(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】浮体式原子力発電システム
(51)【国際特許分類】
G21C 1/00 20180101AFI20241224BHJP
G21C 9/016 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
G21C1/00 210
G21C9/016
(21)【出願番号】P 2024032338
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-11-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524096934
【氏名又は名称】Advanced Float株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姉川 尚史
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0082591(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0192947(US,A1)
【文献】国際公開第2011/128581(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113362977(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112768095(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/00
G21C 9/016
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉と、
前記原子炉の熱によって発生した蒸気で駆動するタービン発電機と、
前記原子炉と前記タービン発電機が配置されており、海上に係留される浮体と、を備え、
前記浮体は、二重船殻構造によって前記浮体の船底部分に形成される船底バラストタンクのバラスト水で下側が満たされたコアキャッチャーを前記原子炉の下側に有する、
浮体式原子力発電システム。
【請求項2】
前記コアキャッチャーは、鋼鉄製であり、
前記原子炉が収まる格納容器内の底面部分を形成する鋼板と、
前記鋼板の下面において前記船底バラストタンク内に立設される伝熱板と、を有する、
請求項1に記載の浮体式原子力発電システム。
【請求項3】
前記浮体の周囲の水を前記格納容器内へ流入させる連通弁を有する、
請求項1に記載の浮体式原子力発電システム。
【請求項4】
前記浮体を沈没させる沈没手段を更に備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の浮体式原子力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式原子力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電システムには、地上に設置する形態のみならず、海上に浮かべる浮体式の形態も提案されている(例えば、特許文献1-3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-151898号公報
【文献】特開昭63-151899号公報
【文献】特開昭52-149589号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Buongiorno, J. et al. “The Offshore Floating Nuclear Plant Concept.” Nuclear Technology 194.1 (2016)
【文献】浮場式原子力発電所浮体構造物の地震応答特性(その2)-底部に空気室を有する浮体の上下免震特性- 電力中央研究所 萩原豊 他、1987/8/1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子力発電システムにおいて、炉心溶融事故は最も避けるべき事態である。よって、システムに備わる冷却手段がすべて喪失した場合であっても、海水等の注水を試みる必要がある。陸上に設置される原子力発電システムの場合、炉心溶融に対抗すべく海水の利用を試みるには、ポンプ等の動力が明らかに必要である。この点、原子力発電システムを浮体で海上に浮かべる形態であれば、炉心溶融に対抗するための海水の利用に関しては、陸上に設置される原子力発電システムより有利であるように思われる。しかしながら、陸上に設置される原子力発電システムをそのまま海上に浮かべた場合には、海水を有利に利用することができない。
【0006】
そこで、本願は、炉心溶融に有利に対抗可能な浮体式原子力発電システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、二重船殻構造によって浮体の船底部分に形成される船底バラストタンクのバラスト水で下側が満たされたコアキャッチャーを原子炉の下側に設けることにした。
【0008】
詳細には、本発明は、原子炉と、原子炉の熱によって発生した蒸気で駆動するタービン発電機と、原子炉とタービン発電機が配置されており、海上に係留される浮体と、を備え、浮体は、二重船殻構造によって浮体の船底部分に形成される船底バラストタンクのバラスト水で下側が満たされたコアキャッチャーを原子炉の下側に有する、浮体式原子力発電システムである。
【0009】
上記の浮体式原子力発電システムであれば、原子炉の下側に配置されるコアキャッチャーの下側が、浮体が有する二重船殻構造によって浮体の船底部分に形成される船底バラストタンクのバラスト水で満たされる。浮体式原子力発電システムの浮体は原子炉に比べて遥かに大きいため、浮体が有する船底バラストタンクにも大量のバラスト水が存在する。
このため、万一の炉心溶融により、溶融炉心がコアキャッチャーへ落下した場合であっても、溶融炉心をコアキャッチャー経由でバラスト水により冷却可能である。よって、このような浮体式原子力発電システムであれば、炉心溶融に有利に対抗可能であると言える。
【0010】
なお、コアキャッチャーは、鋼鉄製であり、原子炉が収まる格納容器内の底面部分を形成する鋼板と、鋼板の下面において船底バラストタンク内に立設される伝熱板と、を有するものであってもよい。鋼鉄は強度がありながら伝熱性にも優れる。このため、コアキャッチャーがこのような鋼板と伝熱板で形成されていれば、万一の炉心溶融により、溶融炉心がコアキャッチャーへ落下した場合であっても、溶融炉心をコアキャッチャー経由でバラスト水により効果的に冷却可能である。
【0011】
また、上記の浮体式原子力発電システムは、浮体の周囲の水を格納容器内へ流入させる連通弁を有するものであってもよい。このような浮体式原子力発電システムであれば、格納容器内の水が失われる状況であっても、連通弁の開弁により浮体の周囲の水を格納容器内へ流入させることが可能である。よって、このような浮体式原子力発電システムであれば、炉心溶融に至る可能性のある格納容器内の水の喪失を可及的に抑制できる。したがって、このような浮体式原子力発電システムであれば、炉心溶融に有利に対抗可能であると言える。
【0012】
また、上記の浮体式原子力発電システムは、浮体を沈没させる沈没手段を更に備えるものであってもよい。このような浮体式原子力発電システムであれば、浮体の沈没により原子炉を浮体と共に沈没させることができる。よって、このような浮体式原子力発電システムであれば、炉心溶融に至る可能性のある格納容器内の水の喪失を可及的に抑制できる。したがって、このような浮体式原子力発電システムであれば、炉心溶融に有利に対抗可能であると言える。
【発明の効果】
【0013】
上記の浮体式原子力発電システムであれば、炉心溶融に有利に対抗可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る浮体式原子力発電システムの機器配置を示した概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る浮体式原子力発電システムの系統構成を示した概略図である。
【
図3】
図3は、浮体が方向転換する様子を示した図である。
【
図4】
図4は、浮体式原子力発電システムに津波が到来した際の様子を例示した図である。
【
図5】
図5は、浮体式原子力発電システム1に備わる除塵装置の一例を示した図である。
【
図6】
図6は、IC/PCCSプールを横方向から示した図である。
【
図7】
図7は、IC/PCCSプールを上方向から示した図である。
【
図8】
図8は、圧力容器の底部から溶融炉心が落下する様子を示した図である。
【
図9】
図9は、格納容器の冠水機能に関する説明図である。
【
図10】
図10は、浮体式原子力発電システムの沈没機能に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
<機器配置の概要>
図1は、実施形態に係る浮体式原子力発電システム1の機器配置を示した概略図である。
図1(A)では、浮体式原子力発電システム1に備わる各種機器類のレイアウトを上方から見た場合について示している。また、
図1(B)では、浮体式原子力発電システム1に備わる各種機器類のレイアウトを側方から見た場合について示している。
【0017】
浮体式原子力発電システム1は、海上に浮かべることが可能な浮体式の発電システムである。このため、浮体式原子力発電システム1は、浮体2を備える。浮体2は、
図1(A)を見ると判るように、流線形の浮体となっている。しかし、浮体2は、海上を自律航行することを目的とした船舶ではない。浮体2は、浮体式原子力発電システム1で発電した電力を陸上へ送電するため、海上で係留された状態で浮遊する。そして、浮体2は、潮流に対する抵抗を抑制するため、長手方向における一端のみが係留され、他端が係留されない状態で海上を浮遊する。このため、浮体2は、海上において、吹き流しのように浮遊する。すなわち、浮体2は、潮流を受けると、係留されている部分が自然に潮流の上流側を向く姿勢で海上を浮遊する。
【0018】
浮体2がこのような流線形の浮体であるため、本実施形態では、便宜上、浮体2の長手方向のうち係留されている部分の方を「船首側」と称し、係留されていない部分の方を「船尾側」と称する。よって、
図1においては、紙面左側が「船首側」、紙面右側が「船尾側」となる。また、
図1(B)については、浮体2の左舷側から見た場合における浮体式原子力発電システム1の内部構成を示すことになる。
【0019】
なお、本実施形態では、流線形の浮体2を例示するが、浮体2は、非流線形の浮体であってもよい。浮体式原子力発電システム1に用いる浮体2としては、例えば、上面視円形の円筒状の浮体、上面視方形の直方体状の浮体、その他各種形状の浮体であってもよい。
【0020】
浮体式原子力発電システム1は、
図1に示すように、浮体2の中央部付近に配置される原子炉3と、原子炉3よりも船首側に配置されるタービン発電機4とを備える。原子炉3は、核分裂によって発生する熱で水を沸騰させることにより、蒸気を発生する。タービン発電機4は、蒸気駆動のタービンで発電機を回転させることにより、発電する。なお、本実施形態では、原子炉3の蒸気でタービン発電機4を駆動する沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)の浮体式原子力発電システム1を例示するが、浮体式原子力発
電システム1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)であ
ってもよいし、その他各種の方式を用いたものであってもよい。
【0021】
浮体式原子力発電システム1は、上述した浮体2、原子炉3、タービン発電機4の他にも各種の機器類等が備わっている。浮体式原子力発電システム1は、例えば、原子炉3の周辺に原子炉設備エリア5,7、ピット6、燃料プール8を備える。また、浮体式原子力発電システム1は、原子炉3よりも船尾側に配置される淡水化装置9、IC/PCCSプール10、各種設備エリア12、居住エリア13、廃棄物処理室24を備える。また、浮体式原子力発電システム1は、原子炉3とタービン発電機4との間に配置される復水貯蔵タンク14を備える。また、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の船首付近に配置されるレイダウンエリア18、付帯設備エリア19を備える。付帯設備エリア19には、主変圧器20と補助ボイラー21が設けられている。また、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の船首付近の甲板上に軽油タンク23を備える。また、浮体式原子力発電システム1には、浮体2の姿勢を制御するための船首バラストタンク25、船底バラストタンク26、船尾バラストタンク27、側面バラストタンク28を備える。
【0022】
原子炉設備エリア5,7には、原子炉3の格納容器外に設置する各種の原子炉設備が配置される。原子炉設備エリア5,7に配置される機器類としては、例えば、非常用炉心冷却系や残留熱除去系といった各種の原子炉冷却設備のポンプ及び弁、燃料プールを冷却す
るプール水冷却系のポンプ及び弁、制御用圧縮空気設備、換気空調設備、非常用電源となる非常用ディーゼル発電機、蓄電池による直流電源設備、その他の各種設備が配置される。
【0023】
ピット6は、定期検査や燃料交換の際に各種物品を一時的に配置するためのピットである。ピット6に配置する物品としては、例えば、原子炉3内において核燃料の上方に配置される汽水分離機や蒸気乾燥器などが挙げられる。
【0024】
燃料プール8は、未使用あるいは使用済の核燃料を保管するためのプールである。原子炉3の核燃料は、燃料集合体の形態となっている。このため、燃料プール8には、燃料集合体同士を適正な間隔で収めるためのラックが設けられている。また、燃料プール8の上部には、燃料集合体を原子炉3と燃料プール8との間で移送するための燃料交換機が設けられている。
【0025】
淡水化装置9は、海水を淡水化する装置である。浮体式原子力発電システム1は、海上に浮かべた状態で使用されるので、陸上にある施設のように、塩分を殆ど含まない淡水を河川から得ることができない。このため、浮体式原子力発電システム1は、原子炉冷却水やその他各種の水を確保するために、海水から塩分を除去して淡水化するための淡水化装置9を備えている。淡水化装置9の淡水化方式としては、逆浸透膜法や蒸発法といった各種方式が適用可能である。
【0026】
IC/PCCSプール10には、IC熱交換器及びPCCS熱交換器が配置される。IC熱交換器は、非常用復水器(IC:Isolation Condenser)の設備であり、全交流電源
喪失等が発生して格納容器が隔離状態となった場合に原子炉3を冷却する。PCCS熱交換器は、静的格納容器冷却系(PCCS:Passive Containment Cooling System)の設備であり、過酷事故時等に格納容器内へ放出される水蒸気を冷却する。
【0027】
各種設備エリア12には、浮体式原子力発電システム1の運転操作を行うための中央制御室、放射線管理区域への入退域を管理するための入退域管理室、その他各種の設備が設けられている。なお、前述した非常用ディーゼル発電機や直流電源設備は、原子炉設備エリア5,7ではなく各種設備エリア12に設けられていてもよい。
【0028】
居住エリア13には、浮体式原子力発電システム1に滞在する運転員等が居住するための居住設備が配置される。居住設備としては、例えば、寝台などが配置された個室、調理機器などが配置された食堂、入浴設備、娯楽設備、その他各種の設備が挙げられる。
【0029】
廃棄物処理室24には、放射性廃棄物を処理するための各種設備が配置される。廃棄物処理室24で処理される放射性廃棄物としては、例えば、放射線管理区域で発生する廃液等の液体廃棄物、各種作業に伴って発生する廃材等の雑固体廃棄物が挙げられる。これらの廃棄物は、廃棄物処理室24において蒸発濃縮、圧縮あるいは焼却等により減容されて浮体2内に保管された後、浮体2から搬出される。
【0030】
復水貯蔵タンク14は、原子炉3へ給水可能な水を貯蔵するタンクである。復水貯蔵タンク14は、タービン発電機4の復水器や緊急用の炉心冷却システムと接続されており、通常運転中における復水器への水補給や緊急時における原子炉3への注水等に利用される。
【0031】
レイダウンエリア18は、タービン発電機4等の各種大型機器の分解点検を行うための作業スペースである。レイダウンエリア18は、タービン発電機4のオペレーティングフロアと同床のスペースとなっており、オペレーティングフロアの上部に設置されているク
レーン設備で大型機器を容易に移送可能となっている。
【0032】
付帯設備エリア19には、主変圧器20や補助ボイラー21といった各種の付帯設備が配置される。主変圧器20は、タービン発電機4で発電した電気を電力系統の電圧へ昇圧するための変圧器である。また、補助ボイラー21は、軽油を燃焼させて発生した熱で蒸気を発生させるボイラーである。
【0033】
浮体式原子力発電システム1は、浮体2の船首側に設けられたアンカーチェーン22で海上に係留される。そして、前述したとおり、浮体式原子力発電システム1は、潮流を受けると、係留されている部分が自然に潮流の上流側を向く姿勢で海上を浮遊する。このため、浮体式原子力発電システム1と陸上の電力系統とを接続するための海底ケーブルは、アンカーチェーン22と同様、浮体2の船首付近から海底に向かって垂下される。このため、タービン発電機4で発電した電気を電力系統の電圧へ昇圧するための主変圧器20は、
図1に示すように、海底ケーブルに近い浮体2の船首付近に配置されるのが合理的である。
【0034】
また、補助ボイラー21は、浮体式原子力発電システム1の起動時において、タービン発電機4のグランド用蒸気、タービン周辺の水蒸気設備の加温等に利用される。このため、補助ボイラー21についても、タービン発電機4付近に配置されるのが合理的である。
【0035】
このため、浮体式原子力発電システム1では、浮体2の船首側に設けられた付帯設備エリア19に主変圧器20と補助ボイラー21を配置する形態を採っている。また、浮体式原子力発電システム1では、補助ボイラー21へ供給する軽油を蓄えるための軽油タンク23を付帯設備エリア19の上側に配置する形態を採っている。なお、付帯設備エリア19には、主変圧器20と補助ボイラー21のみならず、例えば、海底ケーブルと主変圧器20との電気的な接続を開閉するための断路器(LS:Line Switch)といった開閉設備
が設置されていてもよい。
【0036】
船首バラストタンク25と船底バラストタンク26と船尾バラストタンク27と側面バラストタンク28は、浮体2の姿勢を制御するためのバラスト水を受け入れるためのタンクである。船首バラストタンク25と船底バラストタンク26と船尾バラストタンク27のバラスト水は、浮体式原子力発電システム1の非常時に原子炉3を冷却するための海水として利用することも可能である。船首バラストタンク25と船底バラストタンク26と船尾バラストタンク27への注水は、例えば、浮体2の船底等に設けられた取水口を開くことにより、海水の水圧で自然に行うことが可能である。注水には、必要に応じてポンプ等を併用してもよい。また、船首バラストタンク25と船底バラストタンク26と船尾バラストタンク27からの排水は、ポンプあるいはエゼクターにより行うことが可能である。
【0037】
本実施形態に係る浮体式原子力発電システム1の機器配置の概要については、以上のとおりであるが、上述の機器配置は一例であり、その他の機器配置を採用してもよい。次に、浮体式原子力発電システム1の系統構成の概要について説明する。
【0038】
<系統構成の概要>
図2は、実施形態に係る浮体式原子力発電システム1の系統構成を示した概略図である。浮体式原子力発電システム1は、主に原子炉系Rとタービン系Tで構成されている。前述の原子炉3は、原子炉系Rの主要機器である。また、前述のタービン発電機4は、タービン系Tの主要機器である。
【0039】
原子炉3を擁する原子炉系Rには、格納容器3A、核燃料3B、制御棒3C、再循環ポ
ンプ3D、圧力容器3E等の各種設備が備わっている。また、タービン発電機4を擁するタービン系Tには、タービン発電機4を構成するタービン4A及び発電機4Bの他に、復水器4C、循環水配管4D、循環水ポンプ4E、給水ポンプ4F等の各種設備が備わっている。
【0040】
格納容器3Aは、核燃料3B等を収めた圧力容器3Eを格納する容器であり、原子炉3の溶融事故の際などに圧力容器3Eから放出された放射性物質を閉じ込める役割を果たす。格納容器3Aは、コンクリートで構成してもよいし、或いは、浮体2を構成する鋼材で構成してもよい。格納容器3Aは、原子炉3を収めた圧力容器3Eを中心部に内包し、圧力容器3Eの上側に上部ドライウェル3M、圧力容器3Eの下側に下部ドライウェル3Nを形成する。また、格納容器3Aは、下部ドライウェル3Nの周囲にサプレッションプール3Hを有する。
【0041】
圧力容器3Eは、核燃料3B等を内包する容器であり、原子炉3を冷却するための水や蒸気を閉じ込める役割を果たす。圧力容器3Eの中心部には、核燃料3Bが燃料集合体の形態で数百体配置されることにより、原子炉3の本体が形成される。原子炉3の本体には、圧力容器3Eの下部に設けられた駆動機構によって上下動可能な制御棒3Cが燃料集合体の隙間に挿入される。制御棒3Cが原子炉3から引き抜かれて原子炉3が臨界状態になると、原子炉3が継続的に発熱する。また、制御棒3Cが原子炉3に挿入されて原子炉3が未臨界状態になると、原子炉3の発熱が徐々に減衰する。
【0042】
圧力容器3Eには、再循環ポンプ3Dが設けられている。再循環ポンプ3Dは、圧力容器3E内の液相部で原子炉冷却材である水を強制循環させることにより、原子炉3の熱除去及び原子炉出力の制御を担う。なお、本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)を想定しているため、
図2では再循環ポンプ3Dが圧力容器3Eに設けられた形態となっているが、浮体式原子力発電システム1はこれに限定されない。浮体式原子力発電システム1は、例えば、圧力容器3Eの外側に再循環ポンプや循環配管を配置した再循環系統を有するものであってもよい。
【0043】
圧力容器3Eには、圧力容器3E内で発生した蒸気をタービン系Tのタービン発電機4へ送るための主蒸気管3Lが接続されている。主蒸気管3Lは、格納容器3Aの内外を繋ぐ配管であるため、格納容器3Aを隔離可能にするための主蒸気隔離弁3J,3Kが格納容器3Aの貫通部付近に設けられている。そして、主蒸気隔離弁3J,3Kが閉じている際に圧力容器3Eの内圧が過大になるのを防ぐための逃がし安全弁3Fが主蒸気管3Lの途中に設けられている。逃がし安全弁3Fの下流側にある排気管3Gの端部は、サプレッションプール3H内に配置されている。
【0044】
タービン発電機4を構成するタービン4A及び発電機4Bは、同一の回転軸で繋がっている。タービン4Aは、ケーシング内に羽根車を収めた構造となっている。そして、タービン4Aの下側には、タービン4Aを通過した蒸気を凝縮させるための復水器4Cが設けられている。復水器4C内には、浮体2外装面の喫水線より下側に設けた取水口と放水口とを繋ぐ循環水配管4Dの経路の一部を形成する細管が多数設けられており、循環水配管4Dの経路上に設けられた循環水ポンプ4Eによって送水される海水の冷熱で蒸気を凝縮するようになっている。このため、主蒸気管3Lを通じて原子炉3から供給される蒸気と復水器4C内との圧力差により、発電機4Bを回転させるための動力が羽根車に加わる。これにより、発電機4Bが回転し、発電する。また、復水器4C内で凝縮した復水は、給水ポンプ4Fによって給水配管4G経由で圧力容器3E内へ再び給水される。
【0045】
なお、
図2では原子炉系Rやタービン系Tの概略を示しているに過ぎず、実際には多種
多様な機器が設けられている。例えば、主蒸気管3Lのタービン4A付近には蒸気加減弁やタービンバイパス弁などの重要な機器が設けられている。タービンバイパス弁は、定格出力における主蒸気の全量を、タービン4Aを通らずに復水器4Cへ直接送る100%バイパス可能なものであってもよいし、或いは、それ以下のバイパス能力であってもよい。また、給水配管4Gには給水流量調整弁や復水脱塩装置、給水加熱器などの重要な機器類が設けられている。また、格納容器3Aの内外には、緊急炉心冷却システムの配管などが設けられている。また、タービン4Aは、高圧タービンと複数の低圧タービンが組み合わさっている。
【0046】
また、
図2では各機器が一系統のみ図示されているが、浮体式原子力発電システム1の各機器は多重化されている。例えば、循環水ポンプ4Eや給水ポンプ4Fは複数設けられている。
【0047】
原子炉系Rでは、原子炉3が所定の原子炉出力を維持するように制御棒3Cの位置調整が行われる。また、タービン系Tでは、タービン発電機4が所定の回転速度を維持するように蒸気加減弁の開度調整が行われ、原子炉3が所定の水位を保つように給水ポンプ4Fの給水流量が調整される。浮体式原子力発電システム1は、このように構成されていることにより、原子炉3の核反応によって発生する熱エネルギーを、系統周波数に同期する発電機4Bを通じて電気エネルギーとして電力系統へ送電する。
【0048】
本実施形態に係る浮体式原子力発電システム1の系統構成の概要については、以上のとおりである。次に、浮体式原子力発電システム1の各特長部分の詳細について説明する。
【0049】
<浮体2の形状に関する事項>
前述したように、本実施形態に係る浮体式原子力発電システム1では、流線形の浮体2を用いている。浮体式原子力発電システム1は、海上に係留された状態で使用されるので、原子炉3の崩壊熱を周辺の海水を利用し長期間安定的に除去することで安全性を大きく向上できる。
【0050】
洋上の浮体原子力設備としては、例えば、船舶型のバージに原子力発電所を搭載したロシアのアカデミック・ロモノソフが2020年に営業運転を開始している。日本でも1990年代に平板状のバージ浮体上に原子力発電所を設置する設計が検討されている。しかしながら、船舶型や平板型のバージ上の原子力発電所は、陸上の原子力発電所と同様に原子炉の位置が海面よりも高い位置にある。このため、船舶型や平板型のバージ上の原子力発電所において原子炉の冷却に海水を利用するには、揚水のために電気やエンジン等の動力を必要とする。このため、長期間安定的な冷却を維持するには、外部からの電気や燃料の補給を必要とする点で課題がある。
【0051】
この課題を克服する設計として、マサチューセッツ工科大学(以下、「MIT」)のBuongiorno教授らが、海洋での石油掘削に用いられる円筒形の浮体構造に原子炉システムを内包させる設計を考案している。しかしながら、MITの提案する円筒形の浮体構造は、下部に原子炉を配置し、上部に蒸気タービンと発電機を配置する。そして、蒸気タービンと発電機は、重量物である。このため、このような重量物を上部で支持する構造の実現が難しい。また、円筒形の浮体構造は、上面視略円形であるため、横長の一般の造船ドックで製造する際にはドック内にデッドスペースが生じて製造効率が劣る。また、下部に原子炉を配置し、上部に蒸気タービンと発電機を配置する構造では、喫水が大型船舶の数倍の深さになり、製造が難しくなることなどの課題がある。
【0052】
そこで、本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、流線形の浮体2を採用し、大型タンカーと同様の二重船殻構造の浮体2内に原子炉3やタービン発電機4等の原子力発
電用の設備を配置する。本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、
図1(B)に示したように、原子炉3が海水面よりも下側に配置される。このため、船舶型や平板型のバージでは実現できない、電気やエンジン等の動力を必要としない受動的な海水への熱交換システムを実現することが可能である。本実施形態の浮体式原子力発電システム1で実現される受動的な熱交換システムの詳細については後述する。
【0053】
また、前述したように、浮体2は、海上においてアンカーチェーン22により係留されるため、吹き流しのように浮遊する。
図3は、浮体2が方向転換する様子を示した図である。浮体2は、潮流を受けると、アンカーチェーン22によって係留されている船首が自然に潮流の上流側を向く姿勢で海上を浮遊する。これにより、流線形の浮体形状が抵抗を減じるので、アンカーチェーン22に加わる張力を可及的に抑制することが可能となる。
【0054】
流線形の浮体2を採用することによる浮体式原子力発電システム1の優位性は、上述したような係留状態における潮流への抵抗力の緩和の他にも幾つかある。例えば、浮体2が流線形であることにより、一般的な横長の造船ドックで浮体式原子力発電システム1を製造する際にはドック内のスペースを最大限に有効活用できるため、浮体式原子力発電システム1を効率的に製造可能である。すなわち、造船ドックにおいて、複数のクレーンを用いることにより、例えば、原子炉3付近の製造作業とタービン発電機4付近の製造作業とを同時進行で行うことなどが可能となる。また、造船ドックという集中的な製造拠点で浮体式原子力発電システム1を製造することにより、製造品質の向上や製造コストの低減も期待できる。浮体式原子力発電システム1は、海上輸送が可能であるため、海に接する国へ容易に輸出可能である。このため、集中的な製造拠点で製造された浮体式原子力発電システム1を海上輸送で輸出すれば、世界各地に製造拠点を設ける場合に比べて、品質とコストの何れにおいても優位である。
【0055】
また、流線形の浮体2を採用することによる浮体式原子力発電システム1のその他の優位性としては、例えば、海上における物資の積み下ろしの容易性が挙げられる。すなわち、流線形の浮体2であれば、左舷と右舷は概ね直線状であるため、左舷または右舷に他の船舶を横付けすることが容易である。船舶を浮体2の左舷または右舷に横付けできれば、直線状の舷同士が接する状態で積み荷の移載が可能となるため、例えば、運転員の食糧、補助ボイラー21や非常用ディーゼル発電機等で消費する軽油、水質管理等に用いる薬品、核燃料を格納したキャスク、その他各種の保守部品等の移載が容易である。
【0056】
また、流線形の浮体2を採用することによる浮体式原子力発電システム1のその他の優位性としては、例えば、原子炉3やタービン発電機4といった浮体式原子力発電システム1の各種設備のレイアウトの優位性が挙げられる。浮体式原子力発電システム1では、原子炉3で発生した蒸気がタービン発電機4へ送られ、タービン発電機4で発生した電気が主変圧器20で変圧されて海底ケーブルへ送られる。各設備がこのように連携する浮体式原子力発電システム1では、原子炉3、タービン発電機4、主変圧器20といった機器が順に並んでいる方が合理的である。この点、流線形の浮体2であれば、船尾から船首の方へ向かって順に原子炉3、タービン発電機4、主変圧器20を並べることが可能である。また、流線形の浮体2であれば、
図2に示すように、タービン発電機4を回転軸が浮体2の長手方向沿いとなるように配置可能である。このため、回転中にタービンブレードが破断するタービンミサイルが万一発生した場合であっても、タービンブレードが原子炉3の方へ飛ぶ可能性を無くすことができる。なお、浮体式原子力発電システム1では、タービンミサイルが発生しないよう、タービンブレードが貫通しない十分な強度のケーシングが採用されている。
【0057】
<浮体2の係留に関する事項>
次に、流線形の浮体2を係留するために浮体式原子力発電システム1に設けられている
特徴的な事項について述べる。浮体式原子力発電システム1は、流線形の浮体2を係留する形態を採っているため、浮体2の姿勢制御を自力で行うための装置が備わっている。浮体2の姿勢制御を行うための装置としては、例えば、スラスタが挙げられる。推進方向を自在に旋回可能な電動式スクリューのスラスタを浮体2に設けておけば、浮体2を係留部分回りで自在に方向転換したり、浮体2の位置を制御したりすることが可能である。また、浮体2にスラスタが設けられていれば、アンカーチェーン22が破断した際、浮体2を定点に維持し続けることが可能となる。
【0058】
また、浮体2の姿勢制御を自力で行うための装置としては、例えば、循環水ポンプ4Eを用いることも可能である。循環水ポンプ4Eは、原子力発電用の設備としては最大級の冷却能力を有する復水器4Cへ海水を送水するポンプである。このため、循環水ポンプ4Eは、浮体式原子力発電システム1に備わるポンプとしては最大級の容量を有しており、循環水配管4Dの取水口や放水口の配置によっては浮体2を海上で動かし得る。そこで、本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、
図3に示すように、左舷側の取水口4DSLと右舷側の放水口4DHRとを繋ぐ循環水配管4Dに設けられた循環水ポンプ4ELが海水を左舷側から右舷側へ向かって送水し、右舷側の取水口4DSRと左舷側の放水口4DHLとを繋ぐ循環水配管4Dに設けられた循環水ポンプ4ERが海水を右舷側から左舷側へ向かって送水するように循環水系統が設けられている。浮体2の方向(姿勢)を潮流に任せる平時においては、循環水ポンプ4ELの流量と循環水ポンプ4ERの流量を平衡にすることで、循環水ポンプ4Eによる送水がシンメトリーに行われるようにする。そして、浮体2を左舷側へ移動させたい場合には、循環水ポンプ4ELの流量が循環水ポンプ4ERの流量よりも多くなるように循環水配管4Dの流量調整を行う。また、浮体2を右舷側へ移動させたい場合には、循環水ポンプ4ERの流量が循環水ポンプ4ELの流量よりも多くなるように循環水配管4Dの流量調整を行う。循環水配管4Dの流量調整は、例えば、タービン発電機4に設けた流量調整弁の開度調整、或いは、循環水ポンプ4ERの停止等により行うことができる。このような流量調整による浮体2の方向制御は、係留部分回りにおける方向転換のみならず、浮体2の位置ずれの修正においても有効である。
【0059】
浮体2の姿勢制御を自力で行うための装置としては、循環水ポンプ4E以外に、例えば、原子炉補機冷却系(RCW:Reacter building Cooling Water system)用の原子炉補
機冷却海水ポンプ(RSW)、タービン補機冷却系(TCW:Turbine building Cooling
Water system)用のタービン補機冷却海水ポンプ(TSW)が挙げられる。本実施形態
の浮体式原子力発電システム1では、循環水ポンプ4Eと同様、原子炉補機冷却海水ポンプやタービン補機冷却海水ポンプを位置制御に使用することも可能である。本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、原子炉補機冷却海水ポンプとタービン補機冷却海水ポンプをそれぞれ複数有しており、一方の海水ポンプが海水を左舷側から右舷側へ向かって送水し、他方の海水ポンプが海水を右舷側から左舷側へ向かって送水する。よって、浮体2の位置に応じて各海水ポンプの流量が調整されれば、浮体2の位置ずれの修正が可能となる。
【0060】
なお、本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、タービン4Aとして3つの低圧タービンを有するものを想定している。そして、各低圧タービンの下側に配置される3つの復水器4Cには、多重化のために循環水配管4Dが2系統ずつ接続されている。このため、
図3では、6つの循環水配管4Dと循環水ポンプ4E(4EL、4ER)が図示されている。しかし、本実施形態の浮体式原子力発電システム1は、これに限定されるものではない。循環水配管4Dと循環水ポンプ4Eは、シンメトリーに設けられていればよく、例えば、4つ以下であってもよいし、8つ以上であってもよい。また、
図3では、取水口4DSLと放水口4DHLが互いに近接した状態で配置されているが、ショートサーキット現象を抑制するために、互いに離間した状態で配置されるか、或いは、開口方向が浮体2の側方と下方といった具合に互い違いになるように設けてもよい。
【0061】
浮体2の方向転換を行うためのその他の装置としては、タグボートが挙げられる。タグボートを浮体2に常時繋いでおけば、浮体2の方向転換のみならず、例えば、浮体式原子力発電システム1が設置されている海域で緊急事態が発生した場合に、アンカーチェーン22を切断して浮体式原子力発電システム1を速やかに移動させることが可能である。特定の海域で発生し得る緊急事態としては、例えば、海底火山の噴火といった自然災害の発生、テロリストや軍隊による武力攻撃事態の発生等が挙げられる。なお、浮体式原子力発電システム1を狙った武力攻撃事態への対応としては、例えば、浮体式原子力発電システム1から所定距離の範囲内に船舶等の進入を制限する区域を設定して海上交通を監視したり、或いは、浮体式原子力発電システム1の周囲に水雷防御網を設けて魚雷や不審船の接近を阻止したりするなどの対策を講ずることが望ましい。
【0062】
浮体2の方向転換が可能な場合、例えば、次のような対応が可能となる。
図4は、浮体式原子力発電システム1に津波が到来した際の様子を例示した図である。
図4(A)では浮体式原子力発電システム1を上側から見た様子を示し、
図4(B)では浮体式原子力発電システム1を側方から見た様子を示している。
【0063】
例えば、
図4(A)に示すように、潮流が
図4の紙面において右下へ向かって流れているものとする。この場合、アンカーチェーン22によって係留されている浮体式原子力発電システム1は、潮流により、
図4(A)の符号P1で示す状態、すなわち、浮体2の船首を左上へ向けた状態で浮遊する。この状態において、例えば、
図4の紙面において左側を中心とする地震或いは台風が発生し、右へ向かう津波が発生したと仮定する。
【0064】
浮体2の船首を左上へ向けた状態で浮体式原子力発電システム1がこの津波を受けると、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の左舷側から津波を受けることになる。このため、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の左舷側から受けた津波により、右舷側へ傾く可能性がある。一方、津波の発生を捉えて浮体2の方向転換を直ちに開始し、
図4(A)の符号P2で示す状態、すなわち、浮体2の船首を左へ向けた状態にすれば、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の船首側から津波を受けることになる。このため、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の左舷側と右舷側の何れか傾く可能性を可及的に抑制することが可能となる。浮体式原子力発電システム1は、浮体2が船首から船尾まで長尺なため、浮体2の船首側から津波を受けても
図4(B)に示すように浮体式原子力発電システム1が前後方向に傾くことは殆どない。
【0065】
なお、
図4では浮体式原子力発電システム1が陸地から比較的近い箇所に図示されているが、浮体式原子力発電システム1は、陸地から数十km以上離れた沖合に係留されることが好ましい。津波は、
図4(B)にも示すように、水深の浅い陸地へ近づくに従って徐々に大きくなる性質がある。このため、浮体式原子力発電システム1を陸地から数十km以上離れた水深の深い沖合に係留すれば、海底の地形にもよるが、浮体式原子力発電システム1が受ける津波の大きさを比較的小さくすることが可能である。
【0066】
浮体式原子力発電システム1を係留するのに好適な陸地からの距離は、例えば、30km以上であることが好ましい。陸地から30km以上離れた海上に浮体式原子力発電システム1を係留すれば、日本の法律で要求される避難計画策定範囲に居住区域が存在しないことになる。これは、換言すると、浮体式原子力発電システム1で仮に大規模な事故が発生した場合においても、陸上の住民が避難する必要のある事態に陥ることが殆ど無いと言える。
【0067】
ところで、浮体式原子力発電システム1で用いる海水を取り込む取水口には、海水中の塵芥(海藻、クラゲ、小魚、廃棄物等)を除去する除塵装置を設けることが好ましい。そ
こで、浮体式原子力発電システム1では、循環水配管4Dの取水口4DSL,4DSRや、原子炉3周辺の補機類などに冷熱を供給するための原子炉補機冷却海水系の取水口に、除塵装置が設けられている。
図5は、浮体式原子力発電システム1に備わる除塵装置の一例を示した図である。
【0068】
図5に示すように、除塵装置29には、除塵ピット29A、インレット29C、サイクロン29D、沈殿槽29E、排出扉29G、アウトレット29Hが備わっている。
【0069】
除塵ピット29Aは、浮体2の船底または船側に設けられる空間であり、浮体2周辺の海水によって常に満たされる部位である。除塵ピット29Aの中心部には、サイクロン29Dが設けられている。サイクロン29Dは、循環水ポンプ4Eといった海水系のポンプに繋がるアウトレット29Hの開口端に位置している。サイクロン29Dは、円錐状の内部形状を有しており、最外径の部分において接線方向沿いに開口するインレット29Cを有している。このため、除塵ピット29A内が海水で満たされている状態で海水系のポンプが作動し、アウトレット29Hに海水が吸引されると、インレット29Cから流入する海水によりサイクロン29D内で螺旋状の水流が発生する。螺旋状の水流が発生することにより、海水よりも比重の大きい塵芥Dがサイクロン29D内で遠心分離され、サイクロン29Dの下側に設けられた沈殿槽29Eへ沈降する。沈殿槽29Eの下部には、開閉式の排出扉29Gが設けられている。このため、排出扉29Gを適宜開くことにより、沈殿槽29E内に溜まった塵芥Dを沈殿槽29Eから排出可能である。取水口が浮体2の船底に設けられている場合、浮体2の排水量にもよるが、取水口が例えば水深約80~100m程度に位置することになるため、海表面付近に多い塵芥を吸い込む可能性が低い。前述した水雷防御網による大量の回遊魚の侵入防止効果なども組み合わせることで、取水口に侵入する塵芥を可及的に抑制可能である。
【0070】
なお、除塵装置29には、比較的大きい塵芥Dが除塵ピット29A内に流入するのを防ぐストレーナー29Fが設けられている。また、除塵装置29には、比較的大きい塵芥Dがインレット29Cに流入するのを防ぐストレーナー29Bが設けられている。よって、遠心分離に適しない大きさの塵芥Dについては、ストレーナー29Fやストレーナー29Bにより除去可能である。
【0071】
なお、浮体式原子力発電システム1は、このような除塵装置29を備えたものに限定されるものではない。浮体式原子力発電システム1は、例えば、無端状のスクリーンを回転させる方式の除塵装置(トラベリングスクリーン)や、その他の方式の除塵装置を用いたものであってもよい。
【0072】
<炉心冷却に関する事項>
次に、浮体式原子力発電システム1に備わる炉心冷却設備について説明する。通常運転中の原子炉3は復水器4Cの冷熱によって冷却されるが、通常停止時や緊急停止時には、復水器4C以外の各種冷却設備によって原子炉3の冷却が行われる。原子炉3の緊急時に用いられる冷却設備は、非常用炉心冷却設備(ECCS: Emergency Core Cooling System)と呼ばれ、例えば、高圧注水系、隔離冷却系、低圧注水系といった各種の冷却設備で構成されている。ここでは、浮体式原子力発電システム1に備わる各種冷却設備においても特に特徴的な事項について説明する。
【0073】
前述したとおり、浮体式原子力発電システム1には、非常用復水器および静的格納容器冷却系が備わっている。浮体式原子力発電システム1は、海上に浮かぶ浮体式の形態を採っているため、原子炉3の崩壊熱を周辺の海水を利用し長期間安定的に除去することで安全性を大きく向上できる。このため、浮体式原子力発電システム1では、IC/PCCSプール10に海水を流入させることが可能となっている。そして、IC/PCCSプール
10に海水を流入させた場合は、海水の密度差による自然循環力で冷却が継続可能なようにしている。このため、浮体式原子力発電システム1では、IC/PCCSプール10が以下のように設けられている。
【0074】
図6は、IC/PCCSプール10を横方向から示した図である。また、
図7は、IC/PCCSプール10を上方向から示した図である。
図6では、IC/PCCSプール10と圧力容器3Eと海面の高さ方向における位置関係が示されている。
【0075】
図6及び
図7を見ると判るように、IC/PCCSプール10には非常用復水器30AとPCCS用熱交換器30Dが配置されている(
図6では、紙面のスペースの都合でPCCS用熱交換器30Dの図示を省略している)。そして、非常用復水器30AとPCCS用熱交換器30Dが配置されているIC/PCCSプール10は、炉心Cよりも高い。そして、IC/PCCSプール10には、側面バラストタンク28と連通させるための連通弁10A、浮体2の周辺(海)と連通するための連通弁10B,10C、大気と連通するための大気開放管10Dが設けられている。また、非常用復水器30Aは、圧力容器3Eの上部付近に繋がる配管30Bと、圧力容器3Eの下部付近に繋がる配管30Cを介して圧力容器3E内と接続されている。
【0076】
IC/PCCSプール10内は、通常は淡水で満たされている。そして、浮体式原子力発電システム1は、全交流電源喪失に陥った場合であっても、配管30Bと配管30Cを開くことにより、原子炉3を非常用復水器30Aで冷却可能である。また、IC/PCCSプール10には、復水貯蔵タンク14と接続するための経路も設けられている。よって、浮体式原子力発電システム1が全交流電源喪失に陥り且つIC/PCCSプール10の淡水が減少した場合であっても、復水貯蔵タンク14に蓄えられている淡水により原子炉3の冷却を続けることが可能である。しかし、IC/PCCSプール10や復水貯蔵タンク14の淡水が沸騰により減少してもなお全交流電源喪失が続いている場合、淡水による原子炉3の冷却を継続できない場合が生じ得る。このような場合であっても、浮体式原子力発電システム1は、連通弁10Aを開くことにより、IC/PCCSプール10内をバラスト水で満たすことが可能である。また、浮体式原子力発電システム1は、連通弁10Bと連通弁10Cを開くことにより、IC/PCCSプール10内を浮体2周辺の海水で満たすことが可能である。IC/PCCSプール10内が淡水と海水の何れかで満たされていれば、非常用復水器30Aを使った炉心Cの冷却を継続可能である。なお、浮体式原子力発電システム1は、浮体2の周囲から側面バラストタンク28内へ海水を流入させるための弁を適宜の箇所に有しており、側面バラストタンク28内の海水が減少しても適時補給可能である。
【0077】
なお、本実施形態に係る浮体式原子力発電システム1は、非常用復水器30Aが圧力容器3E内の蒸気の凝縮、PCCS用熱交換器30Dが格納容器3A内の蒸気の凝縮を担う形態に限定されるものではない。一次系バウンダリが健在な際の炉心Cの冷却に用いる非常用復水器30Aと、一次系バウンダリが破損した際の格納容器3Aの冷却に用いるPCCS用熱交換器30Dは、弁の開閉による系統構成の切替により、互いの機能を補完或いは交換してもよい。すなわち、弁の開閉により、非常用復水器30Aを格納容器3A内の上部(上部ドライウェル3M)及び下部(サプレッションプール3H)に連通させてもよい。また、弁の開閉により、PCCS用熱交換器30Dを圧力容器3E内の上部及び下部に連通させてもよい。このような系統構成の切替を行うための弁は、直流電源を用いた電動弁であってもよいし、或いは、手動弁であってもよい。
【0078】
また、浮体式原子力発電システム1では、連通弁10Bと連通弁10Cに高低差を設けている。このため、非常用復水器30Aにより加熱されるIC/PCCSプール10内の海水は、温度差による海水の密度差で対流が発生するが、連通弁10Bと連通弁10Cと
の高低差により、IC/PCCSプール10内の海水が浮体2周辺の海水と自然に入れ替わる効果が期待できる。
【0079】
なお、非常用復水器30AやPCCS用熱交換器30Dの表面に塩が析出すると熱交換能力を低下させる恐れがある。よって、IC/PCCSプール10内に海水を流入させる場合、海水の蒸発による塩の析出を防ぐことが好ましい。塩の析出は、非常用復水器30AやPCCS用熱交換器30Dの熱交換面における海水の沸騰(ボイドの発生)を防ぐことにより抑制可能である。そこで、IC/PCCSプール10内の海水の温度上昇を抑制するべく、連通弁10A,10B,10Cには大口径の弁を用いるとよい。例えば、連通弁10B,10Cに大口径の弁を用いれば、IC/PCCSプール10内の海水が浮体2周辺の海水と入れ替わりやすいため、IC/PCCSプール10内の海水の温度上昇を可及的に抑制可能である。また、非常用復水器30AやPCCS用熱交換器30Dの冷却に海水を用いる場合、このような塩の析出が生じ得るため、原子炉3を緊急停止した直後の崩壊熱が比較的大きい初期段階においては淡水による冷却を試み、淡水が蒸発等により減少し且つ原子炉3の崩壊熱も小さくなった段階で海水による冷却を開始することが好ましい。
【0080】
このように、浮体式原子力発電システム1には、地上に設置される原子力発電所に比べて、浮体式の利点を生かして海水による冷却を容易にするための各種設備が設けられている。よって、浮体式原子力発電システム1は、原子炉3の崩壊熱を周辺の海水を利用し長期間安定的に除去可能であると言える。連通弁10A,10B,10Cの開弁による海水利用機能は、IC/PCCSプール10のみならず、例えば、燃料プール8に用いてもよい。
【0081】
なお、IC/PCCSプール10に海水を導入するという設計思想は、加圧水型原子炉の場合にも流用できる。例えば、浮体式原子力発電システム1が加圧水型原子炉である場合は、原子炉が設けられる一次冷却系と、タービンが設けられる二次冷却系との間で熱交換を行う蒸気発生器の二次側に、二次冷却系の復水の代わりに海水を導入する。これにより、二次冷却系の復水が喪失した場合であっても、蒸気発生器の二次側に導入した海水で一次冷却系の冷却材を冷却することが可能となる。
【0082】
<事故対策に関する事項>
次に、浮体式原子力発電システム1に備わる事故対策設備について説明する。前述したように、浮体式原子力発電システム1には原子炉3を冷却するための十分な設備が備わっているが、万一の深刻な事故を想定した各種対策が下記のとおり施されている。
【0083】
<コアキャッチャー>
図8は、圧力容器3Eの底部から溶融炉心が落下する様子を示した図である。原子炉3で炉心が溶融した場合、圧力容器3Eの底部が損傷し、
図8に示すように、圧力容器3Eの下に溶融炉心が落下する場合がある。圧力容器3Eの下に溶融炉心が落下すると、圧力容器3Eの下側にある浮体2の構造材が加熱される。しかし、浮体2は、前述したように二重船殻構造となっており、浮体2の底部には船底バラストタンク26が設けられている。そして、下部ドライウェル3Nの底面を形成する浮体2の鋼板26Aの下面には、船底バラストタンク26内に立設される多数の伝熱板26Bが接合されている。このため、鋼板26Aは、伝熱板26Bによって強固に補強された形態となっている。なお、
図8では、船底バラストタンク26内が伝熱板26Bによって仕切られているように図示されているが、伝熱板26Bの各所にはバラスト水を流通させるための通水口が設けられている。このため、バラスト水は、伝熱板26Bによって流通を阻害されることなく、船底バラストタンク26内で自在に流通可能である。
【0084】
鋼板26Aと伝熱板26Bによって形成される下部ドライウェル3Nの底面は、コアキャッチャーとして機能する。そして、鋼板26Aと伝熱板26Bは、船底バラストタンク26内のバラスト水に接している。よって、下部ドライウェル3Nの底部は、船底バラストタンク26のバラスト水へ放熱するためのヒートシンクとして機能することになる。このため、炉心溶融により溶融炉心が圧力容器3Eから落下した場合、圧力容器3Eから落下した溶融炉心は、鋼板26Aや伝熱板26Bを介して船底バラストタンク26内のバラスト水へ伝熱される。
【0085】
圧力容器3Eの底部から落下する溶融炉心が大量の水に直接触れると、水蒸気爆発や大量の水素が発生する懸念がある。このため、溶融炉心に対して注水を試みる場合は、適切な水量に制限するといった対応を採る必要がある。しかし、炉心溶融という過酷事故の進展中にこのような注水量の制御を行うことは容易でない。
【0086】
この点、本実施形態の浮体式原子力発電システム1であれば、下部ドライウェル3Nの底面を形成する鋼鉄製の鋼板26A及び伝熱板26Bが、コアキャッチャーとしてのみならず、船底バラストタンク26内のバラスト水へ放熱するためのヒートシンクとしても機能する。このため、下部ドライウェル3Nの底面に落下した溶融炉心は、安定的に冷却されて固化し、燃料デブリとして堆積する。そして、この冷却方式においては、溶融炉心と大量の水が直接接触することがないため、水蒸気爆発や大量の水素を発生させる可能性が低い。
【0087】
また、本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、圧力容器3Eを支持するペデスタルを鋼鉄製にすることで、圧力容器3E内の溶融炉心の熱がペデスタル経由でサプレッションプール3Hへも伝熱されるようになっている。このように、本実施形態の浮体式原子力発電システム1では、炉心溶融が発生した場合においても、船底バラストタンク26内の水やサプレッションプール3H内の水を活用した静的な溶融炉心対策が施されている。なお、ペデスタルが燃料デブリに接触することによる影響を可及的に抑制するために、ペデスタルの内側に円筒状の隔壁を設置しておき、燃料デブリの熱を伝熱管などでサプレッションプール3Hへ伝熱するようにしてもよい。このような隔壁と伝熱手段が設けられていれば、万一炉心溶融が発生した場合であってもペデスタルの健全性を維持可能である。
【0088】
<格納容器3Aの冠水機能>
図9は、格納容器3Aの冠水機能に関する説明図である。浮体式原子力発電システム1は、原子炉3が海面より低い位置となるように設計されている。このため、浮体式原子力発電システム1には、格納容器3A内を海水で満たす機能が備わっている。すなわち、浮体式原子力発電システム1には、格納容器3A内と浮体2の周囲(海)とを繋ぐ海水流入管3APが備わっている。海水流入管3APの途中には、海水流入弁3AVが備わっている。
【0089】
通常状態においては海水流入弁3AVが閉じられており、
図9(A)に示されるように、格納容器3A内に海水が流入することは無い。ここで、何らかの事故により、圧力容器3E内に水を注入する手段が全て失われた場合、海水流入弁3AVを開く。海水流入弁3AVを開くと、浮体2の周囲にある海水が格納容器3A内に流入する。前述したように、原子炉3は海面より低い位置にある。よって、海水流入弁3AVを開くことにより、
図9(B)に示されるように、格納容器3A内の殆どが海水で満たされ、圧力容器3Eの外側から圧力容器3E内の炉心Cを間接的に冷却することが可能となる。なお、格納容器3A内を海水で満たす際、格納容器3A内の空気が抜けるようにするために、浮体式原子力発電システム1には、海水流入管3APが上下2段で設けられている。これにより、格納容器3Aに海水が流入し始めた初期状態においては、上段側の海水流入管3APが空気抜き
経路となり、格納容器3A内の空気が排出される。そして、格納容器3A内が海水で満たされると、格納容器3A内が冠水した状態となる。なお、格納容器3A内の空気抜き用に、海水流入弁3AV以外のベント弁を設けてもよい。空気抜き経路の途中には、空気中に含まれる放射性物質を除去するためのフィルターベント装置を設けてもよい。
【0090】
<浮体式原子力発電システム1の沈没機能>
図10は、浮体式原子力発電システム1の沈没機能に関する説明図である。浮体式原子力発電システム1には、浮体2を沈没させる機能が備わっている。浮体2の沈没は、例えば、浮体2の内外を連通させる弁の開放、船底の破壊、その他各種の方法により浮体2内を海水で満たすことにより実現できる。
【0091】
浮体式原子力発電システム1は、海上で浮かぶ形態を採用しているため、何らかの事故によって圧力容器3E内に水を注入する手段が全て失われた場合、例えば、
図10(A)に示すように、浮体式原子力発電システム1を沈没させてもよい。浮体式原子力発電システム1が沈没すれば、原子炉3を海水で冷却することができる。浮体式原子力発電システム1を海底から引き揚げたい場合は、浮体式原子力発電システム1を沈没させてから数年程度経過し、原子炉3の崩壊熱が十分に小さくなったタイミングで、
図10(B)に示すように、浮体式原子力発電システム1を浮上させるための浮上用浮体Fを用意する。浮上用浮体Fは、密閉構造の空洞体であり、浮上用浮体F内部に海水を流入させたり、浮上用浮体F内部の海水を排水したりすることが可能である。
【0092】
このような浮上用浮体Fを用意した後は、
図10(C)に示すように、海底に沈む浮体式原子力発電システム1の上方で浮上用浮体F内部に海水を流入させ、浮上用浮体Fを海底に沈める。そして、浮上用浮体Fを浮体式原子力発電システム1に連結する。次に、浮上用浮体F内部の海水を排出する。浮上用浮体F内部の海水が排出されると、浮上用浮体Fの浮力により、浮上用浮体Fが浮体式原子力発電システム1と共に海面へ浮き上がる。これにより、浮体式原子力発電システム1の解体や核燃料の取出しといった各種処分を試みることが可能な状態となる。
【0093】
浮体式原子力発電システム1には、このように、原子炉3に水を注水する手段が失われた事態に陥った場合であっても、浮体式の利点を生かした上記の各種機能を用いることにより、原子炉3を海水で冷却し、原子炉3から放射性物質が放出されるのを十分に防ぐことが可能な仕組みとなっている。したがって、地上に設置する原子力発電所に比べて、原子力のエネルギーをより安全に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
R・・原子炉系:T・・タービン系:F・・浮上用浮体:C・・炉心:D・・塵芥:1・・浮体式原子力発電システム:2・・浮体:3・・原子炉:4・・タービン発電機:5・・原子炉設備エリア:6・・ピット:7・・原子炉設備エリア:8・・燃料プール:9・・淡水化装置:10・・IC/PCCSプール:12・・各種設備エリア:13・・居住エリア:14・・復水貯蔵タンク:18・・レイダウンエリア:19・・付帯設備エリア:20・・主変圧器:21・・補助ボイラー:22・・アンカーチェーン:23・・軽油タンク:24・・廃棄物処理室:25・・船首バラストタンク:26・・船底バラストタンク:27・・船尾バラストタンク:28・・側面バラストタンク:29・・除塵装置:30・・非常用復水器系統:3A・・格納容器:3B・・核燃料:3C・・制御棒:3D・・再循環ポンプ:3E・・圧力容器:3F・・逃がし安全弁:3G・・排気管:3H・・サプレッションプール:3J・・主蒸気隔離弁:3K・・主蒸気隔離弁:3L・・主蒸気管:3M・・上部ドライウェル:3N・・下部ドライウェル:4A・・タービン:4B・・発電機:4C・・復水器:4D・・循環水配管:4E・・循環水ポンプ:4F・・給水ポンプ:4G・・給水配管:3AP・・海水流入管:3AV・・海水流入弁:4DS・
・取水口:4DH・・放水口:10A・・連通弁:10B・・連通弁:10C・・連通弁:10D・・大気開放管:26A・・鋼板:26B・・伝熱板:29A・・除塵ピット:29B・・ストレーナー:29C・・インレット:29D・・サイクロン:29E・・沈殿槽:29F・・ストレーナー:29G・・排出扉:29H・・アウトレット:30A・・非常用復水器:30B・・配管:30C・・配管:30D・・PCCS用熱交換器
【要約】
【課題】本願は、炉心溶融に有利に対抗可能な浮体式原子力発電システムを開示する。
【解決手段】原子炉と、原子炉の熱によって発生した蒸気で駆動するタービン発電機と、原子炉とタービン発電機が配置されており、海上に係留される浮体と、を備え、浮体は、二重船殻構造によって浮体の船底部分に形成される船底バラストタンクのバラスト水で下側が満たされたコアキャッチャーを原子炉の下側に有する、浮体式原子力発電システムである。
【選択図】
図8