(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】陳列装置
(51)【国際特許分類】
A47F 5/10 20060101AFI20241224BHJP
A47F 5/11 20060101ALI20241224BHJP
A47F 5/13 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A47F5/10 A
A47F5/11
A47F5/13
(21)【出願番号】P 2024159790
(22)【出願日】2024-09-17
【審査請求日】2024-09-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.2023年11月6日に株式会社ダイヤケミカル 2023年12月5日に株式会社マルカン 2024年7月12日に神崎紙器工業株式会社 2024年7月31日に古林紙工株式会社 にて商談のため公開 2.2024年2月27日に株式会社マルカンに納品
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592082066
【氏名又は名称】株式会社三邦
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】鐘江 悟
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕二
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-77012(JP,A)
【文献】特開2014-83210(JP,A)
【文献】特開2000-237003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/10
A47F 5/11
A47F 5/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を縦横に配置して構成されるネット什器に設置される陳列部材を有し、陳列部材がフックを介してネット什器の前側に取り付けられる陳列装置であって、陳列部材の背面に複数のフックが一体的に折り曲げ可能に設けられ、フックがネット什器の縦線材を巻き込み、フックの先端がネット什器の横線材よりも前側で陳列部材または横線材に係止されることを特徴とする陳列装置。
【請求項2】
フックが陳列部材の背面に切り起こし可能に形成され、後方に向かって切り起こされたフックが縦線材の外側から前側に向かって折り曲げられて、縦線材を巻き込むことを特徴とする請求項1記載の陳列装置。
【請求項3】
フックの先端部が、基部よりも幅広に形成され、かつ上下の横線材の間隔よりも大に形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の陳列装置。
【請求項4】
紙製の陳列部材は、商品を収納可能な箱状に形成され、運搬時には輸送箱として使用され、上面および前面の上側が開口された陳列時に陳列部材がネット什器に取り付けられることを特徴とする請求項3記載の陳列装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材を縦横に配置して構成されるネット什器において商品などを陳列するための陳列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縦線材と横線材を縦横に配置して構成されるネット什器に商品などを陳列するための陳列装置を設置する場合、Sカン(S字状の金具)やプラスチック製フックなどの別部材が用いられる。ここで、地球温暖化や海洋汚染などの環境問題の観点から、環境に配慮して設置用の別部材を用いずに、一体式の紙製フックを備えた陳列装置が提供されている。特許文献1に記載されているように、陳列装置の背板の上端にフックが切り起こし可能に形成されている。フックを後方に折り曲げて、ネット什器の横線材にフックを引っ掛けることにより、陳列装置をネット什器に設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の陳列装置では、前後方向の荷重に対しては安定した状態を維持できる。しかし、左右方向の荷重に対して、フックが縦線材に引っ掛かっていないので、不安定な状態にあり、陳列装置が左右方向にずれるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、前後左右方向の荷重に対して安定した状態で設置できる陳列装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の陳列装置は、線材を縦横に配置して構成されるネット什器に設置される陳列部材を有し、陳列部材がフックを介してネット什器の前側に取り付けられる。陳列部材の背面に複数のフックが一体的に折り曲げ可能に設けられ、フックがネット什器の縦線材を巻き込み、フックの先端がネット什器の横線材よりも前側で陳列部材または横線材に係止される。フックが縦線材を巻き込むことにより、左右方向に荷重がかかっても、フックが縦線材に引っ掛かり、フックは左右方向にずれず、陳列部材は傾くことがない。
【0007】
フックが陳列部材の背面に切り起こし可能に形成され、後方に向かって切り起こされたフックが縦線材の外側から前側に向かって折り曲げられて、縦線材を巻き込む。そして、フックの先端部が、基部よりも幅広に形成され、かつ上下の横線材の間隔よりも大に形成される。フックは縦線材の後側を通って、先端部が横線材の前側にある。したがって、フックがネット什器を前後から挟み込むことになり、前後方向に荷重がかかっても陳列部材はネット什器から外れることはない。
【0008】
紙製の陳列部材は、商品を収納可能な箱状に形成され、運搬時には輸送箱として使用され、上面および前面の上側が開口された陳列時に陳列部材がネット什器に取り付けられる。輸送箱をそのまま陳列装置として直接ネット什器に設置することができ、設置用の別部材が不要となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、フックが縦線材を巻き込んで横線材に係止されることにより、左右方向の荷重と前後方向の荷重に対して、陳列部材を安定した状態でネット什器に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のネット什器に設置された陳列装置を示す図
【
図8】フックを縦線材の外側に通したときの陳列部材を示す図
【
図9】フックを横線材の前側で係止したときの陳列部材を示す図
【
図10】他の形態のフックが設けられた陳列装置を示す図
【
図11】吊り下げ式フックが設けられた陳列装置を前側から見た斜視図
【
図12】吊り下げ式フックが設けられた陳列装置を後側から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態に係る陳列装置を
図1~3に示す。陳列装置は、線材を縦横に配置して構成されるネット什器1に設置される陳列部材2と陳列部材2の上面を覆う蓋部材3とを有する。陳列部材2がフック4を介してネット什器1の前側に取り付けられる。ネット什器1の縦線材5および横線材6は、所定の間隔、例えば50mmで配置される。
【0012】
陳列装置は、1枚の厚みのある紙を折り曲げて組み立てられ、
図2に示すような商品を収納可能に上面が開口可能な箱状に形成され、運搬時に輸送箱として使用される。そして、
図4に示すように、陳列装置の上面の蓋部材3および陳列部材2の前面の上側が開口されることにより、商品を陳列可能な陳列部材2として使用可能となり、ネット什器1に設置される。また、陳列部材2をそのまま棚、カウンター、床などに載置して、陳列什器として使用することも可能である。
【0013】
図5に示すように、陳列部材2は上面が開口された箱状に形成され、蓋部材3が陳列部材2に一体的に設けられ、陳列部材2の上面を開閉する。陳列部材2の左右の側面の上縁に上フラップ10が設けられ、陳列部材2の左右の側面から前面にかけて切裂帯11が形成されている。切裂帯11は、上フラップ10から側面の前縁の中央に向けて下り傾斜に形成され、前面では水平方向に形成され、切裂帯11の前面の中央に切込線12が形成されている。切裂帯11を切り裂くことにより、陳列部材2の前面の上部および側面の前側部分が開口する。
図6に示すように、陳列部材2の底面は、2枚の内フラップ13と2枚の外フラップ14とから構成され、内フラップ13が重ね合わせられ、外フラップ14が内フラップ13に接着される。
【0014】
図7に示すように、陳列部材2の背面に複数のフック4が一体的に切り起こし可能かつ折り曲げ可能に設けられる。フック4は左右一対に設けられ、フック4の基部20は背面の側縁から水平方向に帯状に形成され、先端部21は上下に突出するように形成され、先端21部は基部20よりも幅広に形成される。基部20と先端部21との境界に折曲線22が形成される。フック4が切り起されると、陳列部材2の背面には、フック4と同じ形状の切抜孔23が左右に形成される。
【0015】
陳列部材2の左右方向の幅は、縦線材5の間隔に応じた長さとされる。例えば、3本の縦線材5に対応する場合、陳列部材2の左右方向の幅は、左側の縦線材5の外側から右側の縦線材5の外側までの長さ(外法寸法)よりも少しだけ長くされる。したがって、陳列部材2をネット什器1に設置したとき、陳列部材2の背面の側縁は左右の縦線材5の外側よりも少しだけ外方向に位置する。また、フック4の基部20の上下方向の長さは、上下の横線材6の間隔(内法寸法)と同じか少し短くされる。すなわち、陳列部材2の上下方向の長さは、上側の横線材6の内側から下側の横線材6の内側までの長さと同じか少し短い。これにより、フック4の先端部21の上下方向の長さは、上下の横線材6の間隔よりも大となり、フック4の先端部21の上端は上側の横線材6よりも上方に位置し、先端部21の下端は下側の横線材6よりも下方に位置する。
【0016】
蓋部材3は、背面の上縁に一体的に折り曲げ可能に設けられ、前縁に下フラップ30が設けられる。蓋部材3の前後方向の中央にミシン目31が形成される。陳列部材2の背面の上部に、下フラップ30を差し込み可能な半円状のスリット32が形成され、下フラップ30をスリット32で係止することにより、ミシン目31で二つ折りにした蓋部材3が保持される。
【0017】
上記の陳列装置は、陳列する前は商品を収容した輸送箱として使用される。陳列するときには、蓋部材3を開けて、切裂帯11を切り離すと、
図4に示すような上方が開口した陳列部材2となる。この後、陳列部材2をネット什器1に設置する。
【0018】
まず、
図7に示すように、陳列部材2のフック4を後方に向けて切り起こし、
図8に示すように、左右のフック4をネット什器1のそれぞれの縦線材5の外側を通す。フック4を内側に向けて折り曲げて、フック4で縦線材5を巻き込む。
図9に示すように、フック4の先端部を上下の横線材6の間を通して、さらに切抜孔23に通す。このとき、フック4の先端部21は幅広になっているので、先端部21の上下を撓ませながら押し込むとよい。
図1に示すように、フック4は縦線材5を巻き込み、先端部21が陳列部材2の切抜孔23の上縁および下縁に引っ掛かり、フック4が陳列部材2に係止される。言い換えれば、フック4が陳列部材2の背面を介して横線材6に間接的に係止される。このようにして、陳列部材2はネット什器1に取り付けられ、商品が陳列部材2に載置される。
【0019】
フック4は縦線材5の後側と横線材6の前側を通るように折り曲げられることにより、ネット什器1を前後から挟み付ける構造となり、フック4はネット什器1から抜け出すことがない。そして、陳列部材2に前後方向に荷重がかかると、縦線材5にフック4が引っ掛かり、陳列部材2は前方には動かない。また、左右方向に荷重がかかっても、縦線材5にフック4が引っ掛かり、陳列部材2は左右には動かず、傾くことはない。このように、フック4が縦線材5を巻き込むことにより、前後左右方向の荷重に対して、陳列部材2を安定した状態で保持することができる。
【0020】
フック4の他の形態として、
図10に示すように、上下に複数のフック4が設けられる。フック4の形状等は上記の実施形態のものと同じである。陳列部材2の左右側面に、フック4の先端部21を差し込み可能なスリット35が上下に形成され、フック4が陳列部材2の側面に係止される。
【0021】
陳列部材2をネット什器1に設置するとき、それぞれ縦線材5を巻き込んだ上下のフック4の先端部21を陳列部材2の切抜孔23を通して前方に持ってくる。フック4の先端部21をスリット35に差し込むと、フック4が陳列部材2に係止され、陳列部材2がネット什器1に取り付けられる。上下の複数のフック4を介して陳列部材2をネット什器1に取り付けることにより、陳列部材2の耐荷重性が増し、重い商品を陳列することが可能となる。
【0022】
蓋部材3には、
図11、12に示すように、吊り下げ用フック40が設けられている。蓋部材3の後側に、左右一対の爪41用の切込線42が前後方向に形成され、左右の切込線42の間が引っ掛け片43となる。引っ掛け片43に折曲線44が左右方向に形成され、各切込線42の外側に2本の折曲線45が左右方向に形成される。蓋部材3の後側を後方に折り曲げることにより、引っ掛け片43が陳列部材2の背面に隙間を空けて対向し、吊り下げ用フック40が形成される。また、陳列部材2の背面に、蓋部材3の爪41を係止するための差込口46が設けられ、差込口46は、上下方向に形成された切込線47と内側に向けて延びる切込線48とによって形成される。2本の切込線47,48を押すことによって差込口46が開口し、蓋部材3の爪41を差し込むことができる。
【0023】
蓋部材3の前側をミシン目31で切り取った後、蓋部材3の引っ掛け片43を折曲線44に沿って後方に折り曲げ、陳列スタンドの横棒49に引っ掛ける。左右の折曲線45に沿って引っ掛け片43を折り曲げると、爪41が突出するので、爪41を陳列部材2の差込口46に差し込む。引っ掛け片43が陳列部材2の背面に固定される。これにより、吊り下げ用フック4が横棒に外れないように保持され、陳列部材2が陳列スタンドに吊り下げられる。このように、陳列部材2を陳列スタンドに吊り下げて使用することもできる。
【0024】
陳列装置の他の実施形態として、
図13、14に示すように、陳列部材50が庇状に形成され、ネット什器1の前側に取り付けられ、演出什器として機能する。陳列部材50は、1枚の厚みのある紙を折り曲げて形成された壁部51と庇部52とから構成される。庇部52の左右両側に、庇部52を傾斜した状態で支持するための支持片53が形成され、支持片53にフック4が設けられる。なお、フック4の構造は上記の実施形態のものと同じである。壁部51には、宣伝、POP、商品に関する情報などが表示される。また、庇部52に表示してもよい。
【0025】
陳列部材50をネット什器1に設置するとき、フック4をネット什器1の縦線材5の外側に通して、内側に向けて折り曲げ、フック4の先端部21を上下の横線材6の間を通して横線材6よりも前側に持ってくる。フック4は縦線材5を巻き込み、先端部21が上下の横線材6に引っ掛かり、フック4が横線材6に直接係止される。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。陳列部材2の背面の左右方向の中間にフック4を設けてもよい。陳列部材2が左右方向に長い場合、フック4を左右両側の中間に設けることにより、前後方向の荷重に対して補強でき、陳列部材2の左右方向の中間が撓んだりすることを防げる。また、陳列装置として、上下方向に陳列部材2を複数段に配置したハンガー什器であってもよく、輸送箱を兼用したハンガー什器であってもよい。いずれの什器でも、フック4は上下方向に複数設けられる。
【符号の説明】
【0027】
1 ネット什器
2 陳列部材
3 蓋部材
4 フック
5 縦線材
6 横線材
20 基部
21 先端部
23 切抜孔
【要約】
【課題】陳列装置を前後左右方向の荷重に対して安定した状態で設置できるようにする。
【解決手段】陳列装置は、線材を縦横に配置して構成されるネット什器1に設置される陳列部材2を有し、陳列部材2がフック4を介してネット什器1の前側に取り付けられる。陳列部材2の背面に複数のフック4が一体的に折り曲げ可能に設けられる。フック4が縦線材5を巻き込み、フック4の先端が横線材6よりも前側で陳列部材2に係止される。左右方向に荷重がかかっても、フック4が縦線材5に引っ掛かり、フック4が左右方向にずれず、陳列部材2は傾かない。フック4は縦線材5の後側を通って、先端部が横線材6の前側で係止されると、フック4がネット什器1を前後から挟み込むことになり、前後方向に荷重がかかっても陳列部材2はネット什器1から外れない。
【選択図】
図1