(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】血液採取容器及び単核球の分離方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
G01N33/48 D
(21)【出願番号】P 2024554210
(86)(22)【出願日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2024012963
【審査請求日】2024-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2023053035
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン エムディ シャハダット
(72)【発明者】
【氏名】駒井 邦哉
(72)【発明者】
【氏名】内山 嵩也
(72)【発明者】
【氏名】井上 智雅
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-84557(JP,A)
【文献】特開平8-224227(JP,A)
【文献】特開2002-365280(JP,A)
【文献】国際公開第2006/098350(WO,A1)
【文献】特開平9-196910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48,
A61B 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液採取容器本体と、
前記血液採取容器本体内に収容された比重液と、
前記血液採取容器本体内に収容された血液分離材とを備え、
前記比重液が、アミノ酸を含む、血液採取容器。
【請求項2】
前記アミノ酸が、塩基性アミノ酸又は中性アミノ酸を含む、請求項1に記載の血液採取容器。
【請求項3】
前記アミノ酸が、β-アラニン、プロリン、ヒスチジン、又はグリシンを含む、請求項
1に記載の血液採取容器。
【請求項4】
前記アミノ酸が、β-アラニンを含む、請求項
1に記載の血液採取容器。
【請求項5】
前記比重液100重量%中、前記アミノ酸の含有量が、0.01重量%以上5重量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項6】
前記比重液が、アミノ酸とは異なる25℃で固形の成分(X)を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項7】
前記成分(X)が、ポリスクロースを含む、請求項6に記載の血液採取容器。
【請求項8】
前記成分(X)が、ジアトリゾ酸ナトリウムを含む、請求項6に記載の血液採取容器。
【請求項9】
前記成分(X)が、ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムとを含む、請求項6に記載の血液採取容器。
【請求項10】
前記成分(X)が、シリカ微粒子を含む、請求項
6に記載の血液採取容器。
【請求項11】
前記比重液において、前記アミノ酸の含有量の、前記成分(X)の含有量に対する重量比が、0.001以上0.5以下である、請求項
6に記載の血液採取容器。
【請求項12】
前記血液分離材が、血液分離用組成物である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項13】
前記血液分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、
前記有機成分が、樹脂を含み、
前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む、請求項12に記載の血液採取容器。
【請求項14】
前記血液採取容器本体内に収容された抗凝固剤を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項15】
前記血液採取容器本体が、ポリエチレンテレフタレート容器である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項16】
γ線により滅菌処理された血液採取容器である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【請求項17】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の血液採取容器内に血液を採取する工程と、
前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、単核球の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液採取容器に関する。また、本発明は、上記血液採取容器を用いた単核球の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査において、血液を採取するために採血管等の血液採取容器が広く用いられている。また、血液採取容器の一例として、血液から単核球を分離することができる血液採取容器も知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、下記の工程(a)~(d)を行うことにより、血液から単核球を分離する方法が記載されている。(a)閉じた末端及び開口した末端を有する容器を用意する。(b)上記容器中にゲル様物質及び該物質より大きい比重を有する水溶性密度勾配物質を入れる。(c)上記容器中に液体試料を入れる。(d)上記容器を遠心力下に置いて、上記液体試料を重い相と軽い相に分離し、そして該重い相と軽い相の間に上記ゲル様物質と上記水溶性密度勾配物質の別々の層よりなるバリヤー層を確立する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血液から単核球を分離するために、比重液を備える血液採取容器が用いられることがある。この血液採取容器では、血液を採取した血液採取容器を遠心分離することにより、単核球と、単核球以外の血球成分とを分離することができる。
【0006】
ところで、滅菌処理された血液採取容器が用いられることがある。例えば、医療機器製品として用いられる血液採取容器は、滅菌処理されていることが必要である。しかしながら、滅菌処理された従来の血液採取容器では、単核球の回収量を多くすることは困難である。
【0007】
本発明の目的は、単核球の回収量を多くすることができる血液採取容器を提供することである。また、本発明は、上記血液採取容器を用いた単核球の分離方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、以下の血液採取容器及び単核球の分離方法を開示する。
【0009】
項1.血液採取容器本体と、前記血液採取容器本体内に収容された比重液と、前記血液採取容器本体内に収容された血液分離材とを備え、前記比重液が、アミノ酸を含む、血液採取容器。
【0010】
項2.前記アミノ酸が、塩基性アミノ酸又は中性アミノ酸を含む、項1に記載の血液採取容器。
【0011】
項3.前記アミノ酸が、β-アラニン、プロリン、ヒスチジン、又はグリシンを含む、項1又は2に記載の血液採取容器。
【0012】
項4.前記アミノ酸が、β-アラニンを含む、項1~3のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0013】
項5.前記比重液100重量%中、前記アミノ酸の含有量が、0.01重量%以上5重量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0014】
項6.前記比重液が、アミノ酸とは異なる25℃で固形の成分(X)を含む、項1~5のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0015】
項7.前記成分(X)が、ポリスクロースを含む、項6に記載の血液採取容器。
【0016】
項8.前記成分(X)が、ジアトリゾ酸ナトリウムを含む、項6に記載の血液採取容器。
【0017】
項9.前記成分(X)が、ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムとを含む、項6に記載の血液採取容器。
【0018】
項10.前記成分(X)が、シリカ微粒子を含む、項6~9のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0019】
項11.前記比重液において、前記アミノ酸の含有量の、前記成分(X)の含有量に対する重量比が、0.001以上0.5以下である、項6~10のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0020】
項12.前記血液分離材が、血液分離用組成物である、項1~11のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0021】
項13.前記血液分離用組成物が、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含み、前記有機成分が、樹脂を含み、前記無機微粉末が、微粉末シリカを含む、項12に記載の血液採取容器。
【0022】
項14.前記血液採取容器本体内に収容された抗凝固剤を備える、項1~13のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0023】
項15.前記血液採取容器本体が、ポリエチレンテレフタレート容器である、項1~14のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0024】
項16.γ線により滅菌処理された血液採取容器である、項1~15のいずれか1項に記載の血液採取容器。
【0025】
項17.項1~16のいずれか1項に記載の血液採取容器内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、単核球の分離方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に収容された比重液と、上記血液採取容器本体内に収容された血液分離材とを備え、上記比重液が、アミノ酸を含む。本発明に係る血液採取容器では、上記の構成が備えられているので、単核球の回収量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明に係る血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に収容された比重液と、上記血液採取容器本体内に収容された血液分離材とを備え、上記比重液が、アミノ酸を含む。
【0030】
本発明に係る血液採取容器では、上記の構成が備えられているので、単核球の回収量を多くすることができる。本発明に係る血液採取容器では、比重液がアミノ酸を含むので、比重液がアミノ酸を含まない従来の血液採取容器と比べて、単核球の回収量を多くすることができる。
【0031】
血液採取容器として、滅菌処理された血液採取容器が用いられることがある。例えば、医療機器製品として用いられる血液採取容器は、滅菌処理されていることが必要である。本発明者らは、滅菌処理された従来の血液採取容器では、単核球の回収量を多くすることが困難であること、γ線により滅菌処理された従来の血液採取容器では、単核球の回収量を多くすることが特に困難であることを見出した。そして、本発明者らは、鋭意検討し、1)従来の血液採取容器において単核球の回収量を多くすることが困難であることの原因が、滅菌処理時に比重液に析出物が生じて、比重液の性質が変化するためであること、2)アミノ酸を含む比重液を用いることにより、比重液に析出物が生じにくくなることを見出した。なお、アミノ酸を含む比重液を用いることにより、比重液に析出物が生じにくくなる理由は、滅菌処理時に発生したラジカルがアミノ酸によって不活化されるためであると推定されるが、これに限定されない。本発明に係る血液採取容器では、比重液における析出物の発生を抑えることができ、比重液の性質の変化が効果的に抑えられるので、滅菌処理後においても、単核球の回収量を多くすることができる。
【0032】
また、本発明に係る血液採取容器では、血液から単核球を簡便に分離することができる。本発明に係る血液採取容器では、例えば、血液採取容器に血液を採取した後、該血液採取容器を遠心分離することにより、単核球を分離することができる。本発明に係る血液採取容器では、比重液の比重を適宜調整することにより、遠心分離後に、単核球を比重液層中に浮遊させたり、比重液層の上方に単核球を含む層を形成させたりすることができる。
【0033】
以下、本発明に係る血液採取容器の詳細などを説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味する。
【0034】
(比重液)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に収容された比重液を備える。上記比重液は、密度勾配溶液と称されることもある。上記比重液は、アミノ酸を含む。上記比重液は、アミノ酸とは異なる25℃で固形の成分(X)を含むことが好ましい。上記比重液は、水を含むことが好ましい。
【0035】
<アミノ酸>
上記比重液は、アミノ酸を含む。上記アミノ酸は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記アミノ酸としては、ヒスチジン及びアルギニン等の塩基性アミノ酸;α-アラニン、β-アラニン、プロリン、グリシン、システイン、セリン、ロイシン、イソロイシン及びフェニルアラニン等の中性アミノ酸;グルタミン酸等の酸性アミノ酸等が挙げられる。
【0037】
上記アミノ酸は、塩基性アミノ酸又は中性アミノ酸を含むことが好ましく、β-アラニン、プロリン、ヒスチジン、又はグリシンを含むことがより好ましく、β-アラニンを含むことが更に好ましく、β-アラニンであることが特に好ましい。この場合には、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物がより一層生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0038】
上記比重液100重量%中、上記アミノ酸の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より一層好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。上記アミノ酸の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物がより一層生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。なお、上記比重液100重量%中、上記アミノ酸の含有量は、2重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよい。
【0039】
上記比重液において、上記アミノ酸の含有量の、上記成分(X)の含有量に対する重量比(アミノ酸の含有量/成分(X)の含有量)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、より一層好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下である。上記重量比(アミノ酸の含有量/成分(X)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物がより一層生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0040】
<アミノ酸とは異なる25℃で固形の成分(X)>
上記比重液は、成分(X)を含むことが好ましい。上記成分(X)は、アミノ酸とは異なる25℃で固形の成分である。上記成分(X)は、アミノ酸とは異なる。上記成分(X)は、25℃で固形の成分である。上記成分(X)として、比重液に用いられている従来公知の成分(アミノ酸とは異なる25℃で固形の成分)を使用可能である。上記成分(X)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
成分(X)を含む従来の比重液では、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物が生じて、比重液の性質が変化しやすい。これに対して、本発明に係る血液採取容器では、上記比重液が成分(X)を含む場合でも、該比重液がアミノ酸を含むので、比重液に析出物が生じにくくなる。その結果、本発明に係る血液採取容器では、滅菌処理後においても、単核球の回収量を多くすることができる。
【0042】
上記成分(X)としては、ポリスクロース、ジアトリゾ酸ナトリウム、メトリゾ酸ナトリウム、シリカ微粒子、塩化ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルデンプン、スクロース、デキストラン及びイオジキサノール等が挙げられる。
【0043】
上記成分(X)は、ポリスクロース、ジアトリゾ酸ナトリウム、メトリゾ酸ナトリウム、シリカ微粒子、塩化ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルデンプン、スクロース、デキストラン、又はイオジキサノールであることが好ましく、ポリスクロース、ジアトリゾ酸ナトリウム、シリカ微粒子、又は塩化ナトリウムであることがより好ましい。この場合には、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0044】
ポリスクロース:
上記成分(X)は、ポリスクロースを含むことが好ましい。上記比重液は、ポリスクロースを含むことが好ましい。上記ポリスクロースとして、比重液に用いられている従来公知のポリスクロースを使用可能である。ポリスクロースを含む従来の比重液では、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物が生じやすいものの、本発明では、比重液がポリスクロースを含む場合でも、比重液に析出物が生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0045】
上記ポリスクロースの数平均分子量は、好ましくは150000以上、より好ましくは300000以上、好ましくは700000以下、より好ましくは550000以下である。
【0046】
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたプルラン換算での数平均分子量を意味する。
【0047】
上記比重液100重量%中、上記ポリスクロースの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、特に好ましくは8重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。上記ポリスクロースの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0048】
上記比重液において、上記アミノ酸の含有量の、上記ポリスクロースの含有量に対する重量比(アミノ酸の含有量/ポリスクロースの含有量)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.1以下である。上記重量比(アミノ酸の含有量/ポリスクロースの含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物がより一層生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0049】
上記成分(X)100重量%中、上記ポリスクロースの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは25重量%以上、特に好ましくは40重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。上記ポリスクロースの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0050】
ジアトリゾ酸ナトリウム:
上記成分(X)は、ジアトリゾ酸ナトリウムを含むことが好ましい。上記比重液は、ジアトリゾ酸ナトリウムを含むことが好ましい。ジアトリゾ酸ナトリウムを含む従来の比重液では、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物が生じやすいものの、本発明では、比重液がジアトリゾ酸ナトリウムを含む場合でも、比重液に析出物が生じにくくなり、従って、単核球の回収量を多くすることができる。
【0051】
上記比重液100重量%中、上記ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。上記ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0052】
上記比重液において、上記アミノ酸の含有量の、上記ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量に対する重量比(アミノ酸の含有量/ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量)は、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.005以上、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。上記重量比(アミノ酸の含有量/ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物がより一層生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0053】
上記成分(X)100重量%中、上記ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは35重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは85重量%以下である。上記ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0054】
上記成分(X)は、ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムとを含むことがより好ましい。これらの成分を含む従来の比重液では、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物が生じやすいものの、本発明では、比重液がこれらの成分を含む場合でも、比重液に析出物が生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0055】
上記比重液100重量%中、上記ポリスクロースと上記ジアトリゾ酸ナトリウムとの合計含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0056】
上記比重液において、上記アミノ酸の含有量の、上記ポリスクロースと上記ジアトリゾ酸ナトリウムとの合計含有量に対する重量比(アミノ酸の含有量/ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムとの合計含有量)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、より一層好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.1以下である。上記重量比(アミノ酸の含有量/ポリスクロースとジアトリゾ酸ナトリウムとの合計含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液採取容器の滅菌処理時において、比重液に析出物がより一層生じにくくなり、従って、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0057】
上記比重液において、上記ポリスクロースの含有量は、上記ジアトリゾ酸ナトリウムの含有量よりも多いことが好ましい。この場合には、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0058】
上記成分(X)100重量%中、上記ポリスクロースと上記ジアトリゾ酸ナトリウムとの合計含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%である。上記合計含有量が上記下限以上であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。なお、上記成分(X)100重量%中、上記ポリスクロースと上記ジアトリゾ酸ナトリウムとの合計含有量は、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよく、99重量%以下であってもよい。
【0059】
シリカ微粒子:
上記成分(X)は、シリカ微粒子を含むことが好ましい。上記シリカ微粒子として、比重液に用いられている従来公知のシリカ微粒子を使用可能である。上記シリカ微粒子は、ポリビニルピロリドンでコーティングされたシリカ微粒子であることが好ましい。上記ポリビニルピロリドンでコーティングされたシリカ微粒子の懸濁水溶液として、パーコール(Cytiva社)が市販されており、入手しやすい。
【0060】
上記シリカ微粒子の平均粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは30nm以下である。上記シリカ微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡法により測定することができる。
【0061】
上記比重液100重量%中、上記シリカ微粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、好ましくは65重量%以下、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは25重量%以下である。上記シリカ微粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0062】
塩化ナトリウム:
上記成分(X)は、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。上記比重液は、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0063】
上記比重液100重量%中、上記塩化ナトリウムの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。上記塩化ナトリウムの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0064】
アスコルビン酸ナトリウム:
上記成分(X)は、アスコルビン酸ナトリウムを含むことが好ましい。上記比重液は、アスコルビン酸ナトリウムを含むことが好ましい。
【0065】
上記比重液100重量%中、上記アスコルビン酸ナトリウムの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記アスコルビン酸ナトリウムの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0066】
<水>
上記比重液は、水を含むことが好ましい。上記比重液において、水は溶媒としての役割を果たす。上記水は、上記成分(X)を含む市販品に由来して含まれていてもよい。
【0067】
上記比重液100重量%中、上記水の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは90重量%以下である。
【0068】
<他の成分>
上記比重液は、上述した成分(アミノ酸、成分(X)及び水)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、グリセロール等が挙げられる。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
<比重液の他の詳細>
上記比重液の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.065以上、更に好ましくは1.070以上、特に好ましくは1.080以上、好ましくは1.098以下、より好ましくは1.095以下、更に好ましくは1.090以下である。上記比重液の25℃での比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0070】
上記比重液の25℃での比重は、比重計(例えば、京都電子工業社製「DA-130N」)を用いて測定される。
【0071】
上記比重液の25℃での比重は、上記血液分離材の25℃での比重よりも大きいことが好ましい。
【0072】
上記比重液の浸透圧は、好ましくは285mOsm/L以上、より好ましくは300mOsm/L以上、更に好ましくは310mOsm/L以上、好ましくは420mOsm/L以下、より好ましくは400mOsm/L以下、更に好ましくは390mOsm/L以下である。上記比重液の浸透圧が上記下限以上及び上記上限以下であると、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0073】
上記比重液の浸透圧は、浸透圧計(例えば、アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定される。
【0074】
上記比重液は、上記血液採取容器本体内において、上記血液分離材よりも上記血液採取容器本体の底部側に収容されていることが好ましい。上記血液採取容器において、上記血液分離材が上記血液採取容器本体の開口端側に位置しており、上記比重液が上記血液採取容器本体の底部側に位置していることが好ましい。
【0075】
上記血液採取容器本体内に収容されている上記比重液の量は、上記血液採取容器に採取される血液の量1mLに対して、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.15mL以上、更に好ましくは0.2mL以上、好ましくは0.4mL以下、より好ましくは0.35mL以下、更に好ましくは0.3mL以下である。この場合には、単核球の回収量をより一層多くすることができる。
【0076】
上記比重液は、30kGyの線量でγ線を照射したときに、析出物が生じない性質を有する比重液であることが好ましい。なお、析出物が生じたか否かは目視にて確認することができる。
【0077】
(血液分離材)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に収容された血液分離材を備える。上記血液分離材として、従来公知の血液分離材を用いることができる。上記血液分離材としては、血液分離用組成物、及び血液分離用冶具等が挙げられる。血液分離材の作製が容易であることから、上記血液分離材は、上記血液分離用組成物であることが好ましい。
【0078】
<血液分離用組成物>
上記血液分離用組成物は、遠心分離時に比重液層と血球層との間に移動して隔壁を形成する組成物であることが好ましい。また、上記血液分離用組成物は、遠心分離後に比重液層と血球層との間の成分移行を防止する目的で用いられる。上記血液分離用組成物は、チクソトロピー性を有することが好ましい。
【0079】
上記血液分離用組成物として、従来公知の血液分離用組成物を用いることができる。
【0080】
上記血液分離用組成物は、25℃で流動性を有する有機成分と、無機微粉末とを含むことが好ましい。上記25℃で流動性を有する有機成分、及び上記無機微粉末はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
25℃で流動性を有する有機成分:
上記「25℃で流動性を有する」とは、25℃での粘度が500Pa・s以下であることを意味する。
【0082】
上記有機成分の25℃での粘度は、好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上、好ましくは200Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液分離用組成物の流動性が高められ、隔壁の強度を高めることができる。
【0083】
上記有機成分の25℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒-1の条件で測定される。
【0084】
上記有機成分としては、樹脂、及び樹脂と可塑剤等の有機化合物との混合物等が挙げられる。したがって、上記有機成分は、上記樹脂を含むことが好ましく、上記樹脂と上記有機化合物とを含むことがより好ましい。上記有機成分が、上記樹脂と上記有機化合物との混合物である場合に、該混合物(上記有機成分)として流動性を有していればよく、該樹脂又は該有機化合物が流動性を有していなくてもよい。上記有機成分が、上記樹脂と上記有機化合物との混合物である場合に、該樹脂は、例えば、25℃で固体の樹脂であってもよい。上記樹脂及び上記有機化合物はそれぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記樹脂としては、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、α-オレフィン-フマル酸エステル共重合体、セバシン酸と2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールと1,2-プロパンジオールとの共重合体、ポリエーテルポリウレタン系樹脂、及びポリエーテルポリエステル系樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記樹脂は、石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
【0087】
上記石油樹脂の市販品としては、イーストマンケミカル社製「リガライトS5090」等が挙げられる。
【0088】
上記シクロペンタジエン系樹脂としては、シクロペンタジエン系モノマーの重合体、シクロペンタジエン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体、及びジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。上記シクロペンタジエン系樹脂は、水素添加されていてもよい。上記シクロペンタジエン系モノマーの重合体及び上記シクロペンタジエン系モノマーと芳香族系モノマーとの共重合体は、オリゴマーであってもよい。
【0089】
上記シクロペンタジエン系モノマーとしては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、及びシクロペンタジエンのアルキル置換誘導体等が挙げられる。
【0090】
上記芳香族系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、インデン、及びメチルインデン等が挙げられる。
【0091】
上記ジシクロペンタジエン樹脂の市販品としては、コロン社製「スコレッツSU500」及び「スコレッツSU90」等が挙げられる。
【0092】
上記ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、及びポリアルキレンナフタレート樹脂等が挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0093】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
【0094】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合することにより得られる樹脂、及び少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体と少なくとも1種の該(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体とを重合することにより得られる樹脂が挙げられる。
【0095】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
上記有機化合物としては、ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体等が挙げられる。上記有機化合物は、ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体であることが好ましい。したがって、上記有機成分は、上記樹脂と、上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体との混合物であることが好ましい。
【0097】
上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、及びピロメリット酸エステル等が挙げられる。上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリn-オクチル、トリメリット酸トリイソオクチル、及びトリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0099】
上記ピロメリット酸エステルとしては、ピロメリット酸テトライソオクチル等が挙げられる。
【0100】
上記トリメリット酸エステルの市販品としては、DIC社製「モノサイザーW700」、及び「モノサイザーW-750」、新日本理化社製「サンソサイザーTOTM」及び「サンソサイザーTITM」等が挙げられる。
【0101】
上記ピロメリット酸エステルの市販品としては、DIC社製「モノサイザーW-7010」等が挙げられる。
【0102】
上記ベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、又はピロメリット酸エステルであることが好ましく、トリメリット酸エステルであることがより好ましい。
【0103】
上記血液分離用組成物100重量%中、上記有機成分の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、好ましくは97重量%以下である。
【0104】
無機微粉末:
上記無機微粉末としては、微粉末シリカ、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、ガラス微粉末、タルク粉末、カオリン粉末、ベントナイト粉末、チタニア粉末、及びジルコニウム粉末等が挙げられる。
【0105】
上記無機微粉末は、微粉末シリカ、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、ガラス微粉末、タルク粉末、カオリン粉末、ベントナイト粉末、チタニア粉末、又はジルコニウム粉末であることが好ましい。
【0106】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記無機微粉末は、微粉末シリカを含むことが好ましい。25℃での比重が1.050以上である血液分離用組成物を得る場合には、上記無機微粉末は、微粉末シリカと、微粉末シリカ以外の無機微粉末(第2の無機微粉末)とを含むことがより好ましい。ただし、血液分離用組成物の25℃での比重が1.050以上である場合であっても、上記無機微粉末は、上記第2の無機微粉末を含んでいなくてもよい。また、血液分離用組成物の25℃での比重が1.050未満である場合であっても、上記無機微粉末は、上記第2の無機微粉末を含んでいてもよい。上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0107】
上記微粉末シリカとしては、天然シリカ及び合成シリカが挙げられる。合成シリカとしては、親水性シリカ及び疎水性シリカが挙げられる。親水性シリカは、例えば、粒子表面の水酸基同士が水素結合することにより、血液分離用組成物にチクソトロピー性を付与すると共に、比重を調整する作用を有する。一方、疎水性シリカは、親水性シリカに比べてチクソトロピー性の付与効果は小さい。
【0108】
血液分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方を共に好適な範囲に維持する観点からは、上記微粉末シリカは、親水性シリカを含むことが好ましく、親水性シリカと疎水性シリカとを含むことがより好ましい。上記微粉末シリカは、親水性シリカを少なくとも含むことが好ましい。
【0109】
上記第2の無機微粉末は、微粉末シリカよりも比重が大きい無機微粉末であることが好ましく、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末等の比重が3以上である無機微粉末であることがより好ましい。
【0110】
上記第2の無機微粉末の比重は、好ましくは3以上、より好ましくは3.5以上、更に好ましくは4以上である。上記第2の無機微粉末の比重は大きいほどよい。上記比重が上記下限以上であると、血液分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0111】
上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、特に限定されない。上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、1nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、500nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。
【0112】
上記無機微粉末、上記微粉末シリカ及び上記第2の無機微粉末の平均粒子径は、体積基準で測定される平均径(体積平均粒子径)であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法又は画像解析法により求めることが好ましい。
【0113】
上記微粉末シリカの比表面積は、特に限定されない。上記微粉末シリカの比表面積は、20m2/g以上であってもよく、100m2/g以上であってもよく、500m2/g以下であってもよく、300m2/g以下であってもよい。
【0114】
上記微粉末シリカの比表面積は、BET法により測定される。
【0115】
上記血液分離用組成物100重量%中、上記親水性シリカの含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.10重量%以上、更に好ましくは0.30重量%以上、好ましくは2.50重量%以下、より好ましくは2.00重量%以下である。上記親水性シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。
【0116】
上記血液分離用組成物100重量%中、上記微粉末シリカの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記微粉末シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。
【0117】
上記血液分離用組成物100重量%中、上記第2の無機微粉末の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記第2の無機微粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0118】
上記血液分離用組成物100重量%中、上記無機微粉末の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。上記無機微粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができる。
【0119】
他の成分:
上記血液分離用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、有機ゲル化剤、熱可塑性エラストマー、ポリアルキレングリコール、シリコーンオイル、補助溶媒、酸化防止剤、着色剤及び水等が挙げられる。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0120】
上記血液分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.065以上、更に好ましくは1.070以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.090以下、更に好ましくは1.085以下である。上記血液分離用組成物の25℃での比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0121】
上記血液分離用組成物の25℃での比重は、血液分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により測定される。
【0122】
上記血液分離用組成物の25℃での粘度は、好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは150Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0123】
上記血液分離用組成物の25℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒-1の条件で測定される。
【0124】
<血液分離用冶具>
上記血液分離用冶具は、遠心分離時に比重液層と血球層との間に移動して隔壁を形成する冶具である。また、上記血液分離用冶具は、比重液層と血球層との間の成分移行を防止する目的で用いられる。
【0125】
上記血液分離用冶具として、従来公知の冶具を用いることができる。上記血液分離用冶具としては、例えば、WO2010/132783A1等に記載の機械的セパレータ等が挙げられる。
【0126】
上記血液分離用冶具の材料としては、例えば、エラストマー等が挙げられる。
【0127】
(抗凝固剤)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に収容された抗凝固剤を備えることが好ましい。上記抗凝固剤として、従来公知の抗凝固剤を用いることができる。上記抗凝固剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0128】
上記抗凝固剤としては、ヘパリン、ヘパリンの金属塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの金属塩、クエン酸及びクエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0129】
抗凝固性能を良好に発揮させる観点から、上記抗凝固剤は、EDTA、EDTAの金属塩、ヘパリン、ヘパリンの金属塩又はクエン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0130】
上記抗凝固剤は、上記血液採取容器本体内に、粉末の状態で収容されていてもよく、液体に溶解した状態で収容されていてもよい。なお、上記抗凝固剤は、上記血液採取容器本体内にて、粉末の状態と液体に溶解した状態との双方の状態で存在してもよい。
【0131】
上記液体としては、水、及びアルコール等が挙げられる。上記液体は、水であることが好ましい。
【0132】
上記抗凝固剤は、上記血液採取容器本体の内壁面上に配置されているか、又は、上記血液分離材の表面上に配置されていることが好ましい。なお、上記抗凝固剤は、上記血液採取容器本体の内壁面上に配置されていてもよく、上記血液分離材の表面上に配置されていてもよく、上記血液採取容器本体の内壁面上と、上記血液分離材の表面上との双方に配置されていてもよい。
【0133】
上記抗凝固剤が粉末の状態で収容されている場合に、粉末状である抗凝固剤は、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着しているか、又は、上記血液分離材の表面上に配置されていることが好ましい。例えば、抗凝固剤と水との混合液を、上記血液採取容器本体の内壁面上にスプレー塗布し、乾燥することにより、上記血液採取容器本体の内壁面上に抗凝固剤を粉末の状態で付着させることができる。
【0134】
上記抗凝固剤が液体に溶解した状態で収容されている場合に、上記抗凝固剤と上記液体との混合液(抗凝固剤を含む液)は、上記血液分離材の表面上に配置されていることが好ましい。
【0135】
上記血液採取容器本体内に収容される上記抗凝固剤の量は、抗凝固性能を発揮させることができる限り特に限定されない。
【0136】
なお、上記血液採取容器に採取される血液が、抗凝固剤が添加された血液である場合には、上記血液採取容器は抗凝固剤を備えていなくてもよい。
【0137】
(血液採取容器本体)
上記血液採取容器本体の形状は特に限定されない。上記血液採取容器本体は、有底の管状容器であることが好ましい。上記血液採取容器本体は、一端に開口端を有し、他端に閉じられた底部(閉口端)を有することが好ましい。
【0138】
上記血液採取容器本体の素材は特に限定されない。上記血液採取容器本体の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ-アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂;ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラス等のガラスが挙げられる。上記血液採取容器本体の素材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0139】
上記血液採取容器本体は、樹脂容器であることが好ましく、熱可塑性樹脂容器であることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート容器であることが更に好ましい。上記血液採取容器本体が樹脂容器の場合(特に、ポリエチレンテレフタレート容器の場合)には、血液採取容器の滅菌処理方法として、γ線による滅菌処理方法が採用されやすい。従来の血液採取容器では、γ線により滅菌処理を行うと、比重液に析出物が生じて、単核球の回収量が低下しやすいものの、本発明では、比重液における析出物の発生を効果的に抑えることができるので、血液採取容器本体として樹脂容器を問題なく使用可能である。したがって、上記血液採取容器本体が樹脂容器の場合(特に、ポリエチレンテレフタレート容器の場合)には、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。
【0140】
(栓体)
上記血液採取容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体は、血液採取容器本体の開口端に取り付けられていることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、血液採取容器本体の開口端に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材、形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、採血針が刺通され得るように構成されていることが好ましい。
【0141】
上記栓体としては、血液採取容器本体の開口端に嵌合する形状を有する栓体、シート状のシール栓体等が挙げられる。
【0142】
また、上記栓体は、ゴム栓等の栓本体と、プラスチック等で構成されたキャップ部材とを備える栓体であってもよい。この場合には、血液採取後に、血液採取容器本体の開口端から栓体を引き抜く際に、血液が人体と接触するリスクを抑えることができる。
【0143】
上記栓体(又は上記栓本体)の材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、ブチルゴム、及びハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。上記金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。密封性を高める観点からは、上記栓体の材料は、ブチルゴムであることが好ましい。上記栓体(又は上記栓本体)は、ブチルゴム栓であることが好ましい。
【0144】
(血液採取容器の他の詳細)
上記血液採取容器は、血液から単核球を分離するために好適に用いられる。上記血液採取容器は、血液から末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cells,PBMC)を分離するためにより好適に用いられる。
【0145】
上記血液採取容器に採取される血液の量は、血液採取容器のサイズ及び内圧等により適宜変更される。上記血液採取容器に採取される血液の量は、1mL以上であってもよく、2mL以上であってもよく、4mL以上であってもよく、12mL以下であってもよく、11mL以下であってもよく、10mL以下であってもよい。
【0146】
上記血液採取容器は、採血管であることが好ましい。上記血液採取容器本体は、採血管本体であることが好ましい。
【0147】
上記血液採取容器の内圧は特に限定されない。上記血液採取容器の内圧は、減圧されていることが好ましい。上記血液採取容器が減圧容器である場合には、所定量の血液を簡便に血液採取容器に採取することができる。上記血液採取容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空採血管として用いることもできる。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液を簡便に採取することができる。
【0148】
細菌感染を防止する観点から、血液採取容器の内部はISO又はJISの基準に則って滅菌されていることが好ましい。滅菌処理の方法として、従来公知の方法を使用できる。滅菌処理の方法としては、γ線滅菌、電子線滅菌、及び高圧蒸気滅菌等が挙げられる。
【0149】
上記血液採取容器は、滅菌処理された血液採取容器であることが好ましく、γ線により滅菌処理された血液採取容器であることがより好ましい。従来の血液採取容器では、γ線により滅菌処理を行うと、比重液に析出物がより一層生じやすく、その結果、単核球の回収量がより一層低下しやすいものの、本発明では、γ線により滅菌処理を行った場合でも比重液における析出物の発生を効果的に抑えることができる。したがって、上記血液採取容器がγ線により滅菌処理された血液採取容器である場合に、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。
【0150】
上記血液採取容器は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0151】
アミノ酸と成分(X)とを水に溶解して比重液を得る。得られた比重液を血液採取容器本体内に収容する。次いで、血液採取容器本体内に血液分離材を収容する。また、血液採取容器本体内に、抗凝固剤を収容する。
【0152】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、大きさ、厚み及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み及び形状等と異なる場合がある。
【0153】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【0154】
図1に示す血液採取容器1は、血液採取容器本体2と、比重液3と、血液分離用組成物4と、抗凝固剤を含む液5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体2は、一端に開口端2aを有し、他端に底部2bを有する。栓体6は、血液採取容器本体2の開口端2aに取り付けられている。
【0155】
比重液3は、血液採取容器本体2の底部2bに収容されている。比重液3は、血液採取容器本体2内において、血液分離用組成物4よりも血液採取容器本体2の底部2b側に収容されている。血液分離用組成物4は、血液採取容器本体2内において、比重液3よりも血液採取容器本体2の開口端2a側に収容されている。抗凝固剤を含む液5は、血液分離用組成物4の表面上に配置されている。血液採取容器1では、血液採取容器本体2の底部2b側から開口端2a側に向かって、比重液3、血液分離用組成物4、抗凝固剤を含む液5の順に配置されている。
【0156】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【0157】
図2に示す血液採取容器1Aは、血液採取容器本体2と、比重液3と、血液分離用組成物4と、粉末状の抗凝固剤5Aと、栓体6とを備える。
図1に示す血液採取容器1と
図2に示す血液採取容器1Aとでは、抗凝固剤の収容形態が異なる。すなわち、
図1に示す血液採取容器1では、血液採取容器本体2内に、抗凝固剤が液体に溶解した状態で収容されているのに対して、
図2に示す血液採取容器1Aでは、血液採取容器本体2内に、抗凝固剤が粉末の状態で収容されている。より具体的には、
図2に示す血液採取容器1Aでは、粉末状の抗凝固剤5Aが、血液分離用組成物4の表面上に配置されている。
【0158】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る血液採取容器を模式的に示す正面断面図である。
【0159】
図3に示す血液採取容器1Bは、血液採取容器本体2と、比重液3と、血液分離用組成物4と、粉末状の抗凝固剤5Bと、栓体6とを備える。
図1に示す血液採取容器1と
図3に示す血液採取容器1Bとでは、抗凝固剤の収容形態が異なる。すなわち、
図1に示す血液採取容器1では、血液採取容器本体2内に、抗凝固剤が液体に溶解した状態で収容されているのに対して、
図3に示す血液採取容器1Bでは、血液採取容器本体2の内壁面上に、抗凝固剤が粉末の状態で収容されている。
図3に示す血液採取容器1Bでは、抗凝固剤5Bが層状に配置されている。
【0160】
(単核球の分離方法)
上記血液採取容器を用いて、血液から単核球を分離することができる。上記単核球の分離方法は、上記血液採取容器内に血液を採取する工程を備えることが好ましく、血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離する工程を備えることが好ましい。
【0161】
上記遠心分離する工程における遠心分離条件は、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で5分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。
【0162】
上記遠心分離する工程後、例えば、上記血液分離材により形成された隔壁よりも下方に赤血球成分が位置し、上記血液分離材により形成された隔壁上に、単核球を含む比重液層が位置し、単核球を含む比重液層よりも上方に血漿が位置する。単核球を含む比重液層を回収することにより、単核球を得ることができる。
【0163】
上記単核球の分離方法は、末梢血単核細胞(PBMC)の分離方法であることが好ましい。
【0164】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0165】
比重液の材料として、以下を用意した。
【0166】
(成分(X))
ポリスクロース(Cytiva社製「FicollTMPM 400」)
ジアトリゾ酸ナトリウム
シリカ微粒子(Cytiva社製「パーコール」)
塩化ナトリウム
【0167】
(アミノ酸)
β-アラニン
ヒスチジン
プロリン
グリシン
【0168】
水
【0169】
血液分離用組成物の材料として、以下を用意した。
【0170】
(25℃で流動性を有する有機成分の材料)
(メタ)アクリル系樹脂:
アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、25℃で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得た。なお、(メタ)アクリル系樹脂の25℃での比重は、1.033であった。
【0171】
(無機微粉末)
親水性シリカ(微粉末シリカ、日本アエロジル社製「200CF」)
疎水性シリカ(微粉末シリカ、日本アエロジル社製「RX200」)
炭酸カルシウム粉末(IMERYS社製「Socal UP-G」)
【0172】
(その他の成分)
シリコーンオイル(東レダウコーニング社製「SF8410」)
【0173】
血液分離用組成物の作製:
91.9重量部の(メタ)アクリル系樹脂と、1.00重量部の親水性シリカと、5.0重量部の疎水性シリカと、1.95重量部の炭酸カルシウム粉末と、0.15重量部のシリコーンオイルとを混合し、血液分離用組成物を作製した。なお、血液分離用組成物の25℃での比重は、1.077であった。
【0174】
(実施例1)
比重液の作製:
表1に示す成分を、表1に記載の配合割合で配合して混合することにより、比重液を得た。なお、表1及び後述の表2~5中の配合量は、純分量である。
【0175】
血液採取容器の作製:
血液採取容器本体として、長さ100mm、開口端の内径14mmの管状のポリエチレンテレフタレート容器(PET有底管)を用意した。得られた比重液1.0mLを、血液採取容器本体内に収容した。次いで、得られた血液分離用組成物1mLを、血液採取容器本体に収容した。次いで、EDTA2K二水和物の24重量%水溶液(抗凝固剤含有液)30mgを、上記血液採取容器本体の内壁面上に塗布し、乾燥させた。次いで、血液採取容器内部を、血液採取量が4mLとなるように減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして、血液採取容器本体内に比重液、血液分離用組成物及び抗凝固剤が収容されている血液採取容器を作製した。次いで、血液採取容器に、30kGyの線量でγ線を照射して、γ線により滅菌処理された血液採取容器を得た。得られた血液採取容器では、血液採取容器本体内において、比重液が血液分離用組成物よりも血液採取容器本体の底部側に収容されており、血液分離用組成物が比重液よりも血液採取容器本体の開口端側に収容されている。抗凝固剤は、血液分離用組成物よりも血液採取容器本体の開口端側の内壁面上に配置されている。
【0176】
(実施例2~8及び比較例1~5)
比重液の配合組成を表1~5に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比重液及びγ線により滅菌処理された血液採取容器を作製した。
【0177】
(評価)
(1)比重液の比重
得られた比重液の25℃での比重を、比重計(京都電子工業社製「DA-130N」)を用いて、測定した。
【0178】
(2)比重液の浸透圧
得られた比重液の浸透圧を、浸透圧計(アークレイ社製「OM-6060」)を用いて、氷点降下法により測定した。
【0179】
(3)比重液における析出物の有無
γ線により滅菌処理された血液採取容器における比重液を目視にて観察し、比重液に析出物が生じているか否かを確認した。比重液における析出物の有無を、下記の基準で評価した。なお、γ線により滅菌処理する前の比重液には、析出物は生じていなかった。
【0180】
<比重液における析出物の有無の判定基準>
A:比重液に析出物が生じていない
B:比重液に析出物が生じている
【0181】
(4)単核球(PBMC)の回収量
2名(ドナーA、ドナーB)の血液を用意し、それぞれについて以下の操作を行った。得られた血液採取容器(γ線により滅菌処理された血液採取容器)に、血液4mLを採取した。次いで、血液が採取された血液採取容器を、20℃及び1700×gで20分間遠心分離した。遠心分離後、血液分離用組成物により形成された隔壁よりも下方に赤血球層が位置していた。また、血液分離用組成物により形成された隔壁よりも上方に比重液層が位置しており、比重液層よりも上方に血漿層が位置していた。また、比重液層中に単核球が浮遊していた。
【0182】
比重液層をピペットで吸い上げ、遠沈管に移した。次いで、この遠沈管に、りん酸緩衝生理食塩水1mLを添加した。次いで、遠沈管を、室温及び500×gで10分間遠心分離し、細胞を沈殿させた。上澄みを除去した後、沈殿していた細胞を血漿1mLにて懸濁し、単核球の懸濁液を得た。多項目自動血球分析装置(シスメックス社製「XE-5000」)を用いて、単核球の懸濁液を分析することにより、単核球の懸濁液中の単核球数を測定し、単核球の回収量とした。また、ドナーAの単核球の回収量とドナーBの単核球の回収量との平均を、平均回収量(Ave)とした。
【0183】
成分(X)の種類及び量が同一の比重液を備える血液採取容器同士で、比重液におけるアミノ酸の有無による単核球の回収量の増加量(ΔAve)を求めた。すなわち、増加量(ΔAve)は、評価対象の血液採取容器での平均回収量(Ave)から、基準となる血液採取容器での平均回収量(Ave)を差し引いた値である。より具体的には、増加量(ΔAve)は、下記式で求められる値である。評価対象の血液採取容器と基準となる血液採取容器との組み合わせは以下の通りである。
【0184】
ΔAve=[評価対象の血液採取容器での平均回収量(Ave)]-[基準となる血液採取容器での平均回収量(Ave)]
【0185】
より具体的には、以下の通りである。
【0186】
ΔAve=[実施例1の血液採取容器での平均回収量(Ave)]-[比較例1の血液採取容器での平均回収量(Ave)]
ΔAve=[実施例2~5の血液採取容器での平均回収量(Ave)]-[比較例2の血液採取容器での平均回収量(Ave)]
ΔAve=[実施例6の血液採取容器での平均回収量(Ave)]-[比較例3の血液採取容器での平均回収量(Ave)]
ΔAve=[実施例7の血液採取容器での平均回収量(Ave)]-[比較例4の血液採取容器での平均回収量(Ave)]
ΔAve=[実施例8の血液採取容器での平均回収量(Ave)]-[比較例5の血液採取容器での平均回収量(Ave)]
【0187】
<単核球の回収量の判定基準>
A:ΔAveが500000個以上
B:ΔAveが200000個を超え500000個未満
C:ΔAveが200000個以下
【0188】
構成及び結果を下記の表1~5に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【符号の説明】
【0194】
1,1A,1B…血液採取容器
2…血液採取容器本体
2a…開口端
2b…底部
3…比重液
4…血液分離用組成物
5…抗凝固剤を含む液
5A,5B…粉末状の抗凝固剤
6…栓体
【要約】
単核球の回収量を多くすることができる血液採取容器を提供する。
本発明に係る血液採取容器は、血液採取容器本体と、前記血液採取容器本体内に収容された比重液と、前記血液採取容器本体内に収容された血液分離材とを備え、前記比重液が、アミノ酸を含む。