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特許7609497熱音響システム及び熱音響システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】熱音響システム及び熱音響システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20241224BHJP
   F03G 7/06 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
F25B9/00 311
F03G7/06 J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024078239
(22)【出願日】2024-05-13
(62)【分割の表示】P 2020032321の分割
【原出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2024109675
(43)【公開日】2024-08-14
【審査請求日】2024-05-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発)「カルノー効率の60%に達する廃熱回生熱音響システム」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真也
(72)【発明者】
【氏名】木村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】千賀 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 龍之介
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-324932(JP,A)
【文献】特開2005-345023(JP,A)
【文献】特開2011-099599(JP,A)
【文献】特開2017-184457(JP,A)
【文献】特開2007-237020(JP,A)
【文献】特開2006-214406(JP,A)
【文献】特開2005-201623(JP,A)
【文献】特開2019-078499(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163419(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177802(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0265493(US,A1)
【文献】中国実用新案第204787405(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F03G 7/00,7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路長が固定された管路内を進行する振動流を利用した熱音響システムであって、
熱量の供給により前記管路に仕事流を発生・増幅させる少なくとも1つ以上の原動用の熱音響デバイスと、
前記熱音響デバイスにより発生・増幅した前記仕事流を入力し、出力を取り出す出力部と、
前記管路に接続され前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部と、
前記熱音響デバイスにおけるパラメータの変化を検出する第1検出部と、
制御部と、
前記出力部の出力値を検出する第2検出部と、を備え、
前記調整部は、前記管路内に前記振動流を与える駆動部を有し、
前記制御部は、前記第1検出部の第1出力値と前記第2検出部の第2出力値とに基づいて、前記調整部を制御して前記出力部の前記出力を設定値となるように調整する、
熱音響システム。
【請求項2】
前記第1検出部は、原動用の原動機の温度、冷却機の温度、前記原動機から出力される仕事流、前記管路に励起している周波数、前記管路における位相、前記管路におけるインピーダンス、前記管路における振動振幅、前記管路における圧力振幅、前記管路における流速振幅の各パラメータのうち、少なくとも1つを検出する、請求項1に記載の熱音響システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1出力値が基準以上である場合、前記調整部を制御して前記出力部からの前記出力を減少させる、
請求項1または2に記載の熱音響システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1出力値が基準未満である場合、前記調整部を制御して前記出力部からの前記出力を増加させる、
請求項1または2に記載の熱音響システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1検出部で検出した前記パラメータのうち音場が基準に比して差異を有する場合、前記調整部を制御して前記音場を前記基準となるように調整する、請求項1または2に記載の熱音響システム。
【請求項6】
前記調整部は、リニアモータである、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項7】
前記調整部は、リニアモータを備え、
前記制御部は、
前記リニアモータの振動振幅を減少させ、前記仕事流を減少させ、
前記リニアモータの振動振幅を増加させ、前記仕事流を増加させる、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項8】
前記出力部は、他の熱音響デバイスを備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されている、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項9】
前記出力部は、パルス管冷凍機を備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されている、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項10】
前記出力部は、発電機を備え、前記仕事流に基づいて発電するように構成されている、請求項1から7のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項11】
前記管路は、直管状に形成された直管部と、
前記直管部の一端に設けられたループ状に形成された第1ループ管とを備える、請求項1から10のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項12】
前記管路は、前記直管部の他端に設けられたループ状に形成された第2ループ管を備える、
請求項11に記載の熱音響システム。
【請求項13】
前記管路は、ループ状に形成されている、
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項14】
管路長が固定された管路内を進行する振動流を利用した熱音響システムの制御方法であって、
前記管路に仕事流を発生・増幅させる少なくとも1つ以上の原動用の熱音響デバイスに熱量を供給し、
前記熱音響デバイスより発生・増幅した前記仕事流を出力部に入力し、
前記出力部から出力を取り出し、
前記熱音響デバイスにおけるパラメータの変化を第1出力値として検出し、
前記出力部の出力値を第2出力値として検出し、
前記管路に接続された調整部が、駆動部を有し、前記駆動部を駆動して前記管路内に前記振動流を与えることで、前記管路における仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整し、
前記第1出力値と前記第2出力値とに基づいて、前記調整部を制御して前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整し前記出力を設定値となるように調整する、
熱音響システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響システム及び熱音響システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や車などの廃熱を再利用する技術が研究されている。廃熱の回生には、外燃機関を利用することが考えられる。外燃機関は、例えば、ランキンサイクルを用いる蒸気タービンや、スターリングサイクルを用いるスターリングエンジンが知られている。これらの外燃機関は、熱源から動力を取り出すように構成されている。
【0003】
その他の外燃機関として、振動流を用いて仕事流と熱流のエネルギー変換を行う蓄熱器を備えた熱音響エンジンが知られている。ここでは、振動流型外燃機関のひとつとして、熱音響エンジンを例にして説明する。熱音響エンジンは、振動流の圧縮膨張がピストンの役割を担うことにより、可動部品を持たずに熱量を利用することができる。熱音響エンジンの構造は、単数から無数の狭い流路等を備える多孔質体(蓄熱器)と、外部との吸放熱を行う一対の吸放熱部を有する熱交換器と、熱交換器の上流側と下流側に接続された作動気体が流れる管路とを備えている。この蓄熱器に臨界条件を超える所定の温度勾配(温度差)を流路軸方向に沿って与えると、仕事流の発生・増幅が行われる。
【0004】
熱音響エンジンでは、蓄熱器内部において熱と仕事のエネルギー変換が行われており、熱量から仕事を音波の有する音響パワー(仕事流)として取り出すことができる。特に、進行波音波を用いる進行波型熱音響エンジンでは、熱力学的なサイクルがスターリングサイクルに類似したエネルギー変換が行われるので、熱効率を高められる可能性がある。そのため、進行波型熱音響エンジンは可動部品を持たない、廃熱回生が可能な熱機関として注目されている。
【0005】
熱音響エンジンで生成した仕事流を出力として取り出す方法として、リニアモータなどの発電機を用いて発電し、入力された仕事流を電気的出力に変換することが考えられる。非特許文献1には、熱音響エンジンを利用して「発電」を行う熱音響発電機が記載されている。
【0006】
その他の方法として、蓄熱器内の流体を音波入力などによって強制振動させるとヒートポンプ効果により流線方向に沿って蓄熱器の両端に温度差が生じるので、常温(雰囲気温度)より高温又は低温の熱を取り出すことができる。このように蓄熱器には、仕事流をエネルギー源とするヒートポンプ効果を有し、「冷却」や「昇温」に利用できる。
例えば、非特許文献2には、熱音響エンジンで発生・増幅した仕事流によって「冷却」を行う熱音響冷却機が記載されている。
【0007】
これらの熱音響冷却機や熱音響発電機は熱音響デバイスと呼ばれる。熱音響デバイスの「原動機」として用いられる熱音響エンジンは外燃機関であることから、廃熱回生デバイスとして現在研究開発が進められている。なお、以下、常温熱交換機、蓄熱器、高温熱交換器で構成されるものを「原動機」、常温熱交換機、蓄熱器、低温熱交換器で構成されるものを「冷却機」とする。廃熱の利用可能温度域を広げるために熱音響デバイスは、原動機において小さい温度勾配で動作されることが望ましい。
【0008】
熱音響エンジンを小さい温度差で動作させるために原動機を多段化する方法が知られている。Hasegawaらは、3つの原動機で動作する熱音響冷却機の開発を行い、各原動機温度が270℃の時に冷却機温度が-107.4℃での動作を報告した(非特許文献3)。
【0009】
上述した熱音響デバイスは廃熱回生デバイスとして研究開発が進められているが、現状での原動機は、200℃以上の入熱温度帯で動作するものが多い。一方で、NEDOの調査によると未利用の排ガスの温度域は200℃以下が多く、また未利用廃熱のニーズも200℃以下が多いという報告が上がっている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-184457号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】S. Backhaus, E. Tward, M. Petach, “Traveling-wave thermoacoustic electric generator”, Appl. Phys. Lett., 85, (2004) 1085-1087
【文献】T. Yazaki, T. Biwa, A. Tominaga, “A pistonless Stirling cooler”, Appl. Phys. Lett., 80 (2002) 157-159
【文献】E. M. Sharify, S. Hasegawa, “Traveling-wave thermoacousticrefrigerator driven by a multistage traveling-wave thermoacoustic engine”, Appl. Therm. Eng., 113 (2017), pp.791-795
【文献】未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合技術開発センター,“産業分野の排熱実態調査 報告書”,2019年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
熱音響デバイスを広い廃熱温度域で使用するためには、熱音響冷却機や熱音響発電機が動作可能な温度範囲を広げる必要がある。従来までの技術では、できるだけ低い温度域から動作ができるように設計することによって広い温度域での利用を可能としていた。
【0013】
原動機の動作温度を低下させるには装置の大型化、作動気体の加圧、装置内に複数の原動機を設置することなどが上げられる。いずれの方法も部品の大型化、耐圧設計、部品点数の増加などに起因して製作コストが上昇するという問題がある。また、原動機の開発時に行われる試作や実験は、原動機の動作条件を高圧化した場合、動作条件が大気圧の場合に比べて容易に行うことが困難となる可能性がある。
【0014】
熱音響原動機での仕事流の増幅率は、原動機に与えられる温度比に大きく依存する。したがって原動機で得られた仕事流を利用する熱音響冷却器(ヒートポンプ)や熱音響発電機は原動機性能に依存し、熱音響冷却機でより低い冷却温度を得たり、熱音響発電機で発電量を増加させたりしたい場合には、熱音響原動機で大きな仕事流の増幅を得るために温度比を高くするか、原動機を複数を使用する必要がある。原動機の温度差を大きくすることは利用可能な廃熱の温度域が高くなるために適用できる範囲が狭まる。また、原動機の数を増やす場合、装置の複雑化や装置コストが上昇するという問題がある。
【0015】
そして、実際の廃熱は常に一定の温度で排出されているわけではなく、廃熱源となる機械などの運転状況によって変動する。そのため原動機の熱源として廃熱を利用する場合、廃熱温度の変動に伴って出力も変動する。例えば、廃熱温度が変動することにより原動機に与えられる温度比が変化するため、原動機での仕事流増幅率が変動する。これにより冷却機や発電機に入力される仕事流が変化するため、冷却機での冷却温度比や、発電機での発電量を安定して得ることが困難となるという課題がある。
【0016】
また、熱音響原動機に与えられる温度比の変化に伴って、熱音響システム全体の音場(周波数、位相、インピーダンス、振動振幅、圧力振幅、流速振幅)も変化する。これによって出力側の冷却機や発電機で所望の出力を得るために適した音場からのずれが生じ、全体性能が変動する。したがって、冷却機での冷却温度比や、発電機での発電量を安定して得ることが困難となるという課題がある。
【0017】
熱音響冷却機では、原動機の蓄熱器における温度比に対応して冷却機に入力される音波の仕事の大きさやシステム内の音場が変化するため冷却機において形成される温度比が変動する。また、熱音響原動機と発電機を組み合わせた場合においても、原動機の蓄熱器での温度比よって発電機に入力される音波の仕事流の大きさや発電機接続部の音場が変動するために、発電機での発電量は蓄熱器に与えられる温度比に依存する。
【0018】
これに関連して特許文献1には、原動機の熱源の温度変化に応じて出力を調整する熱音響発電機が記載されている。この熱音響発電機は、管路と原動機と、原動機から出力された仕事流を電力として出力する出力部と、管路の管長を変化させる調整部と、熱源の温度を検出する検出部と、検出部により検出された温度に基づいて調整部を制御して出力部の出力を調整する制御部とを備えている。
【0019】
この熱音響発電機によれば、熱源の温度が変化してもベローズを有する調整部が管路の管長を機械的に変化させることで出力部の出力を調整できる。しかしながら、高圧気体を使用しながらベローズを調整する機構を設けることは製造においてもコストが高くなる。さらに使用時に大きな振動が発生する自動車等の廃熱を利用して空調機械を製造する場合、故障を低減するために機械部分はなるべく少なくなるように設計されることが望ましい。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便な構成により熱源に温度変動が生じても所望の出力を得ることができる熱音響システムの制御方法を提供することを目的とする。なお、これ以降の本発明の内容については熱音響ヒートポンプを一例として記載するが、制御方法は熱音響発電機やその他熱音響システムにも適用でき、これに限らない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様は、管路長が固定された管路内を進行する振動流を利用した熱音響システムであって、熱量の供給により前記管路に前記仕事流を発生・増幅させる少なくとも1つ以上の原動用の熱音響デバイスと、前記熱音響デバイスにより発生・増幅した前記仕事流を入力し、出力を取り出す出力部と、前記管路に接続され前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部と、前記熱音響デバイスにおけるパラメータの変化を検出する第1検出部と、制御部と、前記出力部の出力値を検出する第2検出部と、を備え、前記調整部は、前記管路内に前記振動流を与える駆動部を有し、前記制御部は、前記第1検出部の第1出力値と前記第2検出部の第2出力値とに基づいて、前記調整部を制御して前記出力部の前記出力を設定値となるように調整する、熱音響システムである。
【0022】
本発明によれば、調整部が管路内の仕事流の増減もしくは音場の調整をするように構成されており、熱音響デバイスに供給される熱量の変化に応じて調整部を制御して管路内の仕事流や音場を調整することで、出力部からの出力を任意に調整できる。
【0023】
本発明は、前記第1検出部は、原動用の原動機の温度、冷却機の温度、前記原動機から出力される仕事流、前記管路に励起している周波数、前記管路における位相、前記管路におけるインピーダンス、前記管路における振動振幅、前記管路における圧力振幅、前記管路における流速振幅の各パラメータのうち、少なくとも1つを検出するように構成されていてもよい。
【0024】
本発明によれば、供給される熱量の変化に伴って、検出したパラメータの少なくとも一つ以上が任意の設定値に比して差異が生じた場合においても、調整部を制御することで管内の仕事流の増減もしくは音場を任意の設定値にすることができるので、出力部に入力される仕事流や音場の両方もしくはいずれか一方を調整し、出力部からの出力を所望の値とすることができる。
【0025】
本発明はまた、前記制御部が前記第1出力値が基準以上である場合、前記調整部を制御して前記仕事流を減少させ前記出力部から出力される前記出力を減少させるように構成されていてもよい。
【0026】
本発明によれば、供給される熱量が増加して出力部の出力が設定値を超えた場合でも、調整部を制御して管路内の仕事流を減少できるので、出力部に入力される振動流の仕事流を減少させ、出力部からの出力を減少させることができる。
【0027】
本発明はまた、前記制御部は、前記第1出力値が基準未満である場合、前記調整部を制御して前記仕事流を増加させ前記出力部からの前記出力を増加させるように構成されていてもよい。
【0028】
本発明によれば、供給される熱量が減少して出力部の出力が設定値を下回った場合でも、調整部を制御して管路内の仕事流を増加できるので、出力部に入力される振動流の仕事流を増加させ、出力部からの出力を増加させることができる。
【0029】
本発明はまた、前記制御部は、前記第1検出部で検出した前記パラメータのうち音場が基準に比して差異を有する場合、前記調整部を制御して前記音場を前記基準となるように調整するように構成されていてもよい。
【0030】
本発明によれば、供給される熱量の変動にともなって出力部での音場が基準とずれることで出力部の出力が所望の値と異なる場合でも、調整部を制御して管路内の音場を任意の値に調整できるので、出力部に入力される振動流の音場を任意の値とすることで、出力部からの出力を所望の値とすることができる。
【0031】
本発明はまた、前記出力部の出力値を検出する第2検出部を備え、前記第1出力値と前記第2検出部の第2出力値とに基づいて、前記調整部を制御して前記出力部の出力を設定値となるように調整するように構成されていてもよい。
【0032】
本発明によれば、前記第1出力値と前記第2検出部の第2出力値を監視することにより、調整部から出力される仕事流及び調整部に入力される仕事流を調整し、出力部の出力を予め定められた設定値となるようにアクティブに調整できる。
【0033】
本発明はまた、前記調整部がリニアモータを備え、前記制御部は、前記リニアモータに前記仕事流を入力させ発電を行わせ前記仕事流を減少させるように構成されていてもよい。
【0034】
本発明によれば、調整部がリニアモータを備えることで、リニアモータを発電機として動作させることで、管路内の仕事流を減少させることができ、出力部の出力が設定値を超えないように調整できる。
【0035】
本発明はまた、前記調整部がリニアモータを備え、前記制御部は、前記リニアモータに他の仕事流を出力させ前記仕事流を増加させるように構成されていてもよい。
【0036】
本発明によれば、調整部がリニアモータを備えることで、リニアモータ動作させて管路内に仕事流を与えることで、管路内の仕事流を増加させることができ、出力部の出力が設定値を下回らないように調整できる。
【0037】
本発明はまた、前記出力部が他の熱音響デバイスを備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されていてもよい。
【0038】
本発明によれば、出力部を熱音響デバイスとして構成することで、熱音響現象により入力される仕事流から冷熱を発生させ、稼働を安定化した冷却機やクーラーなどのヒートポンプを実現できる。
【0039】
本発明はまた、前記出力部がパルス管冷凍機を備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されていてもよい。
【0040】
本発明によれば、出力部をパルス管冷凍機として構成することで、入力される仕事流から冷熱を発生させ、稼働を安定化した冷却機やクーラーなどのヒートポンプを実現できる。
【0041】
本発明はまた、前記出力部が発電機を備え、前記仕事流に基づいて発電するように構成されていてもよい。
【0042】
本発明によれば、出力部を発電機として構成することで、一定の電力を出力する発電機を実現できる。
【0043】
本発明はまた、前記管路が直管状に形成された直管部と、前記直管部の一端に設けられたループ状に形成された第1ループ管とを備えるように構成されていてもよい。
【0044】
本発明によれば、ループ管が形成された管路を備える熱音響システムを実現できる。
【0045】
本発明はまた、前記管路が前記直管部の他端に設けられたループ状に形成された第2ループ管を備えるように構成されていてもよい。
【0046】
本発明によれば、ダブルループの管路を備える熱音響システムを実現できる。
【0047】
本発明はまた、前記管路がループ状に形成されているように構成されていてもよい。
【0048】
本発明によれば、ループ状に形成された管路においても熱音響システムを実現できる。
【0049】
本発明の一態様は、管路長が固定された管路内を進行する振動流を利用した熱音響システムの制御方法であって、前記管路に前記仕事流を発生・増幅させる少なくとも1つ以上の原動用の熱音響デバイスに熱量を供給し、前記熱音響デバイスより発生・増幅した仕事流を出力部に入力し、前記出力部から出力し、前記熱音響デバイスの温度や音場を第1出力値として検出し、前記出力部の出力値を第2出力値として検出し、前記管路に接続された調整部が、駆動部を有し、前記駆動部を駆動して前記管路内に前記振動流を与えることで、前記管路における仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整し、前記第1出力値と前記第2出力値とに基づいて、前記調整部を制御して前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整し前記出力を設定値となるように調整する、熱音響システムの制御方法である。
【0050】
本発明によれば、熱音響デバイスに供給される熱量の変化に応じて調整部を制御して、管路内の仕事流や音場を調整することで、出力部からの出力を任意に調整できる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、熱源に温度変動が生じても所望の出力が得られる熱音響システム及び熱音響システムの制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の実施形態に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図2】管路に設けられた分岐部における作動流体の状態を示す概念図である。
図3】熱音響システムの構成を示すブロック図である。
図4】変形例1に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図5】変形例2に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図6】変形例3に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図7】変形例4に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図8】変形例5に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図9】変形例6に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図10】変形例7に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図11】変形例8に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図12】変形例9に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図13】変形例10に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図14】変形例11に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図15】変形例12に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図16】変形例13に係る熱音響システムの構成を示す図である。
図17】変形例14に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る熱音響システム及び熱音響システムの制御方法の実施形態について説明する。熱音響システムは、管路長が固定された管路内を進行する振動流を利用した熱音響システムである。
【0054】
図1に示されるように、熱音響システム1は、内部に作動気体が封入された管路P(流路)と、管路Pに接続された第1熱音響デバイス2と、第1熱音響デバイス2に管路Pを介して接続された第2熱音響デバイス6(出力部)と、管路Pに接続された調整部10とを備える。熱音響システム1は、例えば、冷却機として構成されている。
【0055】
管路Pは、管長が固定されて形成されている。管路Pは、例えば、断面が円形の円管状に形成された導波管である。管路Pは、管軸方向に振動流が伝搬するように形成されている。なお、管路Pの形状は管状であればよく、例えば、断面が四角状や三角状に形成されていてもよい。管路P内に封入される作動流体は、窒素、ヘリウム、アルゴン、ヘリウムとアルゴンとの混合気体からなる不活性気体及び空気等の振動流を伝達できる気体である。作動流体は振動流を伝達できればよく、これらの気体に限定されずに他の気体が用いられてもよいし、気体に限らず水やエタノールといった液体部を有していてもよい。
【0056】
管路Pは、ループ状に形成された第1ループ管P1及び第2ループ管P2と、第1ループ管P1と第2ループ管P2とを接続する直管状に形成された直管部P3と、直管部P3と、第1ループ管P1から分岐して形成された分岐管P4と、を備える。
【0057】
直管部P3の一端には、第1ループ管P1が接続されている。直管部P3の他端には、第2ループ管P2が接続されている。直管部P3の一端には、丁字状に分岐した分岐管P4が接続されている。第1ループ管P1の流路内には、熱流から仕事流を発生させる第1熱音響デバイス2が設けられている。
【0058】
第1熱音響デバイス2は、熱量が供給されると熱音響現象が生じて仕事流を発生、増幅する蓄熱器3と、熱交換を行う第1熱交換器3C及び第2熱交換器3Dを備える。なお、第1熱音響デバイス2は、振動流を利用した原動用の熱音響デバイスであればよく、例えば、定在波型振動流や、進行波型振動流、相変化型振動流等を利用した原動用の熱音響デバイスである。
【0059】
蓄熱器3は、作動気体の流線方向に沿って上流側の一端部3Aと下流側の他端部3Bとの間に温度差が生じると、仕事流の発生・増幅を行う。蓄熱器3の一端部3Aには、第1熱交換器3Cが設けられている。蓄熱器3の他端部3Bには、第2熱交換器3Dが設けられている。
【0060】
蓄熱器3には、第1熱交換器3C及び第2熱交換器3Dを用いて両端に管路Pの軸線方向に沿って温度勾配が生じる。蓄熱器3は、管路Pの軸線方向に沿って両端部の間に温度勾配(温度差)が形成されると仕事流(音響パワー)の発生・増幅が行われる。高温側の第1熱交換器3C及び低温側の第2熱交換器3Dにより蓄熱器3の両端に十分な温度勾配をつけると熱音響の自励発振が生じる現象により流路3R内に音波が生じる。自励発振が生じる最小の温度比(高温側温度T/低温側温度T)は臨界温度比と呼ばれる。
【0061】
蓄熱器3は、例えば、単数から複数の小径の流路3Rが形成されている。流路3Rは、蓄熱器3において作動気体の流線方向に沿って開口するように単数から無数に設けられている。蓄熱器3は、例えば、セラミックスで形成されたハニカム構造体や、多数のステンレス鋼メッシュ薄板が積層された構造体により多数の流路3Rが形成される。蓄熱器3は、ガラスパイプなどの細かい流路を形成し振動流が通過できる材料であればよく、これらに限定されない。
【0062】
また、流路3Rは発泡金属やスチールウールなどで形成される形状のほか、金属粉を充填したり凸凹のあるフィルムを丸めたり、異なる流路径(流路幅)・流路形状・厚さを持つ薄板等を組み合わせたりすることで形成されてもよい。
【0063】
流路3Rは、例えば、断面が円管形状、平行平板形状、多角形形状、ピンアレイ形状に形成されている。流路3Rは、異なる流路径(流路幅)・流路形状・厚さを持つ薄板等を組合せにより複数のランダムな形状の流路を有するように形成されてもよい。流路3Rは、異なる流路径(流路幅)・流路形状・厚さを持つ薄板等の所定の組み合わせにより複数のパターンの形状の流路が繰り返して形成されていてもよい。蓄熱器3に温度勾配を生じさせるため、熱源からの熱量が入力される。
【0064】
熱源は、雰囲気温度としての常温に対して温度差を有する熱量を供給するものである。ここで、常温とは、例えば、大気、海水、河川水、湖水、地熱等の周囲の環境により安定的に得られる温度である。常温は、雰囲気温度の他に熱源と温度差を生じさせるように安定的に熱量を供給できる他の熱源から生じる温度であってもよい。熱源は、例えば、廃熱として捨てられる未利用の熱量を利用する。熱源は、常温に対して高温の熱量を与えるものである。熱源は、熱量を得られれば、特に限定されず、例えば、太陽光や地熱等から得られる熱量や、エンジン、工場、各種施設等から発生するの熱量が利用される。熱量は、例えば、第1熱交換器3Cに入力される。
【0065】
第1熱交換器3Cは、蓄熱器3の一端部3Aにおいて熱媒体を介して熱交換を行うよう形成されている。第1熱交換器3Cは、蓄熱器3の一端部3Aに常温に対して温度差を有する熱媒体を介して熱交換する。
【0066】
第2熱交換器3Dは、蓄熱器3の他端部3Bにおいて熱交換を行うよう形成されている。第2熱交換器3Dは、蓄熱器3の他端部3Bに常温の熱媒体を介して熱交換する。熱量の入力方法として、蓄熱器3の一端部3A側には、例えば、第1熱交換器3Cにより高温の熱量を供給する。第1熱交換器3Cには、例えば、高温の気体や液体等の熱媒体を循環させる。その一方で蓄熱器3の他端部3B側には、例えば、第2熱交換器3Dにより常温の熱量を供給する。第2熱交換器3Dには、例えば、常温の気体や液体等の熱媒体を循環させる。
【0067】
この場合、高温側となる蓄熱器3の一端部3A側から常温側となる蓄熱器3の他端部3B側にかけて温度勾配が生成され仕事流の発生・増幅が行われる。上記方法により、蓄熱器3の一端部3Aと他端部3Bとの間に温度勾配(温度差)を生じさせると、蓄熱器3において作動気体の仕事流の発生・増幅が行われ、管路P内を伝搬する。管路P内を伝搬する仕事流からは、仕事を取り出すことができる。取り出した出力は、そのまま、タービン等を動かす仕事として利用してもよいし、冷熱源、温熱源や、電気等の別の出力に変換して利用してもよい。なお、仕事流から取り出した出力の利用方法には、特に制限はなく、例えば、管路Pに第1熱音響デバイス2と異なる他の蓄熱器を有する作動用の第2熱音響デバイス6(他の熱音響デバイス)を用いることができる。作動用の熱音響デバイスによれば、入力された振動流の仕事を熱量に変換(ヒートポンプ効果)して取り出すことができる。
【0068】
この時、作動用の第2熱音響デバイス6の蓄熱器において原動用の第1熱音響デバイス2における気体の流線方向に沿って反対方向の温度勾配を生じさせるようにヒートポンプ効果を行うため、熱音響現象を利用して入力された仕事流から熱量を取り出すことができる。
【0069】
以下、作動用の第2熱音響デバイス6について説明する。上記の原動用の第1熱音響デバイス2と同一の構成については同一の名称を用い、重複する説明は適宜省略する。作動用の第2熱音響デバイス6は、原動用の第1熱音響デバイス2により発生した仕事流を入力し、出力を取り出す出力部として構成されている。
【0070】
作動用の第2熱音響デバイス6は、第2ループ管P2内に設けられた蓄熱器7(第2蓄熱器)と、蓄熱器7の一端部7Aに設けられた第3熱交換器7Cと、蓄熱器7の他端部7Bに設けられた第4熱交換器7Dとを備える。作動用の第2熱音響デバイス6は、例えば、冷熱を取り出すクーラーや冷却機として構成されている。蓄熱器7は、蓄冷器と呼んでもよい。
【0071】
蓄熱器7には、例えば、上流側の一端部7A側から原動用の第1熱音響デバイス2から生じた仕事流が入力される。
【0072】
第3熱交換器7Cは、蓄熱器7の一端部7Aにおいて熱交換を行うよう形成されている。第3熱交換器7Cは、蓄熱器7の一端部7Aを冷却するものである。第3熱交換器7Cは、熱媒体を循環させ、一端部7Aにおいて熱交換を行う。
【0073】
第4熱交換器7Dは、蓄熱器7の他端部7Bにおいて熱交換を行うよう形成されている。第4熱交換器7Dは、例えば、蓄熱器7の他端部7Bから冷熱を取り出すものである。
第4熱交換器7Dは、熱媒体を循環させ、他端部7Bにおいて熱交換を行う。
【0074】
例えば、蓄熱器7の一端部7A側に原動用の第1熱音響デバイス2からエネルギー変換により生じた仕事流が入力された場合、ヒートポンプ効果が発生し蓄熱器の流路軸方向に温度差が生じる。この時、第3熱交換器7Cにより一端部7A側を常温の熱媒体と熱交換すると、一端部7A側を基準に温度差が生じ、他端部7B側において吸熱反応が生じる。この時、他端部7B側の第4熱交換器7Dにより熱交換を行うと低温の熱量を取り出すことができる。この反応により、冷却機、クーラー等を構成できる。第2熱音響デバイス6は、構成されるシステムの目的に応じて発電機や昇温機に変更されてもよい。
【0075】
次に、調整部10について説明する。調整部10は、管路P内の振動流の仕事流と音場の両方もしくはいずれか一つを調整するように構成されている。以下、調整部10が管路P内の音場を調整する場合について説明する。調整部10は、原動用の第1熱音響デバイス2の蓄熱器3の温度比の変化に応じてアクティブに制御され、作動用の第2熱音響デバイス6における温度比を設定値となるように調整する。調整部10は、例えば、リニアモータにより構成されている。調整部10は、後述の制御部12により制御される。
【0076】
調整部10は、分岐管P4内を往復するピストン10Aと、ピストンに接続されたピストンロッド10Bと、ピストンロッド10Bを駆動する駆動部10Cと、電源10Dとを備える。ピストンロッド10Bは、磁性体により形成されている。駆動部10Cは、電磁コイルを有し、電源10Dから交流電流が入力されると交流磁界を発生させる。ピストンロッド10Bは、電磁コイルの中心を摺動自在に取り付けられている。電磁コイルに交流磁界が発生すると、ピストンロッド10Bが電磁コイルに対して往復運動する。
【0077】
調整部10は、駆動部10Cを駆動させピストンロッド10Bを往復運動させることにより、連動してピストン10Aを分岐管P4内において往復運動させ、管路P内に振動流を与える。調整部10は、例えば、第2熱音響デバイス6に入力される仕事流と同じ周波数帯の仕事流を発生させ、管路P内の振動流の仕事流を増加させることができる。
【0078】
調整部10は、発電機として用いられてもよい。調整部10において、分岐管P4から仕事流が入力されることにより、ピストン10Aが分岐管P4内において往復運動する。ピストン10Aの動きに連動してピストンロッド10Bが往復運動することにより、交流磁界が発生し、電磁コイル内に交流電流が流れる。調整部10は、例えば、第1熱音響デバイス2により発生・増幅する仕事流に基づいて発電し、管路P内の振動流の仕事流を減少させることができる。調整部10は、音場や振動流の調整が可能であれば上記の構成に限らず、部品の増減があったり構成の変更があってもよく、これに限らない。また調整部10は、管路P内の振動流の仕事流を調整できるのであればリニアモータ以外のデバイスが用いられてもよい。
【0079】
図2に示されるように、管路Pの分岐管P4において、作動流体の流速振幅を分けることが可能である。このとき分岐管P4における作動流体の圧力振幅は変化しない(Pengine=PRef=Plinear)。分岐管P4において作動流体の流速振幅の総和は保存される。作動流体の流速振幅の分かれる割合は、管路Pに接続されている第2熱音響デバイス6及び調整部10のインピーダンスZによって決定される。
【0080】
調整部10の振動振幅は、電源10Dから入力される電圧によって制御することができる。熱源の温度が変化すると、原動用の第1熱音響デバイス2から出力される仕事流が変化する。この場合、調整部10に入力する電圧を調整して、作動用の第2熱音響デバイス6へ流れる仕事流もしくは管路の音場を一定に調整する。この調整により、第2熱音響デバイス6の蓄熱器7における一端部7A側と他端部7B側との温度比を一定に保つことができる。従って、調整部10は、管路P内から仕事流を出力すると共に、管路P内に仕事流を入力することができる。
【0081】
次に熱音響システム1の制御について説明する。以下、上記の構成と同一の構成については適宜説明を省略する。
【0082】
図3に示されるように、熱音響システム1は、原動用の第1熱音響デバイス2と、第1熱音響デバイス2の温度を検出する第1検出部4と、作動用の出力部6と、出力部6の出力値を検出する第2検出部8と、管路Pに接続された調整部10と、調整部10の動作を制御する制御部12とを備える。
【0083】
第1検出部4は、例えば、第1熱音響デバイス2の蓄熱器3の高温の一端部3A側の温度T及び低温の他端部3B側の温度Tを検出する。第1検出部4により検出された第1出力値は、制御部12に出力される。第2検出部8は、例えば、第2熱音響デバイス6の蓄熱器7の一端部7A側の温度T及び低温の他端部7B側の温度TRefを検出する。第2検出部8により検出された第2出力値は、制御部12に出力される。
【0084】
制御部12は、第1出力値に基づいて蓄熱器3における温度比(T/T)を算出する。制御部12は、第2出力値に基づいて蓄熱器7における温度比(T/TRef)を算出する。
【0085】
制御部12は、例えば、蓄熱器3における温度比及び蓄熱器7における温度比の算出結果に基づいて、熱源の温度が高く、第1熱音響デバイス2の蓄熱器3における温度比が臨界温度比以上である場合、調整部10の電源10Dを停止し負荷を与え、調整部10を発電機として動作させる。制御部12は、調整部10を発電させることで、管路P内の仕事流の仕事流を減少させ、第2熱音響デバイス6の蓄熱器7における温度比が設定値となるように一定に維持する。即ち、制御部12は、第1出力値が基準以上である場合、調整部10を制御して発電を行わせ、仕事流を減少させることにより第2熱音響デバイス6(出力部)からの出力を減少させる。
【0086】
制御部12は、例えば、蓄熱器3における温度比及び蓄熱器7における温度比の算出結果に基づいて、熱源の温度が低く、第1熱音響デバイス2の蓄熱器3における温度比が臨界温度比未満である場合、調整部10に電源10Dから電力を入力し調整部10を動作させ、管路P内の仕事流の仕事流を増加させる。制御部12は、調整部10から管路内の仕事流を増加させることで、第2熱音響デバイス6の蓄熱器7における温度比が設定値となるように一定に維持する。即ち、制御部12は、第1出力値が基準未満である場合、調整部10を制御して他の仕事流を出力させ、仕事流を増加させることにより第2熱音響デバイス6からの出力を増加させる。
【0087】
制御部12は、例えば、蓄熱器3における温度比及び蓄熱器7における温度比の算出結果に基づいて、熱源温度の変化にともなって、第1熱音響デバイス2に形成される音場が設定した値と異なる場合、調整部10に電源10Dから電力を入力し調整部10を動作させ、管路P内の仕事流や音場の調整を行う。制御部12は、例えば、第1検出部4で検出したパラメータのうち音場が基準に比して差異を有する場合、調整部10を制御して音場を基準となるように調整する。制御部12は、調整部10から管路内の音場を調整させることで、第2熱音響デバイス6の蓄熱器7における温度比が設定値となるように一定に維持する。
【0088】
上述したように、熱音響システム1によれば、廃熱等を利用した原動用の第1熱音響デバイス2の熱源の温度が変化しても調整部10を制御して管路P内の振動流の仕事流を減少又は増加させることで、作動用の第2熱音響デバイス6の出力を設定値となるように調整するヒートポンプを実現できる。熱音響システム1によれば、原動用の第1熱音響デバイス2の熱源の温度が高くなり、作動用の第2熱音響デバイス6の出力が増加しても、調整部10のリニアモータを発電機として用いることにより、管路P内の仕事流を減少させ、作動用の第2熱音響デバイス6の出力を低下させ、予め定められた設定値に調整できる。
【0089】
熱音響システム1によれば、原動用の第1熱音響デバイス2の熱源の温度が低くなり、作動用の第2熱音響デバイス6の出力が減少しても、調整部10のリニアモータを駆動して管路P内に仕事流を与え、作動用の第2熱音響デバイス6の出力を増加させ、予め定められた設定値に調整できる。
【0090】
なお、ここまで、蓄熱器3における温度比及び蓄熱器7における温度比の算出結果に基づいた制御方法を説明をしてきたが、調整部10は、第1熱音響デバイス2から発生する音場の変化に基づいて、制御部12が管路P内の振動流の仕事流を減少又は増幅させてもよいし、第1検出部で出力部6の出力を検出し、出力値に基づいて制御部12が管路P内の振動流の仕事流を減少又は増幅させてもよい。
【0091】
また、ここまでは、制御部12もしくは調整部10の外部に検出部を有する実施例において制御方法について述べたが、必ずしも検出部を制御部や調整部の外部に設ける必要はなく、制御部12もしくは調整部10が検出部を兼ねていてもよい。また、第1検出部4、第2検出部8の各検出部は、温度を検出するものとしたが、これに限らず、温度以外の各種パラメータを検出するものであってもよい。
【0092】
第1検出部4、第2検出部8の各検出部は、原動用の原動機の温度、冷却機の温度、原動機から出力される仕事流、管路Pに励起している周波数、管路Pにおける位相、管路Pにおけるインピーダンス、管路Pにおける振動振幅、管路Pにおける圧力振幅、管路Pにおける流速振幅の各パラメータのうち、少なくとも1つを検出してもよい。制御部12は、検出部により検出された各種パラメータの検出値に応じて調整部10を調整し、出力部の出力値を調整してもよい。
【0093】
さらに、制御方法は管路P内の振動流の仕事流や音場の変化について検出部からの検出と制御部12と調整部10からの調整からをイタレーションしながら制御を行ってもよく、もしくはパラメータ変化に応じて任意の値とするのに必要な変化パラメータに対する調整値をデータベース化しておくことで制御を行ってもよい。熱音響システム1は、データベース化された調整値を記憶する記憶部(不図示)を備えていてもよく、調整値は、ネットワークに接続されたサーバ装置(不図示)から制御部12に提供されるものであってもよい。また、制御部12は、ネットワークに接続された端末装置に設けられていてもよい。即ち、熱音響システム1は、ネットワークから遠隔操作されるものであってもよい。
【0094】
以下、熱音響システムの変形例について説明する。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明は適宜省略する。
【0095】
[変形例1]
上記実施形態では、熱音響システム1の出力部は、第2熱音響デバイス6を用いて冷却機やクーラーとして構成されていた。熱音響システムの出力部は、他の冷却機に置き換えられててもよい。
【0096】
図4に示されるように、熱音響システム1Aは、出力部がパルス管冷凍機20に置き換えられて構成されている。出力部は、パルス管冷凍機20を備え、仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されている。パルス管冷凍機20の温度比は、制御部12により第2出力値として監視されている。
【0097】
パルス管冷凍機20は、一端21A側が直管部P3の他端に接続された蓄熱器21(蓄冷器)と、蓄熱器21の他端21B側に一端22Aが接続されたパルス管22と、パルス管22の他端22B側に一端23Aが接続された細管23と、細管23の他端23B側に接続されたタンク24とを備える。蓄熱器21の一端21A側には、作動流体の振動が入力される。蓄熱器21内部の気体は、振動に応じて圧縮と膨張を繰り返す。
【0098】
パルス管22内においては、蓄熱器21に入力された振動に応じて気体がピストンのように往復する。パルス管22内において、圧力振動とパルス管22内でのガスピストンの変位との位相差に基づいて、気体が膨張する他端21B側に冷却作用が生じる。
【0099】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、パルス管冷凍機20の温度比を一定にすることができる。
【0100】
[変形例2]
上記実施形態では、熱音響システム1の出力部は、第2熱音響デバイス6を用いて冷却機やクーラーとして構成されていた。熱音響システムの出力部は、他の構成に置き換えられてもよい。
【0101】
図5に示されるように、熱音響システム1Bは、出力部が発電機30に置き換えられて構成されている。発電機30は、直管部P3の他端に設けられている。発電機30は、例えば、リニアモータを備えている。発電機30は、管路P内の仕事流に基づいて発電するように構成されている。発電機30は、負荷30Fに接続されている。負荷30Fは、制御部12により出力される電力が第2出力値として監視されている。
【0102】
発電機30は、ピストン30A、ピストンロッド30B、及び電磁コイル30Cを備える。発電機30においてピストン30Aは、管路P内を進行する振動流の振動を受けて管軸方向に沿って振動する。ピストン30Aの振動に連動してピストンロッド30Bが振動する。ピストンロッド30Bの振動により電磁誘導され、電磁コイル30Cに交流電流が流れる。
【0103】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、発電機30に一定の電力を出力させることができる。
【0104】
[変形例3]
上記実施形態では、熱音響システム1の調整部10は、ダブルループに形成された管路Pの分岐管P4に接続されていた。熱音響システムは、管路Pがループ状に形成されていてもよく、調整部10は、ループ状の管路Pの途中に設けられていてもよい。
【0105】
図6に示されるように、熱音響システム1Cは、管路Pがループ状に形成されている。熱音響システム1Cは、第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6とが直結されている。調整部40は、管路Pの途中に接続されている。調整部40は、リニアモータを備える。調整部40は、一対のピストン40A,40B、ピストンロッド40C、駆動部40D、電源40Eを備える。調整部40は、管軸方向に沿ってピストンロッド40Cが摺動する。ピストンロッド40Cの両端には、一対のピストン40A,40Bが取り付けられている。
【0106】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部40を制御して、第2熱音響デバイス6の温度比を一定にすることができる。
【0107】
[変形例4]
図7に示されるように、熱音響システム1Dは、ループ状の管路Pを備え、変形例3の第2熱音響デバイス6が分岐管P5に接続されたパルス管冷凍機20に置き換えられている。制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部40を制御して、パルス管冷凍機20の温度比を一定にすることができる。
【0108】
[変形例5]
図8に示されるように、熱音響システム1Eは、ループ状の管路Pを備え、管路Pの途中に第1熱音響デバイス2、第2熱音響デバイス6が接続されている。第1熱音響デバイス2の下流側には、分岐管P6が設けられている。分岐管P6には、調整部10が接続されている。
【0109】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、第2熱音響デバイス6の温度比を一定にすることができる。
【0110】
[変形例6]
図9に示されるように、熱音響システム1Fは、直管状の管路Pを備え、管路P内に第1熱音響デバイス2、パルス管冷凍機20が接続されている。第1熱音響システム1Fの上流側には、調整部10が設けられている。
【0111】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、パルス管冷凍機20の温度比を一定にすることができる。
【0112】
[変形例7]
図10に示されるように、熱音響システム1Gは、直管状の管路Pと第2ループ管P2とを備える。管路Pには、入力側に第1熱音響デバイス2が設けられ、出力側には第2ループ管P2内に設けられた第2熱音響デバイス6が設けられている。第1熱音響システム1Gの上流側には、調整部10が設けられている。
【0113】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、第2熱音響デバイス6の温度比を一定にすることができる。
【0114】
[変形例8]
図11に示されるように、熱音響システム1Hは、直管状の管路Pを備え、管路P内に第1熱音響デバイス2を備えている。第1熱音響システム1Hの上流側には、調整部10が設けられている。管路Pの下流側には、発電機30が設けられている(図5参照)。
【0115】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、発電機30の出力値を一定にすることができる。
【0116】
[変形例9]
図12に示されるように、熱音響システム1Iは、第1熱音響デバイス2と、調整部10と、パルス管冷凍機20とを備えている。第1熱音響システム1Iの上流側には振動流の入力源としてリニアモータRが設けられている。管路Pの途中には、分岐管P7が形成されており、分岐管P7には調整部10が接続されている。
【0117】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、パルス管冷凍機20の温度比を一定にすることができる。
【0118】
[変形例10]
図13に示されるように、熱音響システム1Jは、変形例9のパルス管冷凍機20を第2ループ管P2に設けられた第2熱音響デバイス6に置き換えて構成されている。熱音響システム1Jの上流側には振動流の入力源としてリニアモータRが設けられている。管路Pの途中には分岐管P7を介して調整部10が設けられている。
【0119】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、第2熱音響デバイス6の温度比を一定にすることができる。
【0120】
[変形例11]
図14に示されるように、熱音響システム1Kは、変形例9のパルス管冷凍機20を発電機30に置き換えて構成されている。第1熱音響システム1Kの上流側には振動流の入力源としてリニアモータRが設けられている。管路Pの途中には分岐管P7を介して調整部10が設けられている。
【0121】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、リニア発電機の出力を一定にすることができる。
【0122】
[変形例12]
図15に示されるように、熱音響システム1Lは、直管形状の管路Pを備え、管路Pの上流側に第1熱音響デバイス2と、下流側にパルス管冷凍機20を備える形状である。管路Pの途中には分岐管P7を介して調整部10が設けられている。
【0123】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、パルス管冷凍機20の温度比を一定にすることができる。
【0124】
[変形例13]
図16に示されるように、熱音響システム1Mは、直管形状の管路P内に管路内に第1熱音響デバイス2と第2ループ管P2に設けられた第2熱音響デバイス6を備える。管路Pの途中には、分岐管P7を介して調整部10が設けられている。
【0125】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、第2熱音響デバイス6の温度比を一定にすることができる。
【0126】
[変形例14]
図17に示されるように、熱音響システム1Nは、直管形状の管路Pを備え、上流側に第1熱音響デバイス2と、下流側に発電機30と備える。管路Pの途中には、分岐管P7を介して調整部10が設けられている。
【0127】
制御部12は、第1出力値に基づいて第1熱音響デバイス2が供給する仕事流の増減もしくは音場の変化に応じて調整部10を制御して、発電機30の出力を一定にすることができる。
【0128】
上述したように、実施形態に係る熱音響システムは、調整部を接続することが可能であれば様々な装置構成により実現される。また、実施形態に係る熱音響システムは、設計要素として存在する以下のパラメータに関わらず適用可能である。また、上記実施例については原動機がループ管や直管内に設置される構成であったが、仕事流の増幅・発生が可能であればこの形状に限らず、熱音響原動機、制御部、調整部、検出部、出力部の形状や数および組み合わせによらず実施例の形状に限定されない。さらに、振動流の発生自体を熱音響原動機から行わず、振動流の入力源があってもよい。
(1)作動気体の種類、平均圧力
(2)蓄熱器の流路径、長さ、材質
(3)管路の大きさ、長さ、形状(円管、矩形管)
(4)原動機、冷却機位置での断面積拡大の有無
(5)管路断面積の漸次拡大の有無
(6)熱音響デバイス内における原動機の数
(7)熱音響デバイス内における冷却機、発電機など仕事の取り出し口の数
【0129】
以上のように、熱音響現象を例に説明を行ったが、本発明は、熱音響現象に基づいた熱音響機関に限定されず、流体の振動流を利用する蓄熱器を備えるスターリングエンジン、パルス管冷凍機、GM冷凍機、スターリングクーラー、ヒートパイプ、熱音響機関等のエネルギー変換装置に適用可能である。
【0130】
以上では、制御要素として仕事流を例に説明を行ったが、制御要素として存在する以下のパラメータに関わらず適用可能である。
(1)周波数
(2)位相
(3)インピーダンス
(4)振動振幅
(5)圧力振幅
(6)流速振幅
【符号の説明】
【0131】
1 熱音響システム、1A―1M 熱音響システム、2 第1熱音響デバイス、3 蓄熱器、3C 第1熱交換器、3D 第2熱交換器、3R 流路、4 第1検出部、6 第2熱音響デバイス、6 出力部、7 蓄熱器、7C 第3熱交換器、7D 第4熱交換器、8 第2検出部、10 調整部、10A ピストン、10B ピストンロッド、10C 駆動部、10D 電源、12 制御部、20 パルス管冷凍機、21 蓄熱器、22 パルス管、23 細管、24 タンク、30 発電機、30A ピストン、30B ピストンロッド、30C 電磁コイル、30F 負荷、40 調整部、40A ピストン、40B ピストン、40C ピストンロッド、40D 駆動部、40E 電源、P 管路、P1 第1ループ管、P2 第2ループ管、P3 直管部、P4-P7 分岐管、R リニアモータ
図1
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