(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】アバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20241224BHJP
A61C 13/087 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C13/087
(21)【出願番号】P 2023522483
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2020016945
(87)【国際公開番号】W WO2022080578
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0131239
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516371391
【氏名又は名称】ハス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HASS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】77-14,Gwahakdanji-ro Gangneung-si Gangwon-do 25452,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン ボン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ファン スン
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507291(JP,A)
【文献】特表2019-528852(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0127727(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00-02
A61C 13/00ー38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラントであって、
前記補綴物と前記アバットメントとは、成形方式によって互いに一体に連結され
、
前記補綴物は、
成形モールドに注入された後に硬化するレジン(resin)で製作され、
前記成形モールドは、第1金型を含み、
前記第1金型は、
前記レジンが充填されるキャビティと、
前記キャビティの中央部に設けられ、前記アバットメントに形成されたホールに挿入されて前記アバットメントを支持する垂直軸と、を含み、
前記垂直軸に結合した前記アバットメントの長手方向の一側部位は、前記キャビティに配置され、前記アバットメントの長手方向の他側部位は、前記キャビティの外部に配置され、
前記アバットメントの長手方向の一側部位と他側部位との境界部にはアンダーカット状の溝部が形成されることを含み、
前記溝部にレジンが投入されて硬化する
ことを特徴とする、アバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント。
【請求項2】
前記成形モールドは、
前記第1金型の開放された上部を遮断する第2金型を含み、
前記第2金型は、前記アバットメントに干渉していないまま、前記第1金型に形成されたキャビティの開放された上部を遮断することを特徴とする、
請求項1に記載のアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント。
【請求項3】
前記キャビティは、
製作しようとする歯の形態と対応する形態を有するか、或いは円柱又は六面体の形態を有することを特徴とする、
請求項1に記載のアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント。
【請求項4】
前記アバットメントの長手方向の一側部位に接触面増加部がさらに設けられることを含み、
前記接触面増加部は、ねじ山の形態で前記アバットメントの一側部位の全体または一部に設けられることを特徴とする、
請求項1に記載のアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント。
【請求項5】
前記レジンと共に配合されて前記成形モールドに注入される無機充填材(Inorganic Filler)をさらに含み、
前記無機充填材は、50~60質量%の含有量及び0.1μm~10μmの粒径を有する、
請求項1に記載のアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント。
【請求項6】
請求項1に記載の歯科インプラントの製造方法であって、
成形モールドに形成されたキャビティにレジンを充填する注入ステップと、
前記注入ステップでレジンが充填されたキャビティにアバットメントを配置させる配置ステップと、
前記キャビティに充填されたレジンを硬化させる硬化ステップと、
前記硬化ステップでレジンが固まって形成された補綴物、及び前記アバットメントを前記成形モールドから分離させる脱型ステップと、を含むことを特徴とする、アバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材のアバットメントと歯科補綴物との結合強度を高められるように構成された、アバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラント(Dental Implant)は、部分的または全体的に歯牙が失われた部位に人工歯根を埋め込んで歯槽骨に固着し、人工歯根に歯科補綴物を固定することで形成された人工歯構造物を意味する。
【0003】
一般に、歯科インプラントは、歯槽骨に埋め込まれて人工歯根の役割を果たすフィクスチャー(fixture)、フィクスチャーに結合して患者の歯茎の上に配置されるアバットメント(abutment)、及びアバットメントに締結される歯科補綴物を含んで構成される。
【0004】
フィクスチャーは、自然歯の歯根のように欠損が発生した歯部位の歯槽骨に埋め込まれて人工歯を支持するように構成される固定体と言える。
【0005】
アバットメントは、支台とも呼ばれ、歯槽骨に埋め込まれた前記フィクスチャーと歯科補綴物とを連結するように構成できる。
【0006】
歯科補綴物は、アバットメントによって口腔内に固定され、自然歯と同じ形態の機能を再現するように構成できる。
【0007】
一方、歯科補綴物とアバットメントは、接合剤を用いた締結方式で互いに結合する。すなわち、歯科補綴物とアバットメントは、セメント(Cement)を用いて固定するCRP(cement retained prosthesis)方式によって互いに締結されることが一般的である。
【0008】
しかし、CPR方式は、相対的に施術が単純であり、外観上周辺の自然歯と異質感なく適用することができるという利点があるが、余剰セメントによる炎症が誘発される可能性があり、セメントが溶解する場合に歯科補綴物が分離されるという問題点がある。
【0009】
したがって、本出願人は、かかる問題点を解決するために本発明を提案しており、これに関連する先行技術文献としては、韓国登録特許第10-2048180号の「改善された固定構造及び緩衝構造を有する人工歯科インプラント」がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、アバットメントと歯科補綴物との結合が容易であり、結合力も増加するように構成された歯科インプラント及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、アバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラントであって、前記補綴物と前記アバットメントとは、成形方式によって互いに一体に連結できる。
【0013】
また、前記補綴物は、前記アバットメントが配置された成形モールドに注入された後に硬化するレジン(resin)で製作できる。
【0014】
また、前記成形モールドは、第1金型を含み、前記第1金型は、前記レジンが充填されるキャビティと、前記キャビティの中央部に設けられ、前記アバットメントに形成されたホールに挿入されて前記アバットメントを支持する垂直軸と、を含むことができる。
【0015】
また、前記成形モールドは、前記第1金型の開放された上部を遮断する第2金型を含み、前記第2金型は、前記アバットメントに干渉していないまま、前記第1金型に形成されたキャビティの開放された上部を遮断することができる。
【0016】
また、前記キャビティは、製作しようとする歯の形態と対応する形態を有するか、或いは円柱又は六面体の形態を有することができる。
【0017】
また、前記垂直軸に結合した前記アバットメントの長手方向の一側部位は、前記キャビティに配置され、前記アバットメントの長手方向の他側部位は、前記キャビティの外部に配置され得る。
【0018】
また、前記アバットメントの長手方向の一側部位と他側部位との境界部には、アンダーカット状の溝部が形成されることを含み、前記溝部にレジンが投入されて硬化し得る。
【0019】
また、前記アバットメントの長手方向の一側部位に接触面増加部がさらに設けられることを含み、前記接触面増加部は、ねじ山の形態で前記アバットメントの一側部位の全体または一部に設けられてもよい。
【0020】
また、前記レジンと共に配合されて前記成形モールドに注入される無機充填材(Inorganic Filler)をさらに含み、前記無機充填材は、50~60質量%の含有量及び0.1μm~10μmの粒径を有してもよい。
【0021】
また、本発明は、前記成形モールドに形成されたキャビティにレジンを充填する注入ステップと、前記注入ステップでレジンが充填されたキャビティにアバットメントを配置させる配置ステップと、前記キャビティに充填されたレジンを硬化させる硬化ステップと、前記硬化ステップでレジンが固まって形成された補綴物、及び前記アバットメントを前記成形モールドから分離させる脱型ステップと、を含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法は、補綴物とアバットメントとが成形モールドを用いた成形方式によって一体に結合した構造を持つので、補綴物とアバットメントとの結合強度を増進させることができ、これによる耐久性の向上を図ることができる。
【0023】
また、本発明に係るアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法は、補綴物を製作する過程でアバットメントを連結させることができるので、別途の物理的締結工程を要求しないため製造の利便性を提供し、しかも、製造コストを下げることができる。
【0024】
また、本発明に係るアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法は、補綴物を形成する成形モールドのキャビティの形態に応じてフィクスチャーに直ちに埋め込むことが可能な構造を提供してインプラント施術の利便性を提供する。
【0025】
また、本発明に係るアバットメントと補綴物とが一体的に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法は、接着剤(セメント)を用いた締結方式又は物理的締まりばめ方式を用いることなく、補綴物とアバットメントとが一体に結合した形態を提供するので、余剰接着剤による炎症誘発を防止することができ、締結工程から発生する不良率を著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】補綴物とアバットメントを一体に結合させるために使用される成形モールドの分離断面図である。
【
図2】
図1に示された成形モールドに補綴物を形成するレジンが注入された状態を示す断面図である。
【
図3】
図2に示された成形モールドから補綴物とアバットメントが脱型された状態を示す斜視図である。
【
図4】成形モールドのキャビティが歯の形態で形成された様子を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るアバットメントの外面に接触面増加部が形成された様子を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による歯科インプラントの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点、特徴、及びそれらの達成方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると、明らかになるであろう。
【0028】
しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実現されるであろう。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0029】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態によるアバットメントと補綴物とが一体に結合した形態を有する歯科インプラント及びその製造方法について詳細に説明する。本発明を説明するにあたり、関連する公知の機能或いは構成についての具体的な説明は、発明の要旨を曖昧にしないために省略される。
【0030】
図1は補綴物とアバットメントを一体に結合させるために使用される成形モールドの分離断面図、
図2は
図1に示された成形モールドに補綴物を形成するレジンが注入された状態を示す断面図、
図3は
図2に示された成形モールドから補綴物とアバットメントが脱型された状態を示す斜視図、
図4は成形モールドのキャビティが歯の形態で形成された様子を示す断面図、
図5は本発明に係るアバットメントの外面に接触面増加部が形成された様子を示す断面図、
図6は本発明の一実施形態による歯科インプラントの製造方法を示すフローチャートである。
【0031】
図1~
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る歯科インプラント100は、補綴物110とアバットメント120が成形モールド200による成形方式によって互いに一体に結合したことに特徴があるといえる。
【0032】
すなわち、補綴物110は、成形可能なレジン(resin)を用いて製作されるので、前記レジンは、補綴物110の形態と対応する形態のキャビティ211に注入された後に硬化することができる。このとき、アバットメント120を成形モールド200のキャビティ211に配置させることができる。すると、レジンが硬化して補綴物110を形成するだけで、補綴物110とアバットメント120とが別途の締結過程なしに互いに結合した状態を成すことができる。
【0033】
前記成形モールド200は、
図1~
図3に示すように、第1金型210と第2金型220とを含むことができる。
【0034】
前記第1金型210は、補綴物110を成形するためのレジンが注入されて充填されるキャビティ211と、前記キャビティ211の中央部に設けられ、前記アバットメント120に形成されたホールhに挿入されて前記アバットメント120を支持する垂直軸212と、を含むことができる。
【0035】
前記キャビティ211は、製作しようとする補綴物110の形態と対応する形態を有することができる。例えば、円柱や六面体などの形態を有してもよく、または、
図4及び
図5に示すように、製作しようとする歯の形態と対応する形態を有してもよい。
【0036】
前記垂直軸212は、キャビティ211を区画する第1金型210の底面中央部から垂直方向に突出して形成でき、前述したように、アバットメント120に形成されたホールhに挿入できる。参考までに、ホールhは、アバットメント120とフィクスチャー(図示せず)とを互いに結合するためのスクリュー(図示せず)が挿入される孔であると言える。すなわち、スクリューがホールhに挿入されてフィクスチャーとねじ締結されると、アバットメント120とフィクスチャーとが互いに結合した状態を成すことができる。
【0037】
垂直軸212は、アバットメント120に形成されたホールhに締まりばめ方式で挿入できる。したがって、使用者は、アバットメント120を垂直軸212の先端部分に固定された状態で配置することができる。
【0038】
このとき、垂直軸212に結合したアバットメント120の長手方向の一側部位はキャビティ211の内側に配置され、長手方向の他側部位はキャビティ211の外側に配置されてもよい。キャビティ211の内側に配置されるアバットメント120の長手方向の部位は、補綴物と一体に結合する部位であり、キャビティ211の外側に配置されるアバットメント120の長手方向の部位は、スクリューを介してフィクスチャーと結合する部位であるといえる。
【0039】
一方、補綴物110を形成するレジンは、アバットメント120が垂直軸212に結合する前にキャビティ211に注入されてもよく、又は、アバットメント120が垂直軸212に結合した後にキャビティ211に注入されてもよい。
【0040】
前記第2金型220は、前記垂直軸212に結合したアバットメント120に干渉していないまま、前記第1金型210に形成されたキャビティ211の開放された上部を遮断することができる。すなわち、第2金型220は、
図1及び
図2に示すように、第1金型210の上面に置かれてもよく、レジンが充填されたキャビティ211への異物の流入を防止することができる。
【0041】
上述のように構成された成形モールド200は、外力による変形が少なく且つ耐久性に優れた材質で製作できる。例えば、金属材、プラスチック合成樹脂材、黒鉛材で製作でき、これに限定されず、相対的に軟質の材質であるシリコンやゴムなどの材質でも製作できる。
【0042】
一方、キャビティ211に充填されて補綴物110を形成するレジンは、流動性を有するメタクリレート化合物またはアクリレート化合物からなってもよい。
【0043】
キャビティ211に注入されたレジンは、様々な公知の硬化方式によって硬化できる。例えば、自然硬化方式が使用されてもよく、或いは、硬化時間を短縮するために熱硬化方式又は光を用いた光硬化方式が使用されてもよい。
【0044】
レジンがキャビティ211内で硬化して補綴物110を形成すると、補綴物110とアバットメント120の長手方向の一側部位は、互いに結合した状態をなす。その後、第2金型220を第1金型210から分離した後、アバットメント120の長手方向の他側部位を引っ張ると、キャビティ211から補綴物110とアバットメント120とが脱型され得る。
【0045】
すると、
図3に示すように、中空の補綴物110とアバットメント120が製作できる。参考までに、本発明の一実施形態では、補綴物110が円柱状を有するものとして図面に示されているが、これに限定されない。例えば、六面体、または製作しようとする歯の形態を有してもよい。
【0046】
このように、補綴物110を形成するレジンがアバットメント120と接触した状態でキャビティ211内で硬化するため、補綴物110を製作する過程で補綴物110とアバットメント120とが自然に結合することができ、これにより、別途の締結工程を行う必要はない。
【0047】
一方、
図4に示すように、前記アバットメント120の長手方向の一側部位と他側部位との境界部には、アンダーカット状の溝部121が設けられてもよい。
【0048】
前記溝部121は、アバットメント120の周方向の全体にわたって形成されてもよく、或いは周方向の一部に形成されてもよく、キャビティ211に充填されたレジンが浸透することが可能な所定の空間を提供する。
【0049】
このように、溝部121は、5度~30度の傾斜角度を有する傾斜面によって区画できる。したがって、溝部121に浸透したレジンによって補綴物110とアバットメント120との結合力がさらに上昇することができ、特に、アバットメント120と補綴物110とがその長手方向に分離される現象がさらに防止できる。
【0050】
また、前記アバットメント120は、接触面増加部122をさらに含んでもよい。前記接触面増加部122は、
図5に示すように、前記キャビティ211の内側に配置されたアバットメント120の長手方向の一側部位に設けられてもよい。このとき、接触面増加部122は、ねじ山の形態でアバットメント120の一側部位の全体又は一部に設けられてもよい。
【0051】
上述のように構成された接触面増加部122は、キャビティに充填されたレジンが投入できる多数の空間を提供することにより、補綴物110とアバットメント120との結合力をさらに上昇させる構成要素であるといえる。すなわち、補綴物110とアバットメント120との結合面積を増加させて補綴物110とアバットメント120との結合力を上昇させる別の構成要素であるといえる。
【0052】
一方、キャビティ211に注入されるレジンは、無機充填材(Inorganic Filler)と配合されることが好ましい。
【0053】
前記無機充填材の含有量は50~60質量%であることが好ましい。無機充填材の含有量が50質量%以下になると、補綴物110の表面滑沢性と耐摩耗性が足りなくなる。逆に、無機充填材の含有量が60質量%を超えると、補綴物110の機械的強度が低下するおそれがある。したがって、前記無機充填材の含有量は0~60質量%であることが好ましい。
【0054】
また、無機充填材は、0.1μm~10μmの粒径を有することが好ましい。
無機充填材の平均粒径が小さい場合には、補綴物110の表面が滑らかになる。そして、表面粗さが小さくなり、ムラやプラグなどによる汚染が減少して審美感に優れた効果を期待することができる。これに対し、無機充填材の平均粒径が大きければ大きいほど、綴物110の機械的物性には優れるものの、表面が粗く、表面粗さが大きくなって審美的な効果が低下する。
【0055】
以下、上述したように構成された歯科インプラント100の製造方法について例を挙げて説明する。
【0056】
歯科インプラントの製造方法は、
図6に示すように、注入ステップ(S100)、配置ステップ(S200)、硬化ステップ(S300)及び脱型ステップ(S400)含むことができる。
【0057】
まず、前記注入ステップ(S100)は、前記第1金型210に形成されたキャビティ211にレジンを注入するステップであるといえる。このとき、レジンには無機充填材が50~60質量%で含有できる。
【0058】
前記配置ステップ(S200)は、前記キャビティ211の中央部に設けられた垂直軸212にアバットメント120を結合させるステップであるといえる。すなわち、アバットメント120に形成されたホールhに垂直軸212を挿入するステップであるといえる。すなわち、
図2に示すように、アバットメント120の長手方向の一側部位がキャビティ211内に配置され、残りの長手方向の他側部位がキャビティ211の外側に配置されるように垂直軸212とアバットメント120とを互いに結合させるステップであるといえる。
【0059】
参考までに、前記配置ステップ(S200)は、キャビティ211にレジンが充填される前に行われてもよく、キャビティ211にレジンが充填された後に行われてもよい。すなわち、配置ステップ(S200)は、前記注入ステップ(S100)が完了した後に行われてもよく、前記注入ステップ(S100)が行われる前に優先的に行われてもよい。
【0060】
前記硬化ステップ(S300)は、キャビティ211の開放された上部を遮断した状態で、キャビティ211に充填されたレジンを硬化させるステップであるといえる。すなわち、硬化ステップ(S300)では、第1金型210の上面に第2金型220を配置させてキャビティ211の開放された上部を遮断することができる。そして、公知の硬化方式を用いて、キャビティ211に充填されたレジンを硬化させることができる。
【0061】
前記脱型ステップ(S400)は、硬化過程が完了したレジンと、そのレジンと結合した状態をなすアバットメント120とを第1金型210のキャビティ211から引く抜くステップである。硬化過程が完了して硬く固まったレジンを補綴物110といえる。補綴物110をキャビティ211から分離させるために、キャビティ211の外部に配置されたアバットメント120の長手方向の他側部位を別途の把持工具で把持した後、引っ張って第1金型210から脱型させることができる。
【0062】
上述した過程が完了すると、一体に結合した状態の補綴物110とアバットメント120とが製造できる。
【0063】
以上、本発明による具体的な実施形態について説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変形が可能であるのは言うまでもない。
【0064】
したがって、本発明の範囲は、説明された実施形態に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによっても定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、医療産業分野に適用されて販売できる。
【符号の説明】
【0066】
100 歯科インプラント
110 補綴物
120 アバットメント
121 溝部
122 接触面増加部
200 成形モールド
210 型
211 キャビティ
212 垂直軸
220 型