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  • 特許-ポリフェノールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ポリフェノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/62 20060101AFI20241224BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20241224BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20241224BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241224BHJP
【FI】
C07D311/62
B01J23/30 Z
B01J23/42 Z
B01J23/44 Z
B01J23/46 Z
B01J23/46 301Z
B01J23/46 311Z
B01J23/50 Z
B01J23/52 Z
B01J23/72 Z
B01J23/745 Z
B01J23/89 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019539437
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031261
(87)【国際公開番号】W WO2019044672
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2017163731
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絵里歌
(72)【発明者】
【氏名】藤森 良枝
(72)【発明者】
【氏名】直原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中山 鶴雄
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】冨永 保
【審判官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-138103(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198614(WO,A1)
【文献】特開2010-35548(JP,A)
【文献】国際公開第2006/116532(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/123725(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/101652(WO,A2)
【文献】国際公開第2006/090830(WO,A1)
【文献】Colloids and Surfaces B: Biointerfaces、(2010)、81、pp.217~223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D311/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素である酸化剤と触媒の存在下、カテキン類を溶液中で反応させることを含み、
前記触媒が、
金属酸化物、および/または
その表面において無機材料を有する基体と、前記無機材料の表面に固着されている、粒子径が0.5nm以上、100nm以下である金属ナノ粒子とを有する複合体を備え、
前記反応において前記カテキン類と前記酸化剤について、溶液中のモル比率が1:1から1:50の比率である、数平均分子量が9,000以上18,000以下であるポリフェノールの製造方法。
【請求項2】
前記触媒が前記複合体を有し、
前記金属ナノ粒子が、Au、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Agおよびこれらの酸化物からなる群から1種または2種以上選択される請求項1に記載のポリフェノールの製造方法。
【請求項3】
前記触媒がSiO2、ZrO2、Fe2O3、Al2O3、CおよびTiO2からなる群から1種または2種以上選択される無機材料の表面に前記金属ナノ粒子が固着されている前記複合体を有する請求項1または2に記載のポリフェノールの製造方法。
【請求項4】
前記触媒がWO3、Fe2O3、Ag2OおよびCuOからなる群から1種または2種以上選択される金属酸化物を有する請求項1から3のいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
【請求項5】
前記反応を溶媒中で行い、かつ15℃以上、溶媒の沸点以下の温度で行う請求項1からのいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が水である請求項に記載のポリフェノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人が昔から飲用していた日本茶に様々な機能性物質が含まれていると、注目が集まっている。代表的なものとして、カテキン類が挙げられる。これらカテキン類は、1929年、理化学研究所の辻村博士らによって初めて存在が確認され、その後、抗酸化作用、抗菌作用、がんの予防、血中コレステロール濃度の低減など、様々な機能が発見されており、特保飲料やサプリメントとして、製品化されている。
【0003】
しかし、カテキン類が多く含まれている緑茶の生産は、日本や中国など一部の地域に限定されており、世界の約8割では、紅茶やウーロン茶などの発酵茶が生産されている。そして近年、この発酵茶にもテアフラビン類というカテキン類同様の機能を持つ物質が含まれていることが明らかとなり、注目を集めている(特許文献1)。また、テアフラビン類の合成方法なども研究されている(特許文献2、3)。
カテキン、テアフラビンに加え、数平均分子量9、000から18,000のポリフェノールにも肝臓における脂肪の蓄積の抑制作用などの生理活性上の有用性が判明し、該ポリフェノールについて発酵茶からの抽出方法が開示されている(特許文献4)。また、ルイス酸触媒を用いてカテキン誘導体を縮合してオリゴマーを製造する方法(特許文献5)も開示されている。
また、カテキン、テアフラビンに加え、天然物から抽出物を酸性溶液中で加熱して得られるポリフェノールの組成物も開示されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-155784号公報
【文献】特開2010-035548号公報
【文献】特開2011-172514号公報
【文献】特開2012-005413号公報
【文献】特開2017-001982号公報
【文献】国際公開第2006/090830号公報
【文献】国際公開第2015/198614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2、3に記載されるような、酵素反応を用いたり、培養細胞を用いたりする方法では、合成を行う際の条件が非常に厳しく、ハンドリング性が悪いこと、また、反応後に酵素の除去など精製が容易でなく、クロマトグラフィー法など煩雑な工程が必要で大量生産には不向き、などの問題がある。また、特許文献4に記載されるような天然物からの抽出に関しては、抽出効率が低く、純度を高めるには粗抽出物からの分離精製工程が必要であり、製造工程が煩雑となる問題があった。特許文献5の方法は、カテキンを直接オリゴマー化するものでなく、オリゴマー化の工程である縮合反応の前段に、カテキンの水酸基を保護する反応および脱離基を導入する前工程が必要であり、縮合反応の後にも保護基を外す後工程が必要なため、多段階の工程を必要とする煩雑な方法である。
特許文献6の組成物は高分子物質を酸によって切断し、低分子量化したものであるが、酸による化学的な切断は様々な分子量や構造の物質が生じるので、所望の物質を得るのは効率が悪い。また分解反応のコントロールが難しく、所望の分子量や構造のポリフェノールを調製するのは困難である。
【0006】
出願人はテアフラビン類の合成用触媒とそれを用いたテアフラビン類の合成方法(特許文献7)を出願しているが、テアフラビン以外のポリフェノール類の合成方法は明らかとなっていなかった。
本発明は、ポリフェノールを合成する新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 酸化剤と触媒の存在下、カテキン類を反応させることを含み、
前記触媒が、
金属酸化物、および/または
その表面において無機材料を有する基体と、前記無機材料の表面に固着されている、粒子径が0.5nm以上、100nm以下である金属ナノ粒子とを有する複合体を備えるポリフェノールの製造方法。
[2] 前記触媒が前記複合体を有し、
前記金属ナノ粒子が、Au、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Agおよびこれらの酸化物からなる群から1種または2種以上選択される[1]に記載のポリフェノールの製造方法。
[3] 前記触媒がSiO2、ZrO2、Fe2O3、Al2O3、CおよびTiO2からなる群から1種または2種以上選択される無機材料の表面に前記金属ナノ粒子が固着されている前記複合体を有する[1]または[2]に記載のポリフェノールの製造方法。
[4] 前記触媒がWO3、Fe2O3、Ag2OおよびCuOからなる群から1種または2種以上選択される金属酸化物を有する[1]から[3]のいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
[5] 前記酸化剤が過酸化水素もしくは酸素である[1]から[4]のいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
[6] 前記反応において前記カテキン類と前記酸化剤についてモル比率1:1から1:50の比率である[1]から[5]のいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
[7] 前記反応を溶媒中で行い、かつ15℃以上、溶媒の沸点以下の温度で行う[1]から[6]のいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
[8] 前記溶媒が水である[7]に記載のポリフェノールの製造方法。
[9] 前記ポリフェノールの数平均分子量が9,000以上18,000以下である[1]から[8]のいずれか一つに記載のポリフェノールの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリフェノールを合成する新規な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例19で得られたポリフェノールの赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態のポリフェノールの合成方法について詳述する。
本実施形態はポリフェノールの合成方法に関し、酸化剤と後述するポリフェノール合成用触媒の存在下、カテキン類を反応させることを含む。
ポリフェノールとはフェノール性水酸基を複数有する化合物をいい、特に本明細書においてはその構造からポリフェノールと分類される化合物のうちカテキン類以外の化合物をいう。本実施形態に係るポリフェノールとして、例えば、カテキン類が2分子反応して得られるテアフラビン類や、カテキン類が酸化重合したカテキン重合体などが挙げられる。
【0011】
本実施形態の合成方法においてはカテキン類を出発物質として反応を行う。
カテキン類はピロガロール型カテキンとカテコール型カテキンに分けられる。カテコール型カテキンにはカテキン(C)、カテキンの立体異性体であるエピカテキン(EC)、エピカテキンガラート(ECg)などが含まれる。また、ピロガロール型カテキンにはエピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガラート(EGCg)などが含まれる。本明細書において、カテキン類とは以下の一般式(I)(式中、Rは水素原子またはガロイル基である)または一般式(II)(式中、Rは水素原子またはガロイル基である)で表される化合物をいう。ピロガロール型カテキンは以下の一般式(I)で表され、カテコール型カテキンは以下の一般式(II)で表される。本実施形態においてはこれらのカテキン類のうち、1種を原料として用いても、あるいは、2種以上の混合物を原料として用いても構わない。原料として用いられるカテキン類は、市販品でも、茶葉からの抽出物でもよい。
【0012】
【化1】
【化2】
【0013】
式(I)中、R1は水素原子またはガロイル基を示す。エピガロカテキン(EGC)は式(I)においてR1が水素原子である化合物であり、エピガロカテキンガレート(EGCg)は式(I)においてR1がガロイル基である化合物である。また式(II)中、R2は水素原子またはガロイル基を示す。カテキン(C)、エピカテキン(EC)は式(II)においてR2が水素原子である化合物であり、エピカテキンガレート(ECg)は式(II)においてR2がガロイル基である化合物である。
【0014】
本実施形態において反応は、例えば溶液中で行うことができる。
合成反応に使用する溶媒はカテキン類が溶解できれば特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、蟻酸、酢酸、リン酸、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルなど当業者に公知な溶媒を単独でも2種以上混合しても使用できる。水は安全性が高く、生成物であるポリフェノールも溶解する場合が多いので反応溶媒として好ましい。
【0015】
次に本実施形態で用いるポリフェノール合成用触媒について説明する。本実施形態に係るポリフェノール合成用触媒は、金属酸化物、および/または複合体を有する。該複合体は、その表面において無機材料を有する基体と、無機材料の表面に固着されている、粒子径が0.5nm以上、100nm以下である金属ナノ粒子とを備える。複合体においては、金属ナノ粒子が基体表面の無機材料に固着されることで、当該複合体が非常に高い酸化触媒能をもつようになる。金属ナノ粒子は、後述する様々な方法により無機材料に固着することができる。
【0016】
本実施形態で用いることができる複合体の基体は、無機材料をその表面において有する限り特に限定されない。基体の具体例としては、その表面が無機材料により構成されている基体や、全体が無機材料によって構成されている基体を挙げることができる。
無機材料は、ゼオライト、アパタイト、活性炭などの炭素材料、珪藻土、金属酸化物などのうち1種または2種以上から構成されるようにすることができる。このうち、無機材料が金属酸化物からなることが好ましい。
その表面において金属酸化物を有する基体を構成する方法としては特に限定されないが、電気化学的に陽極酸化により金属酸化皮膜の薄膜を形成する方法、熱処理により金属表面を酸化する方法、スパッターやイオンプレーティング法により酸化薄膜を形成したりする方法が挙げられる。また、基体全体が金属酸化物によって構成されているようにしてもよい。
無機材料が金属酸化物により構成されていることにより、酸素分子のやり取りが活発に行われるため触媒活性をより高めることができる。当該金属酸化物としては、ケイ素、ジルコニウム、亜鉛、チタン、クロム、鉄、銅、錫、アルミニウム等の酸化物が好ましく、例えばこれら金属酸化物のうち1種または2種以上により無機材料が構成されるようにしてもよい。特に、SiO2、ZrO2、Fe2O3、Al2O3、CおよびTiO2のうち1種または2種以上から無機材料が構成されることが、上述の金属ナノ粒子固着量との関係で触媒活性がさらにより高くなり、より好ましく、SiO2、Fe2O3、Al2O3、およびTiO2のうち1種または2種以上から無機材料が構成されることがさらにより好ましい。
【0017】
本実施形態に係る金属ナノ粒子として、ポリフェノールの生産性を高めることができるため、例えば、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびこれらの酸化物からなる群から1種または2種以上選択されるようにすることが好ましい。同様の理由から、金、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウムからなる群から選択される1種または2種以上を本実施形態に係る金属ナノ粒子として用いることがより好ましい。
【0018】
本明細書において、金属ナノ粒子とは、粒径が1μm未満の金属粒子をいう。
本実施形態において、金属ナノ粒子の平均粒子径は、0.5nm以上100nm以下であることが好ましく、0.5nm以上20nm以下がより好ましく、0.5nm以上10nm以下がさらに好ましい。平均粒子径が0.5nmより小さいものは物質として0.5nm以上である場合よりも不安定となりやすく、平均粒子径が100nmより大きい場合には、平均粒子径が100nm以下である場合と比較して触媒活性が低下する。一方、平均粒子径を100nm以下(より好ましくは20nm以下、さらにより好ましくは10nm以下)とすることにより、触媒活性がより高まる。
なお本明細書でいう平均粒子径とは、TEM画像にて実際に金属ナノ粒子の粒径を300個以上測定した平均値を言う。
また、粒径の調整は、例えば、公知の方法に基づき金属ナノ粒子調製時の溶液pHを調整することで行うことができる。
【0019】
金属ナノ粒子を基体が有する無機材料に固着させる方法については特に限定されず、適宜設定できる。例えば、金属ナノ粒子がバインダーや、加熱乾燥などで基体表面の無機材料に固着されていてもよい。
また、コロイドを基体表面中の無機材料部分に塗布後、乾燥することにより金属ナノ粒子を無機材料に固着するようにしてもよい。
例えば無機材料にパラジウムあるいはパラジウム酸化物を固着する場合には、パラジウムイオンをゼータ電位や、パラジウムイオンの拡散などの化学的方法で無機材料に吸着させて固着するようにしてもよい。また、無機材料を表面に有する基体を、パラジウムイオンを含む水溶液に浸漬して塗布した後、有機酸、ホルムアルデヒド、ヒドラジンなどの還元剤を含む水溶液に浸漬したり、水素還元雰囲気中で還元処理し、パラジウム、あるいはパラジウム酸化物のナノ粒子を無機材料に固着させてもよい。
【0020】
また、例えば、金属ナノ粒子は、半球状等の形状を有するとともに、無機材料に密着して接合し、当該接合により無機材料において接合界面周縁部を形成していてもよい。このとき、金属ナノ粒子は、無機材料と金属ナノ粒子との間のゼータ電位の差を利用して無機材料に直接的に接合している。なお本明細書でいう接合とは、無機材料と金属ナノ粒子が面(接合界面)で接触して固着されていることを言い、接合界面周縁部とは、その接合界面の周縁部(ペリメーター;perimeter)のことを言う。また、本明細書において直接的に接合とは、バインダー等の他の材料を介さないで基体表面の無機材料と金属ナノ粒子とが固着していることをいう。
【0021】
金属ナノ粒子が、基体表面の無機材料に対して直接的に接合し、触媒の表面において接合界面周縁部が露出して存在しており、当該基体と金属ナノ粒子との接合界面周縁部を有する触媒がカテキンに作用することで、ポリフェノールの合成反応がより進行する。この点について、具体的に説明すると、接合界面周縁部では酸素欠陥ができやすく、ここで酸素分子や水素分子の活性化が進行すると推定される。従って、酸化触媒活性や選択性を上げるためには、この接合界面周縁部が存在すると有利である。そのため、本実施形態においては、金属ナノ粒子と無機材料との接合により形成される接合界面周辺部を有することが好ましい。
【0022】
金属ナノ粒子を無機材料表面に直接的な接合により接合界面周縁部が形成されている状態で固着させる方法としては特に限定されるものではない。具体的な例として、共沈法、含浸法、ゾル-ゲル法、滴下中和沈殿法、還元剤添加法、pH制御中和沈殿法、カルボン酸金属塩添加法、コロイド法、析出沈殿法(DP法)、尿素法、析出還元法、固相混合法(SG法)、共同沈殿法(One-pot法)等の方法が挙げられ、これらの方法は基体表面の無機材料の種類により適宜使い分けることができる。
【0023】
以下に析出沈殿法を例として、金化合物を用いた場合の本実施形態のポリフェノール合成用触媒の調製法について具体的に説明する。析出沈殿法の具体的な方法としては、まず、金化合物を溶解させた水溶液を20~90℃、好ましくは50~70℃に加温、攪拌しながら、pH3~10、好ましくはpH5~8になるようにアルカリ溶液で調整する。その後、当該水溶液に基体となる無機材料を添加したのち、50~70℃でさらに攪拌後、ろ過、焼成することで本実施形態のポリフェノール合成用触媒を得ることができる。
【0024】
金化合物水溶液の調製に用いることができる金化合物としては、例えば、HAuCl4・4H2O、NH4AuCl4、KAuCl4・nH2O、KAu(CN)4、Na2AuCl4、KAuBr4・2H2O、NaAuBr4などが挙げられる。また、金化合物水溶液における金化合物の濃度は、特に限定されないが、1×10-1~1×10-5mol/Lとするのが好ましい。
【0025】
無機材料における金属ナノ粒子の担持量としては、特に限定されないが、無機材料に対して0.5~30質量%とするのが好ましく、0.5~25質量%とするのがより好ましい。0.5~25質量%とするのがより好ましい理由としては、25質量%より高い割合で担持させると金属ナノ粒子同士が凝集しやすくなり、範囲内にある場合と比較して酸化還元作用が減少するからである。
【0026】
上述の複合体においては、基体表面の無機材料において、上述の金属ナノ粒子が固着されるとともに、例えばチタンや、アルミニウムや、鉄などの酸化物粒子がさらに担持されてもよい。無機材料表面に酸化物粒子を担持する方法としては特に限定されず、例えば溶射法により酸化物粒子を無機材料に担持させるようにしてもよい。無機材料に担持された酸化物粒子が金属ナノ粒子にその触媒活性を阻害する物質が付着するのを抑制することができるので、より長期に渡り、安定して酸化還元作用を持続できる。
【0027】
また、ポリフェノール合成用触媒は、上記複合体に代えて、あるいは上記複合体と共に、金属酸化物を有するようにしてもよい。
使用できる金属酸化物は、酸化触媒能を有すれば特に限定しないが、Al、AgO、CeO、CuO、CuO、Fe、MnO、MoO、V、WOなどが好ましい。特にAgO、Fe、WOおよびCuOはポリフェノールの収率がより高くなるので、これらのうち少なくともいずれかで金属酸化物が構成されていることがより好ましく、AgOおよび/またはWOがさらにより好ましい。その形態は特に限定されないが、粒子状であると、比表面積が大きくなり、触媒活性が高くなるので好ましい。また、金属酸化物は基体に固定されていてもよい。
上記金属酸化物をポリフェノール合成用触媒として単独で使用しても、2種以上混合して使用しても構わない。また、金属酸化物と上述の複合体とを併用しても構わない。
【0028】
本実施形態に係るポリフェノール合成用触媒は、様々な形態を有するようにすることができる。その形状を調整する方法も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。ポリフェノール合成用触媒が上述の複合体を有する場合には、例えば基体の形状を調整することにより触媒を任意の形状に成形することができる。例えば、本実施形態のポリフェノール合成用触媒は、粉末状、顆粒状、加圧成形などによる錠剤状などの形態を有するようにすることができる。さらに基体を繊維状の無機材料により構成される織編物、不織布、またはシートとしたり、箔状やプレート状の金属酸化物等を基体とすることで、フィルター状、シート状などの形態を本実施形態のポリフェノール合成用触媒が有するようにすることもできる。
【0029】
さらにまた、本実施形態のポリフェノール合成用触媒が、上述の、粉末状、顆粒状、加圧成形などによる錠剤状の形態を有する場合は、当該触媒が繊維構造体に含有される、または繊維構造体の外面に固定される態様とすることができる。
【0030】
本実施形態のポリフェノール合成用触媒を繊維構造体に含有、または固定させるときの具体的な処理については当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば高分子材料に本実施形態のポリフェノール合成用触媒を添加後、混練、紡糸することで、繊維構造体に含有されるようにしてもよい。また、織物や不織布などの繊維構造物へバインダーやカップリング剤などを用いて固定してもよい。さらに、ゼオライトなどの無機材料にポリフェノール合成用触媒を固定した後、ポリフェノール合成用触媒が固定された該無機材料を繊維構造物に固定して、ポリフェノール合成用触媒フィルターを製造したり、繊維基材に例えば無機酸化物粒子から成る基体を固定してから、金属ナノ粒子の材料を溶解させた水和物に浸漬して金属ナノ粒子を無機酸化物粒子等の表面に析出させることもできる。なお、本明細書において、ポリフェノール合成用触媒の含有とは、当該ポリフェノール合成用触媒が繊維構造体の外面に露出している場合も含む概念である。
【0031】
バインダー成分としては、繊維基材との密着性などを考慮して適宜選択でき、特に限定はされない。例えば合成樹脂では、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、繊維素系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂などを用いることができる。また、天然樹脂としては、ひまし油、亜麻仁油、桐油などの乾性油などを用いることができる。
【0032】
繊維基材に本実施形態のポリフェノール合成用触媒を固定する方法としては、上記バインダーなどで固定してもよい。また、不飽和結合部を有するシランモノマーなどを還流処理などで化学結合した本実施形態のポリフェノール合成用触媒を、メタノールなどの溶媒に分散し、繊維基材に塗布や浸漬したのち、電子線などの放射線を照射し、グラフト重合により化学結合させてもよい。
【0033】
用いるシランモノマーの一例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、特殊アミノシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、加水分解性基含有シロキサン、フロロアルキル基含有オリゴマー、メチルハイドロジェンシロキサン、シリコーン第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0034】
繊維構造体の製造方法としての具体例としては、例えば繊維を交絡させて製造される不織布や、パルプと結着剤を混抄して製造される混抄紙などを基材として製造する際に本実施形態のポリフェノール合成用触媒を混合することで、基材内部の空間内にて狭持させることができる。また熱可塑性樹脂や、反応性ホットメルト接着剤や、紫外線や電子線などの粒子線で反応硬化する樹脂をノズルより繊維状に吐出し、吐出して形成した繊維の表面が粘着性を有している間に、本実施形態のポリフェノール合成用触媒を接触させた後、反応硬化処理を行って本実施形態のポリフェノール合成用触媒を固定するようにしてもよい。当該固定はホットメルト接着剤では室温に戻して固着させたり、反応性ホットメルト接着剤では空気中の水分で反応硬化させたり、紫外線や電子線で架橋する樹脂などでは紫外線や電子線を照射して反応硬化させて行うことができる。
【0035】
このように用いられる樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン‐メチルメタクリレート共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂などの樹脂を主成分とするホットメルト接着剤や、ウレタンプレポリマーを主体とする反応性ホットメルト接着剤や、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート樹脂などを主成分とする紫外線や電子線で架橋する樹脂などが挙げられる。
【0036】
次にポリフェノールの製造工程について、一例を挙げて説明する。
まず、原料となるカテキン類を、溶媒に添加し、攪拌して溶解させ、溶液(以下、カテキン溶液と言う)を得る。カテキン溶液におけるカテキンの濃度は特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、ポリフェノール合成用触媒に担持された金属ナノ粒子濃度(μmol/mL)および/または金属酸化物濃度(μmol/mL)と、全カテキン濃度(μmol/mL)との比が1:1以上であることが、ポリフェノールの収率をより高めることができるため、好ましい。当該金属ナノ粒子濃度(μmol/mL)および/または金属酸化物濃度(μmol/mL)と、全カテキン濃度(μmol/mL)との比の上限値については特に限定されないが、触媒濃度に対するカテキン濃度が大きいと反応速度が低下するので、生産性の観点から1:1000以下であるのが好ましい。水を溶媒に使用する場合は、カテキンが安定に存在するので、酸性の状態で使用してもよい。カテキン類の溶解性を高めるために、カテキン溶液にエタノールなどアルコール類を混ぜてもよい。
【0037】
本実施形態の反応において用いられる酸化剤は、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸マグネシウムなどの過マンガン酸類、ニクロム酸カリウム等の二クロム酸塩、クロム酸カリウムなどのクロム酸塩、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、希硝酸、酸素ガス、オゾン、過酸化水素など、例えば当業者に公知な酸化剤を使用できる。このうち、酸素ガスおよび過酸化水素は取り扱いが容易であるので好ましい。酸素ガスはカテキン溶液にバブリングすることで容易に供給できる。また、過酸化水素は反応前にカテキン溶液に溶解可能である。酸素ガスおよび過酸化水素は反応終了後に未反応で残存していても、減圧、加熱などの操作あるいは自然揮発などで容易に分解、除去することが可能であり、得られたポリフェノールに不純物として残存しにくい利点もある。
【0038】
本実施形態の反応においては、例えば、上述のカテキン溶液に、上述のポリフェノール合成用触媒および酸化剤を添加して反応を進行させる。
本実施形態の反応において使用する酸化剤量について、カテキン類と酸化剤のモル比率が1:1~1:200が好ましく、1:1~1:50がさらに好ましい。
上記モル比率について1:1のときより酸化剤の割合が少ないと、範囲内にある場合と比較して反応が進行しにくくなり、生成したポリフェノールの分子量が小さく、未反応カテキンの残留が多くなる。
また、他の反応条件を同じとしたときの得られるポリフェノールの分子量の違いは、上記モル比率について1:50のときより酸化剤の割合が多い場合と1:50のときおよびそれより酸化剤の割合が少ない場合との間であまりなく、1:200のときより酸化剤が多い場合と1:200のときと酸化剤が同じか少ない場合ではさらにその違いが小さくなる。そのため、上記モル比率について1:200の場合よりも酸化剤を多く用いる必要性は小さい。
【0039】
反応温度は溶液が液体で存在する範囲であれば特に限定されず、4℃以上溶媒の沸点以下が好ましく、触媒の反応効率がより高まる15℃以上溶媒の沸点以下がより好ましい。反応温度が高くなるほど反応速度は速まるが、溶媒の沸点以上の温度での反応には耐圧容器が必要となり、反応装置が複雑になるので好ましくない。
【0040】
反応は、例えば、攪拌しながら行い、一定時間に到達したら、触媒を除去するなどの方法で、反応を停止することができる。反応時間とともに分子量が増大していくので、目的の分子量に応じて反応時間を調整すればよい。
【0041】
本実施形態の反応により生成されるポリフェノールについては特に限定されないが、生理活性をより高める観点から、数平均分子量3,000以上20,000以下のポリフェノールが好ましい。また、生理活性がさらに高まるので、数平均分子量9,000以上18,000以下のポリフェノールがさらに好ましい。
なお、該生理活性としては特許文献4に記載の肝臓における脂肪の蓄積の抑制作用や抗酸化活性等が挙げられる。
本実施形態において、反応が進行したか否かは生成物の分子量測定と生成物の構造中に複数のフェノール性水酸基を有することを検出することにより、確認することができる。
生成物の分子量はゲル浸透クロマトグラフィー法や、GPC-MALS法、MALDI-TOFMS法などの通常の機器分析で測定することができる。例えば後述する実施例においては、生成物であるポリフェノールの上述の数平均分子量は下記条件によるゲル浸透クロマトグラフィー法によるポリスチレン換算分子量で示している。
カラム:TSKgel α-3000(東ソー(株))
溶離液:10mM塩化リチウム含有ジメチルホルムアミド
流速 :0.6ml/分
温度 :40℃
検出器:UV検出器(測定波長:275nm)
また、生成物が複数のフェノール性水酸基を有するか否かは、例えば赤外吸収スペクトル測定やフォーリンチオカルト法による吸光度測定などによって検出することができる。また、例えば公知の方法などにより、得られた化合物のさらなる分子構造の特定を行うことにより複数のフェノール性水酸基を有することを確認するようにしてもよい。
【0042】
反応終了後、得られたポリフェノールとポリフェノール類合成用触媒を含む懸濁液を、遠心分離または濾過用フィルター等に供するなどしてポリフェノール合成用触媒を除去することでポリフェノールを含む溶液(以下、ポリフェノール溶液と言う)が得られる。
得られたポリフェノール溶液はそのまま利用してもよいほか、当該ポリフェノール溶液から蒸発や再沈殿などによって溶媒を除去してポリフェノールを単離回収してもよい。
また、必要に応じて透析やクロマトグラフィーなどの方法で、未反応カテキンなど低分子成分を除去したり、特に活性の高い成分を抽出したりしてもよい。
また、遠心分離等で分離したポリフェノール合成用触媒は繰り返し、ポリフェノールの合成に供することができる。
【0043】
以上、本実施形態においては、酵素などを用いて反応を行う場合とは異なり、ポリフェノール生成後に生成物から触媒を濾過などの方法で容易に除去でき工程が簡素である。また、酵素などを用いて反応を行う場合は、温度やpHなど、特殊な条件下でないと効率よく合成できないが、本実施形態においては、より広い反応条件下で効率よく反応を行うことができ、そのため、出発原料や反応条件を選択することで様々な構造および分子量のポリフェノールを製造することができる。また、従来の化学合成の方法では、有機溶媒を必要とし、カテキンに保護基を導入する等前処理が必要な場合もあるが、本実施形態においては、環境に対する負荷が少ない水溶媒中でも反応が実施でき、反応前後の処理も必要としない簡便で安全な製造方法である。
【実施例
【0044】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(ポリフェノール合成用触媒の作製)
(製造例1): Pd
基体に対するパラジウム担持量が1wt%となるように、塩化パラジウム水溶液を秤量して1.5mL蒸留水に溶解し、さらにエチレングリコール50μLを加えた錯体溶液を調製した。基体として酸化チタン粉末1gを秤量し、1.5mLの蒸留水を加え懸濁させた。次いで錯体溶液を基体の酸化チタン粉末懸濁液に攪拌しながら加え、60℃の乾燥機で水分がなくなるまで乾燥して粉末化した。この乾燥粉末を250℃で1時間焼成、粉砕し、パラジウムナノ粒子担持ポリフェノール合成用触媒を得た。担持されているパラジウムナノ粒子の粒径は12.5nmであった。
【0045】
(製造例2): Ir
製造例1の塩化パラジウムを塩化イリジウムに変えた以外は同様の方法で、イリジウムナノ粒子担持ポリフェノール合成用触媒を得た。担持されているイリジウムナノ粒子の粒径は5.7nmであった。
【0046】
(製造例3): Ag
製造例1の塩化パラジウムを硝酸銀に変えた以外は同様の方法で、銀ナノ粒子担持ポリフェノール合成用触媒を得た。担持されている銀ナノ粒子の粒径は9.8nmであった。
【0047】
(製造例4): Pt
製造例1の塩化パラジウムを塩化白金酸に、基体を酸化ケイ素に変えた以外は同様の方法で、白金ナノ粒子担持ポリフェノール合成用触媒を得た。担持されている白金ナノ粒子の粒径は6.8nmであった。
【0048】
(製造例5): Au
0.5mmolの塩化金酸水溶液を100mLの水に溶解させ、70℃に加温してNaOH水溶液でpH7.0に調整した。その水溶液に基体として酸化チタン粉末を1g加えて1時間攪拌した。その後、混合物を固液分離し、減圧乾燥して、300℃で4時間焼成、粉砕し、金ナノ粒子担持ポリフェノール合成用触媒を得た。担持されている金ナノ粒子の粒径は1.8nmであった。
【0049】
(ポリフェノールの合成)
(実施例1)
原料としてエピカテキン(EC)とエピガロカテキン(EGC)を、それぞれ3.2 mMとなるように純水中に添加して溶解させ、カテキン水溶液を得た。得られたカテキン水溶液を各2mLずつ5mLチューブに入れ、そこに3%過酸化水素水を100μL加えることで、反応液とした。カテキン類と過酸化水素のモル比は1:25とした。ここに製造例1で作成したパラジウムナノ粒子担持触媒13mgを秤量して加え、一晩攪拌した。反応終了後、反応液を孔径0.45μm濾過用フィルターに供して触媒を除去し、続いて水を蒸発除去してポリフェノールを得た。
【0050】
(実施例2)
触媒を製造例2で作成したイリジウムナノ粒子担持触媒に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0051】
(実施例3)
触媒を製造例3で作成した銀ナノ粒子担持触媒に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0052】
(実施例4)
触媒を製造例4で作成した白金ナノ粒子担持触媒に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0053】
(実施例5)
触媒を製造例5で作成した金ナノ粒子担持触媒に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0054】
(実施例6)
触媒を市販の1%金担持酸化鉄触媒(HarutaGold(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0055】
(実施例7)
触媒を市販の1%金担持炭素(ケッチェンンブラック)触媒(HarutaGold(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0056】
(実施例8)
触媒を市販の5%ロジウム担持アルミナ触媒(和光純薬工業(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0057】
(実施例9)
触媒を市販の0.5%ルテニウム担持アルミナ触媒(エヌ・イー・ケムキャット(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0058】
(実施例10)
触媒を市販の酸化銀(和光純薬工業(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0059】
(実施例11)
触媒を市販の酸化銅(和光純薬工業(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0060】
(実施例12)
触媒を市販の酸化タングステン(純正化学(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0061】
(実施例13)
触媒を市販の酸化鉄(HarutaGold(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0062】
(実施例14)
原料のカテキン類をエピカテキン(EC)のみとした以外は実施例5と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0063】
(実施例15)
原料のカテキンをエピガロカテキン(EGC)のみとした以外は実施例5と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0064】
(実施例16)
原料のカテキンをエピカテキンガレート(ECg)のみとした以外は実施例5と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0065】
(実施例17)
原料のカテキン類をエピガロカテキンガレート(EGCg)のみとした以外は実施例5と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0066】
(実施例18)
原料のカテキン類をカテキン(C)のみとした以外は実施例5と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0067】
(実施例19)
原料としてエピガロカテキンガレート(EGCg)を、156 mMとなるように純水中に添加して溶解させ、カテキン水溶液を得た。得られたカテキン水溶液2mLを5mLチューブに入れ、そこに30%過酸化水素水を50μL加えることで、反応液とした。
カテキン類と過酸化水素のモル比は1:5.2とした。ここに製造例で作製した金ナノ粒子担持触媒66mgを秤量して加え、60℃、0.5時間攪拌した。反応終了後、反応液を孔径0.45μm濾過用フィルターに供して触媒を除去し、続いて水を蒸発除去してポリフェノールを得た。
【0068】
(実施例20)
反応時間を1時間に変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0069】
(実施例21)
反応時間を24時間に変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0070】
(実施例22)
30%過酸化水素水の添加量を100μLに変更した(カテキン類と過酸化水素のモル比は1:10.4)以外は、実施例19と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0071】
(実施例23)
30%過酸化水素水の添加量を25μLとし(カテキン類と過酸化水素のモル比は1:2.6)、反応時間を1時間に変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0072】
(比較例1)
触媒を市販の酸化ケイ素(HarutaGold(株))に変更し、実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0073】
(比較例2)
触媒を加えないこと以外は実施例1と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0074】
(比較例3)
過酸化水素を加えないこと以外は実施例19と同様の方法で反応を進行させ、ポリフェノールを得た。
【0075】
(複数のフェノール性水酸基を有していることの確認および分子量測定(ポリフェノール生成の確認))
以下のようにして生成物がポリフェノールであることを確認した。
各実施例および比較例の生成物について、赤外吸収スペクトル測定での水酸基を示すピーク(3500~3200cm-1)の有無および、ISO 14502-1:2005に基づくフォーリン-チオカルト法による吸光度測定(波長;765nm)を行い、複数のフェノール性水酸基を有していることを確認した。
図1に実施例19で得られたポリフェノールの赤外吸収スペクトルを例示する。
【0076】
また、生成物をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に供して分析し、生成物の量を算出した。生成物はポリスチレン換算分子量3,000以上の範囲とした。生成物の量は、GPCにおけるピーク全体の面積に対する、生成物成分の面積の比で表した。同時に生成物の数平均分子量を算出した。
カラムはTSKgel α-3000(東ソー(株))を用い、分子量は標準ポリスチレンを用いて計算した。検出波長は275nmとした。
【0077】
生成物の量と数平均分子量についての結果を表1に示す。表1に示すとおり、実施例1~23ではポリフェノールの生成が確認されたが、比較例1~3ではほとんど確認できなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
以上の通り、本発明の製造方法を用いると、ポリフェノールを簡便に合成することができる。
図1