(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】コーティング剤を塗布するための設備及び設備を洗浄する方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20241224BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241224BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241224BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D3/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070083
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509003265
【氏名又は名称】エクセル インダストリーズ
【氏名又は名称原語表記】EXEL INDUSTRIES
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロヴナ フィリップ
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-096464(JP,A)
【文献】特開2016-184672(JP,A)
【文献】特開2009-045541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00-21/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤を塗布するための設備であって、
一組の印刷ノズルを備え、
前記印刷ノズルの各々は、コーティング剤用の排出オリフィスまで下流方向に延びる出口チャネルを有し、
前記設備は、洗浄ステーションをさらに備え、
前記洗浄ステーションは、複数のインジェクタを備え、
前記複数のインジェクタは、前記一組の印刷ノズル又は列状をなすノズルの排出オリフィスを通して前記出口チャネルに洗浄流体を注入することにより、前記一組の印刷ノズルのうち全てのノズル又は前記列状をなすノズルにおける複数のノズルを同時に洗浄するように設けられている、
前記洗浄ステーションは、少なくとも1つの印刷ノズルの前面を洗浄する洗浄部材を備
え、
前記ノズルの前記排出オリフィスの内径とインジェクタの直径との比は0.03~0.5である、ことを特徴とする設備。
【請求項2】
前記洗浄ステーションは、前記一組の印刷ノズルが前記洗浄ステーションに配置されたときに、前記印刷ノズルの前記排出オリフィスを外部から隔離する一つ又は複数のシールガスケットを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の設備。
【請求項3】
前記シールガスケットは、前記一組の印刷ノズルが前記洗浄ステーションに配置されたときに、前記排出オリフィスを外部から個々に隔離する、ことを特徴とする請求項2に記載の設備。
【請求項4】
前記洗浄部材は、各々の印刷ノズルを洗浄するためのものである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の設備。
【請求項5】
前記一組の印刷ノズルの前記ノズルは、前記一組の印刷ノズルの前面から突出しており、
前記洗浄ステーションは複数のハウジングを備え、
前記一組のノズルの前記前面が前記洗浄ステーションの上面又は側面に対向するか又は前記上面又は前記側面に対して配置されたときに、前記複数のハウジングは前記印刷ノズルを少なくとも部分的に受容し、
前記洗浄ステーションの前記上面又は前記側面まで前記ハウジングが延びており、
前記ハウジングまで延びる洗浄流体インジェクタをさらに備える、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の設備。
【請求項6】
前記印刷ノズルの前記排出オリフィスは、前記一組の印刷ノズルの前面と同一平面上に位置し、
前記洗浄ステーションは、洗浄流体インジェクタが連通する上面又は側面を有し、
前記一組の印刷ノズルの前記前面が前記洗浄ステーションの前記上面又は前記側面に対して配置されたとき、前記印刷ノズルの前記排出オリフィスは、前記洗浄ステーションの前記インジェクタとそれぞれ整列する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の設備。
【請求項7】
前記洗浄ステーションは本体を有し、この本体内に洗浄流体循環チャネルが設けられ、
前記インジェクタは、前記チャネルの下流側で前記本体に設けられている、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の設備。
【請求項8】
前記設備は、多軸ロボットをさらに備え、
前記多軸ロボットは、コーティングされるオブジェクトに向けて前記一組の印刷ノズルが配向される噴霧位置と、前記一組の印刷ノズルが前記洗浄ステーションと接触する洗浄位置と、の間に亘って前記一組の印刷ノズルを移動させる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の設備。
【請求項9】
各々の印刷ノズルは、プリントヘッドを有し、排出オリフィスは、50~300μmの内径を有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の設備。
【請求項10】
前記オリフィスの内径は、100~200μmである、ことを特徴とする請求項9に記載の設備。
【請求項11】
前記オリフィスの内径は、150μmである、ことを特徴とする請求項10に記載の設備。
【請求項12】
前記比は0.05~0.2である、ことを特徴とする請求項
1~1
1のいずれかに記載の設備。
【請求項13】
前記一組の印刷ノズルにおける複数の印刷ノズルが、少なくとも一列に配置され、前記洗浄ステーションの前記インジェクタは、前記印刷ノズルの列数と同じ列数だけ設けられており、
一列のインジェクタにおける2つの隣接するインジェクタ間の間隔は、一列の印刷ノズルにおける2つの隣接する印刷ノズル間の間隔と等しい、ことを特徴とする請求項1~1
2のいずれかに記載の設備。
【請求項14】
前記一組のノズルには第1の抽気弁が設けられており、
前記洗浄ステーションには第2の抽気弁が設けられており、前記第1及び第2の抽気弁の各々により、使用後に洗浄流体が排出される、ことを特徴とする請求項1~1
3のいずれかに記載の設備。
【請求項15】
コーティング剤を塗布するための設備における一組の印刷ノズルを洗浄するための方法であって、
前記印刷ノズルの各々は、コーティング剤用の排出オリフィスまで下流方向に延びる出口チャネルを有し、
前記方法は、
a)前記一組の印刷ノズルの全てのノズル又は列状をなすノズルの複数の印刷ノズルの排出オリフィスを通して前記出口チャネルに洗浄流体を同時に注入するため請求項1~1
4のいずれかに記載の設備を使用するステップをさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
b)前記排出オリフィスが設けられた前記印刷ノズルの前面に洗浄流体の流れを方向づけるステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
y)コーティングされるオブジェクトに前記一組の印刷ノズルが配向された噴霧位置から、前記一組の印刷ノズルが洗浄ステーションに対向した洗浄前位置へ前記一組の印刷ノズルを移動させるステップと、
z)印刷ノズルの前記排出オリフィスが前記洗浄ステーションにおける洗浄流体インジェクタと整列するように、前記洗浄ステーションに対して前記一組の印刷ノズルを密に配置するステップと、
からなるステップを、ステップa)の前、必要であればステップb)の前に少なくとも含む、ことを特徴とする請求項1
5又は1
6に記載の方法。
【請求項18】
c)供給ダクトから前記出口チャネルを通して前記排出オリフィスに向かうように、前記一組の印刷ノズルの一部である印刷ノズルに洗浄流体を注入するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1
5~17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤用の排出オリフィスまで下流方向に延びる出口チャネルをそれぞれ有する一組のノズルを備えたコーティング剤を塗布する設備に関する。
【0002】
オブジェクトに施される装飾をカスタマイズする需要が増加傾向にある。例えば、自動車の車体に対するデュアルトーンのコーティングが増加している。さらに、特定の市場にとって、特定の形状を有するパターンの生成は潜在的な関心事となっている。これに関連して、近年、コーティング業界は、スプレーを使用した噴霧ではなく、プリントヘッドを使用して塗料を「印刷」する方法を模索している。
【背景技術】
【0003】
現在のプリントヘッドは、サブミクロンスケールの非常に小さな粒子を含む非常に低粘度のインク、特に20ミリパスカル秒(mPas)未満で動作するように構成されている。印刷技術を用いて塗料などのコーティング剤を塗布するため、通常、一般に800μmより大きい噴霧器の出口オリフィスの直径よりもずっと小さい約150~200マイクロメートル(μm)程度の小さい直径を有する塗料排出用のオリフィスを備えた印刷ノズルを使用する必要がある。インク印刷の分野では、塗布されるインクの層の色は、4色の基調色、つまりシアン、マゼンタ、黄色及び黒の組み合わせから生じる。しかし、塗料の分野では、塗布される層の色は、塗料に分散した顔料によって決まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経済性及び実用性の理由から、一般的に、異なる色の塗料を塗布するため、複数のノズルから構成される同一のアプリケータが使用される。この場合、コーティング剤の変更、つまり色を変更する際に、各々のノズルを洗浄する必要がある。
【0005】
印刷技術を用いて塗料を塗布する場合、ノズルの出口オリフィスの寸法が小さいため、各ノズルでの塗布後に洗浄液を循環させる周知の技術では各ノズルの出口チャネル、特に洗浄剤の排出オリフィスを効果的に洗浄できず、そのためノズルが詰まる虞がある。これにより、一組のノズルで連続して使用する塗料が混ざってしまう虞がある。
【0006】
さらに、ノズルを個別に洗浄することは、WO2018/108568号パンフレットにより公知となっているが、当該技術は時間がかかり、実際に適用するのは困難である。
【0007】
より具体的には、本発明は、印刷ノズルを有し、容易に洗浄することができる、コーティング剤を塗布するための新たな設備を提案することにより、上記の欠点に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、コーティング剤を塗布するための設備に関する。当該設備は、一組の印刷ノズルを備え、前記印刷ノズルの各々は、コーティング剤用の排出オリフィスまで下流方向に延びる出口チャネルを有する。本発明によれば、設備は、複数のインジェクタをさらに備える。複数のインジェクタは、一組の印刷ノズル又は列状をなすノズルの排出オリフィスを通して出口チャネルに洗浄流体を注入することにより、一組の印刷ノズルのうち全てのノズル又は列状をなすノズルにおける複数のノズルを同時に洗浄するように設けられている。
【0009】
本発明によれば、複数の印刷ノズルの下流側部分、つまり、出口ダクト及び排出オリフィスの同時洗浄が、塗布時のコーティング剤の流れ方向である、各々のノズルにおけるコーティング剤の通常の流れ方向と反対方向に行われる。この洗浄は、マトリクス状のノズル構成の場合、一組の印刷ノズルの多数のノズル、例えば、列をなすノズルにおけるノズルの全てのノズルに対して同時に行うことができるので、特に効果的であり、時間を必要としない。
【0010】
本発明の任意選択的であり有利な態様によれば、そのような設備には、技術的に許容される組み合わせで、一つ又は複数の以下の特徴が含まれる。
【0011】
洗浄ステーションは、一組の印刷ノズルが洗浄ステーションに取り付けられたときに、印刷ノズルの排出オリフィスを外部から隔離する一つ又は複数のシールガスケットを有する。
【0012】
一つ又は複数のシールガスケットは、一組の印刷ノズルが洗浄ステーションに取り付けられたときに、排出オリフィスを外部から個々に隔離する。
【0013】
洗浄ステーションは、少なくとも1つの印刷ノズル、好ましくは各々の印刷ノズルの前面を洗浄するための部材を含む。
【0014】
一組の印刷ノズルのノズルは、このアセンブリの前面から突出している。洗浄ステーションは複数のハウジングを備える。一組のノズルの前面が洗浄ステーションの上面又は側面に対向するか又は当該上面又は側面に対して配置されたときに、ハウジングは、印刷ノズルを少なくとも部分的に受容する。洗浄ステーションの上面又は側面までハウジングが延びており、ハウジングに連通する洗浄流体インジェクタが設けられている。
【0015】
印刷ノズルの出口オリフィスは、一組の印刷ノズルの前面と同一平面上に位置している。洗浄ステーションは、洗浄流体インジェクタが連通する上面又は側面を有する。一組の印刷ノズルの前面が洗浄ステーションの上面又は側面に対して配置されたとき、印刷ノズルの排出オリフィスは、洗浄ステーションのインジェクタとそれぞれ整列する。
【0016】
洗浄ステーションは本体を有し、この本体内に洗浄流体循環チャネルが設けられている。インジェクタは、チャネルの下流側で本体に設けられている。
【0017】
さらに、設備は多軸ロボットを備える。多軸ロボットは、一組の印刷ノズルがコーティングされるオブジェクトに向けて配向される噴霧(スプレー)位置と、一組の印刷ノズルが洗浄ステーションと接触する洗浄位置との間に亘って、一組の印刷ノズルを移動させる。
【0018】
各々の印刷ノズルは、プリントヘッドを有する。排出オリフィスは、50~300μm、好ましくは100~200μm、さらに好ましくは150μm程度の内径を有する。
【0019】
ノズルの排出オリフィスの内径とインジェクタの直径との比は、0.03~0.5、好ましくは0.05~0.2である。
【0020】
一組の印刷ノズルの印刷ノズルは、少なくとも一列に配置され、洗浄ステーションの前記インジェクタは、同じ列数だけ設けられている。一列のインジェクタにおける2つの隣接するインジェクタ間の間隔は、一列の印刷ノズルにおける2つの隣接する印刷ノズル間の間隔と等しい。
【0021】
一組のノズルは第1の抽気弁を備える。洗浄ステーションは第2の抽気弁を備える。これらの抽気弁の各々により、使用後に洗浄流体を排出することができる。
【0022】
第2の態様によれば、本発明は、前記設備、すなわち、コーティング剤を塗布するための設備の一組の印刷ノズルを洗浄するための方法に関する。また、各々の印刷ノズルは、コーティング剤用の排出オリフィスまで下流方向に延びる出口チャネルを有する。本発明によれば、本方法は、a)排出オリフィスを通して複数の印刷ノズルの出口チャネルに同時に洗浄流体を注入するステップからなる少なくとも1つのステップを含む。
【0023】
本方法によれば、本発明の設備と同様の利点が得られる。
【0024】
有利には、本発明の方法は、b)印刷ノズルの排出オリフィスが配置された各々の印刷ノズルの前面に向けて洗浄流体の流れを方向づけるステップからなる少なくとも1つの付加的なステップを含む。
【0025】
他の有利な態様によれば、前記方法は、y)コーティングされるオブジェクトに一組の印刷ノズルが配向された噴霧位置から、一組の印刷ノズルが洗浄ステーションに対向した洗浄前位置へと一組の印刷ノズルを移動させるステップと、z)印刷ノズルの排出オリフィスが洗浄ステーションにおける洗浄流体インジェクタと整列するように、洗浄ステーションに対して一組の印刷ノズルを密に配置するステップと、からなるステップを、ステップa)の前、必要であればステップb)の前に少なくとも含む。
【0026】
本発明の他の有利な態様によれば、c)供給ダクトから出口チャネルを通して排出オリフィスに向かうように、一組の印刷ノズルの一部である印刷ノズルに洗浄流体を注入するステップ、からなる付加的なステップが含まれる。
【0027】
設備及びその原理による方法に関する例示的な3つの実施例について添付の図面を参照して行う以下の説明により、本発明をより詳細に理解することができ、他の利点がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図2は、
図1の設備に設けられた洗浄ステーション及び一組のノズルの部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に類似した図であり、本発明の第2の実施例に係る設備を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に類似した図であり、本発明の第3の実施例に係る設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1~3に示す設備Iは、コンベア2により移動可能なオブジェクトOに塗料を塗布するために設けられている。オブジェクトOは、コンベア2からフック4により吊り下げられている。
【0030】
図示の例では、オブジェクトOは、世界的に用いられているフラットなパネルである。変形例では、オブジェクトは、ストップアンドゴー型又は連続前進型のコンベアによって移動する自動車の車体部品又は自動車の車体全体を含むものであってもよい。
【0031】
設備Iは、コンベア2の近傍に設けられた多軸ロボット20のアーム22の端部に取り付けられた一組のノズル10を有する。
【0032】
図1では、遠近感を誇張し、周知のロボット20を小さく図示している。
【0033】
一組のノズル10は、一列に配置された8個のノズル12を有する。各々のノズルは、一組のノズルの前面14から突出している。塗料を塗布するためにノズル12が用いられる場合、前記前面は、塗布されるオブジェクトOに配向される。
【0034】
図2から分かるように、各々のノズル12を有するプリントヘッド13は、例えば圧電タイプの制御部材132と、ロッド134と、を有する。各々のノズル12は、ノズルが属するプリントヘッド13の制御部材132により制御されるニードル122を有する。ニードルは、ロッド134を介して制御部材132に取り付けられている。
【0035】
塗布される塗料は、一組のノズル10の本体11に設けられたチャネル16を通って流れ、
図2おける矢印F2の方向に循環する。
【0036】
図2に示す本発明の一態様によれば、一組のノズル10には、供給弁102、抽気弁104及び再循環弁106が設けられている。抽気弁304は、循環洗浄の使用後に、洗浄流体のコレクタ(図示せず)への排出を制御するために設けられている。この図では、弁102,104,106は、本体11の外側に図示されている。実際には、これらの弁は、本体と一体となっており、このため、
図1には図示されていない。
【0037】
符号121は、面14から突出するノズル12の一部分を示している。
【0038】
ノズル12の一部分121の内側には、シート125が配置されている。このシート125に対してノズルのニードル122が選択的に支持され、構成要素132によって制御される。
【0039】
出口チャネル126は、ニードル122の下流側で各々のノズル12に設けられている。出口チャネル126は、ニードル122の反対側に位置し、排出オリフィス127を介して外側に延びている。排出オリフィス127は、ノズル12の前面128、より具体的には、ノズル12の一部分121の前面128に配設されている。
【0040】
変形例では、ノズルが出口チャネル126及び排出オリフィス127を有する限り異なる構造を有するノズル12を用いてもよいが、互いに同一であると有利である。
【0041】
また、設備Iは、洗浄ステーション30を備える。洗浄ステーション30にはホース40を介して洗浄流体が供給される。ホース40は、ホース40の下流側端部を構成する連結部42を介してステーション30に接続されている。
【0042】
洗浄ステーション30は、多軸ロボット20が届く領域において、塗料が塗布されるブースに位置している。
【0043】
洗浄ステーション30は、本体31を有する。本体31には、8個のハウジング32が一列に配置されている。各々のハウジング32は、ノズル12の一部分121を部分的に又は全体的に受容するように構成されている。
【0044】
各々のハウジング32の底部326と環状壁部328との間の接合部分には溝322が設けられている。溝322内にはシールガスケット34が配設されている。シールガスケット34は、好ましくは、Oリングタイプのガスケットであり、エラストマーから形成される。
【0045】
本体31にはチャネル36が設けられている。チャネル36により、洗浄流体がホース40から各々のハウジング32に供給される。より具体的には、一組のチャネル36がインジェクタ38を介して各ハウジング32にそれぞれ連通している。有利には、インジェクタ38は、チャネル36の直径よりも小さい直径d38を有するチャネルである。これは、チャネル36内の流体の流路に漸進的な損失ヘッドを設けることにより、複数のインジェクタ38に向けて洗浄流体の流量を均等に分配することができ、これにより、特定の流路が生じることが防止される。
【0046】
図2に示した本発明の一態様によれば、洗浄ステーション30には供給弁302及び抽気弁304が設けられている。抽気弁304は、循環洗浄に使用した後、コレクタ(図示せず)に対する洗浄流体の排出を制御するために設けられている。この図では、弁302、304は本体31の外側に図示されている。実際には、これらの弁は本体と一体となっており、そのため
図1には図示されていない。
【0047】
ホース40、チャネル36及びインジェクタ38を通流する洗浄流体は、ノズル12を用いて塗布される塗料の特性をもたらす溶媒又は水溶性、あるいは気体、特に空気又は液体と気体の混合物を含む洗浄流体とすることができる。
【0048】
各々のハウジング32は、面取り部(ベベル)324を介してステーション30の上面33まで延在している。面取り部324は、一部分121をハウジング32内に同時に挿入する際に一部分121を案内するように機能する。これについては以下に説明する。
【0049】
オブジェクトOに塗料を塗布する間、一組のノズル10は、オブジェクトの1つに配向され、チャネル16を通してコーティング剤がノズル12に供給される。供給弁102及び再循環弁106は開状態であり、抽気弁104は閉状態である。各々のニードル122は、対応するシート125から離間して選択的に移動するように、プリントヘッド13に関連した構成要素132によって個々に制御される。これにより、各々のノズル12の出口チャネル126に塗料を供給するか、供給しないかの制御が可能となる。この場合、塗料は、
図2における矢印F3の方向に流れ、対応するノズル12から排出オリフィス127を通してコーティングされるオブジェクトOに向けて排出される。
【0050】
したがって、矢印F3は、オブジェクトOに塗布される塗料の通常の流れ方向を示している。
【0051】
塗布段階において、例えば、塗料の色を変更するために、ノズル12を洗浄する必要がある場合、
図1における矢印F4で示すように、一組のノズル10は、多軸ロボット20により洗浄ステーション30の上方に移動され、前面14を上面33の上方でかつ上面33と平行に配置することにより、事前位置に配置される。
【0052】
次いで、一組のノズル10は、ノズル12の一部分121が
図2における矢印F5の方向に向けてハウジング32に挿入されることにより、洗浄ステーション30にしっかりと支持される。
【0053】
矢印F5に沿った移動後に、各々のノズル12の排出オリフィス127がステーション30のインジェクタ38と整列するように、一部分121及びオリフィス32の形状が定められている。
【0054】
次いで、ホース40のブースターポンプ又は他の供給手段を作動させることにより、ダクト36に洗浄流体を供給することができる。このとき、供給弁302は開状態であり、抽気弁304は閉状態である。このため、洗浄流体は、
図3における矢印F6の方向、すなわち、矢印F3で示めした塗布時のノズルにおける塗料の通常の流れ方向と反対方向に向けて、各々のインジェクタ38から排出オリフィス127を通って、一部分121がハウジング32内に配置されたノズル12の出口チャネル126に流入する。
【0055】
したがって、ハウジング32に係合したノズル12が同時に洗浄される。各々の出口ダクト126に流入した洗浄流体は、ノズルのシート125及びニードル122を上昇させる。シート125及びニードル122もまた洗浄される。抽気弁104が開状態であり、供給弁102及び再循環弁106が閉状態であるため、ノズル12における反対方向の流れが可能となる。
【0056】
符号123は、ノズル12の前面128と一部分121の周面129との間の接合縁を示している。複数のノズル12の各排出オリフィス127を通した出口チャネル126への洗浄流体の噴射時の構成において、接合縁123は対応するシール34に当接し、このため前面128が外部から隔離される。したがって、各々の排出オリフィス127及び各々の前面128は、シール34によって個々に外部から隔離されている。
【0057】
その結果、インジェクタ38から流出した洗浄流体流は、対応するノズル12の前面128に対して分配され、前面が洗浄される。したがって、インジェクタ38は、ニードル122、シート125及びチャネル126により形成されたノズル12の内側部分のための洗浄部材と、ノズルの前面128のための洗浄部材と、を構成する。
【0058】
図4~6に示す本発明の第2及び第3の実施例では、第1の実施例における構成要素と同様の構成要素については同一の符号を使用する。以下、第1の実施例と第2及び第3の実施例との相違点について主に説明する。
【0059】
図4に示す第2の実施例では、Oリング34は、溝32内において、ハウジング32の側部と底部との間の接合部ではなく、ハウジングの底部326に配置されている。シール34は、一部分121がハウジング32内に配置されたノズル12の前面128のより小さい部分を流体的に隔離する。
【0060】
図5及び
図6に示す第3の実施例では、一組のノズル10はノズル12を有する。ノズル12は、3列設けられており、各列には8個のノズル12が含まれる。ノズル12の前面128は、一組のノズル10の前面14と同一平面上にある。したがって、複数のノズル12の排出オリフィス127は前面14に位置する。
【0061】
図5では、切り欠きにより1つのノズル12だけを図示している。各々のノズル12は、第1の実施例におけるプリントヘッド13の形態をなすプリントヘッド(図示せず)に設けられている。
【0062】
また、洗浄ステーション30には、ホース40及びホースの下流側の連結部42を介して供給が行われる。洗浄ステーション30は、24個のインジェクタ38を有する。インジェクタ38は、3列設けられており、各列には8個のインジェクタが含まれる。
【0063】
複数のインジェクタ38は、ステーション30の本体31の上面33に直接設けられている。つまり、本実施例では、第1及び第2の実施例におけるハウジング32のようなハウジングは設けられていない。
【0064】
上面33に設けられた各々のインジェクタ38の出口オリフィス382は、本体31の上面33に設けられた溝332に囲まれている。溝332にはOリング34が配置されている。溝332内に配置されたときに、Oリング34が0.1~0.5mmの高さh34に亘って溝382から突出するように、溝332の深さ及びシール34のトロイダル径(直径)が選択される。したがって、塗料塗布段階の後、ノズル12の洗浄が必要な場合、一組のノズル10は、
図5における矢印F4の方向へと動かされて、前面34が洗浄ステーション30の上面33と向かい合った洗浄前位置に配置される。次いで、一組のノズル10は、
図5における矢印F5の方向に移動して、複数のシール34によって密に支持される。
【0065】
この場合も、各々の排出オリフィス17及び各々の前面128は、シール34によってそれぞれ外部から隔離される。
【0066】
次いで、洗浄流体をインジェクタ38に供給して、洗浄流体を
図6における矢印F6の方向に循環させ、出口オリフィス127からノズル12の複数の出口チャネル126の内側を通してノズルのシート及びニードルへと注入する。シール34を配置することにより、ノズル12の前面128を洗浄することも可能となる。
【0067】
第2及び第3の実施例では、第1の実施例と同様に、供給弁、抽気弁及び再循環弁(図示せず)が設けられている。
【0068】
実際には、実施例に関係なく、インジェクタ38の直径d38は、出口チャネル126の直径d126及び排出オリフィス127の直径d127に適合される。直径d126と直径d127とは同じ大きさであってもよい。例えば、これらの直径は、50μm~300μm、好ましくは100μm~200μm、さらに好ましくは150μmである。この場合、インジェクタ38の直径d38は、0.5mm~2mm、好ましくは1mm程度である。有利には、実施例に関係なく、d126/d38の比及び/又はd127/d38の比は、0.03~0.5、好ましくは0.05~0.2である。
【0069】
ノズル12を用いて塗布される塗布剤が塗料である場合について、本発明を説明した。しかし、本発明の設備において、特にプライマ又はワニスなどの他のコーティング剤を塗布してもよい。
【0070】
一組のノズル10が上方から洗浄ステーション30にドッキングする場合について、本発明を説明した。変形例では、上記ドッキングは、洗浄ステーションの側方から行ってもよく、その場合、インジェクタ38の開口382又はハウジング32は、本体31の上面33ではなく、本体の側面に配置される。
【0071】
実施例を問わず、洗浄ステーション30は、スライド弁付きの金型や複雑な機械加工ラインを使用することなく、洗浄ステーション本体内においてチャネル36及びインジェクタ38の分配及び配置を調整可能な3D印刷によって製造され得る。しかし、鋳造及び/又は機械加工により洗浄ステーションを製造してもよい。
【0072】
印刷ノズル12の列数は、各オブジェクトOのコーティングされる面の大きさに応じて、1以上の数が選択される。したがって、インジェクタ38の列数も同様である。
【0073】
符号e12は、印刷ノズル列中の2つの印刷ノズル12の間の間隔を示しており、符号e38は、インジェクタ列中の2つのインジェクタ38の間の間隔を示している。実施例に関係なく、前記間隔e12,e38は、互いに連携させることを目的として、ノズル及びインジェクタが一致するように選択される。
【0074】
全ての実施例に適用可能な本発明の有利な一態様によれば、印刷ノズル12の洗浄をさらに向上させるため、矢印F6の方向に向けた排出オリフィス127を介した出口チャネル126への洗浄流体の注入前又は注入後に、コーティング剤の通常の流れ方向、つまり、供給チャネル16から出口チャネル126を通して排出オリフィス127に向けた
図2の矢印F3の方向に洗浄流体を各々の印刷ノズルに注入してもよい。この場合、洗浄流体が供給弁102の上流にあるチャネル16に注入されると仮定すると、供給弁102、抽気弁104及び抽気弁304は開状態であり、再循環弁106及び供給弁302は閉状態である。この本発明の任意選択的な態様が実施されると、インジェクションノズル12の洗浄は、弁302,104が開状態、残りの弁が閉状態のとき、双方向、つまり、矢印F6の方向に行われ、弁102,104,304が開状態、残りの弁は閉状態のとき、矢印F3の方向に連続的に行われる。
【0075】
実施例に関係なく、抽気弁104、304を追加することにより、コーティング剤又は使用されていない洗浄流体を汚すことなく、使用後に洗浄流体を収集して一つ又は複数のノズル12を洗浄することができる。
【0076】
本発明について、一組のノズル10の全てのノズル12が同時に洗浄される例を図示し説明した。しかし、これは必須ではない。ノズルをグループで、例えば、複数の列をなす一組のノズル10の場合は列ごとに洗浄してもよい。この場合、洗浄ステーション30におけるインジェクタ38の配置(分布)は、シール34及びチャネル36の配置(分布)とともに調整される。
【0077】
上記実施例及び変形例を組み合わせて、本発明の新たな実施例としてもよい。