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特許7609365立方晶のマンガン酸リチウム粒子の製造方法
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  • 特許-立方晶のマンガン酸リチウム粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】立方晶のマンガン酸リチウム粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/12 20250101AFI20241224BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20241224BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20241224BHJP
【FI】
C01G45/12
B82Y40/00
B82Y30/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020141544
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037417
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 昌史
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 渉
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康之
(72)【発明者】
【氏名】村松 淳司
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 澄志
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059622(JP,A)
【文献】特表2016-524275(JP,A)
【文献】TABUCHI Mitsuharu et al.,Solid State Ionics,1996年,vol.89,p.53-63
【文献】SUGIYAMA Jun et al.,Materials Science & Engineering B,2001年,vol.B84,p.224-232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00
C01G 49/10-99/00
B82Y 40/00
B82Y 30/00
H01M 4/00-4/62
JSTPlus/Jstchina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子サイズが100nm以下のウルツ鉱型酸化マンガン(II)ナノ粒子を準備する工程と、
反応容器に、含酸素有機溶媒、前記ウルツ鉱型酸化マンガン(II)ナノ粒子およびリチウム錯体を投入する工程と、
不活性ガス雰囲気下で前記含酸素有機溶媒、前記ウルツ鉱型酸化マンガン(II)ナノ粒子および前記リチウム錯体を加熱温度150~350℃で加熱して立方晶のマンガン酸リチウムナノ粒子を生成する工程と、
前記マンガン酸リチウムナノ粒子を回収する工程と、を含むマンガン酸リチウムナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記リチウム錯体は、リチウムアミドである請求項1に記載のマンガン酸リチウムナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
ウルツ鉱型酸化マンガン(II)ナノ粒子の粒子サイズが30nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマンガン酸リチウムナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記加熱温度が200℃より低く、前記マンガン酸リチウムナノ粒子は中空である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウムナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンガン酸リチウムに代表されるマンガン酸アルカリ金属ナノ粒子に関し、特に立方晶のLiMnOナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
マンガン酸リチウムは、リチウムイオン電池の正極材料として注目されている材料であり、LiMn、LiMnO、LiMnO等、Li、Mn及びOの比率が異なる複数の材料が開発されている。また正極材料としての特性、例えば初期放電容量や充放電特性は正極材料の結晶構造にも依存するため、所望の結晶構造を得るための製造方法や処理についても種々提案されている。
【0003】
LiMnOについては、例えば、非特許文献1に、斜方晶LiMnOをメカニカルミリングすることによって立方晶LiMnOナノ粒子を得る方法が開示されている。この方法では、まずLiCOとMnの混合物を不活性雰囲気下、900℃で加熱し合成して前駆体となるバルクの斜方晶LiMnOを得る。その後、得られた前駆体をメカニカルミリングにより粉砕し、微細化して目的とする立方晶ナノ粒子を得ている。得られる粒子は、数μオーダーから数十nmのものまで幅広い範囲の粒子が混在していると考えられる。
【0004】
また非特許文献2には、高圧合成法によって立方晶のLiMnOを合成する報告例がある。この方法では、LiO及びMnを混合し、金カプセル中で4.5GPa、1000℃という超高圧高温条件で合成を行い、LiOとLiMnOとの混合物として得られる粉末を水処理することにより、最終的に単一相の立方晶LiMnOを回収する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Materials Chemistry A 2018, 6, 13943, Takahiko Sato, et al
【文献】NEDO報告書:平成24年4月 「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/次世代技術開発/高圧合成法による次世代高容量正極材料酸化物の材料設計」 p. 26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載された方法では、立方晶ナノ粒子を得るための出発物質となるバルクのLiMnOを得るために、高温且つ長時間の処理が必要であり、さらに前駆体どうしを反応させるために高温且つ長時間の反応が必要となる。またナノサイズ化のために長時間のメカニカルミリングを必要とするが、メカニカルミリングでは粒径の制御が難しく、得られる粒子にはマイクロオーダーの粒子が混在し、平均粒径100nm以下の粒子を得ることは困難である。
【0007】
非特許文献2に記載された方法は、非特許文献1の技術に比べ、処理数は少ないものの、4.5GPaという極めて高い圧力と高温下で合成するため、高圧高温条件に対応した設備が必要となる。
【0008】
本発明は特殊な合成条件や処理が不要で、且つ粗大粒子が混在することなく、立方晶のマンガン酸アルカリ金属ナノ粒子、特に立方晶LiMnOナノ粒子を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のマンガン酸アルカリ金属ナノ粒子の製造方法は、反応容器に、有機溶媒と、マンガン酸化物ナノ粒子と、リチウムアミドとを加え、不活性雰囲気下で加熱し、立方晶のマンガン酸アルカリ金属ナノ粒子を生成させる工程、及び生成した粒子を洗浄・回収する工程を含む。本発明のLiMnOの製造方法において、原料として、好ましくは、ウルツ鉱型MnOナノ粒子を用いる。
【0010】
また本発明の立方晶LiMnOは、加熱合成によって製造されたLiMnOであって平均粒径が100nm以下であることを特徴とする。また中空構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特殊な反応設備やメカニカルミリング等の追加的な処理を要することなく、立方晶LiMnOに代表されるマンガン酸アルカリ金属ナノ粒子を提供することができる。本発明の立方晶LiMnOは、中空構造であることにより、リチウム電池材料として用いた場合に、中空部に内包物を添加することにより充放電特性を向上し、正極材料の寿命ひいてはリチウム電池の寿命の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるLiMnOの製造方法の概要を示す図。
図2】実施例1及び実施例2で得られた粒子のX線回折(XRD)パターンを示す図。
図3】(A)~(C)は、実施例1及び実施例2で得られた粒子、及び原料として用いたMnO粒子の透過型電子顕微鏡像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の立方晶マンガン酸アルカリ金属の製造方法の実施の形態を説明する。ここでは、典型的なマンガン酸アルカリ金属であるLiMnOのナノ粒子の製造方法を説明する。
【0014】
本発明の製造方法は、熱分解法による合成を基本とし、図1に示すように、Mn原料を調製する工程、Mn原料とLi原料及び溶媒を反応容器に投入する工程、350℃以下の所定の温度に昇温して所定時間(60分程度)反応させる工程、及び、反応液から粒子を回収する工程からなる。以下、各工程について詳述する。
【0015】
<工程1>
本発明の製造方法では、原料として、酸化マンガン(MnO)ナノ粒子とリチウムアミド(LiNH)等のLi錯体を用いる。酸化マンガンとリチウムアミドという新たな組み合わせにより、高圧、1000℃の高温、長時間反応のいずれも不要とし、通常の熱分解法による反応によって、立方晶LiMnOを生成させることができる。特に酸化マンガンとして、ウルツ鉱型のナノ粒子を用いることで、立方晶を得やすく、また粒子サイズの制御が容易となる。
【0016】
一般にMnOの安定な結晶構造は岩塩型であるものの、理論的にはMnOはウルツ鉱型の結晶構造を取ることは知られており、いくつか製造例はあるが、ウルツ鉱型のMnOナノ粒子だけを合成によって安定的に得る方法は知られていない。本出願人は、熱分解法による合成によってウルツ鉱型のMnOナノ粒子を製造する方法を開発し提案している(特願2019-205644号)。この方法では、反応系に所定の還元剤を添加して合成することにより、岩塩型のMnOや副生成物となる層状複水酸化物の生成を抑制し、粒子サイズが100nm以下のウルツ鉱型のMnOを安定して得ることができる。
【0017】
具体的には、マンガンを含む化合物を熱分解して酸化マンガン粒子を合成する際に、反応系に添加剤としてポリオール系材料及びステアリン酸エチレングリコール系材料の少なくとも1種からなる還元剤と、好ましくは粒子サイズ抑制剤とを添加する。そして、減圧雰囲気(圧力1000Pa以下、好ましくは100Pa以下)で、200℃以下、好ましくは110~150℃の温度で加熱して核形成した後、昇温し、225℃~275℃、不活性ガス雰囲気下で加熱し、粒子を成長させる。この粒子成長工程の反応時間を制御することで、酸化マンガン粒子のサイズを例えば2nm~100nm程度、好ましくは30nm以下に制御することができる。平均粒径としては、例えば100nm以下、より好ましくは40nm以下とすることができる。粒子成長後、さらに温度を300℃程度まで上げて粒子を熟成させることにより、サイズの均一化を図ることができる。
【0018】
本発明の製造方法では、上述した方法で調製されたウルツ鉱型MnOのナノ粒子(6~30nm)をMn原料として用いることで、粒子サイズが制御された立方晶LiMnOのナノ粒子を得ることができる。
【0019】
Li原料として、LiNH、LiNR(Rは、水素、アルキル基)等のLi錯体を用いる。このうち活性の高いLiNHが特に好ましい。Li源は、MnOに対し等モル以上100倍モル以下で用いることができるが、化学量論的な割合よりも過剰に用いることが好ましい。過剰な(例えば50等量以上の)LiNHを用いることによりLiMnO粒子を安定して得ることができる。
【0020】
溶媒としては、LiMnOの酸素源となる含酸素有機溶媒が用いられる。含酸素有機溶媒として、例えば、ジフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ジ-n-オクチルエーテル等のエーテル系溶媒等を好適に用いることができ、特にジフェニルエーテルが好ましい。
【0021】
<工程2>
反応は、不活性ガス雰囲気下で行うため、Mn原料と溶媒とを反応容器を投入した後、不活性ガス雰囲気でLi源(LiNH)を反応容器に投入し、反応容器を耐圧容器に入れて密閉する。
【0022】
<工程3>
窒素等の不活性ガス雰囲気下において、反応温度(ヒーター温度で150~350℃)まで加熱する。昇温速度は比較的緩やかな速度が好ましく、例えば5℃/分程度とする。反応温度到達後、その温度で所定時間保持する。反応は次のように進むものと考えられる。以下、Li源がLiNHである場合について説明する。この反応では、ウルツ鉱型MnOナノ粒子が出発物質(核)として反応が進行し、その粒子表面にLiNHが配位し、ナノ粒子の表面でMnO粒子内の原子とLiとが反応し、LiMnO結晶が形成されていく。その際、準安定相であるウルツ鉱型の結晶(原子の並び方)は、加熱することで安定相であるMnO相へ結晶構造変態を起こす。一方、系中に存在するLiNHは、活性なため高温で他の材料が一緒に存在する状態においては分解しやすく、Liの供給源となり、この活性な状態において、LiがMnO結晶構造内に取り込まれ、溶媒中の酸素を取り込みながら、立方晶LiMnOの相が形成される。
【0023】
また反応温度を比較的高い温度(例えば350℃程度)とした場合には、反応速度が高いため中実の粒子が得られる。一方、比較的低い温度(例えば200℃)では、中空の粒子が得られる。これは反応温度が低い条件では、LiMnOの成長速度が緩やかで、その間に、活性な LiNHと MnOの接触箇所で急激な反応が生じやすく、MnOナノ粒子表面に配位したLiNHに向かってMnOナノ粒子中の原子が反応のために移動するため、中が空洞化し中空構造となると考えられる。このように、反応温度を制御することで、生成する粒子の形態を制御することができる。
【0024】
反応時間は、約30分~2時間程度とする。本発明の製造方法では、上述したような反応が進む結果、短時間で合成が完了する。反応後、反応容器を急冷し、反応容器を耐圧容器から取り出す。
【0025】
<工程4>
反応系からの粒子の回収は、一般的な合成後の金属酸化物の回収方法と同様であり、溶媒を用いた遠心分離を繰り返した後、洗浄し、回収する。
【0026】
得られる粒子は、立方晶LiMnOであり、平均粒径は100nm以下である。MnOナノ粒子の粒径を適切に選択することにより、平均粒径を40nm以下とすることもできる。形状は、中実あるいは中空である。
なお、ここでいう平均粒径は、透過型電子顕微鏡により200~2000個の粒子の粒径を測定して計算した平均値のことである。
【0027】
本発明の製造方法によれば、従来、極限的な高温・高圧・長時間の生成方法でしか得られなかった立方晶LiMnOを、350℃以下のマイルドな条件で且つ短時間で得ることができ、追加処理をすることなくナノ粒子を調製できる。加えて、立方晶LiMnOナノ粒子の粒径は、出発物質であるMnOナノ粒子の大きさに依存するため、LiMnOナノ粒子の粒径制御が可能であり、得られる粒子の平均粒径は100nmよりも小さい。
【0028】
また、反応条件により中空構造LiMnOナノ粒子を形成できる。中空構造とすることで、密度が低下し、またその粒径と厚みを制御することで充放電特性のさらなる向上、軽量化などが期待できる。
【0029】
以上、本発明の立方晶LiMnOの製造方法を説明したが、この製造方法は、NaMnO等、他のマンガン酸アルカリ金属の合成にも適用可能である。Li 源の錯体を例えばNa源に替えることで、他の電極材料の候補として期待されるNaMnOナノ粒子ならびにその中空構造ナノ粒子を調製できるものと考えられる。
【実施例
【0030】
以下、本発明の製造方法の実施例を説明する。
【0031】
<実施例1>
[MnOナノ粒子の調製]
溶媒としてオレイルアミン10mL、マンガン材料としてステアリン酸マンガン(st-Mn)を1.5mmol、還元剤としてエチレングリコール(EG)を3.0mmol、配位剤としてトリオクチルホスフィン(TOP)を3.6mmol及び硫黄1.8mmolを用いた。
【0032】
容器(100mL)に材料を充填後、窒素雰囲気下で70℃に30分保持したのち、昇温し減圧雰囲気下で140℃で2時間保持した。この時の圧力は、約100Paとした。その後、50℃/5分の昇温レートで温度250℃まで昇温し、N雰囲気下で250℃に2時間保持し、結晶成長させた。その後さらに昇温し、N雰囲気下で300℃で15分保持して結晶熟成を行った。
【0033】
降温後の反応液にヘキサンを5mL加え撹拌した後に遠沈管に回収した。貧溶媒であるエタノールを加えて粒子を凝集させ、遠心分離機を用いて沈降させた。上澄み液を廃棄した後、ヘキサンを5mL加えて振とう機で30分撹拌して粒子を分散させた。もう一度エタノールを加え、同様の工程をもう1回繰り返して粒子洗浄を行い、粒子サイズ25nmのMnO粒子(赤色)を得た(粒子サイズは、TEMより確認)。
【0034】
[立方晶LiMnOの合成]
上記のように調製された25nmのMnOナノ粒子0.14mmolと、溶媒となるジフェニルエーテル(液体)6mLを反応容器(100mL)に添加した後、N雰囲気下で、反応容器にLiNH(粉末)10.8mmolを添加し、反応容器を耐圧容器の中に入れ、密閉した。
雰囲気下において、ヒーター温度が350℃となるまで、昇温速度5℃/分で加熱し、350℃に到達後、60分間保持し、反応を完了させた。その後、急冷し、反応容器を耐圧容器から取り出した。
【0035】
反応溶液中にエタノール40mLを添加し、遠心分離する操作を5回繰り返した。その後、分離後の粒子をエタノールで洗浄し、回収した。
【0036】
<実施例2>
実施例1と同様に調製された25nmのMnOナノ粒子0.14mmol、LiNH(粉末)10.8mmol、及び溶媒:ジフェニルエーテル6mLを実施例1と同様の手順で反応容器に添加し、N雰囲気下で反応を行った。本実施例では、昇温速度5℃/分で200℃(ヒーター温度)まで加熱し、その温度で60分間保持した。反応後は、実施例1と同様に、急冷後、エタノールを用いた遠心分離(5回)と洗浄を行い、粒子を回収した。
【0037】
[回収した粒子の評価]
実施例1及び実施例2でそれぞれ回収した粒子及び原料として用いたMnOについてX線回折(XRD)及び透過型電子顕微鏡(TEM)による解析を行った。X線回折パターンを図2に、またTEM像を図3(A)~(C)に示す。図2中、回折パターンの下に示す棒線はリファレンスの回折ピークで、太線は立方晶LiMnO(COD 1514037 Li0.5Mn0.5O)、細線は、ウルツ鉱型MnO(COD 4117966 MnO)を示す。また図3には、TEM像から解析した粒子サイズと構造の模式図を併せて示す。
【0038】
図2に示すように、実施例1及び実施例2の粒子は、ともにリファレンス(立方晶LiMnO)のピークと一致する位置にピークが観察され、立方晶LiMnO相が生成していることが確認された。また原料であるMnOはウルツ型であることが確認された。
【0039】
図3に示すように、実施例1、実施例2ともに、得られた粒子の粒子径は100nmよりも小さく、概ね30nm以下であった。また、TEM像から実施例1では平均粒径として19nmであることが確認された。またTEM像から、実施例2では中空構造が生成していることが確認され、その平均粒径は26nm、殻厚は約4~6nmであった。
【0040】
なお、原料となるMnOナノ粒子の粒子サイズと生成するLiMnOの粒子サイズとがほぼ同様であることについては、反応の際にMnOナノ粒子へLiが入っていくと同時に、高温で処理するため、活性なLiNHによりMnO粒子が溶解すると考えられる。このことを確認するため、LiNHを添加せずにMnO粒子を350℃で処理した後の粒子サイズを確認したところ、この加熱処理による粒子サイズへの影響は確認されなかった。
【0041】
またMnOナノ粒子として、実施例1で用いたナノ粒子(25nm)と異なる粒径のMnO粒子を用いて、実施例1と同様に反応を行ったところ、原料に用いたMnOナノ粒子と同様の粒径のLiMnOが得られることを確認した。
図1
図2
図3