(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ノズル装置
(51)【国際特許分類】
B65B 39/00 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B65B39/00 B
(21)【出願番号】P 2023059976
(22)【出願日】2023-04-03
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】392025216
【氏名又は名称】秋元産機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 克典
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-310222(JP,A)
【文献】中国実用新案第205076070(CN,U)
【文献】特開2017-109744(JP,A)
【文献】特開2009-280287(JP,A)
【文献】特開2018-131251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B37/00-39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填物を供給する筒状のシリンダと、
少なくとも一端側が前記シリンダに挿入され、他端側に開口部を有する筒状のアウタノズルと、
前記アウタノズルの内部
に収容されるインナノズルと、
前記インナノズルの先端に設けられて、前記開口部を閉塞するノズルヘッドと、
前記シリンダ及び前記ノズルヘッドに対して前記アウタノズルを移動させる移動機構と、を備え、
前記開口部には、先端に向かうほど半径外方向に拡径する内側テーパ面が形成されるとともに、
前記ノズルヘッドの外周面には、先端に向かうほど半径外方向に拡径する外側テーパ面が形成されて、
前記インナノズルは、外側壁に凹部を凹設する整流部を有するとともに、前記凹部は、前記整流部の軸方向に沿って先端に設けられたノズルヘッドまで延設されていて、
前記移動機構は、前記アウタノズルを一端側へ移動させることで前記開口部を開くとともに、前記アウタノズルを他端側へ移動させることで、
前記内側テーパ面が前記外側テーパ面に当接して前記開口部を閉じる、ことを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記アウタノズルに設けられたピストン部と、前記シリンダと前記ピストン部との間に設けられたエア室と、前記エア室にエアを供給して前記ピストン部を移動させるエアアクチュエータと、を有することを特徴とする請求項1記載のノズル装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記ピストン部の外周壁に前記シリンダの周壁と摺接してエア室をシールする環状シール部を有している、ことを特徴とする請求項2記載のノズル装置。
【請求項4】
前記環状シール部は、他端側または一端側をそれぞれ開放するV字状断面のリップシール材を軸方向に一対併設している、ことを特徴とする請求項3記載のノズル装置。
【請求項5】
前記エア室は、エアの供給により前記ピストン部を前記ノズルヘッドに向けて移動させる第一エア室と、前記ピストン部を前記ノズルヘッドから離れる方向へ移動させる第二エア室と、を有し、前記移動機構は、前記シリンダの周壁に前記第一エア室に連通する第一エア通路と、第二エア室に連通する第二エア通路と、をそれぞれ内外方向へ貫通して形成して、前記エアアクチュエータからのエアを前記第一エア通路または前記第二エア通路に交互に切換えて供給する
切替弁を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のノズル装置。
【請求項6】
前記ノズルヘッドを周方向へ回転可能に支持するジョイントシャフトと、
前記ジョイントシャフトを回転させるノブと、を有することを特徴とする請求項1記載のノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状やゾル状等の充填物を容器に供給するための充填機のノズルが開発されて実用化に至っている。この種のノズルとしては、例えば特許文献1に記載のノズル装置が知られている。
【0003】
特許文献1のノズル装置は、開口部を開閉するノズルヘッドを備えている。円筒状のアウタノズル内を流下した充填物は、ノズルヘッドの開閉により開口部からの吐出を許容又は遮断される。
従来技術によれば、充填の際には、ノズルヘッドが下方移動することで開口部が開放される。これにより、アウタノズル内の充填物は、開口部から吐出されて容器内に供給される。
また、充填終了の際には、ノズルヘッドが上方移動することでノズルヘッドが開口部に下側から接触して開口部を閉塞する。これにより、開口部からの吐出している充填物は、遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のノズル装置では、充填を終了する際ノズルヘッドを上方に移動させるため、開口部から落下する充填物は、対向する方向に上昇するノズルヘッドに勢い良く衝突してしまう。
これにより、充填物は、ノズルヘッドの上方または側方へ向けて跳ね上がり周囲に飛散してしまう。飛散した充填物が容器の開口内側面に付着すると容器の密封性が損なわれてしまう。また、飛散を防止するため充填時間を長く設定すると生産効率が低下する。このため、さらなる改良が必要であった。
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のノズル装置は、充填物を供給する筒状のシリンダと、少なくとも一端側がシリンダに挿入され、他端側に開口部を有する筒状のアウタノズルと、アウタノズルの内部に収容されるインナノズルと、インナノズルの先端に設けられて、開口部を閉塞するノズルヘッドと、シリンダ及びノズルヘッドに対してアウタノズルを移動させる移動機構と、を備える。開口部には、先端に向かうほど半径外方向に拡径する内側テーパ面が形成されるとともに、ノズルヘッドの外周面には、先端に向かうほど半径外方向に拡径する外側テーパ面が形成されて、インナノズルは、外側壁に凹部を凹設する整流部を有するとともに、凹部は、整流部の軸方向に沿って先端に設けられたノズルヘッドまで延設されていて、移動機構は、アウタノズルを一端側へ移動させることで開口部を開くとともに、アウタノズルを他端側へ移動させることで、内側テーパ面が外側テーパ面に当接して開口部を閉じる、ことを特徴としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のノズル装置は、充填物を供給する筒状のシリンダと、少なくとも一端側がシリンダに挿入され、他端側に開口部を有する筒状のアウタノズルと、アウタノズルの内部に配置され開口部を閉塞するノズルヘッドと、シリンダ及びノズルヘッドに対してアウタノズルを移動させる移動機構と、を備える。移動機構は、アウタノズルを一端側へ移動させることで開口部を開くとともに、アウタノズルを他端側へ移動させることで開口部を閉じる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充填物を飛散させずに生産効率を向上させることができるノズル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るノズル装置で閉状態を示す全体の縦断面図である。
【
図2】実施形態に係るノズル装置で開状態を示す全体の縦断面図である。
【
図3】実施形態に係るノズル装置で開状態を示す開口部周辺の縦断面図である。
【
図4】吐出された充填物の分布を従来の飛散範囲と比較した平面図である。
【
図5】ノズル装置の回転角度を変更する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1に示す実施形態のノズル装置1は、充填物9を供給する筒状のシリンダ2と、少なくとも一端側3aがシリンダ2に挿入され、他端側3bに開口部4を有する筒状のアウタノズル3と、を備えている。また、ノズル装置1は、アウタノズル3の内部に配置され開口部4を閉塞するノズルヘッド5aと、シリンダ2及びノズルヘッド5aに対してアウタノズル3を移動させる移動機構10と、を備えている。
実施形態の充填物9は、主に流動性を有する液体である。ノズル装置1は、充填物9を容器30(
図5)などに所定の分量となるように充填する際に用いられる。液体には、ゲル状、グリス状、スライム状の半液体(粘性体)も含まれる。具体的には、シャンプーまたはリンスやコンディショナーなどのトリートメント液、各種オイル等、どのような粘性のものであってもよい。
【0012】
このうち、実施形態のシリンダ2は、三分割された筒状の金属材料からなる上部、中間部および下部を有していてそれぞれ上下方向に連結されている。なお、実施形態ではシリンダ2が三分割されているが、二分割もしくは単体によりシリンダ2が構成されていてもよい。
シリンダ2の上部は、後述するジョイントシャフト15を回転可能に支持するシャフト支持部26を有している。
ジョイントシャフト15は、ノズルヘッド5aを有するインナノズル5を下端部に連結する第一ジョイント部15aと、第二ジョイント部15bと、を設けている。第二ジョイント部15bは、第一ジョイント部15aの上端部に下端部が連結されて、上部がシャフト支持部26に軸支されている。
【0013】
図5に示すように、実施形態のシリンダ2の上部は、ジョイントシャフト15の回転を停止させる固定レバー25と、固定レバー25から突設されてシリンダ2の上部の側壁に開口するネジ孔と螺合する廻り止め軸と、を有している。また、第二ジョイント部15bの上端には、円柱状のノブ28が設けられていて、ノブ28を回転操作することによりジョイントシャフト15を軸廻りに回転させることができる。
さらに、第二ジョイント部15bの上部で、廻り止め軸の先端が対向する位置には、外周面より一段低い環状凹部27が形成されている。そして、廻り止め軸の先端が環状凹部27に当接すると、ジョイントシャフト15の軸廻りの回転が停止する。これにより、ノズルヘッド5aを所望の回転角度で停止させることができる。
【0014】
また、シリンダ2の上部と中間部との間には、中間部の内部空間を閉塞する蓋体2bが設けられている。蓋体2bは、第二ジョイント部15bを回転自在に挿通している。そして蓋体2bは、複数のゴム製のシールリング部材を第一ジョイント部15aまたはシリンダ2の周壁2aとの間にそれぞれ配置して止水している。
【0015】
また、シリンダ2の中間部は、周壁2aの外側に軸方向と直交させて供給管2cを接続している。なお、供給管2cは、軸方向を斜め下方に向けてシリンダ2の周壁2aに接続されていてもよい。
そして、貯留タンク(図示せず)から供給管2cを介してシリンダ2内に導入された充填物9は、シリンダ2の下端側に向けて内部空間を流下する。
【0016】
また、アウタノズル3は、例えば金属材料からなり、ピストン部11が設けられた大径の上部3cと、比較的小径の前部と、が縮径部を挟んで上下方向へ一体的に形成されている。
アウタノズル3は、上部3c、縮径部および前部のそれぞれの内部空間を軸方向に連通させている。
このうち、上部3cの一端側3aは、シリンダ2の軸に沿って上下方向へ移動可能となるようにシリンダ2下部の内側に挿入されている。一端側3aには、連通開口が形成されている。シリンダ2下部の内部空間は、連通開口を介してアウタノズル3の内部空間に連通している。
【0017】
さらに、アウタノズル3の前部で他端側3bには、開口部4が設けられている。実施形態の開口部4は、先端に向かうほど半径外方向に拡径する内側テーパ面4aを形成している。前部の内周面において内側テーパ面4aを除く部位の内径は、軸方向に沿って一定である。
そして、シリンダ2下端側に向けて流下した充填物9は、一端側3aの開口からアウタノズル3の大径部の内部空間に入る。アウタノズル3の縮径部および前部の内部空間を通過した充填物9は、他端側3bの開口部4からノズル装置1の下方に向けて吐出される。
【0018】
また、実施形態のノズルヘッド5aは、金属材料によって構成されたインナノズル5の先端に一体的に設けられている。ノズルヘッド5aには、アウタノズル3の上下方向への移動に伴って開口部4の前側(実施形態では下側)が上方から当接する。これにより、開口部4は開閉して、充填物9の吐出を許容又は遮断するように構成されている。
【0019】
実施形態のノズルヘッド5aの外周面には、先端に向かうほど半径外方向に拡径するとともに開口部4の内側テーパ面4aに接触可能な外側テーパ面5dが形成されている。外側テーパ面5dは、降下する内側テーパ面4aの下側を接触させる。充填を終了する際、外側テーパ面5dは、内側テーパ面4aと協働して開口部4から吐出している充填物9を遮断することができる。
【0020】
実施形態のノズル装置1は、外側テーパ面5dおよび内側テーパ面4aの傾斜角度が同じまたは同等となるように設定されている。外側テーパ面5dおよび内側テーパ面4aの傾斜角度は、充填物9の粘度等を考慮して適宜設定されている。たとえば、それぞれの傾斜角度を同じ約30度~60度の範囲内で設定されることが好ましい。また、外側テーパ面5dの傾斜角度と内側テーパ面4aの傾斜角度とが相違していてもよく、開口部4が塞がれて充填物9を遮断できる同等の範囲内であれば異なる傾斜角度が設定されていてもよい。
【0021】
また、実施形態のインナノズル5は、外側壁に凹部5cを凹設する整流部5bを有している。整流部5bは、アウタノズル3の前部内に収容されている。そして、凹部5cは、整流部5bの軸方向に沿って先端に設けられたノズルヘッド5aまで延設されている。
【0022】
実施形態の移動機構10は、
図1に示すように、アウタノズル3を一端側3aへ移動させることで開口部4を開くとともに、
図2に示すようにアウタノズル3を他端側3bへ移動させることで開口部4を閉じる。
移動機構10は、アウタノズル3の上部3cに設けられたピストン部11と、シリンダ2とピストン部11との間に設けられたエア室12と、エア室12にエアを供給してピストン部11を移動させるエアアクチュエータ13と、を有している。
【0023】
このうち、エア室12は、
図1に示すようにエア8aの供給によりピストン部11をノズルヘッド5aに向けて移動させる第一エア室12aと、第一エア室12aよりも他端側3bに位置して
図2に示すようにエア8dの供給によりピストン部11をノズルヘッド5aから離れる方向へ移動させる第二エア室12bと、を有している。
実施形態の第一エア室12aと第二エア室12bとの間は、ゴム製のOリング部材19によりシールされている。詳しくは、ピストン部11の外周壁11aのうち上下方向中間部には、環状フランジ部が凸設されている。環状フランジ部の外周面には、環状溝が凹設されている。そして、Oリング部材19は、環状溝に装着されて周壁2aの内側面に摺接する。これにより、第一エア室12aおよび第二エア室12b間がシールされて、エア室12内のエアは、第一エア室12aおよび第二エア室12bの間で漏れることがない。
【0024】
また、ピストン部11は、外周壁11aにシリンダ2の周壁2a内面と摺接してエア室12をシールする環状シール部16を有している。環状シール部16は、外周壁11aの一端側3aに一対の環状溝3d,3dを有している。
各環状溝3dは、外径方向を開放させる凹状に形成されていて軸方向にリップシール材18をそれぞれ装着している。二本のリップシール材18はゴム製で、所定の間隔で並設されている。各リップシール材18は、径方向内外に弾性変形可能な内リップおよび外リップを一体に有して、それぞれ他端側3bまたは一端側3aをそれぞれ開放するV字状断面を有している。
【0025】
各リップシール材18は、V字状に開放する方向から圧力が加わるとV字状断面を径内外方向にそれぞれ拡開させる。これにより、ピストン部11の外周壁11aおよびシリンダ2の周壁2a内面に内リップおよび外リップがそれぞれ圧接される。
このため、さらに、シール性を向上させることができる。よって、ピストン部11が上下何れの方向に移動しても少なくとも何れか一方のリップシール材18が第一エア室12a内のエアまたは、シリンダ2内の充填物9が漏れる虞がない。
【0026】
さらに、ピストン部11は、第二エア室12bの他端側3bの外周壁11aとシリンダ2の周壁2aとの間に金属製の環状シールリング部材17を有している。環状シールリング部材17と、外周壁11aまたは周壁2aとの間には、複数のゴム製のOリング部材20がそれぞれ設けられていて、第二エア室12bの前側から外部へエアが漏れないようにシールしている。
したがって、切替弁22の切り換えで供給されたエアは、第一エア室12aまたは第二エア室12bの一方側からピストン部11を押圧して上下方向のいずれかに移動させる。この際、空間が減少する第一エア室12aまたは第二エア室12bから内部のエアが円滑に排出される。このため、さらに速くアウタノズル3を上下方向へ移動させることができる。
【0027】
さらに、実施形態の移動機構10は、切替弁22を有している。切替弁22は、エアアクチュエータ13からエア室12に供給されるエアを、第一エア室12aまたは第二エア室12bに選択的に切換えてそれぞれ供給することができる。
シリンダ2の周壁2aには、第一エア室12aに連通する第一エア通路22aと、第二エア室12bに連通する第二エア通路22bと、がそれぞれ内外方向へ貫通して形成されている。
そして、切替弁22は、エアアクチュエータ13から供給されるエアを第一エア通路22aまたは、第二エア通路22bに交互に切換えて供給する。
【0028】
例えば、エアアクチュエータ13からのエア8aが第一エア通路22aを通過して第一エア室12aに供給されると、ピストン部11とともにアウタノズル3が他端側3bへ移動する。これにより開口部4は、ノズルヘッド5aに当接して閉じられる(
図1参照)。
この際、Oリング部材19により第一エア室12aと第二エア室12bとの間がシールされているため、第二エア室12b内のエア8bは、漏れることなく押圧されて第二エア通路22bから外部に排出される。
【0029】
また、エアアクチュエータ13からのエア8dが第二エア通路22bを通過して第二エア室12bに供給されると、ピストン部11とともにアウタノズル3が一端側3aへ移動して開口部4を開く(
図2参照)。この際、Oリング部材19により第一エア室12aと第二エア室12bとの間がシールされているため、第一エア室12a内のエア8cは、押圧されて第一エア通路22aから外部に排出される。
【0030】
実施形態では、
切替弁22の切り換えで、アウタノズル3を一端側3aまたは他端側3bに移動させることができる。たとえば、
図1に示すようにアウタノズル3を上方向へ移動させてノズルヘッド5aから開口部4を離間させることにより開口部4を開けることができる。
また、
図2に示すように
切替弁22を反対側へ切り換えると、アウタノズル3が下方向へ移動する。これによりノズルヘッド5aに開口部4が当接して開口部4を閉じることができる。
【0031】
以上説明した本実施形態のノズル装置1によれば、充填物9を供給する筒状のシリンダ2と、少なくとも一端側3aがシリンダ2に挿入され、他端側3bに開口部4を有する筒状のアウタノズル3と、アウタノズル3の内部に配置され開口部4を閉塞するノズルヘッド5aと、シリンダ2及びノズルヘッド5aに対してアウタノズル3を移動させる移動機構10と、を備える。移動機構10は、アウタノズル3を一端側3aへ移動させることで開口部4を開くとともに、アウタノズル3を他端側3bへ移動させることで開口部4を閉じる。
【0032】
このように構成された実施形態のノズル装置1は、充填物9を飛散させずに生産効率を向上させることができる。
詳しくは、充填を開始する際、
図2に示すように、移動機構10は、シリンダ2及びノズルヘッド5aに対してアウタノズル3を一端側3a(上方)へ移動させて開口部4を開く。これにより、シリンダ2から供給された充填物9は、開口部4からの吐出が許容される(
図3参照)。そして、
図5に示すよう充填物9aは、容器30内に流下して所望の分量で充填される。
充填を終了する際、
図1に示すように、移動機構10は、シリンダ2及びノズルヘッド5aに対してアウタノズル3を他端側3bへ移動させて開口部4を閉じる。これにより、開口部4から吐出されていた充填物9は、遮断される。
図3に示すように、開口部4を閉じる動作では、充填物9が開口部4から吐出されている方向と同じ他端側3bに向けてアウタノズル3が下方に移動してノズルヘッド5aの周囲を遮蔽する(
図1参照)。また、ノズルヘッド5aは、シリンダ2に支持されていて上下方向へ動かない。このため、充填物9がノズルヘッド5aに当接する速度は、充填の際と変わらず周囲に充填物9が飛散しない。このため、充填速度を遅くする必要がなくなり生産効率を向上させることができる。
【0033】
図3および
図4では、実施形態のノズル装置1における充填物9aの吐出方向を、従来の従来の外開きタイプのノズル装置を閉じる場合に充填物9bが飛散する方向(仮想線参照)と共に記載して比較しながら説明する。
たとえば、従来の外開きタイプのノズル装置は、ノズルヘッド5aを下方に移動させて開口部4を開いた状態からノズルヘッド5aを上方へ移動させて開口部4を閉じる場合、開口部4から下向きに吐出された充填物9が上昇するノズルヘッド5aの外側テーパ面5dに勢い良く衝突する。このため、充填物9bは、
図3に示すようにノズルヘッド5aの周囲に跳ね上がり飛散する(
図4参照)。飛散した充填物9bは、
図5に示すような容器30の上部開口30aの内側に付着してしまう。したがって、充填速度が遅くなるように調整する必要がある。また、飛散した充填物9を除去する工程を設けて容器の密封性が損なわれないようにする必要があり、生産効率を低下させていた。
【0034】
これに対して、実施形態のノズル装置1は、開口部4を閉じる際、
図3に示すように開口部4から吐出されている充填物9は、同時に下方に移動するアウタノズル3の他端側3b周壁で遮断される。このため、充填物9aは、
図4に示すように周囲に飛散せず、容器30(
図5参照)内に充填される。
したがって、飛散した充填物9を除去する工程が不要となり短時間で充填および容器30の上部開口30aを短時間で閉じて生産効率を向上させることができる。
【0035】
また、アウタノズル3の一端側3aは、シリンダ2に挿入されているため、シリンダ2内の充填物9により下方へ向けて背圧が加えられている。このため、アウタノズル3の下方への移動速度を上方への移動速度よりも容易に速くすることができる。例えば、アウタノズル3は、吐出された充填物9の落下速度と同等若しくは速くなるように下方への移動速度を設定することができる。これにより、充填物9がノズルヘッド5aに当接する際、同時もしくは早く開口部4が閉じられてノズルヘッド5aの周囲を確実に遮断することができる。
【0036】
移動機構10は、アウタノズル3に設けられたピストン部11と、シリンダ2とピストン部11との間に設けられたエア室12と、エア室12にエアを供給してピストン部11を移動させるエアアクチュエータ13と、を有する。
【0037】
エアアクチュエータ13によってエア室12にエアが供給されると、ピストン部11が設けられているアウタノズル3が移動して開口部4を開閉できる。このため、アウタノズル3とは別部材で構成されたピストン部材などを設ける必要がなくなり構造を簡略化できる。
【0038】
また、移動機構10は、ピストン部11の外周壁11aにシリンダ2の周壁2aと摺接してエア室12をシールする環状シール部16を有している。
環状シール部16は、ピストン部11とともに移動する。このため、ピストン部11とシリンダ2の周壁2aとの間に吸込み作用が発生しない。
【0039】
特に実施形態の環状シール部16は、リップシール材18が外周壁11aに凹状に形成された環状溝3dに装着されている。このため、ピストン部11が移動しても一端側3aから軸方向にずれない。
また、周壁2aの内面に凹状の溝を形成した場合には、吸い込み作用で吸い込まれた気泡が充填物9とともに開口部4から吐出されることがある。これに対して、実施形態の環状シール部16は、ピストン部11とともに移動するため、吸い込み作用が発生しない。このため、気泡が充填物9とともに開口部4から吐出されず、充填物9の容量変化がなくなり、容器30に充填される充填物9の分量を安定させることが出来、この点においても生産性を向上させることができる。
【0040】
さらに、実施形態の環状シール部16は、他端側3bまたは一端側3aをそれぞれ開放するV字状断面を有するリップシール材18を一対併設している。
このため、ピストン部11が他端側3bまたは一端側3aの何れの方向へ移動するとV字状断面のリップシール材18がそれぞれ移動方向から加わる圧力により開いて周囲に密着する。このため、さらにシール性を向上させることができる。
【0041】
図1に示すように、エア室12は、エアの供給によりピストン部11をノズルヘッド5aに向けて移動させる第一エア室12aと、ピストン部11をノズルヘッド5aから離れる方向へ移動させる第二エア室12bと、を有している。移動機構10は、シリンダ2の周壁2aに第一エア室12aに連通する第一エア通路22aと、第二エア室12bに連通する第二エア通路22bと、をそれぞれ内外方向へ貫通して形成している。
【0042】
そして、移動機構10は、エアアクチュエータ13から供給されるエアを第一エア通路22aまたは、第二エア通路22bに交互に切換えて供給する切替弁22を有している。
このため、切替弁22によってエア8の供給先が第一エア通路22aまたは第二エア通路22bに切換えられると、選択的にエア8a,8dが第一エア室12aまたは第二エア室12bにエアアクチュエータ13から供給される。このため、一つのエアアクチュエータ13を用いてアウタノズル3を一端側3aまたは他端側3bに移動させて、開口部4を開閉することができる。
【0043】
また、ノズル装置1は、ノズルヘッド5aを周方向へ回転可能に支持するジョイントシャフト15と、ジョイントシャフト15を回転させるノブ28と、を有している。
実施形態では、
図5に示すように、固定レバー25の回転操作により廻り止め軸の先端を環状凹部27から離間させる。これにより、シャフト支持部26(
図1参照)に軸支されているジョイントシャフト15は、回転自在となる。このため、オペレータは、上端のノブ28を左右方向へ回転操作させることにより軸廻りにノズルヘッド5aの向きを変更できる。
そして、所望の回転角度で、再び固定レバー25を逆方向へ回転操作して廻り止め軸の先端を環状凹部27に当接させる。これによりジョイントシャフト15の回転は止められてインナノズル5が所望の角度で固定される。
たとえば、整流部5bの外側壁に凹部5cが形成されていて、充填物9が吐出される方向性が与えられている場合がある。
このような場合、オペレータは、ノブ28および固定レバー25の操作により開口部4から吐出される充填物9の方向を変更することができる。これにより、充填する容器30の形状、例えば、上部開口30aの幅広方向に合わせて充填物9の吐出方向を向けて効率的な充填を行い、飛散を防止することができる。
したがって、さらに生産効率を向上させることができる、といった実用上有益な作用効果を発揮する。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施形態の移動機構10は、アウタノズル3に設けられたピストン部11を、エア室12に供給されたエアで移動させるエアアクチュエータ13を有して構成されている。しかしながら、本発明は特にこれに限らない。例えば、モータアクチュエータ、電磁アクチュエータもしくは、歯車機構あるいはリンク機構を有する機械的なアクチュエータを有するものであってもよい。
また、移動機構10は、アウタノズル3を一端側3aへ移動させることで開口部4を開くとともに、アウタノズル3を他端側3bへ移動させることで開口部4を閉じることが出来るものであればよい。すなわち、移動機構10は、形状、数量および駆動するアクチュエータの種類や構成が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 ノズル装置
2 シリンダ
3 アウタノズル
3a 一端側
3b 他端側
4 開口部
5a ノズルヘッド
9 充填物
10 移動機構