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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】固体表面処理装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
H01J37/305 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024096495
(22)【出願日】2024-06-14
【審査請求日】2024-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】呉 博尋
(72)【発明者】
【氏名】秦 梓軒
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515296(JP,A)
【文献】特表2010-524155(JP,A)
【文献】特開2010-115688(JP,A)
【文献】特開2012-124512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0072173(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0096263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクラスターイオンビームにより固体の厚みをそろえる表面処理を行う固体表面処理装置であって、
前記固体の表面処理を制御する制御部を有し、
前記制御部が、
(a)前記固体の膜厚に、所定のフィルタリングの処理を行い、
(b)前記固体における前記所定のフィルタリングの処理の結果および除去量関数により求められた前記ガスクラスターイオンビームのトリミングプロファイルから、前記固体の表面プロファイルシミュレーションを行い、
(c)その固体の表面プロファイルシミュレーションの結果に基づいて、前記固体の表面処理(Trimming)を行い、
(d)その表面処理(Trimming)の結果を計測し、
(e)その計測された表面処理の結果を目標値(Target)と比較し、
(f)その表面処理の結果と前記目標値とが一致するまで、前記(a)~(e)の処理を繰り返す、工程を制御する固体表面処理装置。
【請求項2】
前記固体の表面プロファイルシミュレーションが、
前記固体における前記所定のフィルタリングの結果から、滞在時間アルゴリズム設計のための方法選択処理を行い、
前記ガスクラスターイオンビームのトリミングプロファイルおよび上記選択された方法に基づいて、滞在時間アルゴリズムの設計を行い、
その滞在時間アルゴリズムの設計に基づいて、滞在時間マップ(DTM)を作成し、
その作成された滞在時間マップ(DTM)から前記イオンビームの照射レシピを作成する処理からなる請求項1に記載の固体表面処理装置。
【請求項3】
前記方法選択処理が、1層・2層~N層まで自由に選択する分層処理(Layering module)と、膜厚データのエッジ処理方法を自由に選択する再マッピング処理(Re-mapping module)と、FFTほかアルゴリズムを自由に選択する逆畳み込み処理A-D(Deconvolution solver A-D)と、反復回数を1回・2回~N回まで自由に選択する反復処理(Iteration module)と、ビームのトリミング分布を修正する校正処理(Calibration module)と、からなる5つの要素を自動的に組み合わせた処理からなる請求項2に記載の固体表面処理装置。
【請求項4】
制御部の制御に基づいてガスクラスターイオンビームにより固体の厚みをそろえる表面処理を行う固体表面処理装置において、
前記固体の表面処理を行う固体表面処理方法であって、
(a)前記制御部により、前記固体の膜厚に、所定のフィルタリングの処理を行う工程と、
(b)前記制御部により、前記固体における前記所定のフィルタリングの処理の結果および除去量関数により求められた前記ガスクラスターイオンビームのトリミングプロファイルから、前記固体の表面プロファイルシミュレーションを行う工程と、
(c)前記制御部により、その固体の表面プロファイルシミュレーションの結果に基づいて、前記固体の表面処理(Trimming)を行う工程と、
(d)前記制御部により、その表面処理(Trimming)の結果を計測する工程と、
(e)前記制御部により、その計測された表面処理の結果を目標値(Target)と比較する工程と、
(f)前記制御部により、その表面処理の結果と前記目標値とが一致するまで、前記(a)~(e)の処理を繰り返す工程と、を備える固体表面処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の固体表面処理方法を、前記制御部に実行させるための固体表面処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)を光学薄膜や半導体ウェハー等の固体の表面に照射して、その固体を表面加工する固体表面処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFフィルタの金属電極やMEMS、フォトニックデバイスなどの機能性を決定付けるデバイスパラメータとして、膜厚や表面粗さが挙げられてきている。
ここでは、ナノメーターレベルで固体の表面を平滑し、狙った膜厚になるような後処理、すなわち、固体の厚みをそろえる表面処理(トリミング)が求められている。
ガスクラスターイオンビーム(GCIB)は、モノマーイオンビームと異なり、照射領域の原子がスパッタされるだけでなく、ウェハ表面と並行に横移動する、いわゆるラテラルスパッタリング効果によって表面が平坦になり易いため、トリミング源として注目を集めている。
【0003】
一方、アインツェルレンズ等を介して収束されたビーム径は数mm程度であるが、ビーム断面でのイオン電流は均一ではなく、ビームの中心にピークをもつプロファイルを描くため、ビーム断面でエッチング率分布は、おおよそ電流プロファイルを反映したものになることが知られている。
そのため、光学薄膜等の固体において、トリミングの対象領域内で均一かつ所望の膜厚を実現するためには、ビームのイオン電流プロファイルおよび/またはトリミング分布を考慮した上で、ビームおよび/または固体をスキャンする必要があった。
【0004】
【文献】特許52312382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、均一かつ所望の膜厚を実現するための手法としては、次から次へとエッチングする箇所を換えてビームを照射し、終了したところで膜厚測定をし、高い箇所があればさらにエッチングをして膜厚分布を小さくする、とのトリミングと測定を繰り返して所望の膜厚分布にするようにしていた。
【0006】
他の従来手法としては、スキャン速度と加速度を換えてトリミング領域全体を均していくが、やはり、トリミングと測定を繰り返して膜厚分布を改善するようにしていた。
すなわち、従来では、実測結果だけで分布を調整しており、トリミングと測定を繰り返すために処理時間が掛り、さらにオーバートリミングするリスクもあることが問題だった。
さらに、上述したようにトリミング前に膜厚分布を測定するが、膜厚プロファイルに急峻な凹凸を有する場合、ビームの滞在時間やスキャン速度を実験的に求めることは難しく、トリミングと測定を繰り返して膜厚分布を揃えて行くようにしていた。
それにより、処理が複雑になるために繰り返す回数が増えたり、期待する膜厚分布と異なってしまったりすることがあった。
さらに、押し圧、処理圧力、加速電圧などビームパラメータはビームのトリミング分布と強い相関があるため、パラメータを変更する度にトリミングレシピを最初から実験的に調整しなければならず、時間と労力がかかってしまう問題があった。
【0007】
本発明は前記のような従来の問題点に着目してなされたものであり、トリミング前に測定した膜厚分布に対してノイズ除去処理および/またはスムージング処理を施すようにしているので、効率良く、かつ精密に固体の厚みをそろえる表面処理を行うことができる固体表面処理装置および方法を提供することを目的とする。
【0008】
本願発明の他の目的は、トリミングの前にシミュレーションにより固体上のイオンビームのスキャン方法を最適化しているので、少ないトリミングのスキャンで精度の良い平坦化加工および膜厚加工を行うことが出来る固体表面処理装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的達成のために、本発明に係る固体表面処理装置は、ガスクラスターイオンビームにより固体の厚みをそろえる表面処理を行う固体表面処理装置であって、
前記固体の表面処理を制御する制御部を有し、
前記制御部が、
(a)前記固体の膜厚に、所定のフィルタリングの処理を行い、
(b)前記固体における前記所定のフィルタリングの処理の結果および除去量関数により求められた前記ガスクラスターイオンビームのトリミングプロファイルから、前記固体の表面プロファイルシミュレーションを行い、
(c)その固体の表面プロファイルシミュレーションの結果に基づいて、前記固体の表面処理(Trimming)を行い、
(d)その表面処理(Trimming)の結果を計測し、
(e)その計測された表面処理の結果を目標値(Target)と比較し、
(f)その表面処理の結果と前記目標値とが一致するまで、前記(a)~(e)の処理を繰り返す、工程を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の特徴は、制御部の制御に基づいてガスクラスターイオンビームにより固体の厚みをそろえる表面処理を行う固体表面処理装置において、
前記固体の表面処理を行う固体表面処理方法であって、
(a)前記制御部により、前記固体の膜厚に、所定のフィルタリングの処理を行う工程と、
(b)前記制御部により、前記固体における前記所定のフィルタリングの処理の結果および除去量関数により求められた前記ガスクラスターイオンビームのトリミングプロファイルから、前記固体の表面プロファイルシミュレーションを行う工程と、
(c)前記制御部により、その固体の表面プロファイルシミュレーションの結果に基づいて、前記固体の表面処理(Trimming)を行う工程と、
(d)前記制御部により、その表面処理(Trimming)の結果を計測する工程と、
(e)前記制御部により、その計測された表面処理の結果を目標値(Target)と比較する工程と、
(f)前記制御部により、その表面処理の結果と前記目標値とが一致するまで、前記(a)~(e)の処理を繰り返す工程と、を備えることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、GCIBによる固体の表面処理(トリミング)において、少ないトリミングのスキャンで精度の良い十分な平坦化加工および膜厚加工を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る固体表面処理装置1を模式的に示す構成図である。
図2図2は、図1に示した制御部33の内部構成のブロック図である。
図3図3は、図1に示した固体表面処理装置1による固体表面処理のフローチャートである。
図4図4は、制御部33により行われる固体27の表面処理の機能ブロック図である。
図5図5は、表面プロファイルシミュレーションプログラムによって達成されるサンプルとしての薄膜27の前処理48および薄膜27の表面プロファイルシミュレーション処理の機能ブロック図である。
図6図6は、前処理部55における前処理の一例、滞在時間マップ作成部61における滞在時間マップ作成処理の一例、およびGCIBレシピ作成部63におけるGCIBレシピ作成処理の一例をそれぞれ示す説明図である。
図7図7は、図4に示した表面プロファイルシミュレーション処理51における選択処理を概念的に表現した概念図である。
図8図8は、荷電粒子の滞在時間(Dwell time)から滞在時間マップを計算するようすを概念的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施した固体表面処理装置とそれを用いた固体表面処理方法について、図面に関連付けて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施した固体表面処理装置を模式的に示す構成図である。
なお、この固体表面処理装置は固体の厚みを揃える表面処理を行うようになっており、固体としては、光学デバイスで使われる光学薄膜や、半導体デバイスで使われる半導体ウエハ等が適用される。
この実施形態では、固体の厚みをそろえる表面処理として、光学用の薄膜の表面を処理して、所望の膜厚で平坦化する場合について説明する。ここで、薄膜の表面処理とは、(a)表面粗さを除去し、(b)目標厚みに揃え、(c)パターニングを行う、の3つの処理要素からなる。
なお、本発明は、光学用の薄膜の表面処理に限定されることはなく、半導体デバイスで使われる半導体ウエハの表面の平坦化等にも適用でき、さらには、固体上に形成されるあらゆる形状の微細パターンにも適用できる。
また、図1に示す固体表面処理装置は、一例であって、後述する表面プロファイルシミュレーション処理を含む固体表面の処理プログラムを実行する固体表面処理装置であれば、どのような構成でも良い。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の固体表面処理装置1においては、原料ガス3がノズル5を介して真空のクラスター生成室7内に射出され、クラスター生成室7内にて原料ガス3のガス分子が凝集させられクラスターが生成される。
ここで、ノズル5の大きさや形状に基づく粒度分布やノズル吐出口5aでのガス圧力や温度によってクラスターの規模が決定される。
【0016】
クラスター生成室7で生成されたクラスターは、スキマー9を通過してガスクラスタービーム11として導入され、イオンナイザ13により熱電子の照射が行われ、中性クラスターがイオン化され、イオン化されたガスクラスタービーム(GCIB)15となる。
GCIB15は、加速電極17によって加速され、磁界集束器19によって集束されてスパッタ室21に入射される。
スパッタ室21に入射されたGCIB15は、正電荷を持っており、その正電荷を持ったGCIB15が、ニュートラライザー23によって電気的に中性化され、アパチャー25によって所定のビーム径とされて固体からなるターゲット27の表面に照射される。
この実施形態では、固体として光学用の薄膜が設置される。
【0017】
固体ターゲットとしての薄膜27の背後には、薄膜27から所定距離の後方位置に、帯電した粒子を真空中で捕捉して荷電粒子を検出する金属製のカップからなるファラデーカップ28が設けられ、荷電粒子が検出される。
なお、スパッタ室21内には、Arのような希ガスが充填されており、化学的に活性なガス(例えばSF6など)を使うことにより、ターゲットである薄膜27の表面の処理(トリミング)が可能となる。
【0018】
スパッタ室17内に設けられたターゲット支持体29には回転ディスクを介してGCIB照射対象の薄膜であるターゲット27が固定して取り付けられている。
なお、ここでは、ターゲットである薄膜27の表面、すなわち処理対象面に対して、GCIB15が、所定の照射角度を持って照射するようにターゲット支持体29が取り付けられている。
【0019】
この固体表面処理装置1には、GCIB15の照射角度および照射方角を変化させることのできる照射角度方角設定機構(図示省略)が装備されると共に、GCIB15に対する薄膜27のXY方向の相対位置を変化させるスキャニング機構(図示省略)が装備されている。
【0020】
さらに、この固体表面処理装置1には、薄膜27のパターン構造(微細構造)を測定して、その形状データを得るための原子間顕微鏡等のパターン構造測定装置31が備えられており、その測定された形状データが、後述する制御部33に入力されるようになっている。
【0021】
この固体表面処理装置1には、パソコン等からなる制御部33が備えられており、後述する薄膜表面を平坦化して所望の膜厚とする処理(薄膜27の厚みを揃える処理)を実行すると共に、その固体表面処理の前に、ガスクラスタービーム(GCIB)15が描く軌跡であるスキャンパターンを最適化するために、測定したGCIBのトリミングプロファイルを用いて薄膜面内の表面プロファイルをシミュレーションして後述するGCIBのレシピを得る制御を行うようになっている。
そのために、制御部33には、薄膜表面を平坦化して所望の膜厚とする処理を実行する固体表面処理プログラムと共に、固体の表面プロファイルをシミュレーションする表面プロファイルシミュレーションプログラムが記憶されている。
【0022】
図2は、図1に示した制御部33の内部構成のブロック図である。
図2に示すように、制御部33は、RAM35およびROM37と表示モニタ39とキーボード41とマウス43とがCPU45に接続された構成のパーソナルコンピュータ(PC)であり、CPU45が、キーボード41およびマウス43によってオペレータにより入力された指示に基づき、ROM37に記憶された固体表面処理プログラムおよび表面プロファイルシミュレーションプログラムに従って、後述する制御を行うように構成される。
なお、その固体表面処理プログラムに、表面プロファイルシミュレーションプログラムが含まれるようにしても良い。
【0023】
次に、上記固体表面処理装置1による薄膜の表面処理方法について説明する。
ここでは、固体表面処理方法として、薄膜27の表面を平坦化して所望の膜厚を得る方法について説明しているが、本願発明は、シリコン基板のような半導体ウエハの表面平坦化にも適用できる。
図3は、図1に示した固体表面処理装置1による表面処理のフローチャートである。
この表面処理では、所望の膜厚に平坦化された薄膜を得るために、薄膜27の表面のスキャンパターンの最適化を行う表面プロファイルシミュレーション処理が行われるようになっている。
【0024】
まず、図3のステップ101において、制御部33により、薄膜27の前処理が行われる。
すなわち、図4に示すように、薄膜27の膜厚(Wafer thk)に対して、前処理として所定のフィルタリングが行われる。
なお、上記薄膜27の膜厚(Wafer thk)は、事前に測定したサンプルの表面プロファイルより得られる。
図4は、制御部33により行われる上記薄膜27の表面処理の機能ブロック図である。
このフィルタリングは、例えば、カルマンフィルタ(Kalman Filter)、メディアンフィルタ(MedianFilter)、あるいはコンブフィルタ(ConvFilter)等のフィルタで行われる。
ここでの、前処理48としてのフィルタリングが行われるのは、ノイズ除去のためである。
すなわち、薄膜の欠陥(ノジュールやピットほか)や測定器由来の測定ノイズにより、得られる測定データが、現実の表面プロファイルと解離してしまうことが多々あった。
そこで、本発明では、上述したフィルタリング法で、測定データに存在する大小のノイズを除去するようにしている。
具体的には、上記各フィルタにおけるSN比を計算し、その各フィルタにおけるSN比を比較し、その各フィルタにおけるSN比の一番大きかったフィルタを選択するようにしている。
これにより、正確な膜厚分布が得られることとなる。
なお、上記前処理部55におけるフィルタリング処理に使用されるフィルタとして、カルマンフィルタ(Kalman Filter)、メディアンフィルタ(MedianFilter)、あるいはコンブフィルタ(ConvFilter)等を挙げたが、上述したフィルタ以外にも、測定値からノイズを取り除き、実際の表面プロファイルに近づけるものであれば、どのようなフィルタでも良い。
【0025】
次に、ステップ103において、制御部33により、前処理48としてのフィルタリングが行われた薄膜27の膜厚およびGCIBのトリミングプロファイルに基づいて、薄膜面内の表面プロファイルをシミュレーションするための表面プロファイルシミュレーション処理51が行われる(図4参照)。
なお、上記GCIBのトリミングプロファイルは、事前に測定したGCIBのプロファイルより除去量関数により求められる。
ここで、表面プロファイルシミュレーション処理51の内容としては、図5に示すように、サンプルとしての薄膜27の膜厚に前処理48としてのフィルタリングが行われた結果および除去量関数により求められたGCIBのトリミングプロファイルから、滞在時間アルゴリズムを設計する処理が行われる。
なお、GCIBは、スキャン速度と加速度とでコントロールされるが、このスキャン速度を、0mm/sにし、ビームを一箇所に止めて滞在させて深掘りする時間を、ここでは、滞在時間と定義する。
なお、上記サンプルとしての薄膜27のGCIBのトリミングプロファイルは、後述する除去量関数により求められる。
この薄膜27の表面プロファイルシミュレーションは、表面プロファイルシミュレーションプログラムに従って、制御部33により行われる。
ここで、図4に示された、表面プロファイルシミュレーションプログラムによって達成されるサンプルとしての薄膜27の前処理48および表面プロファイルシミュレーション処理51は、前述した表面プロファイルシミュレーションプログラムによって達成されるブラックボックスと捉えることができる。
図5は、前述した表面プロファイルシミュレーションプログラムによって達成されるサンプルとしての薄膜27の前処理48および薄膜27の表面プロファイルシミュレーション処理の機能ブロック図である。
すなわち、この図5では、上記サンプルとしての薄膜27の前処理48および表面プロファイルシミュレーション処理51は、前述した表面プロファイルシミュレーションプログラムによって達成されるブラックボックス53として表現されている。
【0026】
図5に示すように、前述した表面プロファイルシミュレーションプログラムによって達成されるブラックボックス53は、サンプルとしての薄膜27の膜厚(Wafer thk)に対して、前処理48としてのフィルタリングを行う前処理部55と、前処理部55による前処理48の結果を受けて、前述した滞在時間アルゴリズム(DTA)設計のための方法の選択処理を行う選択処理部57と、選択処理部57により選択された5つの要素の組み合わせおよび除去量関数(Removal function)により求められたGCIBのトリミングプロファイルに基づいて、滞在時間アルゴリズム(DTA)設計を行う滞在時間アルゴリズム(DTA)設計部59と、滞在時間アルゴリズム(DTA)設計部59により設計された滞在時間アルゴリズム(DTA)に基づいて、滞在時間マップを作成する滞在時間マップ作成部61と、滞在時間マップ作成部61よりの滞在時間マップに基づいて、GCIBのレシピを作成するGCIBレシピ作成部63より構成される。
【0027】
次に、このブラックボックス53の各部について説明する。
まず、前処理部55では、前述したように、サンプルとしての薄膜27の膜厚(Wafer thk)が、カルマンフィルタ(Kalman Filter)、メディアンフィルタ(MedianFilter)、あるいはコンブフィルタ(ConvFilter)等のいずれかのフィルタにかけられてフィルタリング処理される。
ここで、上記フィルタリング処理に使われるフィルタは、上述したフィルタ以外にも、測定値からノイズを取り除き、実際の表面プロファイルに近づけるものであれば、どのようなフィルタでも良い。
図6は、前処理部55における前処理の一例、滞在時間マップ作成部61における滞在時間マップ作成処理の一例、およびGCIBレシピ作成部63におけるGCIBレシピ作成処理の一例をそれぞれ示す説明図である。
図6(a)は、サンプルとしての薄膜27の膜厚(Wafer thk)のデータを、前処理としてメディアンフィルタ(MedianFilter)にかけたようすを示す図面である。
【0028】
次に、選択処理部57では、分層処理(Layering module)、再マッピング処理(Re-mapping module)、逆畳み込み処理A-D(Deconvolution solver A-D)、反復処理(Iteration module)、校正処理(Calibration module)からなる5つの要素を、自動的に組み合わせた処理からなり、少なくとも5つの要素の1つからなる。
ここで、一番良い組み合わせとなるように、上記5つの要素が自動的に組み合わされる。
すなわち、シミュレーションに用いられるアルゴリズム(DTA: Dwell Time Algorithm)は、分層処理、再マッピング、逆畳み込み処理、反復処理、校正処理からなる一連のフローを経るものであり、それぞれの処理は複数の選択肢を有するため、これらの組合せの数は膨大なものとなる。
そのため、ここでは、自動的に全組合せによる残差二乗和(rms)を計算し、自動的に最適解を見つけ出せるようにしている。
すなわち、ここでは、分層処理、再マッピング、逆畳み込み処理、反復処理、校正処理の各組み合わせの残差二乗和(rms)を計算し、その計算結果の一番小さなものを、自動的に選択するようにしている。
さらに、特異な分布では最小のrmsが真の分布を意味すると限らないため、ユーザーはrmsを参考により真の分布を再現している組合せを選択してレシピに組込むこともできる。
ここで、分層処理(Layering module)とは、1層・2層~N層まで自由に選択する処理であり、再マッピング処理(Re-mapping module)とは、膜厚データのエッジ処理方法を自由に選択する処理であり、逆畳み込み処理A-D(Deconvolution solver A-D)とは、FFTほかアルゴリズムを自由に選択する処理であり、反復処理(Iteration module)とは、反復回数を1回・2回~N回まで自由に選択する処理であり、校正処理(Calibration module)とは、ビームのトリミング分布を修正する処理である。
図7は、図4に示した表面プロファイルシミュレーション処理51における選択処理を概念的に表現した概念図である。
図7に示すように、薄膜27の膜厚が、最適化処理を経て、滞在時間マップが得られるようになっている。
本発明の特徴は、このように多くの処理と複雑な組合せによるアルゴリズムを設計することができるようになることである。
【0029】
次に、滞在時間アルゴリズム(DTA)設計部59では、選択処理部57により選択された5つの要素の組み合わせおよび除去量関数により求められたGCIBのトリミングプロファイルに基づいて、滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計が行われる。
ここで、滞在時間(Dwell time)とは、前述したように、スキャン速度と加速度とでコントロールされるGCIBにおいて、このスキャン速度を、0mm/sにし、ビームを一箇所に止めて滞在させて深掘りする時間のことであり、滞在時間アルゴリズム(DTA)とは、この滞在時間(Dwell time)から滞在時間マップを計算するためのアルゴリズムである。
この滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計の原理について説明する。
まず、除去量 Z(x、y)は、イオンビーム除去量関数(BRF)b(x、y)と滞在時間マップt(x、y)との間の畳み込み(convolution)として、以下の式(1)でモデル化される。

z(x, y)= b(x, y)* t(x, y) (1)

ここで、*は、畳み込み演算を示す。

ここから、除去量 Z(x、y)およびイオンビーム除去量関数(BRF)b(x、y)から、滞在時間マップt(x、y)を求める計算を行うわけであるが、この計算は、逆畳み込み処理となる。
従って、このような滞在時間アルゴリズム(DTA)によって滞在時間マップを求めることにより、GCIBのレシピを作り、そのレシピに従ったGCIBにより薄膜27の膜厚をそろえることにより、より精度の高い表面処理を実現できることとなる。
【0030】
次に、滞在時間マップ作成部61では、滞在時間アルゴリズム(DTA)設計部59によって設計された滞在時間アルゴリズム(DTA)に基づいて、滞在時間マップが計算される。
すなわち、上述した式(1)を用いて滞在時間マップt(x、y)が計算される。
図8は、荷電粒子の滞在時間(Dwell time)から滞在時間マップを計算するようすを概念的に示した説明図である。
図8では、図8(a)~図8(c)へとスキャンして行って滞在時間マップを計算するようすを示している。図8(d)は、スキャンした結果を示している。
このように、滞在時間アルゴリズム(DTA)により滞在時間マップを求めることにより、スキャンパターンを最適化することができる。
そして、その滞在時間マップから、以下で説明するようにGCIBのレシピを作り、そのレシピに従ったGCIBにより薄膜27の膜厚を揃えることができ、それにより精度の高い表面処理を実現できることとなる。
また、上述した滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計を行って滞在時間マップを求めてスキャンパターンを最適化した結果、後述する薄膜27の表面処理(トリミング)の回数が大幅に減少する。
図6(b)は、滞在時間アルゴリズム(DTA)に基づいて計算された滞在時間マップの一例を示す図面である。
【0031】
次に、GCIBレシピ作成部63では、滞在時間マップ作成部61よりの滞在時間マップt(x、y)に基づいて、GCIBのレシピが作成される。
すなわち、滞在時間マップt(x、y)から、GCIBのレシピとして、例えば、図6(c)に示すように、X軸の各位置におけるGCIBのスピードの値およびY軸の各位置におけるGCIBのスピードの値が求められて、そのGCIBのレシピにより、図4に示す薄膜27の表面処理(トリミング)52が行われる。
【0032】
次に、図3に戻り、そのステップ105において、制御部33により、上記滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計処理51によって得られた滞在時間マップに基づくGCIBのレシピによって、GCIBによる薄膜27の表面処理(トリミング)52が行われる(図4参照)。
すなわち、ここでは薄膜27の対象表面のエッチングを行うことで、パターン構造をトリミング(調整)して対象表面の平坦化を行うと共に、薄膜27を所望の膜厚となるようにしている。
【0033】
次に、このGCIBによる薄膜27の表面処理(トリミング)について説明する。
上記ステップ105において、上記滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計処理51によってえられた滞在時間マップに基づくGCIBのレシピから、微細構造が所望の設計サイズになるようにエッチング量が計算される。
その後、薄膜27が、GCIBに対して所定の照射角度θ・照射方角φとなるように、照射角度方角設定機構(図示省略)により設置される。
なお、ここでは、ターゲットである薄膜27の薄膜表面、すなわち処理対象面に対して、GCIB15が、所定の照射角度を持って照射するようにターゲット支持体29が取り付けられる。
そして、上記計算されたエッチング量と共に、ターゲットである薄膜27の材質とそのエッチング率、GCIBのガス種、加速エネルギー、などの諸条件が設定され、この諸条件を基にデータベース(図示省略)が参照されてドーズ量が決定され、そのドーズ量に基づいて、ガスクラスーイオンビーム照射処理が行われる。
すなわち、制御部33により、上記ドーズ量に基づいて、原料ガス3の生成部(図示省略)、イオンナイザ13、加速電極17、磁界集束器19、ニュートラライザー23、照射角度方角設定機構(図示省略)、スキャニング機構(図示省略)等が制御されて、ガスクラスーイオンビーム照射処理が、薄膜27の表面に行われ、GCIBによる薄膜27の表面処理(トリミング)処理が行われる。
【0034】
次に、ステップ107において、制御部33により、その表面処理した薄膜27の膜厚およびパターンや均一性等の結果を得る(図4の結果評価54)。
すなわち、制御部33により、その薄膜27の透過スペクトルを測定し、光の干渉を考慮した解析をすることで膜厚が求まり、測定箇所を変えてスペクトルを測定・分析することで膜厚分布が得られる。
【0035】
次に、ステップ109において、制御部33により、その計測された薄膜の表面処理(トリミング)の結果である膜厚およびパターンや均一性等が、薄膜の目標値(Target)と比較され、その計測された薄膜の表面処理の結果が、薄膜の目標値(Target)56(図4参照)となっているか否かが判定される。
【0036】
そして、上記ステップ109において計測された薄膜の表面処理(トリミング)の結果が、薄膜の目標値(Target)56となっている場合(Yes)は、全体の薄膜表面処理が終了される。
これにより、薄膜27の表面のスキャンパターンが最適化されることとなり、薄膜27の表面が驚異的に平坦化され、所望の膜厚が得られる。
そして、計測された薄膜の表面処理(トリミング)の結果が、薄膜の目標値(Target)となっていない場合(No)は、上記ステップ101の滞在時間アルゴリズム(DTA)設計処理51へ戻り、薄膜の表面処理(トリミング)の結果と前記目標値(Target)とが一致するまで、制御部33により、上記ステップ101~ステップ107の処理が繰り返される。
なお、この実施形態では、上述のように、表面プロファイルシミュレーションによる滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計を行って滞在時間マップを求めているので、薄膜の表面処理(トリミング)の結果と前記目標値(Target)とが、直ぐに一致する(例えば1回)。
そのため、非常に少ない回数の薄膜の表面処理(トリミング)で、薄膜の表面処理(トリミング)の結果と前記目標値(Target)とが一致するようになる。
【0037】
以上説明したように、本願発明の実施形態によれば、上述のように、滞在時間アルゴリズム(DTA)の設計処理を含む表面プロファイルシミュレーションによって得られた滞在時間マップに基づくGCIBのレシピによって、GCIBによる薄膜27の厚みをそろえる表面処理(トリミング)52を行っているので、少ないトリミングのスキャンで精度の良い表面処理を行うことが出来るようになる。
【0038】
以上、本実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
すなわち、本実施形態の固体表面処理装置は、一例であって、前記表面プロファイルシミュレーションプログラムを含む薄膜表面平坦化プログラムを実行する固体表面処理装置であれば、どのような構成でも良い。
また、上述した前処理部55におけるフィルタリング処理に使用されるフィルタとして、カルマンフィルタ(Kalman Filter)、メディアンフィルタ(MedianFilter)、あるいはコンブフィルタ(ConvFilter)等を挙げたが、上述したフィルタ以外にも、測定値からノイズを取り除き、実際の表面プロファイルに近づけるものであれば、どのようなフィルタでも良い。
また、この実施形態では、固体表面処理装置は薄膜の表面処理を行うようになっているが、固体としては、半導体デバイスで使われる半導体ウエハ等にも適用でき、さらには、固体上に形成されるあらゆる形状の微細パターンにも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・固体表面処理装置、3・・・原料ガス、5・・・ノズル、
7・・・クラスター生成室、9・・・スキマー、11・・・ガスクラスタービーム、
13・・・イオンナイザ、17・・・加速電極、19・・・磁界集束器、
21・・・スパッタ室、23・・・ニュートラライザー、25・・・アパチャー、
27・・・薄膜(ターゲット)、28・・・ファラデーカップ、33・・・制御部、
35・・・RAM、37・・・ROM、39・・・表示モニタ、41・・・キーボード、
43・・・マウス、45・・・CPU、48・・・前処理、
51・・・表面プロファイルシミュレーション処理、52・・・表面処理、
54・・・計測処理、55・・・前処理部、56・・・目標値、57・・・選択処理部、
59・・・滞在時間アルゴリズム設計部、61・・・滞在時間マップ作成部、
63・・・GCIBレシピ作成部
【要約】      (修正有)
【課題】GCIBによる薄膜等の固体のトリミングにおいて、少ないトリミングのスキャンで精度の良い十分な表面処理を行うことができる固体表面処理装置および方法を提供する。
【解決手段】ガスクラスターイオンビームにより固体の表面を平坦化する固体表面処理装置において、固体の膜厚に、最初に所定のフィルタリングの処理を行い、固体における所定のフィルタリング処理の結果および除去量関数により求められた前記ガスクラスターイオンビームのトリミングプロファイルから、固体の表面プロファイルシミュレーションを行い、その固体の表面プロファイルシミュレーションの結果に基づいて、固体の表面処理(Trimming)を行い、その表面処理(Trimming)の結果を計測し、その計測された表面処理の結果を目標値(Target)と比較し、その表面処理の結果と目標値とが一致するまで、上記処理を繰り返す構成となっている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8