(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】整髪用噴霧組成物、整髪用噴霧製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/69 20060101AFI20241224BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241224BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241224BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A61K8/69
A61K8/81
A61K8/34
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2020127574
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2020035897
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横木 亜矢子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0069553(US,A1)
【文献】特開2019-034911(JP,A)
【文献】特開2012-229347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイリング用樹脂と、溶剤とを含み、
前記溶剤は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む、整髪用噴霧組成物。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、整髪用噴霧組成物中、50~95質量%である、請求項1記載の整髪用噴霧組成物。
【請求項3】
前記ハイドロフルオロオレフィンとアルコールとの質量比は、50:50~97:3である、請求項1または2記載の整髪用噴霧組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の整髪用噴霧組成物と、圧縮ガスとが、耐圧容器に充填された、整髪用噴霧製品。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の整髪用噴霧組成物が、加圧式噴霧容器に充填された、整髪用噴霧製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪用噴霧組成物、整髪用噴霧製品に関する。より詳細には、本発明は、乾燥性が優れ、優れたセット力を有する整髪用噴霧組成物、整髪用噴霧製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタイリング用のエアゾール製品が開発されている。特許文献1には、スタイリング用樹脂と、アルコールと、噴射剤(沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン)とを含む整髪用エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2013/0280178号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、火気に対する安全性を考慮して、沸点が-19℃であり、燃焼性の低いハイドロフルオロオレフィンを使用している。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、沸点が-19℃の噴射剤であるため、噴霧すると、毛髪へ付着するまでに噴射剤のほとんどが揮発し、噴霧された粒子は微細になるものの毛髪への付着性が悪く、また、乾燥が遅いため、スタイリング用樹脂の効果が充分に得られない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、乾燥性が優れ、優れたセット力を有する整髪用噴霧組成物、整髪用噴霧製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)スタイリング用樹脂と、溶剤とを含み、前記溶剤は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む、整髪用噴霧組成物。
【0008】
このような構成によれば、整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい大きさの粒子を形成しやすく、毛髪に付着した付着物中にハイドロフルオロオレフィンが残留しやすい。これにより、付着物は、非常に短い時間で乾燥し、毛髪上でスタイリング用樹脂による皮膜を形成しやすく、スタリング用樹脂の効果を発揮しやすく、優れたセット力が得られやすい。また、溶剤は、スタイリング用樹脂の溶解度に優れているため、スタイリング用樹脂がバルブや噴霧部材の通路で詰まりにくい。
【0009】
(2)前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、整髪用噴霧組成物中、50~95質量%である、(1)記載の整髪用噴霧組成物。
【0010】
このような構成によれば、整髪用噴霧組成物は、より優れた乾燥性およびセット力が得られやすい。
【0011】
(3)前記ハイドロフルオロオレフィンとアルコールとの質量比は、50:50~97:3である、(1)または(2)記載の整髪用噴霧組成物。
【0012】
このような構成によれば、整髪用噴霧組成物は、乾燥性が特に優れ、より優れたセット力が得られやすい。
【0013】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の整髪用噴霧組成物と、圧縮ガスとが、耐圧容器に充填された、整髪用噴霧製品。
【0014】
このような構成によれば、整髪用噴霧製品は、整髪用噴霧組成物を圧縮ガスの圧力で連続的に噴霧することができる。噴霧された粒子は、毛髪に付着しやすい大きさで噴霧されやすく、かつ、消費者が吸入しにくい。また、噴霧された整髪用噴霧組成物は、スタイリング用樹脂と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンおよびアルコールを含む溶剤とを含む。整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい。また、付着物は乾燥性が優れ、毛髪上でスタイリング用樹脂が皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られる。
【0015】
(5)(1)~(3)のいずれかに記載の整髪用噴霧組成物が、加圧式噴霧容器に充填された、整髪用噴霧製品。
【0016】
このような構成によれば、整髪用噴霧製品は、整髪用噴霧組成物を加圧して噴霧することができる。噴霧された粒子は、毛髪に付着しやすい大きさに噴霧されやすく、かつ、消費者が吸入しにくい。また、噴霧された整髪用噴霧組成物は、スタイリング用樹脂と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンおよびアルコールを含む溶剤とを含む。整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい。また、付着物は乾燥性が優れ、毛髪上でスタイリング用樹脂が皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乾燥性が優れ、優れたセット力を有する整髪用噴霧組成物、整髪用噴霧製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1の整髪用噴霧製品を用いて付着性試験を行った後の毛束の外観写真である。
【
図2】
図2は、比較例1の整髪用噴霧製品を用いて付着性試験を行った後の毛束の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<整髪用噴霧組成物>
本発明の一実施形態の整髪用噴霧組成物は、スタイリング用樹脂と、溶剤とを含む。溶剤は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む。以下、それぞれについて説明する。
【0020】
(スタイリング用樹脂)
スタイリング用樹脂は、毛髪をセットするために配合される。
【0021】
スタイリング用樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、スタイリング用樹脂は、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーTEA、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/アルキルアクリルアミド)コポリマーAMP、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/アルキルアクリルアミド)コポリマーTEAなどのアクリル樹脂アルカノールアミン液などのアニオン型樹脂、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸オクチルアミド-アクリル酸ヒドロキシプロピル-メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体などの両性型樹脂、ビニルピロリドン-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどのカチオン型樹脂、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョンなどのエマルジョン型樹脂、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル-アクリル酸ブチル-アクリル酸メトキシエチル共重合体などのノニオン型樹脂等である。スタイリング用樹脂は、併用されてもよい。
【0022】
スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、特に限定されない。一例を挙げると、スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、整髪用噴霧組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、整髪用噴霧組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。スタイリング用樹脂の含有量(固形分)が上記範囲内であることにより、整髪用噴霧組成物は、優れたセット力を示しやすい。
【0023】
(溶剤)
溶剤は、スタイリング用樹脂を整髪用噴霧組成物中に溶解させて均一相を形成し、整髪用噴霧組成物を毛髪に付着しやすい大きさの粒子を形成し、均一に噴霧するとともに、毛髪に付着して乾燥性を調整するために配合される。また、溶剤は、噴射された整髪用噴霧組成物によって形成される皮膜の付着状態等を調整するために配合される。
【0024】
溶剤は、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む。
【0025】
・沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィン
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、スタイリング用樹脂を溶解して安定した整髪用噴霧組成物を形成し、噴霧容器の通路で詰まりにくくする、噴射物の粒子径や乾燥性を調整するなどのために配合される。
【0026】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)等である。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、併用されてもよい。
【0027】
沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、整髪用噴霧組成物中、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、整髪用噴霧組成物中、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましい。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着した際に付着物の乾燥性を高くし、スタイリング用樹脂が皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られやすい。また、整髪用噴霧組成物は、スタリング用樹脂の溶解性に優れているため、バルブや噴霧部材の通路で詰まりにくい。ここで、技術常識によれば、噴霧された噴霧用組成物の乾燥性を向上させるためには、沸点の低い液化ガス(たとえば、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン等)を配合することが考えられる。しかしながら、本実施形態では、このような技術常識とは真逆に、あえて、従来使用されていた沸点が5℃未満の噴射剤に代えて、さらに沸点の高い沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンを配合することにより、毛髪に噴霧された噴霧用組成物の乾燥性が改善されることを見出したものである。また、それにより優れたセット力が得られることも見出した。
【0028】
・アルコール
アルコールは、上記したスタイリング用樹脂や、ハイドロフルオロオレフィンを安定に溶解し、均一な整髪用噴霧組成物を形成するための溶媒として配合される。また、アルコールは、噴霧された整髪用噴霧組成物によって形成される皮膜の乾燥性や伸縮性等を調整するために配合される。
【0029】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコールである。
【0030】
アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、整髪用噴霧組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、整髪用噴霧組成物中、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい粒子径となるよう噴霧されやすく、消費者が吸入しにくい。また、噴霧された粒子は、優れた乾燥性およびセット力が得られやすい。
【0031】
・任意成分
本実施形態の整髪用噴霧組成物は、上記したスタリング用樹脂、溶剤に加え、任意成分として、適宜有効成分を含んでもよい。有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ヒアルロン酸などの保湿剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、アルミニウム粉末、シリカ、酸化鉄などの顔料、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、赤色2号、赤色3号、青色1号、青色2号などの染料、ポリソルベート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤、油脂、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、シリコーンなどの各種オイル成分などである。
【0032】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、整髪用噴霧組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、整髪用噴霧組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、得られる整髪用噴霧組成物は、有効成分を配合することによる所望の効果が得られやすい。
【0033】
整髪用噴霧組成物全体の説明に戻り、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとの質量比は、50:50~97:3であることが好ましく、55:45~95:5であることがより好ましい。沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとアルコールとの質量比が上記範囲内であることにより、整髪用噴霧組成物は、乾燥性が特に優れ、より優れたセット力が得られやすい。
【0034】
整髪用噴霧組成物の調製方法は特に限定されない。整髪用噴霧組成物は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、整髪用噴霧組成物は、上記スタイリング用樹脂、アルコールや有効成分などの任意成分を混合し、これにハイドロフルオロオレフィンを添加することにより調製され得る。
【0035】
以上、本実施形態の整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい大きさの粒子を形成しやすく、毛髪に付着した付着物中にハイドロフルオロオレフィンが残留しやすい。これにより、付着物は、非常に短い時間で乾燥する。また、付着物は、乾燥することにより、毛髪上でスタイリング用樹脂の皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られやすい。
【0036】
<整髪用噴霧製品>
上記した整髪用噴霧組成物は、適宜の容器等に充填されることにより、整髪用噴霧製品として使用され得る。
【0037】
(第1の実施形態)
本発明の一実施形態の整髪用噴霧製品は、上記した整髪用噴霧組成物と、圧縮ガスとが、耐圧容器に充填された整髪用噴霧製品である。
【0038】
・圧縮ガス
圧縮ガスは、整髪用噴霧組成物を加圧して外部に噴霧する噴射剤として配合される。
【0039】
圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。特に、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンへの溶解量が多い二酸化炭素、亜酸化窒素を用いる場合は、後述するハウジングにベーパータップ孔を設けることができる。その結果、整髪用噴霧製品は、毛髪に付着しやすい大きさの粒子を形成しやすく、火炎長試験で火炎長をなくすことができる。
【0040】
圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.3MPaとなるように充填されることが好ましく、0.4MPa以上となるように充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が1.0MPa以下となるように充填されることが好ましく、0.8MPa以下となるように充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい大きさの粒子を形成しやすく、適量が噴霧されやすい。
【0041】
整髪用噴霧組成物は、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンによる付着物の乾燥効果を阻害しない範囲で、液化ガスが併用されてもよい。
【0042】
液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、沸点5℃未満のハイドロフルオロオレフィン(HFO-1234ze(E)、沸点-19℃や、HFO-1234yf、沸点-30℃)等である。液化ガスは、併用されてもよい。整髪用噴霧組成物と液化ガスとの質量比(整髪用噴霧組成物/液化ガス)は、95:5~80:20であることが好ましい。液化ガスの質量比が大きくなると、整髪用噴霧組成物は、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの気化が促進され、毛髪に付着した付着物の乾燥性が低下しやすくなる。
【0043】
本実施形態の整髪用噴霧製品の製造方法は、特に限定されない。一例を挙げると、整髪用噴霧製品は、耐圧容器内に整髪用噴霧組成物を充填し、耐圧容器の開口部にバルブを取り付け、バルブから圧縮ガスを充填することにより調製することができる。また、バルブのステムに噴射部材を取り付けることにより、整髪用噴霧製品が製造され得る。
【0044】
耐圧容器は、整髪用噴霧組成物が充填される容器であり、有底筒状である。耐圧容器の開口部には、バルブが取り付けられる。
【0045】
耐圧容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、耐圧容器の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0046】
バルブは、耐圧容器の開口部を閉止して密封するための部材である。また、バルブは、耐圧容器の開口部に装着されるマウンティングカップに保持されるハウジングと、耐圧容器の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムと、ステムラバーと、ステムを上方に付勢するスプリングとを収容する。ステムの上端には、整髪用噴霧組成物を噴射するための噴射部材が取り付けられる。
【0047】
噴射部材は、バルブの開閉を操作して整髪用噴霧組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。噴射孔からは、整髪用噴霧組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0048】
本実施形態の整髪用噴霧製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、耐圧容器内と外部とが連通する。耐圧容器内と外部とが連通すると、耐圧容器内の圧力と外部との圧力差によって、整髪用噴霧組成物がハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0049】
このように、整髪用噴霧製品は、整髪用噴霧組成物を圧縮ガスの圧力で噴霧することができる。噴霧された粒子は、毛髪に付着しやすい大きさで噴霧されやすく、かつ、消費者が吸入しにくい。また、噴霧された整髪用噴霧組成物は、スタイリング用樹脂と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンおよびアルコールを含む溶剤とを含む。整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい。また、付着物は乾燥性が優れ、毛髪上でスタイリング用樹脂が皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られる。
【0050】
(第2の実施形態)
本発明の一実施形態の整髪用噴霧製品は、上記した整髪用噴霧組成物が、容器本体(加圧式噴霧容器の一例)に充填された、整髪用噴霧製品である。
【0051】
本実施形態の整髪用噴霧製品の製造方法は、特に限定されない。一例を挙げると、整髪用噴霧製品は、整髪用噴霧組成物を容器本体に充填し、容器本体の開口部に加圧式バルブを取り付けることにより調製することができる。また、加圧式バルブのステムに噴射部材を取り付けることにより、整髪用噴霧製品が製造され得る。
【0052】
容器本体は、上記した耐圧容器と同様のものを使用し得る。また、容器本体は、より高い内圧に耐えうるような耐圧性の高い容器を採用する必要がないため、容器を軽量化することができ、材料の使用量を減らすことができる。容器本体の開口部にネジを設け、加圧式バルブを螺合により取り付けることができる。
【0053】
加圧式バルブは、容器本体の開口部を閉止するとともに、容器本体内の整髪用噴霧組成物を取り込み、加圧して噴射部材に送り、噴霧するための部材である。加圧式バルブは、噴霧するための整髪用噴霧組成物を貯留するハウジングと、ハウジング内の整髪用噴霧組成物を加圧する加圧部材と、加圧部材をハウジング内に収容し、容器本体に装着されるキャップを備える。ハウジングは、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの揮発を防止するために、空気導入孔が形成されていないか、空気導入孔の外周にパッキンを設けて容器本体内からハウジング内への流れを塞ぐよう構成されていることが好ましい。加圧部材は、ステムと、ピストン部材と、ステムを上方に付勢するスプリングと、ボール弁とを備える。ステムには噴射部材が取り付けられている。
【0054】
噴射部材が押し下げられると、ステムとピストン部材とが下降する。ハウジング下部の導入孔はボール弁で閉じられているため、ハウジング内の整髪用噴霧組成物は、ステムとピストン部材とにより加圧される。加圧された整髪用噴霧組成物によりピストン部材の下降が止まると、ステムとピストン部材との間に隙間ができる。整髪用噴霧組成物は、この隙間を通過して噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0055】
このように、整髪用噴霧製品は、整髪用噴霧組成物を加圧して噴霧することができる。また、噴霧された整髪用噴霧組成物は、スタイリング用樹脂と、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンおよびアルコールを含む溶剤とを含む。整髪用噴霧組成物は、毛髪に付着しやすい。また、付着物は乾燥性が優れ、毛髪上でスタイリング用樹脂が皮膜を形成しやすく、優れたセット力が得られる。
【0056】
本実施形態の整髪用噴霧組成物は毛髪に付着しやすい粒子径で、霧状に噴霧されることが好ましい。その平均粒子径は、5~50μmが好ましく、6~45μmがより好ましい。平均粒子径が5μm未満の場合は、吸入しやすく、50μmより大きい場合には乾燥性が悪くなる傾向にある。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0058】
(実施例1)
以下の表1に記載の処方(単位:質量%)に従って、原液1を調製し、アルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0059】
【0060】
(実施例2~4)
原液の処方を表1に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、整髪用噴霧製品を作製した。
【0061】
(実施例5)
表1に記載の原液1をアルミ製の耐圧容器に100g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから窒素を充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0062】
(実施例6)
表1に記載の原液1を合成樹脂容器に100g充填し、窒素を充填し、加圧式バルブ(ハウジングの空気導入孔を塞いだ仕様)を合成樹脂容器の開口部に螺合により取り付け、密封し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.45、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0063】
(実施例7~8)
原液の処方を表1に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、整髪用噴霧製品を作製した。
【0064】
(比較例1)
表1に記載の原液7をアルミ製の耐圧容器に20g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムからHFO-1234ze(E)を80g充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。
【0065】
(比較例2)
表1に記載の原液7をアルミ製の耐圧容器に50g充填した。次いで、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムからジメチルエーテル(DME)を50g充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。
【0066】
(比較例3)
表1に記載の原液8を合成樹脂容器に100g充填し、窒素を充填し、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから窒素を充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0067】
(比較例4)
表1に記載の原液8を合成樹脂容器に100g充填し、窒素を充填し、加圧式バルブ(ハウジングの空気導入孔を塞いだ仕様)を合成樹脂容器の開口部に螺合により取り付け、密封し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.45、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0068】
(比較例5)
表1に記載の原液9を合成樹脂容器に100g充填し、炭酸ガスを充填し、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ0.6、ベーパータップ孔:φ0.3)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから炭酸ガスを充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0069】
(比較例6)
表1に記載の原液9を合成樹脂容器に100g充填し、窒素を充填し、バルブ(ステム孔:φ0.4、ハウジング下孔:φ2.0、ベーパータップ孔:なし)を耐圧容器の開口部に固着して密閉した。さらに、ステムから窒素を充填し、ステムに噴霧部材(噴霧孔:φ0.43、メカニカルブレークアップ機構付き)を取り付けて、整髪用噴霧製品を調製した。容器内の圧力は、0.5MPa(25℃)であった。
【0070】
実施例1~8および比較例1~6において調製した整髪用噴霧製品を用いて、以下の評価方法により、付着性、浸透性、平均粒子径、乾燥性、付着物の状態、セット力を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
<付着性>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、毛束に10cmの距離から噴霧した。毛束への付着性を、以下の評価基準に従って評価した。なお、
図1は、実施例1の整髪用噴霧製品を用いて付着性試験を行った後の毛束の外観写真である。
図2は、比較例1の整髪用噴霧製品を用いて付着性試験を行った後の毛束の外観写真である。
(評価基準)
○:整髪用噴霧組成物が、毛束全体に均一に付着した。
△:整髪用噴霧組成物が、毛束一部に粒状に付着し、毛束全体には均一に付着しなかった。
×:整髪用噴霧組成物が、毛束一部に粒状にまばらに付着し、毛束全体には均一に付着しなかった。
【0072】
<浸透性>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、毛束に10cmの距離から噴霧した。毛束の裏側への浸透性を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:毛束に噴霧した整髪用噴霧組成物は、裏側に浸透していた。
×:毛束に噴霧した整髪用噴霧組成物は、裏側に浸透していなかった。
【0073】
<平均粒子径>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、マイクロトラック・ベル(株)製、粒度分布測定装置(LDSA-3400A)を用いて、噴射孔からの距離15cmにおける噴射粒子の平均粒子径を測定した。
【0074】
<乾燥性>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、毛束に10cmの距離から、毛束全体を1往復するように噴霧した。毛束の乾燥性を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:毛束は、5分以内に乾燥した。
○:毛束は、5~10分で乾燥した。
×:毛束は、10分経過しても乾燥しなかった。
【0075】
<付着物の状態>
整髪用噴霧組成物を25℃に調整し、頭髪に噴霧した。付着物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:乾燥しても樹脂の析出は無かった。
×:乾燥すると樹脂が析出した。
【0076】
<セット力>
整髪用噴霧製品を、25℃に調整し、マネキンから毛束を垂直方向に立ち上げ、10cmの距離から噴霧した。毛束が乾燥するまで持ち上げ、乾燥した後で手を離し、毛束の角度を確認し、以下の評価基準に従って評価した。なお、毛束の角度とは、垂直方向を90°とし、毛束と水平面との間の角度をいう。
(評価基準)
◎:毛束の角度は90~60°であった。
○:毛束の角度は59~30°であった。
×:毛束の角度は29~0°であった。
【0077】
<詰まり>
25℃で保存した整髪用噴霧製品を、1日当たり1秒噴射を2回行うという操作を1ヵ月間続け、噴口の詰まりを確認し、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:噴口の詰まりはなく、整髪用噴霧組成物を安定に噴霧できた。
×:噴口に詰まりができ、整髪用噴霧組成物を噴霧できなかった。
【0078】
【0079】
表2に示されるように、実施例1、2、4~8の整髪用噴霧組成物は、乾燥しても樹脂の析出が無く、優れた付着性を有し、乾燥性や毛束への浸透性が良く、優れたセット力を示した。実施例3の整髪用噴霧組成物は、乾燥しても樹脂の析出が無く、乾燥性が従来のヘアスプレー(比較例2)と同等であり、優れた付着性を有し、吸引しにくい粒子径で優れたセット力を示した。一方、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの代わりに沸点が-19℃のハイドロフルオロオレフィン(HFO-1234ze(E))を使用した比較例1の整髪用噴霧組成物は、付着性が悪く、毛束への浸透性やセット力が悪かった。一般的なヘアスプレーである比較例2の整髪用噴霧組成物は、付着性が実施例ほど良くなく、毛束への浸透性も悪かった。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンを配合しない比較例3、4の整髪用噴霧組成物は、比較例2と同等のセット力で、乾燥性や毛束への浸透性が悪く、詰まりが生じ、整髪用噴霧組成物を最後まで噴霧できなかった。沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの代わりにイソペンタンを使用した比較例5、6の整髪用噴霧組成物は、付着性や毛束への浸透性が悪く、詰まりが生じ、整髪用噴霧組成物を最後まで噴霧できなかった。また、付着性試験を行った後の毛束の外観写真によれば、
図1に示されるように、実施例1の整髪用噴霧組成物を使用した場合の付着性試験の結果、毛束全体に整髪用噴霧組成物が均一に付着し、皮膜を形成していることが見て分かった。一方、
図2に示されるように、比較例1の整髪用噴霧組成物を使用した場合の付着性試験の結果、毛束全体に整髪用噴霧組成物が均一に付着せず、皮膜が充分に形成されなかったことが見て分かった。