(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
A61M5/315 510
(21)【出願番号】P 2021159771
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591065402
【氏名又は名称】株式会社タスク
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 透
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-049726(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002398(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111388806(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0198499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に突起部を有するプランジャと、
シリンジのフランジ部に被せるカバーであって、前記プランジャを通過させる穴部、及び前記突起部を通過させる前記穴部の内面に設けられた凹部を有するフランジカバーと、
を備え、
前記突起部が、前記プランジャの前端側に軸方向に延びる第1の突起部と、前記プランジャの後端側に軸方向に延び、周方向で前記第1の突起部と異なる位置に配置された第2の突起部と、前記第1の突起部の後端及び前記第2の突起部の前端を連続的に繋ぐ連続突起部とを有し、
前記シリンジの前記フランジ部に前記フランジカバーが取り付けられ、前記プランジャが前記シリンジに装着されて、前記第2の突起部が前記凹部内に位置する状態から前記プランジャを後方へ引くと、前記第2の突起部、前記連続突起部、前記第1の突起部の順に前記凹部内を通過し、前記第1の突起部の後端が前記凹部を通過するとき、前記プランジャが前記フランジカバーに対して回転する、定量投与部材。
【請求項2】
前記第1の突起部の後端が、軸方向に対して傾斜した面を有し、前記第2の突起部の前端が、軸方向に対して略直角な面を有し、
前記第1の突起部が前記凹部内に位置する状態から前記プランジャを前方に押すと、前記第1の突起部、前記連続突起部の順に前記凹部内を通過し、前記第2の突起部の前端が前記フランジカバーに当接する、請求項1に記載の定量投与部材。
【請求項3】
薬液注入を行うために、前記シリンジの奥まで挿入された前記プランジャを、前記第2の突起部が前記フランジカバーを通り、前記プランジャが回転しつつ前記連続突起部が前記フランジカバーを通り、前記第1の突起部がフランジカバーを通過するまで引き、
エア抜き行うために、前記第2の突起部の前端が前記フランジカバーに当接するまで前記プランジャを押し込み、
定量投与を行うために、前記プランジャを回転させ、前記第2の突起部を前記凹部と一致させ、プランジャを押し込む、請求項2に記載の定量投与部材。
【請求項4】
前記凹部は前記フランジカバーの中心軸に対して点対称に2つあり、
前記第1の突起部と前記第2の突起部は、それぞれの前記凹部に対応して存在する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定量投与部材。
【請求項5】
さらに、前記突起部が、前記プランジャの前記第2の突起部の後端側に軸方向に延び、周方向で前記第2の突起部と異なる位置に配置された第3の突起部と、前記第2の突起部の後端及び前記第3の突起部の前端を連続的に繋ぐ第2の連続突起部とを有し、
前記シリンジの前記フランジ部に前記フランジカバーが取り付けられ、前記プランジャが前記シリンジに装着されて、前記第3の突起部が前記凹部内に位置する状態から前記プランジャを後方へ引くと、前記第3の突起部、前記第2の連続突起部、前記第2の突起部の順に前記凹部内を通過し、前記第2の突起部の後端が前記凹部を通過するとき、前記プランジャが前記フランジカバーに対して回転する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定量投与部材。
【請求項6】
前記第2の突起部の後端が、軸方向に対して傾斜した面を有し、前記第3の突起部の前端が、軸方向に対して略直角な面を有し、
前記第3の突起部が前記凹部内に位置する状態から前記プランジャを前方に押すと、前記第3の突起部、前記第2の連続突起部の順に前記凹部内を通過し、前記第3の突起部の前端が前記フランジカバーに当接する、請求項5に記載の定量投与部材。
【請求項7】
前記プランジャに取り付けられたガスケットの外面の形状は、前記シリンジの先端の内面の形状と一致する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定量投与部材。
【請求項8】
前記定量投与部材は、0.1mLから2mLの薬液を注射するために用いられる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定量投与部材。
【請求項9】
シリンジと、
前記シリンジに取り付けられた請求項1乃至8のいずれか1項に記載の定量投与部材と、
を備えた、注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量投与部材及び注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン注射、ボツリヌストキシン注射など、あらかじめ定められた薬液量を投与する治療は数多くある。一般的なシリンジは、1mL、2mL、10mLなど、治療に必要な薬液量とは必ずしも一致しないで提供される。そのようなシリンジを用いた治療では、シリンジに印刷された薬液量を目視で確認して投与することになるため、誤った量を投与する虞があった。定量して投与が必要な薬液は、量を誤ると患部への効果だけでなく人体への悪い影響が出る、ボツリヌストキシンなど危険な薬液も存在する。
【0003】
そこで、特許文献1では、必要な場合にのみ選択的に、目的の量の送液を容易にするために、内部に液体を充填可能な外筒と、外筒内で当該外筒の長手方向に沿って移動可能であり、長手方向に並ぶ複数の凹部及び凸部が形成された押し子と、押し子の移動に伴い少なくとも前記凸部と順次滑動可能に接触する突起部、及び押し子と接して当該押し子の外筒に対する回転規制部を備え、外筒に装着可能な環形状の装着具と、を有するシリンジを開示している。
【0004】
しかしながら、このようなシリンジは、投与しながら薬液の量を調整するため、誤った量を投与する可能性があった。
【0005】
特許文献2は、簡単な操作で正確な量の液体を排出することができるように、外筒と、外筒内で摺動し得るガスケットとガスケットを移動操作する押し子と、押し子の長手方向に沿ってスライド可能に設置されたストッパーとを備え、ストッパーは、その内部に設けられた係合部が押し子に形成されたラックに係合することにより押し子に対し固定されており、操作部を押圧すると、この固定状態が解除され、押し子上でのストッパーの位置を調整することができ、操作部の押圧を解除すると、固定状態に戻り、押し子を先端方向に押圧したとき、ストッパーの先端面が外筒の基端部に当接することにより、外筒内への押し子の挿入深さが規制され、これにより、設定した量の薬剤が縮径部より排出されるシリンジを開示している。
【0006】
しかしながら、このような定量シリンジは、追加部品点数が多く、構造が複雑で安価に製造できない。また、定量のための操作手順も多く、薬液投与まで時間を要する欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/161434号
【文献】特開2003-199828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は目視以外でも定量を行い誤った量の投与をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供することを目的とする。また、プランジャの定量開始位置を確認することにより、エア抜き以上の薬液を注入する無駄をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供することを目的とする。また、汎用シリンジのプランジャを変更し、フランジカバーを追加することで安価に定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定量投与部材は、
外面に突起部を有するプランジャと、
シリンジのフランジ部に被せるカバーであって、前記プランジャを通過させる穴部、及び前記突起部を通過させる前記穴部の内面に設けられた凹部を有するフランジカバーと、
を備え、
前記突起部が、前記プランジャの前端側に軸方向に延びる第1の突起部と、前記プランジャの後端側に軸方向に延び、周方向で前記第1の突起部と異なる位置に配置された第2の突起部と、前記第1の突起部の後端及び前記第2の突起部の前端を連続的に繋ぐ連続突起部とを有し、
前記シリンジの前記フランジ部に前記フランジカバーが取り付けられ、前記プランジャが前記シリンジに装着されて、前記第2の突起部が前記凹部内に位置する状態から前記プランジャを後方へ引くと、前記第2の突起部、前記連続突起部、前記前記第1の突起部の順に前記凹部内を通過し、前記連続突起部が前記凹部を通過するとき、前記プランジャが前記フランジカバーに対して回転する定量投与部材である。
【0010】
上記構成により、プランジャのエア抜き位置でプランジャが回転するため、エア抜きに必要な量を簡単に決めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、目視以外でも定量を行い誤った量の投与をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。また、プランジャの定量開始位置を確認することにより、エア抜き以上の薬液を注入する無駄をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。また、汎用シリンジのプランジャを変更し、フランジカバーを追加することで安価に定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る注射器の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る注射器の概略分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るプランジャの平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るフランジカバーにおけるプランジャのそれぞれの位置の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るプランジャの動作を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係るプランジャの平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るプランジャを押し込んだ注射器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための様々な実施の形態を、図面を参照して説明する。なお以下に説明する定量投与部材及び注射器は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定しない。要点の説明または理解の容易性を考慮して、異なる図面で同様の部材について便宜上符号を同一にして示す。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0014】
(本発明の実施の形態に係る注射器)
図1は、本発明の実施の形態に係る注射器の概略斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る注射器の概略分解斜視図である。
図1及び2を参照して本発明の実施の形態に係る注射器を説明する。
【0015】
図1では、本実施の形態に係る注射器101は、針が取り付けられた針ハブが装着される前の状態を示す。注射器の針のある矢印方向103を前端、前端側、前端方向、前端部、前方などとし、シリンジにプランジャが挿入される矢印方向105を後端、後端側、後端方向、後端部、後方とする。
【0016】
図2に示すように、本実施の形態に係る注射器101は、薬液が貯蔵されるシリンジ111、シリンジ111に装着され、シリンジ111の薬液を押し込むプランジャ107、及びシリンジ111のフランジ部114に被せるフランジカバー109を備える。フランジカバー109は、プランジャ107を通過させる穴部116を有し、プランジャ107を固定する。プランジャ107の前端には、ガスケット113が装着される。前端に装着されたガスケット113により、プランジャ107は、シリンジ111内の薬液を漏れることなく前側に押し出すピストンの機能を果たすことができる。
【0017】
図2に示すように、ガスケット113は、フランジカバー109の穴部116を通過しないので、フランジカバー109は、プランジャ107とガスケット113との間に挟まれるように組み立てられる。本実施の形態では、汎用のシリンジ111に、ガスケット113の取り付けられたプランジャ107及びフランジカバー109から構成される定量投与部材112が装着されて、注射器101が形成される。
【0018】
シリンジ111は、ポリプロピレンなどの樹脂で作製されることが好ましい。また、プランジャ107は、ポリプロピレン、ABSなどの樹脂で作製されることが好ましい。また、フランジカバー109は、ポリプロピレン、ABSなどの樹脂で作製されることが好ましい。また、ガスケットは、全体がシリコン、エラストマなどの樹脂で作製されることが好ましい。
【0019】
(第1の実施の形態に係る定量投与部材)
図3は、第1の実施の形態に係るプランジャの平面図である。
図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る定量投与部材112を説明する。
【0020】
本実施の形態の定量投与部材112は、プランジャ107、フランジカバー109、ガスケット113を備える。
図3に示すように、プランジャ107は、外面に突起部115、117、119を有する。突起部は、プランジャ107の前端側に軸方向に延びる第1の突起部115と、プランジャ107の後端側に軸方向に延び、周方向で第1の突起部115と異なる位置に配置された第2の突起部117と、第1の突起部115の後端及び第2の突起部117の前端を連続的に繋ぐ連続突起部119と、を有する。
【0021】
第1の突起部115の後端は、軸方向に対して傾斜した面121を有する。傾斜した面121は、軸半径方向に切り立った稜線のように連続突起部119と繋がっている。連続突起部119は、第1の突起部115及び第2の突起部117より周方向に短く、第1の突起部115と第2の突起部117を周方向に重なる部分で繋ぐように形成される。連続突起部119は、軸方向に平行して延びることが好ましい。
【0022】
第2の突起部117の前端は、軸方向に対して略直角(直角を含む)な面123を有する。この面は、フランジカバー109に当接してストッパの役割を果たす。したがって、軸半径方向に対しても切り立っていることが好ましい。
【0023】
(薬液注入時と薬液投与時の定量投与部材の動作)
図4は、本発明の実施の形態に係るフランジカバーにおけるプランジャのそれぞれの位置の断面図である。
図5は、本発明の実施の形態に係るプランジャの動作を示す図である。
図4及び5を参照して、シリンジからプランジャを引き出す(薬液注入時)ときと、プランジャを押し込むとき(薬液投与時)の定量投与部材112の動きを説明する。
【0024】
まず、フランジカバー109にプランジャ107を通し、ガスケット113を装着して定量投与部材112を作製する。その後、シリンジ111のフランジ部114にはカバーであるフランジカバー109が被せられる。
図4に点線で示すように、フランジカバー109は、プランジャ107が通る穴部116を有し、穴部116の内面には、プランジャ107の突起部115、117、119を通過させる凹部125が設けられる(符号は右下図参照)。
【0025】
ここで、凹部125は、フランジカバー109の中心軸に対して点対称に2つあり、これに対応して第1の突起部115と第2の突起部117が存在することが好ましい。凹部125は1つでもよいが、フランジカバー109の中心軸に対して3つ以上あると、構造が複雑になりコストが上がるため好ましくない。凹部125が複数あることでプランジャ107がフランジカバー109に安定して固定される。
【0026】
また、フランジカバー109内でのプランジャ107の位置を安定化させるために、フランジカバーの中心軸に対して点対称に、プランジャ107の外面に複数の凸部を有することが好ましい。凸部の高さは、穴部116の径よりわずかに小さいことが好ましい。本実施の形態のように2つの凸部が、フランジカバー109の中心軸に対し2つの突起部115,117,119と90°ずれていると、さらにプランジャ107を安定化させることができる。
【0027】
まず、薬液注入時を説明する。
図4の右下図に示すように、プランジャ107はシリンジ111に一杯に奥に押し込まれ、フランジカバー109はA-A線上にある。プランジャ107の第2の突起部117の断面は、フランジカバー109の凹部125と一致する。すなわち第2の突起部117は、フランジカバー109を通る。
【0028】
図4の右中図に示すように、プランジャ107を引き抜いていくと、フランジカバー109は、B-B線上に来る。ここまでが、定量の薬液注入になる。ここで、プランジャ107の連続突起部119の断面は、フランジカバーの凹部125と一致する。すなわち連続突起部119は、フランジカバー109を通る。
【0029】
ここから、さらにプランジャ107を引き抜くと、フランジカバー109は第1の突起部115の後端の傾斜した面121に当たり、
図4右中図の矢印に示す方向にプランジャ107が自動的に回転する。自動的に回転するため、プランジャ107の定量位置にあることが目視だけでなく触覚で分かる。したがって、この位置からの注入をエア抜きのための予備注入とすることができる。
【0030】
プランジャ107が始めの位置から回転するため第1の突起部115の断面が凹部125と一致する。すなわち第1の突起部115は、フランジカバー109を通る。
図4の右上図に示すように、エア抜きのための予備注入をフランジカバー109がD-D線に来たときに終了する。
【0031】
ここで、
図5に示すように、薬液注入時のプランジャ107は、第2の突起部117が凹部125内に位置する状態から真っ直ぐ引かれると、第2の突起部117、連続突起部119、第1の突起部115の順に凹部125内を通過する。プランジャ107は、第1の突起部115の後端の傾斜した面121が凹部125を通過するとき、傾斜した面121に沿って回転する。
【0032】
次に、エア抜きを説明する。
図4の左上図に示すように、薬液を注入されたときフランジカバー109はプランジャ107のD-D線上にある。このとき、プランジャ107は、第1の突起部115の断面が凹部125と一致する。すなわち、第1の突起部115は、フランジカバー109を通る。
【0033】
図4左中図に示すように、フランジカバー109がプランジャ107のC-C線上に来るまで薬液を放出し、エア抜きを行う。このとき、第2の突起部117の断面は、フランジカバー109の凹部125と一部は一致するが、完全には一致せず、プランジャの第2の突起部117の前端がフランジカバー109と当接することが分かる。
【0034】
最後に定量投与を説明する。
図4左中図に示す矢印の方向にプランジャを操作者が回転させることで、第2の突起部117をフランジカバー109の凹部125と一致させる。この回転動作を行うことでここから定量の薬液を注入することが操作者に意識される。その後、
図4の左下図に示すように、第2の突起部117は、フランジカバー109の凹部を通過し、プランジャ107はシリンジ111に一杯に奥に押し込まれ、フランジカバー109がプランジャ107のA-A線上に来る。
【0035】
図5に示すように、エア抜き時、第1の突起部115が凹部125内に位置する状態からプランジャ107を前方に押すと、第1の突起部115、連続突起部119の順に凹部内を通過し、第2の突起部117の前端がフランジカバー109に当接する。その後、操作者がプランジャ107を回転し、さらに前方にプランジャ107を押し込むことで定量の薬液を注入できる。
【0036】
このようにすることで、目視以外でも定量を行い誤った量の投与をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。また、本発明は、プランジャの定量開始位置を確認することにより、エア抜き以上の薬液を注入する無駄をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。また、本発明は、汎用シリンジのプランジャを変更し、フランジカバーを追加することで安価に定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。
【0037】
(第2の実施の形態の定量投与部材)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るプランジャの平面図である。
図6を参照して、第2の実施の形態に係る定量投与部材112を説明する。
【0038】
本発明の第2の実施の形態に係る定量投与部材112は、プランジャ127とフランジカバー109とガスケット113とを備える。
図6に示すように、第2の実施の形態に係るプランジャ127は、突起部がプランジャ127の第2の突起部117の後端側に軸方向に延び、周方向で第2の突起部117と異なる位置に配置された第3の突起部129と、第2の突起部117の後端及び第3の突起部の前端を連続的に繋ぐ第2の連続突起部131を有する点で、第1の実施の形態のプランジャと異なる。
【0039】
このため、第1の実施の形態のプランジャの突起部と同様に、シリンジの111のフランジ部114にフランジカバー109が取り付けられ、プランジャ127がシリンジに装着されて、第3の突起部129が凹部125内に位置する状態からプランジャ127を後方へ引くと、第3の突起部129、第2の連続突起部131、第2の突起部117の順に凹部内を通過し、第2の突起部117の後端が凹部125を通過するとき、プランジャ127がフランジカバー109に対して回転する。
【0040】
これは、第2の突起部117の後端が、軸方向に対して傾斜した面133を有するためである。第1の実施の形態の傾斜した面121と同様に、傾斜した面133は、軸半径方向に稜線のように切り立っていて第2の連続突起部131と繋がっている。また、第2の連続突起部131は、第2の突起部117及び第3の突起部129より周方向に短く、第2の突起部117と第3の突起部129の周方向に重なる部分で繋ぐように形成される。第2の連続突起部131は、軸方向に平行して延びることが好ましい。
【0041】
第3の突起部129の前端は、軸方向に対して略直角(直角を含む)な面135を有する。この面は、フランジカバー109に当接してストッパの役割を果たす。したがって、軸半径方向に対して切り立っていることが好ましい。
【0042】
第2の実施の形態のプランジャ127を第3の突起部129が凹部125内に位置する状態から前方に押すと、第3の突起部129、第2の連続突起部131の順に凹部125内を通過し、第3の突起部129の前端がフランジカバー109に当接する。
【0043】
本実施の形態の定量投与部材112は、複数の定量が可能になり、例えば、第2の連続突起部131で0.3mLの定量を行い、連続突起部119でさらに0.3mLの定量を行い、すなわち、0.6mLの定量を2回に分けることができる。一度の計量で、2度の注射が可能になる。本実施の形態では2回の計量を示したが、さらに第4の突起部、第5の突起部、・・・第nの突起部を追加し、第3の連続突起部、第4の連続突起部、・・・第nの連続突起部で繋ぐことで、3回、4回、・・・n回の計量が可能である。
【0044】
(実施の形態に係るガスケット)
図7は、本発明の実施の形態に係るプランジャを押し込んだ注射器の断面図である。
図7を参照して、本実施の形態に係るガスケットを説明する。
【0045】
図7に示すように、本実施の形態に係るプランジャに取り付けられたガスケット113の外面の形状は、シリンジ111の先端の内面の形状と一致する。このようにすることでデッドスペースを減らし、0.3mLなどのごく少量の薬液を無駄にすることがない。
【0046】
本実施の形態に係る定量投与部材112は、0.1mL、0.3mL、0.5mL・・・、2mLなどの薬液を注射する場合に利点がある。薬液を定量し、デッドスペースを減らして投与する効果がある。
【0047】
本発明は、目視以外でも定量を行い誤った量の投与をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。また、本発明は、プランジャの定量開始位置を確認することにより、エア抜き以上の薬液を注入する無駄をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。また、本発明は、汎用シリンジのプランジャを変更し、フランジカバーを追加することで安価に定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供できる。
【0048】
さらに、本発明は、複数回の定量ができる。また、本発明は、わずかな薬液でも定量し、デッドスペースを減らすことができる。
【0049】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により提供された定量投与部材を用いて、治療開始前に目視以外でも定量が完了するため、穿刺後に誤った量の投与をなくす定量投与部材及びそれを用いた注射器を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
101 注射器
103 前端の矢印方向
105 後端の矢印方向
107 プランジャ
109 フランジカバー
111 シリンジ
112 定量投与部材
113 ガスケット
114 フランジ部
115 第1の突起部
116 穴部
117 第2の突起部
119 連続突起部
121 傾斜した面
123 略直角な面
125 凹部
127 プランジャ
129 第3の突起部
131 第2の連続突起部
133 傾斜した面
135 略直角な面