(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】注意喚起用具
(51)【国際特許分類】
E01F 9/529 20160101AFI20241224BHJP
【FI】
E01F9/529
(21)【出願番号】P 2020117101
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503432803
【氏名又は名称】上北建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509077200
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・メンテナンス東北
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】漆戸 政則
(72)【発明者】
【氏名】下川原 隆
(72)【発明者】
【氏名】窪田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】磯畑 茂
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-168898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0376849(US,A1)
【文献】特開平02-096007(JP,A)
【文献】特開2006-002430(JP,A)
【文献】特開2018-048448(JP,A)
【文献】特開2014-051785(JP,A)
【文献】実開昭58-103231(JP,U)
【文献】特開2020-002740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/529
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の環状部材の外周端部が隣接する態様で道路の道幅に亘って連結され、前記道路上に敷設してこの道路を通過する車両の運転者に前記環状部材に乗り上げたときの振動で注意を喚起する注意喚起用具であって、
前記環状部材には、
前記道路の前後方向に延在し、前記環状部材の中心を通り、前記環状部材の内側面に少なくとも2点以上で接し、前記車両の走行中に前記環状部材が前記道路に叩きつけられた反発力で前記環状部材が跳ね上がるのを抑制する補強部材が設けられ、
前記補強部材は、前記環状部材よりも硬度が高いことを特徴とする注意喚起用具。
【請求項2】
前記補強部材は、前後方向に延在し、前記環状部材の内側面と2点で接するI型形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の注意喚起用具。
【請求項3】
前記補強部材は、前記環状部材の内側面と3点で接するY型形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の注意喚起用具。
【請求項4】
前記補強部材は、前記環状部材の内側面と4点で接する十型形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の注意喚起用具。
【請求項5】
複数の前記環状部材が碁盤目状に並べて配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の注意喚起用具。
【請求項6】
複数の前記環状部材が、1つの環状部材の周囲を囲うようにして並べて配置されていることを特徴等する請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の注意喚起用具。
【請求項7】
当該注意喚起用具の左右の両端に、前記環状部材よりも重いウエイト材を取り付けたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の注意喚起用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転者に対して振動で注意を喚起するための注意喚起用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上に一時的に設置して、走行する車両が乗り上げたときの振動で運転者に注意を与えるための注意喚起用具が使用されている。この注意喚起用具としては、例えば、帯板状の凸板を路面にボルトで固定し、この凸板を乗り上げるときの震動で注意を喚起するものがある(例えば、特許文献1参照)。このような帯板状の凸板は、ある程度の重量を有する構造ではあるが、路面との接地力(グリップ力)が小さいため乗り上げる車両の走行方向にずれ易い。そのため、ボルト或いは接着剤で路面に固定することが必要になる。
【0003】
また、複数個の環状部材を平面状に並べて連結した構造で、道路上にただ敷設するだけのものもある(例えば、特許文献2、3参照)。このような構造の注意喚起用具は、環状部材の形状やその配列に起因して路面に対する接地力が高い。そのため、特許文献1のような帯板状の構造と比較して軽量であり、かつ、ボルトなどで路面に固定しなくてもずれ難いという特徴がある。
【0004】
さらに、特許文献3の技術に追加して、注意喚起用具の両端部に、環状部材よりも重いウエイト材を取り付けたものがある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-96007号公報
【文献】特開2006-2430号公報
【文献】実開2010-168898号公報
【文献】特開2020-2740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した構造の注意喚起用具は、車両の走行方向に対してずれていくことがないようにしなければならない。また、工事期間中にのみ所望の位置に設置される注意喚起用具では、その設置、回収が容易に行えることが望まれる。
【0007】
特許文献1の技術では、注意喚起用具を路面にボルトで固定する構造であるため、ずれるおそれはないが、設置、回収に手間がかかる。特に、ボルトで固定する構造では、路面に穴を開けてしまうため、路面が痛んでしまう。また、帯板状に構成された注意喚起用具は重く、コンパクトな形状ではないため、運搬や設置作業に複数人の作業者が必要になってしまい、作業性が悪い。
【0008】
一方、特許文献2、3の技術では、注意喚起用具が軽量であり、かつ、路面に敷くだけなので、設置、回収作業が非常に容易である。また、車両の進行方向のずれに対しても、環状部材のエッジが路面に食い付くことで、一般道で法定速度の車両が乗り上げた程度ではほとんどずれは生じていない。しかしながら、路面に敷くだけで固定はしていないので、法定速度以上(例えば、高速道路を走行する車両の速度)の車両が注意喚起用具に乗り上げたときには、注意喚起用具が跳ね上がり、車両の走行方向へのずれ量が大きくなる傾向がある。また、重量の重い車両で車軸が複数あるもの(例えば、10トントラックなど)が乗り上げたときも、跳ね上がる傾向にある。
【0009】
さらに、特許文献4の技術では、特許文献3の技術と比較してずれ量は全体として小さくすることができる。しかしながら、注意喚起用具の両端部と中央部で比較すると、ウエイト材のある両端部のずれ量よりもウエイト材のない中央部でのずれ量が大きくなり、使用中にこの中央部が前側に出てしまい、注意喚起用具が全体的にアーチ状に変形してしまうという問題が生じた。
【0010】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、設置、回収作業が容易であり、かつ、速い速度または重量の重い車両が乗り上げてもずれ量を最小限に抑えることができる注意喚起用具を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述課題を解決するため、本発明は、複数の環状部材の外周端部が隣接する態様で道路の道幅に亘って連結され、前記道路上に敷設してこの道路を通過する車両の運転者に前記環状部材に乗り上げたときの振動で注意を喚起する注意喚起用具であって、前記環状部材には、前記道路の前後方向に延在し、前記環状部材の中心を通り、前記環状部材の内側面に少なくとも2点以上で接し、前記車両の走行中に前記環状部材が前記道路に叩きつけられた反発力で前記環状部材が跳ね上がるのを抑制する補強部材が設けられ、前記補強部材は、前記環状部材よりも硬度が高いことを特徴とする。
【0012】
また、前記補強部材は、前後方向に延在し、前記環状部材の内側面と2点で接するI型形状に形成されている。
さらに、前記補強部材は、前記環状部材の内側面と3点で接するY型形状に形成されていてもよい。
さらにまた、前記補強部材は、前記環状部材の内側面と4点で接する十型形状に形成されていてもよい。
【0013】
また、複数の前記環状部材が碁盤目状に並べて配置されている。
さらに、複数の前記環状部材が、1つの環状部材の周囲を囲うようにして並べて配置されているようにしてもよい。
さらにまた、当該注意喚起用具の左右の両端に、前記環状部材よりも重いウエイト材を取り付けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る注意喚起用具は、複数の環状部材の外周端部が隣接する態様で道路の道幅に亘って連結され、前記道路上に敷設してこの道路を通過する車両の運転者に振動で注意を喚起するものであり、前記環状部材には、前記環状部材の中心を通り、前記環状部材の内側面に少なくとも2点以上で接する補強部材が設けられているので、車両通過中に発生する環状部材の変形を真円に保つように作用する。また、環状部材の跳ね上がりを、環状部材と接する部分で下側に押さえ付けるように作用する。さらに、車両通過時に発生する巻込み風の影響を小さくしている。これにより、環状部材の重量を最小限に抑えて、設置・回収作業の負荷を軽減しつつ、環状部材の剛性を高めて跳ね上がりを最小限にすることでずれ量を小さくし、速い速度または重量の重い車両が乗り上げてもずれ量を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る注意喚起用具を道路に敷設した状態を上側から見た平面図である。
【
図2】I型補強部材が取り付けられた環状部材を単体で示す平面図である。
【
図3】(A)は環状部材を折り畳む途中、(B)は完全に折り畳んだ状態を示す正面図である。
【
図4】
図1の注意喚起用具にウエイト材を取り付けた状態を示す平面図である。
【
図6】環状部材とウエイト材の連結部分を示す拡大斜視図である。
【
図7】Y型補強部材が取り付けられた環状部材の平面図であって、
図2の第1変型例である。
【
図8】十字型補強部材が取り付けられた環状部材の平面図であって、
図2の第2変型例である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る注意喚起用具を上側から見た平面図である。
【
図10】
図9の注意喚起用具を道幅に沿って2つ並べた状態を示す平面図である。
【
図11】
図10の注意喚起用具にウエイト材を取り付けた状態を示す平面図である。
【
図12】第2実施形態に係る注意喚起用具の変形例である。
【
図13】補強部材を設けていない状態での実験写真である。
【
図14】補強部材を設けた状態での実験写真である。
【
図15】各種条件で跳ね上がり量を測定したデータのグラフ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る注意喚起用具について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する左右(道幅)、前後方向(走行方向)とは、走行する車両の運転者から見た方向であって、
図1で示す方向をいうものとする。また、上下とは、
図1の紙面に垂直な方向であり、手前側が上側になる。
【0017】
注意喚起用具1は、
図1に示すように、環状部材2が前後左右に並べて碁盤目状に配置されている。より詳細には、環状部材2が前後方向に2行、左右方向に6列になるように配置されている。これらの環状部材2は、屈曲性を有する連結部材13(
図6参照)でそれぞれ連結されている。この屈曲性を利用して、
図3(A)および
図3(B)に示すように、隣り合う環状部材同士を互い違いに重ね合わせるようにして折りたたむことができるようになっている。
【0018】
環状部材2は、
図2に示すように、中央部が空洞のリング状(環状)に形成されている。より詳細には、環状部材2は、中心が同一の3つの第1同芯環3A、第2同芯環3B、第3同芯環3Cで構成されており、これらの同芯環3A、3B、3Cが法線方向に延びる接続部4によってそれぞれ接続されている。
【0019】
環状部材2は、樹脂材料によって一体成型されている。この樹脂材料は、車両が走行中に乗り上げたときの反発力が小さく、路面との接地力が高く、かつ、摩耗のし難い硬質の合成樹脂が使用されている。
【0020】
また、環状部材2には、
図2に示すように、3つの同芯環3A、3B、3Cを法線方向に貫通する態様で、連結用穴5が形成されている。この連結用穴5は、環状部材2を配置する際に隣り合う環状部材2に向くようにして配置されている
【0021】
この環状部材2は、中央部が空洞のリング状であるため、その重量が約1kg以下の軽量に形成することができる。さらに、3つの同芯環3A、3B、3Cの間に円弧状の長穴を設けることで、さらに軽量化が図られている。
【0022】
また、この環状部材2には、
図1および
図2に示すように、補強部材20が設けられている。この補強部材20は、前後方向に延在し、平面視で所謂I型形状を成しており、前後の両端部が環状部材2の第1同芯環3Aの内側面と2点で接する態様で設けられている。また、この補強部材20は、環状部材2の中心Pを通り、環状部材2の直径と同じ長さに形成されている。すなわち、補強部材20は、中心Pを挟んで対向する第1同芯環3Aの内側面と2点で接することで、環状部材2の前後方向に作用する力に対して効果的な補強となるようにしている。
【0023】
補強部材20の硬さは、環状部材2の形状維持や、走行する車両のタイヤの連続通過で発生する振動波の共振を抑制させるため、環状部材2よりも硬度が高く(剛性が大きく)なるようにしている。また、金属製などより樹脂製の方が安全であり望ましい。
【0024】
また、補強部材20の断面形状は、応力集中による破損を抑制する観点から、複雑な断面構造とはせず、シンプルな長方形断面にしている。さらに、補強部材20の高さ方向の厚さは、環状部材と同程度に形成している。
【0025】
この補強部材20の前後の両端部には、環状部材2の連結用穴5に嵌合する突起(図示せず)がそれぞれ設けられている。この突起を連結用穴5にそれぞれ嵌め込むことで補強部材20が環状部材2の内周縁部と接する態様で取り付けられる。なお、補強部材20は、補強部材20と環状部材2との異なる2つの素材を一体で成型(2色成型)することで設けるようにしてもよい。
【0026】
一方、注意喚起用具1には、
図4に示すように、碁盤目状に配置された注意喚起用具1の左側および右側に、ウエイト材10をそれぞれ1列ずつ配置するようにしてもよい。
【0027】
ウエイト材10は、
図5に示すように、環状部材2と同一の外周形状を有する円盤状に形成されている。このウエイト材10の材料は、合成樹脂材料或いは硬質ゴム材料によって成型されている。これらの材料についても、路面との反発力が小さく、路面との接地力が高く、かつ、摩耗のし難い材料が選定して使用されている。
【0028】
ウエイト材10には、周方向に約90度の間隔を空けて4つの把持部11が形成されている。この把持部11は、上下に貫通する大きな長穴であり、
図1で示す注意喚起用具1を持ち上げて互い違いに折りたたむ際に、作業者がこの把持部11を掴んで持ち上げるためのものである。
【0029】
また、このウエイト材10には、環状部材2のようにリング状には形成されておらず、その中央部に空洞がない。これは、ウエイト材10と路面との接地面積を大きくし、グリップ力(接地力)を高めるためである。また、ウエイト材10の重量を環状部材2と比較してより重く構成するためである。
【0030】
この把持部11の外周側の縁部11Aの形状は、略円弧状に形成されている。より詳細には、この縁部11Aの形状は、環状部材2の第1同芯環3Aの内側の曲率とほぼ一致するように形成されている。そして、ウエイト材10には、この4つの縁部11Aから外周まで法線方向に貫通する連結用穴12がそれぞれ設けられている。
【0031】
このウエイト材10の連結用穴12は、環状部材2の連結用穴5と互換性を有しており、
図5に示すように、環状部材2側(或いはウエイト材10側)から連結部材13を挿入して、隣り合うウエイト材10側(或いは環状部材2側)まで挿通して固定することができる。このように、1つの連結部材13を用いて2つの環状部材2同士を連結することもできるし、ウエイト材10と環状部材2とを同じ作業手順で連結することもできるようになっている。
【0032】
すなわち、ウエイト材10は、既に現場で使用されている注意喚起用具に継ぎ足すようにして環状部材2に連結して使用することもできるし、一部の環状部材2をウエイト材10に置換して連結して使用することもできる。また、ウエイト材10も環状部材2と同様に、屈曲性を有する連結部材13でそれぞれ連結することで、互い違いに折りたたむことができるようになっている(
図3参照)。
【0033】
なお、上述した環状部材2およびウエイト材10の配置は一例であり、設置する道路の道幅に合わせて列を増減して構成することもできる。また、行を増やして構成することもできる。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態に係る注意喚起用具1の作用について説明する。
注意喚起用具1は、
図1で示す左右方向が道幅に向けて配置され、前後方向に走行する車両が乗り上げるようになる。このとき、注意喚起用具1と路面とのグリップ力(ずれ方向に対するグリップ力)は、環状部材2が担うことになる。このグリップ力は、環状部材2の環状の各エッジ部が路面に食い付くことによって発生する。また、環状の構造であることから、路面に対して360度の全方向に均等にグリップ力が発生するので、どの方向にずらす力が作用してもずれ難い。
【0035】
一方、速度の速い車両が環状部材2に乗り上げた場合、環状部材2は、通過する車両のタイヤによる衝撃力で環状部材2が路面に強く叩きつけられ、その反発力で上側に持ち上げられる(ばたつき、跳ね上がり、変形)現象が生じる。このばたつきは、振動波と共振によって生じるものであり、これらは、グリップ力を小さくする。また、この反発力は、車両の速度が速いほど大きくなることが実験で判明している。
【0036】
補強部材20は、このばたつきによる反発力を分散、緩衝、減衰させ、環状部材2の跳ね上がりを抑制するように機能する。より詳細には、車両通過中に発生する環状部材2の変形(経時使用により徐々に楕円状に変形したり、瞬間的に発生する円形の歪み)を真円に保つように作用する。さらには、環状部材2の全てに補強部材20を設けることで、注意喚起用具1の全体の歪みを矯正し、全体の安定性を確保するように作用する。
【0037】
また、補強部材20は、環状部材2の跳ね上がりを、環状部材2と接する部分で下側に押さえ付けるように作用する。
【0038】
さらに、補強材の形状をI型にしていることで、車両通過時に発生する巻込み風の影響を小さくしている。より詳細には、I型にして補強部材20の面積を小さくすることで風によって環状部材2がめくれ上がるのを防止する。
【0039】
また、I型にして補強部材20の前後方向の長さをより長く確保することで、走行中のタイヤが環状部材2(或いは補強部材20)をより長く踏む(押さえつける)ようにしている。これにより、タイヤが押さえ付ける力をより長く効果的に利用できるようにしている。
【0040】
さらには、注意喚起用具1の両側に、環状部材2よりも重いウエイト材10を取り付けることで、環状部材2を左右の両側で下側に押さえ込むように機能することになる。
【0041】
図13および
図14は、本発明の第1実施形態に係る注意喚起用具1の実験写真を示すものである。この実験では、注意喚起用具1の上を10トントラック(タイヤが前側に1つ、後側に2つ)が時速90km/hで通過するときに、後側の2つ目のタイヤが乗り上げた瞬間をハイスピードカメラで撮影した写真である。
【0042】
注意喚起用具1は、前側のタイヤ、後側の1つ目のタイヤが通過したときに、環状部材2が路面に強く叩きつけられて跳ね上がり易いといえる。そのため、後側の2つ目のタイヤが乗り上げたときが、跳ね上がり量、変形量が最大になる。
【0043】
図13は、補強部材20を設けていないものであり、A部で環状部材2が変形し浮き上がっているのが確認できる。これに対し、
図14は、補強部材20を設けたものであり、A部での変形・浮き上がりが抑えられているのが確認できる。
【0044】
図14は、各種条件で浮き上がり量をハイスピードカメラで測定した数値をまとめたグラフ図である。最も左側に記載されている従来品とは、補強部材20のないものであり、
図13の状態に対応する。すなわち、
図13で確認された浮き上がり量は、15.2mmであった。
これに対し、左から2番目に記載されている従来品+補強材とは、補強部材20のあるものであり、
図14の状態に対応する。すなわち、
図14で確認された浮き上がり量は、3.8mmであり、従来品と比較して浮き上がり量を11.4mm抑える効果が確認されている。
【0045】
本発明の第1実施形態に係る注意喚起用具1によれば、環状部材2には、2環状部材の中心Pを通り、環状部材2の内側面に少なくとも2点以上で接する補強部材20が設けられているので、車両通過中に発生する環状部材の変形を真円に保つように作用する。また、環状部材2の跳ね上がりを、環状部材2と接する部分で下側に押さえ付けるように作用する。さらに、車両通過時に発生する巻込み風の影響を小さくしている。これにより、環状部材2の重量を最小限に抑えて、設置・回収作業の負荷を軽減しつつ、環状部材2の剛性を高めて跳ね上がりを最小限にすることで、速い速度または重量の重い車両が乗り上げてもずれ量を最小限に抑えることができる。
【0046】
特に、補強部材20は、前後方向に延在し、環状部材の内側面と2点で接するI型形状に形成されているので、環状部材2の中空部分の面積を必要以上に塞ぐことなく構成することができる。また、補強部材20は、前後方向に延在しているので、上述した巻き込み風の影響を最も受け難くすることができる。さらには、前後方向に延在しているので、走行中のタイヤが環状部材2(或いは補強部材20)をより長く踏む(押さえつける)ように作用することで、タイヤが環状部材2を押さえ付ける力をより長く効果的に得られるようにしている。
【0047】
また、複数の環状部材2が碁盤目状に並べて配置されているので、互い違いに折り畳み易く(
図3参照)、運搬・回収作業を容易に行うことができる。
【0048】
以上、本発明の第1実施形態に係る注意喚起用具について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0049】
例えば、本実施の形態では、補強部材20を前後方向に延びるI型形状にしているが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、所謂Y型形状の補強部材30で構成することもできる。この補強部材30は、環状部材2の中心Pから環状部材2の内側面まで3方向に延びており、それぞれ内側面と接する態様で組み付けられている。また、この補強部材30は、円周方向を3等分(120°)するように延びており、補強部材30に作用する力を3つの方向に均等に分散させて受けることで、タイヤの反発力に起因する環状部材2の変形を防ぎ、かつ、補強部材30が破損し難くしている。
【0050】
さらには、
図8に示すように、所謂十字型形状の補強部材40で構成することもできる。この補強部材40は、環状部材2の中心Pから環状部材2の内側面まで4方向(周方向に4等分。90°)に、前後左右に延びており、それぞれ内側面と接する態様で組み付けられている。これにより、補強部材40に作用する力を4つの方向に均等に分散させて受けることができるとともに、左右対称の形状にすることで、注意喚起用具1の全体に作用する内部応力を隣り合う環状部材2同士で協働してバランス良く受けることができる。これにより、タイヤの反発力に起因する環状部材2の変形を防ぎ、かつ、補強部材40が破損し難くしている。また、走行中のタイヤが環状部材2(或いは補強部材40)をより長く踏む(押さえつける)ようになり、タイヤが押さえ付ける力をより長く効果的に利用できるようにしている。
【0051】
また、I型(環状部材2の内側面に2点で接する)、Y型(3点で接する)、十字型(4点で接する)の他の補強部材であっても、環状部材2の中心Pを通り、環状部材2の内側面に少なくとも2点以上で接するものであれば、適用することができる。すなわち、環状部材2の重量、剛性、変形等を加味して、最適な形状の補強部材を適用することができる。
【0052】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る注意喚起用具101について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で使用する上下、左右(道幅)、前後方向(走行方向)とは、第1実施例と同様に、走行する車両の運転者から見た方向であって、
図9で示す方向をいうものとする。また、上下とは、
図9の紙面に垂直な方向であり、手前側が上側になる。
【0053】
また、以下の説明では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態で説明した部材と同一のものであって、同一の作用・効果を奏するものは、同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0054】
注意喚起用具101は、
図9に示すように、中央に位置する環状部材102の周囲を囲うようにして、環状部材102の周方向に沿って6個の環状部材2を配置・連結したものである。この注意喚起用具101は、
図10に示すように、車線幅H内に亘って2つの注意喚起用具101、101を並べて敷設するようになる。なお、2つの注意喚起用具101、101は、車線幅Hの中央部でそれぞれ連結されていてもよく、分離された状態で敷設されていてもよい。
【0055】
環状部材102は、6個の環状部材2と形状は同一であるが、硬度が高い材料で形成されている。この環状部材102は、6個の環状部材2の補強部材として機能するものである。すなわち、環状部材102は、補強部材20と協働して、タイヤからの衝撃力によって環状部材2が変形するのを抑制するとともに、ばたつきの発生を防止する。
【0056】
本発明の第2実施形態に係る注意喚起用具101によれば、複数の環状部材2が、1つの環状部材102の周囲を囲うようにして並べて配置されているので、第1実施例と比較して、注意喚起用具101の前後方向の全体長さが若干長くなり、前後方向に作用する力に対する剛性が高くなる。一方、前後方向を長くするために第1実施例の2行の配列を3行にした場合と比較して、使用する環状部材2の数が少なくなる。そのため、注意喚起用具101全体の重量を軽く抑え、設置・回収作業の負荷が増えないようにすることができる。また、車線幅Hに亘って2つの注意喚起用具101を並べて配置するので、第1実施例の注意喚起用具1と比較して、1つの注意喚起用具101が軽量になり、運搬・回収作業が容易になる。
【0057】
以上、本発明の第2実施形態に係る注意喚起用具について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0058】
例えば、第2実施形態に係る注意喚起用具101には、
図9~
図11に示すように、環状部材2にI型の補強部材20を設けたものが使用されているが、当然にY型の補強部材30、十字型の補強部材40を用いることもできる。
【0059】
また、環状部材2の配置は種々考えられるが、現時点で使用されている配置として千鳥状に並べたものがある(
図12参照)。このような千鳥状の配置であっても、I型の補強部材20を設けることで、タイヤの反発力に起因する環状部材2の変形を防ぎ、かつ、注意喚起用具201全体の前後方向の強度を向上させることができる。
【0060】
また、注意喚起用具201についても、I型の補強部材20の代わりに、Y型の補強部材30、或いは十字型の補強部材40を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、101、201 注意喚起用具
2 環状部材
3A 第1同芯環
3B 第2同芯環
3C 第3同芯環
4 接続部
5 連結用穴
10 ウエイト材
11 把持部
11A 縁部
12 連結用穴(連結部)
13 連結部材
20、30、40 補強部材
102 第2環状部材
H 車線幅
P 環状部材の中心