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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ウエブ巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/28 20060101AFI20241224BHJP
   B26D 7/32 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B65H19/28 Z
B26D7/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020172451
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063992
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】安田 芳章
(72)【発明者】
【氏名】西村 高博
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193194(JP,A)
【文献】特開2018-188249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
B65H 19/06-19/30
B65H 21/00-21/02
B26D 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯を交互に切り替えながらウエブを連続してロール状に巻き取るウエブ巻取装置であって、
前記巻芯を個別に装着して回転制御する一対の軸支部を有し、前記ウエブの巻き取りが行われる巻取位置と、前記巻芯の入れ替えが行われる待機位置とに、前記巻芯の位置を交換するターレットと、
切り替え時に、前記巻取位置に位置する巻取前の前記巻芯である新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯とで挟持するニップローラと、
前記ニップローラと前記新巻芯とが前記ウエブを挟持する挟持位置から下流側に離れた位置で前記ウエブを切断するカッターと、
放電針を含み、前記放電針に電圧を印加することでアースされた導電体である前記新巻芯の近傍で静電気を発生する静電気付与装置と、
アースされた接触部材であって前記新巻芯のうち前記ウエブと同じ帯電極性に帯電した部分に接触して前記新巻芯全体を前記ウエブとは逆の極性に帯電させる接触部材と、
を備え、
前記接触部材は、前記新巻芯に前記ウエブが接した位置の出口側に配置され、
前記新巻芯の抵抗値が10~10Ωの範囲であり、前記新巻芯の巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記放電針の先端と前記新巻芯の外周面との最短距離が20mmとなるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記静電気付与装置による印加電圧が18~30kVに設定され、
前記抵抗値が10 ~10 Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約180~220mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が26~30kVに設定される、
ことを特徴とするウエブ巻取装置。
【請求項2】
巻芯を交互に切り替えながらウエブを連続してロール状に巻き取るウエブ巻取装置であって、
前記巻芯を個別に装着して回転制御する一対の軸支部を有し、前記ウエブの巻き取りが行われる巻取位置と、前記巻芯の入れ替えが行われる待機位置とに、前記巻芯の位置を交換するターレットと、
切り替え時に、前記巻取位置に位置する巻取前の前記巻芯である新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯とで挟持するニップローラと、
前記ニップローラと前記新巻芯とが前記ウエブを挟持する挟持位置から下流側に離れた位置で前記ウエブを切断するカッターと、
放電針を含み、前記放電針に電圧を印加することでアースされた導電体である前記新巻芯の近傍で静電気を発生する静電気付与装置と、
アースされた接触部材であって前記新巻芯のうち前記ウエブと同じ帯電極性に帯電した部分に接触して前記新巻芯全体を前記ウエブとは逆の極性に帯電させる接触部材と、
を備え、
前記接触部材は、前記新巻芯に前記ウエブが接した位置の出口側に配置され、
前記新巻芯の抵抗値が10 ~10 Ωの範囲であり、前記新巻芯の巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記放電針の先端と前記新巻芯の外周面との最短距離が20mmとなるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記静電気付与装置による印加電圧が18~30kVに設定され、
前記抵抗値が10-1~10Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が15~25kVに設定される、
ことを特徴とするウエブ巻取装置。
【請求項3】
前記抵抗値が10-1~10Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約180~220mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が20~25kVに設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載のウエブ巻取装置。
【請求項4】
巻芯を交互に切り替えながらウエブを連続してロール状に巻き取るウエブ巻取装置であって、
前記巻芯を個別に装着して回転制御する一対の軸支部を有し、前記ウエブの巻き取りが行われる巻取位置と、前記巻芯の入れ替えが行われる待機位置とに、前記巻芯の位置を交換するターレットと、
切り替え時に、前記巻取位置に位置する巻取前の前記巻芯である新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯とで挟持するニップローラと、
前記ニップローラと前記新巻芯とが前記ウエブを挟持する挟持位置から下流側に離れた位置で前記ウエブを切断するカッターと、
放電針を含み、前記放電針に電圧を印加することでアースされた導電体である前記新巻芯の近傍で静電気を発生する静電気付与装置と、
アースされた接触部材であって前記新巻芯のうち前記ウエブと同じ帯電極性に帯電した部分に接触して前記新巻芯全体を前記ウエブとは逆の極性に帯電させる接触部材と、
を備え、
前記接触部材は、前記新巻芯に前記ウエブが接した位置の出口側に配置され、
前記新巻芯の抵抗値が10 ~10 Ωの範囲であり、前記新巻芯の巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記放電針の先端と前記新巻芯の外周面との最短距離が20mmとなるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記静電気付与装置による印加電圧が18~30kVに設定され、
前記抵抗値が10-8~10-7Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が10~20kVに設定される、
ことを特徴とするウエブ巻取装置。
【請求項5】
前記抵抗値が10-8~10-7Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約180~220mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が15~20kVに設定される、
ことを特徴とする請求項4に記載のウエブ巻取装置。
【請求項6】
前記カッターは、
基端部が回動可能に支持された回動腕と、
前記回動腕の先端部に取り付けられて、当該回動腕が回動することによって前記ウエブの表面を突き切る切刃と、
前記回動腕の先端部に取り付けられて、前記切刃で切断された前記ウエブの端部に接触して前記新巻芯に押し付けられる弾性変形可能なブラシ体と、を有し、
前記ブラシ体は、導電性を有し且つアースされていることで前記接触部材として機能する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のウエブ巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ巻取装置に関し、より詳細には、切断されたウエブの端部をテープレスの巻芯に確実に吸着させることが可能なウエブ巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PET(ポリエチレンテレフタレート)、OP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、CP(プロピオン酸セルロース)等、合成樹脂製のウエブを連続的に巻き出しながら、当該ウエブに印刷や塗工を行い、再度ロール状に巻き取るウエブ巻取装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、製造ラインを止めることなく、巻芯を自動的に交互に切り替えながら、連続してウエブをロール状に巻き取るウエブ巻取装置が開示されている。特許文献1のウエブ巻取装置では、テープレスの巻芯が採用されており、静電気を利用してウエブが巻芯に巻き付けられる構成になっている。
【0004】
特許文献1のウエブ巻取装置では、ウエブをテープレスの新しい巻芯に巻き取る際、搬送中のウエブが巻芯とニップローラとによって挟持位置で挟持される。また、挟持位置の下流側の位置で、巻芯の表面の周速度よりも速い周速度でカッターの切刃が回動し、ウエブが切断される。そして、ウエブの切断端の先端部分がブラシ体によって巻芯に押し付けられ、切断端の先端部分が巻芯に巻き付けられる。
【0005】
また、特許文献1では、静電気付与装置が挟持位置の入口側の近傍に配置されている。静電気付与装置によって発生するマイナスのイオンは、ウエブ及び巻芯の双方の表面上に空気層の流れに乗って挟持位置に運ばれ、ウエブ及び巻芯に挟み込まれる。そして、ウエブ及び巻芯がマイナスに帯電する。
【0006】
また、特許文献1では、挟持位置の出口側の近傍にはブラシ体が配置されている。ブラシ体は、導電性を有する細かい針状ないし繊維状の部材を束ねて構成されるとともにアースされており、静電気を除去する除電装置として機能する。
【0007】
上述したような構成を採用したことにより、ウエブ、新巻芯を帯電させ、新巻芯に対するウエブの吸着力が得られる旨、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-193194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した巻芯の抵抗値(電流の流れにくさ)は、種類(材料)によって大きく異なる。例えば、紙材料の巻芯の抵抗値は10~10Ω程度である一方、金属材料の巻芯の抵抗値は10-8~10-7Ω程度である。また、巻芯の巻取速度は、製造ラインによって異なり、例えば、毎分100メートル(m/min)に設定される場合もあれば、毎分200メートルに設定される場合もある。
【0010】
よって、静電気付与装置と巻芯との距離(詳細には静電気付与装置の放電針先端と巻芯の外周円との最短距離)及び静電気付与装置の印加電圧を固定値(常に同じ値)にした場合、巻芯を十分に帯電できない場合がある。巻芯を十分に帯電できなければ、ウエブを巻芯に対して確実に吸着させることができない。
【0011】
そこで、本発明は、巻芯の種類、巻芯の巻取速度に応じて静電気付与装置と巻芯との距離、静電気付与装置の印加電圧を適切な値に設定し、巻芯に対してウエブを確実に吸着させることが可能なウエブ巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るウエブ巻取装置は、
巻芯を交互に切り替えながらウエブを連続してロール状に巻き取るウエブ巻取装置であって、
前記巻芯を個別に装着して回転制御する一対の軸支部を有し、前記ウエブの巻き取りが行われる巻取位置と、前記巻芯の入れ替えが行われる待機位置とに、前記巻芯の位置を交換するターレットと、
切り替え時に、前記巻取位置に位置する巻取前の前記巻芯である新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯とで挟持するニップローラと、
前記ニップローラと前記新巻芯とが前記ウエブを挟持する挟持位置から下流側に離れた位置で前記ウエブを切断するカッターと、
放電針を含み、前記放電針に電圧を印加することでアースされた導電体である前記新巻芯の近傍で静電気を発生する静電気付与装置と、
アースされた接触部材であって前記新巻芯のうち前記ウエブと同じ帯電極性に帯電した部分に接触して前記新巻芯全体を前記ウエブとは逆の極性に帯電させる接触部材と、
を備え、
前記接触部材は、前記新巻芯に前記ウエブが接した位置の出口側に配置され、
前記新巻芯の抵抗値が10~10Ωの範囲であり、前記新巻芯の巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記放電針の先端と前記新巻芯の外周面との最短距離が20mmとなるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記静電気付与装置による印加電圧が18~30kVに設定される。
【0013】
また、前記抵抗値が10~10Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約180~220mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が26~30kVに設定される、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記抵抗値が10-1~10Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が15~25kVに設定される、
こととしてもよい。
【0015】
また、前記抵抗値が10-1~10Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約180~220mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が20~25kVに設定される、
こととしてもよい。
【0016】
また、前記抵抗値が10-8~10-7Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約80~120mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が10~20kVに設定される、
こととしてもよい。
【0017】
また、前記抵抗値が10-8~10-7Ωの範囲であり、前記巻取速度が毎分約180~220mである場合には、前記最短距離が20mm以上となるように前記静電気付与装置が前記新巻芯に対して配置されるとともに、前記印加電圧が15~20kVに設定される、
こととしてもよい。
【0018】
また、前記カッターは、
基端部が回動可能に支持された回動腕と、
前記回動腕の先端部に取り付けられて、当該回動腕が回動することによって前記ウエブの表面を突き切る切刃と、
前記回動腕の先端部に取り付けられて、前記切刃で切断された前記ウエブの端部に接触して前記新巻芯に押し付けられる弾性変形可能なブラシ体と、を有し、
前記ブラシ体は、導電性を有し且つアースされていることで前記接触部材として機能する、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のウエブ巻取装置によれば、巻芯の種類、巻芯の巻取速度に応じて静電気付与装置と巻芯との距離、静電気付与装置の印加電圧を適切な値に設定できるので、巻芯に対してウエブを確実に吸着させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係るウエブ巻取装置を示す概略図である。
図2】巻芯と静電気付与装置との配置関係を説明するための図である。
図3】マイナスに帯電した巻芯とマイナスの極性を示すウエブを示す図である。
図4】ウエブが切刃によって切断された直後の状態を示す図である。
図5】ウエブの切断端の先端部がブラシ体によって巻芯に近づけられる様子を示す図である。
図6】ブラシ体がウエブを挟んで巻芯に押し付けられた状態を示す図である。
図7】接地されたブラシ体が巻芯に接触した後の巻芯の帯電状態を示す図である。
図8】ウエブが巻芯に吸着した際のウエブの極性と巻芯の帯電状態とを示す図である。
図9】巻芯に吸着したウエブが静電気付与装置と巻芯との間を通過する様子を示す図である。
図10】巻芯の抵抗値、巻取速度、放電針と巻芯との最短距離及び印加電圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係るウエブ巻取装置について図1から図10に基づき説明する。以下では、本発明に係るウエブ巻取装置の一例として、図1に示すウエブ巻取装置1について説明する。
【0022】
ウエブ巻取装置1は、特許文献1(2018-193194号公報)と同じく、ロール状の原反から、例えば、PETやOP、CP等、合成樹脂製のウエブWを連続的に巻き出しながら、そのウエブWに印刷や塗工を行って、再度、ロール状に巻き取る装置である。なお、特許文献1の出願人は、本願の出願人と同一である。
【0023】
ウエブ巻取装置1は、いわゆるロールツーロール方式の印刷機や塗工機の製造ライン(図示せず)の最終工程に使用される。ウエブ巻取装置1は、製造ラインを止めることなく、テープレスの巻芯Cを自動的に交互に切り替えながら、連続してウエブWをロール状に巻き取るように構成されている。
【0024】
図1に示すように、ウエブ巻取装置1は、ターレット3、ニップローラ5、カッター6、ニアローラ8、静電気付与装置9、ダンサローラ11、各種ガイドローラRなどを備えて構成される。これらの要素を含むウエブ巻取装置1の基本的構造は、特許文献1に係るウエブ巻取装置と同様であるので、以下では、ウエブ巻取装置1に関して、特許文献1と同じ機能の部材については同じ参照符号を用いて説明を省略する。
【0025】
本実施の形態では、静電気付与装置9の配置位置が特許文献1とは異なる。詳細には、図2に示すように、本実施の形態の静電気付与装置9は、挟持位置NPの出口側においてウエブWを挟んでカッター6に対向する位置に配置されている。詳細には、静電気付与装置9は、カッター6が回動した場合にカッター6に接触しない範囲でカッター6に対して可能な限り近接させた位置に配置されている。なお、特許文献1では、静電気付与装置9は、挟持位置NPの入口近傍に配置されていた。
【0026】
静電気付与装置9は、巻芯Cの軸方向に延在する横長なバー本体9aと、バー本体9aに等間隔で横並びに配置された複数の放電針9bとを備えて構成されている。複数の放電針9bに負の高電圧が印加されると、複数の放電針9bはマイナスのイオンを発生する。
【0027】
図2に示すように、ニップローラ5は、新たな巻芯CにウエブWを巻き取る際、ウエブWを介して新たな巻芯Cに押し付けられることで搬送中のウエブWを挟持するためのローラである。なお、後述するように、本実施の形態では、対極帯電の原理を用いて、ウエブWを巻芯Cに吸着させている。そのため、巻芯Cは、導電性を有し、接地(アース)されている。
【0028】
カッター6は、基端側が回動可能に支持された回動腕64と、回動腕64の先端部に取り付けられた切刃63と、一対のブラシ体70とを備えて構成される。
【0029】
切刃63は、回動腕64が回動することによってウエブWの表面を突き切るための部材である。
【0030】
ブラシ体70は、切刃63に沿って2列に延在する弾性変形可能な部材である。ブラシ体70は、本発明に係る接触部材の一例であり、ウエブWの切断端の先端部を挟んで巻芯Cに押し付けられる。
【0031】
詳細には、ブラシ体70は、導電性を有する金属製の素材で構成されている。より詳細には、ブラシ体70は、ステンレス製の針状ないし繊維状の細い部材(ブラシ要素)を束ねて構成されている。なお、ブラシ体70は、回動腕64を通じてアースされている。
【0032】
図2に示すように、静電気付与装置9において複数の放電針9bに負の高電圧が印加されると、複数の放電針9bはマイナスのイオンを発生(放出)する。複数の放電針9bからマイナスのイオンが発生されると、図3に示すように、巻芯Cのうちマイナスイオンが当たる部分(図3では上側)は、逆の極性であるプラスの電荷が引き寄せられることで、プラスに帯電する。一方、巻芯Cのうちマイナスイオンが当たる部分とは反対側(図3の下側)はマイナスに帯電する。
【0033】
なお、静電気付与装置9の配置位置の関係上、ウエブWには、静電気付与装置9で発生したマイナスのイオンが当たらない。ただし、フィルムなどで構成されるウエブWは、上流装置からウエブ巻取装置1までの各部を通過して巻芯Cに到達する。そのため、ウエブWは、剥離帯電、摩擦帯電等によりマイナスに帯電している。また、挟持位置NPより上流の位置に、別途静電気付与装置9’を配置して、ウエブWをマイナスに帯電させることとしてもよい。これにより、ウエブWをより強く帯電させることができる。
【0034】
図4に示すように、回動腕64が回動すると、切刃63がウエブWの表面を突き切ってウエブWが切断される。ウエブWが切断された後、回動腕64が更に回動すると、図5に示すように、ブラシ体70がウエブWの端部に接触する。そして、ウエブWの端部がブラシ体70によって巻芯Cの側に徐々に近づけられる。
【0035】
更に、回動腕64が回動すると、図6に示すように、ブラシ体70によってウエブWが巻芯Cに押し付けられる。その際、ブラシ体70は、巻芯Cに押圧されることによって弾性変形する。
【0036】
図7に示すように、接地(アース)されたブラシ体70が巻芯Cに接触すると、巻芯Cに溜まったマイナスの電荷がアースに大量に移動することで、強いクーロン力が巻芯Cの周囲に発生する。これにより、巻芯C全体がプラスに帯電する。
【0037】
図8に示すように、マイナスに帯電したウエブWは、ブラシ体70によってプラスに帯電した巻芯Cに押し付けられる。その結果、強いクーロン力によってウエブWは巻芯Cに吸着する。
【0038】
なお、ウエブWは、導電性を有する巻芯Cとは異なり、絶縁体である。そのため、接地されたブラシ体70がウエブWに接触してもウエブWに帯電したマイナスの電荷はアースに逃げず、ウエブWはマイナスに帯電した状態を維持する。
【0039】
図9に示すように、巻芯Cに吸着したウエブWは、巻芯Cの回転に伴って巻き取られる。その際、ウエブWは、放電針9bの先端と巻芯Cの外周面との間を通過する。通過時においては、放電針9bと巻芯Cとの間で形成される電界によってウエブWが静電分極を起こし、巻芯Cに対して更に密着する。これにより、ウエブWの巻芯Cに対する吸着力が増す。
【0040】
また、本実施の形態では、巻芯Cとして採用するコアの種類(抵抗値)と巻芯Cの巻取速度に応じて、各放電針9bの先端と巻芯Cの外周面との最短距離(以下、最短距離DSとも称する。)を変更するとともに、各放電針9bに印加する印加電圧(以下、印加電圧EPとも称する。)を変更する。最短距離DSや印加電圧EPを一律の値(固定値)に設定すると、巻芯Cの抵抗値や巻取速度によってはウエブWが巻芯Cに十分に吸着しない場合があるからである。
【0041】
そこで、本実施の形態では、巻芯Cの抵抗値及び巻取速度に応じて、最短距離DS及び印加電圧EPが図10に示す値の範囲に設定される。なお、図10で示された最短距離DS及び印加電圧EPは、本願の発明者らが実証実験を繰り返して導き出した値である。
【0042】
図10に示すように、専用樹脂・紙コアの抵抗値は、10~10Ωの範囲である。巻芯Cとして専用樹脂・紙コアが採用され、巻芯Cの巻取速度が80~120m/min(メートル毎分)に設定される場合、最短距離DSが20mmに設定され、印加電圧EPが18~30kV(キロボルト)に設定される。なお、最短距離DSが短いほど、印加電圧を低く設定できるが、放電針9bを巻芯Cに近づけ過ぎると、スパークが発生したり、帯電ムラが発生したりする可能性がある。そのため、本実施の形態では、スパークや帯電ムラが発生しない最短距離として最短距離DSを20mmに設定している。また、本実施の形態では、印加可能な最大電圧は30kVであるものとする。
【0043】
また、巻芯Cとして専用樹脂・紙コアが採用され、巻芯Cの巻取速度が180~220m/minに設定される場合、最短距離DSが20mmに設定され、印加電圧EPが26~30kVに設定される。
【0044】
なお、紙コアは複数の層からなり、複数の層の中にはアルミ層が含まれている。よって、紙コアは導電性を有する。
【0045】
導電塗料コアの抵抗値は、10-1~10Ωの範囲である。巻芯Cとして導電塗料コアが採用され、巻芯Cの巻取速度が80~120m/minに設定される場合、最短距離DSが20mmに設定され、印加電圧EPが15~25kVに設定される。
【0046】
また、巻芯Cとして導電塗料コアが採用され、巻芯Cの巻取速度が180~220m/minに設定される場合、最短距離DSが20mmに設定され、印加電圧EPが20~25kVに設定される。
【0047】
金属コアの抵抗値は、10-8~10-7Ωの範囲である。巻芯Cとして金属コアが採用され、巻芯Cの巻取速度が80~120m/minに設定される場合、最短距離DSが20mmに設定され、印加電圧EPが10~20kVに設定される。
【0048】
また、巻芯Cとして金属コアが採用され、巻芯Cの巻取速度が180~220m/minに設定される場合、最短距離DSが20mmに設定され、印加電圧EPが15~20kVに設定される。
【0049】
上述した実施の形態によれば、巻芯Cの抵抗値、巻芯Cの巻取速度に応じて最短距離DS、印加電圧EPが適切な値(実証実験から導き出された図10に示す値)に設定される。そのため、巻芯Cを確実に帯電させることが可能になり、ウエブWを巻芯Cに対してより確実に吸着させることができる。
【0050】
また、上述した実施の形態によれば、巻芯Cの抵抗値に応じた最短距離DS、印加電圧EPの最適値が導出されているため、複数の種類のコア(専用樹脂・紙コア、導電塗料コア、金属コア)の中から最適なコアを巻芯Cとして採用することが可能である。
【0051】
なお、巻芯Cの抵抗値の違いによって必要になる印加電圧EPは異なるものの、金属コア、導電塗料コア、専用樹脂・紙コアのすべてにおいてウエブWの巻芯Cに対する吸着効果は確認されている。よって、最も安価で一般的に広く利用されている紙コアを巻芯Cとして積極的に採用することが可能である。
【0052】
また、上述した実施の形態によれば、図2に示すように、静電気付与装置9が挟持位置NPの出口側においてウエブWを挟んでカッター6に対向する位置に配置されている。詳細には、静電気付与装置9は、カッター6が回動した場合にカッター6に接触しない範囲でカッター6に対して可能な限り近接させた位置に配置されている。そのため、カッター6の切刃63によってウエブWが切断された直後に、ウエブWが放電針9bの先端と巻芯Cの外周面との間を通過することになる。その結果、静電気付与装置9が他の場所に配置される場合に比べて、ウエブWの切断端をいち早く巻芯Cに吸着させることが可能である。
【0053】
(変形例)
本発明によるウエブ巻取装置は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0054】
例えば、上述した実施の形態では、本発明の思想を特許文献1の図2、5~7に示すウエブ巻取装置1に適用する場合を例示したが、これに限定されず、特許文献1の図8、9に示すウエブ巻取装置1’、すなわち円板状の支持プレート31を有するターレット3を備えるウエブ巻取装置1’に適用してもよい。
【0055】
また、上述した実施の形態では、静電気付与装置9が図2に示す位置に配置されることで、マイナスのイオンが巻芯Cのみに作用する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、マイナスのイオンがウエブWと巻芯Cとの双方に作用するように、静電気付与装置9を配置してもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、最短距離DSが20mmに設定される場合を例示したが、これに限定されず、印加電圧を大きくできる余地があれば、最短距離DSが20mm以上に設定されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によるウエブ巻取装置は、テープレスの巻芯を自動的に交互に切り替えながら、連続してウエブをロール状に巻き取るのに好適である。
【符号の説明】
【0058】
1 ウエブ巻取装置、3 ターレット、5 ニップローラ、6 カッター、8 ニアローラ、9 静電気付与装置、9a バー本体、9b 放電針、9b 各放電針、11 ダンサローラ、63 切刃、64 回動腕、70 ブラシ体、C 巻芯、DS 最短距離、EP 印加電圧、NP 挟持位置、R 各種ガイドローラ、W ウエブ
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