面が傾斜している。このため、接合時に高温炉へ投入した際に第1のベース板1と第2のベース板2が摩擦により互いに接触した状態で保持される。従って、第1のベース板1と第2のベース板2を平坦な治具に載せればよく、両者を強制的に接触させる治具を用いる必要が無い。
【0019】
半導体チップ4から下方への熱の広がりは45則に従う。このため、第1のベース板1の接合面が第1のベース板1の底面に対して45度傾斜していることが望ましい。これにより、半導体チップ4からの放熱が阻害されない。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0020】
実施の形態3
図4は、実施の形態3に係る半導体装置を示す断面図である。図5は、実施の形態3に係る第1及び第2のベース板の上面を示す図である。図6図5のA-A´に沿った断面図である。図7図5のB-B´に沿った断面図である。第1のベース板1の接合面の下側領域と第2のベース板2の接合面の下側領域が接合材3により接合されている。第2のベース板2の接合面の上側領域にアルミナコート14が塗布されている。アルミナコート14は第2のベース板2の素材に比べて接合材3の濡れ性が悪い。なお、第1のベース板1の接合面の上側領域にアルミナコート14を塗布してもよい。即ち、第1のベース板1又は第2のベース板2の接合面の上側領域に接合材3の濡れ広がりを防ぐ処理が施されている。このため、第1のベース板1の接合面の上側領域と第2のベース板2の接合面の上側領域の間には、接合材3が濡れ広がらず、空気層15が存在する。この空気層15により、半導体チップ4から電子部品5への伝熱を更に抑制することができる。この結果、電子部品5の温度上昇を更に抑制することができる。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0021】
実施の形態4
図8は、実施の形態4に係る半導体装置を示す断面図である。図9は、実施の形態4に係る第1及び第2のベース板の上面を示す図である。第2のベース板2は、第1のベース板1の上に配置され、開口部2aを有する。半導体チップ4は、第2のベース板2の開口部2aにおいて、第2のベース板2を介することなく第1のベース板1の上に設けられている。このような構成でも半導体チップ4から電子部品への伝熱を抑制することができ、パッケージ内を気密封止することができる。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0022】
実施の形態5
図10は、実施の形態5に係る半導体装置を示す断面図である。図11は、実施の形態5に係る第1のベース板の上面を示す図である。電子部品5の下方において、第1のベース板1の上面にアルミナコート14が塗布されている。アルミナコート14は第1のベース板1の素材に比べて接合材3の濡れ性が悪い。即ち、電子部品5の下方において、第1のベース板1の上面に接合材3の濡れ広がりを防ぐ処理が施されている。このため、電子部品5の下方において、接合材3が濡れ広がらず、第1のベース板1と第2のベース板2の間に空気層15が存在する。この空気層15により、半導体チップ4から電子部品5への伝熱を更に抑制することができる。この結果、電子部品5の温度上昇を更に抑制することができる。その他の構成及び効果は実施の形態4と同様である。
【0023】
実施の形態6
図12は、実施の形態6に係る半導体装置を示す断面図である。図13は、実施の形態6に係る第1のベース板の上面を示す図である。実施の形態5では空気層15と半導体チップ4の間で第2のベース板2が第1のベース板1に接合されず浮いた片持ち梁の構造になっている。これに対して、本実施の形態では、空気層15の全周を囲む領域において第1のベース板1と第2のベース板2が接合材3により接合されている。空気層15の全周を支持することにより、実施の形態5の片持ち梁の構造に比べて第2のベース板2が壊れにくい。その他の構成及び効果は実施の形態5と同様である。
【符号の説明】
【0024】
1 第1のベース板、2 第2のベース板、2a 開口部、3 接合材、4 半導体チップ、4a,5a 下面電極、4b,5b 上面電極、5 電子部品、8 ワイヤ、9 外枠、12 キャップ、14 アルミナコート(接合材の濡れ広がりを防ぐ処理)、15 空気層
【要約】
第1のベース板(1)と第2のベース板(2)が導電性の接合材(3)により接合されている。第2のベース板(2)は第1のベース板(1)よりも熱伝導率が低い。半導体チップ(4)が第1のベース板(1)の上に設けられている。電子部品(5)が第2のベース板(2)の上に設けられている。外枠(9)が第1のベース板(1)及び第2のベース板(2)の上に設けられ、半導体チップ(4)及び電子部品(5)を囲む。キャップ(12)が外枠(9)の上に接合され、半導体チップ(4)及び電子部品(5)を気密封止する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13