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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ポップアップルーフ装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/34 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B60P3/34 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021053617
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150836
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】521127767
【氏名又は名称】株式会社スマイルファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】長藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】長藤 正紘
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-347879(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012019293(DE,A1)
【文献】特開2008-025235(JP,A)
【文献】特開2000-185556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00- 9/00
E04H 15/34,15/60
B60J 7/00- 9/04
B60J 11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根部に設けられるポップアップルーフ装置であって、
前記屋根部に形成される開口部を開閉するトップカバーと、
前記屋根部と前記トップカバーとの間に設けられ、前記トップカバーが開状態のときは、前記屋根部と前記トップカバーとの間の拡張空間を囲む張設状態となり、前記トップカバーが閉状態のときは、前記トップカバーの内側に収納される収納状態となる可撓性のテント部材と、を備え、
前記トップカバーは、前記屋根部の車幅方向一側端部に沿う基端側と、前記屋根部の車幅方向他側端部に沿う先端側と、を有し、前記基端側を回動支点とする前記先端側の昇降に基づいて前記開口部を開閉し、
前記張設状態の前記テント部材は、前記トップカバーの先端側と前記屋根部の車幅方向他端側とを結び、且つ前記車両の前後方向に沿う形態で張設されるポップアップルーフ装置において、
前記張設状態の前記テント部材は、車両前方又は車両後方から視て、前記トップカバーの先端と前記屋根部の車幅方向他端とを結ぶ仮想直線よりも外側方に張り出す張り出し部を備え、
前記張り出し部を前記テント部材の内側から支持し、前記張り出し部を張り出し状態に保持する保持部材を更に備え、
前記保持部材は、連結及び分離可能な複数の突っ張り部材を備え、前記突っ張り部材を連結させた状態では、前記張り出し部と前記屋根部との間で突っ張って前記張り出し部を張り出し状態に保持可能であり、前記突っ張り部材を分離させた状態では、前記張り出し部の張り出し状態を解除して前記トップカバーの閉操作を許容し、
前記保持部材は、前記突っ張り部材と前記屋根部との間に設けられ、前記突っ張り部材の基端部を突っ張り方向に変位させる突っ張り姿勢と、前記突っ張り部材の基端部を反突っ張り方向に退避させる退避姿勢とに揺動変姿する揺動部材を備え、
前記揺動部材は、前記突っ張り部材との連結点が、前記突っ張り部材の先端部と前記揺動部材の揺動支点とを結ぶ仮想直線を越えることにより、前記テント部材から受ける反力で前記突っ張り姿勢を維持するポップアップルーフ装置。
【請求項2】
前記張り出し部を収納方向に付勢する弾性部材を更に備える請求項に記載のポップアップルーフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の屋根部に設けられるポップアップルーフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の屋根部に設けられるポップアップルーフ装置が知られている。例えば、特許文献1には、屋根部に形成される開口部を開閉するトップカバーと、屋根部とトップカバーとの間に設けられ、トップカバーが開状態のときは、屋根部とトップカバーとの間の拡張空間を囲む張設状態となり、トップカバーが閉状態のときは、トップカバーの内側に収納される収納状態となる可撓性のテント部材と、を備えるポップアップルーフ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3004527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトップカバーは、基端側を回動支点とする先端側の昇降に基づいて開口部を開閉させるので、トップカバー全体を昇降させる場合に比べてトップカバーの開閉機構を簡略化できるという利点があるものの、回動支点が屋根部の後端部であるため、屋根部が前方に向けて傾斜開口する形態になるのみで屋根部の長手方向(前後方向)において均一な高さの拡張空間が得られず、拡張空間の用途が制限される虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、車両の屋根部に設けられるポップアップルーフ装置であって、前記屋根部に形成される開口部を開閉するトップカバーと、前記屋根部と前記トップカバーとの間に設けられ、前記トップカバーが開状態のときは、前記屋根部と前記トップカバーとの間の拡張空間を囲む張設状態となり、前記トップカバーが閉状態のときは、前記トップカバーの内側に収納される収納状態となる可撓性のテント部材と、を備え、前記トップカバーは、前記屋根部の車幅方向一側端部に沿う基端側と、前記屋根部の車幅方向他側端部に沿う先端側と、を有し、前記基端側を回動支点とする前記先端側の昇降に基づいて前記開口部を開閉し、前記張設状態の前記テント部材は、前記トップカバーの先端側と前記屋根部の車幅方向他端側とを結び、且つ前記車両の前後方向に沿う形態で張設されるポップアップルーフ装置において、前記張設状態の前記テント部材は、車両前方又は車両後方から視て、前記トップカバーの先端と前記屋根部の車幅方向他端とを結ぶ仮想直線よりも外側方に張り出す張り出し部を備え、前記張り出し部を前記テント部材の内側から支持し、前記張り出し部を張り出し状態に保持する保持部材を更に備え、前記保持部材は、連結及び分離可能な複数の突っ張り部材を備え、前記突っ張り部材を連結させた状態では、前記張り出し部と前記屋根部との間で突っ張って前記張り出し部を張り出し状態に保持可能であり、前記突っ張り部材を分離させた状態では、前記張り出し部の張り出し状態を解除して前記トップカバーの閉操作を許容し、前記保持部材は、前記突っ張り部材と前記屋根部との間に設けられ、前記突っ張り部材の基端部を突っ張り方向に変位させる突っ張り姿勢と、前記突っ張り部材の基端部を反突っ張り方向に退避させる退避姿勢とに揺動変姿する揺動部材を備え、前記揺動部材は、前記突っ張り部材との連結点が、前記突っ張り部材の先端部と前記揺動部材の揺動支点とを結ぶ仮想直線を越えることにより、前記テント部材から受ける反力で前記突っ張り姿勢を維持するポップアップルーフ装置である。
請求項2の発明は、前記張り出し部を収納方向に付勢する弾性部材を更に備える請求項に記載のポップアップルーフ装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、トップカバーは、屋根部の車幅方向一側端部に沿う基端側を回動支点とする先端側の昇降に基づいて開口部を開閉させるので、トップカバー全体を昇降させる場合に比べてトップカバーの開閉機構を簡略化できる。また、張設状態のテント部材は、トップカバーの先端側と屋根部の車幅方向他端側とを結び、且つ車両の前後方向に沿う形態で張設されるので、屋根部の長手方向(車両前後方向)において均一な高さの拡張空間が得られ、拡張空間の用途を広げることができる。
しかも張設状態のテント部材は、車両前方又は車両後方から視て、トップカバーの先端と屋根部の車幅方向他端とを結ぶ仮想直線よりも外側方に張り出す張り出し部を備えるので、屋根部の長手方向全域において拡張空間を広くし、拡張空間の用途を更に広げることができる。
さらに張り出し部をテント部材の内側から支持し、張り出し部を張り出し状態に保持する保持部材を更に備えるので、テント部材の張設形態を良好に維持できる。
そのうえ保持部材は、連結及び分離可能な複数の突っ張り部材を備え、突っ張り部材を連結させた状態では、張り出し部と屋根部との間で突っ張って張り出し部を張り出し状態に保持可能であり、突っ張り部材を分離させた状態では、張り出し部の張り出し状態を解除してトップカバーの閉操作を許容するので、トップカバーの閉操作時に保持部材が邪魔になることを防止できる。
またさらに保持部材は、突っ張り部材と屋根部との間に設けられ、突っ張り部材の基端部を突っ張り方向に変位させる突っ張り姿勢と、突っ張り部材の基端部を反突っ張り方向に退避させる退避姿勢とに揺動変姿する揺動部材を備え、揺動部材は、突っ張り部材との連結点が、突っ張り部材の先端部と揺動部材の揺動支点とを結ぶ仮想直線を越えることにより、テント部材から受ける反力で突っ張り姿勢を維持するので、いわゆる支点越え作用を利用した簡単な構成で揺動部材を突っ張り姿勢に保持できる。
また、請求項の発明によれば、張り出し部を収納方向に付勢する弾性部材を更に備えるので、テント部材をトップカバーの内側に収納する際の作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るポップアップルーフ装置(開状態)が設けられた車両の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るポップアップルーフ装置(開状態)が設けられた車両の左側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るポップアップルーフ装置(開状態)が設けられた車両の背面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るポップアップルーフ装置(閉状態)が設けられた車両の平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るポップアップルーフ装置(閉状態)が設けられた車両の正面図である。
図6】ポップアップルーフ装置の基板上に敷設される分割式床材の平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るポップアップルーフ装置(開状態)が設けられた車両の斜視図である。
図8】ポップアップルーフ装置の分解斜視図である。
図9】(a)は図4のA-A断面図、(b)は図2のB-B断面図である。
図10】突っ張り状態の保持部材を示す図である。
図11】(a)は分離状態の保持部材を示す図、(b)は要部拡大図である。
図12】保持部材の第1の連結手順(連結前準備時)を示す図である。
図13】保持部材の第2の連結手順(連結時)を示す図である。
図14】揺動部材の支点越え操作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1図9において、1は車両Vの屋根部に設けられるポップアップルーフ装置であって、該ポップアップルーフ装置1は、基板2、床材3、トップカバー4、蝶板5、オイルダンパー6、テント部材7、保持部材8及び弾性部材9を備える。なお、本実施形態の車両Vは、ワンボックスの軽自動車であるが、ワンボックスの普通車や大型車であってもよい。また、ワンボックスに限定されず、ステーションワゴン、SUV、セダン、トラックなどであってもよい。
【0009】
基板2は、車両Vの既存の屋根部を切除して開口した後、切除部分の開口部周縁を塞ぐように車両Vに取り付けられ、車両Vの屋根部補強部材として機能する。図8に示すように、基板2は剛性部材により額縁状に形成されており、上面部に下方に窪む平面視四角形の凹部2aを有し、凹部2aの中央部には、人の出入りが可能な平面視四角形の開口部2bが形成されている。
【0010】
床材3は、矩形のボード状に構成され開口部2bを覆うように基板2の凹部2aに横渡しに架設して敷設可能であり、後述する拡張空間の床部を構成する。拡張空間を就寝空間として利用する場合は、床材3がベッドとして機能する。図6に示すように、本実施形態の床材3は、前後方向に並ぶ複数の分割床材3a、3b、3cで構成されている。このような分割式によれば、床材3の敷設や撤去が容易になる。後述するトップカバー4を上昇させて横開き開閉にすることにより、前から後まで均一な高さを確保することができ、これによって天井部分の空間を確保でき、上部空間床部に床材3を装着することによって、上下で二つの空間が確保でき、大幅な居住空間が確保できる。
【0011】
車両Vの屋根部となるトップカバー4は、複数の蝶板5を介して基板2に回動可能に支持され、回動操作に応じて基板2の上面部(凹部2a及び開口部2b)を開閉する。具体的に説明すると、トップカバー4は、図1図5に示すように、基板2の車幅方向一側端部(例えば、右側端部)に沿う基端側と、基板2の車幅方向他側端部(例えば、左側端部)に沿う先端側と、を有する平面視四角形のカバー部材であり、基端側を回動支点とする先端側の昇降に基づいて基板2の上面部を上昇位置と下降位置とに開閉する。本実施形態では、トップカバー4の開状態における回動角度を略45°に設定しているが、トップカバー4の開状態における回動角度は、30~90°の範囲で変更してもよい。
【0012】
このようなトップカバー4によれば、基板2の車幅方向一側端部に沿う基端側を回動支点とする先端側の昇降に基づいて基板2の上面部を上昇位置と下降位置とに開閉させるので、トップカバー4全体を昇降させる場合に比べてトップカバー4の開閉機構を簡略化できるだけでなく、屋根部の長手方向(前後方向)において均一な高さの拡張空間が得られ、拡張空間の用途を広げることができる。
【0013】
オイルダンパー6は、基板2とトップカバー4との間に設けられ、トップカバー4を開方向に付勢することにより、トップカバー4の開操作をアシストする。本実施形態では、トップカバー4の前側を付勢する第1のオイルダンパー6と、トップカバー4の後側を付勢する第2のオイルダンパー6と、を備える。オイルダンパー6は、トップカバー4が開状態のときは、伸長状態でトップカバー4の前後に露出するが、トップカバー4が閉状態のときは、縮小状態でトップカバー4の内側に収納される。
【0014】
テント部材7は、基板2とトップカバー4との間に設けられる可撓性のシート材であり、トップカバー4が上昇位置にある開状態のときは、基板2とトップカバー4との間の下面周囲に形成される拡張空間を囲む張設状態となり、トップカバー4が下降位置にある閉状態のときは、トップカバー4の内側に折り畳み状に収納される収納状態となる。そして、張設状態のテント部材7は、トップカバー4の先端側(例えば、左端側)と基板2の車幅方向他端側(例えば、左端側)とを結び、且つ車両Vの前後方向に沿う形態で張設される。これにより、基板2の長手方向(車両前後方向)において均一な高さの拡張空間が得られ、拡張空間の用途を広げることができる。即ち、トップカバー4を横開き開閉出来る構造にしたことにより車両Vの狭い室内(室内高)を上部に拡張するに際し、前から後まで均一な室内高さを確保できることから人が室内で立った姿勢状態での移動も可能になり居住性を向上させたものである。
【0015】
また、張設状態のテント部材7は、図1及び図3に示すように、車両前方又は車両後方から視て、トップカバー4の先端(例えば、左端)と基板2の車幅方向他端(例えば、左端)とを結ぶ仮想直線L1よりも外側方に張り出す張り出し部7aを備える。このような張り出し部7aによれば、屋根部の長手方向全域において拡張空間を広くし、拡張空間の用途を更に広げることができる。
【0016】
図1図3図8に示すように、テント部材7は、拡張空間の前方を覆う前面部7bと、拡張空間の後方を覆う後面部7cと、拡張空間の車幅方向他側方(例えば、左側方)を覆う側面部7dと、拡張空間の上方を覆う上面部7eと、を備える。そして、前面部7bと後面部7cと側面部7dとで囲まれる下面に人が立ち姿勢になることを許容できる開口部7gを有するスカート状の幌状形態に構成され、開口部7gの周辺底部は基板2に密閉状に止着されている。テント部材7の前面部7b及び側面部7dには、窓7fが設けられている。窓7fは、外部光を遮断するテント幕部材で被覆される構成にされているが、膜部材を巻き上げると、透明な樹脂シート、防虫網などが露出されることにより、拡張空間の採光や換気が可能になる。
【0017】
保持部材8は、図9に示すように、張り出し部7aをテント部材7の内側から支持し、張り出し部7aを張り出し状態に保持する。図10図14に示すように、本実施形態の保持部材8は、連結及び分離可能な複数の突っ張り部材81、82を備え、突っ張り部材81、82を連結させた状態では、張り出し部7aと基板2との間で突っ張って張り出し部7aを張り出し状態に保持可能であり、突っ張り部材81、82を分離させた状態では、張り出し部7aの張り出し状態を解除してトップカバー4の閉操作を許容する。
【0018】
具体的に説明すると、第1突っ張り部材81は、コ字状のパイプ部材であり、張り出し部7aの頂部の内側に沿う作用部81aと、作用部81aの両端から拡張空間の対角側に延出する前後一対の延出部81bと、を備える。また、第2突っ張り部材82は、前後一対の延出部81bの先端部に対して抜き差し可能な一対のロッド部材である。
【0019】
保持部材8は、第2突っ張り部材82と基板2との間に設けられる揺動部材83を更に備える。揺動部材83は、第2突っ張り部材82の基端部を突っ張り方向に変位させる突っ張り姿勢と、第2突っ張り部材82の基端部を反突っ張り方向に退避させる退避姿勢とに揺動変姿する。本実施形態の揺動部材83は、基板2に固定されるブラケット84に揺動支軸85を介して車幅方向に揺動可能に取り付けられており、揺動部材83の先端部には、第2突っ張り部材82の基端部が連結軸86を介して揺動部材83と同方向に揺動可能に連結されている。
【0020】
図10は、突っ張り状態の保持部材8を示し、図11の(a)、(b)は分離状態の保持部材8を示している。図11に示すように、第1突っ張り部材81と第2突っ張り部材82を分離させ、且つ揺動部材83及び第2突っ張り部材82を基板2の上面に沿わせた状態では、トップカバー4の閉操作が許容される。また、トップカバー4を閉状態から開操作した場合も、保持部材8は図11に示す状態であり、保持部材8をこの状態から図10に示す突っ張り状態にする場合は、図12図14に示す手順で操作を行う。
【0021】
図12は、保持部材8の第1の連結手順(連結前準備時)を示し、図13は、保持部材8の第2の連結手順(連結時)を示し、図14は、揺動部材83の支点越え操作を示している。まず、図12に示すように、突っ張り姿勢の揺動部材83を退避姿勢側に起立するように揺動操作した後、図13に示すように、第1突っ張り部材81及び第2突っ張り部材82を手で持ち互いを連結させる。その後、図14に示すように、揺動部材83を退避姿勢から突っ張り姿勢に揺動させると、第2突っ張り部材82と揺動部材83との連結点である連結軸86が、第1突っ張り部材81の先端部と揺動部材83の揺動支点(揺動支軸85)とを結ぶ仮想直線L2を越えることにより、揺動部材83は、テント部材7から受ける反力でブラケット84側に押し付けられ、突っ張り姿勢を維持する。また、図12図14に示す手順の逆の手順を行えば、図10及び図14に示す突っ張り状態の保持部材8を図11に示す分離状態とし、トップカバー4を閉操作することが可能になる。
【0022】
弾性部材9は、テント部材7の張り出し部7aを収納方向に付勢する。例えば、本実施形態の弾性部材9は、図9の(b)に示すように、テント部材7に掛け回されたゴムバンドであり、トップカバー4を閉操作する際、テント部材7をトップカバー4の内側に引き込む。引き込まれたテント部材7は、図9の(a)に示すように、トップカバー4と基板2との間の空間に折り畳み状に収納される。
【0023】
なお、トップカバー4の下面部には、トップカバー4の開閉操作時に握られる把手41や、収納したテント部材7のはみ出しを規制するベルト42が設けられている。ベルト42は、トップカバー4の閉状態において、基板2に設けられるフック(図示せず)に係止することで、収納したテント部材7のはみ出しを規制する。また、トップカバー4の閉状態では、分割床材3a~3cがテント部材7で押圧されるため、走行時のガタツキが防止される。特に、前後方向に並ぶ3枚の分割床材3a~3cのうち、中間の分割床材3bの向きを左右方向から前後方向に変え、収納されるテント部材7と他の分割床材3a、3cとの間に挟み込ませるようにすれば、テント部材7による分割床材3a~3cの押圧力が増加し、走行時のガタツキをより確実に防止することが可能になる。
【0024】
図5に示すように、トップカバー4を下降させて閉状態にしたときには、基板2に密着する形態にして車両のボディーライン(デザイン)に合わせて閉じることができて、通常の車両デザインと変わらぬ形状にされている。走行時は基板2に密着され、休憩や車中泊、キャンピング、テレワークなどの停車時にはトップカバー4が横開き式で前後に配設されたオイルダンパー6により、軽く開閉出来て上方に跳ね上がり室内空間(室内高さ)を高くしてさらに空間が広くなるようにしてあるものである。
【0025】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、車両Vの屋根部(基板2)に設けられるポップアップルーフ装置1であって、基板2に形成される開口部2bを開閉するトップカバー4と、基板2とトップカバー4との間に設けられ、トップカバー4が開状態のときは、基板2とトップカバー4との間の拡張空間を囲む張設状態となり、トップカバー4が閉状態のときは、トップカバー4の内側に収納される収納状態となる可撓性のテント部材7と、を備え、トップカバー4は、基板2の車幅方向一側端部に沿う基端側と、基板2の車幅方向他側端部に沿う先端側と、を有し、基端側を回動支点とする先端側の昇降に基づいて開口部2bを開閉するので、トップカバー4全体を昇降させる場合に比べてトップカバー4の開閉機構を簡略化できる。また、張設状態のテント部材7は、トップカバー4の先端側と基板2の車幅方向他端側とを結び、且つ車両Vの前後方向に沿う形態で張設されるので、基板2の長手方向(車両前後方向)において均一な高さの拡張空間が得られ、拡張空間の用途を広げることができる。
【0026】
また、張設状態のテント部材7は、車両前方又は車両後方から視て、トップカバー4の先端と基板2の車幅方向他端とを結ぶ仮想直線L1よりも外側方に張り出す張り出し部7aを備えるので、基板2の長手方向全域において拡張空間を広くし、拡張空間の用途を更に広げることができる。
【0027】
また、ポップアップルーフ装置1は、張り出し部7aをテント部材7の内側から支持し、張り出し部7aを張り出し状態に保持する保持部材8を更に備えるので、テント部材7の張設形態を良好に維持できる。
【0028】
また、保持部材8は、連結及び分離可能な複数の突っ張り部材81、82を備え、突っ張り部材81、82を連結させた状態では、張り出し部7aと基板2との間で突っ張って張り出し部7aを張り出し状態に保持可能であり、突っ張り部材81、82を分離させた状態では、張り出し部7aの張り出し状態を解除してトップカバー4の閉操作を許容するので、トップカバー4の閉操作時に保持部材8が邪魔になることを防止できる。
【0029】
また、保持部材8は、第2突っ張り部材82と基板2との間に設けられ、第2突っ張り部材82の基端部を突っ張り方向に変位させる突っ張り姿勢と、第2突っ張り部材82の基端部を反突っ張り方向に退避させる退避姿勢とに揺動変姿する揺動部材83を備え、揺動部材83は、第2突っ張り部材82との連結点が、第1突っ張り部材81の先端部と揺動部材83の揺動支点とを結ぶ仮想直線L2を越えることにより、テント部材7から受ける反力で突っ張り姿勢を維持するので、いわゆる支点越え作用を利用した簡単な構成で揺動部材83を突っ張り姿勢に保持できる。
【0030】
また、ポップアップルーフ装置1は、張り出し部7aを収納方向に付勢する弾性部材9を更に備えるので、テント部材7をトップカバー4の内側に収納する際の作業が容易になる。
【0031】
以上のように本実施形態によれば、特に1BOXタイプの市販標準タイプ自動車を改造して車輌内部の居住空間スペースが可及的に最大限となるよう創案工夫したポップアップルーフの構成を有する車中泊車、キャンピンカー、移動販売自動車、移動事務室車(テレワーク車、リモートワーク車)などに活用できる自動車のルーフを提供できるものである。本実施形態で説明したトップカバーを、例えばFRP製屋根部材で構成し、基板2もFRP製の二重構造にしておくと断熱効果を向上出来る。それにより社内用のクーラー、暖房の効きもよくなる利点が生じる。また、大雨時にトップカバー4を雨が叩く雨音も鉄板製のトップカバーに比べて減少することも実現出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 ポップアップルーフ装置
2 基板
2a 凹部
2b 開口部
3 床材
3a~3c 分割床材
4 トップカバー
41 把手
42 ベルト
5 蝶板
6 オイルダンパー
7 テント部材
7a 張り出し部
7b 前面部
7c 後面部
7d 側面部
7e 上面部
7f 窓
7g 開口部
8 保持部材
81 第1突っ張り部材
81a 作用部
81b 延出部
82 第2突っ張り部材
83 揺動部材
84 ブラケット
85 揺動支軸
86 連結軸
9 弾性部材
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14