IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業車両 図1
  • 特許-作業車両 図2
  • 特許-作業車両 図3
  • 特許-作業車両 図4
  • 特許-作業車両 図5
  • 特許-作業車両 図6
  • 特許-作業車両 図7
  • 特許-作業車両 図8
  • 特許-作業車両 図9
  • 特許-作業車両 図10
  • 特許-作業車両 図11
  • 特許-作業車両 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020168652
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060896
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】片山 彩図
(72)【発明者】
【氏名】笹▲崎▼ 真一
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】束田 英信
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181543(JP,A)
【文献】特開2010-059653(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131955(WO,A1)
【文献】特開2020-159051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0305094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール式の走行体と、前記走行体上に旋回可能に取り付けられる旋回体と、前記旋回体に取り付けられる作業装置と、前記走行体、前記旋回体及び前記作業装置を操作するための操作装置と、前記旋回体に取り付けられ前記旋回体の周囲を撮影する複数の撮影装置と、前記撮影装置により撮影された映像を表示する表示装置と、前記表示装置に表示される映像の表示態様を設定するための表示態様設定装置と、前記旋回体の旋回角度を検出する旋回角度検出装置と、前記走行体の進行方向を設定するための進行方向設定装置と、前記表示装置を制御する制御装置と、を備えた作業車両において、
前記制御装置は、
前記走行体が走行可能な状態であるか否かを判定し、
前記走行体が走行可能な状態でないと判定された場合、前記表示態様設定装置により設定された表示態様の映像を前記表示装置の所定の表示領域に表示させ、
前記表示態様設定装置により設定される表示態様には、前記複数の撮影装置により撮影された映像から生成される第1俯瞰映像を前記所定の表示領域に表示させる表示態様が含まれ、
前記制御装置は、前記走行体が走行可能な状態であると判定された場合、前記旋回体の旋回角度に基づいて、前記複数の撮影装置で撮影された映像のうち、前記進行方向設定装置により設定された前記走行体の進行方向の映像を選択し、前記選択された映像と前記選択された映像に隣接する映像とに基づいて、前記走行体の進行方向の映像の表示面積が前記第1俯瞰映像における前記走行体の進行方向の映像の表示面積よりも広い第2俯瞰映像を生成し、前記第2俯瞰映像を、前記表示態様設定装置により設定された表示態様の映像に代えて、前記表示装置の前記所定の表示領域に表示させる、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記操作装置による操作を無効とするロック位置、及び、前記操作装置による操作を有効とするロック解除位置のいずれかに選択的に切り替えられるロックレバー装置を備え、
前記制御装置は、前記ロックレバー装置がロック位置に切り替えられている場合、前記走行体が走行可能な状態でないと判定する、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記作業車両を駐車させるための駐車ブレーキ装置を備え、
前記制御装置は、前記駐車ブレーキ装置が作動状態である場合、前記走行体が走行可能な状態でないと判定する、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車両において、
前記進行方向設定装置は、前進位置、中立位置及び後進位置のいずれかに選択的に切り替えられる前後進切替装置であり、
前記制御装置は、前記前後進切替装置が中立位置に切り替えられている場合、前記走行体が走行可能な状態でないと判定する、
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の周辺を撮影する監視カメラと、車両の動作に関する基本情報を表示する第1表示画面、及び、複数の情報のうち基本情報以外の情報を第1表示画面の表示と共に表示する第2表示画面を有するモニタ装置と、車両の走行操作の入力を行う走行操作部と、この走行操作部による入力に応じて、モニタ装置の表示動作を制御するモニタ制御部とを備えたホイール式の作業車両が開示されている。特許文献1には、車両の走行が可能な状態であるか否かを判定し、車両の走行が可能な状態であると判定されたとき、旋回体に取り付けられた後方監視カメラの映像をモニタ装置の第2表示画面に優先して表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車両では、走行体に対する旋回体の角度(旋回角度)によっては、旋回体に取り付けられた後方監視カメラによって、走行体の後方を適切に撮影することができないおそれがある。例えば、走行体の前後方向と旋回体の前後方向が直交している場合、後方監視カメラによって撮影される映像は、旋回体の後方であって、走行体の側方となる。この場合、作業車両のオペレータは、モニタ装置の映像を確認しながら走行体を後進させることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、走行体の前後方向と旋回体の前後方向が一致しない場合であっても、表示装置に表示される映像を確認しながら走行体の走行が可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による作業車両は、ホイール式の走行体と、前記走行体上に旋回可能に取り付けられる旋回体と、前記旋回体に取り付けられる作業装置と、前記走行体、前記旋回体及び前記作業装置を操作するための操作装置と、前記旋回体に取り付けられ前記旋回体の周囲を撮影する複数の撮影装置と、前記撮影装置により撮影された映像を表示する表示装置と、前記表示装置に表示される映像の表示態様を設定するための表示態様設定装置と、前記旋回体の旋回角度を検出する旋回角度検出装置と、前記走行体の進行方向を設定するための進行方向設定装置と、前記表示装置を制御する制御装置と、を備えた作業車両において、前記制御装置は、前記走行体が走行可能な状態であるか否かを判定し、前記走行体が走行可能な状態でないと判定された場合、前記表示態様設定装置により設定された表示態様の映像を前記表示装置の所定の表示領域に表示させ、前記表示態様設定装置により設定される表示態様には、前記複数の撮影装置により撮影された映像から生成される第1俯瞰映像を前記所定の表示領域に表示させる表示態様が含まれ、前記制御装置は、前記走行体が走行可能な状態であると判定された場合、前記旋回体の旋回角度に基づいて、前記複数の撮影装置で撮影された映像のうち、前記進行方向設定装置により設定された前記走行体の進行方向の映像を選択し、前記選択された映像と前記選択された映像に隣接する映像とに基づいて、前記走行体の進行方向の映像の表示面積が前記第1俯瞰映像における前記走行体の進行方向の映像の表示面積よりも広い第2俯瞰映像を生成し、前記第2俯瞰映像を、前記表示態様設定装置により設定された表示態様の映像に代えて、前記表示装置の前記所定の表示領域に表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行体の前後方向と旋回体の前後方向が一致しない場合であっても、表示装置に表示される映像を確認しながら走行体の走行が可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ホイールショベルの側面図。
図2】運転室の内部を上方から見たときの概略図。
図3】ホイールショベルの主な構成を示す図であり、ホイールショベルに搭載される油圧システム及び周囲監視システムについて示す。
図4】ホイールショベルの平面模式図であり、複数の撮影装置の撮影範囲を示す。
図5】周囲監視システムの主な機能について示す機能ブロック図。
図6】ホイールショベルを上方から見た模式図であり、旋回角度r及び角度閾値r1,r2,r3,r4について示す。
図7】表示装置に表示される表示映像の一例を示す図。
図8】情報コントローラにより実行される表示処理について示すフローチャート。
図9】情報コントローラにより実行される走行表示態様設定処理について示すフローチャート。
図10】停止表示態様から走行表示態様へ表示態様が切り替わることを説明する図。
図11】走行表示態様の変形例について示す図であり、走行体の進行方向の映像である旋回体の後方映像と、後方映像に隣接する左方映像及び右方映像に基づいて生成される俯瞰映像について示す。
図12】走行表示態様の変形例について示す図であり、走行体の進行方向の映像である旋回体の右方映像と、右方映像に隣接する前方映像及び後方映像に基づいて生成される俯瞰映像について示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業車両について説明する。作業車両は、土木作業、建設作業、解体作業等の各種作業に用いられる。
【0010】
図1は、本実施形態の作業車両の一例としてのホイール式の油圧ショベル(以下、ホイールショベル1と記す)の側面図である。なお、説明の便宜上、図1に示したように前後および上下方向を規定する。
【0011】
ホイールショベル1は、4つの車輪(タイヤ2a)を有するホイール式の走行体2と、走行体2上に旋回可能に取り付けられる旋回体3と、旋回体3の前部に取り付けられる作業装置4と、を備える。走行体2には、走行用油圧モータが搭載され、走行用油圧モータの駆動によりタイヤ2aが回転する。
【0012】
旋回体3は、旋回フレームと、旋回フレームの前部左側に設けられる運転室107と、旋回フレームの後部に設けられるカウンタウエイトと、旋回フレームにおける運転室107の後側に設けられるエンジン室108と、を有する。エンジン室108には、原動機であるエンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ等の油圧機器が収容されている。旋回フレームの前部中央には作業装置4が回動可能に連結されている。エンジンは、ホイールショベル1の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0013】
作業装置4は、回動可能に連結される複数のフロント部材及びフロント部材を駆動する複数の油圧シリンダ(アクチュエータ)を有する多関節型の作業装置である。本実施形態では、4つのフロント部材としてのロアブーム101、アッパーブーム102、アーム103及びバケット104が、直列的に連結される。ロアブーム101は、その基端部が旋回フレームの前部においてロアブームピンによって回動可能に連結される。アッパーブーム102は、その基端部がロアブーム101の先端部においてアッパーブームピンによって回動可能に連結される。アーム103は、その基端部がアッパーブーム102の先端部においてアームピンによって回動可能に連結される。バケット104は、アーム103の先端部においてバケットピンによって回動可能に連結される。
【0014】
ロアブーム101は、ロアブームシリンダ101aによって駆動され、旋回フレームに対して回動する。アッパーブーム102は、アッパーブームシリンダ102aによって駆動され、ロアブーム101に対して回動する。アーム103は、アームシリンダ103aによって駆動され、アッパーブーム102に対して回動する。バケット104は、バケットシリンダ104aによって駆動され、アーム103に対して回動する。ロアブームシリンダ101aは、その一端側がロアブーム101に接続され他端側が旋回フレームに接続されている。アッパーブームシリンダ102aは、その一端側がアッパーブーム102に接続され他端側がロアブーム101に接続されている。アームシリンダ103aは、その一端側がアーム103に接続され他端側がアッパーブーム102に接続されている。バケットシリンダ104aは、その一端側がリンク部材を介してバケット104に接続され他端側がアーム103に接続されている。作業装置4の各油圧シリンダ(101a,102a,103a,104a)が駆動されることにより、地山の掘削、整地等の作業が行われる。
【0015】
旋回体3には、ホイールショベル1の各部を制御する制御装置である車体コントローラ130と、ホイールショベル1の各部の情報を収集し、表示装置190を制御して、表示装置190の表示画面191aに所定の情報を表示させる制御装置である情報コントローラ120と、ホイールショベル1に搭載される機器に電力を供給する電源装置としてのバッテリ28と、が設けられる。
【0016】
図2は、運転室107の内部を上方から見たときの概略図である。図2に示すように、運転室107内には、オペレータが着座する運転席70と、ホイールショベル1の各部を操作するための操作部材(B1,B2,172,173,174,175,176,177,178a,179a)と、所定の表示画像を表示画面191aに表示させる表示装置190と、が設けられている。表示装置190は、運転席70側からみて右側前方のピラーに取り付けられている。表示装置190は、例えば、入力部兼表示部として機能するタッチパネルモニタであり、情報コントローラ120からの制御信号に基づき、車両の各種情報、所定のアイコン、メッセージ等の画像と旋回体3の周囲の映像を表示画面191aに表示させる。
【0017】
運転席70の右側には、バケット104の操作及びアッパーブーム102の操作を行うための右操作レバー(操作部材)B1が設けられ、運転席70の左側には、旋回体3の操作及びアーム103の操作を行うための左操作レバー(操作部材)B2が設けられている。運転席70の前側には、前輪を左右に転舵させるためのステアリングホイール(操作部材)172が設けられている。ステアリングホイール172の下方左側には、ロアブーム101の操作を行うための操作ペダル(操作部材)176が設けられる。ステアリングホイール172の下方右側には、ホイールショベル1に制動力を付与するためのブレーキペダル(操作部材)177と、ホイールショベル1に走行駆動力を付与し走行速度及び加速度の調整を行うためのアクセルペダル(操作部材)178aと、が設けられる。
【0018】
ステアリングホイール172の近傍には、ホイールショベル1を制動して停止状態を保持することにより、ホイールショベル1を駐車させるためのブレーキスイッチ173が設けられている。左操作レバーB2の把持部には、前進位置、中立位置及び後進位置のいずれかに選択的に切り替え操作可能な前後進切替操作装置である前後進切替スイッチ174が設けられている。前後進切替スイッチ174は、走行体2の進行方向を設定するための進行方向設定装置である。前後進切替スイッチ174が前進位置に切り替えられると、走行体2の進行方向が前進方向(前方)に設定され、前後進切替スイッチ174が後進位置に切り替えられると、走行体2の進行方向が後進方向(後方)に設定される。左側の操作レバーB2の左側(ドア側)には、ロックレバー179aが設けられている。ロックレバー179aは、運転室107の出入りを許可するロック位置(上げ位置)と、運転室107の出入りを禁止するロック解除位置(下げ位置)とに選択的に操作が可能な部材である。
【0019】
左操作レバーB2の近傍には、表示装置190の表示画面191aに表示される映像の表示態様を設定するための表示態様設定装置として、表示態様を切り替え操作可能な表示切替スイッチ175が設けられている。
【0020】
図3は、ホイールショベル1の主な構成を示す図であり、ホイールショベル1に搭載される油圧システム80及び周囲監視システム10について示す。なお、以下では、ロアブームシリンダ101a、アッパーブームシリンダ102a、アームシリンダ103a及びバケットシリンダ104aを総称して油圧シリンダ100aと記す。油圧システム80には、複数の油圧シリンダ100a(101a,102a,103a,104a)が設けられているが、図3では、一つの油圧シリンダ100aを代表して図示している。
【0021】
図3に示すように、油圧システム80は、エンジン21により駆動される可変容量型の油圧ポンプであるメインポンプ25と、エンジン21により駆動される固定容量型の油圧ポンプであるパイロットポンプ26と、メインポンプ25から吐出される作動流体としての作動油(圧油)によって駆動される複数の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ100a、旋回用油圧モータ105a及び走行用油圧モータ106a)と、メインポンプ25から各油圧アクチュエータに供給される作動油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブ81,82,83と、を備える。
【0022】
パイロットポンプ26から吐出された作動油は、作業装置を操作するための操作装置である作業操作装置71、旋回体3を操作するための操作装置である旋回操作装置72、及び、走行体2を操作するための操作装置である走行操作装置178に供給される。作業操作装置71は、作業装置4の油圧シリンダ100aの動作を指令するアクチュエータ操作装置であり、オペレータによって傾動操作される操作部材(図2の右操作レバーB1及び左操作レバーB2並びに操作ペダル176に相当)71aと、油圧パイロット方式の一対の減圧弁71bと、を有する。旋回操作装置72は、旋回用油圧モータ105aの動作を指令するアクチュエータ操作装置であり、オペレータによって傾動操作される操作部材(図2の左操作レバーB2に相当)72aと、油圧パイロット方式の一対の減圧弁72bと、を有する。走行操作装置178は、走行用油圧モータ106aの動作を指令するアクチュエータ操作装置であり、オペレータによって踏み込み操作されるアクセルペダル178aと、油圧パイロット方式の減圧弁178bと、を有する。
【0023】
操作装置(71,72)の減圧弁71b,72bは、パイロットポンプ26の吐出圧を元圧として、操作部材71a,72aの操作量と操作方向に応じたパイロット圧を発生する。このように発生したパイロット圧は、油圧アクチュエータ(100a,105a)に対応するコントロールバルブ81,82の受圧室81a,81b,82a,82bに導かれ、コントロールバルブ81,82を駆動してアクチュエータを動作させる指令(信号)として利用される。
【0024】
走行操作装置178の減圧弁178bとコントロールバルブ83の受圧室83a,83bとの間には、前後進切替弁84が設けられる。前後進切替弁84は、前後進切替スイッチ174からの操作信号に応じて車体コントローラ130から出力される制御信号によって制御される。前後進切替弁84は、前後進切替スイッチ174が前進位置に切り替えられると、受圧室83aと減圧弁178bとを連通し、受圧室83bとタンクとを連通する前進連通位置に切り替えられる。前後進切替弁84は、前後進切替スイッチ174が後進位置に切り替えられると、受圧室83bと減圧弁178bとを連通し、受圧室83aとタンクとを連通する後進連通位置に切り替えられる。前後進切替弁84は、前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられると、受圧室83a,83bとタンクとを連通するタンク連通位置に切り替えられる。
【0025】
走行操作装置178の減圧弁178bは、パイロットポンプ26の吐出圧を元圧として、アクセルペダル178aの踏み込み操作量に応じたパイロット圧を発生する。このように発生したパイロット圧は、前後進切替弁84を介してコントロールバルブ83の受圧室83a,83bに導かれ、コントロールバルブ83を駆動してアクチュエータを動作させる指令(信号)として利用される。
【0026】
メインポンプ25から吐出された作動油は、コントロールバルブ81,82,83を通じて油圧アクチュエータ(油圧シリンダ100a、旋回用油圧モータ105a,走行用油圧モータ106a)に供給され、作業装置4、旋回体3及び走行体2のそれぞれが駆動される。
【0027】
走行用油圧モータ106aの回転は、トランスミッション150によって変速され、車軸(不図示)、アクスル(不図示)を介してタイヤ2aに伝達され、ホイールショベル1が走行する。
【0028】
トランスミッション150は、図示しないサンギア、プラネタリギア、リングギアからなる遊星減速機構と、サンギア側及びリングギア側にそれぞれ設けられたクラッチ150a,150bと、を有する周知のものである。図示は省略するが、クラッチ150a,150bは、それぞればねを内蔵したクラッチ用シリンダを有し、ばねの付勢力によりクラッチ用シリンダがディスクに押圧されることで、クラッチ150a,150bは係合状態とされる。ばね力に抗して作用するパイロット油圧源88からの油圧力によりクラッチ用シリンダの押圧力が除去されることで、クラッチ150a,150bは解放状態とされる。クラッチ150a,150bに作用する油圧力は、パイロット油圧源88とクラッチ150a,150bとの間に設けられる電磁切換弁(以下、クラッチ切替弁と記す)151の駆動によって制御される。なお、ばねの付勢力によって係合状態とされ、油圧力によって解放状態とされるようなクラッチをネガティブ型のクラッチと呼ぶ。
【0029】
クラッチ切替弁151は、図示しない変速スイッチ、及びブレーキスイッチ173の操作に応じて車体コントローラ130から出力される制御信号によって制御される。クラッチ切替弁151が低速位置に切り換わると、パイロット油圧源88からの圧油がクラッチ150aに作用する。これによりクラッチ150aが解放、クラッチ150bが係合状態とされ、トランスミッション150は所定の変速比R1(ローギア)となり、低速高トルクの1速走行が可能となる。クラッチ切替弁151が高速位置に切り換わると、パイロット油圧源88からの圧油がクラッチ150bに作用する。これによりクラッチ150bが解放、クラッチ150aが係合状態とされ、トランスミッション150は所定の変速比R2(ハイギア)となり、高速低トルクの2速走行が可能となる。なお、変速比R1は変速比R2より大きい。
【0030】
クラッチ切替弁151が駐車位置に切り換わると、クラッチ150a,150bはタンクに連通する。この場合は、クラッチ150a,150bはばね力によって係合状態とされるため、トランスミッション150がロックされて車軸の回転が阻止される。
【0031】
本実施形態では、車軸の回転を阻止させるクラッチ150a,150bを有するトランスミッション150が、ホイールショベル1を駐車させるための駐車ブレーキ装置として機能する。駐車ブレーキ装置を解除する場合は、一方のクラッチ(150aまたは150b)に圧油(ブレーキ解除圧)を作用させ、クラッチ(150aまたは150b)を解放状態とする。なお、ばねの付勢力によって作動し、油圧力によって解除されるようなブレーキをネガティブ型の駐車ブレーキ装置と呼ぶ。クラッチ切替弁151は、ブレーキスイッチ173が作動位置に切り替えられると、駐車位置に切り換わり、ブレーキスイッチ173が解除位置に切り替えられると、変速スイッチの操作位置に応じた低速位置または高速位置に切り換わる。
【0032】
シャットオフ弁89は、パイロットポンプ26と操作装置(71,72,178)の減圧弁71b,72b,178bとを接続するパイロットラインに設けられ、パイロットポンプ26から減圧弁71b,72b,178bへパイロット圧が供給されることを許容する連通位置と、パイロットポンプ26から減圧弁71b,72b,178bへパイロット圧が供給されることを禁止する遮断位置と、の間で切り換えられる電磁切換弁である。シャットオフ弁89は、ロックレバー装置179によって操作される。
【0033】
ロックレバー装置179は、アクチュエータを動作させるために用いられる操作装置であって、運転室107の出入りを許可するとともに操作装置71,72,178によるアクチュエータ(100a,105a,106a)の動作を不能とするロック位置(上げ位置)と、運転室107の出入りを禁止するとともに操作装置71,72,178によるアクチュエータ(100a,105a,106a)の動作を可能とするロック解除位置(下げ位置)とに選択的に操作されるロックレバー179aと、バッテリ28からの電力を供給または遮断するためのシャットオフリレー179cと、ロックレバー装置179のロックレバー179aの操作位置を検出する操作検出装置であるロックレバーセンサ179bと、を有する。
【0034】
ロックレバー179aがロック解除位置に操作されると、シャットオフリレー179cがオンされ、すなわちシャットオフリレー179cが閉状態とされ、バッテリ28からシャットオフ弁89に電力が供給される。シャットオフ弁89に電力が供給されると、ソレノイドが励磁されてシャットオフ弁89が連通位置に切り換えられる。このため、ロックレバー179aがロック解除位置にある状態では、操作部材71a,72a,178aの操作量に応じた指令パイロット圧が減圧弁71b,72b,178bによって生成され、操作された操作部材71a,72a,178aに対応する油圧アクチュエータ(100a,105a,106a)が動作する。
【0035】
ロックレバー179aがロック位置に操作されると、シャットオフリレー79cがオフされ、すなわちシャットオフリレー79cが開状態とされ、バッテリ28からシャットオフ弁89への電力の供給が遮断される。シャットオフ弁89への電力の供給が遮断されると、ソレノイドが消磁されてシャットオフ弁89が遮断位置に切り換えられる。これにより、減圧弁71b,72b,178bへのパイロット元圧が遮断され、操作部材71a,72a,178aによる操作が無効化される。
【0036】
このように、ロックレバー装置179は、操作装置(71,72,178)による操作を無効とするロック位置、及び、操作装置(71,72,178)による操作を有効とするロック解除位置のいずれかに選択的に切り替えられる。
【0037】
周囲監視システム10は、ホイールショベル1の周囲を監視するためのシステムであり、旋回体3の周囲を撮影する複数の撮影装置30と、撮影装置30により撮影された映像を表示画面191aに表示する表示装置190と、表示装置190を制御する制御装置である情報コントローラ120と、を備える。
【0038】
情報コントローラ120は、ホイールショベル1の稼働状態に関する情報(データ)、及び撮影装置30で撮影された映像を表示装置190の表示画面191aに表示させる。
【0039】
情報コントローラ120は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)120a、記憶装置としての所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ120b、記憶装置としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ120c、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、情報コントローラ120は、1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。
【0040】
不揮発性メモリ120cには、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、情報コントローラ120の不揮発性メモリ120cは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。揮発性メモリ120bは、CPU120aとの間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。揮発性メモリ120bは、CPU120aがプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、情報コントローラ120は、ハードディスクドライブ等の記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0041】
CPU120aは、不揮発性メモリ120cに記憶された制御プログラムを揮発性メモリ120bに展開して演算実行する処理装置であって、制御プログラムに従って入出力インタフェース及び不揮発性メモリ120c、揮発性メモリ120bから取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。入出力インタフェースには、各種装置からの信号が入力される。入出力インタフェースは、入力された信号をCPU120aで演算可能なように変換する。入出力インタフェースは、CPU120aでの演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を表示装置190に出力する。
【0042】
図4は、ホイールショベル1の平面模式図であり、複数の撮影装置30の撮影範囲を示す。図4に示すように、複数の撮影装置30は、旋回体3に取り付けられる。複数の撮影装置30には、旋回体3の左方向を撮影する左カメラ31と、旋回体3の右方向を撮影する右カメラ32と、旋回体3の前方向を撮影する前カメラ33と、旋回体3の後方向を撮影する後カメラ34と、がある。各撮影装置30(31,32,33,34)は、例えば、耐久性、耐候性に優れたCCD、CMOSなどの撮像素子と広角レンズを備えた広角ビデオカメラである。
【0043】
左カメラ31は、旋回体3の左側の領域を左右約180°の画角で斜めに見下ろすような方向で連続的に撮影する撮影装置である。右カメラ32は、旋回体3の右側の領域を左右約180°の画角で斜めに見下ろすような方向で連続的に撮影する撮影装置である。前カメラ33は、旋回体3の前方の領域を左右約180°の画角で斜めに見下ろすような方向で連続的に撮影する撮影装置である。後カメラ34は、旋回体3の後方の領域を左右約180°の画角で斜めに見下ろすような方向で連続的に撮影する撮影装置である。なお、前カメラ33は、作業装置4と干渉しない位置に取り付けられている。
【0044】
図中、ホイールショベル1の周囲の各矩形エリア(A1,A2,A3,A4)は、各カメラ31,32,33,34で撮影可能な領域を示しており、各撮影領域A1,A2,A3,A4は、それぞれその長手方向の両端部分で隣接するエリアと重複撮影されるようになっている。
【0045】
図3に示すように、情報コントローラ120は、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる車載ネットワーク20を介して他のコントローラ、例えば、車体コントローラ130と相互に通信可能に接続されている。なお、車載ネットワーク20は、CAN以外の通信規格、例えば、Ethernet(登録商標)を用いてもよい。
【0046】
車体コントローラ130は、各種センサ、スイッチからの信号が入力され、入力された信号に基づいて、ホイールショベル1の各部を制御する。車体コントローラ130は、情報コントローラ120と同様、CPU、記憶装置及び入出力インタフェース等を備えるマイクロコンピュータで構成される。
【0047】
車体コントローラ130は、ブレーキスイッチ173が作動位置に切り替えられ、ブレーキスイッチ173からオン信号が入力されると、クラッチ切替弁151のソレノイドを消磁して、クラッチ切替弁151を駐車位置に切り替える。これにより、トランスミッション150がロックされて車軸の回転が阻止され、駐車ブレーキ作動状態となる。車体コントローラ130は、ブレーキスイッチ173が解除位置に切り替えられ、ブレーキスイッチ173からオフ信号が入力されると、変速スイッチ(不図示)からの信号に基づいて、クラッチ切替弁151の第1ソレノイド及び第2ソレノイドのいずれかを励磁することにより、クラッチ切替弁151を低速位置または高速位置に切り替える。
【0048】
車体コントローラ130は、前後進切替スイッチ174が前進位置に切り替えられ、前後進切替スイッチ174から前進位置信号が入力されると、前後進切替弁84を前進連通位置に切り替える。車体コントローラ130は、前後進切替スイッチ174が後進位置に切り替えられ、前後進切替スイッチ174から後進位置信号が入力されると、前後進切替弁84を後進連通位置に切り替える。車体コントローラ130は、前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられ、前後進切替スイッチ174から中立位置信号が入力されると、前後進切替弁84をタンク連通位置に切り替える。
【0049】
情報コントローラ120は、車体コントローラ130から車体の動作に関する基本情報を取得する。車体の動作に関する基本情報とは、例えば、エンジン21の回転速度(エンジン回転数)、メインポンプ25の吐出圧、作動油の温度、エンジン冷却水の温度、燃料の残量等の情報である。情報コントローラ120は、車体コントローラ130から取得した情報を表示装置190の表示画面191aに表示させる。
【0050】
図5は、周囲監視システム10の主な機能について示す機能ブロック図である。なお、撮影装置30は、複数(本実施形態では4つ)設けられるが、代表して一つのみ記載している。図5に示すように、情報コントローラ120は、不揮発性メモリ120cに記憶されているプログラムを実行することにより、進行方向判定部121、走行可否判定部122、旋回角度算出部123、表示態様選択部124、表示態様設定部125、撮影映像取得部126及び表示映像生成部127として機能する。
【0051】
情報コントローラ120には、前後進切替スイッチ174からの操作信号(前進位置信号、中立位置信号、後進位置信号)、ロックレバーセンサ179bからの検出信号(ロック位置信号、ロック解除位置信号)、ブレーキスイッチ173からの操作信号(オン信号、オフ信号)、表示切替スイッチ175からの操作信号、旋回角度センサ161からの検出信号、及び、撮影装置30からの映像信号が入力される。
【0052】
進行方向判定部121は、前後進切替スイッチ174の信号に基づいて、走行体2の進行方向を判定する。進行方向判定部121は、前後進切替スイッチ174が前進位置に切り替えられている場合、走行体2の進行方向は前進であると判定し、前後進切替スイッチ174が後進位置に切り替えられている場合、走行体2の進行方向は後進であると判定する。また、進行方向判定部121は、前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられている場合、走行体2の進行方向は設定されていないと判定する。
【0053】
走行可否判定部122は、前後進切替スイッチ174、ロックレバー装置179及びブレーキスイッチ173の操作状態に基づいて、走行体2が走行可能な状態であるか否かを判定する。走行可否判定部122は、以下の条件1~3の少なくともいずれか一つが成立した場合、走行体2は走行可能な状態でない(すなわち走行体2は走行不能な状態である)と判定し、以下の条件1~3の全てが成立していない場合、走行体2は走行可能な状態であると判定する。
【0054】
条件1:ロックレバー装置179がロック位置に切り替えられている。
条件2:駐車ブレーキ装置(150)が作動状態(すなわちホイールショベル1が駐車状態)である。
条件3:前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられている。
【0055】
走行可否判定部122は、ロックレバーセンサ179bからの信号に基づいて、ロックレバー装置179がロック位置に切り替えられているか否かを判定する。走行可否判定部122は、ロックレバーセンサ179bからロック位置信号が入力されている場合、ロックレバー装置179がロック位置に切り替えられていると判定し、ロックレバーセンサ179bからロック解除位置信号が入力されている場合、ロックレバー装置179がロック解除位置に切り替えられていると判定する。走行可否判定部122は、ロックレバー装置179がロック位置に切り替えられている場合、条件1が成立しているものとして、走行体2は走行可能な状態でないと判定する。
【0056】
走行可否判定部122は、ブレーキスイッチ173からの信号に基づいて、駐車ブレーキ装置(150)が作動状態であるか否かを判定する。走行可否判定部122は、ブレーキスイッチ173からオン信号が入力されている場合、駐車ブレーキ装置(150)が作動状態であると判定し、ブレーキスイッチ173からオフ信号が入力されている場合、駐車ブレーキ装置(150)は解除状態であると判定する。走行可否判定部122は、駐車ブレーキ装置(150)が作動状態である場合、条件2が成立しているものとして、走行体2は走行可能な状態でないと判定する。
【0057】
走行可否判定部122は、進行方向判定部121での判定結果に基づいて、前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられているか否かを判定する。走行可否判定部122は、進行方向判定部121で、前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられていると判定された場合、条件3が成立しているものとして、走行体2は走行可能な状態でないと判定する。
【0058】
旋回角度算出部123は、旋回角度センサ161からの信号に基づいて旋回角度rを算出する。旋回角度センサ161は、走行体2に対する旋回体3の角度である旋回角度rを検出する旋回角度検出装置である。旋回角度センサ161は、例えば、取得した角度に応じた信号(電圧)を出力するポテンショメータである。
【0059】
図6は、ホイールショベル1を上方から見た模式図であり、旋回角度r及び角度閾値r1,r2,r3,r4について示す。本実施形態では、旋回角度算出部123は、旋回中心軸Oを通り走行体2の前後方向に延在するXc軸と、旋回中心軸Oを通り旋回体3の前後方向に延在するXs軸と、のなす角度を旋回角度rとして算出する。旋回角度rは、Xs軸がXc軸に一致するときは0(ゼロ)度であり、この位置から旋回体3が右旋回すると旋回角度rが増加し、360度回転すると旋回角度rは0(ゼロ)度となる。
【0060】
角度閾値r1は、旋回体3が走行体2の前方を向いているか、あるいは、走行体2の右方を向いているかを判定するための閾値であり、例えば、45度に設定される。角度閾値r2は、旋回体3が走行体2の右方を向いているか、あるいは、走行体2の後方を向いているかを判定するための閾値であり、例えば、135度に設定される。角度閾値r3は、旋回体3が走行体2の後方を向いているか、あるいは、走行体2の左方を向いているかを判定するための閾値であり、例えば、225度に設定される。角度閾値r4は、旋回体3が走行体2の左方を向いているか、あるいは走行体2の前方を向いているかを判定するための閾値であり、例えば、315度に設定される。角度閾値r1~r4は、不揮発性メモリ120cに記憶されている。角度閾値r1~r4は、撮影装置30の数と同じ数だけ設けられる。本実施形態では、撮影装置30が4つ設けられているため、4つの角度閾値r1~r4が設定される。
【0061】
図5に示すように、撮影映像取得部126は、撮影装置30(31~34)で撮影された映像を取得する。撮影映像取得部126は、左カメラ31により撮影された映像を左方映像として取得し、右カメラ32により撮影された映像を右方映像として取得し、前カメラ33により撮影された映像を前方映像として取得し、後カメラ34により撮影された映像を後方映像として取得する。
【0062】
表示態様選択部124は、表示切替スイッチ175からの操作信号に基づいて、表示態様を選択する。表示切替スイッチ175は、第1操作部及び第2操作部を有する。表示態様選択部124は、表示切替スイッチ175の第1操作部が操作されるたびに、第1表示態様、第2表示態様、第3表示態様の順に表示態様を選択する。なお、表示態様選択部124は、第3表示態様が選択されているときに、表示切替スイッチ175の第1操作部が操作されると、第1表示態様を表示態様として選択する。また、表示態様選択部124は、表示切替スイッチ175の第2操作部が操作されるたびに、第3表示態様、第2表示態様、第1表示態様の順に表示態様を選択する。表示態様選択部124は、第1表示態様が選択されているときに、表示切替スイッチ175の第2操作部が操作されると、第3表示態様を表示態様として選択する。表示態様選択部124により選択される表示態様(第1表示態様、第2表示態様及び第3表示態様)は、走行不能状態のときに用いられる表示態様であるため、停止表示態様とも記す。
【0063】
表示態様設定部125は、進行方向判定部121での判定結果、走行可否判定部122での判定結果、及び、旋回角度算出部123での算出結果に基づいて、表示装置190の表示態様を設定する。表示態様設定部125は、走行可否判定部122により、走行体2が走行可能な状態でないと判定されると、表示態様選択部124で選択された表示態様を設定(記憶)する。
【0064】
表示態様設定部125は、走行可否判定部122により、走行体2が走行可能な状態であると判定されると、旋回角度算出部123により算出された旋回角度r及び前後進切替スイッチ174の操作位置(前進または後進)に基づいて、複数の撮影装置30で撮影されている映像(左方映像、右方映像、前方映像及び後方映像)の中から走行体2の進行方向を撮影している映像を選択し、選択した映像を含む映像を表示装置190に表示させる表示態様を設定(記憶)する。
【0065】
本実施形態では、表示態様設定部125は、前後進切替スイッチ174によって設定される走行体2の進行方向を撮影している映像を一つだけ選択し、選択した一つの映像のみを表示装置190に表示させる単独表示態様を設定する。
【0066】
表示映像生成部127は、撮影装置30で撮影された映像及び車両の動作に関する基本情報等に基づいて、表示態様設定部125により設定された表示態様の表示映像を生成する。表示映像生成部127は、生成した表示映像を表示画面191aに表示させるための表示制御信号を表示装置190に出力する。
【0067】
図7は、表示装置190に表示される表示映像の一例を示す図である。本実施形態では、表示装置190の表示画面191aが、第1表示領域91と、第2表示領域92と、第3表示領域93とに区画されている。第1表示領域91は、所定のアイコンが表示されるアイコン表示部192と、エンジン冷却水の温度を表す水温メータ及び燃料の残量を表す燃料メータが表示される計器表示部193と、ホイールショベル1の稼働時間及び現在時刻が表示される時間表示部195と、を有する。なお、アイコン表示部192は、設定されているモードを表すアイコン、異常が発生したときに異常状態であることを表すアイコン等が表示される。第3表示領域93は、エアコン温度を表示するエアコン温度表示部196と、ラジオ局の周波数が表示されるラジオ表示部197と、を有する。
【0068】
第2表示領域92は、撮影装置30により撮影された映像が表示される。第2表示領域92に表示される映像は、予め定められた複数の表示態様の中から選択された表示態様で表示される。第1表示態様は、図示するように、左方映像、右方映像、前方映像及び後方映像から生成される俯瞰映像194を第2表示領域92の全体に表示する表示態様である(俯瞰表示)。第2表示態様は、図示しないが、第2表示領域92を左右に2分割して、左側の分割領域に後方映像を表示し、右側の分割領域に右方映像を表示する表示態様である(左右分割表示)。第3表示態様は、図示しないが、第2表示領域92を上下に2分割し、さらに上側の分割領域を左右に2分割して、下側の分割領域に後方映像を表示し、左上側の分割領域に左方映像を表示し、右上側の分割領域に右方映像を表示する表示態様である(左右後方分割表示)。
【0069】
このように、本実施形態では、第1表示領域91及び第3表示領域93は、車体の動作に関する情報、及び、種々の設定情報が表示される領域であり、ホイールショベル1が走行可能な状態であるか否かにかかわらず、表示態様が変化することはない。一方、第2表示領域92は、表示態様設定部125で設定された表示態様で、撮影装置30により撮影された映像が表示される領域である。このため、第2表示領域92は、ホイールショベル1が走行不能な状態であるときには、表示切替スイッチ175が操作されるたびに表示態様が切り替えられる。また、第2表示領域92は、ホイールショベル1が走行可能な状態であるときには、旋回角度rと前後進切替スイッチ174の操作位置に応じて表示態様が設定される。
【0070】
本実施形態では、左カメラ31で撮影された映像(左方映像)を第2表示領域92に単独で表示させる表示態様(左単独表示)と、右カメラ32で撮影された映像(右方映像)を第2表示領域92に単独で表示させる表示態様(右単独表示)と、前カメラ33で撮影された映像(前方映像)を第2表示領域92に単独で表示させる表示態様(前単独表示)と、後カメラ34で撮影された映像(後方映像)を第2表示領域92に単独で表示させる表示態様(後単独表示)と、が予め定められている。
【0071】
図8及び図9を参照して、情報コントローラ120により実行される表示処理の内容について説明する。なお、図8及び図9では、第2表示領域92に表示される映像の表示態様の設定の流れについて示している。図8に示すフローチャートの処理は、例えば、イグニッションスイッチがオン(すなわちキーオン)されることにより開始され、初期設定が行われた後、ステップS110~S190までの処理が繰り返し実行される。
【0072】
図8に示すように、ステップS110において、情報コントローラ120は、情報取得処理を実行し、ステップS120へ進む。情報取得処理(S110)において、情報コントローラ120は、ロックレバーセンサ179bからの検出信号(ロックレバー179aの操作位置の情報)、前後進切替スイッチ174からの操作信号(前後進切替スイッチ174の操作位置の情報)、ブレーキスイッチ173からの操作信号(ブレーキスイッチ173の操作位置の情報)、及び、旋回角度センサ161からの検出信号(旋回角度rの情報)を取得する。また、情報取得処理(S110)において、情報コントローラ120は、選択されている停止表示態様(すなわち、第1~第3表示態様のいずれかの表示態様)の情報を取得する。
【0073】
ステップS120において、情報コントローラ120は、ステップS110で取得したロックレバーセンサ179bからの検出信号に基づいて、ロックレバー装置179がロック解除位置に切り替えられているか否かを判定する。ステップS120において、ロックレバー装置179がロック解除位置に切り替えられていると判定されるとステップS125へ進み、ロックレバー装置179がロック解除位置に切り替えられていない(すなわちロック位置に切り替えられている)と判定されるとステップS187へ進む。
【0074】
ステップS125において、情報コントローラ120は、ステップS110で取得したブレーキスイッチ173からの検出信号に基づいて、駐車ブレーキ装置(150)が解除状態であるか否かを判定する。情報コントローラ120は、ブレーキスイッチ173からの検出信号がオフ信号である場合、駐車ブレーキ装置(150)は解除状態であると判定し、ステップS130へ進む。情報コントローラ120は、ブレーキスイッチ173からの検出信号がオン信号である場合、駐車ブレーキ装置(150)は作動状態であると判定し、ステップS187へ進む。
【0075】
ステップS130において、情報コントローラ120は、ステップS110で取得した旋回角度センサ161からの検出信号に基づいて、旋回角度rを算出し、ステップS135へ進む。
【0076】
ステップS135において、情報コントローラ120は、ステップS110で取得した前後進切替スイッチ174からの操作信号に基づいて、前後進切替スイッチ174が中立位置に操作されているか否かを判定する。ステップS135において、前後進切替スイッチ174が中立位置に操作されていると判定されるとステップS187へ進み、前後進切替スイッチ174が中立位置に操作されていないと判定されるとステップS140へ進む。
【0077】
ステップS140において、情報コントローラ120は、走行表示態様設定処理を実行する。ステップS140において、情報コントローラ120は、所定の表示態様(例えば、左単独表示、右単独表示、前単独表示及び後単独表示)を設定し、ステップS190へ進む。走行表示態様設定処理(S140)の詳細については後述する。
【0078】
ステップS187において、情報コントローラ120は、停止表示態様設定処理を実行する。ステップS187において、情報コントローラ120は、ステップS110で取得した停止表示態様(第1~第3表示態様のいずれか)を設定し、ステップS190へ進む。
【0079】
ステップS190において、情報コントローラ120は、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92に、走行表示態様設定処理(S140)または停止表示態様設定処理(S187)で設定された表示態様で、撮影装置30により撮影された映像を表示させる。
【0080】
図9を参照して、情報コントローラ120により実行される走行表示態様設定処理(S140)について詳しく説明する。図9に示すように、ステップ143において、情報コントローラ120は、ステップS110で取得した前後進切替スイッチ174からの操作信号に基づいて、前後進切替スイッチ174が後進位置に操作されているか否かを判定する。ステップS143において、前後進切替スイッチ174が後進位置に操作されていると判定されるとステップS146へ進み、前後進切替スイッチ174が後進位置に操作されていないと判定されると(すなわち前後進切替スイッチ174が前進位置に操作されていると判定されると)ステップS166へ進む。
【0081】
ステップS146において、情報コントローラ120は、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3(旋回体3の前方)が走行体2の前方を向いているか否かを判定する。ステップS146において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、0°≦r≦r1、あるいはr4<r<360°を満たしている場合、旋回体3が走行体2の前方を向いていると判定し、ステップS181へ進む。ステップS146において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、0°≦r≦r1、及びr4<r<360°のいずれも満たしていない場合、旋回体3が走行体2の前方を向いていないと判定し、ステップS149へ進む。
【0082】
ステップS149において、情報コントローラ120は、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3(旋回体3の前方)が走行体2の右方を向いているか否かを判定する。ステップS149において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r1<r≦r2を満たしている場合、旋回体3が走行体2の右方を向いていると判定し、ステップS183へ進む。ステップS149において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r1<r≦r2を満たしていない場合、旋回体3が走行体2の右方を向いていないと判定し、ステップS152へ進む。
【0083】
ステップS152において、情報コントローラ120は、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3(旋回体3の前方)が走行体2の後方を向いているか否かを判定する。ステップS152において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r2<r≦r3を満たしている場合、旋回体3が走行体2の後方を向いていると判定し、ステップS185へ進む。ステップS152において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r2<r≦r3を満たしていない場合、旋回体3が走行体2の後方を向いていないと判定し、ステップS155へ進む。
【0084】
ステップS155において、情報コントローラ120は、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3(旋回体3の前方)が走行体2の左方を向いているか否かを判定する。ステップS155において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r3<r≦r4を満たしている場合、旋回体3が走行体2の左方を向いていると判定し、ステップS187へ進む。ステップS155において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r3<r≦r4を満たしていない場合、旋回体3が走行体2の左方を向いていないと判定し、ステップS158へ進む。
【0085】
ステップS166において、情報コントローラ120は、ステップS152と同様、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3が走行体2の後方を向いているか否かを判定する。ステップS166において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r2<r≦r3を満たしている場合、旋回体3が走行体2の後方を向いていると判定し、ステップS181へ進む。ステップS166において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r2<r≦r3を満たしていない場合、旋回体3が走行体2の後方を向いていないと判定し、ステップS169へ進む。
【0086】
ステップS169において、情報コントローラ120は、ステップS155と同様、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3が走行体2の左方を向いているか否かを判定する。ステップS169において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r3<r≦r4を満たしている場合、旋回体3が走行体2の左方を向いていると判定し、ステップS183へ進む。ステップS169において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r3<r≦r4を満たしていない場合、旋回体3が走行体2の左方を向いていないと判定し、ステップS172へ進む。
【0087】
ステップS172において、情報コントローラ120は、ステップS146と同様、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3が走行体2の前方を向いているか否かを判定する。ステップS172において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、0°≦r≦r1、あるいはr4<r<360°を満たしている場合、旋回体3が走行体2の前方を向いていると判定し、ステップS185へ進む。ステップS172において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、0°≦r≦r1、及びr4<r<360°のいずれも満たしていない場合、旋回体3が走行体2の前方を向いていないと判定し、ステップS175へ進む。
【0088】
ステップS175において、情報コントローラ120は、ステップS149と同様、ステップS130で算出された旋回角度rに基づいて、旋回体3が走行体2の右方を向いているか否かを判定する。ステップS175において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r1<r≦r2を満たしている場合、旋回体3が走行体2の右方を向いていると判定し、ステップS187へ進む。ステップS175において、情報コントローラ120は、旋回角度rが、r1<r≦r2を満たしていない場合、旋回体3が走行体2の右方を向いていないと判定し、ステップS158へ進む。
【0089】
旋回角度センサ161が故障するなどして、旋回角度センサ161から異常信号が出力されていたり、旋回角度センサ161からの信号が途絶えている場合、ステップS155またはステップS175で否定判定され、ステップS158へ進む。ステップS158において、情報コントローラ120は、異常時表示態様設定処理を実行する。ステップS158において、情報コントローラ120は、異常時表示態様として、ステップS110で取得した停止表示態様に異常状態を表すアイコン、メッセージ等を加えた異常時表示態様を設定し、走行表示態様設定処理(S140)を終了して、ステップS190へ進む。
【0090】
ステップS181において、情報コントローラ120は、表示態様として後単独表示を設定し、走行表示態様設定処理(S140)を終了して、ステップ190へ進む。ステップS183において、情報コントローラ120は、表示態様として右単独表示を設定し、走行表示態様設定処理(S140)を終了して、ステップS190へ進む。ステップS185において、情報コントローラ120は、表示態様として前単独表示を設定し、走行表示態様設定処理(S140)を終了して、ステップS190へ進む。ステップS187において、情報コントローラ120は、表示態様として左単独表示を設定し、走行表示態様設定処理(S140)を終了して、ステップS190へ進む。
【0091】
本実施形態に係るホイールショベル1の動作の一例について説明する。オペレータが運転室107に搭乗し、ロックレバー装置179をロック解除位置に操作し、その後、イグニッションスイッチを操作してエンジン21を始動する。このとき、駐車ブレーキ装置(150)は作動状態にあり、前後進切替スイッチ174は中立位置にある。したがって、情報コントローラ120は、走行体2が走行可能な状態でないと判定し(図8のS125でN)、表示切替スイッチ175により設定された表示態様(第1~第3表示態様のいずれか)の映像を表示装置190の第2表示領域92に表示させる(図8のS187,S190)。つまり、図10(a)に示すように、表示装置190の表示画面191aには、停止表示態様の映像(例えば、俯瞰映像194)が表示される。この状態では、オペレータが表示切替スイッチ175を操作することによって、第1表示態様、第2表示態様及び第3表示態様のいずれかを選択することができる。
【0092】
オペレータがブレーキスイッチ173を操作して駐車ブレーキ装置(150)を解除状態にするとともに前後進切替スイッチ174を後進位置に操作すると、走行体2は後方への走行が可能な状態となる。
【0093】
走行体2の後方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3(旋回体3の前方)が走行体2の前方を向いている場合、走行表示態様として後単独表示が選択される(図9のS143でY→S146でY→S181)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、図10(b)に示すように、後カメラ34で撮影された後方映像198が単独で表示される。
【0094】
走行体2の後方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が走行体2の後方を向いている場合、走行表示態様として前単独表示が選択される(図9のS143でY→S146でN→S149でN→S152でY→S185)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、前カメラ33で撮影された旋回体3の前方映像(すなわち走行体2の後方映像)が表示装置190に単独で表示される。走行体2の後方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が走行体2の左方を向いている場合、走行表示態様として左単独表示が選択される(図9のS143でY→S146でN→S149でN→S152でN→S155でY→S187)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、左カメラ31で撮影された旋回体3の左方映像(すなわち走行体2の後方映像)が表示装置190に単独で表示される。走行体2の後方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が右方を向いている場合、走行表示態様として右単独表示が選択される(図9のS143でY→S146でN→S149でY→S183)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、右カメラ32で撮影された旋回体3の右方映像(すなわち走行体2の後方映像)が表示装置190に単独で表示される。
【0095】
エンジン始動後、オペレータがブレーキスイッチ173を操作して駐車ブレーキ装置(150)を解除状態にするとともに前後進切替スイッチ174を前進位置に操作すると、走行体2は前方への走行が可能な状態となる。
【0096】
走行体2の前方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が走行体2の後方を向いている場合、走行表示態様として後単独表示が選択される(図9のS143でN→S166でY→S181)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、後カメラ34で撮影された旋回体3の後方映像(すなわち走行体2の前方映像)が表示装置190に単独で表示される。走行体2の前方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が走行体2の左方を向いている場合、走行表示態様として右単独表示が選択される(図9のS143でN→S166でN→S169でY→S183)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、右カメラ32で撮影された旋回体3の右方映像(すなわち走行体2の前方映像)が表示装置190に単独で表示される。走行体2の前方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が右方を向いている場合、走行表示態様として左単独表示が選択される(図9のS143でN→S166でN→S169でN→S172でN→S175でY→S187)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、左カメラ31で撮影された旋回体3の左方映像(すなわち走行体2の前方映像)が表示装置190に単独で表示される。走行体2の前方への走行が可能な状態であるときに、旋回体3が走行体2の前方を向いている場合、走行表示態様として前単独表示が選択される(図9のS143でN→S166でN→S169でN→S172でY→S185)。したがって、表示装置190の表示画面191aの第2表示領域92には、前カメラ33で撮影された旋回体3の前方映像(すなわち走行体2の前方映像)が表示装置190に単独で表示される。
【0097】
このように、本実施形態では、情報コントローラ120は、走行体2が走行可能な状態であると判定された場合(図8のS120でY→S125でY→S135でN)、旋回体3の旋回角度rに基づいて、複数の撮影装置30で撮影された映像のうち、前後進切替スイッチ174により設定された走行体2の進行方向の映像を選択し(図8のS140)、選択された映像を、表示切替スイッチ175により設定された表示態様の映像に代えて、表示装置190の第2表示領域92に表示させる(図8のS190)。これにより、オペレータは、表示装置190の表示画面191aによってホイールショベル1の進行方向を確認しながら、ステアリングホイール172及びアクセルペダル178aを操作することによりホイールショベル1を走行させることができる。
【0098】
オペレータは、ホイールショベル1を停止させ、ブレーキスイッチ173を操作して駐車ブレーキ装置(150)を作動状態にするとともに前後進切替スイッチ174を中立位置に操作すると、表示装置190の表示画面191aは、停止表示態様(図10(a)参照)の表示映像に切り替えられる。
【0099】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0100】
(1)ホイールショベル(作業車両)1は、ホイール式の走行体2と、走行体2上に旋回可能に取り付けられる旋回体3と、旋回体3に取り付けられる作業装置4と、走行体2、旋回体3及び作業装置4を操作するための操作装置(作業操作装置71、旋回操作装置72及び走行操作装置178)と、旋回体3に取り付けられ旋回体3の周囲を撮影する複数の撮影装置30と、撮影装置30により撮影された映像を表示する表示装置190と、表示装置190に表示される映像の表示態様を設定するための表示切替スイッチ(表示態様設定装置)175と、旋回体3の旋回角度rを検出する旋回角度センサ(旋回角度検出装置)161と、走行体2の進行方向を設定するための前後進切替スイッチ(進行方向設定装置)174と、表示装置190を制御する情報コントローラ(制御装置)120と、を備える。
【0101】
情報コントローラ(制御装置)120は、走行体2が走行可能な状態であるか否かを判定し、走行体2が走行可能な状態でないと判定された場合、表示切替スイッチ(表示態様設定装置)175により設定された表示態様(第1~第3表示態様のいずれか)の映像を表示装置190の所定の表示領域(第2表示領域92)に表示させる。情報コントローラ(制御装置)120は、走行体2が走行可能な状態であると判定された場合、旋回体3の旋回角度rに基づいて、複数の撮影装置30で撮影された映像のうち、前後進切替スイッチ(進行方向設定装置)174により設定された走行体2の進行方向の映像を選択し、選択された映像を含む映像(本実施形態では、単独映像)を、表示切替スイッチ(表示態様設定装置)175により設定された表示態様の映像に代えて、表示装置190の上記所定の表示領域(第2表示領域92)に表示させる。
【0102】
これにより、走行体2に対する旋回体3の姿勢がどのような状態であっても、走行体2の進行方向の映像が表示装置190に表示されることになる。つまり、本実施形態によれば、走行体2の前後方向と旋回体3の前後方向が一致しない場合であっても、表示装置190に表示される映像を確認しながら走行体2の発進及び走行が可能なホイールショベル1を提供することができる。これにより、作業場所の移動をスムーズに行うことができるので、作業現場内での作業効率の向上を図ることができる。
【0103】
(2)ホイールショベル(作業車両)1は、操作装置(作業操作装置71、旋回操作装置72及び走行操作装置178)による操作を無効とするロック位置、及び、操作装置(作業操作装置71、旋回操作装置72及び走行操作装置178)による操作を有効とするロック解除位置のいずれかに選択的に切り替えられるロックレバー装置179を備える。情報コントローラ(制御装置)120は、ロックレバー装置179がロック位置に切り替えられている場合、走行体2が走行可能な状態でないと判定する。したがって、オペレータは、ロックレバー装置179をロック位置に切り替えておくことにより、表示切替スイッチ175により任意の停止表示態様(第1~第3表示態様)を選択することができる。
【0104】
(3)ホイールショベル(作業車両)1は、ホイールショベル(作業車両)1を駐車させるための駐車ブレーキ装置として機能するトランスミッション150を備える。情報コントローラ(制御装置)120は、駐車ブレーキ装置(150)が作動状態である場合、走行体2が走行可能な状態でないと判定する。したがって、オペレータは、駐車ブレーキ装置(150)を作動状態にしておくことにより、表示切替スイッチ175により任意の停止表示態様(第1~第3表示態様)を選択することができる。
【0105】
(4)前後進切替スイッチ(進行方向設定装置)174は、前進位置、中立位置及び後進位置のいずれかに選択的に切り替えられる前後進切替装置であり、情報コントローラ(制御装置)120は、前後進切替スイッチ174が中立位置に切り替えられている場合、走行体2が走行可能な状態でないと判定する。したがって、オペレータは、前後進切替スイッチ174を中立位置に切り替えておくことにより、表示切替スイッチ175により任意の停止表示態様(第1~第3表示態様)を選択することができる。
【0106】
(5)情報コントローラ(制御装置)120は、走行体2が走行可能な状態であると判定された場合、選択された映像を表示装置190の所定の表示領域(第2表示領域92)に単独で表示させる。これにより、走行体2の進行方向の映像が、表示装置190に大きく表示されることになるため、オペレータは走行体2の進行方向の状況を容易に把握することができる。
【0107】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0108】
<変形例1>
上記実施形態では、トランスミッション150を駐車ブレーキ装置として機能させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。トランスミッション150とは別に駐車ブレーキ装置を備えてもよい。
【0109】
<変形例2>
上記実施形態では、ブレーキスイッチ173の操作情報に基づいて、駐車ブレーキ装置(150)が作動しているか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。トランスミッション150を駐車ブレーキ装置として利用する場合には、クラッチ150a,150bに作用する作動油の圧力に基づいて、駐車ブレーキ装置(150)が作動しているか否かを判定してもよい。トランスミッション150とは別に、油圧式の駐車ブレーキ装置を備える場合には、駐車ブレーキ装置の作動油圧に基づいて、駐車ブレーキ装置が作動しているか否かを判定してもよい。
【0110】
<変形例3>
上記実施形態では、情報コントローラ120は、走行体2が走行可能な状態であると判定された場合、選択された映像を表示装置190の第2表示領域92に単独で表示させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。情報コントローラ120は、走行体2が走行可能な状態であると判定された場合、選択された映像と、選択された映像に旋回中心軸周りで隣接する映像と、に基づいて俯瞰映像を生成し、生成された俯瞰映像を表示装置190の第2表示領域92に表示させるようにしてもよい。
【0111】
例えば、図11に示すように、前後進切替スイッチ174が後進位置に切り替えられ、走行体2の後方への走行が可能な状態であり、旋回体3が走行体2の前方を向いているときには、情報コントローラ120は、走行体2の進行方向の映像として後方映像(後カメラ34で撮影された映像)を選択する。情報コントローラ120は、選択した後方映像と、後方映像に隣接する左方映像と右方映像に基づいて俯瞰映像194Aを生成し、表示装置190の第2表示領域92に表示させる。
【0112】
また、例えば、図12に示すように、前後進切替スイッチ174が後進位置に切り替えられ、走行体2の後方への走行が可能な状態であり、旋回体3が走行体2の右方を向いているときには、情報コントローラ120は、走行体2の進行方向の映像として右方映像(右カメラ32で撮影された映像)を選択する。情報コントローラ120は、選択した右方映像と、右方映像に隣接する前方映像及び後方映像に基づいて俯瞰映像194Bを生成し、表示装置190の第2表示領域92に表示させる。
【0113】
このように、走行体2の進行方向の映像だけでなく、それに隣接する映像を含めて表示装置190に表示させることにより、走行体2の進行方向を撮影する撮影装置30の画角が狭い場合であっても、オペレータは、走行体2の進行方向の状況を適切に把握することができる。なお、本変形例では、走行体2の進行方向の映像(例えば、後方映像)が、停止表示態様の俯瞰映像194における映像(例えば、後方映像)に比べて表示面積が広くなるように、映像を拡大して表示している。これにより、走行体2の進行方向の状況把握を容易に行うことができる。
【0114】
<変形例4>
上記実施形態では、4つの撮影装置30(左カメラ31、右カメラ32、前カメラ33及び後カメラ34)が旋回体3に取り付けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。旋回体3に5つ以上の撮影装置30を取り付けるようにしてもよい。また、旋回体3に3つ以下の撮影装置30を取り付けるようにしてもよい。例えば、旋回体3に左カメラ31、右カメラ32及び後カメラ34を取り付け、前カメラ33を省略してもよい。この場合、情報コントローラ120は、図9のステップS185では、前単独表示に代えて、左カメラ31、右カメラ32及び後カメラ34で撮影された映像に基づいて生成した俯瞰映像を表示する表示態様を選択することが好ましい。
【0115】
<変形例5>
上記した実施の形態では、ホイールショベル1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、ホイールクレーンなど、ホイール式の走行体、旋回体及び作業装置を備える種々の作業車両に本発明を適用することができる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0117】
1…ホイールショベル(作業車両)、2…走行体、3…旋回体、4…作業装置、7…運転室、10…周囲監視システム、30…撮影装置、31…左カメラ(撮影装置)、32……右カメラ(撮影装置)、33…前カメラ(撮影装置)、34…後カメラ(撮影装置)、71…作業操作装置(操作装置)、72…旋回操作装置(操作装置)、91…第1表示領域、92…第2表示領域(所定の表示領域)、93…第3表示領域、107…運転室、108…エンジン室、120…情報コントローラ(制御装置)、150…トランスミッション(駐車ブレーキ装置)、174…前後進切替スイッチ(進行方向設定装置)、175…表示切替スイッチ(表示態様設定装置)、178…走行操作装置(操作装置)、179…ロックレバー装置、190…表示装置、191a…表示画面、194…俯瞰映像、194A,194B…俯瞰映像(走行体の進行方向の映像を含む映像)、198…後方映像(走行体の進行方向の映像)、O…旋回中心軸、r…旋回角度、r1,r2,r3,r4…角度閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12