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特許7609398抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー、ドアノブカバー又はマスク用インナーシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー、ドアノブカバー又はマスク用インナーシート
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/14 20060101AFI20241224BHJP
   D04B 1/22 20060101ALI20241224BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20241224BHJP
   A47G 21/10 20060101ALI20241224BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
D04B1/14
D04B1/22
A41D13/11 Z
A47G21/10 Z
E05B1/00 311N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020147247
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042068
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-08-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年5月14日 https://coppergoods.buyshop.lp/での公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年6月16日 日本放送協会大阪放送局及び株式会社朝日新聞大阪本社への公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年6月16日 株式会社インプルーヴ『「銅繊維糸を使ったニット製品」Cofith』パンフレットでの公開
(73)【特許権者】
【識別番号】520334409
【氏名又は名称】株式会社インプルーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘美
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-041194(JP,U)
【文献】国際公開第2002/061189(WO,A2)
【文献】特開2008-150741(JP,A)
【文献】特開2019-123948(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044267(JP,U)
【文献】特開2015-148037(JP,A)
【文献】特開2021-165438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00-1/28;21/00-21/20
A41B1/00-A41H43/04
A47G21/00-23/16
E05B1/00-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性を有する金属糸によってループが編成された第一面と、非金属糸によってループが編成された第二面とを有しており、前記非金属糸にはストレッチ糸が組み合わされている抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー又はドアノブカバーであって、
前記抗菌性編地は袋編みで筒状体に構成されていて、前記筒状体の外面側に前記第一面が位置している一方、前記筒状体の内面側に前記第二面が位置しており、
前記筒状体におけるウェール方向の一端部である一方口編部のみが前記金属糸以外の糸によってループが編成されて開放されている一方、前記筒状体におけるウェール方向の他端部である他方口編部が溶着にて閉止されている、
抗菌性編物としてのトングカバー又はドアノブカバー。
【請求項2】
抗菌性を有する金属糸によってループが編成された第一面と、非金属糸によってループが編成された第二面とを有しており、前記非金属糸にはストレッチ糸が組み合わされている抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのマスク用インナーシートであって、
前記抗菌性編地は袋編みで筒状体に構成されていて、前記筒状体の外面側に前記第一面が位置している一方、前記筒状体の内面側に前記第二面が位置しており、
前記筒状体におけるウェール方向の一端部である一方口編部のみが前記金属糸以外の糸によってループが編成されて編み閉じにて閉止されている一方、前記筒状体におけるウェール方向の他端部である他方口編部が溶着にて閉止されている、
抗菌性編物としてのマスク用インナーシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー、ドアノブカバー又はマスク用インナーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、編地の抗菌処理としては、第四級アンモニウム塩などの有機系抗菌剤をスプレーあるいはパディング処理して付与する後加工の方法(特許文献1参照)や、銀、銅、又は亜鉛といった無機系抗菌剤を合成繊維の紡糸段階で練り込む方法(特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-100269号公報
【文献】特開2008-111221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の場合、抗菌剤が繰り返しの洗濯によって徐々に脱落してしまい、長期間にわたって十分な抗菌性能を確保できないという問題、つまり、抗菌剤の洗濯耐久性という点で劣るという問題があった。
【0005】
一方、後者の場合、洗濯耐久性の点では比較的優れるが、抗菌剤が合成樹脂中に埋没しやすくて高レベルの抗菌性を発揮するのは難しく、特に制菌レベルまでの高い抗菌性を出すには、抗菌剤の添加量を多くしなければならない。このため、コスト面や糸強度、染色性等の点で問題があった。また、後者の場合は、紡糸段階で口金面に抗菌剤が結晶として析出するため、糸切れが多発するといった製糸上の問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような現状を検討して改善を施した抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー、ドアノブカバー又はマスク用インナーシートを提供することを技術的課題とするものである。
【0007】
本発明は、抗菌性編地を用いた抗菌性編物を含んでいて、典型的な構成を各請求項において特定している。これらのうち請求項1の発明は、抗菌性を有する金属糸によってループが編成された第一面と、非金属糸によってループが編成された第二面とを有しており、前記非金属糸にはストレッチ糸が組み合わされている抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー又はドアノブカバーであって、前記抗菌性編地は袋編みで筒状体に構成されていて、前記筒状体の外面側に前記第一面が位置している一方、前記筒状体の内面側に前記第二面が位置しており、前記筒状体におけるウェール方向の一端部である一方口編部のみが前記金属糸以外の糸によってループが編成されて開放されている一方、前記筒状体におけるウェール方向の他端部である他方口編部が溶着にて閉止されているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、抗菌性を有する金属糸によってループが編成された第一面と、非金属糸によってループが編成された第二面とを有しており、前記非金属糸にはストレッチ糸が組み合わされている抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのマスク用インナーシートであって、前記抗菌性編地は袋編みで筒状体に構成されていて、前記筒状体の外面側に前記第一面が位置している一方、前記筒状体の内面側に前記第二面が位置しており、前記筒状体におけるウェール方向の一端部である一方口編部のみが前記金属糸以外の糸によってループが編成されて編み閉じにて閉止されている一方、前記筒状体におけるウェール方向の他端部である他方口編部が溶着にて閉止されているというものである。
【0009】
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、抗菌性を有する金属糸によってループが編成された第一面と、非金属糸によってループが編成された第二面とを有するから、人の手等が触れる方の面を第一面として取り扱えば、抗菌性を有する金属そのものの糸の存在によって高い抗菌性能を発揮でき、且つ編地の特徴である伸縮性を活かした物品の開発が可能になる。また、金属そのものを糸として用いるので、洗濯を繰り返しても抗菌性能が低下し難く、長期間にわたって十分な抗菌性能を確保できる。
【0011】
さて、金属そのものの糸である金属糸は非金属糸と比べて小径(細径)であることが多く、ウェール方向の端部(いわゆる口編部)付近において、ほつれや糸切れ等の破損の問題を招来し易いが、これに対して本発明では、第一面及び第二面におけるウェール方向の一端部又は両端部に、金属糸以外の糸によってループが編成されるから、ウェール方向の一端部又は両端部を金属糸以外の糸で補強でき、ウェール方向の一端部又は両端部の耐久性や見栄えを向上できる。
【0012】
以上まとめると、本発明を採用すれば、抗菌性及び耐洗濯性が高い抗菌性編地を用いた抗菌性編物としてのトングカバー、ドアノブカバー又はマスク用インナーシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態におけるトングカバーの概略説明図であり、(a)は外面図、(b)は内面図である。
図2】トングに取り付けたトングカバーの概略説明図である。
図3】トングカバーの使用状態を示す概略説明図である。
図4】第2実施形態におけるドアノブカバーの概略説明図であり、(a)は外面図、(b)は内面図である。
図5】ドアノブに取り付けたドアノブカバーの概略説明図である。
図6】ドアノブカバーの使用状態を示す概略説明図である。
図7】第3実施形態におけるマスク用のインナーシートの概略説明図であり、(a)は表面図、(b)は裏面図、(c)は一部をひっくり返した参考図である。
図8】マスク用のインナーシートの使用状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1図3に示すように、第1実施形態の抗菌性編物であるトングカバー10は、例えばバイキング料理等において食品を掴む食品用トング1のうち人が手で触れる折り返し部に被せて用いられるものであり、抗菌性を有する金属糸12によってループが編成された第一面11Aと、非金属糸13によってループが編成された第二面11Bとを有する抗菌性編地11を素材としている。第1実施形態の金属糸12としては銅線糸が望ましい。銅線糸とストレッチ糸との組合せにしてもよい。非金属糸13としては綿アクリル糸とストレッチ糸との組合せが好ましい。金属糸12は、非金属糸13よりも小径(細径)のものである。金属糸12の直径は0.1mm以下であるのが好適であり、0.06mm以下であればより好ましい。
【0016】
第1実施形態のトングカバー10は、添え糸編み(プレーティング編み)の袋編みで筒状体14に構成されている。筒状体14におけるウェール方向(各々の針で形成されるループを連綴させる方向)の一端部である一方口編部16は開放されている。筒状体14の他端部である他方口編部17は、編み閉じ又は接着や溶着等によって閉止されている。筒状体14の外面側に、第一面11Aが位置している。筒状体14の内面側には、第二面11Bが位置している。
【0017】
第一面11A及び第二面11Bにおけるウェール方向の一端部又は両端部には、金属糸12以外の糸によってループが編成されている。第1実施形態の場合、筒状体14における両方の口編部16,17に(内外面ともに)、第二面11Bに用いた非金属糸13によってループが編成されている。
【0018】
トングカバー10を構成する筒状体14の一方口編部16に食品用トング1の折り返し部を差し入れて、折り返し部にトングカバー10を被せる。そうすると、金属糸12でループが編成された第一面11Aの身編部15が外側に露出するため、当該身編部15を人が手で触れることになる。
【0019】
なお、筒状体14の内面側(第二面11B)には、縫い付け式のスナップボタン18が取り付けられている。食品用トング1の折り返し部にトングカバー10を被せて、折り返し部の内側でスナップボタン18を留めることによって、トングカバー10が食品用トング1から外れ不能に保持される。
【0020】
上記の構成によると、人の手等が触れる方の面を第一面11Aとして取り扱うため、抗菌性を有する金属そのものの糸の存在によって高い抗菌性能を発揮でき、且つ編地の特徴である伸縮性を活かしたトングカバー10を提供できる。また、金属そのものを糸として用いるので、洗濯を繰り返しても抗菌性能が低下し難く、長期間にわたって十分な抗菌性能を確保できる。
【0021】
ここで、銅線等の金属糸12は、当該線糸に接触した細菌やウイルスのたんぱく質構造やDNAを破壊する抗菌・殺菌・抗ウイルス作用を有する。また、有機物の分子結合も分解可能であり、抗カビ(白癬菌)作用等もある。銅や銀等は、水に溶解して金属イオン化することによって抗菌・殺菌・抗ウイルス作用等を発揮する。
【0022】
第1実施形態では、第一面11A及び第二面11Bにおけるウェール方向の両端部(口編部16,17)に、金属糸12以外の糸(非金属糸13(綿アクリル糸とストレッチ糸の組合せ))によってループが編成されるから、ウェール方向の両端部16,17を金属糸12以外の糸で補強でき、ウェール方向の両端部16,17の耐久性や見栄えを向上できる。
【0023】
図4図6に示す第2実施形態の抗菌性編物はドアノブカバー20である。第2実施形態のドアノブカバー20は、不特定多数の人が手で触れるドアノブ2の衛生を確保するために、ドアノブ2に被せて用いられるものであり、抗菌性を有する金属糸22によってループが編成された第一面21Aと、非金属糸23によってループが編成された第二面21Bとを有する抗菌性編地21を素材としている。第2実施形態の金属糸22としては銅線糸が望ましい。銅線糸とストレッチ糸との組合せにしてもよい。非金属糸23としては綿アクリル糸とストレッチ糸との組合せが好ましい。
【0024】
第2実施形態のドアノブカバー20は、添え糸編み(プレーティング編み)の袋編みで筒状体24に構成されている。筒状体24におけるウェール方向の一端部である一方口編部26は開放されている。筒状体24の他端部である他方口編部27は、接着や溶着又は編み閉じ等によって閉止されている。筒状体24の外面側に、第一面21Aが位置している。筒状体24の内面側には、第二面21Bが位置している。
【0025】
第一面21A及び第二面21Bにおけるウェール方向の一端部又は両端部には、金属糸22以外の糸によってループが編成されている。第2実施形態の場合、筒状体24の一方口編部26に(内外面ともに)、第二面21Bに用いた非金属糸23とは別の非金属糸28によってループが編成されている。第2実施形態において非金属糸23(綿アクリル糸)以外の非金属糸28としては、綿アクリル糸とストレッチ糸との組合せが採用されるのが好ましい。
【0026】
ドアノブカバー20を構成する筒状体24の一方口編部26にドアノブ2を差し入れて、ドアノブ2の把手部2Aにドアノブカバー20の身編部25を被せ、ドアノブ2の回動軸部2Bに、非金属糸28でループが編成された一方口編部26を被せる。そうすると、金属糸22でループが編成された第一面21Aの身編部25が外側に露出するため、当該身編部25を人が手で触れることになる。
【0027】
上記の構成によると、人の手等が触れる方の面を第一面21Aとして取り扱うため、抗菌性を有する金属そのものの糸の存在によって高い抗菌性能を発揮でき、且つ編地の特徴である伸縮性を活かしたドアノブカバー20を提供できる。また、金属そのものを糸として用いるので、洗濯を繰り返しても抗菌性能が低下し難く、長期間にわたって十分な抗菌性能を確保できる。
【0028】
また、第2実施形態においては、第一面21A及び第二面21Bにおけるウェール方向の一端部(一方口編部26)に、金属糸22以外の糸(非金属糸28(綿アクリル糸とストレッチ糸の組合せ))によってループが編成されるから、ウェール方向の一端部26を金属糸22以外の糸で補強でき、ウェール方向の一端部26の耐久性や見栄えを向上できるのである。
【0029】
筒状体24の一方口編部26に(内外面ともに)、第二面21Bに用いた非金属糸23とは別の非金属糸28によってループを編成する構成であれば、当該非金属糸28の色を複数種類設けることが可能になる。そうすると、例えば一方口編部26の色の異なるドアノブカバー20をドアノブ2に対して所定時間毎に付け換えるようにすれば、一方口編部26の色の変化で、新しいドアノブカバー20に交換されたことを利用者が一目で把握でき、目に見える安心を利用者に提供できる。清掃担当者に適宜交換を促し易くもなる。
【0030】
図7及び図8に示す第3実施形態の抗菌性編物は、マスク用のインナーシート30である。第3実施形態のインナーシート30は、衛生具であるマスク3のマスク本体3Aに装着して、吸気時にマスク本体3Aを通して吸い込まれる空気中のウイルスや細菌、粉塵、花粉といった異物を捕捉して分離するためのものである。
【0031】
第3実施形態のインナーシート30は、抗菌性を有する金属糸32によってループが編成された第一面31Aと、非金属糸33によってループが編成された第二面31Bとを有する抗菌性編地31を素材としている。第3実施形態の金属糸32としては銅線糸とストレッチ糸との組合せが望ましい。非金属糸33としては綿アクリル糸とストレッチ糸との組合せが好ましい。
【0032】
第3実施形態のインナーシート30は、天竺編みの袋編みで筒状に構成され且つウェール方向の両口編部36,37が編み閉じ又は接着や溶着等によって閉止されて、シート状体34に構成されている。シート状体34の表面側に、第一面31Aが位置している。シート状体34の裏面側に、第二面31Bが位置している。
【0033】
第一面31A及び第二面31Bにおけるウェール方向の一端部又は両端部には、金属糸32以外の糸によってループが編成されている。第3実施形態の場合、シート状体34の両口編部36,37に(表裏面ともに)、第二面31Bに用いた非金属糸33によってループが編成されている。
【0034】
マスク本体3Aに形成されたポケット部(図示省略)に、第一面31Aが外側で第二面31Bが顔側になるように、インナーシート30を挿入する。吸気時にマスク本体3Aを通して吸い込まれる空気中の異物を、金属糸32でループが編成された第一面31Aの身編部35が捕捉して分離することになる。また、呼気中の異物(ウイルス等)も第一面31Aの金属糸32で捕捉・分離することが可能である。
【0035】
上記の構成によると、抗菌性を有する金属そのものの糸の存在によって高い抗菌性能を発揮でき、且つ編地の特徴である伸縮性を活かしたインナーシート30を提供できる。また、金属そのものを糸として用いるので、洗濯を繰り返しても抗菌性能が低下し難く、長期間にわたって十分な抗菌性能を確保できる。
【0036】
第3実施形態では、第一面31A及び第二面31Bにおけるウェール方向の両端部(口編部36,37)に、金属糸32以外の糸(非金属糸33(綿アクリル糸とストレッチ糸の組合せ)によってループが編成されるから、ウェール方向の両端部36,37を金属糸32以外の糸で補強でき、ウェール方向の両端部36,37の耐久性や見栄えを向上できる。
【0037】
インナーシート30をマスク本体3Aに装着するに際して、非金属糸33からなる第二面31Bを顔側に向けておけば、ポケット部を介してインナーシート30が顔に当たる感触を和らげることができる。特に、インナーシート30におけるウェール方向の両端部(口編部36,37)を、金属糸32以外の糸(非金属糸33(綿アクリル糸とストレッチ糸の組合せ))で補強しているから、非金属糸33からなる第二面31Bを顔側に向けておけば、第一面31A側の金属糸32が顔に触れるおそれはほぼなく、インナーシート付きのマスク装着時に、顔に不快感を与えないのである。
【0038】
上記の各構成において、抗菌性編地11,21,31の編み方は、前述の天竺編や添え糸編だけに限らず、例えばリブ編、パール編、タック編、浮き編、レース編、両畦編、片畦編、ペレリン編、アイレット編、両面編、多衝程両面編、振り編、針抜き編、立毛編、裏毛編、からみ添え糸編、ラーベン編、ひねり編、アーガイル編、シングル・デンビー編、シングル・バンダイク編、シングル・コード編、ベルリン編、二目編、シェル編、ダブル・デンビー編、アトラス編、コード編、ハーフ・トリコット編、サテン編、シャークスキン編、レース編、タック編、パイル編、エラスティック編、クイーンズ・コード編等、種々の編み方を採用してよい。
【0039】
金属糸12,22,32の材質としては、銅だけでなく、銀や亜鉛等の金属が挙げられる。また、銅に対して、亜鉛や銀、ニッケル等を、単独又は複数組み合わせた銅合金を採用することも可能である。例えば抗菌性の観点から見て、銅を主成分(50質量%以上を占める)とする金属糸12,22,32が好ましい。また、前述の通り、金属糸12,22,32は、非金属糸13,23,28,33よりも小径(細径)のものとし、その直径は0.1mm以下であるのが好適であり、0.06mm以下であればより好ましい。
【0040】
非金属糸13,23,28,33としては、特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維といった従来公知の繊維から得られる糸を採用できる。これらの繊維は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。非金属糸13,23,28、33は、混合糸であってもよい。混合糸としては、例えば非金属糸13,23,28,33に金属糸12,22,32を巻き付けたカバリング糸、若しくは非金属糸13,23,28,33及び金属糸12,22,32を撚り合わせて形成される合撚糸等が挙げられる。混合糸を構成する金属糸12,22,32は、一種でもよいし二種以上でもよい。
【0041】
非金属糸13,23,28,33の形態も特に限定されるものではなく、紡績糸(短繊維糸)、マルチフィラメント糸やモノフィラメント糸(長繊維糸)といった従来公知の形態を採用できる。非金属糸13,23,28,33の断面形状も特に限定されない。円形であってもよいし、円形以外のいわゆる異形断面糸であってもよい。また、抗菌性編地11,21,31から編物を成形するにあたっては、前述のように、金属糸12,22,32や非金属糸13,23,28,33にストレッチ糸を組み合わせるのが好適である。
【0042】
さらに、抗菌性編地11,21,31を用いた抗菌性編物としては、前述のトングカバー10,ドアノブカバー20及びインナーシート30に限るものではなく、例えばハンドルカバーといった各種の持ち手を覆うものであったり、定期入れや社証入れといったカードホルダーであったり、マスク入れ等の物入れであったりしてもよい。様々な形態の抗菌性編物を作成することが可能である。
【0043】
なお、本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 トングカバー
11,21,31 抗菌性編地
11A,21A,31A 第一面
11B,21B,31B 第二面
12,22,32 金属糸(銅線糸)
13、23,33 非金属糸(綿アクリル糸)
14,24 筒状体
15,25,35 身編部
16,26,36 一方口編部
17,27,37 他方口編部
20 ドアノブカバー
28 別の非金属糸(アクリル糸)
30 インナーシート
34 シート状体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8