(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】行動判定システム、行動判定方法、及び行動判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20241224BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20241224BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
G08B25/00 510F
G08B25/08 A
G08B25/10 A
(21)【出願番号】P 2022116496
(22)【出願日】2022-07-21
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】杉本 英司
(72)【発明者】
【氏名】小松 寛佳
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-040551(JP,A)
【文献】特開2011-257374(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044208(WO,A1)
【文献】特開2013-131197(JP,A)
【文献】特開2016-042244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0007276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/02,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサが検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定する歩行判定部と、
前記加速度センサが検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると前記歩行判定部が判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出する閾値算出部と、
前記加速度センサが検出した加速度と、前記閾値算出部が算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定する行動判定部と、
前記行動判定部による判定結果を出力する出力部と、
前記利用者が異常行動を行っていると前記行動判定部が判定した場合に、前記利用者に対して警告を通知する警告部と、を備え
、
前記歩行判定部は、前記利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、前記第1の閾値より大きい場合に、前記利用者が歩行していると判定し、
前記行動判定部は、前記利用者の加速度の大きさを示す値が、前記閾値算出部が算出した前記第2の閾値より大きい場合に、前記利用者が異常行動を行っていると判定し、
前記閾値算出部が前記第2の閾値として値の異なる複数の閾値を算出し、
前記行動判定部が、前記閾値算出部が算出した複数の閾値に基づいて、前記加速度センサが検出した加速度の大きさを評価し、
前記警告部が、前記行動判定部の評価結果に基づいて、前記利用者に対する警告態様を変更する、
行動判定システム。
【請求項2】
前記利用者が異常行動を行っていると前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果を記憶する記憶部を更に備える、
請求項1に記載の行動判定システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記利用者が異常行動を行っていると前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果が出力された地点の位置情報を更に記憶する、
請求項2に記載の行動判定システム。
【請求項4】
前記利用者が正常に歩行していないと前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果を外部サーバ装置に対して送信する送信部を更に備える、
請求項1に記載の行動判定システム。
【請求項5】
前記送信部は、前記利用者が正常に歩行していないと前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果が出力された地点の位置情報を更に送信する、
請求項4に記載の行動判定システム。
【請求項6】
利用者の加速度を検出し、
検出した
前記加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定し、
検出した
前記加速度のうち、前記利用者が歩行していると判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出し、
検出した
前記加速度と、算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定し、
判定結果を出力し、
前記利用者が異常行動を行っていると判定した場合に、前記利用者に対して警告を通知し、
前記利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、前記第1の閾値より大きい場合に、前記利用者が歩行していると判定し、前記利用者の加速度の大きさを示す値が、算出した前記第2の閾値より大きい場合に、前記利用者が異常行動を行っていると判定し、
前記第2の閾値として値の異なる複数の閾値を算出し、
算出した前記複数の閾値に基づいて、検出した前記加速度の大きさを評価し、
評価結果に基づいて、前記利用者に対する警告態様を変更する、
行動判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の行動判定方法をコンピュータに実行させる、
行動判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動判定システム、行動判定方法、及び行動判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
事故防止等の観点から、近年、歩行者の路上での急な駆け出し、方向転換、又は急停止等の異常行動を検出するための技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、体動センサから得られた加速度信号から算出された加速度の最大値、人の歩幅及び人の歩行周期の少なくとも1つを含む歩行状態を用いて、所定の歩幅で人が歩行しているか否かを判断する検知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検知システムは、歩幅や歩行周期等に基づいて歩行者の異常行動を検出する場合、歩行者が異常行動を開始してから実際に異常行動を検出するまでに、少なくとも歩行者の一歩分の歩行に相当する時間を要する。
【0006】
一方で、特許文献1に記載の検知システムが歩行者の加速度の最大値に基づいて歩行者の異常行動を検出する場合、利用者毎に正常な歩行時の加速度の大きさが異なるため、適切な閾値を決定することが難しかった。これに起因して、特許文献1に記載の検知システムは、歩行者によっては異常行動を検出できない場合があった。
【0007】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであって、歩行者の異常行動を適切に検出可能な行動判定システム、行動判定方法、及び行動判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る行動判定システムは、
利用者の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサが検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定する歩行判定部と、
前記加速度センサが検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると前記歩行判定部が判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出する閾値算出部と、
前記加速度センサが検出した加速度と、前記閾値算出部が算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定する行動判定部と、
前記行動判定部による判定結果を出力する出力部と、を備える、
行動判定システムである。
【0009】
本開示の一態様に係る行動判定方法は、
利用者の加速度を検出し、
検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定し、
検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出し、
検出した加速度と、算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定し、
判定結果を出力する、
行動判定方法である。
【0010】
本開示の一態様に係る行動判定プログラムは、
利用者の加速度を検出し、
検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定し、
検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出し、
検出した加速度と、算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定し、
判定結果を出力する、処理をコンピュータに実行させる、
行動判定プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によって、歩行者の異常行動を適切に検出可能な行動判定システム、行動判定方法、及び行動判定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る行動判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る行動判定システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】第2の実施形態に係る行動判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る演算部の構成を示すブロック図である。
【
図5】第2の実施形態に係る行動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係る行動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
<行動判定システムの構成>
以下、図面を参照しながら、本開示に係る第1の実施形態について詳細に説明する。
まず始めに、本実施形態に係る行動判定システムの構成について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る行動判定システムの構成を説明するためのブロック図である。
【0014】
本実施形態に係る行動判定システム1001は、利用者の異常行動を検出するためのシステムである。本開示に係る行動判定システム1001は、加速度センサ1と、歩行判定部22と、閾値算出部24と、行動判定部25と、出力部26と、を備える。
【0015】
加速度センサ1は、歩行者の加速度を検出する。加速度センサ1は、検出した加速度を歩行判定部22、閾値算出部24、及び行動判定部25に対して供給する。
【0016】
歩行判定部22は、加速度センサが検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、利用者が歩行しているか否かを判定する。歩行判定部22は、判定結果を閾値算出部24に対しして出力する。
【0017】
なお、ここでいう第1の閾値とは、例えば、加速度の大きさや、変動周期等の、検出された加速度を特徴づける量に対して定められる閾値であり、実験的又は経験的に定められた閾値である。第1の閾値は既定値であるため、利用者毎の個人差が小さい量に対して定められることが好ましく、例えば、加速度の変動周期に対して定められてもよい。ただし、ここでいう加速度の変動周期とは、反復運動の一種である歩行動作に起因する加速度の変動の周期を指す。
【0018】
閾値算出部24は、加速度センサ1から利用者の加速度を取得し、歩行判定部22から利用者が歩行しているか否かに関する判定結果を取得する。そして、閾値算出部24は、加速度センサが検出した加速度のうち、利用者が歩行していると歩行判定部が判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出する。閾値算出部24は、算出した第2の閾値を、行動判定部25に対して供給する。
【0019】
なお、ここでいう第2の閾値とは、例えば、加速度の大きさや、変動周期等の、検出された加速度を特徴づける量に対して定められる閾値である。ただし、第2の閾値は、第1の閾値の場合とは異なり、利用者毎に算出される閾値であるため、利用者毎の個人差が小さい量に対して定められる必要はない。また、第2の閾値は、利用者の異常行動の検出に用いられるため、利用者の異常行動を即時的に反映する量に対して設定されることが好ましい。例えば、第2の閾値は、加速度の大きさに対して設定されてもよい。
【0020】
行動判定部25は、加速度センサ1から利用者の加速度を取得し、閾値算出部24から第2の閾値を取得する。行動判定部25は、加速度センサが検出した加速度の大きさと、閾値算出部が算出した第2の閾値とに基づいて、利用者が異常行動を行っているか否かを判定する。行動判定部25は、判定結果を出力部26に対して供給する。
【0021】
ただし、ここでいう異常行動とは、例えば、急な駆け出し、方向転換、又は急停止等の加速度の変化を伴う行動である。異常行動は、事故の原因となりうる行動や、事故を回避するための行動を含むため、異常行動を検出して適切な対応を行うことで、事故の発生を抑制できる。
【0022】
出力部26は、行動判定部25から、利用者が異常行動を行っているか否かに関する判定結果を取得する。そして、出力部26は行動判定部25による判定結果を出力する。
出力部26は、例えば、判定結果を利用者に対して警告を行う装置に対して出力してもよい。また、出力部26は、例えば、判定結果を、複数の利用者の異常行動を分析するための外部サーバに対して出力してもよい。
【0023】
<行動判定システムの動作>
続いて、行動判定システムの動作、即ち、第1の実施形態に係る行動判定方法について詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る行動判定システムの動作を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明においては、適宜
図1を参照する。
【0024】
まず始めに、加速度センサ1が利用者の加速度を検出する(ステップS101)。
次に、歩行判定部22が、加速度センサ1が検出した加速度と、第1の閾値とに基づいて、利用者が歩行しているか否かを判定する(ステップS102)。
次に、閾値算出部24が、利用者が歩行していると判定した期間において検出した加速度に基づいて、第2の閾値を算出する(ステップS103)。
【0025】
次に、行動判定部25が、検出した加速度の大きさと、第2の閾値とに基づいて、利用者が異常行動を行っているか否かを判定する(ステップS104)。
最後に、出力部26が、利用者が異常行動を行っているか否かに関する判定結果を出力し(ステップS105)、行動判定システム1001は、一連の動作を終了する。
【0026】
なお、行動判定システム1001は、ステップS104において、利用者が異常行動を行っていると判定した場合に、ステップS105を実行するようにしてもよい。そして、行動判定システム1001は、ステップS104において、利用者が異常行動を行っていないと判定した場合には、ステップS105を実行せずに一連の動作を終了してもよい。
【0027】
ここで、行動判定システム1001は、ステップS101~ステップS105を並行して連続的に実行してもよい。言い換えると、行動判定システム1001は、加速度センサが検出した加速度に基づいて継続的に第2の閾値を更新し、利用者が異常行動を行っているか否かを判定してもよい。
また、行動判定システム1001は、ステップS101、ステップS104、及びステップS105を並行して連続的に実行し、ステップS102及びステップS103は所定の期間毎に実行するようにしてもよい。言い換えると、行動判定システム1001は、所定の期間毎に第2の閾値を更新するようにしてもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る行動判定システム1001は、歩行中の利用者の加速度を検出し、当該加速度に基づいて閾値を算出する。
このような構成によると、行動判定システム1001は、利用者毎に適切な閾値を設定することができ、その結果として、歩行者の異常行動を適切に検出できる。
【0029】
(第2の実施形態)
<行動判定装置の構成>
以下、図面を参照しながら、本開示に係る第2の実施形態について詳細に説明する。
まず始めに、本実施形態に係る行動判定システムの構成について詳細に説明する。本実施形態に係る行動判定システムは、行動判定装置として構成されている。
図3は、第2の実施形態に係る行動判定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【0030】
本開示に係る行動判定装置1002は、歩行中に利用者によって携帯され、歩行中の利用者の加速度を検出する。そして、行動判定装置1002は、歩行者が、急な駆け出し、方向転換、又は急停止等の異常行動を行っているか否かを、検出した加速度に基づいて判定する。
本実施形態に係る行動判定装置1002は、加速度センサ1、演算部2、警告部3、位置情報取得部4、記憶部5、及び送信部6を備える。
【0031】
加速度センサ1は、3軸加速度センサであり、自身に掛かる加速度を検出する。加速度センサ1は、検出した加速度を演算部2に対して供給する。
加速度センサ1は、例えば、ピエゾ抵抗式加速度センサであってもよいが、歩行中の利用者の加速度を適切に測定できるものであれば、どのような方式を用いた加速度センサであってもよい。
【0032】
行動判定装置1002は利用者が携帯して使用するため、加速度センサ1が検出する加速度は、利用者の歩行に由来する加速度成分と、地球引力に由来する加速度成分を含んだものとなる。以降の説明においては、加速度センサ1が検出した加速度を検出加速度と記載し、利用者の歩行に由来する加速度成分を体動加速度成分と記載し、地球引力に由来する加速度成分を重力加速度成分と記載する。
【0033】
検出加速度は、向きと大きさを有する3次元のベクトル量である。そのため、加速度センサ1は、互いに直交する3方向の加速度の大きさを検出し、これら3つの値を、それぞれx軸成分、y軸成分、及びz軸成分とする3次元空間上のベクトルとして検出加速度を検出してもよい。
【0034】
また、加速度センサ1は、検出加速度を所定のサンプリング周波数で検出する。そして、当該検出加速度を演算部2に対して継続的に供給する。ただし、サンプリング周波数とは、1秒間あたりに加速度センサ1が加速度を検出する回数を指す。
【0035】
なお、歩行中の利用者の加速度は、利用者が一歩分歩行するのに要する時間を1周期として、概ね周期的に変動する。そのため、加速度センサ1のサンプリング周波数は、利用者の1秒あたりの歩数と比して、十分に大きい値であることが好ましい。
【0036】
演算部2は、加速度センサ1から、検出加速度を取得する。そして、当該加速度に基づいて、利用者が異常行動をとっているか否かを判定し、当該判定結果を出力する。
演算部2は、記憶部5からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、後述する種々の処理を実行する。演算部2は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。演算部2は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0037】
図4は、演算部2の構成を説明するためのブロック図である。演算部2は、加速度処理部21、歩行判定部22、遮断部23、閾値算出部24、行動判定部25、及び出力部26を備える。
【0038】
加速度処理部21は、加速度センサ1から検出加速度を取得する。加速度処理部21は、取得した検出加速度を処理し、利用者の加速度の大きさを示す値を算出する。特に、本実施形態においては、利用者の加速度の大きさを示す値として、体動加速度成分の大きさを示す値を算出する。
より詳細には、加速度処理部21は、検出加速度に対して、地球引力除去処理、非負化計算処理、及び平滑化処理を行い、体動加速度成分の大きさを示す値を算出する。
【0039】
地球引力除去処理は、加速度センサ1が検出した加速度から、重力加速度成分を除去する処理である。加速度処理部21は、まず始めに、加速度センサ1が検出加速度に含まれる、重力加速度成分を抽出する。例えば、加速度処理部21は、検出加速度をローパスフィルタで処理することによって、重力加速度成分を抽出してもよい。
【0040】
前述したように、検出加速度には、体動加速度成分と、重力加速度成分とが含まれる。ここで、体動加速度成分が、利用者の歩行動作に応じて周期的に変動するのに対して、重力加速度成分は一定である。そのため、加速度センサが検出加速度をローパスフィルタで処理すると、周期的に変動する体動加速度成分が除かれ、重力加速度成分を抽出することができる。
【0041】
なお、加速度処理部21は、所定のサンプル数の検出加速度の平均値を算出し、算出した平均値をローパスフィルタで処理することで、重力加速度成分を抽出してもよい。
また、加速度処理部21は、所定のサンプル数の検出加速度をそれぞれローパスフィルタで処理し、それらの平均値を算出することで、重力加速度成分を抽出してもよい。
これらのような構成によると、検出加速度から体動加速度成分がより除かれる。その結果として、重力加速度成分の抽出精度がより向上する。
【0042】
次に、加速度処理部21は、検出加速度と、重力加速度成分とに基づいて、体動加速度成分を算出する。加速度処理部21は、例えば、検出加速度と、重力加速度成分との差分をとり、体動加速度成分を算出してもよい。
【0043】
また、加速度処理部21は、検出加速度と、単位ベクトル化した重力加速度成分の内積をとり、当該内積の値を体動加速度成分の大きさとして算出してもよい。
このようにして算出された体動加速度成分の大きさは、厳密には、利用者の歩行に由来する加速度成分のうちの、地球引力と平行な方向の加速度成分の大きさに相当する。利用者が異常行動をとった場合、利用者の歩行に由来する加速度成分のうちの、地球引力と平行な方向の加速度成分の大きさも、歩行時とは異なる値をとる。そのため、このようにして算出した体動加速度成分の大きさも、利用者が異常行動を行っているか否かを判定するための判定値として用いることができる。
このようにして算出された体動加速度成分を用いると、例えば、行動判定装置1002が利用者の体に衝突した場合に発生する加速度のノイズ成分を低減できる。
【0044】
以上説明したような方法によって地球引力除去処理を実行した場合、利用者に携帯されている行動判定装置1002の向きによらず、加速度処理部21は、体動加速度成分を算出できる。つまり、上記のような方法によって地球引力除去処理を実行することで、利用者は行動判定装置1002の向きに注意を向ける必要がなくなる。
【0045】
次に、加速度処理部21は、非負化計算処理を実行する。非負化計算処理は、ベクトル量として表されている体動加速度成分の大きさを示す値を算出する処理である。
加速度処理部21は、体動加速度成分の大きさを示す値として、体動加速度成分の大きさの値を2乗した値を用いてもよい。この場合、体動加速度成分の大きさを示す値は、体動加速度成分のx軸成分、y軸成分、及びz軸成分の値をそれぞれ2乗した値の和をとることで算出できる。
また、加速度処理部21は、体動加速度成分の大きさを示す値として、体動加速度成分の大きさの値を用いてもよい。この場合、体動加速度成分の大きさを示す値は、体動加速度成分のx軸成分、y軸成分、及びz軸成分の値をそれぞれ2乗した値の和の平方根をとることで算出できる。
【0046】
なお、加速度処理部21は、地球引力除去処理によって算出された体動加速度成分をハイパスフィルタで処理してから、非負化計算処理を実行してもよい。この場合、加速度処理部21は、体動加速度成分の変動量の大きさを示す値を算出できる。
利用者が異常行動を行った場合、体動加速度成分の変動量も大きくなるため、体動加速度成分の変動量の大きさを示す値を閾値として用いても、利用者の異常行動を検出できる。
【0047】
最後に、加速度処理部21は、平滑化処理を実行する。平滑化処理において、加速度処理部21は、算出した体動加速度成分の大きさを示す値をローパスフィルタによって処理する。平滑化処理を実行することによって、加速度処理部21は、算出した体動加速度成分の大きさを示す値に含まれるノイズ成分を低減できる。
【0048】
加速度処理部21は、算出した体動加速度成分の大きさを示す値を、歩行判定部22及び行動判定部25に対して供給する。また、加速度処理部21は、処理した加速度の値を、遮断部23を介して閾値算出部24に対して出力する。
なお、以降の説明においては、算出した体動加速度成分の大きさを示す値は、単に、利用者の加速度の大きさを示す値と記載する。
【0049】
歩行判定部22は、加速度処理部21から利用者の加速度の大きさを示す値を取得する。そして、利用者の加速度の大きさを示す値と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、利用者が歩行しているか否かを判定する。歩行判定部22は、判定結果を遮断部23に対して出力する。
【0050】
ここで、第1の閾値は、例えば、加速度の大きさを示す値であってもよい。この場合、歩行判定部22は、利用者の加速度の大きさを示す値が、第1の閾値よりも小さい場合に、利用者が歩行していると判定してもよい。
また、第1の閾値は、例えば、時間を示す値であってもよい。この場合、歩行判定部22は、利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、第1の閾値より大きい場合に、利用者が歩行していると判定してもよい。
ただし、利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期は、利用者の加速度の大きさを示す値と比して個人差が小さい。そのため、第1の閾値として時間を示す値を用い、利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期を判定値として用いた場合の方が、個人の身体能力の差による影響をより抑制しつつ、利用者が歩行しているか否かを判定できる。
【0051】
遮断部23は、歩行判定部22から利用者が歩行しているか否かに関する判定結果を取得する。また、遮断部23は、加速度処理部21から利用者の加速度の大きさを示す値を取得し、閾値算出部24に対して供給する。遮断部23は、歩行判定部22から取得した判定結果に基づいて、閾値算出部24に対して利用者の加速度の大きさを示す値を供給するか否かを決定する。
【0052】
より詳細には、遮断部23は、利用者が歩行していると判定された期間において検出された検出加速度から算出された、利用者の加速度の大きさを示す値を、閾値算出部24に対して供給する。一方で、遮断部23は、利用者が歩行していないと判定された期間において検出された検出加速度から算出された、利用者の加速度の大きさを示す値は、閾値算出部24に対して供給せずに遮断する。
つまり、遮断部23は、利用者が歩行していると判定された期間における利用者の加速度の大きさを示す値のみが閾値算出部24に対して供給されるようにしている。
【0053】
閾値算出部24は、利用者が歩行していると判定された期間における利用者の加速度の大きさを示す値を、遮断部23から取得する。そして、取得した利用者の加速度の大きさを示す値に基づいて、第2の閾値を算出する。閾値算出部24は、算出した第2の閾値を行動判定部25に対して出力する。
【0054】
なお、前述したように、利用者の加速度の大きさを示す値は、加速度センサ1が検出した加速度に基づいて算出されたものである。そのため、閾値算出部24は、加速度センサ1が検出した加速度のうち、利用者が歩行していると歩行判定部22が判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出している、と言える。
【0055】
例えば、閾値算出部24は、利用者の加速度の大きさを示す値を、遮断部23から所定の数取得したタイミングにおいて、第2の閾値を算出するようにしてもよい。この場合、閾値算出部24は、利用者の加速度の大きさを示す値の平均値と標準偏差を算出してもよい。そして、閾値算出部24は、算出した標準偏差に対して所定の係数を掛け、算出した平均値に対して加算した値を、第2の閾値として算出してもよい。
このような構成によると、第2の閾値は、歩行中の利用者の加速度に基づいて算出された値となるため、利用者個人の身体能力に対して適切に調整された値となる。そのため、このようにして算出された第2の閾値を、利用者の異常行動の検出に用いた場合、閾値として既定値を用いる場合と比較して、より適切に利用者の異常行動を検出できる。
【0056】
また、閾値算出部24は、所定の数の利用者の加速度の大きさを示す値のうち、値の大きいものを所定の割合で抽出してもよい。この場合、閾値算出部24は、抽出した値の平均値と標準偏差を算出する。そして、閾値算出部24は、算出した標準偏差に対して所定の係数を掛け、算出した平均値に対して加算した値を、第2の閾値として算出してもよい。
異常行動判定を実行する場合、第2の閾値は、通常の歩行における加速度の大きさを示す値の上限値として位置づけられる。そのため、上記のようにして、第2の閾値を算出した場合、第2の閾値をより適切に算出できる。
【0057】
閾値算出部24は、第2の閾値として値の異なる複数の閾値を算出してもよい。そして、後述する行動判定部25が当該複数の閾値に基づいて利用者の加速度の大きさを評価し、後述する警告部3が、当該評価結果に基づいて、利用者に対する警告態様を変更するようにしてもよい。
このような構成によると、行動判定装置1002は、利用者の異常行動を検出した場合に、当該異常行動の危険度を適切に評価し、異常行動の危険度に合わせた適切な内容の警告を利用者に対して行うことができる。
【0058】
閾値算出部24は、継続的に第2の閾値を算出してもよいし、所定の期間毎に第2の閾値を算出してもよい。つまり、閾値算出部24は、継続的に第2の閾値を更新してもよいし、所定の期間毎に第2の閾値を更新してもよい。また、閾値算出部24は、利用者から第2の閾値を更新するように指示を受けた場合に、第2の閾値を更新するようにしてもよい。
【0059】
行動判定部25は、加速度処理部21から利用者の加速度の大きさを示す値を取得し、閾値算出部24から第2の閾値を取得する。そして、行動判定部25は、利用者の加速度の大きさを示す値と、第2の閾値とに基づいて、利用者が異常行動を行っているか否かを判定する。行動判定部25は、当該判定結果を出力部26に対して出力する。
なお、前述したように、利用者の加速度の大きさを示す値は、加速度センサ1が検出した加速度に基づいて算出された値である。そのため、行動判定部25は、加速度センサ1が検出した加速度と、閾値算出部24が算出した第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定する、と言える。
【0060】
より詳細には、行動判定部25は、利用者の加速度の大きさを示す値が、閾値算出部24が算出した第2の閾値より大きい場合に、利用者が異常行動を行っていると判定する。
このように、行動判定部25は、利用者の加速度の大きさを示す値を判定値として用いた場合、利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期を判定値として用いた場合と比較して、利用者が異常行動を行ってから、異常行動を検出するまでにかかる時間を短縮できる。
【0061】
行動判定部25は、閾値算出部24から第2の閾値として複数の閾値を取得した場合、当該複数の閾値に基づいて、加速度センサ1が検出した加速度の大きさを評価してもよい。言い換えると、当該複数の閾値に基づいて、利用者の加速度の大きさを示す値を評価してもよい。
【0062】
行動判定部25は、取得した複数の閾値に基づいて、利用者の加速度の大きさを示す値を段階的に、あるいはレベル分けして評価してもよい。例えば、行動判定部25は、利用者の加速度の大きさを示す値が、n番目に小さい閾値以上であり、n+1番目に小さい閾値より小さい場合に、利用者の加速度の大きさを示す値の危険度が、レベルnあるいは第n段階である、というように評価してもよい。ただし、nは整数である。
【0063】
出力部26は、行動判定部25による判定結果を出力する。より詳細には、行動判定部25から、利用者が異常行動を行っているか否かに関する判定結果を取得し、当該判定結果を、警告部3、記憶部5、及び送信部6の一部又は全てに対して出力する。なお、出力部26は、利用者が異常行動を行っていると行動判定部25が判定した場合にのみ、警告部3、記憶部5、及び送信部6の一部又は全てに対して、利用者が異常行動を行った旨を通知するようにしてもよい。
【0064】
図3の説明に戻る。
警告部3は、演算部2から利用者が異常行動を行っているか否かに関する判定結果を取得する。そして、警告部3は、利用者が異常行動を行っていると行動判定部25が判定した場合に、利用者に対して警告を通知する。
【0065】
警告部3は、例えば、音声スピーカや、点滅灯、あるいはこれらの組み合わせとして構成されてもよい。警告部3が音声スピーカを含み、利用者が異常行動を行っていると行動判定部25が判定した場合、警告部3は、利用者に対してサイレン等の警告音を再生してもよい。また、この場合、警告部3は、利用者に対して警告用の音声メッセージを再生してもよい。なお、警告用の音声メッセージを記録したデータは、例えば、記憶部5に格納されてもよい。
【0066】
閾値算出部24が第2の閾値として値の異なる複数の閾値を算出し、行動判定部25が、当該複数の閾値に基づいて、加速度センサ1が検出した加速度の大きさを評価した場合、警告部3は、行動判定部25の評価結果に基づいて、利用者に対する警告態様を変更してもよい。
【0067】
例えば、警告部3は、行動判定部25の評価結果に応じて、利用者に対して通知する警告用の音声メッセージを変更してもよい。例えば、利用者の加速度の大きさが小さい場合、即ち異常行動の危険度が低い場合には、警告部3は、利用者に対して「注意して歩行してください」といったメッセージを通知し、注意を促す程度の警告を行うようにしてもよい。また、利用者の加速度の大きさが大きい場合、即ち異常行動の危険度が高い場合には、警告部3は、利用者に対して「止まってください」といったメッセージを通知し、停止を促す警告を行うようにしてもよい。
【0068】
位置情報取得部4は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の人工衛星を利用して、行動判定装置1002の位置情報を取得する。位置情報取得部4は、取得した位置情報を記憶部5及び送信部6に対して出力する。
【0069】
記憶部5は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を用いて実現される記憶装置である。記憶部5は、行動判定装置1002の動作を制御するためのプログラムを格納する。演算部2は、これらのプログラムを記憶部5から読み出して実行することで、前述した種々の処理を実行する。
【0070】
なお、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(digital versatile disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0071】
また、記憶部5は、利用者が異常行動を行っていると行動判定部25が判定した場合、当該判定結果を演算部2から取得し、記憶する。
さらに、利用者が異常行動を行ったと行動判定部25が判定した場合、記憶部5は、当該判定が出された地点の位置情報を、位置情報取得部4から取得する。そして、記憶部5は、当該判定結果と、当該位置情報とを紐づけて記憶する。また、記憶された判定結果と、位置情報とは、記憶部5から適宜利用者が読み出せるような構成にしておくとよい。
このような構成によると、利用者が異常行動を行った地点を把握できる。その結果として、利用者が異常行動を取りやすい危険な地点を把握しやすくなり、事故の発生を抑制できる。
【0072】
送信部6は、利用者が正常に歩行していないと行動判定部25が判定した場合、当該判定結果を演算部2から取得し、外部サーバ装置に対して送信する。
さらに、利用者が異常行動を行ったと行動判定部25が判定した場合、送信部6は、当該判定が出された地点の位置情報を、位置情報取得部4から取得する。そして、送信部6は、当該判定結果と、当該位置情報とを紐づけて外部サーバ装置に対して送信する。
このような構成によると、利用者が異常行動を行った地点を他者と共有できる。さらに、複数の利用者から異常行動を行った地点の位置情報を集約することで、人が異常行動を取りやすい危険な地点を把握しやすくなり、危険な地点の道路状況を改善する等の事故の予防対策を実施しやすくなる。
【0073】
<行動判定システムの動作>
続いて、行動判定システムの動作、即ち、第2の実施形態に係る行動判定方法について詳細に説明する。
図5及び
図6は、第2の実施形態に係る行動判定装置1002の動作を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明においては、適宜
図3及び
図4を参照する。
【0074】
まず始めに、
図5について詳細に説明する。
図5は、行動判定装置1002が、第2の閾値を算出、又は更新する動作を示すフローチャートである。第2の閾値を算出、又は更新する動作においては、まず始めに加速度センサ1が加速度を検出する(ステップS201)。
【0075】
次に、加速度処理部21が、利用者の加速度の大きさを示す値を算出する(ステップS202)。より詳細には、ステップS201において検出された加速度に対して、地球引力除去処理、非負化計算処理、及び平滑化処理を実行し、利用者の加速度の大きさを示す値を算出する。
【0076】
次に、歩行判定部22が、利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、第1の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS203)。
利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、第1の閾値よりも小さい場合(ステップS203 NO)、歩行判定部22は利用者が歩行していないと判定し、行動判定装置1002は、ステップS201を再度実行する。
利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、第1の閾値よりも大きい場合(ステップS203 YES)、歩行判定部22は利用者が歩行していると判定し、ステップS204を実行する。
【0077】
次に、加速度処理部21が、利用者の加速度の大きさを示す値を、遮断部23を介して閾値算出部24に対して供給する(ステップS204)。より詳細には、利用者が歩行していると判定した期間において検出された加速度の大きさを示す値を、加速度処理部21が閾値算出部24に対して供給する。
なお、行動判定装置1002は、ステップS201~ステップS204の動作を、ステップS205が実行されるまでに複数回実行してもよい。例えば、行動判定装置1002は、閾値算出部24に対して所定の数の加速度の大きさを示す値が供給されるまで、ステップS201~ステップS204の動作を繰り返し実行してもよい。最後に、閾値算出部24が第2の閾値を算出し(ステップS205)、行動判定装置1002は、一連の動作を終了する。
【0078】
なお、行動判定装置1002は、ステップS201~ステップS205の動作を継続的に実行してもよいし、所定の期間毎に実行してもよい。また、行動判定装置1002は、利用者から第2の閾値の更新を要請された場合に、ステップS201~ステップS205の動作を実行してもよい。
行動判定装置1002は、ステップS201~ステップS205の動作を、
図6のフローチャートに示す動作と並行して実行してもよい。
【0079】
次に、
図6について詳細に説明する。
図6は、行動判定装置1002が、利用者の異常行動を検出する動作を示すフローチャートである。第利用者の異常行動を検出する動作は、まず始めに加速度センサ1が加速度を検出する(ステップS301)。
【0080】
次に、加速度処理部21が、利用者の加速度の大きさを示す値を算出する(ステップS302)。より詳細には、ステップS301において検出された加速度に対して、地球引力除去処理、非負化計算処理、及び平滑化処理を実行し、利用者の加速度の大きさを示す値を算出する。
ただし、ステップS301及びステップS302の動作は、ステップS201及びステップS202の動作によって代替されてもよい。
【0081】
次に、行動判定部25が、利用者の加速度の大きさを示す値が第2の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS303)。
利用者の加速度の大きさを示す値が、第2の閾値よりも小さい場合(ステップS303 NO)、行動判定部25は利用者が異常行動を行っていないと判定し、行動判定装置1002は、ステップS301を再度実行する。即ち、行動判定装置1002は、利用者の加速度の大きさを示す値が、第2の閾値よりも大きくなるまで、ステップS301~S303を繰り返し実行する。
利用者の加速度の大きさを示す値が、第2の閾値よりも大きい場合(ステップS303 YES)、行動判定部25は利用者が異常行動を行っていると判定し、ステップS304以降の動作を実行する。
【0082】
次に、警告部3が利用者に対して警告する(ステップS304)。そして、位置情報取得部4が位置情報を取得し(ステップS305)、記憶部5が判定結果及び位置情報を記憶する(ステップS306)。最後に、送信部6が判定結果及び位置情報を外部サーバ装置に対して送信し(ステップS306)、行動判定装置1002は一連の動作を終了する。
なお、ステップS304~ステップ307は異なる順序で実行されてもよいし、並行して実行されてもよいが、ステップS306及びステップS307は、ステップS304より後に実行される。
行動判定装置1002は、ステップS301~ステップ307の動作を繰り返し実行する。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る行動判定装置1002は、利用者の加速度を検出し、第1の閾値を用いて利用者が歩行しているか否かを判定する。そして、利用者が歩行していると判定された期間において検出された加速度に基づいて第2の閾値を算出し、当該第2の閾値に基づいて利用者が移動行動を行っているか否かを判定する。
このような構成によると、行動判定装置1002は、利用者毎の個人差が大きい加速度の大きさに対しても、利用者毎に適切な閾値を設定することができる。その結果として、本実施形態に係る行動判定装置1002は、歩行者の異常行動を適切に検出することができる。
【0084】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【0085】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
利用者の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサが検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定する歩行判定部と、
前記加速度センサが検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると前記歩行判定部が判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出する閾値算出部と、
前記加速度センサが検出した加速度と、前記閾値算出部が算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定する行動判定部と、
前記行動判定部による判定結果を出力する出力部と、を備える、
行動判定システム。
(付記2)
前記歩行判定部は、前記利用者の加速度の大きさを示す値の変動周期が、前記第1の閾値より大きい場合に、前記利用者が歩行していると判定し、
前記行動判定部は、前記利用者の加速度の大きさを示す値が、前記閾値算出部が算出した前記第2の閾値より大きい場合に、前記利用者が異常行動を行っていると判定する、
付記1に記載の行動判定システム。
(付記3)
前記利用者が異常行動を行っていると前記行動判定部が判定した場合に、前記利用者に対して警告を通知する警告部を更に備える、
付記2に記載の行動判定システム。
(付記4)
前記閾値算出部が前記第2の閾値として値の異なる複数の閾値を算出し、
前記行動判定部が、前記閾値算出部が算出した複数の閾値に基づいて、前記加速度センサが検出した加速度の大きさを評価し、
前記警告部が、前記行動判定部の評価結果に基づいて、前記利用者に対する警告態様を変更する、
付記3に記載の行動判定システム。
(付記5)
前記利用者が異常行動を行っていると前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果を記憶する記憶部を更に備える、
付記2に記載の行動判定システム。
(付記6)
前記記憶部は、前記利用者が異常行動を行っていると前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果が出力された地点の位置情報を更に記憶する、
付記5に記載の行動判定システム。
(付記7)
前記利用者が正常に歩行していないと前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果を外部サーバ装置に対して送信する送信部を更に備える、
付記2に記載の行動判定システム。
(付記8)
前記送信部は、前記利用者が正常に歩行していないと前記行動判定部が判定した場合に、当該判定結果が出力された地点の位置情報を更に送信する、
付記7に記載の行動判定システム。
(付記9)
利用者の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサが検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定する歩行判定部と、
前記加速度センサが検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると前記歩行判定部が判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出する閾値算出部と、
前記加速度センサが検出した加速度と、前記閾値算出部が算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定する行動判定部と、
前記行動判定部による判定結果を出力する出力部と、を備える、
行動判定装置。
(付記10)
利用者の加速度を検出し、
検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定し、
検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出し、
検出した加速度と、算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定し、
判定結果を出力する、
行動判定方法。
(付記11)
利用者の加速度を検出し、
検出した加速度と、予め定められた第1の閾値とに基づいて、前記利用者が歩行しているか否かを判定し、
検出した加速度のうち、前記利用者が歩行していると判定した期間において検出された加速度に基づいて、第2の閾値を算出し、
検出した加速度と、算出した前記第2の閾値とに基づいて、前記利用者が異常行動を行っているか否かを判定し、
判定結果を出力する、処理をコンピュータに実行させる、
行動判定プログラム。
【符号の説明】
【0086】
1 加速度センサ
2 演算部
3 警告部
4 位置情報取得部
5 記憶部
6 送信部
21 加速度処理部
22 歩行判定部
23 遮断部
24 閾値算出部
25 行動判定部
26 出力部
1001 行動判定システム
1002 行動判定装置