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特許7609348光源パラメータ情報管理方法、光源パラメータ情報管理装置及びコンピュータ可読媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】光源パラメータ情報管理方法、光源パラメータ情報管理装置及びコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023508286
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012384
(87)【国際公開番号】W WO2022201394
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】峰岸 裕司
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-306813(JP,A)
【文献】特開平10-275951(JP,A)
【文献】特開2010-67794(JP,A)
【文献】特表2010-519782(JP,A)
【文献】国際公開第2020/161865(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/031301(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0001712(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01S 1/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置に用いられる光源のパラメータ情報を管理する光源パラメータ情報管理方法であって、
前記光源の運転で優先される優先目標パラメータである変数の項目と前記変数の目標値とを含む優先目標パラメータ情報を取得することと、
前記優先目標パラメータ情報に基づいて、前記光源における消耗品のメインテナンスまでの寿命を表す値を含むメインテナンス情報を推定することと、
前記メインテナンス情報を出力することと、
を含む光源パラメータ情報管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
外部装置から前記優先目標パラメータ情報の入力を受け付け、
前記メインテナンス情報を前記外部装置に出力する、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、さらに、
前記外部装置から前記光源の運転の許否を表すOK信号又はNOK信号を取得すること、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、さらに、
前記外部装置から前記光源の運転を許可する前記OK信号を得た場合に、前記優先目標パラメータ情報を前記光源に設定して、前記光源を制御すること、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、さらに、
前記光源の運転中のデータから、前記優先目標パラメータ情報を設定したときの前記光源の前記メインテナンス情報を推定すること、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、さらに、
前記運転中のデータから推定される前記メインテナンス情報を、前記外部装置に出力すること、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項7】
請求項3に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、さらに、
前記外部装置から前記光源の運転を不許可とするNOK信号を得た場合に、前記光源の運転を停止すること、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記優先目標パラメータ情報は、前記優先目標パラメータである第1変数の第1目標値と、前記第1変数の数値範囲を示す第2変数の第2目標値とを含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項9】
請求項1に記載のパラメータ情報管理方法であって、
前記優先目標パラメータ情報は、
目標スペクトル特性パラメータ情報と、目標出力特性パラメータ情報と、目標消費量情報と、のうち少なくとも1つを含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項10】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記メインテナンス情報は、前記消耗品の前記寿命を表す値として、前記消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数及び残り時間のうち少なくとも一方の値を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項11】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記メインテナンス情報の推定は、
前記優先目標パラメータ情報を前記光源に設定して前記光源を調整運転させることによって得られる運転データを、学習済みの機械学習モデルに入力し、前記機械学習モデルから前記消耗品の劣化度を出力させ、
前記劣化度を基に前記消耗品の寿命を表す値を求めること、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項12】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、さらに、
前記取得された前記優先目標パラメータ情報とは異なるパラメータ情報を含む推奨目標パラメータ情報を推定することと、
前記推奨目標パラメータ情報を出力することと、を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記推奨目標パラメータ情報は、目標スペクトル特性パラメータ情報と、目標出力特性パラメータ情報と、目標消費量パラメータ情報と、のうち少なくとも1つを含み、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項14】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記優先目標パラメータ情報は、前記光源の光性能を優先する光性能優先モードと、前記光源の前記消耗品の寿命の延長を優先する消耗品寿命延長モードと、前記光源の運転で消費される要素の消費量を低減する消費量低減モードと、のうち少なくとも1つのモードを指定するモード情報を含む、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記光性能優先モードは、スペクトル線幅パラメータ情報と、出力特性パラメータ情報とのいずれかを優先して前記光源を運転するモードである、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項16】
請求項14に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記消耗品寿命延長モードは、前記光源の消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数の延長を優先して前記光源を運転するモードである、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項17】
請求項14に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記消費量低減モードは、レーザガスの消費量の低減と、消費電力の低減とのいずれかを優先して前記光源を運転するモードである、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項18】
請求項1に記載の光源パラメータ情報管理方法であって、
前記優先目標パラメータは、ウエハ検査データと、前記露光装置から得られるデータと、前記光源から得られるデータと、追跡データと、に基づいて選定される、
光源パラメータ情報管理方法。
【請求項19】
露光装置に用いられる光源のパラメータ情報を管理する光源パラメータ情報管理装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサが実行するプログラムが記憶されるメモリと、を含み、
前記プロセッサが前記プログラムの命令を実行することにより、前記プロセッサが、
前記光源を運転する際に優先される優先目標パラメータである変数の項目と前記変数の目標値とを含む優先目標パラメータ情報を取得し、
前記優先目標パラメータ情報に基づいて、前記光源における消耗品のメインテナンスまでの寿命を表す値を含むメインテナンス情報を推定し、
前記メインテナンス情報を出力する、
光源パラメータ情報管理装置。
【請求項20】
露光装置に用いられる光源のパラメータ情報を管理する機能をコンピュータに実現させるプログラムが記録された非一過性のコンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータに、
前記光源を運転する際に優先される優先目標パラメータである変数の項目と前記変数の目標値とを含む優先目標パラメータ情報を取得する機能と、
前記優先目標パラメータ情報に基づいて、前記光源における消耗品のメインテナンスまでの寿命を表す値を含むメインテナンス情報を推定する機能と、
前記メインテナンス情報を出力する機能と、
を実現させる前記プログラムが記録されたコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光源パラメータ情報管理方法、光源パラメータ情報管理装置及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長約248nmのレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長約193nmのレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
KrFエキシマレーザ装置及びArFエキシマレーザ装置の自然発振光のスペクトル線幅は、350~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を含む狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が備えられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるガスレーザ装置を狭帯域化ガスレーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/161865号
【文献】国際公開第2020/031301号
【文献】国際公開第2019/043780号
【文献】特開2010-67794号公報
【文献】米国特許第5383217号
【文献】特開平11-121339号公報
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る光源パラメータ情報管理方法は、露光装置に用いられる光源のパラメータ情報を管理する光源パラメータ情報管理方法であって、光源の運転で優先される優先目標パラメータである変数の項目と変数の目標値とを含む優先目標パラメータ情報を取得することと、優先目標パラメータ情報に基づいて、光源における消耗品のメインテナンスまでの寿命を表す値を含むメインテナンス情報を推定することと、メインテナンス情報を出力することと、を含む。
【0006】
本開示の他の1つの観点に係る光源パラメータ情報管理装置は、プロセッサと、プロセッサが実行するプログラムが記憶されるメモリと、を含み、プロセッサがプログラムの命令を実行することにより、プロセッサが、光源の運転で優先される優先目標パラメータである変数の項目と変数の目標値とを含む優先目標パラメータ情報を取得し、優先目標パラメータ情報に基づいて、光源における消耗品のメインテナンスまでの寿命を表す値を含むメインテナンス情報を推定し、メインテナンス情報を出力する。
【0007】
本開示の他の1つの観点に係るコンピュータ可読媒体は、露光装置に用いられる光源のパラメータ情報を管理する機能をコンピュータに実現させるプログラムが記録された非一過性のコンピュータ可読媒体であって、コンピュータに、光源の運転で優先される優先目標パラメータである変数の項目と前記変数の目標値とを含む優先目標パラメータ情報を取得する機能と、優先目標パラメータ情報に基づいて、光源における消耗品のメインテナンスまでの寿命を表す値を含むメインテナンス情報を推定する機能と、メインテナンス情報を出力する機能と、実現させるプログラムが記録されたコンピュータ可読媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的な半導体工場内の半導体製造システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、リソグラフィーシステムの構成を概略的に示す。
図3図3は、露光制御部からレーザ制御部に出力される発光トリガ信号の出力パターンの例を示す。
図4図4は、ウエハ上でのステップアンドスキャン露光の露光パターンの例を示す。
図5図5は、ウエハ上の1つのスキャンフィールドとスタティック露光エリアとの関係を示す。
図6図6は、スタティック露光エリアの例を示す。
図7図7は、例示的な露光装置用の光源の構成を概略的に示す。
図8図8は、実施形態1に係る半導体製造システムの構成を示す。
図9図9は、実施形態1に係る半導体製造システムにおける全体的な処理の流れを示すブロック図である。
図10図10は、データ解析用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図11図11は、回帰曲線から光源パラメータの目標値とその範囲とを求める方法を示すグラフである。
図12図12は、光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図13図13は、光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図14図14は、図12のステップS22に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図15図15は、図13のステップS29及び図14のステップS44に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図16図16は、実施形態2に係る半導体製造システムにおける全体的な処理の流れを示すブロック図である。
図17図17は、実施形態2のデータ解析用サーバにおける推奨目標パラメータ情報の確認フローの例を示すフローチャートである。
図18図18は、推奨目標パラメータと露光性能のパラメータとの関係の解析例を示すグラフである。
図19図19は、実施形態2の光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図20図20は、実施形態2の光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図21図21は、図19のステップS72に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図22図22は、図20のステップS79及び図21のステップS94に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図23図23は、図22のステップS106に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態3の光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図25図25は、図24のステップS71に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図26図26は、優先目標パラメータと運転制御パラメータとの関係を示すグラフの例である。
図27図27は、実施形態4のデータ解析用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図28図28は、回帰曲線を用いて目標スペクトル線幅とその範囲とを求める方法の例を示すグラフである。
図29図29は、スペクトル線幅が優先目標パラメータである場合に、図24のステップS71に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図30図30は、スペクトル線幅と波面調節器のレンズ間隔との関係を示すグラフの例である。
図31図31は、優先目標パラメータ値を高パルスエネルギの値とし、推奨目標パラメータ値を広いスペクトル線幅の値とする場合の光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図32図32は、パルスエネルギと波面調節器のレンズ間隔との関係を示すグラフの例である。
図33図33は、パルスエネルギとスペクトル線幅との関係を示すグラフの例である。
図34図34は、優先目標パラメータ値を高パルスエネルギの値とし、パルスエネルギ安定性のパラメータの範囲が仕様緩和可能な場合の光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図35図35は、ハロゲンガス分圧とパルスエネルギの関係と、ハロゲンガス分圧とパルスエネルギ安定性の関係と、を示すグラフの例である。
図36図36は、光性能優先モードにおいてパルスエネルギの安定性を優先させる場合のハロゲンガス分圧の設定例を示すグラフである。
図37図37は、デューティ比とパルスエネルギとの関係を示すグラフの例である。
図38図38は、優先目標パラメータをデューティ比とし、パルスエネルギ安定性のパラメータの範囲が仕様緩和可能な場合の光源パラメータ管理用サーバにおける処理内容の例を示すフローチャートである。
図39図39は、消耗品寿命延長モード運転の場合に適用される処理内容の例を示すフローチャートである。
図40図40は、単位パルス当たりのガス消費量とパルスエネルギとの関係を示すグラフの例である。
図41図41は、ガス消費量低減モード運転の場合に適用される処理フローの例である。
図42図42は、省電力モード運転の場合に適用される処理フローの例である。
図43図43は、実施形態4の変形例を示すブロック図である。
図44図44は、光源に関するパラメータ情報の具体例を示す図表である。
図45図45は、優先目標パラメータ情報の具体例を示す図表である。
図46図46は、推奨目標パラメータ情報の具体例を示す図表である。
図47図47は、メインテナンス情報の具体例を示す図表である。
図48図48は、運転制御目標パラメータ情報の具体例を示す図表である。
【実施形態】
【0009】
-目次-
1.用語の説明
2.半導体製造システムの説明
2.1 構成
2.2 動作
3.リソグラフィーシステムの説明
3.1 構成
3.2 動作
4.ウエハ上への露光パターンの例
5.光源の例
5.1 構成
5.2 動作
5.3 その他
5.4 課題
6.実施形態1
6.1 構成
6.2 動作
6.2.1 データ解析用サーバの処理例
6.2.2 光源パラメータ管理用サーバの処理例
6.3 効果
6.4 その他
7.実施形態2
7.1 構成
7.2 動作
7.2.1 データ解析用サーバの処理例
7.2.2 光源パラメータ管理サーバの処理例
7.3 効果
7.4 その他
8.実施形態3
8.1 構成
8.2 動作
8.3 効果
9.実施形態4
9.1 構成
9.2 性能優先モード運転
9.2.1 スペクトル線幅Δλが優先目標パラメータの場合の例
9.2.1.1 動作
9.2.1.2 効果
9.2.1.3 その他
9.2.2 パルスエネルギが優先目標パラメータの場合
9.2.2.1 高パルスエネルギを得ることが優先され、スペクトル線幅Δλを広くして露光が可能な場合の例
9.2.2.1.1 動作
9.2.2.1.2 効果
9.2.2.1.3 その他
9.2.2.2 高パルスエネルギを得ることが優先され、パルスエネルギ安定性を仕様緩和して露光が可能な場合の例
9.2.2.2.1 動作
9.2.2.2.2 効果
9.2.2.2.3 その他
9.2.2.3 高デューティ比で運転することが優先され、パルスエネルギ安定性を仕様緩和して露光が可能な場合の例
9.2.2.3.1 動作
9.2.2.3.2 効果
9.2.2.3.3 その他
9.3 消耗品寿命延長モード運転
9.3.1 目標ハロゲンガス分圧を再設定する例
9.3.1.1 動作
9.3.1.2 効果
9.3.2 目標スペクトル線幅を再設定する例
9.3.3 ガス消費量を再設定する例
9.3.4 効果
9.3.5 その他
9.4 消費量低減モード運転
9.4.1 ガス消費量低減モード運転
9.4.1.1 目標ハロゲン分圧を再設定する例
9.4.1.2 目標スペクトル線幅を広げる例
9.4.1.3 メインテナンスまでの残りパルス数を減少させる例
9.4.1.4 効果
9.4.1.5 その他
9.4.2 省電力モード運転
9.4.2.1 充電電圧の目標値を再設定する例
9.4.2.2 ハロゲンガス分圧の目標値を再設定する例
9.4.2.3 目標スペクトル線幅を広げる例
9.4.3 効果
9.4.4 その他
9.5 変形例
10.パラメータ情報の具体例
11.プログラムを記録したコンピュータ可読媒体について
12.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.用語の説明
「消耗品」とは、露光装置に用いられる光源がパルス出力することによって、劣化して、交換する部品又はモジュールをいう。例えば、光源のチャンバ、狭帯域化モジュール(LNM)、出力結合ミラー(OC)、モニタモジュール等があり得る。「交換」の概念には、消耗品を新しいものに置き換えることの他、消耗品を洗浄するなどして部品の機能の維持及び/又は回復を図り、同じ消耗品を再配置することも含まれる。
【0011】
「クリティカルディメンジョン(Critical Dimension:CD)」とは、半導体等のウエハ上に形成された微細パターンの寸法をいう。
【0012】
「オーバーレイ(重ね合わせ)」とは、半導体等のウエハ上に形成された微細パターンの重ね合わせをいう。
【0013】
「露光条件」とは、半導体等のウエハのレジストに露光した条件をいう。具体例としては、照明条件、投影条件、露光量、光源のスペクトル特性、光源の出力特性等があり得る。
【0014】
本明細書において、「パラメータ」と、「パラメータ値」と、「パラメータ情報」とはそれぞれ以下のような意味で用いる。
【0015】
「パラメータ」とは、変数を表す項目である。
【0016】
「パラメータ値」とは、上記変数の値である。つまり、上記パラメータの具体的な数値である。
【0017】
「パラメータ情報」とは、複数の変数とその複数の変数の値とを含むデータの集合体である。
【0018】
パラメータ情報の具体例については後述する(図44)。例えば、スペクトル線幅のパラメータ情報は、スペクトル線幅という変数(項目)及びその値と、スペクトル線幅の安定性(動作範囲)という変数及びその値と、を含むデータの集合体である。スペクトル線幅の安定性を示す値には、例えば、動作範囲の下限値と上限値とが含まれる。また、スペクトル線幅のパラメータ情報には、そのスペクトル線幅の値と安定性とを満たして動作させる期間という変数及びその値のデータが含まれてもよい。
【0019】
「目標パラメータ」や「目標パラメータ情報」など「目標」を付けた表記は、制御目標にするパラメータやパラメータ情報であることを意味する。目標パラメータ情報には、パラメータの制御目標である目標値と、その許容範囲を示す情報とが含まれてよい。ここでいう許容範囲は、パラメータの動作範囲、動作仕様、変動幅、あるいは安定性の範囲などに読み替えてもよい。
【0020】
「優先目標パラメータ情報」とは、光源の運転で優先される目標パラメータである変数の項目と、その変数の目標値とのデータの集合体である。優先目標パラメータ情報の具体例は後述する(図45)。
【0021】
さらに、優先目標パラメータ情報は、以下の2つの場合も含む。
【0022】
a)光源の光性能優先モード運転と、消耗品の寿命延長モード運転と、消費量低減モード運転と、のうちいずれかの優先モードをユーザが選択する場合も含む。
【0023】
b)優先目標パラメータの変数の項目と、その変数の目標値と、を含むデータの集合体を、光源が運転可能な案として提示し、ユーザが光源の優先目標パラメータの変数の項目を選定する場合も含む。
【0024】
ここで、各優先モード運転の定義を以下に示す。
【0025】
光源の光性能優先モード運転とは、光源の光性能を優先するように光源を運転させることをいう。
【0026】
消耗品寿命延長モード運転とは、光源の消耗品の寿命を延長するように光源を運転させることをいう。
【0027】
消費量低減モード運転とは、光源の消費電力やガス消費量を低減するように光源を運転させることをいう。電力及びレーザガスのそれぞれは、光源の運転によって消費される要素である。
【0028】
「推奨目標パラメータ情報」とは、光源の運転で優先される目標パラメータ情報で光源を運転した場合に推定される優先目標パラメータと異なるパラメータであって、仕様緩和が必要なパラメータの変数の項目と目標値のデータの集合体である。推奨目標パラメータ情報の具体例は後述する(図46)。
【0029】
「メインテナンス情報」とは、光源の運転を停止して、光源の定期的に部品交換が必要なそれぞれの消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数又は残り時間のデータの集合体である。メインテナンス情報の具体例は後述する(図47)。
【0030】
消耗品ごとのメインテナンスまでの残りパルス数又は残り時間は、それぞれの消耗品の寿命(メインテナンスまでの残存寿命)を示す値である。なお、一日当たりの平均パルス数など、単位時間当たりのパルス数が把握されている場合、消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数は、残り時間に換算することができる。消耗品の寿命を示すパラメータとしてメインテナンスまでの残りパルス数を用いてもよいし、残り時間を用いてもよく、これらの両方を用いてもよい。また、メインテナンス情報は、消耗品の交換時期を示す日時の情報を含んでもよい。
【0031】
「運転制御目標パラメータ」とは、光源が優先目標パラメータ情報を実現するために必要な光源の制御目標パラメータである。「運転制御目標パラメータ情報」とは、運転制御目標パラメータと目標値との集合体であって、複数の要求の仕様を満たすために、複数の運転制御目標パラメータを設定することがある。運転制御目標パラメータ情報の具体例は後述する(図48)。
【0032】
「外部装置」とは、優先目標パラメータ情報、推奨目標パラメータ情報及びメインテナンス情報の少なくとも1つを受信する装置である。具体的には、例えば、半導体工場管理システム、表示装置(優先制御パラメータ情報、推奨目標パラメータ情報、メインテナンス情報などをオペレータに知らせるための表示装置)、露光装置、露光装置用管理システム等が外部装置となり得る。
【0033】
2.半導体製造システムの説明
2.1 構成
図1に、例示的な半導体工場内の半導体製造システム200の構成を概略的に示す。半導体製造システム200は、複数のリソグラフィーシステム10と、ウエハ検査装置用管理システム202と、露光装置用管理システム204と、光源用管理システム206と、半導体工場管理システム208と、を含む。
【0034】
半導体工場管理システム208は、ネットワーク210を介して、ウエハ検査装置用管理システム202、露光装置用管理システム204及び光源用管理システム206に接続される。
【0035】
ネットワーク210は、有線もしくは無線又はこれらの組み合わせによる情報伝達が可能な通信回線である。ネットワーク210は、ワイドエリアネットワークであってもよいし、ローカルエリアネットワークであってもよい。
【0036】
半導体製造システム200に含まれる複数のリソグラフィーシステム10のそれぞれを識別するために、ここではリソグラフィーシステム識別符号#1,#2,…#k,…#wを用いる。wは半導体製造システム200に含まれるリソグラフィーシステムの数である。wは1以上の整数である。kは1以上w以下の範囲の整数である。
【0037】
それぞれのリソグラフィーシステム#kは、ウエハ検査装置12と、露光装置14と、光源16と、を含む。以下、説明の便宜上、リソグラフィーシステム#kに含まれるウエハ検査装置12、露光装置14、及び光源16のそれぞれを、ウエハ検査装置#k、露光装置#k、及び光源#kと表記する。ここでは簡単のために、それぞれのリソグラフィーシステム#kは、ウエハ検査装置#kと、露光装置#kと、光源#kと、をそれぞれ1台ずつ含む形態を示す。
【0038】
複数のリソグラフィーシステム#1~#wの一部又は全部は、互いに異なる形態であってもよい。リソグラフィーシステム#kに含まれるウエハ検査装置#k、露光装置#k、光源#kの各々の台数や配置形態などは適宜設計し得る。それぞれのリソグラフィーシステム#kは、1つ以上のウエハ検査装置#kと、1つ以上の露光装置#kと、1つ以上の光源#kと、を含んで構成される。
【0039】
ウエハ検査装置用管理システム202は、第1ローカルエリアネットワーク211を介して、それぞれのウエハ検査装置#1~#wに接続される。露光装置用管理システム204は、第2ローカルエリアネットワーク212を介して、それぞれの露光装置#1~#wに接続される。光源用管理システム206は、第3ローカルエリアネットワーク213を介して、それぞれの光源#1~#wに接続される。
【0040】
図1において、第1ローカルエリアネットワーク211を「LAN1」、第2ローカルエリアネットワーク212を「LAN2」、第3ローカルエリアネットワーク213を「LAN3」とそれぞれ表示した。
【0041】
2.2 動作
ウエハ検査装置#1~#wは、ウエハ毎に、それぞれのレジストパターンが形成されたウエハの表面の物理的な特性値を計測する。「物理的な特性値」は、例えばCD値、オーバーレイ、倍率値、及び表面の高さなどである。ウエハ検査装置用管理システム202は、ウエハ検査装置#1~#wからウエハ毎に計測された物理的な物性値を取得し、それぞれのリソグラフィーシステム#kのそれぞれのウエハ毎に、計測された物理的な特性値のデータをそれぞれ保存する。さらに、ウエハ検査装置用管理システム202は、それぞれのウエハのスキャンフィールド毎に、物理的な特性値のデータを整理して保存する。そして、ウエハ検査装置用管理システム202は、必要に応じて半導体工場管理システム208と図示しないデータ解析用サーバとなどに、これらの計測データの一部又は全部を出力する。
【0042】
露光装置用管理システム204は、露光装置#1~#wからウエハ毎及びスキャンフィールド毎に、露光された条件と計測値とを含むデータを取得する。「露光された条件」は、例えば、投影条件や照明条件などである。「計測値」は、例えば、露光量やフォーカス位置などである。露光装置用管理システム204は、リソグラフィーシステム#k毎と、ウエハ毎と、スキャンフィールド毎とに、露光された条件と、計測値とのデータをそれぞれ保存する。露光装置用管理システム204は、必要に応じて半導体工場管理システム208とデータ解析用サーバとなどに、これらの計測データの一部又は全部を出力する。
【0043】
光源用管理システム206は、光源#1~#wからそれぞれの運転データを取得し、リソグラフィーシステム#k毎に、光源#kの運転データを保存する。運転データとは、例えば、スペクトル特性値のデータと、パルスエネルギ特性値のデータと、レーザ光の出力特性値のデータと、などが含まれる。スペクトル特性値とは、例えば、波長及びスペクトル線幅などである。レーザ光の出力特性値とは、例えば、パルスエネルギ値、パルスエネルギのばらつきを示すσ(標準偏差値)、ドーズ安定性、単位時間当たりのパルス数及びデューティ比などである。運転データは、光源#kの運転中にセンサ等を用いて計測される計測データを含む。
【0044】
また、光源用管理システム206は、リソグラフィーシステム毎と、ウエハ毎と、スキャンフィールド毎と、に、これらデータを整理して保存し、必要に応じて半導体工場管理システム208とデータ解析用サーバとなどに、これらの計測データの一部又は全部を出力する。
【0045】
半導体工場管理システム208は、半導体工場全体を管理する。半導体工場管理システム208は、例えば、ウエハ検査装置用管理システム202と、露光装置用管理システム204と、光源用管理システム206と、のそれぞれが取得した情報を受信する。
【0046】
3.リソグラフィーシステムの説明
3.1 構成
図2に、リソグラフィーシステム#kの構成例を概略的に示す。リソグラフィーシステム#kは、ウエハ検査装置12と、露光装置14と、光源16と、を含む。
【0047】
ウエハ検査装置12は、ウエハ上にレーザ光を照射してその反射光又は回折光を測定することによって、以下の計測が可能となる。すなわち、ウエハ検査装置12は、CDと、ウエハの高さと、オーバーレイと、を含む計測が可能である。また、ウエハ検査装置12は、高分解能スキャン電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)であってもよい。ウエハ検査装置12は、ウエハ検査制御部220と、ウエハホルダ225と、ウエハステージ226と、を含む。
【0048】
露光装置14は、露光制御部50と、ビームデリバリユニット(BDU)15と、高反射ミラー51と、照明光学系66と、レチクル74及びレチクルステージ76と、投影光学系78と、ウエハホルダ80及びウエハステージ81と、フォーカスセンサ84と、を含む。露光装置#kは、ウエハホルダ80に保持されたウエハWF上での露光量を計測するための図示しない露光量センサを含む。
【0049】
照明光学系66は、入射したレーザビームを矩形状の略均一な光強度分布のスタティック露光エリアSEA(図5参照)に整形するよう構成される。照明光学系66はレチクル74への照明条件が変更可能なように、図示しない照明パターンを生成できる構成となっている。照明パターンは、例えば、偏光照明と、輪帯照明と、ダイポール照明と、などであってよい。
【0050】
投影光学系78は、レチクルパターンをウエハWF上に結像させるように配置され、投影光学系78の結像条件が調整できるように、例えば、図示しない絞りが配置され、開口数(Numerical Aperture:NA)を調整できる構成を含む。
【0051】
フォーカスセンサ84は、ウエハWF表面と投影光学系78との間の距離が計測可能なように配置される。
【0052】
光源16は、例えば、波長及びスペクトル線幅可変の狭帯域発振可能なエキシマレーザ装置であって、レーザ制御部90と、図1に示されていないモニタモジュールと、チャンバと、狭帯域化モジュールと、出力結合ミラーと、その他の装置と、を含む。エキシマレーザ装置の詳細な構成例については図5で後述する。
【0053】
本開示において、露光制御部50及びレーザ制御部90などの各制御部として機能する制御装置は、1台又は複数台のコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現することが可能である。ソフトウェアはプログラムと同義である。プログラマブルコントローラはコンピュータの概念に含まれる。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含んで構成される。プログラマブルコントローラはコンピュータの概念に含まれる。また、制御装置の処理機能の一部又は全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)に代表される集積回路を用いて実現してもよい。
【0054】
また、複数の制御装置の機能を1台の制御装置で実現することも可能である。さらに本開示において、制御装置は、ローカルエリアネットワークやインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムユニットは、ローカル及びリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。
【0055】
3.2 動作
露光制御部50は、各種目標パラメータ値を光源16に出力する。露光制御部50から光源16に提供される目標パラメータ値は、目標波長λtと、目標スペクトル線幅Δλtと、目標パルスエネルギEtと、その他目標パラメータ値と、を含む。
【0056】
レーザ制御部90は、光源16の出力波長とスペクトル線幅とが目標波長λtと目標スペクトル線幅Δλtとになるように、レーザ共振器の後述する狭帯域モジュールの選択波長と、波長帯域幅と、を制御する。そして、レーザ制御部90は、発光トリガ信号Trと同期してパルスレーザ光を出力させ、後述するモニタモジュールによって計測されたデータを露光制御部50及び光源用管理システム206に出力する。モニタモジュールによって計測されるデータは、波長λと、スペクトル線幅Δλと、パルスエネルギEと、等を含む。
【0057】
露光制御部50は、レジストがコートされたウエハWFを後述するステップアンドスキャンの方式で、発光トリガ信号Trを出力しながらレチクルステージ76及びウエハステージ81を制御し、レチクル74の像をウエハWF上のレジストにスキャン露光する。そして、露光制御部50は、露光条件のデータを露光装置用管理システム204に出力する。露光条件のデータは、例えば、照明光学系66の条件(照明パターン)と、ドーズ(露光量)と、フォーカス(投影光学系78とウエハ表面との距離)と、投影光学系78の条件(例えば、NA)と、を含む。
【0058】
ウエハ検査装置12は、上記露光した後のウエハWFを、図示しない現像装置で現像後、レジストパターンが形成されたウエハDWの物理的な特性値(例えば、CD値と、オーバーレイと、倍率と、表面の高さと、等を含む)を計測する。そして、ウエハ検査制御部220は、これらの計測データをウエハ検査装置用管理システム202に出力する。
【0059】
4.ウエハ上への露光パターンの例
図3に、露光制御部50からレーザ制御部90に出力される発光トリガ信号Trの出力パターンの例を示す。この例では、ウエハWF毎に、調整露光の後、実露光パターンに入る。光源16は、ステップアンドスキャン露光におけるステップ期間中は、発振休止し、スキャン期間中は、発光トリガ信号Trの間隔に応じてパルスレーザ光を出力する。このようなレーザ発振のパターンをバースト運転パターンという。
【0060】
図4に、ウエハWF上でのステップアンドスキャン露光の露光パターンの例を示す。図4のウエハWF内に示す多数の矩形領域のそれぞれはスキャンフィールドSFである。スキャンフィールドSFは、1回のスキャン露光の露光領域であり、スキャン領域とも呼ばれる。ウエハ露光は、図4に示すように、ウエハWFを複数の所定サイズの露光領域(スキャンフィールドSF)に分割して、ウエハ露光の開始(Wafer START)と終了(Wafer END)との間の期間に、各露光領域をスキャン露光することにより行われる。
【0061】
すなわち、ウエハ露光では、ウエハWFの第1の所定の露光領域を1回目のスキャン露光(Scan#1)で露光し、次いで、第2の所定の露光領域を2回目のスキャン露光(Scan#2)で露光するというステップを繰り返す。1回のスキャン露光中は、複数のパルスレーザ光が連続的にレーザ装置から出力され得る。このスキャン露光を順次繰り返し、1枚目のウエハWFの全露光領域をスキャン露光し終えたら、再度、調整露光を行った後、2枚目のウエハWFのウエハ露光が行われる。
【0062】
図4に示す破線矢印の順番で、Wafer START→Scan#1→Scan#2→・・・・・・・→Scan#126→Wafer ENDまでステップアンドスキャン露光される。ウエハWFはレジストが塗布された半導体基板(感光基板)の一例である。
【0063】
図5に、ウエハWF上の1つのスキャンフィールドSFとスタティック露光エリアSEAとの関係を示す。スタティック露光エリアSEAは、長方形の光強度分布が略均一なレーザビームがレチクル74上に照射され、短軸方向(Y軸方向)に、レチクル74とウエハWFとが投影光学系78の縮小倍率に応じてY軸方向に互いに異なる向きで移動しなら露光することによって、レチクルパターンが、ウエハWF上のスキャンフィールドSFに露光される。
【0064】
この例では、スキャン露光時に、ウエハステージ81はY軸の負の方向に、スキャン方向は、Y軸の正の方向に移動した場合の例を示している。ただし、ウエハステージ81はY軸の正の方向に、スキャン方向は、負の方向に移動する場合を組み合わせることによって、次のステップの移動時間を短縮してもよい。
【0065】
ここで、スキャン露光しながらレジストに照射されるパルスレーザ光のパルス数NsをNスリットという。図6に示すように、一括露光可能なスタティック露光エリアSEAの短軸方向の長さをBy、長軸方向の長さをBxとすると、Nスリットは次式で表される。
【0066】
Ns=f・Vw/By
式中のVwはウエハWFのスキャン速度であり、fは光源の繰り返し周波数である。
【0067】
5.光源の例
5.1 構成
図7に、例示的な光源16の構成を概略的に示す。光源16は、例えば、KrFエキシマレーザ装置であって、チャンバ100と、狭帯域化モジュール(LNM)102と、インバータ104と、出力結合ミラー(OC)106と、波面調節器107と、モニタモジュール108と、充電器110と、パルスパワーモジュール(PPM)112と、ガス供給装置114と、ガス排気装置116と、出射口シャッタ118と、を含む。
【0068】
チャンバ100は、第1ウインドウ121と、第2ウインドウ122と、クロスフローファン(CFF)123と、CFF123を回転させるモータ124と、1対の電極125,126と、電気絶縁物127と、圧力センサ128と、図示しない熱交換器と、を含む。
【0069】
インバータ104は、モータ124の電源供給装置である。インバータ104は、モータ124に供給する電力の周波数を特定する指令信号をレーザ制御部90から受信する。インバータ104の周波数を制御することによってCFF123の回転数を制御可能な構成となっている。
【0070】
PPM112は、チャンバ100の電気絶縁物127中のフィードスルーを介して電極125と接続される。PPM112は、半導体スイッチ129と、いずれも図示しない、充電コンデンサと、パルストランスと、パルス圧縮回路と、を含む。
【0071】
LNM102は、第1プリズム131及び第2プリズム132を用いたビームエキスパンダと、回転ステージ134と、グレーティング136と、を含む。第1プリズム131及び第2プリズム132は、チャンバ100の第2ウインドウ122から出射された光のビームをY軸方向に拡大し、グレーティング136に入射するように配置される。
【0072】
ここで、グレーティング136はレーザ光の入射角と回折角とが一致するようにリトロー配置される。第2プリズム132は、回転ステージ134が回転したときに、レーザ光のグレーティング136への入射角と回折角とが変化するように回転ステージ134上に配置される。
【0073】
OC106は部分反射ミラーであって、LMN102と共に光共振器を構成するように配置される。チャンバ100は、この光共振器の光路上に配置される。
【0074】
波面調節器107は、OC106とチャンバ100との間に配置される。波面調節器107は、シリンドリカル状の凹レンズ171と、シリンドリカル状の凸レンズ172と、リニアステージ174と、を含む。凹レンズ171と凸レンズ172との距離をリニアステージ174で変化させることによって、Z軸から見た波面の曲率半径を変更可能な構成となっている。
【0075】
モニタモジュール108は、第1ビームスプリッタ141及び第2ビームスプリッタ142と、パルスエネルギ検出器144と、スペクトル検出器146と、を含む。第1ビームスプリッタ141は、OC106から出力されたレーザ光の光路上に配置され、レーザ光の一部が反射されて第2ビームスプリッタ142に入射するように配置される。
【0076】
パルスエネルギ検出器144は、第2ビームスプリッタ142を透過したレーザ光が入射するように配置される。パルスエネルギ検出器144は、例えば、紫外線の光強度を計測するフォトダイオードであってもよい。第2ビームスプリッタ142は、レーザ光の一部が反射されてスペクトル検出器146に入射するように配置される。
【0077】
スペクトル検出器146は、例えば、エタロンと、イメージセンサと、を含むエタロン分光器であってよい。モニタエタロン分光器は、エタロンによって生成した干渉縞をイメージセンサで計測可能な構成である。そして、この生成した干渉縞に基づいて、出力されるパルスレーザ光の中心波長とスペクトル線幅とが計測される。
【0078】
ガス供給装置114は、KrFエキシマレーザ装置の場合は、不活性なレーザガスの供給源である不活性ガス供給源152と、ハロゲンを含むレーザガスの供給源であるハロゲンガス供給源154と、のそれぞれと配管を介して接続される。不活性なレーザガスとは、KrガスとNeガスの混合ガスである。ハロゲンを含むレーザガスとは、FガスとKrガスとNeガスの混合ガスである。ガス供給装置114は、チャンバ100と配管を介して接続される。
【0079】
ガス供給装置114は、不活性なレーザガス又はハロゲンを含むレーザガスをそれぞれチャンバ100に所定量供給するための、図示しない自動バルブ及びマスフローコントローラをそれぞれ含む。
【0080】
ガス排気装置116は、配管を介してチャンバ100と接続される。ガス排気装置116は、ハロゲンを除去する図示しないハロゲンフィルタ及び排気ポンプを含み、ハロゲンを除去したレーザガスが外部に排気されるように構成される。
【0081】
出射口シャッタ118は、光源16から外部に出力されるレーザ光の光路上に配置され、外部へのレーザ光の出力と遮光とが可能な構成となっている。
【0082】
出射口シャッタ118を介して光源16から出力されたレーザ光が露光装置14に入射するように光源16が配置される。
【0083】
5.2 動作
光源16の動作について説明する。レーザ制御部90は、チャンバ100内に存在するガスを、ガス排気装置116を介して排気した後、ガス供給装置114を介してKr及びNeの混合ガスと、FとKrとNeとの混合ガスと、を所望のガス組成及び全ガス圧となるようにチャンバ100内に充填する。
【0084】
レーザ制御部90は、インバータ104を介して、所定の回転数でモータ124を回転させてCFF123を回転させる。その結果、電極125,126間にレーザガスが流れる。
【0085】
レーザ制御部90は、露光装置14の露光制御部50から目標パルスエネルギEtを受信し、パルスエネルギがEtとなるように充電電圧Vのデータを充電器110に出力する。
【0086】
充電器110は、PPM112の充電コンデンサが充電電圧Vとなるように充電する。露光装置14から発光トリガ信号Tr1が出力されると、発光トリガ信号Tr1に同期してレーザ制御部90からトリガ信号Tr2がPPM112の半導体スイッチ129に入力される。この半導体スイッチ129が動作するとPPM112の磁気圧縮回路によって電流パルスが圧縮され、充電電圧Vに応じて高電圧が電極125,126間に印加される。その結果、電極125,126間で放電が発生し、放電空間においてレーザガスが励起される。
【0087】
放電空間の励起されたレーザガスが基底状態となるときに、紫外光であるエキシマ光が発生する。このエキシマ光はOC106とLMN102との間を往復して増幅されることによって、レーザ発振する。その結果、OC106から狭帯域化されたパルスレーザ光が出力される。
【0088】
OC104から出力されたパルスレーザ光はモニタモジュール108に入射する。モニタモジュール108では第1ビームスプリッタ141によってレーザ光の一部がサンプルされ、第2ビームスプリッタ142に入射する。第2ビームスプリッタ142は入射したレーザ光の一部を透過してパルスエネルギ検出器144に入射し、他の一部を反射してスペクトル検出器146に入射させる。
【0089】
光源16から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギEがパルスエネルギ検出器144によって計測され、計測されたパルスエネルギEのデータがパルスエネルギ検出器144からレーザ制御部90に出力される。
【0090】
また、スペクトル検出器146によって中心波長λとスペクトル線幅Δλとが計測され、計測された中心波長λとスペクトル線幅Δλとのデータがスペクトル検出器146からレーザ制御部90に出力される。
【0091】
レーザ制御部90は、露光装置14から目標パルスエネルギEtと目標波長λtと目標スペクトル線幅Δλtとを受信する。レーザ制御部90は、パルスエネルギ検出器144によって計測されたパルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとを基に、パルスエネルギの制御を行う。パルスエネルギの制御は、パルスエネルギ検出器144によって計測されたパルスエネルギEと目標パルスエネルギとの差ΔE=E-Etが0に近づくように充電電圧Vを制御することを含む。
【0092】
レーザ制御部90は、スペクトル検出器146によって計測された中心波長λと目標波長λtとを基に、波長の制御とスペクトル線幅の制御とを行う。波長の制御は、スペクトル検出器146によって計測された中心波長λと目標波長λtとの差δλ=λ-λtが0に近づくように回転ステージ134の回転角を制御することを含む。
【0093】
スペクトル線幅の制御は、スペクトル検出器146によって計測されたスペクトル線幅Δλと目標スペクトル線幅Δλtとの差ΔΔλ=Δλ-Δλtが0に近づくように波面調節器107のリニアステージ174を制御することを含む。
【0094】
以上のようにレーザ制御部90は、露光装置14から目標パルスエネルギEtと目標波長λtと目標スペクトル線幅Δλtとを受信して、発光トリガ信号Tr1が入力される毎に、発光トリガ信号Tr1に同期して光源16からパルスレーザ光を出力させる。
【0095】
エキシマレーザ装置は放電を繰り返すと、電極125,126が消耗し、レーザガス中のハロゲンガスが消費されると共に、不純物ガスが生成される。チャンバ100内のハロゲンガス分圧の低下や不純物ガスの増加は、パルスレーザ光のパルスエネルギの低下やパルスエネルギの安定性に悪影響を及ぼす。レーザ制御部90は、これらの悪影響を抑制するために、以下のガス制御([1]~[4])を実行する。
【0096】
[1]ハロゲン注入制御
ハロゲン注入制御とは、レーザ発振中に、チャンバ100内で主に放電によって消費された分のハロゲンガスを、チャンバ100内のハロゲンガスよりも高い濃度にハロゲンガスを含むガスを注入することによって、ハロゲンガスを補充するガス制御である。この制御では、レーザ制御部90は、チャンバ100内での目標ハロゲン分圧Hgctとなるように制御する。ここで、目標ハロゲン分圧Hgctは、光源16の運転制御目標パラメータの1つである。
【0097】
[2]部分ガス交換制御
部分ガス交換制御とは、レーザ発振中に、チャンバ100内の不純物ガスの濃度の増加を抑制するように、チャンバ100内のレーザガスの一部を新しいレーザガスに交換するガス制御である。
【0098】
[3]ガス圧制御
ガス圧制御とは、光源16から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギの制御が、充電電圧Vの制御範囲では困難な場合に、チャンバ100内にレーザガスを注入してレーザガスの全ガス圧Pを変化させることによって、パルスエネルギを制御するガス制御である。ここで、充電電圧Vの制御範囲の上限値(HVULt)と下限値(HVLLt)とは、光源16の運転制御目標パラメータの1つである。
【0099】
[4]全ガス交換制御
上記の[1]、[2]及び[3]の制御では、レーザ性能(パルスエネルギ)を維持できない場合には、レーザ発振を停止し、チャンバ100中のレーザガスを排気して、新しくレーザガスを充填した後、再び、レーザを発振させて運転する。このような制御を全ガス交換制御という。
【0100】
ここで、「ガス消費量Gw」を定義する。ガス消費量Gwは、単位パルス数当たりのレーザガス消費量をと定義する。このガス消費量Gwは、ハロゲン注入制御、部分ガス交換制御、ガス圧制御及び全ガス交換制御のうち少なくとも1つの制御を行う際に、チャンバ100に供給したガス量Gaとその際に出力したパルスレーザ光のパルス数NgからGw=Ga/Ngの式によって求めることができる。
【0101】
また、目標ガス消費量Gwtは、光源16の運転制御目標パラメータの1つであり、光源16は、単位パルス数当たりガスの消費量がGwtとなるようにガス制御が行われる。
【0102】
チャンバ100からレーザガスを排気する場合に、レーザ制御部90はガス排気装置116を制御する。チャンバ100から排気されたレーザガスは図示しないハロゲンフィルタによってハロゲンガスが除去され、光源16の外部に排気される。
【0103】
レーザ制御部90は、発振パルス数と、充電電圧Vと、チャンバ100内のガス圧Pと、レーザ光のパルスエネルギEと、波長λと、スペクトル線幅Δλと、を含むこれらパラメータ値のデータを、露光装置14や光源用管理システム206に出力する。
【0104】
5.3 その他
図7では、光源16として狭帯域化KrFエキシマレーザ装置の例を示したが、この例に限定されることなく、狭帯域化ArFエキシマレーザ装置であってもよい。
【0105】
また、光源16としてシングルチャンバの例を示したが、この例に限定されることなく、狭帯域化されたパルスレーザ光を出力するマスターオシレータと、このパルスレーザ光をエキシマレーザガスを含むチャンバによって増幅する増幅器と、を含むレーザ装置であってもよい。
【0106】
また、マスターオシレータと増幅器とを含むレーザ装置において、マスターオシレータとして、固体レーザと非線形結晶とを組み合わせた、ArFレーザ又はKrFレーザの増幅可能な波長域で、狭帯域化されたレーザ光を出力する固体レーザ装置であってもよい。
【0107】
5.4 課題
顧客や顧客のプロセスデザインや製作している製品によって、どの目標パラメータ情報が、どのように影響するかは異なる。また、光源は設計上、製品として決められた仕様の範囲で動作することを保証している。
【0108】
しかし、このように一律の決められた目標パラメータ情報の範囲では、超微細化を進める半導体製造のユーザにとって不十分な場合が多くなってきている。
【0109】
そして、半導体の生産現場では、より細かく厳しい目標パラメータ情報でパラメータを監視し、制御するニーズが高まっている。
【0110】
しかし、個々のユーザ又は半導体プロセスで、特に重要とされる特定の優先的な目標パラメータ情報となるように運転させる光源や対応可能なリソグラフィーシステムはほとんどない。
【0111】
6.実施形態1
6.1 構成
図8は、実施形態1に係る半導体製造システム300の構成を示す。図8の構成について図1と異なる点を説明する。図8に示す半導体製造システム300は、図1の半導体製造システム200の構成に、データ解析用サーバ310と、光源パラメータ管理用サーバ320とが追加された構成となっている。データ解析用サーバ310及び光源パラメータ管理用サーバ320はネットワーク210に接続される。
【0112】
データ解析用サーバ310及び光源パラメータ管理用サーバ320のそれぞれは、図示しないプロセッサと、プログラムが記憶された記憶装置と、を含む。記憶装置は、有体物たる非一時的なコンピュータ可読媒体であり、例えば、主記憶装置であるメモリ及び補助記憶装置であるストレージを含む。コンピュータ可読媒体は、例えば、半導体メモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)装置、もしくはソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)装置又はこれらの複数の組み合わせであってよい。プロセッサはCPUを含み、プログラムの命令を実行することにより各種の処理を実行する。プロセッサは、CPUとGPU(Graphics Processing Unit)との組み合わせであってもよく、プログラマブルロジックデバイス (Programmable Logic Device:PLD)などの集積回路を含んでもよい。
【0113】
6.2 動作
図9は、半導体製造システム300の全体的な処理フローを示すブロック図である。データ解析用サーバ310は、以下のステップ(A-1~A-5)を実行する。
【0114】
ステップA-1:データ解析用サーバ310は、ウエハ検査装置用管理システム202のデータと、露光装置用管理システム204のデータと、光源用管理システム206のデータと、工場内の追跡データ207と、を取得し、リソグラフィーシステム毎と、ウエハ毎と、スキャン毎と、に紐づけて、それぞれのデータを整理して保存する。追跡データ207には、例えば、ウエハ内のチップの歩留まりを追跡したデータが含まれる。
【0115】
ステップA-2:データ解析用サーバ310は、ステップA-1にて整理して保存されたリソグラフィーシステム#kのパラメータ情報を解析する。データ解析用サーバ310における解析方法については、例えば、特許文献4に記載の方法を適用してよい。
【0116】
ステップA-3:データ解析用サーバ310は、ステップA-2の解析結果から露光性能のパラメータに影響が大きい光源#kのパラメータを抽出する。
【0117】
ステップA-4:データ解析用サーバ310は、ステップA-3で抽出された光源#kのパラメータと露光性能のパラメータとの関係に基づいて、光源#kの優先目標パラメータ情報を求める。
【0118】
ステップA-5:データ解析用サーバ310は、ステップA-4で求めた光源#kの優先目標パラメータ情報を、半導体工場管理システム208に出力する。
【0119】
半導体工場管理システム208は、以下のステップ(B-1,B-2)を実行する。
【0120】
ステップB-1:半導体工場管理システム208は、光源#kの優先目標パラメータ情報と、その他の半導体工場の管理情報209と、を受信する。その他の半導体工場の管理情報209とは、例えば、半導体工場のプロセスと、半導体の歩留まりと、工場ラインのスケジュールと、半導体の製造コストと、を含むデータである。
【0121】
ステップB-2:半導体工場管理システム208は、取得した優先目標パラメータ情報と、その他の半導体工場の管理情報と、に基づいて、光源#kの優先目標パラメータ情報を光源パラメータ管理用サーバ320に出力する。
【0122】
光源パラメータ管理用サーバ320は、以下のステップ(C-1~C-3)を実行する。
【0123】
ステップC-1:光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータ情報を、半導体工場管理システム208から受信する。
【0124】
ステップC-2:光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータ情報を設定した場合の光源のメインテナンス情報を推定する。
【0125】
ステップC-3:光源パラメータ管理用サーバ320は、メインテナンス情報を半導体工場管理システム208に出力する。
【0126】
半導体工場管理システム208は、さらに、以下のステップ(B-4,B-5)を実行する。
【0127】
ステップB-4:半導体工場管理システム208は、光源#kのメインテナンス情報を受信する。
【0128】
ステップB-5:半導体工場管理システム208は、その他の半導体工場の管理情報209と、光源#kのメインテナンス情報と、に基づいて光源#kの運転の許否(OK/NOK)を判定し、判定結果を光源パラメータ管理用サーバ320に出力する。半導体工場管理システム208は、光源#kの運転を許可する場合(OK判定時)はOK信号を出力し、光源#kの運転を不許可とする場合(NOK判定時)はNOK信号を出力する。
【0129】
光源パラメータ管理用サーバ320は、さらに、以下のステップ(C-4~C-6)を実行する。
【0130】
ステップC-4:光源#kの運転を許可するOK判定が得られた場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源用管理システム206を介して光源#kに優先目標パラメータ情報を出力する。その結果、光源#kには優先目標パラメータ情報が設定され、光源#kは優先目標パラメータ情報に基づいて運転制御される。
【0131】
ステップC-5:また、OK判定が得られた場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データから、優先目標パラメータ情報を満たして運転する場合のメインテナンス情報を推定し、推定したメインテナンス情報を半導体工場管理システム208に出力する。
【0132】
ステップC-6:一方、光源#kの運転を不許可とするNOK判定が得られた場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源用管理システム206を介して光源#kに運転停止を指令する信号(運転停止信号)を出力する。その結果、光源#kは運転を停止する。
【0133】
データ解析用サーバ310及び光源パラメータ管理用サーバ320の個々の詳しい処理フローをさらに説明する。
【0134】
6.2.1 データ解析用サーバの処理例
図10は、データ解析用サーバ310における処理内容の例を示すフローチャートである。図10に示すステップの処理は、データ解析用サーバ310に含まれるプロセッサがプログラムの命令を実行することによって実現される。
【0135】
図10のフローチャートがスタートすると、ステップS11において、データ解析用サーバ310は、ウエハ検査装置用管理システム202、露光装置用管理システム204及び光源用管理システム206などから各種データを取得し、リソグラフィーシステム#kにおけるそれぞれのウエハのスキャン毎に、ウエハ検査データと光源データと、露光装置データと、に整理して保存する。
【0136】
ステップS12において、データ解析用サーバ310は、光源#kの各パラメータと、露光装置#kの露光性能の各パラメータとの相関性を解析する。
【0137】
ステップS13において、データ解析用サーバ310は、露光性能のパラメータと相関性が高い光源のパラメータを選定する。
【0138】
ステップS14において、データ解析用サーバ310は、露光装置#kの露光性能のパラメータと相関性が高いと選定された光源#kのパラメータの回帰曲線を計算する。
【0139】
ステップS15において、データ解析用サーバ310は、計算された回帰曲線から露光性能のパラメータ値が許容範囲となる光源#kのパラメータの目標値とその範囲とを計算する(図11参照)。
【0140】
ステップS16において、データ解析用サーバ310は、光源#kの優先目標パラメータ情報として、光源の目標パラメータ値とその範囲とを出力する。データ解析用サーバ310は、ステップS16の後、図10のフローチャートを終了する。
【0141】
図11は、回帰曲線から光源パラメータの目標値とその範囲とを求める方法を示すグラフである。図11の横軸は、露光性能パラメータ値Rを表し、縦軸は光源パラメータ値Lを表す。回帰曲線RCは、露光装置#kの露光性能パラメータと相関性が高いと選定された光源#kの光源パラメータの回帰曲線である。
【0142】
露光装置#kの露光性能パラメータの目標値Rtと、その許容範囲を示す許容下限値Rminと許容上限値Rmaxとを基に、回帰曲線RCから光源パラメータの目標値Ltと、その許容範囲を示す許容下限値Lminと許容上限値Lmaxとを求めることができる。こうして得られる光源パラメータの目標値Lt、許容下限値Lmin及び許容上限値Lmaxを含むデータの集合は、光源の優先目標パラメータ情報となり得る。
【0143】
6.2.2 光源パラメータ管理用サーバの処理例
図12及び図13は、光源パラメータ管理用サーバ320における処理内容の例を示すフローチャートである。図12及び図13に示すステップの処理は、光源パラメータ管理用サーバ320に含まれるプロセッサがプログラムの命令を実行することによって実現される。
【0144】
図12のフローチャートがスタートすると、ステップS20において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの優先目標パラメータ情報を取得する。光源パラメータ管理用サーバ320が取得する光源#kの優先目標パラメータ情報は、1つの項目の目標パラメータだけでなく、例えば、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先順位が高い順に目標パラメータ情報を取得してもよい。
【0145】
ステップS22において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kが優先目標パラメータ情報に設定する場合の光源#kのメインテナンス情報を推定する。ステップS22のサブルーチンについては後述する(図14)。
【0146】
ステップS23において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの推定されたメインテナンス情報を半導体工場管理システム208に出力する。
【0147】
ステップS24において、光源パラメータ管理用サーバ320は、半導体工場管理システム208から運転OK又は運転NOKのうち、どちらの信号を受信したかを判定する。半導体工場管理システム208から運転NOKの信号を受信した場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS25に進む。
【0148】
ステップS25において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転停止信号を出力する。半導体工場では、ステップS23で出力されたメインテナンス情報に基づいて光源#kのメインテナンスが実施される。光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS25の後、図12のフローチャートを終了する。
【0149】
一方、ステップS24の判定において、光源パラメータ管理用サーバ320が半導体工場管理システム208から運転OKの信号を受信した場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS26に進む。
【0150】
ステップS26において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ情報を出力する。ステップS26の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図13のステップS27に進む。
【0151】
ステップS27において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転信号を出力する。
【0152】
ステップS28において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データを取得する。
【0153】
ステップS29において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データから優先目標パラメータ情報に設定する場合のメインテナンス情報を推定する。ステップS29のサブルーチンについては後述する(図15)。
【0154】
ステップS30において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの推定したメインテナンス情報を半導体工場管理システム208に出力する。
【0155】
ステップS31において、光源パラメータ管理用サーバ320は、半導体工場管理システム208から光源の運転停止信号を受信したか否かを判定する。ステップS31の判定結果がNo判定である場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS28に戻る。
【0156】
ステップS31の判定結果がYes判定である場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS32に進む。ステップS32において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転停止信号を出力する。半導体工場では、メインテナンス情報に基づいて光源#kのメインテナンスが実施される。光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS32の後、図12のフローチャートを終了する。
【0157】
図14は、図12のステップS22に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。図14のフローチャートがスタートすると、ステップS41において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ情報を出力する。
【0158】
ステップS42において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの調整運転信号を出力する。光源#kは、調整運転信号を受信することにより、調整運転を開始し、調整運転の実施によって得られる各種のデータ(調整運転データ)を光源パラメータ管理用サーバ320に出力する。
【0159】
ステップS43において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの調整運転データを取得する。
【0160】
ステップS44において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データから優先目標パラメータ情報に設定する場合のメインテナンス情報を推定する処理を行う。この場合の「光源#kの運転データ」とは、ステップS43で取得した「光源#kの調整運転データ」である。ステップS44に適用される処理のサブルーチンは、図13のステップS29に適用されるサブルーチンと共通であってよい。
【0161】
ステップS44の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図12のフローチャートに復帰する。
【0162】
図15は、図13のステップS29及び図14のステップS44に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
【0163】
図15のフローチャートがスタートすると、ステップS51において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データを取得する。
【0164】
ステップS52において、光源パラメータ管理用サーバ320は、消耗品の劣化度を推定する処理に用いる学習モデルを呼び出す。この学習モデルは、光源の運転データを入力として、消耗品の劣化度を出力するように、教師あり学習データを用いて機械学習を行うことにより作成されたニューラルネットワークで構成された学習済みの機械学習モデル(推論モデル)であってよい。光源の運転データから消耗品の劣化度を推定する学習モデルの作成方法と、学習モデルの推論結果として出力される劣化度からメインテナンスまでのパルス数を計算する方法とについては、特許文献1に開示されている技術を採用してよい。
【0165】
特許文献1には、次のような方法が記載されている。すなわち、レーザ装置の消耗品の寿命を予測するための学習モデルを作成する機械学習方法であって、消耗品の使用が開始されてから交換されるまでの期間中の異なる発振パルス数に対応して記録された消耗品の寿命関連パラメータのデータを含む第1の寿命関連情報を取得することと、第1の寿命関連情報を発振パルス数に応じて消耗品の劣化度を表す複数段階のレベルに分割し、第1の寿命関連情報と劣化度を表すレベルとを対応付けた訓練データを作成することと、訓練データを用いて機械学習を行うことにより、寿命関連パラメータのデータから消耗品の劣化度を予測する学習モデルを作成することと、作成された学習モデルを保存することと、を含む機械学習方法である。
【0166】
さらに、特許文献1には、上記の機械学習方法を実施することによって作成された学習モデルを保存しておく学習モデル保存部と、レーザ装置における交換予定の消耗品についての寿命予測処理の要求信号を受信して、交換予定の消耗品に関する現在の第2の寿命関連情報を取得する情報取得部と、交換予定の消耗品の学習モデルと第2の寿命関連情報とに基づいて、交換予定の消耗品の寿命と余寿命とを計算する寿命予測部と、計算によって得られた交換予定の消耗品の寿命と余寿命との情報を外部装置に通知する情報出力部と、を含むレーザ装置の消耗品管理装置が記載されている。
【0167】
光源パラメータ管理用サーバ320は、特許文献1に記載された消耗品管理装置と同様の機能を備えるものであってよい。
【0168】
ステップS53において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データを学習モデルに入力して劣化度を推定する。
【0169】
ステップS54において、光源パラメータ管理用サーバ320は、推定された劣化度から各消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数を計算する。
【0170】
ステップS55において、光源パラメータ管理用サーバ320は、メインテナンスまでの残りパルス数をメインテナンス情報として出力する。ステップS55の後、光源パラメータ管理用サーバ320は図12及び図13に示すフローチャートに復帰する。
【0171】
なお、図15のフローチャートにて用いられる学習モデルは、後述する優先目標パラメータ情報によって、消耗品のメインテナンス寿命が異なる場合は、それぞれのモードに対する教師あり学習データに基づいて、それぞれ学習モデルが作成される。そして、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータにそれぞれ対応して学習モデルを呼び出してもよい。
【0172】
光源パラメータ管理用サーバ320は本開示における「光源パラメータ情報管理装置」の一例である。光源パラメータ管理用サーバ320が実行するステップを含む方法は本開示における「光源パラメータ情報管理方法」の一例である。
【0173】
6.3 効果
実施形態1によれば、データ解析用サーバ310を用いて、リソグラフィーシステム#kの露光プロセスに対して、最適な優先目標パラメータ情報を導き出し、この優先目標パラメータ情報を光源#kに設定して、光源#kを運転させた場合に推定されるメインテナンス情報を半導体工場管理システム208に出力することによって、リソグラフィーシステム#kの運転又は停止を効率よく管理できる。
【0174】
実施形態1によれば、個々のユーザ又は半導体プロセスで、特に重要とされる特定の目標パラメータ情報を維持でできるように光源を運転することが可能となる。
【0175】
その結果、半導体製造の歩留まりを改善でき、コスト等を改善できる。また、半導体プロセスに最適な露光が可能となる。
【0176】
6.4 その他
実施形態1の例では、データ解析用サーバ310と、光源パラメータ管理用サーバ320とをそれぞれの機能毎に記載したが、必ずしも、これらサーバの機能を分ける必要がなく、同じサーバでこれら2つの機能を実現してもよい。また、両サーバの機能は、光源用管理システム206又は露光装置用管理システム204に機能を兼用してもよい。また、データ解析用サーバ310の機能は、露光装置用管理システム204、光源パラメータ管理用サーバ320又は光源用管理システム206に持たせてもよい。
【0177】
また、データ解析用サーバ310又は光源パラメータ管理用サーバ320の出力結果は、図示しない表示装置等に出力してオペレータが理解できるように表示してもよい。
【0178】
また、優先目標パラメータ情報は、露光装置用管理システム204を介して露光装置#kに出力してもよい。そして、優先目標パラメータ情報を、露光装置#kから光源#kに送信して光源#kを制御してもよい。
【0179】
7. 実施形態2
7.1 構成
図16は、実施形態2に係る半導体製造システムの全体的な処理フローを示すブロック図である。実施形態2のシステム構成は実施形態1の構成(図8)と同様であってよい。実施形態2では、実施形態1で説明した構成及びその機能に加えて、優先目標パラメータとは異なるパラメータに関する推奨目標パラメータ情報を推定して、半導体工場管理システム208などの外部装置に提供する仕組みが追加される。
【0180】
7.2 動作
図16について、図9と異なる点を説明する。図16では、図9のフローに追加して、優先目標パラメータ情報を設定する場合に必要な推奨目標パラメータ情報を出力する場合の例を示す。
【0181】
図16において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの優先目標パラメータ情報を設定する場合に、メインテナンス情報と、さらに推奨目標パラメータ情報と、を推定して外部装置に出力する。推奨目標パラメータ情報は、例えば、目標スペクトル特性パラメータ情報と、目標出力特性パラメータ情報と、目標消費量パラメータ情報と、のうち少なくとも1つを含む。
【0182】
光源#kの推奨目標パラメータ情報は、半導体工場管理システム208を介してデータ解析用サーバ310に出力される。
【0183】
データ解析用サーバ310は、この推奨目標パラメータと露光性能のパラメータとの相関性を解析して、推奨目標パラメータ情報を光源#kに設定した場合の運転のOK/NOKを判定し、判定結果を半導体工場管理システム208に出力する。
【0184】
また、半導体工場管理システム208は、メインテナンス情報と、推奨目標パラメータ情報と、その他の半導体工場の管理情報209と、に基づいて光源#kの運転のOK/NOKを判定する。
【0185】
OK判定が得られた場合、光源#kには、光源用管理システム206を介して、優先目標パラメータ情報と、推奨目標パラメータ情報と、が設定され、これら目標パラメータ情報を満たすように光源#kが制御される。
【0186】
7.2.1 データ解析用サーバの処理例
図17は、実施形態2のデータ解析用サーバ310における推奨目標パラメータ情報の確認フローを示すフローチャートである。半導体工場管理システム208は、受信した推奨目標パラメータ情報の採否を判定するにあたり、データ解析用サーバ310に推奨目標パラメータ情報を送り、データ解析用サーバ310に推奨目標パラメータ情報の適否を確認させ、その結果を受け取る。
【0187】
図17のフローチャートがスタートすると、ステップS60において、データ解析用サーバ310は、光源#kの推奨目標パラメータ情報を受信する。
【0188】
ステップS62において、データ解析用サーバ310は、光源#kの推奨目標パラメータ情報の各パラメータの値の範囲と露光性能のパラメータの値の範囲との関係を解析する。
【0189】
そして、ステップS63において、データ解析用サーバ310は、推奨目標パラメータ情報の各パラメータ値の範囲において、露光性能のパラメータ値が許容範囲内であるか否かを判定する(図18参照)。
【0190】
ステップS63の判定結果がYes判定である場合、データ解析用サーバ310は、ステップS64に進む。ステップS64において、データ解析用サーバ310は、推奨目標パラメータ情報が適切(OK)であることを示すOK信号を出力する。
【0191】
一方、ステップS63の判定結果がNo判定である場合、データ解析用サーバ310は、ステップS65に進む。ステップS65において、データ解析用サーバ310は、推奨目標パラメータ情報が不適切(NG)であることを示すNG信号を出力する。
【0192】
ステップS64又はステップS65の後、データ解析用サーバ310は図17のフローチャートを終了する。
【0193】
図18は、推奨目標パラメータと露光性能のパラメータとの関係の解析例を示すグラフである。図18の横軸は推奨目標パラメータを表し、縦軸は露光性能のパラメータを表す。データ解析によって、例えば、図18のように、露光性能のパラメータ値と、推奨目標パラメータ値との関係が得られる。露光性能のパラメータ値について許容範囲を示す下限値及び上限値が特定されると、推奨目標パラメータ値の範囲において対応する露光性能のパラメータ値が許容範囲内にあるか否かを判定することができる。
【0194】
7.2.2 光源パラメータ管理サーバの処理例
図19及び図20は、実施形態2の光源パラメータ管理用サーバ320における処理内容の例を示すフローチャートである。図19及び図20のフローチャートは、図12及び図13のフローチャートにおけるステップS22、S23、S26、S29及びS30を、ステップS72、S73、S76、S79及びS80にそれぞれ変更したものとなっている。図13のステップS70、S74、S75、S77、S78、S81及びS82は、図13及び図14のフローチャートにおけるステップS20、S24、S25、S27、S28、S31及びS32のそれぞれと同様であるため、重複する説明を省略する。
【0195】
ステップS72において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kが優先目標パラメータ情報に設定する場合の光源#kのメインテナンス情報と、推奨目標パラメータ情報と、を推定する。ステップS72のサブルーチンについては後述する(図21)。
【0196】
ステップS73において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの推定されたメインテナンス情報と、推奨目標パラメータ情報と、を半導体工場管理システム208に出力する。
【0197】
ステップS74の判定において、光源パラメータ管理用サーバ320が半導体工場管理システム208から運転を許可するOK信号を受信した場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS76に進む。
【0198】
ステップS76において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ情報と、推奨目標パラメータ情報と、を出力する。ステップS76の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図20のステップS77に進む。
【0199】
光源パラメータ管理用サーバ320は、ステップS78により、光源#kの運転データを取得後、ステップS79において、光源#kの運転データから優先目標パラメータ情報に設定する場合のメインテナンス情報と、推奨目標パラメータ情報と、を推定する。ステップS79のサブルーチンについては後述する(図22)。
【0200】
ステップS80において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの推定したメインテナンス情報と、推奨目標パラメータ情報と、を半導体工場管理システム208に出力する。その後のステップS81及びS82は、ステップS31及びS32と同様である。
【0201】
図21は、図19のステップS72に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。図21のフローチャートにおけるステップS91、S92及びS93は、図14のフローチャートにおけるステップS41、S42及びS43のそれぞれと同様であるため、重複する説明を省略する。図21のフローチャートは、図14のステップS44を、ステップS94に変更したものとなっている。
【0202】
ステップS94において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データから優先目標パラメータ情報に設定する場合のメインテナンス情報と、推奨目標パラメータ情報と、を推定する処理を行う。この場合の「光源#kの運転データ」とは、ステップS93で取得した「光源#kの調整運転データ」である。ステップS94に適用される処理のサブルーチンは、図20のステップS79に適用されるサブルーチンと共通であってよい。
【0203】
図22は、図20のステップS79及び図21のステップS94に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。図22のフローチャートにおけるステップS101、S102、S103、S104及びS105は、図15のフローチャートにおけるステップS51、S52、S53、S54及びS55のそれぞれと同様であるため、重複する説明を省略する。図22のフローチャートは、図15のステップS55の後に、ステップS106及びステップS107が追加されたものとなっている。
【0204】
ステップS106において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データから光源のそれぞれの性能パラメータ値の範囲を求めて推奨目標パラメータ情報を推定する。ステップS106のサブルーチンについては後述する(図23)。
【0205】
ステップS107において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの推定した推奨目標パラメータ情報を出力する。ステップS107の後、光源パラメータ管理用サーバ320は図19及び図20に示すフローチャートに復帰する。
【0206】
図23は、図22のステップS106に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。図23のステップS121において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データを取得する。
【0207】
ステップS122において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転データから各性能パラメータ値の平均値Pavと、その標準偏差値Pσと、をそれぞれ計算する。各性能パラメータ値とは、パルスレーザ光の性能を表現する各パラメータの値である。例えば、パルスエネルギEとその安定性Eσ、スペクトル線幅Δλとその安定性Δλσ等がある。
【0208】
ステップS123において、光源パラメータ管理用サーバ320は、それぞれの性能パラメータの標準偏差値Pσにそれぞれ安全係数Kを掛ける。安全係数Kは、例えば3~5の範囲の値であってもよい。安全係数Kが3の場合は、平均値に対し±3σの値の範囲となる。
【0209】
ステップS124において、光源パラメータ管理用サーバ320は、それぞれの性能パラメータ値の平均値Pavとその範囲K・Pσとを推奨目標パラメータ情報として出力する。
【0210】
ステップS124の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図23のフローチャートを終了し、図22のフローチャートに復帰する。
【0211】
なお、図23では、性能パラメータ値の範囲の表現として「±K・Pσ」を例示したが、これに限らず、例えば、±K・(Pσ/Pav)・100(%)で表してもよい。
【0212】
7.3 効果
実施形態2によれば、優先目標パラメータ情報に基づいて、メインテナンス情報だけでなく、推奨目標パラメータ情報を推定して、これらの情報が半導体工場管理システム208に出力される。これにより、半導体工場管理システム208において、これらの情報を総合的に勘案して、光源#kの運転のOK/NOKの判定が可能となる。
【0213】
また、実施形態2によれば、仕様緩和が必要な推奨目標パラメータ情報を提示して運転のOK/NOKを確認の上、露光可能なため、露光プロセスの歩留まりの低下を抑制できる。
【0214】
また、実施形態2によれば、仕様緩和可能な推奨目標パラメータ情報に設定して、光源#kを運転できるので、仕様緩和しないで運転した場合に比べて、メインテナンスまでの残りパルス数の減少やガス消費量の増加を抑制できる。
【0215】
7.4 その他
実施形態2の例では、半導体工場管理システム208が、その他の半導体工場の管理情報209に基づいてOK/NOKを判定しているが、これに限らず、露光装置用管理システム204に、推奨目標パラメータ情報を出力し、露光装置用管理システム204にて露光装置#kとして、露光実施のOK/NOKを判定させ、その判定結果を半導体工場管理システム208が受信することにより、半導体工場管理システム208がOK/NOKを総合的に判定してもよい。
【0216】
8.実施形態3
8.1 構成
実施形態3のシステム構成及び全体フローは、実施形態2と同様であってよい。実施形態3は、光源パラメータ管理用サーバ320が光源#kの優先目標パラメータ情報に基づいて、光源#kの運転制御目標パラメータ値を変更(再設定)する点で実施形態2と異なる。
【0217】
光源#kには、デフォルトの運転制御パラメータ値が設定されており、優先目標パラメータ情報が指定されると、これに関連するパラメータ値が再設定される。
【0218】
8.2 動作
図24は、実施形態3の光源パラメータ管理用サーバ320における処理内容の例を示すフローチャートである。図24において、図19と共通するステップには同一のステップ番号を付し、重複する説明は省略する。図24に示すフローチャートは、図19のステップS70とステップS72との間にステップS71を含む。
【0219】
ステップS71において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの優先目標パラメータ情報に基づいて光源#kの運転制御目標パラメータ値の再設定を行う。他のステップは、図19と同様であってよい。また、ステップS76以降のフローチャートは図20と同様であってもよい。
【0220】
図25は、図24のステップS71に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。図25のフローチャートがスタートすると、ステップS131において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータ情報に基づいて、光源#kの運転制御目標パラメータを選定する。
【0221】
ステップS132において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータと、光源#kの運転制御目標パラメータとの関係のデータを呼び出す。光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータと、光源#kの運転制御目標パラメータとの関係を示すテーブルデータあるいは近似曲線などのデータを記憶しており、この関係データを呼び出す。
【0222】
ステップS133において、光源パラメータ管理用サーバ320は、呼び出したデータから優先目標パラメータ値Ptに近づくための運転制御目標パラメータ値Poを求める(図26参照)。
【0223】
ステップS134において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに運転制御目標パラメータ値Poを出力する。ステップS134の後、光源パラメータ管理用サーバ320は図24のフローチャートに復帰する。
【0224】
図26は、優先目標パラメータと運転制御パラメータとの関係を示すグラフの例である。光源パラメータ管理用サーバ320は、図25のステップS132において、図26のような関係を示すデータを呼び出す。そして、ステップS133において、図26に示す様に、優先目標パラメータ値Ptに対応する運転制御目標パラメータ値Poを求める。
【0225】
8.3 効果
実施形態3によれば、光源#kについての優先目標パラメータ情報が設定されると、その設定に関連する他の運転制御目標パラメータ値が再設定される。これにより、優先目標パラメータ情報を満たす運転が実現される。
【0226】
9.実施形態4
9.1 構成
実施形態4は、実施形態3のさらなる具体的な形態の例である。実施形態4のシステム構成及び全体フローは、実施形態1と同様であってよい。実施形態4は、光性能優先モード、消耗品寿命延長モード及び消費量低減モードの各モードで運転する場合について例示する。
【0227】
9.2 光性能優先モード運転
光性能優先モード運転には、例えば、スペクトル線幅の性能を優先させる場合、パルスエネルギ(出力)の性能を優先させる場合、あるいは、エネルギ安定性の性能を優先させる場合など、優先する性能(重視する性能)の観点が異なる複数態様があり得る。このような特定の光性能を優先するモードでの運転が要求された場合の動作の具体例を以下に示す。
【0228】
9.2.1 スペクトル線幅Δλが優先目標パラメータとなる場合の例
9.2.1.1 動作
ここでは、リソグラフィーシステム#kが、クリティカルレーヤのプロセスの露光を行っている場合に関して説明する。クリティカルレーヤのプロセスでは露光装置#kの解像力を高く維持する必要があるので、目標スペクトル特性を示す目標パラメータ(例えばスペクトル線幅Δλ)を優先的に管理する必要があると推定される。この場合、データ解析用サーバ310では、図27に示すフローチャートの各ステップが実行される。
【0229】
図27は、実施形態4のデータ解析用サーバ310における処理内容の例を示すフローチャートである。ステップS141は、図10のステップS11と同様である。
【0230】
ステップS142において、データ解析用サーバ310は、光源#kのスペクトル線幅Δλと、露光装置#kで形成されたレジストパターンのCDに関連するパラメータとの相関性を解析する。
【0231】
ステップS144において、データ解析用サーバ310は、光源#kのスペクトル線幅Δλと、露光装置#kで形成されたレジストパターンのCDとの回帰曲線を計算する。
【0232】
ステップS145において、データ解析用サーバ310は、計算された回帰曲線からパラメータCD値が許容範囲となる光源#kのスペクトル線幅Δλの目標値と、その範囲と、を計算する。
【0233】
ステップS146において、データ解析用サーバ310は、光源#kの優先目標パラメータ情報として、計算された光源#kの目標スペクトル線幅Δλtpと、その範囲(Δλtp±ΔΔλtp)と、を出力する。目標スペクトル線幅Δλtpとその範囲(Δλtp±ΔΔλtp)とは本開示における「スペクトル線幅パラメータ情報」の一例である。
【0234】
ステップS146の後、図27のフローチャートを終了する。
【0235】
図28は、回帰曲線を用いて目標スペクトル線幅Δλtとその範囲とを求める方法の例を示すグラフである。図28の横軸はCDを表し、縦軸は光源のスペクトル線幅Δλを表す。回帰曲線RC2は、CDとスペクトル線幅Δλとの相関性を示す曲線である。CDの目標値CDtと、その許容範囲を示す許容下限値CDminと許容上限値CDmaxとを基に、回帰曲線RCから光源のスペクトル線幅Δλの目標値である目標スペクトル線幅Δλtと、その許容範囲を示す許容下限値Δλt-ΔΔλtと許容上限値Δλt+ΔΔλtとを求めることができる。こうして得られる目標スペクトル線幅Δλtと、その範囲(Δλt±ΔΔλt)と、を含むデータの集合は、光源の優先目標パラメータ情報としての目標スペクトル線幅Δλtpとその範囲(Δλtp±ΔΔλtp)となり得る。
【0236】
光源#kの露光プロセスがプロセスの行程が、クリティカルレーヤの場合、スペクトル線幅Δλを狭くして露光することが必要となる。
【0237】
図29は、図25のフローチャートを、スペクトル線幅Δλが優先目標パラメータである場合に適用した例を示すフローチャートである。スペクトル線幅Δλが優先目標パラメータとなる場合、図24のステップS71のサブルーチンとして、図29のフローチャートが適用される。
【0238】
ステップS151において、光源パラメータ管理用サーバ320は、スペクトル線幅Δλと波面調節器107のレンズ間隔LDとの関係のデータを呼び出す。レンズ間隔LDは波面調節器107を構成する凹レンズ171と凸レンズ172との間隔である。
【0239】
ステップS152において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータであるスペクトル線幅Δλの中心値(目標値Δλt)となるレンズ間隔LD=Ctを求める(図30参照)。
【0240】
ステップS153において、光源パラメータ管理用サーバ320は、スペクトル線幅Δλの中心値Δλtとなるように運転制御目標パラメータとしてレンズ間隔LDの初期値LC=Ctを光源#kに出力する。
【0241】
ステップS154において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータ情報としてスペクトル線幅Δλtpを光源#kに出力する。光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータ情報としてスペクトル線幅Δλtpを露光装置#kにも出力してもよい。ステップS154の後、光源パラメータ管理用サーバ320は図24のフローチャートに復帰する。
【0242】
図30は、スペクトル線幅Δλと波面調節器107のレンズ間隔LDとの関係を示すグラフの例である。図30の横軸はスペクトル線幅Δλを表し、縦軸はレンズ間隔LDを表す。図30のようなパラメータ間の関係を示すデータを用いて、目標スペクトル線幅Δλtに対応するレンズ間隔Ctを求めることができる。
【0243】
9.2.1.2 効果
この例では、波面調節器107のレンズ間隔を初期値Ctとして設定することによって、短時間で、優先される目標スペクトル線幅Δλtpに設定する光源の運転が可能となる。
【0244】
この例によれば、露光プロセスにマッチした、スペクトル線幅が狭く、その範囲を限定して、光源を運転させることが可能となるため、クリティカルレーヤの露光プロセス起因による歩留まりが改善する。
【0245】
9.2.1.3 その他
この例では、優先目標パラメータである目標スペクトル線幅のみを狭くしている。この場合、パルスエネルギの余裕が少なくなるため、消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数が減少する。この点、実施形態2で説明したように、他の仕様緩和可能なパラメータについて推奨目標パラメータ情報を推定してもよい。
【0246】
消耗品のメインテナンス情報は、優先目標パラメータ情報を光源#kに設定した状態で調整発振を実施して得られる運転データに基づいて推定されてもよい。
【0247】
また、この例では、スペクトル線幅Δλを変化させる手段として、波面調節器107の凹レンズと凸レンズとの間のレンズ間隔を変更する例を示した。しかし、この例に限定されることなく、例えば、LNM102の第1プリズム131及び第2プリズム132をそれぞれ回転させることによって、これら2個のプリズムによるビーム拡大の倍率を調節してもよい。
【0248】
図29における最後のステップ(ステップS154)は、光源#kにデータを出力しているが、露光装置#kにデータを出力してもよい。実際の露光時には露光装置#kから、優先目標パラメータ値として、光源#kにこれらのデータを出力してもよい。
【0249】
9.2.2 パルスエネルギが優先目標パラメータとなる場合
9.2.2.1 高パルスエネルギを得ることが優先され、スペクトル線幅Δλを広くして露光が可能な場合の例
光源#kの露光プロセスの工程が、ラフレーヤの場合又は焦点深度の深さが要求される段差のある基板上にレジストパターンを形成する場合には、以下の条件(条件A及び条件B)で露光を行う必要がある。
【0250】
条件A:焦点深度を深くするために、スペクトル線幅Δλを広くして露光する。
【0251】
条件B:さらに、レジスト感度が低いレジストや厚膜レジストを露光する場合は、スループットを維持するために、光源#kのパルスエネルギを高く設定する。
【0252】
9.2.2.1.1 動作
図31は、優先目標パラメータをパルスエネルギとし、その目標値Etpに高パルスエネルギの値を設定し、さらに推奨目標パラメータをスペクトル線幅とし、その目標値Δλtrに広いスペクトル線幅の値を設定して、光源#kを運転する場合の光源パラメータ管理用サーバ320における処理フローの例を示す。
【0253】
図31は、図25のフローチャートを、高パルスエネルギが優先されるモードの場合に適用した例を示すフローチャートである。パルスエネルギが優先目標パラメータとなる場合、図24のステップS71のサブルーチンとして、図31のフローチャートが適用される。
【0254】
ステップS161において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータのパルスエネルギの目標値Etpを設定する。
【0255】
ステップS162において、光源パラメータ管理用サーバ320は、パルスエネルギEと波面調節器107のレンズ間隔LDとの関係データを呼び出す。
【0256】
ステップS163において、光源パラメータ管理用サーバ320は、呼び出した関係データを用いて、優先目標パラメータであるパルスエネルギEが目標値Etpとなるレンズ間隔LD=Ctを求める(図32参照)。
【0257】
ステップS164において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに運転制御目標パラメータの初期のレンズ間隔LC=Ctを出力する。
【0258】
ステップS165において、光源パラメータ管理用サーバ320は、パルスエネルギEとスペクトル線幅Δλとの関係データを呼び出す。
【0259】
ステップS166において、光源パラメータ管理用サーバ320は、呼び出した関係データを用いて、優先目標パラメータであるパルスエネルギEが目標値Etpとなるスペクトル線幅Δλtrを求める(図33参照)。Δλtrは推奨目標スペクトル線幅の目標値である。
【0260】
ステップS167において、光源パラメータ管理用サーバ320は、スペクトル線幅Δλを推奨目標パラメータ情報として登録する。
【0261】
ステップS168において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに運転制御目標パラメータ値として目標スペクトル線幅Δλtrを出力する。
【0262】
ステップS169において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ値として目標パルスエネルギEtpを出力する。
【0263】
光源パラメータ管理用サーバ320は、露光装置#kにも目標スペクトル線幅Δλtr及び目標パルスエネルギEtpのうち少なくとも1つを出力してもよい。
【0264】
ステップS169の後、光源パラメータ管理用サーバ320は図24のフローチャートに復帰する。
【0265】
図32は、パルスエネルギEと波面調節器107のレンズ間隔LDとの関係を示すグラフの例である。図32の横軸はパルスエネルギEを表し、縦軸はレンズ間隔LDを表す。図32のような関係データを用いて、目標パルスエネルギ値Etpに対応するレンズ間隔Ctを求めることができる。
【0266】
図33は、パルスエネルギEとスペクトル線幅Δλとの関係を示すグラフの例である。図33の横軸はパルスエネルギEを表し、縦軸はスペクトル線幅Δλを表す。図33のような関係データを用いて、目標パルスエネルギ値Etpに対応する目標スペクトル線幅Δλtrを求めることができる。
【0267】
9.2.2.1.2 効果
図31図33を用いて説明した方式によって、優先目標パラメータの目標値である高パルスエネルギでの運転が可能となる。
【0268】
また、この方式によれば、スペクトル線幅Δλは広くなるが、露光プロセスがラフレーヤの場合や、焦点深度が要求される段差のある基板上のレジストパターンの形成もしくは厚膜レジストの場合などの露光が可能となる。
【0269】
この例では、目標のパルスエネルギを大きくする手段として、スペクトル線幅を広くしているので、消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数が減少やガス消費量の増加するのを抑制できる。
【0270】
9.2.2.1.3 その他
図31の最後の2つのステップ(ステップS168,S168)は、光源#kに運転制御目標パラメータ値と、優先目標パラメータ値とを出力しているが、露光装置#kにこれら情報を出力してもよい。実際の露光時には露光装置#kから、光源#kに、これらの目標パラメータ値を出力してもよい。
【0271】
この例では、スペクトル線幅Δλを変化させるのに波面調節器107のレンズ間隔LDを変更する例を示した。しかし、この例に限定されることなく、例えば、LMN102の第1プリズム131及び第2プリズム132をそれぞれ回転させることによって、これら2個のプリズムによるビーム拡大の倍率を小さくすることによって、スペクトル線幅Δλを広くし、パルスエネルギに余裕を持たせてもよい。
【0272】
9.2.2.2 高パルスエネルギを得ることが優先され、パルスエネルギ安定性を仕様緩和して露光が可能な場合の例
9.2.2.2.1 動作
図34は、優先目標パラメータをパルスエネルギとして高パルスエネルギの値を目標値Etpに設定し、パルスエネルギ安定性のパラメータの範囲が仕様緩和可能な場合のフローチャートの例を示す。パルスエネルギEが優先目標パラメータとなり、パルスエネルギ安定性についての仕様を緩和して露光可能な場合、図31のフローチャートに代えて、図34のフローチャートを適用し得る。
【0273】
ステップS171において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータのパルスエネルギの目標値Etpを設定する。
【0274】
ステップS172において、光源パラメータ管理用サーバ320は、ハロゲンガス分圧HgcとパルスエネルギEとの関係と、ハロゲンガス分圧Hgcとパルスエネルギ安定性Eσとの関係と、のデータを呼び出す。
【0275】
ステップS173において、光源パラメータ管理用サーバ320は、呼び出した関係データを用いて、パルスエネルギEが最大値となるハロゲンガス分圧の目標値Hgctを求める(図35参照)。
【0276】
ステップS174において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに運転制御目標パラメータとしてハロゲンガス分圧の目標値Hgctを出力する。
【0277】
ステップS177において、光源パラメータ管理用サーバ320は、パルスエネルギ安定性Eσを推奨目標パラメータの情報として登録する。
【0278】
ステップS179において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ値として目標パルスエネルギEtpを出力する。光源パラメータ管理用サーバ320は、露光装置#kにも目標パルスエネルギEtpを出力してもよい。
【0279】
ステップS179の後、光源パラメータ管理用サーバ320は図24のフローチャートに復帰する。
【0280】
図35は、ハロゲンガス分圧HgcとパルスエネルギEの関係と、ハロゲンガス分圧Hgcとパルスエネルギ安定性Eσの関係と、を示すグラフの例である。図35の横軸はチャンバ100内のハロゲンガス分圧Hgcを表し、左側の縦軸はパルスエネルギE、右側の縦軸はパルスエネルギ安定性Eσを表す。
【0281】
図35において太線で示す山型の曲線はハロゲンガス分圧HgcとパルスエネルギEの関係を示すグラフであり、細線で示す谷型の曲線はハロゲンガス分圧Hgcとパルスエネルギ安定性Eσの関係を示すグラフである。図35のような関係データを用いて、パルスエネルギEの最大値Emaxに対応するハロゲンガス分圧Hgctと、パルスエネルギ安定性Eσrとを求めることができる。
【0282】
9.2.2.2.2 効果
図34のフローチャートによれば、パルスエネルギEが最大値Emaxとなるハロゲンガス分圧Hgctとなるように、チャンバ100内のハロゲンガス分圧Hgcを制御することによって、パルスエネルギEを高くすることができる。そのため、露光のスループットが改善する。
【0283】
9.2.2.2.3その他
図34の例では、ハロゲンガス分圧HgcをパルスエネルギEが最大となるように、運転制御パラメータである目標のハロゲンガス分圧Hgctを定めたため、パルスエネルギ安定性Eσが図35に示すEσrの値に悪化する可能性がある。
【0284】
この場合、パルスエネルギ安定性Eσを推奨目標パラメータの情報として登録しておき、調整発振時の運転データから推奨目標パラメータ情報を推定して、外部装置に出力してもよい。
【0285】
また、パルスエネルギ安定性の目標パラメータの範囲を仕様緩和することができない場合は、例えば、光源#kの運転制御目標パラメータであるパルス毎のガス消費量Gwtを増加させて運転制御目標パラメータ値を再設定してもよい。これにより、各消耗品のメインテナンスの残りパルス数の維持が可能となる。
【0286】
光性能優先モードの他の例として、パルスエネルギの安定性を優先させるモードがあってもよい。この場合は、図36に示すように、パルスエネルギ安定性Eσの値が一番小さくなるように(安定性が最も高くなるように)、運転制御目標パラメータとして目標ハロゲンガス分圧Hgctを設定してもよい。ただし、この場合パルスエネルギEが出にくくなるので、消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数の減少を許容したり、目標のパルス当たりガス消費量Gwtを増加させることによって、光源#kの運転が可能となる。
【0287】
9.2.2.3 高デューティ比で運転することが優先され、パルスエネルギ安定性を仕様緩和して露光が可能な場合の例
9.2.2.3.1 動作
露光装置の光源は、一般的に、図2のように、ウエハを露光するために発振(所定の繰り返し周波数で発振)と休止を繰り返すバースト運転パターンを行う。
【0288】
この場合のデューティ比は以下の式で表される。
【0289】
デューティ比=発振時間/(発振時間+休止時間)×100(%)
図37は、デューティ比とパルスエネルギとの関係を示すグラフである。図37に示すように、一般的に、光源は、同じ条件(同じガス圧及び同じ充電電圧を印加した時)ではデューティ比が高くなるにつれて、光源から出力される光のパルスエネルギが低くなる傾向がある。したがって、高デューティ比で光源を運転する場合は、光源のパルスエネルギが高くなる条件で運転する必要がある。
【0290】
また、図37に示すような関係は、単位時間当たりのパルス数を横軸、パルスエネルギを縦軸でプロットしても、同様な傾向が得られる。
【0291】
したがって、単位時間当たりのパルス数が増加すると、パルスエネルギが小さくなるので、単位時間当たりのパルス数を増加させて光源を運転する場合にパルスエネルギを補償する対策は高デューティ比の場合と同様である。
【0292】
図38は、デューティ比が優先目標パラメータとなり、パルスエネルギ安定性のパラメータの範囲が仕様緩和可能な場合のフローチャートの例を示す。デューティ比Drが優先目標パラメータとなり、パルスエネルギ安定性についての仕様を緩和して露光可能な場合、図31のフローチャートに代えて、図38のフローチャートを適用し得る。
【0293】
ステップS181において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータであるDrtpを設定する。優先パラメータであるバーストパターンのデューティ比Drtpは、これから露光するときの運転のパターンから計算したデューティ比である。
【0294】
ステップS182、S183、S184及びS187は、図34のステップS172、S173、S174及びS177と同様であってよい。
【0295】
ステップS187の後のステップS189において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ情報として目標デューティ比Drtpを出力する。光源パラメータ管理用サーバ320は、露光装置#kにも目標デューティ比を出力してもよい。露光装置はこの目標デューティ比Drtpに近いバースト露光パターンで露光するように、光源#kへのトリガパターンを出力する。
【0296】
9.2.2.3.2 効果
パルスエネルギが最大となるハロゲンガス分圧となるように、チャンバ100内のハロゲンガス分圧を制御することによって、高デューティ比の運転が可能となる。そのため、露光のスループットが改善する。
【0297】
9.2.2.3.3 その他
この例では、ハロゲンガス分圧をパルスエネルギが最大となるように目標のハロゲンガス分圧Hgctを定めたため、パルスエネルギ安定性が悪化する可能性がある。したがって、パルスエネルギ安定性を推奨目標パラメータ情報として登録しておき、調整発振時の運転データから推奨目標パラメータ情報を推定し、外部装置に出力してもよい。
【0298】
また、パルスエネルギ安定性の目標パラメータを仕様緩和することができない場合は、例えば、光源#kの運転制御目標パラメータであるパルス毎のガス消費量Gwtを増加させて再設定してもよい。これにより、消耗品のメインテナンスの残りパルス数の維持が可能となる。
【0299】
この例では、優先目標パラメータとしてデューティ比の場合を示したが、この例に限定されることなく、例えば、単位時間当たりの出力を優先目標パラメータとして設定してもよい。
【0300】
一般的にエキシマレーザの場合、高デューティ比又は単位時間当たりのパルス数が高くなると、パルスエネルギが出にくくなる。したがって、図31又は図38に示すような処理フローを実行して、例えば、スペクトル線幅を広げること、もしくは、パルスエネルギ安定性のパラメータの範囲を仕様緩和すること、もしくは、パルス毎のガス消費量Gwを大きくすること、又は、これらの組み合わせ等により、パルスエネルギの維持可能な条件で運転制御目標パラメータを設定する。そして、高デューティ比又は単位時間当たりのパルス数が大きい値を目標優先パラメータ情報として設定して、光源#kを運転してもよい。
【0301】
9.3 消耗品寿命延長モード運転
半導体工場によっては、生産計画やメインテナンス計画等の事情により、消耗品のメインテナンスまでの期間を長くすることを希望する場合がある。消耗品の寿命を延長するには、同じガス圧及び同じ充電電圧の場合のパルスエネルギが高くなるように光源#kの運転制御目標パラメータを設定すればよい。
【0302】
9.3.1 目標ハロゲンガス分圧を再設定する例
9.3.1.1 動作
図39は、消耗品寿命延長モード運転の場合に適用される処理フローの例である。消耗品寿命延長モード運転の場合、図24のステップS71に、図39のフローチャートが適用される。
【0303】
ステップS191において、光源パラメータ管理用サーバ320は、消耗品の寿命延長可能な運転パラメータを選定する。同じガス圧及び同じ充電電圧の場合にパルスエネルギが高くなるような運転パラメータの1つとしてハロゲンガス分圧がある(図35参照)。この例では、光源パラメータ管理用サーバ320はハロゲンガス分圧を選定する。
【0304】
ステップS192、S193、ステップS194及びステップS197は、図38のステップS182、S183、S184及びステップS187のそれぞれと同様であってよい。
【0305】
ステップS197の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図24のフローチャートに復帰する。
【0306】
9.3.1.2 効果
図39のように、光源#kの運転制御目標パラメータとして、目標ハロゲンガス分圧をパルスエネルギが最大エネルギとなるように再設定することによって、同じガス圧及び同じ充電電圧を設定した場合に、パルスエネルギを高くすることが可能となる。このパルスエネルギの余裕度を消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数の延長に振り分けることが可能である。
【0307】
また、この場合は、推奨目標パラメータ情報として、調整運転時のデータに基づいて、パルスエネルギとパルスエネルギ安定性とを求めて、これらを外部装置に出力してもよい。
【0308】
9.3.2 目標スペクトル線幅を再設定する例
図33で説明したように、光源#kの運転制御目標パラメータとして、目標スペクトル線幅を広げることによって、同じガス圧及び同じ充電電圧を印加した時のパルスエネルギを高くすることが可能となる。このパルスエネルギの余裕度を消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数の延長に振り分けることが可能である。
【0309】
この場合は、推奨目標パラメータ情報として、調整運転時のデータに基づいて、スペクトル線幅とスペクトル線幅安定性とを求めて、これらを外部装置に出力してもよい。
【0310】
9.3.3 ガス消費量を再設定する例
推奨目標パラメータ情報として、パルスエネルギ安定性又はスペクトル線幅等の目標パラメータを仕様緩和することができない場合は、例えば、光源#kの運転制御目標パラメータであるパルス毎のガス消費量Gwtを増加させて再設定してもよい。これにより、消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数を延長することも可能となる。ただし、この場合は、推奨目標パラメータ情報として、設定したパルス毎のガス消費量Gwtを外部装置に出力してもよい。メインテナンス情報は、パルス毎のガス消費量Gwtを増加させて設定する場合の調整運転時のデータに基づいて、外部装置に出力してもよい。
【0311】
9.3.4 効果
消耗品寿命延長モード運転によれば、消耗品のメインテナンスまでの残りのパルス数を延長できる。消耗品のメインテナンスまでの残りのパルス数を延長することによって、例えば、リソグラフィーシステム#kのその他の消耗品のメインテナンス時期と、光源#kのメインテナンス時期とを合わせることが可能となり、製造ラインのダウンタイムを改善することができる。また、消耗品寿命延長モード運転によれば、光源#kの消耗品のメインテナンス時期と光源#j(j≠k)の消耗品のメインテナンス時期とを合わせることも可能である。
【0312】
9.3.5 その他
この例では目標ハロゲン分圧を再設定する例と、目標スペクトル線幅を再設定する例と、目標ガス消費量を再設定する例と、の3つの例を示したが、これらの例に限定されることなく、これら3つの例を適宜組み合わせてもよい。このようにすることによって、推奨目標パラメータ情報の仕様緩和の範囲を小さくすることも可能となる。
【0313】
9.4 消費量低減モード運転
9.4.1 ガス消費量低減モード運転
何らかの事情により、通常の仕様よりもガス消費量を低減したいという要望も想定される。ガス消費量を低減するには、同じガス圧及び同じ充電電圧を印加した時のパルスエネルギが高くなるように光源の運転制御目標パラメータを設定すればよい。
【0314】
図40は、単位パルス当たりのガス消費量とパルスエネルギとの関係を示すグラフである。図40に示すように、一般的に、光源は、単位パルス当たりのガス消費量が増加するにつれて、光源から出力される光のパルスエネルギが増加する傾向がある。
【0315】
この理由は、レーザガスの交換量が増加するため、チャンバ内に存在するレーザ光を吸収する不純物ガス濃度を低減することができ、パルスエネルギが増加すると考えられる。
【0316】
したがって、単位パルス当たりのガス消費量を増加させると、光源のパルスエネルギを高く維持することが可能となる。逆に言えば、他のパラメータによってパルスエネルギを高く維持することができれば、ガス消費量を低減することが可能となる。
【0317】
9.4.1.1 目標ハロゲン分圧を再設定する例
図41は、ガス消費量低減モード運転の場合に適用される処理フローの例である。ガス消費量低減モード運転の場合、図24のステップS71に、図41のフローチャートが適用される。
【0318】
ステップS201において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータとして、ガス消費量Gwtpを設定する。ステップS202、S203、S204及びステップS207は、図38のステップS182、S183、S184及びステップS187のそれぞれと同様であってよい。
【0319】
ステップS207の後のステップS208において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに優先目標パラメータ情報である目標ガス消費量Gwtpを出力する。
【0320】
ステップS208の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図24のフローチャートに復帰する。
【0321】
図35で説明したように、目標ハロゲンガス分圧Hgctを、パルスエネルギが最大エネルギとなるように調節することによって、同じガス圧及び同じ充電電圧を印加した時のパルスエネルギを高くすることが可能となる。このパルスエネルギの余裕度をガス消費量低減に振り分けることが可能である。
【0322】
この場合は、光源パラメータ管理用サーバ320は、推奨目標パラメータ情報として、調整運転時のデータに基づいて、パルスエネルギ安定性を求める。そして、光源パラメータ管理用サーバ320は、推定した推奨目標パラメータ情報とメインテナンス情報とを外部装置に出力する。
【0323】
9.4.1.2 目標スペクトル線幅を広げる例
図33の例のように、目標スペクトル線幅Δλtを広げることによって、同じガス圧及び同じ充電電圧を印加した時のパルスエネルギを高くすることが可能となる。このパルスエネルギの余裕度をガス消費量低減に振り分けることが可能である。この場合、図24のフローチャートにおける光源#kの運転制御目標パラメータとして、以下のパラメータを再設定する。
【0324】
[1]光源#kのパルス毎のガス消費量を低減した目標ガス消費量Gwtpに設定する。
【0325】
[2]スペクトル線幅を広げた目標スペクトル線幅Δλtpに設定する。
【0326】
また、この場合は、推奨目標パラメータ情報は調整運転時の運転データに基づいて、スペクトル線幅Δλとスペクトル線幅の安定性の範囲とを求める。そして、推奨目標パラメータ情報とメインテナンス情報とを外部装置に出力する。
【0327】
9.4.1.3 メインテナンスまでの残りパルス数を減少させる例
また、推奨目標パラメータ情報としてエネルギ安定性又はスペクトル線幅の目標パラメータを仕様緩和することができない場合は、消耗品のメインテナンスまでの残りパルス数を短くすることで、ガス消費量を抑制できる。ただし、この場合は、メインテナンス情報としてメインテナンスまでの残りパルス数が短くなることを外部装置に出力することになる。
【0328】
9.4.1.4 効果
上記に例示したガス消費量低減モード運転によれば、単位パルス当たりのガス消費量を低減できる。ガス消費量低減モード運転は、エキシマレーザガスのコストが高騰した場合に、コスト低減効果が大きくなる。
【0329】
また、例えば、半導体工場内のエキシマレーザガスの残量が少なくなっても、光源の運転が止められない場合に、ガス消費量低減モード運転は有効な手段となる。
【0330】
9.4.1.5 その他
上記の例では目標ハロゲン分圧を再設定する例と、目標スペクトル線幅を広げる例と、メインテナンスまでの残りパルス数を短くする例と、の3つの例を示したが、これらの例に限定されることなく、これら3つの例を適宜組み合わせてもよい。このようにすることによって、推奨目標パラメータの仕様緩和の範囲を小さくすることも可能となる。
【0331】
9.4.2 省電力モード運転
消費電力を低減するには、電源の充電電圧の範囲を低く設定することで可能となる。
【0332】
9.4.2.1 充電電圧の目標値を再設定する例
図42は、省電力モード運転の場合に適用される処理フローの例である。省電力モード運転の場合、図24のステップS71に、図42のフローチャートが適用される。
【0333】
ステップS211において、光源パラメータ管理用サーバ320は、優先目標パラメータとして、電力消費量(消費電力)を低減可能な運転制御目標パラメータを選定する。光源パラメータ管理用サーバ320は、電力消費量を低減可能な運転制御目標パラメータの1つとして、充電器110の充電電圧を選定する。
【0334】
ステップS212において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kの運転制御目標パラメータとしての充電器110の充電電圧の運転範囲HVLLt~HVULtを再設定する。消費電力は光源であるレーザ装置の充電電圧に依存するため、目標の充電電圧の下限値HVLLtと上限値HVULtとを運転可能な範囲で低く設定することで消費電力を抑えることができる。
【0335】
ステップS213において、光源パラメータ管理用サーバ320は、光源#kに運転制御パラメータ情報として充電電圧の運転範囲HVLLt~HVULtを出力する。
【0336】
ステップS213の後、光源パラメータ管理用サーバ320は、図24のフローチャートに復帰する。
【0337】
図42の例のように、充電電圧目標値の範囲である下限値HVLLtと上限値HVULtとを運転可能な範囲で低く設定することで消費電力を抑えることができる。つまり、光源#kの運転制御目標パラメータとしての充電器110の目標充電電圧の下限値HVLLtと上限値HVULtとを、通常の場合に比べて、低い値に再設定すればよい。
【0338】
ただし、充電電圧を低く設定すると、その副作用として、パルスエネルギの安定性の悪化、ガス消費量の増加、メインテナンスまでの残りパルス数の減少など、があり得る。この場合には、光源パラメータ管理用サーバ320は、推奨目標パラメータ情報として、調整運転時の運転データに基づいて、パルスエネルギの安定性及びガス消費量に関するパラメータ情報を求め、この推奨目標パラメータ情報とメインテナンス情報とを外部装置に出力する。
【0339】
9.4.2.2 ハロゲンガス分圧の目標値を再設定する例
図35の例のように、運転制御目標パラメータであるハロゲンガス分圧を最大のパルスエネルギが得られる目標値Hgctに設定することで、同じガス圧及び同じ充電電圧の条件でのパルスエネルギを高くすることができる。このパルスエネルギの余裕度を充電電圧の運転範囲に振り分けることが可能となる。この場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、推奨目標パラメータ情報として、調整運転時の運転データに基づいて、パルスエネルギの安定性の範囲を求め、この推奨目標パラメータ情報を外部装置に出力する。
【0340】
9.4.2.3 目標スペクトル線幅を広げる例
図33の例のように、運転制御目標パラメータである目標スペクトル線幅Δλtを広げることによって、同じガス圧及び同じ充電電圧を印加した時のパルスエネルギを高くすることが可能となる。このパルスエネルギの余裕度を充電電圧の運転範囲に振り分けることが可能である。この場合、光源パラメータ管理用サーバ320は、推奨目標パラメータ情報として、調整運転時の運転データに基づいて、スペクトル線幅とスペクトル線幅の安定性の範囲とを求め、この推奨目標パラメータ情報を外部装置に出力する。
【0341】
9.4.3 効果
省電力モード運転を実施することにより、電力消費量を低減できる。また、半導体工場内の電力事情がひっ迫した場合でも、電力消費量を抑えつつ、光源の運転を継続することができる。
【0342】
9.4.4 その他
上記の例では、充電電圧目標値を再設定する例と、ハロゲンガス分圧を再設定する例と、スペクトル線幅を広げる例と、の3つの例を示したが、これらの例に限定されることなく、これら3つの例を適宜組み合わせてもよい。このようにすることによって、推奨目標パラメータの仕様緩和の範囲を小さくすることも可能となる。
【0343】
また、レーザ装置の消費電力の割合が高い項目として、CFF123を駆動するモータ124の消費電力があげられる。この場合はCFF123の回転数を減らすことで、消費電力の抑制を実現可能である。
【0344】
しかし、この場合、パルスエネルギの安定性が悪化したり、チャンバの寿命が短くなる可能性がある。この場合においても、推奨目標パラメータ情報を外部装置に出力して、運転のOK/NOKの判定をしてもらってもよい。
【0345】
9.5 変形例
図43は、実施形態4の変形例を示すブロック図である。図43に示すように、半導体製造システムは、光源パラメータ管理用サーバ320と接続される入力/表示装置330を備える構成であってもよい。入力/表示装置330は、オペレータからの情報の入力を受け付ける入力装置と、各種の情報を表示させる表示装置とを含む。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、マルチタッチパネル、もしくは音声入力装置又はこれらの適宜の組み合わせであってよい。入力/表示装置330は、通信回線を介して光源パラメータ管理用サーバ320にアクセス可能なパーソナルコンピュータやタブレット端末などの情報処理端末装置であってよい。入力/表示装置330は、複数存在していてもよい。
【0346】
この入力/表示装置330から工場内のオペレータが光源#kを選択して、優先目標パラメータ情報を入力することで、メインテナンス情報や推奨目標パラメータ情報を入力/表示装置330に表示させてもよい。そして、オペレータは、メインテナンス情報や推奨目標パラメータ情報を確認した上で、運転のOK/NOKの判断をして、その判断結果を入力/表示装置330から入力してもよい。
【0347】
また、入力/表示装置330から優先目標パラメータ情報を入力する方法については、パラメータとその数値との情報を直接的に入力する態様に限らず、例えば、典型的な性能優先モード運転、消耗品寿命延長モード運転、あるいは、消費量低減モード運転などのモード情報を入力/表示装置330から入力することによって、それぞれのモードに定義付けされた優先する目標パラメータ情報を自動的に設定して、同様な動作を行ってもよい。
【0348】
一例として、入力/表示装置330には、複数のモードの選択候補を含むモード選択メニューが提示され、そのモード選択メニューの中からオペレータが例えば「スペクトル線幅優先モード」を選択する指示を入力すると、スペクトル線幅優先モードに定義付けされているスペクトル線幅を狭めた目標値を含む優先目標パラメータ情報が光源パラメータ管理用サーバ320に取り込まれる。モード情報から対応するパラメータ情報への変換は、入力/表示装置330の中で実施してもよいし、光源パラメータ管理用サーバ320の中で実施してもよい。
【0349】
10.パラメータ情報の具体例
図44に、光源に関するパラメータ情報の具体例を示す。例えば、スペクトル線幅のパラメータ情報は、スペクトル線幅及びその値と、スペクトル線幅安定性及びその値と、を含むデータの集合体である。
【0350】
図45に、優先目標パラメータ情報の具体例を示す。例えば、スペクトル線幅の優先目標パラメータ情報は、変数としての優先目標スペクトル線幅と、その優先されるスペクトル線幅の目標値Δλtpと、他の変数としての優先目標スペクトル線幅の安定性と、その優先されるスペクトル線幅Δλの変動幅の目標値ΔΔλtpと、を含む。ここでのスペクトル線幅は本開示における「第1変数」の一例であり、目標値Δλtpは本開示における「第1目標値」の一例である。スペクトル線幅Δλの変動幅は許容されるスペクトル線幅Δλの数値範囲に相当する。スペクトル線幅Δλの変動幅は本開示における「第2変数」の一例であり、目標値ΔΔλtpは本開示における「第2目標値」の一例である。
【0351】
図46に、推奨目標パラメータ情報の具体例を示す。図46は、図45に示した「優先目標パラメータ」という語句が「推奨目標パラメータ」に変更されており、図45に示された優先的な目標値が、推奨される目標値に変更されている点で図45と異なる。
【0352】
図47に、メインテナンス情報の具体例を示す。この例では、消耗品として、チャンバ100と、LNM狭帯域化モジュールと、出力結合ミラー(OC)との例を挙げたが、この例に限定されることなく、例えば、レーザ光の光路上に配置されている他の光学モジュール(図示しない光学パルスストレッチャ等)も、含まれる。
【0353】
図48に、運転制御目標パラメータ情報の具体例を示す。この例では、運転制御パラメータの例として、充電器に指令する電圧(充電電圧)と、ハロゲンガス分圧と、波面調節器のレンズ間隔と、の例を挙げたが、この例に限定されることなく、例えば、スペクトル線幅、波長、パルスエネルギのフィードバック制御するための制御ゲインも、含まれる。
【0354】
11.プログラムを記録したコンピュータ可読媒体について
上述の各実施形態で説明したデータ解析用サーバ310や光源パラメータ管理用サーバ320として、コンピュータを機能させるための命令を含むプログラムを光ディスクや磁気ディスクその他のコンピュータ可読媒体(有体物たる非一過性の情報記憶媒体)に記録し、この情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。このプログラムをコンピュータに組み込み、プロセッサがプログラムの命令を実行することにより、コンピュータに、これらのサーバの機能を実現させることができる。
【0355】
12.その他
上述の各実施形態では、露光装置に用いられる光源として、エキシマレーザ装置を例示したが、これに限らず、固体レーザ装置であってもよいし、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するEUV光生成装置などであってもよい。EUV光生成装置は、例えば、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)方式の装置であってよい。
【0356】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0357】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
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図6
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