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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】提案支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20230101AFI20241224BHJP
【FI】
G06Q30/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024103438
(22)【出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500461549
【氏名又は名称】株式会社アイズファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴正
(72)【発明者】
【氏名】劉 瑞興
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079302(JP,A)
【文献】特開2020-155097(JP,A)
【文献】特開2016-076208(JP,A)
【文献】米国特許第11836170(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生成AIに複数の提案候補を生成するように指示する第1のプロンプトを作成する第1プロンプト作成モジュールと、
複数の過去の提案を含む過去の提案データであって、前記過去の提案の各々の特徴を示す第1の説明変数と約定成否を示す目的変数とを含む前記過去の提案データを取得し、前記第1の説明変数と前記目的変数との関係を示すモデルを作成するモデル作成モジュールと、
前記提案候補の各々の特徴を示す第2の説明変数を生成するように、第2の生成AIに指示する第2のプロンプトを作成する第2プロンプト作成モジュールと、
前記第2の説明変数を前記モデルに入力して前記提案候補の各々の第1のスコアを算出するスコアリングモジュールと、
を含む、提案支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載された提案支援装置であって、
前記第2のプロンプトは、前記提案候補の各々に類似する前記過去の提案の前記第1の説明変数に基づいて前記第2の説明変数を生成するように、前記第2の生成AIに指示する、
提案支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載された提案支援装置であって、
前記第1のスコアに基づいて選定された前記提案候補からキーワードを抽出し、前記キーワードの潜在スコアを算出する潜在スコア算出モジュールと、
前記選定された提案候補のプレゼンテーション資料を生成するように第3の生成AIに指示する第3のプロンプトを作成する第3プロンプト作成モジュールと、
をさらに含み、
前記スコアリングモジュールは、さらに、前記第1の説明変数を前記モデルに入力して前記過去の提案の各々の第2のスコアを算出し、
前記潜在スコア算出モジュールは、前記キーワードで前記過去の提案データを検索し、検索された過去の提案データの前記第2のスコアに基づいて前記潜在スコアを算出し、
前記第3プロンプト作成モジュールは、前記潜在スコアに基づいて選定されたキーワードを前記プレゼンテーション資料に含めるように前記第3のプロンプトを作成する、
提案支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、客先に対する営業活動のための新規提案を支援する提案支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
客先に対して如何に魅力的な提案をできるかは、営業活動において非常に重要である。提案の内容はもちろんのこと、その魅力を的確に伝えるための訴求力のある表現も大事な要素となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-120803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、要求仕様の情報を含む新たな引合書を受け付け、当該新たな引合書に対応する応札仕様の情報を含む提案書の作成を支援する作成支援装置が記載されている。特許文献1においては、新たな引合書に含まれる内容に関し、過去の引合書又は過去の提案書に含まれる内容との類似度を求め、当該類似度を利用して、過去の引合書に関連付けられる履歴データから、提案書の作成に役立つ内容を抽出する。
【0005】
しかし、特許文献1は過去の履歴データから内容を抽出するものであるので、新しい提案を創出することはできない。また、特許文献1の提案は新たな引合書に記された要求仕様に従うようになっており、提案の内容は要求仕様に縛られ、新しい提案を創出するには不向きである。
【0006】
本発明の1つの態様は、生成AIに提案候補を生成させることで過去の提案に縛られない斬新な提案候補の創出を可能にするとともに、過去になされた別の提案内容とその約定成否に基づいて、生成AIによる提案候補を評価することで、突飛な提案候補など約定の期待度が低いものを除外できる提案支援装置に関連している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点に係る提案支援装置は、
第1の生成AIに複数の提案候補を生成するように指示する第1のプロンプトを作成する第1プロンプト作成モジュールと、
複数の過去の提案を含む過去の提案データであって、前記過去の提案の各々の特徴を示す第1の説明変数と約定成否を示す目的変数とを含む前記過去の提案データを取得し、前記第1の説明変数と前記目的変数との関係を示すモデルを作成するモデル作成モジュールと、
前記提案候補の各々の特徴を示す第2の説明変数を生成するように、第2の生成AIに指示する第2のプロンプトを作成する第2プロンプト作成モジュールと、
前記第2の説明変数を前記モデルに入力して前記提案候補の各々の第1のスコアを算出するスコアリングモジュールと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る提案支援装置1と、提案支援装置1に接続される外部装置とを示す。
図2図2は、第1の実施形態に係る提案支援装置1の機能及び動作を示す。
図3A図3Aは、第1の実施形態において第1のプロンプトを作成するためのユーザ入力項目の例を示す。
図3B図3Bは、生成AI3に送信される第1のプロンプトの例を示す。
図3C図3Cは、図3Bに示される第1のプロンプトに対する生成AI3からの応答の例を示す。
図4図4は、第1の実施形態においてモデルを作成するための過去の提案データの例を示す。
図5図5は、第1の実施形態において生成される説明変数の一覧を示す。
図6A図6Aは、変数B1を第2の説明変数として求める場合に生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。
図6B図6Bは、変数P1~P3を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。
図6C図6Cは、変数R3を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。
図6D図6Dは、変数R4を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。
図6E図6Eは、変数R5を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。
図6F図6Gは、変数R6を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。
図7図7は、第1の実施形態において生成される提案候補データの例を示す。
図8図8は、第2の実施形態に係る提案支援装置1aの機能及び動作を示す。
図9図9は、潜在スコア算出モジュール16が潜在スコアを算出する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明される各実施形態は、本発明の一例を示すものであって、本発明の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作のすべてが本発明の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
<1.第1の実施形態>
<1-1.構成>
図1は、第1の実施形態に係る提案支援装置1と、提案支援装置1に接続される外部装置とを示す。提案支援装置1は、図示しないCPU及びメモリ等を備えたコンピュータシステムである。提案支援装置1は、1台のコンピュータで構成されてもよいし、ネットワークで接続された複数台のコンピュータで構成されてもよい。提案支援装置1は、データベース2及び生成AI3等の外部装置と接続されている。
【0011】
データベース2は、過去の提案データ及びその他のデータを記憶している。データベース2は1つのストレージにデータが格納されたものに限られず、複数のストレージに分散してデータが格納されたものでもよい。提案支援装置1は、データベース2から各種データを取得し、プロンプト作成、モデル作成、及びスコアリング等の処理を行う。
【0012】
生成AI3は、大規模言語モデル(LLM)を含む。大規模言語モデルは、大量のテキストデータとディープラーニング技術とを用いて構築された言語モデルであり、提案支援装置1から送信されるプロンプトに応じて、テキスト生成、翻訳、質問への応答、テキスト要約、感情分析等のタスクを処理する。大規模言語モデルはアテンション(attention)機構を備えることが望ましい。アテンション機構は、入力の中から重要な部分を抽出する機構であり、大規模言語モデルの処理速度及び精度の向上に大きく寄与している。
【0013】
生成AI3は、画像生成AIをさらに含んでもよい。画像生成AIは、テキストで記述されたプロンプトから画像を生成するシステムであり、例えば拡散(diffusion)モデルが用いられる。なお、以下の説明における「画像」は動画でもよい。生成AI3は、プレゼンテーション資料生成AIをさらに含んでもよい。
【0014】
提案支援装置1は、生成AI3にプロンプトを送信し、生成AI3からの出力を取得する。
【0015】
<1-2.機能及び動作>
図2は、第1の実施形態に係る提案支援装置1の機能及び動作を示す。提案支援装置1は、第1プロンプト作成モジュール11と、第2プロンプト作成モジュール12と、モデル作成モジュール13と、スコアリングモジュール14と、提案選定モジュール15とを含む。これらのモジュールは、提案支援装置1に含まれるメモリにプログラムがロードされ、CPUにより実行されることによって実現される。
【0016】
データベース2に記憶された過去の提案データは、複数の過去の提案の各々について、テキストと、実際の提案書等と、第1の説明変数と、目的変数とを含む。過去の提案データの詳細については図4を参照しながら後述する。
【0017】
第1プロンプト作成モジュール11は、提案相手に関する情報などのユーザ入力を受け付けて、複数の提案候補を生成するように生成AI3に指示する第1のプロンプトを作成する。第1のプロンプト作成の具体例については図3A図3Cを参照しながら後述する。
【0018】
第2プロンプト作成モジュール12は、生成AI3によって生成された複数の提案候補を取得し、提案候補から第2の説明変数を生成するように生成AI3に指示する第2のプロンプトを作成する。第2の説明変数は、提案候補のテキストのみに基づいて作成されるとは限らず、過去の提案のテキストを参照して作成されたり、過去の提案の実際の提案書等を参照して作成されたり、過去の提案の第1の説明変数を参照して作成されたりすることがある。第2のプロンプト作成の具体例については図6A図6Fを参照しながら後述する。
【0019】
モデル作成モジュール13は、学習対象である複数の過去の提案の各々の第1の説明変数及び目的変数をデータベース2から取得し、第1の説明変数と目的変数との組み合わせから機械学習を行って、第1の説明変数と目的変数との関係を示すモデルを作成する。
【0020】
スコアリングモジュール14は、予測対象である複数の提案候補の各々の第2の説明変数を生成AI3から取得し、第2の説明変数をモデルに入力して、複数の提案候補の各々の第1のスコアを算出する。
【0021】
提案選定モジュール15は、第1のスコアに基づいて、複数の提案候補のうちの1つ又は複数の提案を選定する。
【0022】
本願において、第1のプロンプトに応じて提案候補を生成する生成AI3を第1の生成AIといい、第2のプロンプトに応じて第2の説明変数を生成する生成AI3を第2の生成AIということがある。また第3のプロンプトに応じてプレゼンテーション資料を生成する生成AI3(図8参照)を第3の生成AIということがある。第1~第3の生成AIは同一の生成AIでもよいし、別々の生成AIでもよい。
【0023】
<1-3.第1のプロンプトの詳細>
図3Aは、第1の実施形態において第1のプロンプトを作成するためのユーザ入力項目の例を示す。ユーザは、提案支援装置1の図示しない入力装置、あるいは提案支援装置1にネットワークを介して接続された図示しないコンピュータの入力装置から、提案相手(例:専門会社)や提案目的物(例:商品の広告ページを製作)を指定することができる。ユーザが提案相手や提案目的物を具体的に又は狭い範囲に限定したい場合は具体的な情報を入力できる。あるいは、ユーザが提案相手や提案目的物を限定したくない場合は、提案相手の属性、会社名、参考情報などの具体的な情報は入力しなくてもよい。
【0024】
図3Bは、生成AI3に送信される第1のプロンプトの例を示す。第1プロンプト作成モジュール11は、ユーザによる入力情報に基づいて提案相手及び提案目的物を説明するための説明文(例:商品の広告ページを制作する専門会社があります。)と、生成AI3に提案候補を生成させるための定型文(例:この会社から仕事をもらうための提案アイデアを10個出してください。)と、を含む第1のプロンプトを作成する。第1のプロンプトの作成にあたっては、ユーザによる入力情報を生成AI3に与えて上述の説明文を生成AI3に作成させてもよい。上述の定型文は予め記憶されたものでもよい。生成AI3に生成させる提案候補の数は10個である場合に限られず、100個程度でもよい。
【0025】
図3Cは、図3Bに示される第1のプロンプトに対する生成AI3からの応答の例を示す。生成AI3は第1のプロンプトによって与えられた情報を用いて、また不足する情報については確率的に最もあり得る内容を補充することで、複数の提案候補を生成する。生成AI3が生成した提案候補は図7に「テーマ」及び「概要」として再掲される。
【0026】
<1-4.モデル作成の詳細>
図4は、第1の実施形態においてモデルを作成するための過去の提案データの例を示す。過去の提案データは、複数の過去の提案の各々について、IDと、テキストと、第1の説明変数と、目的変数と、を含み、さらには図示しない実際の提案書等を含む。なお、第2のスコアについては第1の実施形態において必要な情報ではなく、図8を参照しながら後述される。
【0027】
テキストは、テーマと、概要と、分野と、を含み、過去に実際に提案された際に人手で入力された内容をそのまま用いることができる。
【0028】
第1の説明変数は、変数B0~B11、変数P1~P3、及び変数R1~R6を含み、これらの具体的な内容については図5を参照しながら後述する。第1の説明変数は提案支援装置1が生成し、あるいは生成AI3に生成させることができ、その方法については第2の説明変数の生成方法と併せて説明する。
【0029】
目的変数は、過去に実際に提案された際の約定成否を1又は0の数値で示す。
【0030】
モデル作成モジュール13は、複数の過去の提案についての第1の説明変数と目的変数とに基づいて、第1の説明変数と目的変数との関係を示す関数をモデルとして作成する。
【0031】
<1-5.変数生成の詳細>
図5は、第1の実施形態において生成される説明変数の一覧を示す。第1の説明変数を用いて作成されたモデルに第2の説明変数を入力するので、第1の説明変数と第2の説明変数とで説明変数の項目は共通である。しかし、過去の提案の特徴を示す第1の説明変数と、新規な提案候補の特徴を示す第2の説明変数とでは、提案の実績データの有無が異なるので、説明変数の生成方法が異なる場合がある。
【0032】
<1-5-1.変数B0~B11>
変数B0~B11は、提案データのテキスト又は実際の提案書等の内容から導かれる変数である。
【0033】
変数B0は提案データのテキストに含まれる分野を産業分類などのコードに変換して得られる。
【0034】
変数B1~B11は、第1の説明変数として求める場合は主に実際の提案書等の内容から得られ、あるいは提案データのテキスト、又はその他のデータから得られる。生成AI3に実際の提案書等の内容、提案データのテキスト、又はその他のデータを与えて変数B1~B11を生成させてもよい。その他のデータから得られる変数としては、提案の経緯(例:「紹介」に値1、「公募」に値0)、実施する形態(例:「協業」に値1、「請負」に値0)などの提案行為に関する属性情報が追加されてもよいし、提案者の人数又は提案者の属性情報が追加されてもよい。
一方、変数B1~B11を第2の説明変数として求める場合は、実際の提案書がないので、以下のように第1の説明変数とは異なる生成方法がとられる。
【0035】
図6Aは、変数B1を第2の説明変数として求める場合に生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。第2プロンプト作成モジュール12は、生成AI3に対し、複数の過去の提案(図4参照)のテキスト及び提案候補(図7参照)のテキストを与え、過去の提案のうちの提案候補とのテーマの類似度上位5件を抽出させ、上位5件の過去の提案の変数B1を約定成否で加重平均させる。約定成否で加重平均(例えば、成で重み1、否で重み0.5)することで、成のデータがより重視される。このように、提案候補に実績データはないが、類似する過去の提案の変数B1を用いることで、提案候補の変数B1を生成できる。提案候補の変数B2~B11についても同様に生成できる。ここでは類似度上位5件を抽出する場合について説明したが、5件でなくてもよい。また約定成否で加重平均する場合について説明したが、さらに類似度による加重を行ってもよい。
【0036】
提案候補の変数B1~B3は、この提案候補の内容を実際に提案する際の見積り金額、見積り人員数、見積り工期としてそれぞれ用いることもできる。提案候補の変数B1~B3の各々は過去の提案の約定成否で加重平均されているので、より成の結果を期待できる見積りを提示できる。
【0037】
<1-5-2.変数P1~P3>
図5を再び参照し、変数P1~P3は、提案データのテキストのみから導かれる変数である。変数P1~P3は例示であり、例えば観点を分解するなどして変数をさらに増やしてもよい。
【0038】
図6Bは、変数P1~P3を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例を示す。第2プロンプト作成モジュール12は、生成AI3に対し、提案候補(図7参照)のテキストを与え、難易度、収益性、及びコストを評価するように要求する。図6Bには変数P1~P3を第2の説明変数として求めるための第2のプロンプトが示されているが、第1の説明変数についても同様でよい。
【0039】
<1-5-3.変数R1~R6>
図5を再び参照し、変数R1~R6は、過去の提案データを参照して導かれる変数である。変数R1~R6は例示であり、例えば観点を分解するなどして変数をさらに増やしてもよい。
【0040】
変数R1は、テーマのキーワードによる過去の提案データの検索ヒット件数であり、同じキーワードを含む提案が多いほど大きな値となる。変数R2は、テーマのキーワードによる検索でヒットする過去の実際の提案書等(提案書、見積書、仕様書、議事録、日報など)の種類数であり、より高い提案フェーズに達した実績があるほど大きな値となる。変数R1及びR2は、テーマからのキーワード切り出しの処理と、検索の処理と、を行うことによって得ることができる。これらの処理は提案支援装置1が行ってもよいし、生成AI3に行わせてもよい。
【0041】
変数R3(課題の評価)、変数R4(実現方法の評価)、変数R5(変数P1、P2、P3の評価)、及び変数R6(変数B1、B2、B3の評価)は、RAG(retrieval-augmented generation)という手法を用いて生成AI3に生成させることができる。変数R3~R6を求めるために生成AI3に送信される第2のプロンプトの例が、それぞれ図6C図6Fに示されている。これらの図には変数R3~R6を第2の説明変数として求めるための第2のプロンプトが示されているが、第1の説明変数についても同様でよい。但し、参考にすべき過去の提案データが存在しない場合、あるいは十分な数がない場合に、変数R3~R6を第1の説明変数として求めるときは過去の提案データを参考にしなくてもよい。
【0042】
<1-6.スコアリングの詳細>
図7は、第1の実施形態において生成される提案候補データの例を示す。提案候補データは、複数の提案候補の各々について、IDと、テキストと、第2の説明変数と、を含む。
【0043】
テキストは、テーマと、概要と、分野と、を含み、テーマ及び概要は図3Cにおいて生成された提案候補のテキストがそのまま用いられ、分野は図3Aにおいてユーザが入力した提案目的物から得られる。
【0044】
図7には、第2の説明変数をモデルに入力して得られた第1のスコアが併せて示されている。第1のスコアは、過去の提案データにおける目的変数に対応する値、すなわち、提案候補の各々が約定成立となる確率を示す値となる。第1のスコアが大きいほど、提案が客先に受け入れられる確率が高いので、第1のスコアが大きい提案候補を選定することで、約定の期待度が高い提案を行うことができる。
【0045】
<1-7.効果>
第1の実施形態によれば、提案支援装置1は、
生成AI3に複数の提案候補を生成するように指示する第1のプロンプトを作成する第1プロンプト作成モジュール11と、
複数の過去の提案を含む過去の提案データであって、過去の提案の各々の特徴を示す第1の説明変数と約定成否を示す目的変数とを含む過去の提案データを取得し、第1の説明変数と目的変数との関係を示すモデルを作成するモデル作成モジュール13と、
提案候補の各々の特徴を示す第2の説明変数を生成するように、生成AI3に指示する第2のプロンプトを作成する第2プロンプト作成モジュール12と、
第2の説明変数をモデルに入力して提案候補の各々の第1のスコアを算出するスコアリングモジュール14と、
を含む。
【0046】
これによれば、生成AI3に新規な提案候補を生成させ、過去の提案データに基づいて第1のスコアを算出することにより、過去の提案の焼き直しにとどまらない自由な発想を取得したうえで、第1のスコアによって約定成否の期待度を評価できる。生成AI3にはプロンプトの要求から外れた応答を示す幻想という現象があり得るが、突飛な提案は第1のスコアを用いて排除できるので、この現象は新規提案の生成という観点ではむしろ都合がよく、生成AI3の完全性を求めなくてもその能力を生かすことができる。
【0047】
第1の実施形態によれば、第2のプロンプトは、提案候補の各々に類似する過去の提案の第1の説明変数に基づいて第2の説明変数を生成するように、生成AI3に指示する。
【0048】
これによれば、実績のない提案候補であっても第2の説明変数を生成できるので、第2の説明変数の欠損を埋めることができる。また、第1の説明変数に基づいて生成される第2の説明変数と、第1の説明変数に基づかずに生成される第2の説明変数とを併せて使用することで、提案候補の高精度な評価を行うことができる。
【0049】
<2.第2の実施形態>
<2-1.機能及び動作>
図8は、第2の実施形態に係る提案支援装置1aの機能及び動作を示す。提案支援装置1aは、図2を参照しながら説明した提案支援装置1に含まれる各種モジュールの他に、潜在スコア算出モジュール16と、コンテンツ情報取得モジュール17と、第3プロンプト作成モジュール18と、をさらに含む。これらのモジュールは、提案支援装置1aに含まれるメモリにプログラムがロードされ、CPUにより実行されることによって実現される。
【0050】
データベース2に記憶された過去の提案データは、過去の提案の各々の第2のスコアをさらに含む。第2のスコアは、スコアリングモジュール14が、第1の説明変数をモデルに入力することによって得られる。第2のスコアの例が図4に記載されている。
【0051】
潜在スコア算出モジュール16は、提案選定モジュール15で選定された提案のテキスト(図7参照)に含まれるキーワードについて、図9に示される方法で潜在スコアを算出する。潜在スコアは、成約に寄与し得るキーワード自体の潜在力を示す。
【0052】
図9は、潜在スコア算出モジュール16が潜在スコアを算出する処理を示すフローチャートである。161において、潜在スコア算出モジュール16は選定された提案のテキストからキーワードを抽出する。162において、潜在スコア算出モジュール16は抽出されたキーワードで過去の提案を検索する。162における検索は一致検索に限らず、類似検索でもよい。163において、潜在スコア算出モジュール16は検索された過去の提案の第2のスコアを約定成否で加重平均(例えば、成で重み1、否で重み0.5)する。そのキーワードを含む過去の提案の第2のスコアが高く、且つ実際に約定しているほど、高い潜在スコアが得られる。潜在スコアの高いキーワードをプレゼンテーション資料で使用することで、成約の可能性を高めることができる。
【0053】
図8を再び参照し、コンテンツ情報取得モジュール17は、自社(提案者となる会社)の図示しないデータベースを検索し、あるいはWEBを検索することにより、自社の商品情報やWEBページなど、プレゼンテーション資料のもとになるコンテンツ情報を取得する。
【0054】
第3プロンプト作成モジュール18は、提案選定モジュール15で選定された提案のデータ(テキスト、変数B1~B3など)と、コンテンツ情報と、に基づいてプレゼンテーション資料を作成するように生成AI3に指示する第3のプロンプトを作成する。
【0055】
第3のプロンプトは、訴求効果の高いプレゼンテーション用のテキストを生成するように生成AI3に指示するプロンプトを含む。第3のプロンプトは、プレゼンテーション用のテキストに潜在スコアが高いキーワードを必ず含めることを指示したり、プレゼンテーション用のテキストにおいて潜在スコアが高いキーワードを複数回用いることを指示したりすることが望ましい。
【0056】
第3のプロンプトは、訴求効果の高いプレゼンテーション用の画像を生成するように生成AI3に指示するプロンプトを含む。画像を生成するように生成AI3に指示する第3のプロンプトには潜在スコアが高いキーワードを含めるようにすることが望ましく、第3のプロンプトは生成AI3に作成させてもよい。
【0057】
第3のプロンプトは、これらの生成されたテキスト及び画像を用いてプレゼンテーション資料を作成するように生成AI3に指示するプロンプトを含む。
【0058】
<2-2.効果>
第2の実施形態によれば、提案支援装置1aは、
第1のスコアに基づいて選定された提案候補からキーワードを抽出し、キーワードの潜在スコアを算出する潜在スコア算出モジュール16と、
選定された提案候補のプレゼンテーション資料を生成するように生成AI3に指示する第3のプロンプトを作成する第3プロンプト作成モジュール18と、
をさらに含み、
スコアリングモジュール14は、さらに、第1の説明変数をモデルに入力して過去の提案の各々の第2のスコアを算出し、
潜在スコア算出モジュール16は、キーワードで過去の提案データを検索し、検索された過去の提案データの第2のスコアに基づいて潜在スコアを算出し、
第3プロンプト作成モジュール18は、潜在スコアに基づいて選定されたキーワードをプレゼンテーション資料に含めるように第3のプロンプトを作成する。
【0059】
これによれば、潜在スコアに基づいて選定されたキーワードを用いることで、訴求力の高いプレゼンテーション資料を作成できる。
【符号の説明】
【0060】
1、1a...提案支援装置、2...データベース、3...生成AI、11...第1プロンプト作成モジュール、12...第2プロンプト作成モジュール、13...モデル作成モジュール、14...スコアリングモジュール、15...提案選定モジュール、16...潜在スコア算出モジュール、17...コンテンツ情報取得モジュール、18...第3プロンプト作成モジュール
【要約】      (修正有)
【課題】客先に対する営業活動のための新規提案を支援する提案支援装置を提供する。
【解決手段】提案支援装置1は、生成AI3に複数の提案候補を生成するように指示する第1のプロンプトを作成する第1プロンプト作成モジュール11と、複数の過去の提案を含む過去の提案データであって、過去の提案の各々の特徴を示す第1の説明変数と約定成否を示す目的変数とを含む過去の提案データを取得し、第1の説明変数と目的変数との関係を示すモデルを作成するモデル作成モジュール13と、提案候補の各々の特徴を示す第2の説明変数を生成するように、生成AI3に指示する第2のプロンプトを作成する第2プロンプト作成モジュール12と、第2の説明変数をモデルに入力して提案候補の各々の第1のスコアを算出するスコアリングモジュール14と、を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9