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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】新規リガンドアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6897 20180101AFI20241224BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241224BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20241224BHJP
【FI】
C12Q1/6897 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/115 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021565946
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 NZ2020050046
(87)【国際公開番号】W WO2020226513
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】753245
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】521330482
【氏名又は名称】インサイチュジェン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSITUGEN LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー,アリソン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】サワビー,スティーブン・ジョン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05945279(US,A)
【文献】国際公開第2018/198013(WO,A1)
【文献】Amy B. Cadwallader et al.,Journal of Analytical Toxicology,2011年,Vol. 35, No.9,pp. 594-607
【文献】Elliot R. Cooper et al.,Sensors,2013年,Vol. 13, No. 2,pp. 2148-2163
【文献】Khalid K. Alam et al.,bioRxiv [online],2019年05月02日,インターネット<URL:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/619296v2.full.pdf>, [検索日2024年4月25日]
【文献】Sukanya Iyer et al.,ACS Synth. Biol.,2014年,Vol. 3,pp. 340-346
【文献】Steven Lukman et al.,ACS Appl. Mater. Interfaces,2013年,Vol. 5,pp. 12725-12734
【文献】Mary Szatkowski Ozers et al.,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997年,Vol. 272, No. 48,pp. 30405-30411
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を、
(a)前記試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体、
(b)核酸分子であって、
(1)ポリメラーゼプロモーター配列、
(2)前記リガンド-受容体複合体によって結合される応答要素、および
(3)レポーター構築物を含み、
前記応答要素()が、前記プロモーター配列()と前記レポーター構築物()との間に位置し、()、()、および()が、操作可能に連結されている、核酸分子、
(c)単一のポリペプチドからなるポリメラーゼ、
(d)ヌクレオシド三リン酸、と接触させるステップと、
(ii)前記リガンド-受容体複合体が前記応答要素に結合することによって引き起こされる前記レポーター構築物の転写の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
前記レポーター構築物の転写の測定された低減または阻害が、前記試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法。
【請求項2】
熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子を試料と接触させることをさらに含む、請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項3】
ステロイドホルモン受容体に対するHSP90の比(mol/mol)が、x:1であり、xが、HSP90の量であり、[1.0≦x≦5.0]として定義される、請求項2に記載のアッセイ方法。
【請求項4】
核酸分子に対するステロイドホルモン受容体の比(mol/mol)が、y:1であり、yが、ステロイドホルモン受容体の量であり、[7.0≦y≦10.0]として定義される、請求項1~3のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項5】
前記ポリメラーゼが、T7 RNAポリメラーゼである、請求項1~4のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項6】
前記ポリメラーゼプロモーター配列が、配列番号1によって定義される、請求項5に記載のアッセイ方法。
【請求項7】
前記レポーター構築物が、フルオロフォアに結合することが可能であるRNAアプタマーをコードする配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項8】
前記RNAアプタマーが、Mango I、Mango II、Mango III及びMango IV、Spinach、iSpinach、ベビーSpinach、Broccoli及びMalachite Greenから選択される、請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項9】
前記RNAアプタマーが、Mango IIであって、F30足場を含む、請求項7に記載のアッセイ方法。
【請求項10】
前記ステロイドホルモン受容体が、アンドロゲン受容体(AR)、エストロゲン受容体アルファ(ER-α)およびエストロゲン受容体ベータ(ER-β)、プロゲステロン受容体A(PRA)およびプロゲステロン受容体B(PRB)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、ならびにグルココルチコイド受容体(GR)からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項11】
前記応答要素が、
.5’-AGAACAnnnTGTTCT-3’(配列番号4)(nが、A、T、G、またはCである)の配列を含む、アンドロゲン応答要素(ARE)、
.5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’(配列番号8)(nが、A、T、G、またはCである)の配列を含む、エストロゲン応答要素(ERE)、
.5’-GGTACAAACTGTTCT-3’(配列番号10)の配列を含む、プロゲステロン応答要素(PRE)、
.5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)(nが、A、T、G、またはCである)の配列を含む、鉱質コルチコイド応答要素(MRE)、及び/又は
.5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)(nが、A、T、G、またはCである)の配列を含む、グルココルチコイド応答要素(GRE)から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項12】
(i)アンドロゲン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、前記核酸分子が、配列番号14によって定義される配列を含むか;
(ii)エストロゲン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、前記核酸分子が、配列番号15によって定義される配列を含むか;
(iii)プロゲステロン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、前記核酸分子が、配列番号16によって定義される配列を含むか;
(iv)鉱質コルチコイド受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、前記核酸分子が、配列番号17によって定義される配列を含むか;又は
(v)グルココルチコイド受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、前記核酸分子が、配列番号18によって定義される配列を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項13】
核酸分子が、配列番号19~73によって定義される配列のいずれかを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
【請求項14】
アスリートのドーピング状態を決定するための方法であって、前記アスリートから得た試料に、請求項1~13のいずれか一項に記載のアッセイ方法を実施して、前記試料が、ステロイドホルモン受容体に結合し、かつそれを活性化し、かつ前記レポーター構築物の転写における低減又は阻害を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、前記レポーター構築物の転写における低減又は阻害が、前記アスリートの前記ドーピング状態についての情報を提供する、方法。
【請求項15】
前記アスリートが、ヒトアスリート、ウマアスリート、イヌアスリート、およびラクダアスリートから選択される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ、方法、および試験キットに関する。特に、本発明は、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成して、ステロイドホルモン特異的ゲノム応答を誘発する能力を特徴とするリガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ、方法、および試験キットを提供する。
【背景技術】
【0002】
ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの検出は、生化学、分子生物学、および医学の多くの分野で重要である。そのようなリガンドとしては、内因性ステロイド、外因性ステロイド、非ステロイド分子、および合成分子が挙げられる。例えば、血清または血漿中の総ホルモン生理活性の決定は、加齢、閉経周辺期、閉経、低アンドロゲン症、高アンドロゲン症、ホルモン補充療法、乳がんおよび前立腺がんを含む内分泌がんを含むヒトの健康関連状態、骨粗鬆症および肝臓毒性、不規則な月経、多嚢胞性卵巣症候群、性的発達の障害および不妊症を含む他のホルモン関連状態を監視するのに重要である。アンドロゲン/エストロゲンおよび抗アンドロゲン/抗エストロゲン分子の従来の検出方法では、ホルモンの生物学的活性についての情報は提供されない。ホルモンの生物学的活性は、適切な治療/介入を実施することができるように、健康状態を推進している根本的なメカニズムを理解するための重要な測定値である。
【0003】
試料中のホルモン生理活性の検出はまた、違法なヒトおよび動物のパフォーマンス向上、怪我の隠蔽、補助食品および食品の偽和、乳業における成長促進剤、ならびに環境汚染物質の監視に重要である。ホルモン生理活性を測定することによって、体内の内分泌経路を調節し、それによってヒトの健康に影響を与える可能性がある汚染物質および/または偽和物についての情報が提供される。
【0004】
ステロイドホルモンゲノム応答を誘発するリガンドは、まず、真核生物細胞の細胞質または核内でステロイドホルモン受容体タンパク質と複合体を形成して活性化受容体タンパク質を形成することによって、ステロイドホルモン受容体タンパク質を活性化する。リガンドは、受容体タンパク質の補因子を移動させ、次いでDNA結合モチーフを露出させる。活性化受容体タンパク質は、第2の活性化受容体タンパク質と二量体化し、DNAと相互作用する必要がある場合は、応答要素と呼ばれる特定のヌクレオチド配列に結合することによって核に移行する。通常の生物学的機能では、応答要素に結合したリガンド活性化ステロイドホルモン受容体タンパク質の集合体は、RNAポリメラーゼIIが媒介する転写の開始を向上または抑止することによって遺伝子発現を調節する。RNAポリメラーゼIIは、DNAテンプレートに対してヌクレオチド三リン酸を重合することによるRNA転写を触媒するために集合する、マルチサブユニットホロ酵素である。
【0005】
ステロイドホルモンゲノム応答は、ステロイドホルモン受容体タンパク質および受容体特異的応答要素、例えばアンドロゲン受容体(AR)およびアンドロゲン応答要素(ARE)、エストロゲン受容体-α(ER-α)、エストロゲン受容体-β(ER-β)およびエストロゲン応答要素(ERE)、グルココルチコイド受容体(GR)およびグルココルチコイド応答要素(GRE)、鉱質コルチコイド受容体(MR)および鉱質コルチコイド応答要素(MRE)、プロゲステロン受容体-A(PR-A)、プロゲステロン受容体-B(PR-B)、およびプロゲステロン応答要素(PRE)に結合するリガンドによって誘導される。
【0006】
しかしながら、ステロイドホルモン受容体タンパク質に結合するすべてのリガンドが、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発するわけではない。一部のリガンドは、Gタンパク質の活性化などの、セカンドメッセンジャーのシグナル伝達を特徴とする非ゲノム応答を誘発する。そのような非ゲノム応答は、リガンド結合から数秒から数分以内に生じ、典型的なステロイドホルモン応答ではない。
【0007】
試料中のリガンドの存在を検出する一般的な方法は、その試料内で直接リガンドを測定することである。しかしながら、試料は、分子の複雑な混合物であることが多く、典型的には、分析のための準備の複雑なプロセスを必要とする。試料中のリガンド(複数可)の存在の検出は、典型的には、分子種を複雑な混合物から比較的純粋な組成の画分に分離し、次いで、質量分析法などの構造に感受性の高い方法を用いて各画分を分析する、液体またはガスクロマトグラフィーなどのプロセスに依存している。このアプローチを使用すると、任意の1つの試料で100超のリガンドを試験することができる。自動精製システム、ガスまたは液体クロマトグラム、および質量分析計は、費用がかかり、技術的に複雑な実験機器であり、信頼できる結果を生じるには、訓練を受けた技術者が継続的に較正および操作する必要がある。別の欠点は、性ホルモン結合グロブリンまたは血清アルブミンなどのタンパク質との相互作用によって、一部のリガンドが生物学的に不活性になる場合があり、この手法では、リガンドの生物学的に活性な画分と不活性な画分とが区別されないことである。また、イオン化のプロセスは、いくつかのステロイド分子の崩壊をもたらし得るので、そのような手法を使用して測定することができない。加えて、この手法では、すべての既知のリガンドを特定することができないとき、複数のリガンドから試料の総生物学的活性についての情報が提供されないか、またはリガンドを特定することができる場合、活性が相加的、相乗的、もしくはさらには競合的であるかどうかは不明である。さらに、試料中のリガンド(複数可)の存在の信頼できる同定を達成するには、、リガンド(複数可)およびリガンド(複数可)の生物学的代謝に起因するその関連代謝産物(複数可)の分子構造に関する事前の知識が必要とされる。
【0008】
試料中のステロイドホルモンリガンドの存在を検出する別の一般的な方式は、ラジオイムノアッセイおよび酵素結合免疫吸着測定アッセイなどの免疫学的技法に基づく生物学的アッセイを使用することである。免疫学的技法の制限は、リガンドを直接検出するか、または性ホルモン結合グロブリンに結合したリガンドを検出するための抗体分子が要件であることである。免疫学的アッセイは、アッセイの異なる製造業者によって生成された抗体分子の高度な変動性に起因して、再現性に欠ける。
【0009】
試料中のリガンドの検出に関する制限を克服するために、リガンドがステロイドホルモン受容体タンパク質に結合し、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発する、細胞に基づくステロイドホルモンアッセイが開発された。これらのアッセイでは、ステロイドホルモン受容体が活性化され、レポーター遺伝子のRNAポリメラーゼII転写が増加され、次いで、これがタンパク質に翻訳された後に、試料中のリガンドの存在が検出される。最も一般的には、レポーター遺伝子は、特定の基質の存在下で光または比色反応を誘発するであろう蛍光タンパク質(GFPなど)または酵素をコードする。
【0010】
しかしながら、これらの細胞に基づくアッセイには、生細胞培養を維持するための特殊な設備および専門知識を必要とするという点で、関連する顕著な制限がある。これは、細胞に基づく試験の費用を増加させ、これらの方法のハイスループットな適用を低減する。加えて、生細胞の分子の複雑さが高レベルであることによって試験が困難になり、特異性および再現性の両方が低減される。
【0011】
細胞に基づくアッセイを使用して試料中のリガンドを検出することの限界を克服するために、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出する無細胞システムが開発された。
【0012】
しかしながら、無細胞アッセイの制限は、RNAポリメラーゼIIなどのマルチサブユニットホロ酵素ポリメラーゼの使用を要件とすることである。RNAポリメラーゼIIの組み換え産生は、再現性が変動し達成するのが非常に困難であり、その結果、ホロ酵素は、典型的には、すべての構成要素が存在し、プロモーター配列で一緒になる核抽出物を使用することによって利用可能になる。しかしながら、真核細胞から核抽出物を調製することは、高価な細胞増殖培地、および核の材料を濃縮するために必要な技術的専門知識の必要性が理由で、製造に費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
具体的には、本発明は、単一のポリペプチドポリメラーゼ、ステロイドホルモン受容体タンパク質に結合するリガンドによって活性化されるのではなく低減または阻害されるその活性に関与する、試験キット、アッセイ、および方法を提供する。
【0014】
[発明の概要]
本明細書に記載および特許請求される発明は、限定されないが、この発明の概要に記載または説明または参照されるものを含む、多くの属性および例を有する。これは包括的であることを意図するものではなく、本明細書に記載および請求される発明は、制限ではなく説明のみを目的として含まれる、この発明の概要に特定された特色または例に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)ポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0016】
本発明のさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)単一のポリペプチドポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0017】
本発明のさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)単一のポリペプチドRNAポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0018】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)核酸分子であって、
(a)T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)T7 RNAポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0019】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子と、
(iii)核酸分子であって、
(a)配列番号1によって定義されるT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iv)T7 RNAポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0020】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子と、
(iii)核酸分子であって、
(a)配列番号1によって定義されるT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)フルオロフォアに結合することが可能であるRNAアプタマーを含むレポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iv)T7 RNAポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の蛍光の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0021】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子と、
(iii)核酸分子であって、
(a)配列番号1によって定義されるT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)フルオロフォアに結合することが可能であるRNAアプタマーを含むレポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iv)RNAアプタマーに結合することが可能であるフルオロフォアと、
(v)T7 RNAポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の蛍光の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0022】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドと受容体-リガンド複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子と、
(iii)核酸分子であって、
(a)配列番号1によって定義されるT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)thiazole orangeに結合することが可能であるMangoアプタマーを含むレポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iv)thiazole orangeと、
(v)T7 RNAポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の蛍光の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0023】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を、
(a)試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体、ならびに
(b)核酸分子であって、
(1)ポリメラーゼプロモーター配列、
(2)リガンド-受容体複合体によって結合される応答要素、および
(3)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子、
(c)単一のポリペプチドポリメラーゼ、ならびに
(d)ヌクレオシド三リン酸、と接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の転写の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0024】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を、
(a)試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体、ならびに
(b)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子、
(c)核酸分子であって、
(1)ポリメラーゼプロモーター配列、
(2)リガンド-受容体複合体によって結合される応答要素、および
(3)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子、
(d)単一のポリペプチドポリメラーゼ、ならびに
(e)ヌクレオシド三リン酸、と接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の転写の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0025】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を本明細書に記載の試験キットと接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の転写の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0026】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を、
(a)試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体、ならびに
(b)核酸分子であって、
(1)ポリメラーゼプロモーター配列、
(2)リガンド-受容体複合体によって結合される応答要素、および
(3)蛍光に基づくレポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子、
(c)単一のポリペプチドポリメラーゼ、ならびに
(d)ヌクレオシド三リン酸、と接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の蛍光の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の蛍光の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0027】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を、
(a)試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体、ならびに
(b)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子、
(c)核酸分子であって、
(1)ポリメラーゼプロモーター配列、
(2)リガンド-受容体複合体によって結合される応答要素、および
(3)蛍光に基づくレポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子、
(d)単一のポリペプチドポリメラーゼ、ならびに
(e)ヌクレオシド三リン酸、と接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の蛍光の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の蛍光の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0028】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を本明細書に記載の蛍光に基づくレポーター構築物を含む試験キットと接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の蛍光の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の蛍光の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0029】
本発明のさらなる態様では、試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、試料を本明細書に記載の試験キットと組み合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、試料のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0030】
本発明のさらなる態様では、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、生物学的試料を本明細書に記載の試験キットと組み合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様では、臨床検体のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、臨床検体から得た試料を本明細書に記載の試験キットと組み合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、臨床検体のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様では、食品または栄養補助食品のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、食品もしくは栄養補助食品または食品もしくは栄養補助食品の抽出物を本明細書に記載の試験キットと組み合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、食品または栄養補助食品のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0033】
本発明のさらなる態様では、環境源に由来する試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、環境源から得た試料を本明細書に記載の試験キットと組み合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、環境試料のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0034】
本発明のさらなる態様では、アスリートのドーピング状態を決定するための方法であって、アスリートから得た試料を本明細書に記載の試験キットと組み合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、アスリートのドーピング状態についての情報を提供する、方法が提供される。
【0035】
本発明のさらなる態様では、試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、試料に本明細書に記載のアッセイ方法を実施して、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、試料のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0036】
本発明のさらなる態様では、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、試料に本明細書に記載のアッセイ方法を実施して、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0037】
本発明のさらなる態様では、食品または栄養補助食品のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、食品もしくは栄養補助食品または食品もしくは栄養補助食品からの抽出物に本明細書に記載のアッセイ方法を実施して、食品または栄養補助食品が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、食品または栄養補助食品のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0038】
本発明のさらなる態様では、臨床検体のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、臨床検体に本明細書に記載のアッセイ方法を実施して、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、臨床検体のステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0039】
本発明のさらなる態様では、環境源に由来する試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法であって、環境試料に本明細書に記載のアッセイ方法を実施して、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、ステロイドホルモン生理活性についての情報を提供する、方法が提供される。
【0040】
本発明のさらなる態様では、アスリートのドーピング状態を決定するための方法であって、アスリートから得た試料に本明細書に記載のアッセイ方法を実施して、試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすのに十分なリガンドを含むかどうかを確認することを含み、レポーター構築物の物理的特性の変化が、アスリートのドーピング状態についての情報を提供する、方法が提供される。
【0041】
本発明のさらなる態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための製造物品であって、試料中のリガンドの存在を検出する方法についての説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含む、製造物品が提供される。
【0042】
本発明のさらなる態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、リガンドの存在について生物学的試料をスクリーニングするための製造物品であって、生物学的試料中のリガンドの存在を検出する方法についての説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含む、製造物品が提供される。
【0043】
本発明のさらなる態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、リガンドの存在について食品または栄養補助食品をスクリーニングするための製造物品であって、食品または栄養補助食品中のリガンドの存在を検出する方法についての説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含む、製造物品が提供される。
【0044】
本発明のなおさらなる態様では、試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための製造物品であって、試料中のステロイドホルモン生理活性を検出するための説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含み、試料中の生理活性リガンドの存在が、試料のステロイドホルモン生理活性を示す、製造物品が提供される。
【0045】
本発明のなおさらなる態様では、臨床検体のステロイドホルモン生理活性を決定するための製造物品であって、臨床検体中のステロイドホルモン生理活性を検出するための説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含み、臨床検体中の生理活性リガンドの存在が、臨床検体のステロイドホルモン生理活性を示す、製造物品が提供される。
【0046】
本発明のなおさらなる態様では、環境試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための製造物品であって、環境試料中のステロイドホルモン生理活性を検出するための説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含み、環境試料中の生理活性リガンドの存在が、環境試料のステロイドホルモン生理活性を示す、製造物品が提供される。
【0047】
本発明のなおさらなる態様では、アスリートのドーピングを決定するための製造物品であって、アスリートに由来する試料中のリガンドの存在を検出するための説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含み、試料中のリガンドの存在が、アスリートのドーピングを示す、製造物品が提供される。
【0048】
一般定義
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、(例えば、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、分子遺伝学、合成生物学、および生化学における)当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0049】
本明細書に開示の数値範囲(例えば、1~10)についての言及はまた、その範囲内のすべての関連する数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)、またその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5、および3.1~4.7)についての言及を組み込み、したがって、本明細書に明示的に開示のすべての範囲のすべてのサブ範囲が明示的に開示されていることを意図する。これらは、具体的に意図されるものの単なる例であり、列挙された最小値と最大値との間の数値のすべての可能な組み合わせは、同様の様式で本出願に明示的に記載されていると見なされるものである。
【0050】
「および/または」という用語、例えば、「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、両方の意味またはいずれかの意味の明示的な支持を提供すると解釈されるものとする。
【0051】
「a」または「an」という用語は、指定された実体のうちの1つまたは2つ以上を指し、例えば、「1つの受容体」または「1つの核酸分子」は、1つ以上の受容体もしくは核酸分子、または少なくとも1つの受容体もしくは核酸分子を指し得る。したがって、「a」または「an」、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0052】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記載の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群を含むことを意味すると理解されるが、任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップの群は除外されないであろう。
【0053】
本明細書全体を通して、特に明記しない限り、または特に文脈が要求しない限り、単一のステップ、物質の組成、ステップの群、または物質の組成の群についての言及は、それらのステップ、物質の組成、ステップの群、または物質の組成の群のうちの1つおよび複数(すなわち1つ以上)を包含すると解釈されるものとする。
【0054】
選択される定義
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0055】
本明細書で使用される「試験キット」という用語は、本明細書に記載の発明によるアッセイおよび方法を実施するための様々な構成要素を含む製造物品を指す。
【0056】
本明細書で使用される「ステロイドホルモン受容体」または「SHR」という用語は、リガンドに選択的に結合するタンパク質または組み換えポリペプチドを含むポリペプチドを指し、リガンドは、ステロイドホルモン受容体を活性化することが可能であり、限定されないが、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、鉱質コルチコイド受容体、およびグルココルチコイド受容体が挙げられる。典型的には、ステロイドホルモン受容体は、リガンド結合ドメイン、活性化ドメイン、およびデオキシリボ核酸結合ドメインを含む。この定義によれば、「ステロイドホルモン受容体」は、リガンドによる活性化のために、ステロイドホルモン受容体を折り畳まれた状態およびホルモンにすぐに応答する状態に保持するのを助ける(例えば)熱ショックタンパク質などを含む、他の補因子を任意選択的に含み得る。
【0057】
本明細書で使用される「ステロイドホルモン受容体補因子」という用語は、ステロイドホルモン受容体が活性化された時点でリガンドによって移動されるまで、ステロイドホルモン受容体を不活性状態に保持する1つ以上の補因子を指す。本発明によるステロイドホルモン受容体補因子の例としては、限定されないが、熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体が挙げられる。
【0058】
「リガンド」という用語は、一般に、受容体に結合する任意の分子を指し、限定されないが、ステロイド、ポリペプチド、タンパク質、ビタミン、炭水化物、糖タンパク質、治療剤、薬物、グリコサミノグリカン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される場合、「リガンド」としては、限定されないが、エストロゲン、プロゲスターゲン、アンドロゲンなどを含む性ホルモンなどのステロイドホルモン、ならびにそれらの天然および合成誘導体および類似体および代謝産物、デザイナーステロイドホルモン、アナボリックアンドロゲンステロイド、ならびに選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、プロゲスターゲン受容体モジュレーター、およびエストロゲン受容体モジュレーター、現在既知のもの、ならびに開発されるか、または生物学的試料中で天然に見出されると予想されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で互換的に使用される「受容体-リガンド複合体」および「活性化ステロイドホルモン受容体」という用語は、リガンド結合ステロイドホルモン受容体を指し、ステロイドホルモン受容体が、リガンドに結合すると構造的に形質転換を受け、次いで活性化された形態であることを指すこと。本明細書に記載の受容体-リガンド複合体としては、限定されないが、リガンド結合ホルモン受容体の二量体(すなわち、(HR-L)が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される「ゲノム応答」という用語は、活性化ステロイドホルモン受容体(または受容体-リガンド複合体)がその対応する核酸応答要素に選択的に結合し、下流遺伝子の転写を活性化または抑制する能力を指す。細胞環境では、リガンド結合受容体は核酸応答要素に結合し、外的刺激(すなわちリガンドの存在)に応答して遺伝子をオンまたはオフに切り替える。本発明による試験キット、アッセイ、および方法は、細胞に基づく系の態様を模倣するレポーターに基づくフレームワークを提供することによって、細胞環境で、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発するであろうリガンドを同定するために開発された。
【0061】
本明細書で使用される「ステロイド代謝機構」という用語は、任意の酵素を指し、リガンドを生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態に、または生理学的に活性な形態からより生理学的に活性な形態に、または生理学的に活性な形態から生理学的により活性でない形態に、または生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態に変換するのに十分な酵素の組み合わせを含む。
【0062】
本明細書で使用される「検出手段」という用語は、活性化ステロイドホルモン受容体と核酸応答要素との間の結合相互作用を検出するように適合された任意の装置、設備、または構成を指す。検出手段の例としては、限定されないが、光学的方法、分光法、可視分光法、ラマン分光法、UV分光法、表面プラズモン共鳴、電気化学的方法、インピーダンス、抵抗、キャパシタンス、質量の変化による機械的感知、機械的共鳴の変化、電気泳動、ゲル電気泳動、ゲルシフト(gel retardation)、撮像、蛍光および蛍光共鳴エネルギー移動、ポリメラーゼ連鎖反応などが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用される「核酸配列」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)配列、リボ核酸配列(RNA)、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)、および相補的DNA(cDNA)を指し、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドとも称される、2つ以上のヌクレオチドの連続的な配列で構成される。核酸配列は、一本鎖または二本鎖であり得る。
【0064】
本明細書で使用される「レポーター構築物」という用語は、その発現がアッセイされ得るRNAをコードするレポーター分子をコードする核酸配列を指し、そのようなRNAとしては、限定されないが、フルオロフォア結合アプタマー、または合成RNAもしくはmRNAが挙げられる、加えて、レポーター遺伝子は、RNA分析によって発現産物が検出され得る任意の目的の遺伝子を包含し得る。
【0065】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、操作可能に連結されている転写される配列の転写開始の5’末端の近位に位置する核酸配列である。プロモーターは、操作可能に連結されている遺伝子の転写の調節に相互作用する、1つ以上の調節要素を含有し得る。本発明によるプロモーターの例としては、限定されないが、T7、T3、およびSP6バクテリオファージプロモーター、または開始配列が挙げられる。「プロモーター」、「プロモーター配列」、「イニシエーター配列」、または「開始配列」という用語は、同じことを意味するために、本明細書全体を通して互換的に使用され得る。
【0066】
本明細書で使用される「操作可能に連結されている」という用語は、第1の要素の活性を調節することが第2の要素に対する効果を誘発するように配置された、2つの高分子要素を説明する。この様式では、プロモーター要素の活性の調節を使用して、操作可能に連結されているレポーター構築物の発現を変化させるおよび/または調節することができる。例えば、プロモーター要素に操作可能に連結されているレポーター構築物の転写は、プロモーターの活性を「活性化する」因子によって誘導され、プロモーター要素に操作可能に連結されているレポーター構築物の転写は、プロモーターの活性を「遮断する」因子によって阻害される。したがって、そのようなレポーター構築物の転写がプロモーターの活性によって影響を受ける場合、プロモーター領域はレポーター構築物に操作可能に連結している。
【0067】
本明細書で使用される「発現」という用語は、遺伝子内にコードされた情報が発現されるプロセスを指す。遺伝子がタンパク質をコードする場合、発現は、mRNAへのDNAの転写、成熟mRNA産物へのmRNAのプロセシング(必要な場合)、およびタンパク質への成熟mRNAの翻訳の両方に関与する。分子が、適切な宿主環境で、DNAに含有される遺伝子情報をタンパク質産物へと転写、処理、および翻訳する能力を提供するポリペプチドのコード配列および発現制御配列を含有する場合、ならびにそのような発現制御配列が、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結されている場合、デオキシリボ核酸(DNA)または遺伝子などの核酸分子は、ポリペプチド(またはタンパク質)を「発現することが可能である」と言われる。
【0068】
本明細書で使用される「試料」という用語は、リガンドの存在について試験することが望まれる任意の試料を指す。本明細書では、「試料」および「試験試料」という用語は、互換的に使用される。
【0069】
本明細書で使用される「相対効力」または「RP」という用語は、本明細書に記載のアッセイおよび試験キットを使用して測定して、参照化合物と比較した、試験化合物によって呈される生物学的活性の乗数を指し、生物学的活性が、(例えば)ステロイドホルモン受容体に結合し、かつそれを活性化する化合物の能力によって定義される。相対効力が、>1の場合、試験化合物は、参照化合物と比較して、その生物学的活性の観点でより効力があり、相対効力が、<1である場合、試験化合物は、参照化合物と比較して、その生物学的活性の観点で効力が低く、相対力価=1の場合、試験化合物と参照化合物とは、生物学的活性の観点で同等に効力がある。
【0070】
本明細書で使用される「活性化因子」または「AF」という用語は、試験化合物の(例えば)生理学的に不活性な状態から生理学的に活性な状態への、または生理学的により活性でない状態から生理学的により活性な状態への代謝変換の測定に関連する。活性化因子>1は、試験化合物が、アッセイにおいて代謝機構の存在下で、より生理学的に活性な状態への代謝変換を受けたことを意味する。
【0071】
「参照閾値」または「参照標準」という用語は、(例えば)試験試料の非存在下、または試験試料およびステロイドホルモン受容体の非存在下で測定されたアッセイ活性のレベルを意味するために互換的に使用され得る。本明細書に記載の発明によるある特定の例では、参照閾値または参照標準は、試験試料の代わりにエタノールを使用して決定される。参照閾値は、標的リガンドの非存在下でのアッセイのベースライン活性またはシグナルを確立することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】T7プロモーターの制御下で、アンドロゲン応答要素(ARE)が媒介する、Mango IIアプタマー配列を含むレポーター構築物のT7 RNAポリメラーゼが媒介する転写の阻害の概略図を示す。
図2】ARが、T7が媒介するRNA Mango IIアプタマーの転写を低減したことを示す。T7プロモーター-ARE-RNA Mango IIアプタマーDNAテンプレートを使用して、インビトロ転写反応を組み立てた。0.5mLのエッペンドルフチューブ内で反応を組み立て、11.5ng/mLのテストステロンの添加によって開始した。2時間のインキュベーション後、TO1-ビオチン(TO1-B)を添加してRNA Mango IIアプタマーを測定し、標準的な蛍光光度計を使用して蛍光の増加を検出した。黒の円柱-ARを添加しない対照反応、灰色の円柱-100ng/反応または400ng/反応でARを添加した反応。
図3】ARが、T7が媒介するRNA Mango IIアプタマーの転写を低減したことを示す。T7プロモーター-ARE-RNA Mango IIアプタマーDNAテンプレートを使用して、インビトロ転写反応を組み立てた。0.5mLのエッペンドルフチューブ内で反応を組み立てた。2時間のインキュベーション後、TO1-Bを添加してRNA Mango IIアプタマーを測定し、標準的な蛍光光度計を使用して蛍光の増加を検出した。黒の円柱-ARを添加しない対照反応、灰色の円柱-100ng/反応でARを添加した反応。濃い灰色の円柱-100ng/反応でARを添加し、11.5ng/mLのテストステロンで活性化した反応。
図4】T7が媒介するRNA Mango IIアプタマー発現のAR阻害をHSP90が遮断することを示している。T7プロモーター-ARE-RNA Mango IIアプタマーDNAテンプレートを使用して、インビトロ転写反応を組み立てた。0.5mLのエッペンドルフチューブ内で反応を組み立てた。2時間のインキュベーション後、TO1-Bを添加してRNA Mango IIアプタマーを測定し、標準的な蛍光光度計を使用して蛍光の増加を検出した。黒の円柱-ARを添加しない対照反応、灰色の円柱-100ng/反応でARを添加した反応。濃い灰色の円柱-100ng/反応でARを添加し、11.5ng/mLのテストステロンで活性化した反応。薄い灰色の円柱-100ng/反応でAR、および200ng/反応でHSP90を添加した反応。最も濃い灰色の円柱-100ng/反応でAR、および200ng/反応でHSP90、および11.5ng/mLでテストステロンを添加した反応。
図5】テストステロン活性化ARが、T7が媒介するRNAアプタマー、Mango IIの発現を用量依存的に低減することを示している。本文に記載されているように反応を組み立てた。これらの反応では、エタノール対照によって、T7がRNA Mango IIを生成したことを証明した。これはステロイド、テストステロン(T)、およびジヒドロテストステロン(DHT)の希釈液であるので、エタノール対照が含まれている。エタノール対照で生成された蛍光出力を、任意に100%割り当て、リガンド活性化反応の参照として使用した。(2.5mM~25μMの範囲にわたり)濃度を減少させたテストステロンを添加してARを活性化したか、またはDHTを250μMで添加した。TおよびDHTの両方は、内因性のアンドロゲンであり、ARの強力な活性化因子である。****p<0.001(対エタノール)Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析。
図6】ARの滴定がΔMango IIに直接影響を与えることを示している。本文に記載されているように反応を組み立てた(例えば、表7を参照されたい)。これらの反応では、エタノール対照によって、T7がRNA Mango IIを生成したことを証明した(灰色の円柱)。これはテストステロン(T)の希釈液であるので、エタノール対照が含まれている。エタノール対照で生成された蛍光出力を、任意に100%割り当て、250μMのテストステロンで活性化した反応の参照として使用した(黒の円柱)。ARの濃度を50ng~25ng~4.2ngに減少させると、顕著なレベルのAR遮断を維持した(n=5)が、しかしながら、T7阻害の効果の程度は、50ngと比較して減少した。AR濃度を100ng(n=2)に増加すると、T7阻害に対してさらなる影響はなかった。****p<0.001、***p=0.002(対エタノール)Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析。
図7】HSP90:AR比がΔMango IIに影響を与えることを示している。本文に記載されているように反応を組み立てた(表8を参照されたい)。これらの反応では、エタノール対照によって、T7がRNA Mango IIを生成したことを証明した(灰色の円柱)。エタノール対照で生成された蛍光出力を、任意に100%割り当て、250μMのテストステロンで活性化した反応の参照として使用した(黒の円柱)。結果は、1:1の比は、AR濃度が増加した場合にのみ効果的であり、AR濃度が100ngのときに最大のΔMango IIが記録されることを示している。AR濃度が50ngまたは100ngの場合は2:1の比が効果的であった一方で、4:1の比では、AR濃度が低くても動作し他一方で、8:1の比では、ΔMango IIの効果の程度の減少を示した。
図8】単一のARE部位が、T7転写を低減するのに十分強力であることを示している。DNAテンプレートが異なることを除いて、本文に記載されているように反応を組み立てた。1組の反応には、単一のAREのみをコードするDNAテンプレートを使用し、2組目の反応には元来の3XARE DNAテンプレートを使用した(配列は表2に示す)。これらの反応では、エタノール対照によって、T7がRNA Mango IIを生成したことを証明した(灰色の円柱)。エタノール対照で生成された蛍光出力を、任意に100%割り当て、250μMのテストステロンで活性化した反応の参照として使用した(黒の円柱)。結果は、単一のAREが、3XAREと同程度に効果的であることを示している(****p<0.0001、***p=0.002)。
図9】DNAテンプレート濃度の減少がΔMango IIを低減することを示している。本文に記載されているように反応を組み立てた。これらの反応では、エタノール対照によって、T7がRNA Mango IIを生成したことを証明した(灰色の円柱)。エタノール対照で生成された蛍光出力を、任意に100%割り当て、250μMのテストステロンで活性化した反応の参照として使用した(黒の円柱)。結果は、DNAテンプレート濃度が、反応当たり25ng未満に低下すると、ΔMango IIを検出する能力が損失されたことを示している(****p<0.0001、***p=0.003)。
図10】T7単位を50Uから10Uに滴定すると、蛍光が変化の閾値の検出値を下回って減少することを示している。反応当たり50U~10Uの酵素を添加するように、T7 RNAポリメラーゼを滴定した。反応は、T7 RNAポリメラーゼ、DNAテンプレート、および反応緩衝液のみからなった。50Uでは、反応から生成されたMango IIが、約340000の蛍光読み取り値を生じたことに留意されたい。40Uの酵素を添加すると、これは約200000にうまく低減した。それ以上希釈しても、蛍光に測定可能な変化は生じず、これは、約200000蛍光単位がこの反応の閾値であることを示している。
図11】ΔMango II検出の閾値を示す。50Uまたは100UのT7 RNAポリメラーゼ、DNAテンプレート、反応緩衝液、50ngのAR、100ngのHSP90、および250μMのテストステロン(または対照としてエタノール)を用いて、反応を確立した。データは、50UのT7酵素を添加すると、ΔMango IIを検出する能力があったことを示しているが、しかしながら、効果の程度は、顕著ではあるが比較的小さいである(n=5、*p=0.0155 Sidaks post-hoc test検定を用いた一元配置分散分析)。100UのT7酵素を添加すると、ΔMango IIがより大きい効果の程度で容易に検出された(n=5、****p<0.0001)。ΔMango II検出の閾値は、約200000である。出力がこれを下回ると、試験結果の解釈が困難であろう。
図12】エストラジオール活性化ERαでは、単一のERE部位が、T7転写を低減するのに十分強力であることを示している。本文に記載されているように反応を組み立てた。これらの反応では、エタノール対照によって、T7がRNA Mango IIを生成したことを証明している。これはステロイドホルモン、エストラジオール(E2)の希釈液であるので、エタノール対照が含まれている。エタノール対照で生成された蛍光出力を、任意に100%割り当て、エストラジオール活性化反応の参照として使用した。5uMでエストラジオールを添加して、ERαを活性化した。n=3、****p<0.001(対エタノール)Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析。
図13】AR/HSP90-AREアッセイが、一定範囲のAASおよびSARMを検出することが可能であることを示している。テストステロン(250μM)を正の参照として使用した一方で、エタノールを負の参照として使用し、活性を100%に設定した(緑色の点線)。すべてのデータを、エタノール対照に対して正規化する。アンドロゲン分子のクラスを本文に記載する(表10)。
図14】RNAポリメラーゼ活性が血清によって影響を受けないことを示している。DNAテンプレート(100ng)、緩衝液、ヌクレアーゼを含まない水、およびAR反応ではAR(50ng)、HSP90(100ng)で、反応を組み立てた。ウマ血清またはFCS(10μl)を添加し、その後、100U(または同等の)T7 RNAポリメラーゼを添加して反応を開始した。反応を37℃で150分間保持し、その後、Mango II RNAアプタマーをTO1-ビオチン(100nM)で検出した。データは、ウマ血清またはFCSの存在が、T7が生成するMango IIに影響を与えなかったことを示している。
図15】血清試料中のテストステロンの検出を示している。テストステロンを添加した13μlのFCSを添加したことを除いて、本文に記載されているように反応を組み立てた。エタノールを添加したFCSを非活性化AR対照として使用し、T7活性を任意に100%に設定した。テストステロンは、T7が生成するMango IIの用量依存的な抑制を示し、テストステロン濃度がより高いほどΔMango IIが大きくなった。p<0.0001対エタノール、Sidak’s post-hoc比較を用いた一元配置分散分析。
図16】尿試料中のアンドロゲン活性の検出を示している。本文に記載されているように反応を組み立てた。エタノールをAR活性化の陰性(ビヒクル)対照として使用し、テストステロン(250μM)を陽性対照として使用した。子馬#1および子馬#2は、2頭の異なる若い雄の競走馬から得た尿試料を表す。去勢馬#1および去勢馬#2は、2頭の異なる去勢された雄の馬から得た尿試料を表す。トレンボロン添加は、取り出しおよび抽出ステップの前にトレンボロンを添加した、去勢馬尿試料を表す。エタノール対照で測定されたT7活性は、任意に100%に設定した。テストステロンは、子馬尿試料およびトレンボロンを添加した尿試料でも見られたT7が生成するMango IIの抑制を示したが、しかしながら、去勢馬試料ではT7活性の抑制はほとんど測定されなかった。去勢馬は精巣が除去されており、これらの臓器は男性のテストステロン産生の主な源であるので、内因性アンドロゲンレベルは低いと予想されるであろう。
図17】SHR/SREアッセイを使用したプロホルモンの検出を示す。アンドロステンジオンをS9肝臓画分と事前にインキュベートした後、肝臓S9画分反応をステロイドで抽出した。次に、抽出した試料のアンドロゲン活性を試験した。データは、メタノール対照が完全なT7活性を表した、すなわち、アンドロゲンの非存在下でAR/HSP90を追加しても影響を受けないことを示している。アンドロステンジオン/S9抽出試料を試験すると、アンドロステンジオン(n=2、独立NAD S9画分/抽出反応なし)と比較して、蛍光読み取り値が大幅に低減した(n=2、独立ステロイド代謝/抽出反応)。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明は、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするのに有用な試験キット、アッセイ、および方法を提供する。
【0074】
本発明によるある特定の例では、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法は、例えば、対象から得た試料のアンドロゲンおよび/またはエストロゲン活性を測定することによって、対象のホルモン状態を決定するのに有用である。次いで、この情報を使用して、例えば、対象が、がんを有するかもしくはがんを発症するリスクがあるかどうかを決定するために、または、例えば、閉経などの加齢に関連する内分泌の問題を調査するために、またはホルモン補充療法もしくはホルモン抑制療法の有効性を評価することができる。
【0075】
本発明による他の例では、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法は、限定されないが、ホルモン感受性のがんを促進し得るフィトエストロゲンを含む、健康に有害であり得る禁止されている添加物または天然活性化剤について食品および健康食品補助食品をスクリーニングするのに有用である。
【0076】
酵素が媒介する活性アッセイおよび試験キット
本明細書に記載の試験キットおよび方法が基づく本発明によるアッセイは、活性に基本的に基づくアッセイであり、試験される試料に由来するリガンドの結合を通じたステロイドホルモン受容体活性化の原理に基づいて機能する。ステロイドホルモン受容体の活性化は、リガンドが受容体に結合し、タンパク質の三次構造のコンフォメーション変化を誘発すると生じ、次いで受容体-リガンド複合体(本明細書では「活性化ステロイドホルモン受容体」とも称される)が、核酸応答要素に結合し、RNAポリメラーゼに影響を与え、いわゆる「ゲノム応答」を誘発することが可能であることを意味する。言い換えれば、細胞のゲノムからの遺伝子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする能力であり、次いで、これは、生理学的効果をもたらし得る。本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法によって測定されるのは、調査下の試料中のステロイドまたはステロイド様活性を有するリガンドの存在を検出するための代用物としての、活性化ステロイドホルモン受容体と核酸応答要素との間のこの結合相互作用である。
【0077】
重要なことに、これは、本発明による試験キットおよびアッセイが、(例えば)「デザイナー薬物」などの未知の構造のリガンドによって誘発されるステロイドホルモンの生理活性/活性を検出する能力を有することを意味する。ガス/液体クロマトグラフィーおよび質量分析法などの従来の実験試験設備は調査される分子の構造に関する事前の知識を必要とするので、以前には、これは可能ではなかった。
【0078】
ステロイドホルモンの生理活性/活性を検出するための以前のアプローチは、酵母および哺乳類細胞レポーターアッセイに関与していた(例えば、Cooper et al.(2013)Sensors 13:2148-2163を参照されたい)。そのようなアッセイは、生細胞培養を維持するための(例えば)特殊な設備および専門知識の必要性などの、十分認識されている制限を有する。細胞に基づくシステムを主に模倣する分子フレームワークをモデルにした無細胞アッセイの開発によって、細胞に基づくレポーター対応物(複数可)と比較して、機能性が向上され、アッセイ感受性が改善されたインビトロアッセイが生成された。しかしながら、無細胞アッセイの制限は、RNAポリメラーゼIIなどのマルチサブユニットホロ酵素ポリメラーゼの使用を要件とすることである。RNAポリメラーゼIIの組み換え産生は、再現性が変動し達成するのが非常に困難であり、その結果、ホロ酵素は、典型的には、すべての構成要素が存在し、プロモーター配列で一緒になる核抽出物を使用することによって利用可能になる。しかしながら、真核細胞から核抽出物を調製することは、高価な細胞増殖培地、および核の材料を濃縮するために必要な技術的専門知識の必要性が理由で、製造に費用がかかる。
【0079】
この制限に対処するために、出願人らは現在、より容易に入手可能な単一のポリペプチドポリメラーゼに関与する、インビトロ転写反応に基づく無細胞アッセイを開発した。
【0080】
これらの次世代アッセイの開発において、出願人らは、(例えば)バクテリオファージに感染した原核生物細胞に由来する単一のポリペプチドDNA依存性RNAポリメラーゼが、レポーター構築物の読み取り値を表現することが可能であることを同定した。図1~16と併せて閲覧するときには、実施例1~2を参照されたい。
【0081】
重要なことに、組み換えの市販のバクテリオファージポリメラーゼの使用は、製造に費用のかかる核抽出物の必要性を置き換える。
【0082】
したがって、本発明の一態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるステロイドホルモン受容体と、
(ii)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)リガンド受容体複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)単一のポリペプチドポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0083】
本発明の一例では、試験キットは、ヌクレオチド三リン酸(NTP)をさらに含む。
【0084】
本発明のなお別の態様では、リガンドがステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ方法であって、
(i)試料を、
(a)試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体、ならびに
(b)核酸分子であって、
(1)ポリメラーゼプロモーター配列、
(2)リガンド-受容体複合体によって結合される応答要素、および
(3)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子、
(c)単一のポリペプチドポリメラーゼ、ならびに
(d)ヌクレオシド三リン酸、と接触させるステップと、
(ii)リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定するステップと、を含み、
レポーター構築物の転写の測定された低減または阻害が、試料中のリガンドの検出を表す、アッセイ方法が提供される。
【0085】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によって与えられる重要な利点は、酵母および哺乳類細胞レポーターアッセイの細胞環境に存在する分子の複雑さ、または性能のためにRNAポリメラーゼIIを必要とするWO2018/088852に記載のものなどの無細胞アッセイのための核抽出物の使用を通じて生じる分子の複雑さの顕著な低減である。分子の複雑さが低減されると、標的リガンドの非存在下でのステロイドホルモン受容体(複数可)によるホルモン応答要素の非特異的活性化が制限されることによって、アッセイの特異性が顕著に向上する。ホルモン応答要素(例えば、アンドロゲン応答要素)は、それらの相補的受容体(例えば、アンドロゲン受容体)に対して高度に選択的ではなく、実際、細胞または核抽出物内に存在し得る他のステロイドホルモン受容体によって活性化され得ることが理解される。例えば、アンドロゲン応答要素の場合、プロゲステロン受容体A、プロゲステロン受容体B、グルココルチコイド受容体、および/または鉱質コルチコイド受容体などのグループIIホルモン受容体クラスの他の非アンドロゲン受容体は、潜在的にAREを活性化し得る。ひいては、これが、アッセイの特異性の低減を生じさせる。
【0086】
実際、細胞環境または核抽出物によって生じる分子の複雑さの非存在によって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法が、それらの標的リガンドの検出について高度に選択的であることを意味する。さらに、(例えば)ステロイドホルモン受容体および/またはホルモン応答要素を容易に切り替える能力は、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法に、目的の他の標的リガンドの検出のための多様性を生じる。
【0087】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によって与えられる別の重要な利点は、生物学的反応を化学量論的に定義する独特な能力である。例えば、必須のアッセイ構成要素と非必須のアッセイ構成要素との両方の間の分子関係(複数可)を正確に制御することによって、標的リガンドの検出のためにアッセイ感受性を顕著に向上することができる。言い換えれば、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法は、活性化リガンド-ホルモン受容体複合体とレポーター構築物内に存在するホルモン応答要素との間の結合相互作用の最適数を測定するように構成され得る。対照的に、不可能でない場合、細胞にクローン化された、遺伝子または核酸配列をコードする(例えば)組み換え受容体および/または核酸応答要素の総コピー数は、正確に予測または制御することができないので、リガンドの存在を検出するように構成された細胞に基づくレポーターアッセイを同じ制御の程度で再現することは困難である。存在するRNAポリメラーゼIIサブユニット、補因子、および他の非必須タンパク質の正確な量を決定することが困難である場合、核抽出物に基づく無細胞レポーターアッセイを制御することも困難である。
【0088】
これらおよび他の考慮事項は、以下の例によって文書化されている。実例として、図6~9と併せて閲覧するときには、実施例2を参照されたい。具体的には、アンドロゲンリガンド(例えばテストステロン)の検出に関与するプロトタイプアッセイ(「アンドロゲンアッセイプロトタイプ2」)では、出願人らは、(i)AR:核酸比が、≧7.2であり、かつ(ii)反応ミックス中の核酸の濃度が、≧0.789nMであるとき、活性化アンドロゲン受容体(AR)が、その相補的ホルモン応答要素(ARE、本明細書で定義されるように核酸内に位置する)への結合、およびT7が媒介するレポーター構築物の発現を遮断するのに最も効果的であることを実証している。
【0089】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法によるさらなる例では、ステロイドホルモン受容体対核酸の比は、約7:1~約10:1であり、限定されないが、7.0:1、7.1:1、7.2:1、7.3:1、7.4:1、7.5:1、7.6:1、7.7:1、7.8:1、7.9:1、8.0:1、8.1:1、8.2:1、8.3:1、8.4:1、8.5:1、8.6:1、8.7:1、8.8:1、8.9:1、9.0:1、9.1:1、9.2:1、9.3:1、9.4:1、9.5:1、9.6:1、9.7:1、9.8:1、9.9:1、および10.0:1が挙げられる。
【0090】
当業者はさらに、ステロイドホルモン受容体とホルモン受容体応答要素を含む核酸との間の分子化学量論が、試験キット/アッセイの構成要素部分、ならびに試験される試料の性質に応じて変動し得ることを理解するであろう。例えば、試験キット/アッセイは、限定されないが、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体アルファ、エストロゲン受容体ベータ、プロゲステロン受容体A、プロゲステロン受容体B、鉱質コルチコイド受容体、およびグルココルチコイド受容体を含む、異なるステロイドホルモン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され得、ステロイドホルモン受容体とその相補的な核酸/応答要素との間の比が、(例えば)約1:1~約20:1であり得る。
【0091】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなお別の例では、
(i)試験キットは、アンドロゲン受容体を含み、アンドロゲン受容体対アンドロゲン応答要素を含む核酸の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(ii)試験キットは、エストロゲン受容体を含み、エストロゲン受容体対エストロゲン応答要素を含む核酸の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(iii)試験キットは、プロゲステロン受容体を含み、プロゲステロン受容体対プロゲステロン応答要素を含む核酸の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(iv)試験キットは、鉱質コルチコイド受容体を含み、鉱質コルチコイド受容体対鉱質コルチコイド応答要素を含む核酸の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(v)試験キットは、グルココルチコイド受容体を含み、グルココルチコイド受容体対グルココルチコイド応答要素を含む核酸の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1である。
【0092】
上の考慮事項にもかかわらず、受容体が多すぎる場合、多すぎる受容体自体が、相補的応答要素へのリガンド-受容体複合体の最適な結合を妨げる熱力学的または速度論的障壁を生じ得るので、アッセイが飽和しないように注意する必要がある。本明細書に提供される開示によれば、当業者は、通常の実験を行って、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法の性能について、ステロイドホルモン受容体の最適化された濃度/範囲を滴定することができる(例えば、以下の実施例2.3を参照されたい)。
【0093】
前述のように、出願人らはさらに、ステロイドホルモン受容体が、そのステロイドホルモン受容体に特異的なリガンドの非存在下で、対応する核酸応答要素に結合し、かつそれを活性化するある程度の能力を保持することを決定した。この現象は、時折核酸応答要素の自動活性化と称される。分子の複雑さが低減することによって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイでは自動活性化のレベルが顕著に低下するが、リガンドの非存在下で、参照閾値(すなわち、応答要素の自動活性化の結果としてのベースラインシグナル)を決定して、標的リガンドを含有する試料の存在下での絶対アッセイシグナル/読み取り値の決定を支援することが望ましい場合がある。
【0094】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、レポーター構築物の転写の低減または阻害は、参照閾値と比較して測定される。
【0095】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなお別の例では、レポーター構築物の転写の低減または阻害は、試験試料の非存在下でレポーター構築物の転写を測定することによって決定した参照閾値と比較して測定される。
【0096】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなおさらなる例では、レポーター構築物の転写の低減または阻害は、試験試料の非存在下および受容体の非存在下でレポーター構築物の転写を測定することによって決定した参照閾値と比較して測定される。
【0097】
アッセイの特異性および性能を向上するための並行アプローチでは、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法は、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体補因子を含むように改変され得る。補因子の主な目的は、ステロイドホルモン受容体を不活性なコンフォメーションに保持し、それによって標的リガンドの非存在下でホルモン応答要素に結合し、かつそれを活性化するのを防止することである。
【0098】
試験キットを試験試料と接触させる(または組み合わせる)と、リガンドの存在による補因子の移動が引き起こされ、次いでリガンド結合受容体は、自由に第2のリガンド結合受容体およびホルモン応答要素と複合体を形成する。
【0099】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、試験キットまたはアッセイ方法は、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体補因子をさらに含む。
【0100】
関連する例では、ステロイドホルモン受容体補因子としては、限定されないが、熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択される、ステロイドホルモン受容体補因子が挙げられる。
【0101】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるさらに関連する例では、試験キットまたはアッセイ方法は、熱ショックタンパク質90をさらに含む。
【0102】
しかしながら、ステロイドホルモン受容体補因子の存在は、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法の必須の特色ではないことが、当業者によって理解されるであろう。これは、補因子の非存在下でもアッセイ結果を達成することができることが理由である。例えば、実施例1/図4に提示されたデータは、熱ショックタンパク質90の非存在下では、リガンドアッセイ結果と非リガンドアッセイ結果(すなわち、AR/T対AR)との間のシグナルに、依然として測定可能な差があったことを示している。
【0103】
実際、例えば、アッセイ方法が実施される温度を改変することによって、非リガンド受容体によるホルモン応答要素の自動活性化によって生成されるシグナルの量を最小限に抑えるさらなるアプローチが存在する。
【0104】
出願人らは、その核酸応答要素に対する、リガンド結合ステロイドホルモン受容体と非リガンド結合ステロイドホルモン受容体との間の結合親和性/動態の差を観察した。したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法は、非リガンド結合受容体よりもリガンド結合受容体によるホルモン応答要素の活性化を優先的に測定し、それによって非リガンド結合受容体によって生成されるバックグラウンドシグナルを最小限に抑える温度または温度範囲で実施することができる。
【0105】
したがって、本発明のこの態様によるなお別の例では、試験キットまたはアッセイ方法の性能は、約25℃~約42℃、好ましくは約35℃~約37℃の温度範囲で実行される。
【0106】
「約25℃~約42℃の温度範囲」という用語は、25℃~42℃の任意の温度を含むことを意図し、限定されないが、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、および42℃が挙げられる。当業者は、小数点範囲の温度も使用され得ることを認識するであろう。この点をさらに説明するために、「約35℃~約37℃の温度範囲で」としては、限定されないが、35.0℃、35.1℃、35.2℃、35.3℃、35.4℃、35.5℃、35.6℃、35.7℃、35.8℃、35.9℃、36.0℃、36.1℃、36.2℃、36.3℃、36.4℃、36.5℃、36.6℃、36.7℃、36.8℃、36.9℃、および37.0℃が挙げられる。
【0107】
出願人らはさらに、補因子とステロイドホルモン受容体との間の化学量論的関係を操作して、アッセイ感受性をさらに向上することができることを発見した。例えば、実施例2に記載のアンドロゲンアッセイプロトタイプ2によれば、ARは、HSP90:AR比が約1.22~4.88であると、AR特異的リガンドによって活性化され、AREに結合するのに最も効果的であることが出願人らによって決定された。
【0108】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるさらなる例では、HSP90対ステロイドホルモン受容体の比は、約1:1~約5:1であると定義される。これとしては、限定されないが、1.0:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5;1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2.0:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5;1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、3.0:1、3.1:1、3.2:1、3.3:1、3.4:1、3.5;1、3.6:1、3.7:1、3.8:1、3.9:1、4.0:1、4.1:1、4.2:1、4.3:1、4.4:1、4.5;1、4.6:1、4.7:1、4.8:1、4.9:1、または5.0:1として定義される、HSP90対ステロイドホルモン受容体の比が挙げられる。
【0109】
しかしながら、当業者は、ステロイドホルモン受容体補因子とステロイドホルモン受容体との間の分子化学量論が、試験キット/アッセイの組成に応じて変動し得ることを理解するであろう。例えば、試験キット/アッセイは、エストロゲン受容体アルファまたはエストロゲン受容体ベータを含むエストロゲン受容体に結合するリガンドを検出するように構成することができ、エストロゲン受容体補因子とエストロゲン受容体との間の比は、(例えば)約1:1~約20:1であり得る。
【0110】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなお別の例では、
(i)試験キットは、アンドロゲン受容体を含み、アンドロゲン受容体補因子対アンドロゲン受容体の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(ii)試験キットは、エストロゲン受容体を含み、エストロゲン受容体補因子対エストロゲン受容体の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(iii)試験キットは、プロゲステロン受容体を含み、プロゲステロン受容体補因子対プロゲステロン受容体の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(iv)試験キットは、鉱質コルチコイド受容体を含み、鉱質コルチコイド補因子対鉱質コルチコイド受容体の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1であり、
(v)試験キットは、グルココルチコイド受容体を含み、グルココルチコイド受容体補因子対グルココルチコイド受容体の比は、限定されないが、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、または20:1を含む、約1:1~約20:1である。
【0111】
実施例4の表9の情報は、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法の組成を考慮するときの分子化学量論の議論に関連する重要な考慮事項を要約しており、これは、特に実施例1~3に付随するデータによって裏付けられている。
【0112】
本発明によるアッセイ反応ミックスは、典型的には、10μL~50μLの間の総体積を含有するであろう。表9に要約されている情報によれば、これは以下を意味する:
(i)ステロイドホルモン受容体の濃度は、限定されないが、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37 38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60nMのステロイドホルモン受容体を含む、約10nM~約60nMによって定義される範囲内に保持されるべきであり、
(ii)ホルモン応答要素を含む核酸分子の濃度は、限定されないが、0.70、0.80、0.90、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、または3.3nMの核酸分子を含む、約0.70nM~約3.5nMによって定義される範囲内に保持されるべきであり、
(iii)存在する場合、熱ショックタンパク質90の濃度は、限定されないが、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60nMの熱ショックタンパク質90を含む、約40nM~約60nMによって定義される範囲内に保持されるべきである。
【0113】
さらなる考慮事項は、酵素の濃度/量であり、約200,000Uの絶対ベースライン閾値活性を想定して、反応ミックス中に約50~100個の酵素単位(U)を用いると、最適なアッセイ結果が達成された。図10および11を参照されたい。
【0114】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなお別の例では、転写の低減または阻害は、バクテリオファージRNAポリメラーゼ、ウイルスRNAポリメラーゼ、細菌RNAポリメラーゼ、および真核生物ウイルスRNAポリメラーゼから選択される単一のポリペプチドポリメラーゼによって媒介される転写の低減または阻害である。
【0115】
関連する例では、ポリメラーゼは、バクテリオファージRNAポリメラーゼである。さらに関連する例では、プロモーター配列は、バクテリオファージRNAポリメラーゼ開始配列である。
【0116】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなお別の例では、ポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、およびSP6 RNAポリメラーゼを含むDNA依存性RNAポリメラーゼからなる群から選択されるバクテリオファージポリメラーゼである。
【0117】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、バクテリオファージポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼである。
【0118】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、プロモーター配列は、T7 RNAポリメラーゼ開始配列である。
【0119】
関連する例では、T7 RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-TAATACGACTCACTATAG-3’(配列番号1)によって定義される配列を含む。
【0120】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるさらなる例では、バクテリオファージポリメラーゼは、T3 RNAポリメラーゼであり、プロモーター配列は、T3 RNAポリメラーゼ開始配列である。
【0121】
関連する例では、T3 RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-AATTAACCCTCACTAAAG-3’(配列番号2)によって定義される配列を含む。
【0122】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなおさらなる例では、バクテリオファージポリメラーゼは、SP6 RNAポリメラーゼであり、プロモーター配列は、SP6 RNAポリメラーゼ開始配列である。
【0123】
関連する例では、SP6 RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-ATTTAGGTGACACTATAG-3’(配列番号3)によって定義される配列を含む。
【0124】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなお別の例では、レポーター構築物は、転写されてRNAアプタマーを形成すると、フルオロフォアに結合し、それによって蛍光シグナルを生成することが可能であるRNAアプタマーをコードする配列を含む。
【0125】
関連する例では、RNAアプタマーの二次構造形成を促進し、それによってそのフルオロフォア(複数可)との結合相互作用を最適化するRNA足場によって、RNAアプタマーはさらに支持される。さらに関連する例では、RNA足場としては、限定されないが、F30が挙げられる。
【0126】
別の例では、RNAアプタマーは、限定されないが、Mango I、Mango II、Mango III、およびMango IVを含む、Mangoである。関連する例では、Mango RNAアプタマーに結合し、それによって蛍光シグナルを生成するフルオロフォアは、thiazole orange(TO)の誘導体である。
【0127】
別の例では、RNAアプタマーは、Spinach、iSpinach、ベビーSpinach、およびBroccoliから選択される。関連する例では、SpinachまたはBroccoli RNAアプタマーに結合し、それによって蛍光シグナルを生成するフルオロフォアは、3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)である。
【0128】
別の例では、RNAアプタマーは、Malachite Greenである。関連する例では、Malachite Green RNAアプタマーに結合し、それによって蛍光シグナルを生成するフルオロフォアはmalachite Greenである。
【0129】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるさらなる例では、レポーター構築物は、RNAアプタマーの単一の配列コピー、またはRNAアプタマーの複数の配列コピーを含む。「複数の配列コピー」という用語は、限定されないが、RNAアプタマーをコードする配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32個以上のコピーを意味することを意図する。当業者は、RNAアプタマー配列のコピー数が、通常のアッセイ最適化によって決定した、最適なシグナル対ノイズ比によって制御されるであろうことを認識するであろう。
【0130】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による他の例では、レポーター構築物は、RNA分析によって検出することができるタンパク質またはポリペプチドをコードするまたはコードしない遺伝子からなる群から選択される。
【0131】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法は、例えば、試験試料が、ステロイドホルモン受容体活性を有するリガンドの存在について試料をスクリーニングする手段としてのアッセイと組み合わせられると、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)または相補的デオキシリボース核酸(cDNA)レベルを調査することによって、レポーター構築物の転写レベルを検出するように構成され得る。
【0132】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法によるなおさらなる例では、レポーター構築物の転写の低減または阻害は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)定量的PCR(リアルタイムPCR、qPCRとしても知られる)、デジタルPCR(dPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、逆転写qPCR(RTqPCR)、逆転写デジタルPCR(RTdPCR)、RNAseqまたはインサイチュハイブリダイゼーションを使用して測定することができる。
【0133】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による他の例では、(例えば)mRNAまたはcDNAを含むレポーター遺伝子転写レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムqPCRおよび逆転写qPCRを含む、qPCR)などの確立された技法を使用して、または挿入色素の検出もしくは蛍光ヌクレオチドの直接添加に基づく蛍光などの他の技法を使用して、半定量的/定量的であり得る。例えば、本明細書に記載のように、RNAアプタマーに結合してRNA-フルオロフォア複合体を形成するフルオロフォアの使用。これらおよび他の技法は、当業者に既知であろう。
【0134】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法は、アンドロゲン受容体(AR)、エストロゲン受容体-アルファ(ER-α)、エストロゲン受容体-ベータ(ER-β)、プロゲステロン受容体A(PRA)、プロゲステロン受容体B(PRB)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、およびグルココルチコイド受容体(GR)を含むステロイドホルモン受容体に結合するであろう既知および未知の両方の構造の様々なリガンドの検出のために構成されている。
【0135】
アンドロゲン受容体に結合することが知られているリガンドの例としては、限定されないが、テストステロン、ジヒドロテストステロン;限定されないが、TRENA、17α-トレンボロン、17β-トレンボロン、トレンジオン、ナンドロロン、ボルデノン、アルトレノゲストを含むアンドロゲンアナボリックステロイド(AAS);限定されないが、93746、BMS-546929、LGD4033、ACP105、YK-11、アンダリン、リガンドロール、オスタリンを含む選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)が挙げられる。
【0136】
エストロゲン受容体アルファに結合することが知られているリガンドの例としては、限定されないが、エストラジオール、エストロン、エストリオール;ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン、オスペミフェン、ラソフォキシフェン、シクロフェニル、クロミフェン、ブロパレストロール、バセドキシフェン(Basedoxifene)、アノルドリンを含む選択的エストロゲン受容体モジュレーター;限定されないが、ポリフェノール(レスベラトロール)、フラバノン(エリオジクチオール、ヘスペレチン、ホモエリオジクチオール、ナリンゲニン)、フラボン(アピゲニン、ルテオリン、タンゲリチン(Tangeritin))、フラボノール(フィセチン、ケンペロール、ミリセチン、パキポドール、ケルセチン、ラムナジン)、カテキン(プロアントシアニド(Proanthocyanide))、イソフラボノイド(イソフラボンビオカニンA、クリシテイン(Clycitein)、ダイゼイン、ホルモノネチン、ゲニステイン)、イソフラバン(エクオール)、クメスタン(クメストロール)などの食物エストロゲンを含むフィトエストロゲン;限定されないが、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ビスフェノールA(BPA)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、フタレートエステル、エンドスルファン、アトラジン、ゼラノールを含むエストロゲン様内分泌かく乱化学物質(EEDC);ヒドラジド誘導体などのデザイナー化合物が挙げられる。
【0137】
エストロゲン受容体ベータに結合することが知られているリガンドの例としては、限定されないが、エストロゲン受容体アルファに結合するすべてのリガンド、ならびにジアリールプロピオニトリル(DPN)、ならびにWay-659、Way-818およびWay-200070などのWyeth由来のベンゾオキサゾールが挙げられる。
【0138】
プロゲステロン受容体Aおよびプロゲステロン受容体Bに結合することが知られているリガンドの例としては、限定されないが、プロゲステロン、ノルエチステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、ジドロゲステロン、ドロスピレノン;ウリプリスタルアセテート、テラプリストンアセテート、ビラプリサン(Vilaprisan)、アソプリスニル、アソプリスニルエカメート(Ecamate)を含む選択的プロゲステロン受容体モジュレーター;ミフェプリストン、オナプリストン、リロプリトン(Lilopritone)、およびゲストリノンを含む抗プロゲスチンが挙げられる。
【0139】
鉱質コルチコイド受容体に結合することが知られているリガンドの例としては、限定されないが、アルドステロン;フルドロコルチゾンなどの合成鉱質コルチコイド;スピロノラクトンおよびエプレレノンなどの抗鉱質コルチコイド;以下に記載のものなどのグルココルチコイド受容体リガンドが挙げられる。
【0140】
グルココルチコイド受容体に結合することが知られているリガンドの例としては、限定されないが、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、ハルシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルオコルトロン、ハロメタゾン、モメタゾン、またはアンタゴニストとしてのミフェプリストン、およびケトコナゾールが挙げられる。
【0141】
例示的なアッセイ構成要素および構築物
試料中に存在するリガンドによって活性化されたステロイドホルモン受容体は二量体化し(すなわち、定義されたように受容体-リガンド複合体を形成し)、その相補的なホルモン応答要素に結合するであろう。本明細書に記載の試験キットおよびアッセイでは、ホルモン応答要素がレポーター構築物に連結され、レポーター構築物の物理的特性の変化を使用して、調査下の試料中のリガンドの存在を表すことができる。本発明による例示的なホルモン応答要素としては、アンドロゲン応答要素(ARE)、エストロゲン応答要素(ERE)、プロゲステロン応答要素(PRE)、鉱質コルチコイド応答要素(MRE)、およびグルココルチコイド応答要素(GRE)が挙げられる。
【0142】
前述のように、様々なホルモン応答要素は、活性化リガンド-受容体複合体に選択的に結合するように構成された結合モチーフが組み込まれている。例えば、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン、鉱質コルチコイド、およびグルココルチコイド応答要素の各々は、ジンクフィンガー結合モチーフを介して、それらの二次構造配向において二量体化リガンド受容体複合体(すなわち、(HR-L))の結合を促進する不完全な2つの六量体(dihexameric)パリンドローム配列を含む。
【0143】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、アンドロゲン応答要素は、活性化アンドロゲン受容体に結合するDNA結合モチーフを含む。関連する例では、DNA結合モチーフは、リガンド結合アンドロゲン受容体の二量体(すなわち(AR-L)、「AR」が、アンドロゲン受容体であり、「L」が、リガンドである)に結合する。関連する例では、DNA結合モチーフは、活性化アンドロゲン受容体とアンドロゲン応答要素との間に結合特異性を生じる、不完全な2つの六量体パリンドローム配列を含む。さらに関連する例では、DNA結合モチーフを含むアンドロゲン応答要素は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0144】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、エストロゲン応答要素は、活性化エストロゲン受容体に結合するDNA結合モチーフを含む。関連する例では、DNA結合モチーフは、リガンド結合エストロゲン受容体の二量体(すなわち(ER-L)、「ER」が、ER-αまたはER-βから選択されるエストロゲン受容体である)に結合する。さらに関連する例では、DNA結合モチーフは、活性化エストロゲン受容体とエストロゲン応答要素との間に結合特異性を生じる、不完全な2つの六量体パリンドローム配列を含む。さらに関連する例では、DNA結合モチーフを含むエストロゲン応答要素は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0145】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、プロゲステロン応答要素は、活性化プロゲステロン受容体に結合するDNA結合モチーフを含む。関連する例では、DNA結合モチーフは、リガンド結合プロゲステロン受容体の二量体(すなわち(PR-L)、「PR」が、PRAまたはPRBから選択されるプロゲステロン受容体である)に結合する。さらに関連する例では、DNA結合モチーフは、活性化プロゲステロン受容体とプロゲステロン応答要素との間に結合特異性を生じる、不完全な2つの六量体パリンドローム配列を含む。さらに関連する例では、DNA結合モチーフを含むプロゲステロン応答要素は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0146】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、鉱質コルチコイド応答要素は、活性化鉱質コルチコイド受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連する例では、DNA結合モチーフは、リガンド結合鉱質コルチコイド受容体の二量体(すなわち(MR-L)、「MR」が、鉱質コルチコイド受容体である)に結合する。さらに関連する例では、DNA結合モチーフは、活性化鉱質コルチコイド受容体と鉱質コルチコイド応答要素との間に結合特異性を生じる、不完全な2つの六量体パリンドローム配列を含む。さらに関連する例では、DNA結合モチーフを含む鉱質コルチコイド応答要素は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0147】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、グルココルチコイド応答要素は、活性化グルココルチコイド受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連する例では、DNA結合モチーフは、リガンド結合グルココルチコイド受容体の二量体(すなわち(GR-L)、「GR」が、グルココルチコイド受容体である)に結合する。さらに関連する例では、DNA結合モチーフは、活性化グルココルチコイド受容体とグルココルチコイド応答要素との間に結合特異性を生じる、不完全な2つの六量体パリンドローム配列を含む。さらに関連する例では、DNA結合モチーフを含むグルココルチコイド応答要素は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0148】
テストステロン、ジヒドロテストステロン、合成ステロイドホルモン(例えば、AAS)、および選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(すなわち、SARM)、およびフィトまたはキセノアンドロゲンなどのアンドロゲン受容体に結合し、かつそれを活性化するリガンドの検出は、活性化アンドロゲン受容体複合体に結合することが可能なアンドロゲン応答要素と一緒にアンドロゲン受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0149】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、アンドロゲン応答要素は、配列5’-AGAACAnnnTGTTCT-3’(配列番号4)を含むか、またはそれからなり、nが、G、C、T、またはAから選択される任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACAnnnTGTTCT-3’(配列番号5)として定義され、nが、配列番号4と5との間の配列アラインメントに基づいて配列番号4に相補的である塩基(すなわち、A=T、T=A、G=C、C=G)を表す。
【0150】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、アンドロゲン応答要素は、配列5’-GGTACAnnnTGTTCT-3’(配列番号6)を含むか、またはそれからなり、nが、G、C、T、またはAから選択される任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACAnnnTGTACC-3’(配列番号7)として定義され、nが、配列番号6と7との間の配列アラインメントに基づいて配列番号6に相補的である塩基(すなわち、A=T、T=A、G=C、C=G)を表す。
【0151】
エストラジオール、エストロン、フィトおよびキセノエストロゲンを含む他のエストロゲン様ステロイドホルモン、ならびに選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの、エストロゲン受容体に結合し、かつそれを活性化するリガンドの検出は、活性化エストロゲン受容体複合体に結合することが可能なエストロゲン応答要素と一緒にエストロゲン受容体アルファ(ER-α)またはエストロゲン受容体ベータ(ER-β)のいずれかを含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0152】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、エストロゲン応答要素は、配列5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’(配列番号8)を含むか、またはそれからなり、nが、G、C、T、またはAから選択される任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’(配列番号9)として定義され、nが、配列番号8と9との間の配列アラインメントに基づいて配列番号8に相補的である塩基(すなわち、A=T、T=A、G=C、C=G)を表す。
【0153】
プロゲステロン、ノルエチステロン、レボノルゲストレル、他のプロゲステロン様ステロイドホルモン、および選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)などの、プロゲステロン受容体に結合し、かつそれを活性化するリガンドの検出は、活性化プロゲステロン受容体複合体に結合することが可能なプロゲステロン応答要素と一緒にプロゲステロン受容体A(PRA)またはプロゲステロン受容体B(PRB)のいずれかを含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0154】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による一例では、プロゲステロン応答要素は、配列5’-GGTACAAACTGTTCT-3’(配列番号10)を含むか、またはそれからなる。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACAGTTTGTACC-3’(配列番号11)として定義される。
【0155】
アルドステロン、フルドロコルチゾンなどの合成鉱質コルチコイド、ならびにスピロノラクトンおよびエプレレノンなどの抗鉱質コルチコイドなどの鉱質コルチコイド受容体に結合し、かつそれを活性化するリガンドの検出は、活性化鉱質コルチコイド受容体複合体に結合することが可能な鉱質コルチコイド応答要素と一緒に鉱質コルチコイド受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0156】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、鉱質コルチコイド応答要素は、配列5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)を含むか、またはそれからなり、nが、G、C、T、またはAから選択される任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACATTnTGTTCT-3’(配列番号13)として定義され、nが、配列番号12と13との間の配列アラインメントに基づいて配列番号12に相補的である塩基(すなわち、A=T、T=A、G=C、C=G)を表す。
【0157】
コルチゾール、デキサメタゾン、および11-ジヒドロコルチコステロンなどのグルココルチコイド受容体に結合し、かつそれを活性化するリガンドの検出は、活性化グルココルチコイド受容体複合体に結合することが可能なグルココルチコイド応答要素と一緒にグルココルチコイド受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0158】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による別の例では、グルココルチコイド応答要素は、配列5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)を含むか、またはそれからなり、nが、G、C、T、またはAから選択される任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACATTnTGTTCT-3’(配列番号13)として定義され、nが、配列番号12と13との間の配列アラインメントに基づいて配列番号12に相補的である塩基(すなわち、A=T、T=A、G=C、C=G)を表す。
【0159】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による例示的な核酸配列としては、限定されないが、以下が挙げられる:
T7i-ARE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-ERE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-PRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-MRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-GRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-ARE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-ERE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-PRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-MRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-GRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T7i-ARE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-ERE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-PRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-MRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-GRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-ARE(n)-F30-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-ERE(n)-F30-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-PRE(n)-F30-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-MRE(n)-F30-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7i-GRE(n)-F30-iSpinach:n=1,2,3,4、
T7iが、T7 RNAポリメラーゼのプロモーター/開始配列を表す。
【0160】
関連する例では、T7iプロモーター/開始配列は、5’-TAATACGACTCACTATAG-3’(配列番号1)によって定義される。
【0161】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による代替的な例示的な核酸配列としては、限定されないが、以下が挙げられる:
T3i-ARE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-ERE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-PRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-MRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-GRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-ARE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-ERE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-PRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-MRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-GRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
T3i-ARE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T3i-ERE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T3i-PRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T3i-MRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T3i-GRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
T3i-ARE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
T3i-ERE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
T3i-PRE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
T3i-MRE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
T3i-GRE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
T3iが、T3 RNAポリメラーゼのプロモーターまたは開始配列を表す。
【0162】
関連する例では、T3iプロモーター/開始配列は、5’-AATTAACCCTCACTAAAG-3’(配列番号2)によって定義される。
【0163】
本明細書に記載の試験キットおよびアッセイ方法による代替的な例示的な核酸配列としては、以下が挙げられる:
SP6i-ARE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-ERE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-PRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-MRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-GRE(n)-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-ARE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-ERE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-PRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-MRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-GRE(n)-F30-MangoII:n=1,2,3,4、
SP6i-ARE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
SP6i-ERE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
SP6i-PRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
SP6i-MRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
SP6i-GRE(n)-iSpinach:n=1,2,3,4、
SP6i-ARE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
SP6i-ERE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
SP6i-PRE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
SP6i-MRE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
SP6i-GRE(n)-iSpinachx3:n=1,2,3,4、
SP6iが、SP6 RNAポリメラーゼのプロモーターまたは開始配列を表す。
【0164】
関連する例では、SP6iプロモーター/開始配列は、5’-ATTTAGGTGACACTATAG-3’(配列番号3)によって定義される。
【0165】
本発明による別の例では、試験キットおよび/またはアッセイ方法は、アンドロゲン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、T7 RNAポリメラーゼ開始配列、アンドロゲン応答要素、ならびにF30足場およびMango II RNAアプタマーをコードするレポーター構築物で構成される核酸配列が、以下の配列番号14に記載の配列を含む:
[配列番号14]
5’TAATACGACTCACTATAGACTCTGGAGGAATGGAGAACAGCCTGTTCTCCATTGCCATGTGTATGTGGGTACGAAGGAGAGGAGAGGAAGAGGAGAGTACCCACATACTCTGATGATCCTTCGGGATCATTCATGGCAATCTAGGA3’
【0166】
本発明によるなお別の例では、試験キットおよび/またはアッセイ方法は、エストロゲン受容体アルファまたはエストロゲン受容体ベータに結合するリガンドを検出するように構成され、T7 RNAポリメラーゼ開始配列、エストロゲン応答要素、ならびにF30足場およびMango II RNAアプタマーをコードするレポーター構築物で構成される核酸配列が、以下の配列番号15に記載の配列を含む:
[配列番号15]
5’TAATACGACTCACTATAGACTCTGGAGGAACAGGTCAGCATGACCTGTTGCCATGTGTATGTGGGTACGAAGGAGAGGAGAGGAAGAGGAGAGTACCCACATACTCTGATGATCCTTCGGGATCATTCATGGCAATCTAGGA3’
【0167】
本発明によるなおさらなる例では、試験キットおよび/またはアッセイ方法は、プロゲステロン受容体Aまたはプロゲステロン受容体Bに結合するリガンドを検出するように構成され、T7 RNAポリメラーゼ開始配列、プロゲステロン応答要素、ならびにF30足場およびMango II RNAアプタマーをコードするレポーター構築物で構成される核酸配列が、以下の配列番号16に記載の配列を含む:
[配列番号16]
5’TAATACGACTCACTATAGACTCTGGAGGAAGGTACAAACTGTTCTTTGCCATGTGTATGTGGGTACGAAGGAGAGGAGAGGAAGAGGAGAGTACCCACATACTCTGATGATCCTTCGGGATCATTCATGGCAATCTAGGA3’
【0168】
本発明による別の例では、試験キットおよび/またはアッセイ方法は、鉱質コルチコイド受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、T7 RNAポリメラーゼ開始配列、鉱質コルチコイド応答要素、ならびにF30足場およびMango II RNAアプタマーをコードするレポーター構築物で構成される核酸配列が、以下の配列番号17に記載の配列を含む:
[配列番号17]
5’TAATACGACTCACTATAGACTCTGGAGGAATGTACAGGATGTTCTTTGCCATGTGTATGTGGGTACGAAGGAGAGGAGAGGAAGAGGAGAGTACCCACATACTCTGATGATCCTTCGGGATCATTCATGGCAATCTAGGA3’
【0169】
本発明による別の例では、試験キットおよび/またはアッセイ方法は、グルココルチコイド受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、T7 RNAポリメラーゼ開始配列、グルココルチコイド応答要素、ならびにF30足場およびMango II RNAアプタマーをコードするレポーター構築物で構成される核酸配列が、以下の配列番号18に記載の配列を含む:
[配列番号18]
5’TAATACGACTCACTATAGACTCTGGAGGAATGTACAGGATGTTCTTTGCCATGTGTATGTGGGTACGAAGGAGAGGAGAGGAAGAGGAGAGTACCCACATACTCTGATGATCCTTCGGGATCATTCATGGCAATCTAGGA3’
【0170】
本発明による試験キットおよびアッセイ方法で使用するための他の核酸/構築物を、以下の表1に要約する。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】
【0171】
マルチプレックスアッセイシステム
本発明はさらに、同じ試験試料から2つ以上のステロイドホルモンゲノム応答を検出するように構成されたマルチプレックスアッセイを企図する。
【0172】
マルチプレックスシステムの関連性をさらに説明するために、ある特定の状況では、例えば、対象のホルモン状態を調査する臨床医が、対象のアンドロゲンおよびエストロゲンレベル/活性の両方を知ることが有用であろう。
【0173】
アンドロゲン受容体に結合するリガンドは、同じアッセイに存在するエストロゲン受容体に結合せずかつそれを活性化せず、逆に、エストロゲン受容体に結合するリガンドは、また同じアッセイに存在するアンドロゲン受容体に結合せずまたそれを活性化しないであろうので、同じ試験試料からのアンドロゲンリガンドおよびエストロゲンリガンドを並行検出することが可能である。これは、アンドロゲン受容体およびエストロゲン受容体が、異なるステロイドホルモン受容体クラスに属しているので、受容体活性化の観点で「クロストーク」がないことが理由である。そのため、同じ試料からアンドロゲンリガンドおよびエストロゲンリガンドの両方を検出するためのマルチプレックスアッセイが開発された。
【0174】
したがって、本発明の別の態様では、アンドロゲンリガンドおよび/またはエストロゲンリガンドを並行検出するための、試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)アンドロゲン受容体が、試料からの相補的リガンドとアンドロゲン受容体-リガンド複合体を形成することが可能である、アンドロゲン受容体と、
(ii)第1の核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)アンドロゲン受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能であるアンドロゲン応答要素、および
(c)第1のレポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、第1の核酸分子と、
(iii)エストロゲン受容体が、試料からの相補的リガンドとエストロゲン受容体-リガンド複合体を形成することが可能である、エストロゲン受容体と、
(iv)第2の核酸分子であって、
(d)ポリメラーゼプロモーター配列、
(e)エトロゲン受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能であるエストロゲン応答要素、および
(f)第2のレポーター構築物を含む、第2の核酸分子と、
(iv)単一のポリペプチドポリメラーゼと、を含み、
第1および第2のレポーター構築物が異なり、
試料が試験キットと組み合わせられると、アンドロゲン受容体-リガンド複合体が応答要素に結合することによって引き起こされる第1のレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のアンドロゲンリガンドの存在が検出され、
試料が試験キットと組み合わせられると、エストロゲン受容体-リガンド複合体が応答要素に結合することによって引き起こされる第2のレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のエストロゲンリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0175】
本発明のこの態様による一例では、試験キットは、熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体をさらに含む。
【0176】
本発明のこの態様による一例では、第1および第2の核酸分子は、別個の分子である。
【0177】
本発明のこの態様による別の例では、第1および第2の核酸分子は、操作可能に連結されている。
【0178】
本発明のこの態様によるなお別の例では、第1の核酸分子は、配列番号14によって定義される配列を含む。
【0179】
本発明のこの態様によるさらなる例では、第2の核酸分子は、配列番号15によって定義される配列を含む。
【0180】
本発明のこの態様によるなおさらなる例では、第1および第2の核酸分子は、操作可能に連結され、配列番号80によって定義される配列を含む。
【化1】
【0181】
有利なことに、本明細書に記載のアッセイおよび試験キットは、(i)細胞抽出物の非存在下でも実施が可能であり、アッセイシグナルを干渉する(例えば、リガンドと受容体との「クロストーク」は、応答要素の自動活性化をもたらす)天然に存在するリガンドおよび/またはステロイドホルモン受容体を含有せず、ならびに(ii)本明細書に記載のアッセイシステムの単純さは、第2のリガンドの検出に特異的な第2またはそれ以上の受容体/レポート構築物の組み合わせを含むように、既存のアッセイまたは試験キットを通常通りに改変することができること、同じインビトロ転写機構(例えば、バクテリオファージポリメラーゼ+ヌクレオシド三リン酸)を利用することによって、各レポーターによって生成される別個のシグナルが、便利に検出され得ることを意味するので、マルチプレックスシステムでの構成に特に好適である。この点をさらに説明するために、本発明によるマルチプレックスアッセイシステムは、例えば、アンドロゲンまたはアンドロゲン様リガンドの存在下で、同じ試料中のエストラジオールの検出に特異的なレポーター構築物によって生成される読み取り値とは独立して測定され得るレポーター読み取り値を生成するであろう、アンドロゲン特異的レポーター構築物を含み得る。
【0182】
当業者は、本発明のマルチプレックスシステムに関連する分子の複雑さの欠如によって与えられる利点を理解し、同じ試験試料からの複数(例えば、2、3、4、またはそれ以上)の別個のステロイドホルモンゲノム応答の検出が可能であることを認識するであろう。
【0183】
したがって、本発明による試験キットは、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体と、少なくとも1つのレポーター構築物を含む少なくとも1つの核酸分子と、を含む。
【0184】
したがって、本明細書に記載の試験キットおよび方法による「ステロイドホルモン受容体」という用語は、2つ以上の異なるタイプのステリオイド(steroid)ホルモン受容体(例えばかつただ実例として、テストステロンに結合するステロイドホルモン受容体およびエストラジオールに結合するステロイドホルモン受容体)が存在し得るという意味では、「少なくとも1つのステロイドホルモン受容体」を意味することを意図する。
【0185】
同様に、「[応答要素を含む]核酸分子」という用語は、2つ以上の別個の核酸分子が存在し得、各々が異なる応答要素、および任意選択的に異なるレポーター分子を含むという意味で、「少なくとも1つの核酸」を意味することを意図する。
【0186】
本発明のこの態様による一例では、試験キットは、(i)エストロゲン受容体およびエストロゲン応答要素を含む核酸分子と、(ii)アンドロゲン受容体およびアンドロゲン応答要素を含む核酸分子と、を含む。
【0187】
関連する例では、エストロゲン応答要素を含む核酸分子は、第1のフルオロフォアに結合することが可能である第1のRNAアプタマーをさらに含む。
【0188】
別の関連する例では、アンドロゲン応答要素を含む核酸分子は、第2のフルオロフォアに結合することが可能である第2のRNAアプタマーをさらに含む。
【0189】
関連する例では、第1および第2のRNAアプタマーとしては、第1のRNAアプタマーが、第2のRNAアプタマーと同一ではないことを条件として、限定されないが、Mango I、Mango II、Mango III、およびMango IV、Spinach、iSpinach、ベビーSpinach、Broccoli、およびMalachite Greenが挙げられる。
【0190】
さらに関連する例では、第1のRNAアプタマーは、Mango IIであり、第2のRNAアプタマーは、Malachite Greenである。
【0191】
さらに関連する例では、第1のRNAアプタマーは、Mango IIであり、第2のRNAアプタマーは、iSpinachである。
【0192】
試験キットおよびアッセイの有用性
有利なことに、本発明は、ステロイドホルモン受容体活性化の原理に基本的に基づいて機能する、活性に基づく試験キット、アッセイ、および方法を提供する。試験される試料内に存在する標的リガンドによるステロイドホルモン受容体活性化(その結果としてのホルモン応答要素への結合を伴う)を検出することによって、本発明は、調査対象のリガンド(複数可)の構造的知識に依存せず、生物学的に活性なリガンドおよび不活性なリガンドの存在を容易に区別することができ、実施するために複雑な実験設備または特定の専門知識を必要としない、費用効果が高く、信頼性が高く、再現性のあるシステムを提供する無細胞の試験キット、アッセイ、および方法を提供する。
【0193】
したがって、本発明の別の態様では、アスリートのドーピング状態を決定するための方法であって、アスリートから得た試料を本明細書に記載の試験キットと組み合わせることと、アスリートのドーピング状態を決定することと、を含む、方法が提供される。
【0194】
本発明のこの態様による一例では、アスリートから得た得た試料は、血清試料、血漿試料、または尿試料である。
【0195】
別の例では、アスリートは、ヒトアスリート、またはウマ、ラクダ、もしくはイヌから選択される非ヒトアスリートである。
【0196】
本発明のさらなる態様では、リガンドがステロイドホルモン受容体を活性化し、細胞内のホルモンゲノム応答を誘発することが可能である、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための製造物品であって、試料中のリガンドの存在を検出する方法についての説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含む、製造物品が提供される。
【0197】
本発明のなおさらなる態様では、アスリートのドーピングを決定するための製造物品であって、アスリートに由来する試料中のリガンドの存在を検出するための説明書と一緒に本明細書に記載の試験キットを含み、試料中のリガンドの存在が、アスリートのドーピングを示す、製造物品が提供される。
【0198】
本明細書に記載の様々な試験キットおよびアッセイは各々、(i)試験される試料中に存在し得るリガンドを結合するためのリガンド結合ドメインを含むステロイドホルモン受容体、および(ii)活性化ステロイドホルモン受容体(またはリガンド-受容体複合体、HR-L)によって結合されるタンパク質結合ドメインを含む核酸応答要素を提供する。「活性化ステロイドホルモン受容体」という用語は、受容体-リガンド複合体を指し、HR-L構造の様々な変更(モノマー、二量体、三量体など)を含み得る。重要なことに、ホルモン応答要素は、受容体-リガンド複合体に特異的な結合モチーフを含有する。したがって、本発明の試験キットおよびアッセイを目的の試料と組み合わせることによって、ステロイドホルモン受容体に結合し、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発する潜在性を有するリガンドの検出が可能である。
【0199】
「受容体結合ドメイン」、「活性化受容体結合ドメイン」、「ホルモン受容体結合ドメイン」、「活性化ホルモン受容体結合ドメイン」、「受容体-リガンド結合ドメイン」、および「ホルモン受容体-リガンド結合ドメイン」という用語は、本明細書で定義されるように、活性化ホルモン受容体またはリガンド-受容体複合体によって結合されるホルモン応答要素のタンパク質結合ドメインを指すように互換的に使用される。
【0200】
他の例では、本明細書に記載の発明は、ヒト、ならびに競走馬およびイヌを含む非ヒトアスリートで使用されるパフォーマンス向上プロドラッグ/薬物(例えば、アナボリックステロイド)の検出に、有用性を見出す。他の例では、本明細書に記載の発明は、ステロイドホルモン受容体に結合し、細胞内でゲノム応答を誘発し得るか、または(すなわち、いわゆる「プロドラッグ」の場合)代謝処理後に細胞内でゲノム応答を誘発し得る添加物について、食品および健康食品補助食品をスクリーニングすることに有用性を有する。
【0201】
本発明はさらに、リガンドが、生理学的に活性な形態に変換されると、ステロイドホルモン受容体を最終的に活性化することが可能である、試験試料からの1つ以上の生理学的に不活性なリガンドの検出を企図する。したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法は、対応するステロイドホルモン受容体を活性化するであろうような方式でリガンドを処理することが可能であるステロイド代謝機構をさらに含む。この方式では、栄養補助食品などの試料から、生理学的に不活性なリガンド(例えば、プロホルモン)を検出することが可能である。
【0202】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法は、リガンドを生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態に、または生理学的に活性な形態からより生理学的に活性な形態に、または生理学的に活性な形態から生理学的により活性でない形態に、または生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態に変換するのに十分なステロイド代謝機構をさらに含み得る。ステロイド代謝機構は、リガンドが生理学的に活性な形態であるときにのみ、ステロイドホルモン受容体を活性化し、かつゲノム応答を誘発する能力を有する。したがって、本発明による試験キット、アッセイ、および方法にステロイド代謝機構を含めることは、(例えば)リガンドがプロドラッグ(例えばプロホルモン)として存在し、確立された手法を使用した検出を回避し得る、目的の試験試料からの生理学的に不活性なリガンドの検出の促進に役立つ。さらに、本発明による試験キット、アッセイ、および方法にステロイド代謝機構を含めることは、効果を示すために必要なリガンドの生物学的活性/効力の決定に役立つ。
【0203】
図17に提示されたデータは、この点をさらに説明している。アンドロステンジオン(すなわち、アンドロゲンプロホルモン)を、S9肝臓画分と事前にインキュベートし、その後、反応ミックスをステロイド用に抽出した(すなわち、潜在的な非特異的リガンドを除去した)。次いで、アンドロゲン活性について、様々な試験試料および対照試料を分析した。結果は、未処理対照のアンドロゲン活性レベルが、ビヒクル対照(すなわちメタノール+T7、メタノール+AR/HSP90)とほぼ等しかった未処理理対照(すなわちアンドロステンジオン-S9肝臓)と比較して、アンドロステンジオン+S9肝臓処理のレポーター構築物の蛍光の統計的に顕著な低減を実証している。
【0204】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法は、定義されるように、受容体-リガンド複合体と核酸内に含有される応答要素との間の結合を検出するための検出手段をさらに含み得る。
【0205】
本発明による試験キットおよびアッセイは、無細胞である。アッセイシステムの分子の複雑さが顕著に低減されるので、これは特に重要である。例えば、(i)ステロイドホルモン分子の熱力学的シンクを生じる潜在性を有する細胞膜構造、および(ii)細胞に基づくシステムで観察される内因性ステロイドホルモン代謝の非存在によって、感受性が向上したアッセイシステムが提供される。さらにかつ有利には、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法によれば、必須構造要素(例えば、ステロイドホルモン受容体および1つ以上の活性化受容体結合ドメインを含む核酸応答要素)の相対量を正確に制御して、向上したアッセイ機能および増加した感受性を提供することができる。
【0206】
本明細書に記載の方法によれば、試験試料中に存在するリガンドによって生成されるシグナルの絶対レベルを決定するために、試験結果を参照閾値と比較してもよい。実際、出願人らは、非リガンド結合受容体による応答要素の非特異的結合および/または活性化を観察した。したがって、任意の所与の試験試料について半定量分析を実施することが望ましい場合、本明細書に記載のアッセイおよび方法を、試験試料の非存在下(例えば、陰性対照として作用するエタノールの存在下)で実施して、まず参照閾値を確立してもよい。次いで、試験試料から得たアッセイ結果を参照閾値と比較して、単純な減算手法を使用して、試料中に存在するリガンド(複数可)に起因する絶対活性を決定してもよい。
【0207】
本発明はさらに、参照化合物と比較した試験化合物の効力を決定するための、本明細書に記載のアッセイおよび試験キットの使用を企図する。本発明によれば、「相対効力」という用語は、試験化合物の生物学的活性を参照化合物に対して正規化することによって決定した、参照化合物に対する試験化合物の生物学的活性の乗数として定義される。
【0208】
試験化合物および参照化合物の生物学的活性は、EC50、またはその特定の化合物の用量応答曲線から最大応答の半分を与える化合物の濃度を使用して決定することができる。用量応答曲線は、化合物を段階的に希釈し、そのステロイドホルモン受容体の結合/活性化プロファイルを測定することによって生成される。次いで、測定された(例えば、蛍光によって測定された)活性対(すなわち、化合物の段階希釈が対数スケールで最も良好に提示される濃度範囲を生成する)化合物の濃度のプロットを作成する。
【0209】
当業者は、試験化合物の相対効力の尺度が、使用される参照化合物との比較であることを認識するであろう。言い換えれば、試験化合物の相対効力は、その生物学的活性が正規化されている参照化合物に応じて異なる可能性がある。
【0210】
相対効力が>1である場合、試験化合物は、参照化合物と比較して、アッセイにおいてより高い測定された生物学的活性を起こす。相対効力が<1である場合、試験化合物は、参照化合物と比較して、アッセイにおいてより低い測定された生物学的活性を起こす。相対効力=1である場合、試験化合物および参照化合物は、アッセイにおいて等しい生物学的活性を起こす。
【0211】
相対効力はまた、問題の試験化合物の活性化因子を決定するために使用することができる。本明細書で使用される場合、活性化因子は、試験化合物の2つの状態間の相対的活性化の尺度としての、酵母細胞で、もしくは酵母細胞を含まない抽出物(すなわち、代謝機構を含有しない)を使用して決定した試験化合物の相対的効力、または哺乳動物細胞で、もしくは哺乳類細胞を含まない抽出物(すなわち、代謝機構を含む)を使用して決定した同じ試験化合物の相対的効力と関連する。活性化因子>1は、試験化合物が、アッセイにおいて代謝機構の存在下で、より生理学的に活性な状態への代謝変換を受けたことを意味する。
【0212】
本発明による試験キットおよびアッセイによって与えられるなお別の利点は、性能の相対的な容易さである。言い換えれば、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法の性能は、複雑な細胞培養技法、経験豊富な実験技師、または複雑な実験試験設備および分析を必要としない。本発明による試験キット、アッセイ、および方法は、比較的単純な試験手順に従って、現場の訓練を受けていない要員によって実施され得るので、これは特に有利である。さらに、試験キット、アッセイ、および方法の性能は、(例えば)競技の直前または直後にアスリートから採取した試料中のパフォーマンス向上物質について試験するときに、リアルタイムの情報を提供することができる。
【0213】
本発明の他の態様では、リガンドが、細胞内にあるとステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、ゲノム応答を誘発することが可能である、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるアンドロゲン受容体、または
(ii)エストロゲン受容体が、エストロゲン受容体アルファまたはエストロゲン受容体ベータである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるエストロゲン受容体、または
(iii)、プロゲステロン受容体が、プロゲステロン受容体Aまたはプロゲステロン受容体Bである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるプロゲステロン受容体、または
(iv)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能である鉱質コルチコイド受容体、または
(v)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるグルココルチコイド受容体と、
(vi)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)単一のポリペプチドポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0214】
本発明の他の態様では、リガンドが、細胞内にあるとステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、ゲノム応答を誘発することが可能である、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるアンドロゲン受容体、または
(ii)エストロゲン受容体が、エストロゲン受容体アルファまたはエストロゲン受容体ベータである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるエストロゲン受容体、または
(iii)、プロゲステロン受容体が、プロゲステロン受容体Aまたはプロゲステロン受容体Bである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるプロゲステロン受容体、または
(iv)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能である鉱質コルチコイド受容体、または
(v)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるグルココルチコイド受容体と、
(vi)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子と、
(vii)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(iii)単一のポリペプチドポリメラーゼと、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0215】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるアンドロゲン受容体、または
(ii)エストロゲン受容体が、エストロゲン受容体アルファまたはエストロゲン受容体ベータである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるエストロゲン受容体、または
(iii)、プロゲステロン受容体が、プロゲステロン受容体Aまたはプロゲステロン受容体Bである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるプロゲステロン受容体、または
(iv)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能である鉱質コルチコイド受容体、または
(v)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるグルココルチコイド受容体と、
(vi)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)上の(i)~(v)のうちのいずれかに定義される受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(vii)単一のポリペプチドポリメラーゼと、
(viii)ヌクレオシド三リン酸と、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0216】
本発明のなおさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発することが可能なリガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるアンドロゲン受容体、または
(ii)エストロゲン受容体が、エストロゲン受容体アルファまたはエストロゲン受容体ベータである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるエストロゲン受容体、または
(iii)、プロゲステロン受容体が、プロゲステロン受容体Aまたはプロゲステロン受容体Bである、試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるプロゲステロン受容体、または
(iv)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能である鉱質コルチコイド受容体、または
(v)試験試料からのリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することが可能であるグルココルチコイド受容体と、
(vi)熱ショックタンパク質90(HSP90)、HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)との複合体;HSP90、HSP70、および熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、およびp23の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、および熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、および48kD Hipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、およびp60の複合体;ならびにHSP90、HSP70、HSP40、p23、Hop、Hip、p60、およびFKBP52の複合体から選択されるステロイドホルモン受容体補因子と、
(vii)核酸分子であって、
(a)ポリメラーゼプロモーター配列、
(b)上の(i)~(v)のうちのいずれかに定義される受容体-リガンド複合体によって結合されることが可能である応答要素、および
(c)レポーター構築物を含み、
応答要素(b)が、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、(a)、(b)、および(c)が、操作可能に連結されている、核酸分子と、
(viii)単一のポリペプチドポリメラーゼと、
(ix)ヌクレオシド三リン酸と、を含み、
試料が試験キットと組み合わせられると、リガンド-受容体複合体が応答要素に結合することによって引き起こされるレポーター構築物の転写の低減または阻害を測定することによって、試料中のリガンドの存在が検出される、試験キットが提供される。
【0217】
本発明のアッセイ、方法および試験キットによるある特定の例では、核酸分子は、応答要素またはレポーター構築物を含む、核酸の様々な構成要素のうちの1つ以上のコピーを含む。例えば、レポーター構築物または核酸分子は、限定されないが、二重コピー、三重コピー、四重コピーなどを含む、核酸応答要素の単一コピーまたは複数コピーを含み得る。
【0218】
本発明の別の例では、ステロイドホルモン受容体は、細胞から精製されるか、または組み換えクローニング、発現、および精製を通じた、細胞に基づくホルモン受容体に由来する。さらなる例では、ステロイドホルモン受容体は合成であり、その配列は、当技術分野で既知の内因性ステロイドホルモン受容体配列をモデルとするか、またはそれから進化させた。
【0219】
当業者はまた、任意のステロイドホルモン受容体が、検出のための目的のリガンドに結合し、それによって活性化される能力を保持することを条件として、本発明の試験キット、アッセイ、および方法に任意のステロイドホルモン受容体を用いることができることを認識するであろう。これとしては、内因性細胞形態、ならびに組み換えまたは合成形態に基づくステロイドホルモン受容体が挙げられる。
【0220】
したがって、本発明による試験キット、アッセイ、および方法は、ステロイドホルモンゲノム応答を誘発する任意のリガンドをスクリーニング/検出するように構成され得る。しかしながら、当業者は、本明細書に記載の様々なアッセイの概念によれば、異なるホルモンクラス(すなわち、リガンド)の検出は、適切に構成および最適化された試験キット、アッセイ、および方法の形式を必要とすることを認識するであろう。例えば、テストステロン、ならびに他のテストステロン様ホルモンなどのアンドロゲン受容体に結合し、かつそれを活性化するリガンドの検出は、活性化アンドロゲン-受容体複合体などに結合することが可能なアンドロゲン応答要素と一緒にアンドロゲン受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0221】
デザイナステロイドおよび非ステロイドアナボリック薬は、抗ドーピング実験に顕著かつ増大している課題を提起する。テトラヒドロゲストリノンおよびマドール(madol)の検出において2000年代初頭に最初に同定された、デザイナーアナボリック薬によって提起される脅威は、多数の潜在的な薬剤を含むために急速に増加している。これらの合成由来のアナボリック薬は、製造および供給の両方に関する検出または法的制御を回避するように設計されており、いわゆる「補助食品」として販売されている場合、多くはインターネット上で広く入手可能である。
【0222】
質量分析法は依然として、生物学的試料および/または補助食品中の既知の違法ステロイドホルモンおよび非ステロイドアナボリック薬を同定するための主要な技術である。その感受性および特異性にもかかわらず、質量分析法は、検出のためにステロイドおよび非ステロイドアナボリック薬の化学構造の事前知識を必要とすることによって、依然として制限がある。さらに、質量分析法は、検出されたアナボリック薬の生物学的活性についての情報を提供することができず、生理活性分子と不活性分子とを区別することが不可能である。これは、アスリート、コーチ、トレーナー、マネージャー、および製造業者の法的訴追に必要な情報である。
【0223】
近年、酵母および哺乳類細胞に基づくインビトロアンドロゲンバイオアッセイを使用して、補助食品中の新規の合成アンドロゲンの存在、プロゲスチン、ならびにアンドロゲン、プロアンドロゲン、デザイナーアンドロゲン、およびデザイナー非ステロイドアナボリック薬のアンドロゲンの潜在性が検出されている。しかしながら、これらのアッセイは、本明細書の他の部分に記載されるように、分子の複雑さに関連する制限を被り、性質における分子的および細胞的の両方である技術的スキルを必要とし、時間および集中的な労力を必要とし、高価である。そのため、通常のスクリーニングに含めるために現在の形態のアッセイを考慮することは現実的ではない。言い換えれば、酵母および哺乳類細胞に基づくアッセイは、ハイスループットではなく費用効果が高くないので、顕著な制限を被る。
【0224】
有利なことに、本発明は、ステロイドホルモン受容体活性化の原理に基本的に基づいて機能する、活性に基づく試験キット、アッセイ、および方法を提供する。試験される試料内に存在するリガンドによるステロイドホルモン受容体活性化を検出することによって、本発明は、調査対象のリガンド(複数可)の構造的知識に依存せず、生物学的に活性なリガンドおよび不活性なリガンドの存在を容易に区別することができ、実施するために複雑な実験設備または特定の専門知識を必要としない、費用効果が高く、信頼性が高く、再現性のあるシステムを提供する無細胞の試験キット、アッセイ、および方法を提供する。
【0225】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法による一例では、リガンドは、パフォーマンス向上デザイナー薬物および/またはステロイドである。
【0226】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法による別の例では、リガンドは、未知の化学構造のものである。
【0227】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法によるさらなる例では、リガンドは、従来未知の化学構造のものである。
【0228】
本発明はさらに、リガンドのそのステロイドホルモン受容体への結合を防止するであろう化合物について目的の試料をスクリーニングすることによって、受容体を活性化せず、ゲノム応答を誘発しないような標的リガンドのアンタゴニストを検出するための、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法の使用を企図する。
【0229】
これは、内分泌および非内分泌がんの治療のための潜在的な療法として、(例えば)ステロイドホルモン受容体活性化を遮断するアンタゴニストについてスクリーニングする必要があるときに、特に有用である。例えば、1つ以上のエストロゲン受容体を含む、活性に基づく本発明による試験キット、方法、およびアッセイを使用して、アンタゴニストの存在について化合物ライブラリーをスクリーニングすることができるか、またはがん療法中の患者の乳がん組織もしくは血液中のエストロゲン受容体活性化の喪失を監視することができる。
【0230】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法のすべての態様によるなおさらなる例では、生物学的試料は、ウマ、イヌ、ラクダ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、トリ、サル、ネズミ、ウサギ、シカ、魚類、サケ、霊長類、およびヒトからなる群から選択される動物に由来する。
【0231】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法のすべての態様によるなおさらなる例では、試験試料は、限定されないが、血液(血漿および血清)、筋肉、腫瘍、精液などを含む、尿、唾液、便、毛髪、組織からなる群から選択される生物学的材料に由来する。
【0232】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法のすべての態様によるなおさらなる例では、試験試料は、野菜、肉からなる群から選択される食品、限定されないがスポーツドリンクおよびミルクを含む飲料、限定されないが食品補助食品、およびスポーツ補助食品、栄養補助食品、ハーブ抽出物などを含む補助食品に由来する。
【0233】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法のすべての態様によるなおさらなる例では、試験試料は、薬物、強壮剤、シロップ、錠剤、舐剤、クリーム、スプレー、およびゲルからなる群から選択される医薬品に由来する。
【0234】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、および方法のすべての態様によるなおさらなる例では、試料は、限定されないが、プラスチックおよび鉱物を含む、液体、水、土壌、織物からなる群から選択される環境に由来する。
【0235】
図14~16と併せて閲覧される実施例6に提示されている情報は、試験キットおよびアッセイ方法を使用して、子牛およびウマに由来する血清(図14~16)、ならびに子馬から得た尿(図15および16)などの生物学的マトリックスから(ステロイドホルモンリガンドの例として)テストステロンを検出したことを実証している。これらのデータは、例えば、ヒトおよびウマアスリートのトラックサイドのドーピング状態の決定、または輸出/輸入品質管理の一部として栄養補助食品に分析を実施するための、本発明による試験キットおよびアッセイ方法の現場での有用性を強化する。
【0236】
したがって、別の例では、試料は、生物学的試料である。関連する例では、生物学的試料は、限定されないが、血液、血漿、血清、唾液、間質液、精液、および尿を含む、体液試料である。
【0237】
別の例では、限定されないが、葉、花、茎、樹皮、根、芽、鞘、花粉、および種子を含む植物に由来する試料。
【0238】
別の例では、試料は、限定されないが、ウマ動物、イヌ動物、ヒトコブラクダ動物、ウシ動物、ブタ動物、ヒツジ動物、ヤギ動物、トリ動物、サル動物、ネズミ動物、ウサギ動物、シカ動物、魚類動物、サケ動物、霊長類動物、およびヒト動物を含む、動物に由来する。
【0239】
別の例では、試験試料は、非生物学的試料である。関連する例では、非生物学的試料としては、限定されないが水を含む液体試料、土壌試料、限定されないがプラスチックを含む織物試料、鉱物試料、食品試料、および医薬品が挙げられる。
【0240】
食品試料の例としては、限定されないが、野菜、肉、飲料、補助食品、およびハーブ抽出物が挙げられる。
【0241】
医薬品の例としては、限定されないが、薬物、強壮剤、シロップ、錠剤、舐剤、クリーム、スプレー、およびゲルが挙げられる。
【0242】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明する。特許請求される本発明は、これらの実施例によって決して限定されることを意図するものではないことが理解されよう。
【実施例
【0243】
以下の情報およびデータは、アンドロゲン受容体に結合しかつそれを活性化する、(例えば)テストステロンおよびジヒドロテストステロンを含むリガンド、またはエストロゲン受容体に結合しかつそれを活性化する、(例えば)エストラジオールを含むリガンドの検出に関する、様々なプロトタイプアッセイを実証する。これらの実施例を使用して、アンドロゲン受容体に結合するリガンドまたはエストロゲン受容体(すなわち、ER-αおよびER-β)に結合するリガンドの検出によって例示されるアッセイの概念および原理が、限定されないがプロゲステロンを含むプロゲステロン受容体に結合するリガンド、限定されないがアルドステロンを含む鉱質コルチコイド受容体に結合するリガンド、および限定されないがコルチゾールを含むグルココルチコイド受容体に結合するリガンドを、限定されないが含む、目的の他の受容体リガンドの検出に等しく適用されるであろう、本明細書に記載され特許請求される活性アッセイプラットフォームを説明する。
【0244】
実施例1
アンドロゲンアッセイプロトタイプ1:アッセイアーキテクチャおよび結果
1.1 インビトロ転写プラットフォーム
インビトロ転写プラットフォームを最初に開発した出願人らは、組み換えアンドロゲン受容体(AR)、組み換え熱ショックタンパク質90(HSP90)、T7 RNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、および転写緩衝液と組み合わせた、Mango IIのRNAアプタマー配列の上流の3Xアンドロゲン応答要素(ARE)のタンデムアレイの上流のT7 RNAコンセンサスプロモーター配列をコードするDNA構築物を含む。T7プロモーターは、フルオロフォアであるThiazole Orange 1-ビオチン(TO1)に結合することによって検出されるであろう、高レベルのRNAアプタマー発現を促進するであろう。AREがリガンド活性化ARによって結合されると、T7が促進するアプタマー発現の阻害が生じるであろう。
アンドロゲン応答要素(ARE)
・これらの実験で試験したアンドロゲン応答要素は、3xAREのタンデムアレイであった。
アンドロゲン受容体(AR)
・Sigma-Aldrichから市販の組み換えARは試験済みである
T7 RNAポリメラーゼ
・これらの研究では、T7 RNAポリメラーゼの原料としてThermoFisherからのMegaScriptキット、および必要な緩衝液、およびヌクレオチド三リン酸を使用した。
【0245】
1.2 AREが媒介する転写/翻訳の説明
自然なアンドロゲンシグナル伝達は、アンドロゲン分子が細胞内に拡散し、細胞質内で不活性状態に保持され熱ショックタンパク質90(HSP90)に結合しているARに結合することから始まる。アンドロゲン分子(またはリガンド)が結合すると、ARは、HSP90を放出し、核局在化および二量体化部位を露出する、コンフォメーション変化を受ける。リガンド-AR複合体は、AR調節遺伝子の転写を開始する核への移行のために標的化され、核では、ARがDNAのARE部位に結合し、RNAポリメラーゼIIホロ酵素が集合する。RNAポリメラーゼIIによる遺伝子の転写は、mRNA転写を生じ、ひいては、これがリボソーム機構のテンプレートとして作用してタンパク質が作製される。
【0246】
AREは、T7プロモーター(および転写開始部位)の下流に位置するので、テストステロンが配位したARがAREに結合すると、T7が媒介する転写を減少させるこの自然の生物学を利用する記載の実験は、テストステロン(天然のアンドロゲン)活性化ARが、T7が媒介する転写を減少/阻害することを示している。
【0247】
図1は、AREが媒介する、T7 RNAポリメラーゼが媒介する転写の遮断の概略図を示している。
【0248】
天然のアンドロゲンであるテストステロンなどのリガンドの存在下で、ARはAREに結合し、T7ポリメラーゼによる転写を阻害する。この状態では、形成されるRNA Mango IIアプタマーは少ない。
【0249】
リガンドの非存在下では、ARは活性化されずにAREに結合せず、したがって、DNAは妨害するタンパク質を含まない。T7は、DNA構築物に沿って進んで、RNA Mango IIアプタマーを生成し、これは、その後TO1-B結合および蛍光によって検出される。
【0250】
図2および3に提示された結果を参照して、ARの転写が遮断されたテストステロン活性化について調査した。ARは、完全なT7が媒介する転写およびRNA Mango IIアプタマーの発現を示さなかった。これは、ARの存在下で低減し、ARが11.5ng/mlのテストステロンによって活性化されるとさらに低減する。
【0251】
次に、図4を参照して、HSP90が、ARのベースライン活性化を阻害することができるかどうかを調査した。ARは、テストステロンを介した領域活性化因子-1(AF-1)の活性化を通じた、または領域活性化因子-2(AF-2)の自動活性化を介したコンフォメーション変化によって活性化される。ARでは、AF-2は、非常に活性であり、AR活性の最大50%を占める場合がある。AF-2の自動活性化を抑制するために、HSP90を添加して、リガンドの非存在下ではAREに結合しないであろう不活性化状態にARを保持した。しかしながら、リガンドの存在下では、HSP90は、ARから競合的に解離するはずであり、配位したARは、AREに結合するはずである。
【0252】
実施例2:
アンドロゲンアッセイプロトタイプ2:アッセイアーキテクチャおよび結果
アンドロゲンアッセイプロトタイプ2の概念は、T7 RNAポリメラーゼなどの単一のタンパク質RNAポリメラーゼが、DNAテンプレート上のそのプロモーター配列に結合することである。DNAテンプレートは、プロモーターの下流のRNAアプタマーMango II配列をコードする。ホルモン応答要素(HRE)は、T7プロモーターとMango II配列との間に位置する。ステロイドホルモン受容体(SHR)を、T7インビトロ転写(IVT)反応ミックスに添加し、受容体特異的リガンドによって活性化させると、SHRは、DNAテンプレート上のHREに結合し、この結合位置でT7 RNAポリメラーゼがDNAをRNAに転写することを物理的に阻害し、したがってMango IIアプタマーは形成されない。Mango IIの形成は、Mango IIアプタマーに結合する反応ミックスにTO1-ビオチンなどの特定のフルオロフォアを添加することによって検出される。TO1は、Mango IIアプタマーに結合すると、510nmの波長で励起されると、535nmの波長で励起波長を放出する。蛍光は、標準的な蛍光光度計を使用して測定される。
【0253】
2.1 アンドロゲンアッセイプロトタイプ2の開発に使用したDNA配列
以下の実験では、SHRの例としてARまたはERαを使用し、HREの例としてAREまたはEREを使用する。
【0254】
T7が媒介するインビトロ転写を支える重要なステップは、DNAテンプレート内のそのプロモーター配列を認識するためのものである。次いで、T7転写が生じたことを測定するには、DNA配列は、レポーター酵素(タンパク質)またはレポーターRNA(例えばアダプマー)をコードし得る。以下の例では、DNA配列は、レポーターRNA(Mango II)をコードしていた。
【0255】
市販のDNA断片合成を使用して、(1)T7イニシエーター配列、(2)ARE、(3)F30足場を含むMango II RNAアプタマーをコードする一連のDNAテンプレートを生成した。これらのDNA断片をプラスミドにクローン化し、形質転換したE.coliを使用して増幅した。その後のプラスミド抽出、精製、線状化によって、プロトタイプアッセイ用の最終的なDNAテンプレートが提供された。転写因子がT7活性を遮断した他の例は、T7イニシエーター配列と転写因子部位との間が約15bpであることが、T7の進行を遮断するのに最適であることを示している。したがって、15bpのフィラー配列を、DNA断片に含めた。
【表2】
【0256】
2.2 テストステロン活性化ARは、T7が媒介するRNAアプタマー、Mango IIの発現を抑制することが可能である
SHRリガンドを検出するためのSHR-HRE-RNAアプタマー反応は、ホルモン応答要素に結合したSHRによるT7転写の遮断に依存する。以下の例では、SHRおよびHREを表すために、ARおよびAREを使用した。
【表3】
【0257】
T7 RNAポリメラーゼを添加して反応を組み立て、開始し、37℃で150分間インキュベートした。この間に、RNA Mango IIアプタマーが生成された。Mango IIの検出は、フルオロフォア、thiazole orange (TO1)の添加、および蛍光光度計を用いた出力の測定、励起510nm、発光535nmによるものであった。図5は、テストステロン活性化ARが、T7が生成したRNAアプタマーMango IIの量を用量依存的様式で低減することが可能であることを示している。テストステロンは、体内で最も豊富な内因性循環アンドロゲンを代表する。テストステロンは、末梢組織(例えば、生殖腺)でジヒドロテストステロン(DHT)に変換され得る。DHTはまた、T7が生成したMango IIにおける、ARが調節した低減を活性化することが見出された。
【0258】
2.3 ステロイドホルモン受容体の滴定
上のように、以下の実験では、ARをステロイドホルモン受容体の例として使用した。
【0259】
上の実験では、表3に示すように、初期AR濃度は、発明者の研究室で確立した以前の無細胞アッセイに基づいていた。T7が媒介するMango II生成の低減は、現在DNAテンプレートに結合し、活性なすべてのT7酵素分子を遮断するのに十分なARがあることに依存する。これは、AR対T7の比およびAR対DNAテンプレートの比の両方が重要であることを意味する。しかしながら、ARのレベルは、蛍光の変化を検出するために必要な十分なMango II生成を支援するT7および/またはDNAテンプレートの最適レベルの背景で考慮する必要がある。
【0260】
次の一連の実験では、Δ[Mango II]への影響を示すために、反応当たりのAR濃度を変化させた。
【表4】
【0261】
50ngのAR反応を「標準」反応として使用すると、ARの分子数は、2.737e11(454.55fmolまたは22.72nM)、対するDNA分子の数は、3.798e10(63.06fmolまたは3.15nM)であり、7.2:1のAR:DNAの過剰比が生じる。AR濃度を100ngに2倍にすると、比は2倍の14.4:1になる。AR濃度を25ngに半分にすると、比は半分の3.6:1になり、さらに14.2ngのARでは再び1.8:1になる。
【0262】
図6のデータは、7.2:1以上のAR:DNA比は、より高いΔMango IIを生じることを示している。より低い比でもΔMango IIが示されるが、効果の程度は低減される。顕著なことに、7.2から14.4に比を急上昇させると、ΔMango IIの効果の程度の改善を示さず、7.2:1のAR対DNAの過剰が、T7活性を遮断するのに十分であり、さらに過剰になると冗長性が生じることを示唆している。
【0263】
HSP90が過剰であると、特に低濃度のリガンドでSHRの活性化が遮断されるが、HSP90が不十分であると、SHRの自動活性化が可能になるので、ステロイドホルモンによるSHRの活性化を考慮すると、HSP90対SHRの比も調べる必要がある。再び、代表的なSHRとしてARを使用する次の組の実験では、HSP90対ARの比を変化させて、T7が生成するMango IIへのテストステロンによる影響を精査した。
【表5】
【0264】
図7は、HSP90:ARの比が2.44:1である50ngのARおよび100ngのHSP90の標準反応が最適であったことを示しているが、しかしながら、他の比でも同じレベルのΔMango IIを達成することができた。例えば、6.69e11分子(1.11pmolまたは55.5nM)に対応する100ngのHSP90、および5.47e11分子(909.09fmolまたは45.5nM)に対応する100ngのAR、または1.22:1の比はまた、T7が媒介するMango IIの生成の良好な抑制を示した。同様に、それぞれ1.37e11分子(227.27fmolまたは11.4nM)および6.69e11分子(1.11pmolまたは55.5nM)を表すAR(25ng)およびHSP90(100ng)、または4.88:1の比は、2.44:1の比と差がないΔMangoIIを示した。しかしながら、AR濃度が<100ngの場合の1.22:1の比と同様に、9.76:1の比はΔMangoIIの低減を示した。
【0265】
重要なことに、図6および7のデータは、生物学的反応を化学量論的に定義する独特な能力を強調している。
【0266】
AR:DNA比が≧7.2:1であると、ARは、AREへの結合、およびT7の進行の遮断に最も効果的である。HSP90:AR比が1.22:1~4.88:1であると、ARは、リガンドにる活性化、およびAREへの結合に最も効果的である。
【0267】
2.4 HREの操作
これまでのデータは、細胞に基づくARバイオアッセイで一般的に使用されている3X ARE配列を使用している(表2を参照されたい)。しかしながら、同定されたプライマリーAREは、配列AGAACAgccTGTTCTのものである。T7酵素がARによって物理的に遮断されるこのアッセイの機能を考慮すると、3X ARE配列の存在は必要ない場合がある。以下の試験では、単一であるが、プライマリーな配列のAREをT7 DNAテンプレートにクローン化した。図8は、活性化ARがT7 RNAポリメラーゼを遮断した3X ARE配列と同程度に、単一のAREが効果的であることを明らかに示している。
【0268】
2.5 DNAテンプレートの滴定
DNAテンプレートはアッセイの重要な構成要素であり、また存在するAR分子の数がT7酵素によるレポーター構築物の転写を立体的に妨げることができるように過剰ではなく、T7転写を支援する濃度である必要がある。
【0269】
次の一連の実験では、ARおよびT7を一定に保持してDNAテンプレートを滴定した。これによって、転写を支援し、AR遮断を維持するのに必要なDNA分子の数についての洞察が提供された。図9のデータは、7.2:1のAR:DNA比を表す、ARの濃度が50ng(2.737e11分子、454.55fmolまたは22.72nM)であり、DNA濃度が100ng(3.798e10、63.06fmolまたは3.15nM)であると、ΔMango IIの検出が良好であることを示している。DNA濃度を14.4:1、17.28:1、28.8:1の試験比に下げることによって、DNAに対してARの量を過剰に増加させても、ΔMango IIの改善には影響しなかった。したがって、7.2:1の過剰比は、最大の効果を達成する。T7が媒介する蛍光出力の劇的な減少があったので、DNAテンプレートを6.46eまたは3.398eに低減すると、ΔMango IIに影響を与えたことに留意されたい(データは示さず)。したがって、9.495e分子の二本鎖DNAは、反応を成功させるために必要な最小レベルであるが、過剰なAR:DNAを7.2:1超に維持する必要がある。より多くARを添加して7.2を超えると冗長性が生じるが、DNAを減少させて比を増加させると、T7が媒介する転写自体がリスクに晒される。
【0270】
図9からのデータは、生物学的に効果的であるが、合成的に達成されたSHR反応を引き続き定義している。個々の構成要素の化学量論的分析を通じて、AR:DNA比が≧7.2:1であると、ARは、AREへの結合、およびT7の進行の遮断に最も効果的であることが実験で確認された。しかしながら、この比を構成すると、DNAテンプレート濃度を最低9.495e分子の二本鎖DNAに固定する必要があり、そうでなければ、転写の基本レベルが損なわれる。
【0271】
2.5 T7ポリメラーゼの滴定
ステロイドホルモン受容体の生物学を模倣することができる完全に定義された化学量論的反応を可能にするために考慮する必要がある、アンドロゲンアッセイプロトタイプ2の最後の構成要素は、T7酵素自体である。これらの実施例では、RNAアプタマー、Mango IIであるレポーターを生成するために、T7 RNAポリメラーゼをこの反応で使用する。
【0272】
T7酵素の量は、最適なダイナミックレンジを可能にするであろうスペクトル内で蛍光の読み取りを維持するために重要である。T7は酵素であるので、重要な要素は濃度だけでなく、活性も重要である。次の一連の実験は、ΔMango IIに対するT7活性の変化の影響を示した。
【0273】
図10では、データは、T7単位を50U~10Uに滴定して、T7が生成したMangoII:TO1Bの蛍光レベルを示している。明らかな検出ベースラインを示す、200000近くのすべての測定値では、40~10Uの酵素範囲で測定された蛍光に明らかな差はなく、ベースラインでは出力の変化を測定するのに感受性が十分高くないことに留意されたい。これは、ΔMangoIIを測定するために、蛍光測定値が、200000を超える必要があることを示唆している。
【0274】
最小蛍光レベルの効果をさらに実証するために、T7(50U)またはT7(100U)を使用して、テストステロン誘導ARで遮断された反応、または対照としてエタノールを用いた反応で、Mango IIRNAアプタマーを生成した。図11のデータは、50Uを使用した場合、蛍光が約250000~300000であることを示し、テストステロン活性化はΔMango IIで約9%を示しているが、蛍光が、>600000の範囲である場合、同じ反応は約16%のΔMango IIを示している。したがって、データは、T7活性が、>300000のMangoII-TO1B蛍光を生成する範囲内であることが必要であることを強調している。正確な活性または単位は、組み換えT7 RNAポリメラーゼの特定の活性におけるバッチ間および/または供給業者間の差に依存するであろう。
【0275】
実施例3:
エストロゲンアッセイプロトタイプ3:アッセイアーキテクチャおよび結果
上の実施例では、AR/AREをSHR/HREの例として使用した。以下の一連の実験では、AR/AREに対して確立して定義した反応化学量論を使用して、他のSHR、この場合ERαへの試験の適用性を示す。以下に提示された結果は、エストラジオール活性化ERαが、T7が媒介するRNAアプタマー、Mango IIの発現を抑制することが可能であることを実証している。
【表6】
【0276】
テストステロンの検出試験に成功したことが証明された標準的なAR/ARE条件を使用したが、しかしながら、ARをERαに置き換え、単一のEREをコードするDNAテンプレートをARE DNAテンプレートに置き換えた(表6)。図12は、ARをHSP90(100ng)と組み合わせたERα(50ng)に置き換え、5μMのエストラジオール(E2)で活性化すると、MangoII:TO1の出力の低減がもたらされたことを示している。ΔMango IIは、約60%であった。比を考慮すると、68kDaでのERαは、AR(110kDa)よりも小さく、したがって、重量に対する添加した分子の数は、4.428e11(735.20fmolまたは36.8nM)であった。したがって、HSP90:ERαの比は6.69e11 :4.428e11または1.51:1であり、ERα:DNAの比は、4.428e11:3.798e10または11.66:1であった。これらの両方は、SHR/HRE試験のARバージョンでアンドロゲンの検出に成功する比であることが見出された範囲内であった。
【表7】
【0277】
エストロゲンの検出についてのERα:ERE反応の重要性は2倍である。第1に、必須の試験構成要素をAR/AREDNAテンプレートからER/ERE DNAテンプレートに切り替える際の簡単さを示している。第2に、リガンドがアンドロゲン受容体に結合し、HSP90から移し、AREへの結合が第2のステロイドホルモン受容体/ステロイド応答要素の組み合わせに翻訳可能であることによって、アンドロゲン生物学を模倣するAR/AREに対して確立された定義された化学量論的反応を示している。
【0278】
データは、試験が無細胞の様式で、かつすべての構成要素を定義することができるような方式、すなわち真のインサイチュ試験で、ステロイドホルモンの生物学を再現することが可能であることを示している。これは、細胞に基づくバイオアッセイまたは、ホロ酵素RNAポリメラーゼIIを提供する核抽出物に基づく無細胞バイオアッセイを使用するときのインビトロの状況とは異なる。細胞に基づくバイオアッセイの場合、SHR、HSP90、DNAテンプレート、およびRNAポリメラーゼIIのレベルは、細胞の発現パターンによって影響を受けるので、まったく定義することができない。核抽出物に基づく無細胞バイオアッセイは、SHR、HSP90、およびHREレベルを記載することによって、反応の化学量論を部分的に定義することができるが、しかしながら、RNAポリメラーゼレベルを定義することは不可能である。RNAポリメラーゼIIはホロ酵素であり、いくつかのサブユニットまたはタンパク質で構成されており、したがって、核抽出物の形態でのみ供給することができる。核抽出物は、他のどのタンパク質に存在するか定義されていない。アッセイのこの単一のポリペプチドRNAポリメラーゼ形態では、反応の化学量論を完全に定義することができ、データは、そのような反応を、ステロイドホルモン受容体の天然の生物学を模倣するように合成的に操作することができることを示している。
【0279】
実施例4
プロトタイプアッセイのためのリガンド-SHR/HRE化学量論的反応
実施例2および3に提示されたデータによって、リガンドが特定の受容体に結合し、それによって、受容体がHSP90から移動し、ステロイド応答要素に結合する、従来のステロイドホルモンゲノム応答である、ステロイドホルモン受容体生物学を模倣する、定義された化学量論が明らかになった。天然では、SHRは、標的遺伝子の発現を活性化または抑制するであろう。本明細書に記載のプロトタイプアッセイでは、配位したSHRの結合は、レポーター分子の発現を抑制する。
【表8】

【表9】
【0280】
実施例5
アンドロゲンアッセイプロトタイプ2はアンドロゲン分子を検出する
アンドロゲン分子は、元来ステロイドホルモンである。テストステロンおよびジヒドロテストステロンは、最も豊富な内因性アンドロゲンである。それらの構造に基づいて、合成アンドロゲンアナボリックステロイドホルモン(AAS)が設計され、市場に出回っている。AASは、アスリート、ヒト、動物などにおける、最も一般的に乱用されているパフォーマンス向上薬物である。合成的に誘導された別のクラスのアンドロゲン分子は、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターまたはSARMである。AASと同様に、SARMは、アスリートによって乱用されている。AASおよびSARMの両方は、構造が異なり、非常に多様な異なる側基および骨格を有する。この次の一連の実験では、AR/HSP90-AREプロトタイプアッセイが、異なるAASおよびSARMを検出することが可能であるかどうかを試験した。
【表10】
【0281】
図13は、アッセイが多様なAASおよびSARMを検出することが可能であったことを示している。
【0282】
実施例6
アンドロゲンアッセイプロトタイプ2は、生物学的マトリックス中のアンドロゲン分子を検出する
次に、血清または血漿などの生物学的マトリックス中に存在するときのテストステロンを検出する能力について、アンドロゲンアッセイプロトタイプ2を試験した。まず、T7 RNAポリメラーゼが血清の存在下で機能し続けること、すなわち血清自体がMango IIアプタマーの生成におけるT7の効力を抑制しなかったことを実証する必要があった。図14は、ウマ血清またはウシ胎児血清(FCS)の存在下で、T7 RNAポリメラーゼがMango IIを生成し続けたことを示している。
【0283】
血清が偶発的にT7活性を抑制したという証拠はなかった。次に、血清の存在下で、ARがリガンドの例としてテストステロンに応答し続けるかどうかを試験した。今回は水構成要素をテストステロン(またはビヒクルとしてエタノール)が添加された血清に置き換えたことを除いて、上記のように反応を確立した。図15は、血清が反応構成要素として存在する場合、反応が損なわれないことを示している。アッセイが、例えば臨床またはスポーツドーピング用途において、生物学的に関連する試料のアンドロゲンレベルを検出することが可能であることを示しているので、この結果は非常に重要である。
【0284】
試験の次の段階では、ウマの尿試料から取り出し、抽出した内因性アンドロゲンを検出する能力について、アンドロゲンアッセイプロトタイプ2を試験した。競走馬の尿試料をレース当日に収集し、通常のプロセスを使用してステロイドを取り出し、抽出した。抽出したステロイドをエタノールに再懸濁し、アッセイを施した。
【0285】
図16は、アンドロゲンアッセイプロトタイプ2が、子馬(雄ウマ)からの尿試料中で高レベルのアンドロゲンを検出することが可能であった一方で、去勢馬(去勢された雄ウマ)からは高レベルを検出することが可能ではなかったことを示している。去勢馬の尿中のテストステロンおよび添加したトレンボロン(AAS)を対照として使用した。
【0286】
図15および図16からのデータは、アッセイが、血清および尿を含む生物学的マトリックス中のアンドロゲン分子を検出することが可能であることを示している。
【0287】
本発明を例として説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変形および修正を行うことができることを理解されたい。さらに、特定の特徴について既知の同等物が存在する場合、そのような同等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。
【0288】
本明細書で参照または言及されるすべての特許、出版物、科学記事、ウェブサイト、ならびに他の文書および資料は、本発明が関係する当業者の技能のレベルを示し、そのような参照される各文書および資料は、参照によりその全体が個々に組み込まれるか、またはその全体が本明細書に記載されている場合と同程度の参照によって本明細書に組み込まれる。出願人らは、任意のそのような特許、出版物、科学記事、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報、および他の参照資料または文書からの任意のかつすべての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を留保する。
【0289】
用いられている用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用には、示され説明された特色またはそれらの一部分の任意の同等物を除外する意図はないが、特許請求されるように、本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意選択的な特色によって具体的に開示されているが、本明細書に開示の概念の修正および変形は、当業者によって用いることができ、そのような修正および変形は、本明細書に記載され、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内であると見なされることが理解されるであろう。
【0290】
発明は、本明細書において広く一般的に説明されてきた。一般的な開示に含まれるより狭義の種および亜属のグループの各々もまた、発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に列挙されているかどうかに関係なく、属から任意の主題を削除する但し書き、または何かを含まない制限(negative limitation)による、発明の一般的な説明を含む。
【0291】
他の例は、以下の特許請求の範囲内にある。加えて、発明の特色または態様が、Markush群の観点で記載されている場合、当業者は、発明が、それによって、Markush群の任意の個々のメンバーまたはサブグループのメンバーの観点でも説明されていることを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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