(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ウイング車のウイング開閉装置
(51)【国際特許分類】
B60J 7/08 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B60J7/08 P
(21)【出願番号】P 2021117399
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000177276
【氏名又は名称】三輪精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和義
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-106041(JP,A)
【文献】特開平10-222238(JP,A)
【文献】特開昭63-137022(JP,A)
【文献】実開平06-061543(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第19647556(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に回転自在に支持された雄ねじ軸と、前記雄ねじ軸に螺合して前記雄ねじ軸
の回転に伴って直線移動する雌ねじ体と、前記雌ねじ体と共に移動するピストンと、前記
雄ねじ軸を回転駆動するモータと、前記モータを保持するベースとを備えており、前記ベ
ースおよび前記ピストンがウイング車のウイ
ングボデーおよびウイングにそれぞれ軸架され
るウイング車のウイング開閉装置において、
前記ピストンと共に移動する連結体に軸受穴が形成されており、前記軸受穴には連結軸
が回転自在に嵌入されており、前記連結体と前記連結軸との間には回り止め部材が抜き出
し可能に介設されて
おり、
前記連結体と前記連結軸とに挿通孔が開設されており、前記挿通孔に前記回り止め部材
が挿通されている、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【請求項2】
シリンダ内に回転自在に支持された雄ねじ軸と、前記雄ねじ軸に螺合して前記雄ねじ軸
の回転に伴って直線移動する雌ねじ体と、前記雌ねじ体と共に移動するピストンと、前記
雄ねじ軸を回転駆動するモータと、前記モータを保持するベースとを備えており、前記ベ
ースおよび前記ピストンがウイング車のウイングボデーおよびウイングにそれぞれ軸架され
るウイング車のウイング開閉装置において、
前記ピストンと共に移動する連結体に軸受穴が形成されており、前記軸受穴には連結軸
が回転自在に嵌入されており、前記連結体と前記連結軸との間には回り止め部材が抜き出
し可能に介設されており、
前記連結軸にターンバックルが螺合されている、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【請求項3】
シリンダに配置された雄ねじ軸と、前記シリンダ内の一端部に配置されて前記雄ねじ軸
に螺合され、モータによって回転されて前記雄ねじ軸を直線運動させる雌ねじ体とを備え
ており、前記シリンダおよび前記雄ねじ軸がウイング車のウイングボデーおよびウイング
にそれぞれ回動自在に軸架されるウイング車のウイング開閉装置において、
前記雄ねじ軸と共に移動する連結体に軸受穴が形成されており、前記軸受穴には連結軸
が回転自在に嵌入されており、前記連結体と前記連結軸との間には回り止め部材が抜き出
し可能に介設されている、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【請求項4】
前記連結体と前記連結軸とに挿通孔が開設されており、前記挿通孔に前記回り止め部材
が挿通されている、
ことを特徴とする請求項3 に記載のウイング車のウイング開閉装置。
【請求項5】
前記連結軸にターンバックルが螺合されている、
ことを特徴とする請求項3 または4に記載のウイング車のウイング開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイング車のウイング開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラックにおける荷の積み下ろし作業を実施し易くするために、ウイングボデーに開閉自在にそれぞれ支持された左ウイングおよび右ウイングを開閉するウイング開閉装置を備えるウイング車、が知られている。
【0003】
従来のこの種のウイング開閉装置として、シリンダ内に回転自在に支持された雄ねじ軸と、雄ねじ軸に螺合して雄ねじ軸の回転に伴って直線移動する雌ねじ体と、雌ねじ体に固定されたピストンと、減速機を介して雄ねじ軸を回転駆動するモータと、減速機およびモータを保持するベースとを備えており、ベースがウイング車のボデーに回動自在に軸架され、ピストンがウイング車のウイングに回動自在に軸架されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、シリンダに配置された雄ねじ軸と、シリンダ内の一端部に配置されて雄ねじ軸に螺合された雌ねじ体と、雌ねじ体に連結されモータによって回転されて雄ねじ軸を直線運動させるスリーブ状回転子とを備えており、シリンダおよび雄ねじ軸がウイング車のウイングボデーおよびウイングそれぞれ回動自在に軸架されるウイング車のウイング開閉装置がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-61543号公報
【文献】特開2014-190436公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動シリンダ装置を使用したウイング開閉装置においては、モータおよび減速機の一方または両方が何らかの原因で作動しなくなった場合(以下、非常時という場合がある)に雄ねじ軸および雌ねじ体の所謂送りねじ機構によってウイングを閉じることができなくなるという問題点がある。
ウイングが開いたままではウイング車を走行させることができない。
【0006】
本発明の目的は、非常時にウイングの荷重を活用してウイングを閉鎖することができるウイング車のウイング開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
( 1 )シリンダ内に回転自在に支持された雄ねじ軸と、前記雄ねじ軸に螺合して前記雄ねじ軸
の回転に伴って直線移動する雌ねじ体と、前記雌ねじ体と共に移動するピストンと、前記
雄ねじ軸を回転駆動するモータと、前記モータを保持するベースとを備えており、前記ベ
ースおよび前記ピストンがウイング車のウイングボデーおよびウイングにそれぞれ軸架され
るウイング車のウイング開閉装置において、
前記ピストンと共に移動する連結体に軸受穴が形成されており、前記軸受穴には連結軸
が回転自在に嵌入されており、前記連結体と前記連結軸との間には回り止め部材が抜き出
し可能に介設されており、
前記連結体と前記連結軸とに挿通孔が開設されており、前記挿通孔に前記回り止め部材
が挿通されている、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
( 2 ) シリンダ内に回転自在に支持された雄ねじ軸と、前記雄ねじ軸に螺合して前記雄ねじ軸
の回転に伴って直線移動する雌ねじ体と、前記雌ねじ体と共に移動するピストンと、前記
雄ねじ軸を回転駆動するモータと、前記モータを保持するベースとを備えており、前記ベ
ースおよび前記ピストンがウイング車のウイングボデーおよびウイングにそれぞれ軸架され
るウイング車のウイング開閉装置において、
前記ピストンと共に移動する連結体に軸受穴が形成されており、前記軸受穴には連結軸
が回転自在に嵌入されており、前記連結体と前記連結軸との間には回り止め部材が抜き出
し可能に介設されており、
前記連結軸にターンバックルが螺合されている、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
( 3 ) シリンダに配置された雄ねじ軸と、前記シリンダ内の一端部に配置されて前記雄ね
じ軸に螺合され、モータによって回転されて前記雄ねじ軸を直線運動させる雌ねじ体とを
備えており、前記シリンダおよび前記雄ねじ軸がウイング車のウイングボデーおよびウイ
ングにそれぞれ回動自在に軸架されるウイング車のウイング開閉装置において、
前記雄ねじ軸と共に移動する連結体に軸受穴が形成されており、前記軸受穴には連結軸
が回転自在に嵌入されており、前記連結体と前記連結軸との間には回り止め部材が抜き出
し可能に介設されている、
ことを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【発明の効果】
【0008】
前記した手段によれば、電動シリンダ装置を使用したウイング車のウイング開閉装置において、非常時にウイングの荷重を活用してウイングを閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態であるウイング開閉装置を搭載したウイング車を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態であるウイング開閉装置のウイング閉鎖時を示す一部切断背面図である。
【
図3】(A)は
図2のA部を示す一部省略一部切断背面図、(B)は
図3(A)の側面図、(C)は
図3のC-C線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態であるウイング開閉装置のウイング開放時を示す背面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態であるウイング開閉装置の非常時のウイング閉鎖途中を示す背面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態であるウイング開閉装置を示しており、(A)は
図2のA部を示す一部省略一部切断背面図、(B)は
図6(A)の側面図、(C)は
図6のC-C線に沿う断面図である。
【
図7】本発明の第三実施形態であるウイング開閉装置のウイング閉鎖時を示す一部切断背面図である。
【
図8】本発明の第三実施形態であるウイング開閉装置のウイング開放時を示す背面図である。
【
図9】本発明の第三実施形態であるウイング開閉装置の非常時のウイング閉鎖途中を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
図1~
図5は本発明の第一実施形態を示している。
本実施形態において、本発明に係るウイング車のウイング開閉装置は、
図1に示されたウイング車のウイングの開閉を実施するものとして構成されている。
【0012】
図1に示されているように、ウイング車1はトラック2の荷台に搭載されているウイングボデー(以下、ボデーという)3を備えており、ボデー3の左右の側壁にはウイング5が一対、支軸4によって回動自在に支持されて、ガルウイング形態に斜め上方に開閉するように設備されている。
なお、左、右のウイング5、5は同一の構造をもって左右対称形状に配設されているため、以下、左側のウイング5について代表的に説明する。
ボデー3の前後壁には前後で一対の電動シリンダ装置10、10がそれぞれ配設されており、両電動シリンダ装置10、10は一端がボデー3に回転自在に枢着され、他端がウイング5に回転自在に枢着されている。つまり、ウイング5は前後で一対の電動シリンダ
装置10、10の伸縮作動によって開閉される。
【0013】
図2に示されているように、電動シリンダ装置10は、シリンダ11内に回転自在に支持された雄ねじ軸12と、雄ねじ軸12にボールネジ結合して雄ねじ軸12の回転に伴って直線移動する雌ねじ体13と、雌ねじ体13に固定されたピストン14と、減速機15を介して雄ねじ軸12を回転駆動するモータ16と、を備えている。減速機15およびモータ16はベース17に設置されて固定されており、ベース17にはボデー側取付部18が減速機15およびモータ16と反対側の端面に突設されている。
電動シリンダ装置10はボデー3の天井付近に水平に配置されており、ボデー側取付部18がボデー3にブラケット19によって回動自在に軸架されているとともに、後述する連結軸24がウイング5にブラケット36によって回動自在に軸架されている。
【0014】
図2および
図3に示されているように、ピストン14におけるシリンダ11からの突出端には円柱形状の連結体20が同一軸線上に配置されてねじ結合部21によって固定されている。連結体20には円柱形穴形状の軸受穴22が同一軸線上に配置されて形成されている。
軸受穴22の底面上にはスラスト軸受23が同一軸線上に配置されている。軸受穴22には円柱形状の連結軸24の基部24aが端面をスラスト軸受23に摺接されて回転自在に嵌入されており、連結軸24の先部24bは軸受穴22から突き出されている。連結軸24は軸受穴22の端部に取り付けられたストッパリング25によって連結体20に抜け止めされている。
【0015】
連結軸24の基部24aには一対の連結軸側挿通孔26、26が、軸線と直交する平面内で軸線を挟んで互いに対称に配されて開設されている。連結体20の連結軸側挿通孔26、26と対向する位置には一対の連結体側挿通孔27、27が連結軸側挿通孔26、26と一直線を構成するように開設されている。
連結軸側挿通孔26、26および連結体側挿通孔27、27には回り止め部材としてのU字形ピン28が摺動自在に嵌入されている。U字形ピン28の湾曲側部には位置決めリング29が固定されており、位置決めリング29は連結体20の側面に突き当たってU字形ピン28を位置決めしている。U字形ピン28の一方の先端部にはストッパリング30がワッシャ30Aを介して装着されており、ストッパリング30はU字形ピン28が挿通孔26、27から抜けるのを阻止している。
【0016】
連結軸24の先部24bには四角柱形状のターンバックル31が同一軸線上に配置されて嵌合されており、ターンバックル31はねじ結合部32によって長さ方向の位置を調整可能に結合されている。ターンバックル31の外周にはスパナ等の工具(図示せず)を係合可能な工具係合部33が形成されている。工具を工具係合部33に係合してターンバックル31を回転操作することにより、ターンバックル31の連結体20に対する間隔を調整することができる。この間隔調整作業により、ウイング開閉装置10の全長を調整することができる。
ターンバックル31には取付孔34が軸線と直交して開設されており、取付孔34には枢軸35が回転自在に嵌入されている。枢軸35はウイング5に固定されたブラケット36によって回動自在に軸架されている。
【0017】
次に作用を説明する。
【0018】
電動シリンダ装置10はボデー3の天井付近に水平に配置されて、ボデー側取付部18がボデー3にブラケット19によって回動自在に軸架され、ターンバックル31がウイング5にブラケット36によって回動自在に軸架される。
この際、作業者が工具係合部33を介してターンバックル31を手動で回転させてター
ンバックル31の連結体20に対する間隔すなわちウイング開閉装置10の全長を調整することにより、ウイング5をボデー3に密接させる。
【0019】
ウイング5がボデー3に密接した閉鎖時には、
図2に示されているように、ウイング開閉装置10はピストン14がシリンダ11内に納まった状態になっている。
ウイング5を開放させるために、モータ16が正回転されると、雄ねじ軸12が減速機15を介して減速回転される。
この時、雌ねじ体13がピストン14、連結体20、連結軸24、ターンバックル31およびブラケット36を介してウイング5によって回り止めされているので、雌ねじ体13は雄ねじ軸12の回転に追従してシリンダ11内を移動する。雌ねじ体13に固定されたピストン14が雌ねじ体13の移動によって、シリンダ11内から突き出されて行くことにより、ウイング開閉装置10はウイング5を開放して行く。雌ねじ体13がシリンダ11内の末端に達すると、モータ16が自動的に停止される。
図4に示されたウイング開閉装置10の伸長時において、雌ねじ体13にはウイング5の荷重が印加するが、雌ねじ体13はウイング5によって回り止めされていることにより、回転不可能であるので、ウイング開閉装置10はウイング5の開放を維持する。
【0020】
ウイング5を閉鎖させるために、モータ16が逆回転されると、雄ねじ軸12が減速機15を介してウイング開放作動時と反対方向に減速回転される。
この時、雌ねじ体13がピストン14、連結体20、連結軸24、ターンバックル31およびブラケット36を介してウイング5によって回り止めされているので、雌ねじ体13は雄ねじ軸12の回転に追従してシリンダ11内を移動する。雌ねじ体13に固定されたピストン14が雌ねじ体13の移動によって、シリンダ11内に引き込まれて行くことにより、ウイング開閉装置10はウイング5を閉鎖して行く。雌ねじ体13がシリンダ11内の末端に達すると、モータ16が自動的に停止される。
【0021】
ウイング5を閉鎖させるモータ16の起動時に、雄ねじ軸12が回転しない場合には、ウイング5は閉鎖しない。
この場合には、ウイング5の予期しない閉鎖作動(例えば、ウイング5の急降下)に対処する前処置(例えば、ウイング5にロープを掛けておく)を実施した後に、非常時のウイング開閉装置10のU字形ピン28を連結体20から抜き出す。続いて、他方のウイング開閉装置10が正常である場合には、そのウイング開閉装置10のモータ16を逆回転させる。
U字形ピン28が連結体20から抜き出されると、連結体20の軸受穴22内で連結軸24が回転自在になるので、
図5に示されているように、ピストン14が回転自在になり、ウイング5の荷重が印加された雌ねじ体13は雄ねじ軸12周りを公転して雄ねじ軸12に沿ってシリンダ11内を予め設定された速度で移動して行く。
雌ねじ体13に固定されたピストン14が雌ねじ体13の移動によって、シリンダ11内に引き込まれて行くことにより、ウイング開閉装置10はウイング5を閉鎖して行く。雌ねじ体13がシリンダ11内の末端に達すると、正常なウイング開閉装置10のモータ16が自動的に停止される。
その後、ウイング5の予期しない開放作動(例えば、モータ16の誤作動)に対処する後処置(例えば、ウイング5を機械的にロックする)を実施し、ウイング車1が走行される。
【0022】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0023】
(1)モータのウイング閉鎖起動に際して雄ねじ軸が回転しない非常時に、U字形ピンを連結体から抜き出して連結体および連結軸を回転自在の状態に移行させることにより、雌ねじ体が公転して雄ねじ軸に沿ってシリンダ内を移動させることができるので、非常時に
ウイング開閉装置を閉鎖させることができ、もって、非常時後のウイング車の走行を確保することができる。
【0024】
(2)U字形ピンを連結体から抜き出す簡単な作業によってウイング開閉装置を非常時に閉鎖作動させることができるので、雄ねじ軸を手動で回転させる困難な作業を実施せずに、非常時にウイングを閉鎖することができる。
【0025】
(3)長い竿の先端にフックを取り付けた抜き出し専用ツール40(
図4参照)を使用してU字形ピンを抜き出すことにより、高所作業を回避することができる。
【0026】
(4)連結軸にターンバックルを装着することにより、ウイング開閉装置の全長を調整することができるので、ウイング車のボデーにウイングを適切に設備することができる。
【0027】
図6は本発明の第二実施形態を示している。
本実施形態が前記実施形態と異なる点は、連結軸側挿通孔26が連結軸24の基部24aに軸線と直交する平面内の中心に開設され、一対の連結体側挿通孔27、27が連結体20の連結軸側挿通孔26と対向する位置に連結軸側挿通孔26と一直線を構成するように開設されており、連結軸側挿通孔26および連結体側挿通孔27、27には回り止め部材としてのP字形ピン28Aが摺動自在に嵌入されているとともに、P字形ピン28Aの湾曲部が連結体20の外周部に係合されている点である。
本実施形態によれば、第一実施形態の位置決めリング29、ストッパリング30およびワッシャ30Aを省略することができるという効果が得られる。
【0028】
図7~
図9は本発明の第三実施形態を示している。
本実施形態において、本発明に係るウイング車のウイング開閉装置は、
図1に示されたウイング車のウイングの開閉を実施するものとして構成されている。
【0029】
図7に示されているように、電動シリンダ装置50は円筒形状のシリンダ51と、シリンダ51の中心線上に配置された雄ねじ軸52と、シリンダ51内の一端部に配置されて雄ねじ軸52に螺合されてボールネジ結合された雌ねじ体53と、減速機構55およびブレーキ機構57を介して雌ねじ体53に連結されモータ56によって回転されて雄ねじ軸52を直線運動させるスリーブ状回転子54と、を備えている。
モータ56はシリンダ51に固定された固定子および固定子の内側に回転自在に配置された電機子とを備えており、スリーブ状回転子54は電機子の内側に固着されている。
【0030】
図7に示されているように、雄ねじ軸52の雌ねじ体53側端はシリンダ51の端面から突出されており、雄ねじ軸52のシリンダ11からの突出端には円柱形状の連結体20が同一軸線上に配置されてねじ結合部21によって固定されている。連結体20には円柱形穴形状の軸受穴22が同一軸線上に配置されて形成されている。
軸受穴22の底面上にはスラスト軸受23が同一軸線上に配置されている。軸受穴22には円柱形状の連結軸24の基部24aが端面をスラスト軸受23に摺接されて回転自在に嵌入されており、連結軸24の先部24bは軸受穴22から突き出されている。連結軸24は軸受穴22の端部に取り付けられたストッパリング25によって連結体20に抜け止めされている。
連結軸24の基部24aには一対の連結軸側挿通孔26、26が、軸線と直交する平面内で軸線を挟んで互いに対称に配されて開設されている。連結体20における連結軸側挿通孔26、26と対向する位置には、一対の連結体側挿通孔27、27が連結軸側挿通孔26、26と一直線を構成するように開設されている。連結軸側挿通孔26、26および連結体側挿通孔27、27には回り止め部材としてのU字形ピン28が摺動自在に嵌入されている。
【0031】
連結軸24の先部24bには四角柱形状のターンバックル31が同一軸線上に配置されて嵌合されており、ターンバックル31はねじ結合部32によって長さ方向の位置を調整可能に結合されている。ターンバックル31の外周にはスパナ等の工具(図示せず)を係合可能な工具係合部33が形成されている。工具を工具係合部33に係合してターンバックル31を回転操作することにより、ターンバックル31の連結体20に対する間隔を調整することができる。この間隔調整作業により、ウイング開閉装置10の全長を調整することができる。
ターンバックル31には取付孔34が軸線と直交して開設されており、取付孔34には枢軸35が回転自在に嵌入されている。枢軸35はウイング5に固定されたブラケット36によって回動自在に軸架されている。
【0032】
次に作用を説明する。
電動シリンダ装置50はボデー3の天井付近に水平に配置されて、ボデー側取付部18がボデー3にブラケット19によって回動自在に軸架され、ターンバックル31がウイング5にブラケット36によって回動自在に軸架される。
この際、作業者が工具係合部33を介してターンバックル31を手動で回転させてターンバックル31の連結体20に対する間隔すなわちウイング開閉装置10の全長を調整することにより、ウイング5をボデー3に密接させる。
【0033】
ウイング5がボデー3に密接した閉鎖時には、
図7に示されているように、ウイング開閉装置50は雄ねじ軸52の大部分がシリンダ51内に納まった状態になっている。
ウイング5を開放させるために、モータ56が正回転されると、雌ねじ体53が減速機55を介して減速回転される。
この時、雄ねじ軸52が連結体20、連結軸24、ターンバックル31およびブラケット36を介してウイング5によって回り止めされているので、雄ねじ軸52は雌ねじ体53の回転によってシリンダ51から押し出されて行く。雄ねじ軸52がシリンダ51から押し出されて行くことにより、ウイング開閉装置10はウイング5を開放して行く。雄ねじ軸52が所定の位置に達すると、モータ56が自動的に停止される。
図8に示されたウイング開閉装置50の伸長時において、雄ねじ軸52にはウイング5の荷重が印加するが、雄ねじ軸52はウイング5によって回り止めされていることにより、回転不可能であるので、ウイング開閉装置10はウイング5の開放を維持する。
【0034】
ウイング5を閉鎖させるために、モータ56が逆回転されると、雌ねじ体53が減速機55を介してウイング開放作動時と反対方向に減速回転される。
この時、雄ねじ軸52が連結体20、連結軸24、ターンバックル31およびブラケット36を介してウイング5によって回り止めされているので、雄ねじ軸52は雌ねじ体53の回転によってシリンダ51に引き込まれて行く。雄ねじ軸52がシリンダ51内に引き込まれて行くことにより、ウイング開閉装置50はウイング5を閉鎖して行く。雄ねじ軸52が所定の位置に達すると、モータ56が自動的に停止される。
【0035】
ウイング5を閉鎖させるモータ56の起動時に、雌ねじ体53が回転しない場合には、ウイング5は閉鎖しない。
この場合には、ウイング5の予期しない閉鎖作動(例えば、ウイング5の急降下)に対処する前処置(例えば、ウイング5にロープを掛けておく)を実施した後に、
図9に示されているように、作業者は非常時のウイング開閉装置50のU字形ピン28を連結体20から抜き出す。続いて、他方のウイング開閉装置50が正常である場合には、そのウイング開閉装置50のモータ56を逆回転させる。
U字形ピン28が連結体20から抜き出されると、連結軸24が連結体20の軸受穴22内で回転自在になるので、雄ねじ軸52は雌ねじ体53にウイング5の荷重で押し付け
られることによって回転しながらシリンダ51内に予め設定された速度で引き込まれて行く。雄ねじ軸52がシリンダ51内に引き込まれて行くことにより、ウイング開閉装置50はウイング5を閉鎖して行く。雄ねじ軸52が所定の位置に達すると、正常なウイング開閉装置50のモータ56が自動的に停止される。
その後、ウイング5の予期しない開放作動(例えば、モータ16の誤作動)に対処する後処置(例えば、ウイング5を機械的にロックする)を実施し、ウイング車1が走行される。
【0036】
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0037】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0038】
例えば、回り止め部材としては、U字形ピンやP字形ピンを使用するに限らず、割りピンやボルトを使用してもよい。
【0039】
雄ねじ軸と雌ねじ体との間の摩擦を低減するためのボールネジ結合は、場合によっては省略してもよい。
【0040】
以上の実施形態においては、一対のウイング開閉装置がボデーの前後に配置されているウイング車について説明したが、本発明は単一のウイング開閉装置がボデーの中央に配置されているウイング車等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…ウイング車、2…トラック、3…ボデー(ウイングボデー)、4…支軸、5…ウイング、
10…電動シリンダ装置、11…シリンダ、12…雄ねじ軸、13…雌ねじ体、14…ピストン、15…減速機、16…モータ、17…ベース、18…ボデー側取付部、19…ブラケット、
20…連結体、21…ねじ結合部、22…軸受穴、23…スラスト軸受、24…連結軸、24a…基部、24b…先部、25…ストッパリング、26…連結軸側挿通孔、27…連結体側挿通孔、28…U字形ピン(回り止め部材)、28A…P字形ピン(回り止め部材)、29…位置決めリング、30…ストッパリング、30A…ワッシャ、
31…ターンバックル、32…ねじ結合部、33…工具係合部、34…取付孔、35…枢軸、36…ブラケット、
40…抜き出し専用ツール。
50…電動シリンダ装置、51…シリンダ、52…雄ねじ軸、53…雌ねじ体、54…スリーブ状回転子、55…減速機構、56…モータ、57…ブレーキ機構。