(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】液状一時染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241224BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241224BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241224BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20241224BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20241224BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61Q5/06
A61K8/89
A61K8/19
A61K8/81
(21)【出願番号】P 2020170021
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019188167
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 皓奨
(72)【発明者】
【氏名】張 葉函
(72)【発明者】
【氏名】楯 義正
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-143434(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108714113(CN,A)
【文献】特開2017-048142(JP,A)
【文献】特開2005-314396(JP,A)
【文献】特開2008-063251(JP,A)
【文献】特開平09-208436(JP,A)
【文献】特開2005-052673(JP,A)
【文献】旭化成工業株式会社,結晶セルロース(アビセル(R), セオラス(R))の化粧品への応用,FRAGRANCE JOURNAL,2000年07月15日,28(7),pp.93-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C)を含有し、
成分(B)の含有量が0.01質量%以上7.5質量%以下であり、成分(C)の含有量が50質量%以上であ
り、かつ成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)が5以上25以下である液状一時染毛剤組成物。
(A):顔料
(B):結晶セルロース
(C):炭素数1~4の1価アルコール
【請求項2】
成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が0.02以上1.0以下である請求項
1に記載の液状一時染毛剤組成物。
【請求項3】
さらに、成分(D)として増粘性多糖類を含有する請求項1
又は2に記載の液状一時染毛剤組成物。
【請求項4】
さらに、成分(E)として被膜形成ポリマーを含有する請求項1~
3のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物を繊維構造体に担持させてなる一時染毛用化粧品。
【請求項6】
液不透過性シートからなる包装体に密封されてなる請求項
5に記載の一時染毛用化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状一時染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一時染毛剤は、頭髪上の着色剤(主として顔料)を含む着色被膜を形成させることで着色する染毛剤であり、頭髪へのダメージが少なく、洗髪により容易に除去でき、簡便に用いることができることから、気軽に毛染めを楽しむことができるものとして好まれている。
【0003】
従来、一時染毛剤を毛髪上できれいに発色させ、それを維持させるため、十分な量の顔料等の着色剤と、着色剤を着色被膜として毛髪上に固着させる固定化剤(ポリマー等)が使用されている(例えば、特許文献1)。また、染毛剤組成物を毛髪上に簡単に、かつきれいに塗布するために、不織布、紙、スポンジ等の担持体と組み合わせて使用することが多い(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-114815号公報
【文献】特開2018-033935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、十分な量の顔料や固定化剤の添加によって、経時で顔料が凝集し、十分な発色を担保することができなくなってしまうことがある。特に、溶剤として多量の低級アルコールを用いた場合には、顔料の凝集や沈降が生じやすい。顔料の凝集を抑制するためには、基剤として分散剤、増粘剤等が用いられるが、それら基剤の多くは、べたつき、粘着き等の剤の性状変化を引き起こしたり、塗布性に悪影響を及ぼしたり、毛髪への固定化能を阻害し、十分な発色を保てなかったりすることがある。
【0006】
特に、溶剤として多量の低級アルコールを用いた染毛剤組成物を担持体と組み合わせて使用する場合、担持体中で顔料が凝集・沈降を起こし、適切に顔料が排出せず、十分な塗布性、仕上がりを担保することができないという問題がある。
【0007】
したがって本発明は、多量の低級アルコールを含有するにも拘わらず、顔料の凝集や沈降を起こしにくく、十分な発色を担保した液状一時染毛剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において本発明者らは、多量の低級アルコール中での顔料の凝集・沈降を抑制すべく鋭意検討を行った結果、顔料と共に結晶セルロースを用いることによって、顔料の凝集・沈降を抑制することができ、塗布性や発色を阻害することなく、発色を維持できることを見出した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)~(C)を含有し、成分(C)の含有量が50質量%以上である液状一時染毛剤組成物を提供するものである。
(A):顔料
(B):結晶セルロース
(C):炭素数1~4の1価アルコール
【0010】
また本発明は、前記の液状一時染毛剤組成物を繊維構造体に担持させてなる一時染毛用化粧品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液状一時染毛剤組成物は、多量の低級アルコールを含有するにも拘わらず、顔料の凝集や沈降を起こしにくく、十分な発色を担保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔成分(A):顔料〕
成分(A)の顔料としては、化粧料に一般に用いられるものであれば特に制限はなく、その形状(球状、針状、板状等)や粒子径、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば無機顔料、有機顔料、有機色素のレーキ顔料、パール顔料、金属粉末顔料、光輝性粉体等が挙げられる。
【0013】
無機顔料としては、具体的には、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン等の無機黒色系顔料;酸化鉄(べんがら)、水酸化鉄、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、タルク等の無機白色系顔料等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、黒酸化鉄、黒酸化チタン、酸化鉄(べんがら)、黄酸化鉄、群青、紺青、酸化チタン、タルクが好ましい。
【0014】
有機顔料としては、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色226号、赤色228号、赤色404号、赤色405号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色401号、黄色205号、黄色401号、青色404号等が挙げられ、このうち、赤色201号、赤色202号、赤色226号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、青色404号が好ましい。
【0015】
有機色素のレーキ顔料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号等の有機色素のレーキ顔料が挙げられ、このうち、黄色4号のレーキ顔料が好ましい。
【0016】
パール顔料としては、パール粉末、オキシ塩化ビスマス、雲母、金属酸化物被覆合成雲母、金属酸化物被覆雲母(例えば、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、ベンガラ被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン、黄酸化鉄被覆雲母、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化鉄・紺青被覆雲母チタン、ベンガラ・紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等)、金属酸化物被覆アルミナフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆シリカ(例えば、酸化チタン被覆シリカ、酸化鉄被覆シリカ、ベンガラ被覆シリカ)、金属酸化物被覆ガラスフレーク、金属酸化物被覆ガラス(例えば、酸化チタン被覆ガラス、酸化鉄被覆ガラス、ベンガラ被覆ガラス、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス、酸化チタン・ベンガラ被覆ガラス)、多層コートパール顔料(例えば、TiO2-SiO2-TiO2-Mica、TiO2-SiO2-Mica、TiO2-SiO2-Glass、酸化チタン・無水ケイ酸被覆雲母、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス等)、ホウケイ酸塩・シリカ・金属酸化物混合物(例えば、ホウケイ酸塩・シリカ・酸化チタン混合物)、ホウケイ酸塩・金属酸化物混合物(例えば、ホウケイ酸塩・酸化チタン混合物)等が挙げられる。これらのうち、オキシ塩化ビスマス、金属酸化物被覆合成雲母、金属酸化物被覆雲母、金属酸化物被覆シリカ、金属酸化物被覆ガラス、多層コートパール顔料、ホウケイ酸塩・シリカ・金属酸化物混合物、ホウケイ酸塩・金属酸化物混合物が好ましい。さらに、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、ベンガラ被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、黄酸化鉄被覆雲母、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化鉄・紺青被覆雲母チタン、ベンガラ・紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆シリカ、酸化鉄被覆シリカ、ベンガラ被覆シリカ、酸化チタン被覆ガラス、酸化鉄被覆ガラス、ベンガラ被覆ガラス、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス、酸化チタン・ベンガラ被覆ガラス、酸化チタン・無水ケイ酸被覆雲母、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス、ホウケイ酸塩・シリカ・酸化チタン混合物、ホウケイ酸塩・酸化チタン混合物がより好ましい。
【0017】
金属粉末顔料としては、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、真鍮粉等が挙げられる。
光輝性粉体としては、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層体、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム体等が挙げられる。
【0018】
成分(A)の顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の液状一時染毛剤組成物中における成分(A)の含有量は、黒髪でも金髪でも元の髪色に関わらず、元の髪色を隠蔽し、かつ元の髪色とは全く異なる赤、青等の鮮やかな色を発色する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは3.5質量%以上である。また、毛髪の感触を損なわず、塗布後に毛髪を扱いやすい観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更により好ましくは8質量%以下である。
【0019】
〔成分(B):結晶セルロース〕
成分(B)の結晶セルロースとは、セルロースを酸加水分解又はアルカリ酸化分解して得られる実質的に一定の重合度を有するセルロース結晶子集合体をいい、例えばインダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー、第42巻、第502頁~第507頁(1950)の記載により定義されているものが挙げられる。本発明の効果を一層顕著ならしめるには、ストークス径で1μm以下の粒子の割合が5質量%以上存在するような微結晶セルロースを用いるのがよい。
【0020】
また結晶セルロースと水溶性ガム類(例えばカラヤゴム、キサンタンゴム等)やナトリウムカルボキシメチルセルロース等を水分の存在下で磨砕練合し、乾燥したもの(特公昭40-12174号公報、特願平4-259396号公報、特願平5-3183223号公報等)、またセルロース原料を水中で磨砕することによって得られる微細化セルロースの水懸濁液であってもよい(特開昭56-100801号公報、特開平3-163135号公報等)。なお、簡便には市販品である「セオラス(登録商標)」SC-42、RC-N30、RC-A591NF、「アビセル(登録商標)」RC-51、RC-N81、RC-N30、CL-611(旭化成工業社製)、「セルロビーズ(CELLULOBEADS)(登録商標)」MC 200、MC 500、MC 700(大東化成工業社製)等を使用することもできる。
【0021】
成分(B)の結晶セルロースは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の液状一時染毛剤組成物中における成分(B)の含有量は、多量の低級アルコール存在下における顔料の凝集や沈降を抑制する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、毛髪の自然な感触を損わない観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更により好ましくは2.5質量%以下である。なお、前述のように成分(B)として結晶セルロースを含む原料を用いる場合、本発明の液状一時染毛剤組成物中における成分(B)の含有量は、原料中の結晶セルロース分を基に算出される。
【0022】
成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)は、多量の低級アルコール存在下における顔料の凝集や沈降を抑制し、担持体中からの顔料の排出を妨げない観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、また、顔料による鮮やかな発色を損なわない観点から、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0023】
前記成分(A)の顔料と前記成分(B)の結晶セルロースは、混合して使用できるほか、成分(A)及び成分(B)として、成分(A)上に成分(B)があらかじめ被覆された原料を使用することもできる。なお、簡便には市販品であるC2-5 Ti2 CR-50、C2-2 Ti2 CR-50、C2-5 YELLOW LL-100P(大東化成社製)等を使用することもできる。
【0024】
〔成分(C):炭素数1~4の1価アルコール〕
成分(C)の炭素数1以上4以下の1価のアルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。
【0025】
成分(C)の1価アルコールは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の液状一時染毛剤組成物中における成分(C)の含有量は、毛髪上に均一に顔料を転写する観点から、50質量%以上であって、好ましくは55質量%以上、より好ましくは65.5質量%以上であり、また、同様の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である。
【0026】
成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)は、担持体中から効率よく顔料を排出し、毛髪上へ均一に塗布する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは7.5以上、更により好ましくは8.5以上であり、また、塗布後の速乾性を損なわない観点から、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは50以下、更により好ましくは25以下である。
【0027】
〔成分(D):増粘性多糖類〕
成分(D)の増粘性多糖類としては、増粘性の多糖類であれば特に制限されず、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グルコマンナン、カチオン化でんぷん、カチオン化グアーガム、クインスシード、寒天、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルセルロース又はその塩、マルトデキストリン等が挙げられる。これらのうち、キサンタンガムが増粘性、分散性、使用感の観点から最も好ましい。
【0028】
成分(D)の増粘性多糖類は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の液状一時染毛剤組成物中における成分(D)の含有量は、結晶セルロースによる顔料の凝集抑制効果又は沈降抑制効果を促進させる観点から、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上、更により好ましくは0.40質量%以上であり、また、べたつきのなさを満足させ、かつ毛髪からの耐色移り性を阻害しない観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.80質量%以下、更に好ましくは0.70質量%以下、更により好ましくは0.55質量%以下である。
【0029】
〔成分(E):被膜形成ポリマー〕
成分(E)の被膜形成ポリマーとしては、例えばシリコーン骨格を有する被膜形成ポリマーが挙げられ、このようなポリマーとしては、ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノポリシロキサン等のポリシリコーン-9;ポリシリコーン-28等の国際公開第2014/002707号に記載のオルガノポリシロキサングラフトポリマー;Silsoft Spread TT(モメンティブ社製)等のポリシリコーン-17;ポリシリコーン-6;ルビフレックスSilk(BASF社製)等のアクリル酸アルキル・メタクリル酸・シリコーン共重合体;KP-545(信越化学工業社製)等のアクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル等が挙げられる。
【0030】
上記以外の成分(E)の被膜形成ポリマーとしては、特開平2-180911号公報に記載のアルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体;特開平8-291206号公報に記載のアルキルアクリルアミド/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体;ユカフォーマーM-75、ユカフォーマーR205、ユカフォーマー301(以上、三菱化学社製)、RAMレジン(大阪有機化学社製)等の(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー;ダイヤフォーマーZ-651(三菱化学社製)等の(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー;ウルトラホールド8、ウルトラホールドStrong(以上、BASF社製)等のアクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸エチル共重合体;プラスサイズL-2714(互応化学工業社製)等の(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー;プラスサイズL-9540B(互応化学工業社製)等のアクリル樹脂アルカノールアミン液;ルビセットP.U.R.(BASFジャパン社製)等のポリウレタン;ルビスコールPlus(BASF社製)等のポリビニルカプロラクタム;アンフォーマー28-4910、アンフォーマーLV-71(以上、アクゾノーベル社製)等の(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー;アンフォーマーHC(アクゾノーベル社製)等の(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー;レジン28-2930(アクゾノーベル社製)等の(酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル)コポリマー;ダイナムX(アクゾノーベル社製)等のポリウレタン-14・AMP-アクリレーツコポリマー;アクアフレックスSF-40(アシュランド社製)等の(PVP/ビニルカプロラクタム/アクリル酸DMAPA)コポリマー;アクアフレックスFX-64(アイエスピー・ジャパン社製)等の(イソブチレン/エチルマレイミド/ヒドロキシエチルマレイミド)コポリマー;スタイリーゼCC-10(アシュランド社製)等の(ビニルピロリドン/アクリル酸DMAPA)コポリマー;PVP/VA E-735(アシュランド社製)や、ルビスコールVA64P(BASF社製)等の(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)コポリマー;ガフカット440、同734、755(アシュランド社製)等のポリクオタニウム-11、ルビスコール K-17、同K-30(BASF社製)等のポリビニルピロリドン;ルビセットClear(BASF社製)等の(VP/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール)コポリマー;ガントレッツES-225(アシュランド社製)等の(ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル)コポリマー;ガントレッツES-425(アシュランド社製)等の(ビニルメチルエーテル/マレイン酸ブチル)コポリマー等が挙げられる。
【0031】
なかでも、セット性、乾き際のべとつきの無さ、塗布後の柔らかさの観点から、シリコーン骨格を有する被膜形成ポリマー、特開平2-180911号公報に記載のアルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、特開平8-291206号公報に記載のアルキルアクリルアミド/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー、(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)コポリマー、ポリクオタニウム-11、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー、(ビニルメチルエーテル/マレイン酸ブチル)コポリマーから選ばれる1種又は2種以上の被膜形成ポリマーが好ましく、シリコーン骨格を有する被膜形成ポリマー、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーから選ばれる1種又は2種以上の被膜形成ポリマーがより好ましく、ポリシリコーン-9、及びポリシリコーン-28等の国際公開第2014/002707号に記載のオルガノポリシロキサングラフトポリマーが更に好ましい。
【0032】
成分(E)の被膜形成ポリマーは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の液状一時染毛剤組成物中における成分(E)の含有量は、耐摩擦性を向上する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、ごわつき感や、きしみ感を抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である。
【0033】
〔製造方法〕
本発明の液状一時染毛剤組成物は、例えば以下の製造方法a、b又はcによって製造することができるが、これらの方法に限定されるものではない。これらの製造方法で用いるメディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を用いることができる。
【0034】
・製造方法a
成分(C)の存在下、成分(A)、成分(B)及び成分(D)をメディアミルを用いて解砕した後、解砕された前記混合物に対して、成分(E)、その他の成分を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得る。
【0035】
・製造方法b
成分(C)の存在下、成分(B)及び成分(D)をメディアミルを用いて解砕した後、解砕された前記組成物に対して、成分(A)を添加、混合し、更に、成分(E)、他の成分を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得る。
【0036】
・製造方法c
成分(C)の存在下、成分(A)をメディアミルを用いて解砕し、同様にして、成分(C)の存在下、成分(B)及び成分(D)も解砕した後、解砕された成分(A)及び成分(C)の混合物と、解砕された成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の混合物とを混合し、成分(E)、他の成分を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得る。
【0037】
〔繊維構造体〕
本発明の液状一時染毛剤組成物は、毛髪に対し簡単かつきれいに塗布するために、繊維構造体に担持させて使用することができる。繊維構造体としては、液状一時染毛剤組成物を保持することができる任意の材料を用いることができる。例えば、不織布、編み物、紙等の繊維材料からなる繊維シートを好ましく用いることができる。
【0038】
繊維構造体として用いる不織布としては、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、等の各種製法による不織布を用いることができる。紙としては、乾式抄紙法、湿式抄紙法等により得られた紙を用いることができる。
【0039】
不織布、紙等である繊維構造体は、液状である一時染毛剤組成物の保持性の点から、その構成繊維としてセルロース系繊維を含むことが好ましい。セルロース系繊維としては、例えば天然繊維や再生繊維等の親水性繊維を用いることができる。天然セルロース系繊維としては、例えばパルプ繊維やコットン繊維等が挙げられる。再生セルロース系繊維としては、例えばレーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等が挙げられる。これらのセルロース系繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、繊維構造体は、不織布の強度の向上の観点、及び毛髪に適用した際の毛羽立ち等を防止し、毛髪への繊維付着を抑制する観点から、セルロース系繊維に加えて、熱可塑性樹脂繊維等の合成繊維を含むことも好ましい。熱可塑性樹脂繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等が挙げられる。合成繊維は、複数種類の樹脂成分からなる芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維でもよい。熱可塑性樹脂繊維に代えて、又は熱可塑性樹脂繊維に加えて、熱硬化性繊維を用いることもできる。これらの合成繊維はいずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、繊維構造体は、毛髪に接触させる観点から、展開時の平面視形状が、矩形であることが好ましいが、矩形以外の形状であってもよく、例えば、円形、楕円形や、三角形、正方形、五角形等の多角形、ハート形等の任意の形状とすることができる。また、繊維構造体は、一枚の繊維シートからなるものであってもよいが、複数枚のシートを積層したマルチプライのシートであることが好ましい。
【0042】
液状一時染毛剤組成物の保持量を確保し、毛髪への塗布の操作性をより向上させる観点や、携帯性の向上の観点から、繊維材料からなる繊維構造体の厚さは、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、また好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下である。ここでいう、繊維構造体の厚さは、0.8cN/cm2の荷重下における厚さであり、デジタルインジケータで測定したものをいう。また、複数枚のシートを積層している場合には、積層したシートの厚さを指す。
【0043】
同様の観点から、繊維材料からなる繊維構造体の坪量は、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは20g/m2以上であり、また好ましくは300g/m2以下、より好ましくは200g/m2以下である。また、複数枚のシートを積層している場合には、積層したシートの坪量を指す。
【0044】
本発明の液状一時染毛剤組成物を繊維構造体に担持させて毛髪への塗布に用いる場合、その繊維構造体への担持率は、好ましくは60%以上、より好ましくは140%以上、更に好ましくは250%以上であり、また好ましくは600%以下、より好ましくは500%以下、更に好ましくは400%以下である。ここで担持率とは、含浸前の繊維構造体の質量に対する、液状一時染毛剤組成物の質量の割合(百分率、%)である。
【0045】
〔一時染毛用化粧品〕
本発明は、上述の液状一時染毛剤組成物を繊維構造体に担持させてなる一時染毛用化粧品を提供する。この場合、繊維構造体への液状一時染毛剤組成物の担持量は前述した範囲が好ましく、液状一時染毛剤組成物を担持した繊維構造体は、液不透過性シートからなる包装体に密封されていることが好ましい。包装体としては、アルミ箔、熱可塑性樹脂フィルム等の液不透過性の材質からなるシートが選択され、なかでも熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムにアルミニウムなどの金属薄膜をラミネートしたものが好ましい。
【0046】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0047】
<1> 次の成分(A)~(C)を含有し、成分(C)の含有量が50質量%以上である液状一時染毛剤組成物。
(A):顔料
(B):結晶セルロース
(C):炭素数1~4の1価アルコール
【0048】
<2> 成分(A)が、好ましくは無機顔料、有機顔料、有機色素のレーキ顔料、パール顔料、金属粉末顔料、及び光輝性粉体から選ばれる1種以上である、<1>に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0049】
<3> 成分(A)の含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、更により好ましくは3.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更により好ましくは8質量%以下である、<1>又は<2>に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0050】
<4> 成分(B)の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上、更により好ましくは1.0質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更により好ましくは2.5質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0051】
<5> 成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0052】
<6> 成分(C)が、好ましくはエタノール、プロパノール、及びイソプロパノールから選ばれる1種以上である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0053】
<7> 成分(C)の含有量が、好ましくは55質量%以上、より好ましくは65.5質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更により好ましくは85質量%以下である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0054】
<8> 成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)が、好ましくは5以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは7.5以上、更により好ましくは8.5以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは50以下、更により好ましくは25以下である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0055】
<9> 好ましくは、さらに成分(D)として増粘性多糖類を含有する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0056】
<10> 成分(D)が、好ましくはキサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、グルコマンナン、カチオン化でんぷん、カチオン化グアーガム、クインスシード、寒天、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルセルロース又はその塩、及びマルトデキストリンから選ばれる1種以上である、<9>に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0057】
<11> 成分(D)の含有量が、好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上、更により好ましくは0.40質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.80質量%以下、更に好ましくは0.70質量%以下、更により好ましくは0.55質量%以下である、<10>に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0058】
<12> 好ましくは、さらに成分(E)として被膜形成ポリマーを含有する、<1>~<11>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0059】
<13> 成分(E)が、好ましくはシリコーン骨格を有する被膜形成ポリマー、ポリビニルピロリドン、及びジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーから選ばれる1種又は2種以上の被膜形成ポリマー、より好ましくはポリシリコーン-9、及びポリシリコーン-28から選ばれる1種又は2種以上のオルガノポリシロキサングラフトポリマーである、<12>に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0060】
<14> 成分(E)の含有量が、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更により好ましくは30質量%以下である、<12>又は<13>に記載の液状一時染毛剤組成物。
【0061】
<15> <1>~<14>のいずれか1項に記載の液状一時染毛剤組成物を繊維構造体に担持させてなる一時染毛用化粧品。
【0062】
<16> 繊維構造体が、好ましくは不織布、編み物、及び紙から選ばれる繊維材料からなる繊維シートである、<15>に記載の一時染毛用化粧品。
【0063】
<17> 好ましくは、液不透過性シートからなる包装体に密封されてなる<16>に記載の一時染毛用化粧品。
【実施例】
【0064】
合成例1:ポリシリコーン-9 A
硫酸ジエチル0.77g(0.005モル)と2-エチル-2-オキサゾリン12.9g(0.13モル)を脱水した酢酸エチル28gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2700であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量100,000、アミン当量20,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を無色固体(108g、収率95%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は88質量%、重量平均分子量は114,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果アミノ基は残存していないことがわかった。
【0065】
合成例2:ポリシリコーン-9 B
硫酸ジエチル6.5g(0.042モル)と2-エチル-2-オキサゾリン34.4g(0.36モル)を脱水した酢酸エチル87gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、1000であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量50,000、アミン当量2,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(138g、収率98%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は71質量%、重量平均分子量は70,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった。
【0066】
合成例3:ポリシリコーン-9 C
硫酸ジエチル6.17g(0.04モル)と2-エチル-2-オキサゾリン93.8g(0.947モル)を脱水した酢酸エチル203gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2500であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量30,000、アミン当量2,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(190g、収率95%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は50質量%、重量平均分子量は60,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果、約20モル%のアミノ基が残存していることがわかった。
【0067】
実施例1~29,比較例1~4
表1及び2に示す組成の液状一時染毛剤組成物を調製した。また、実施例12、比較例2以外の液状一時染毛剤組成物については、不織布担持体に含浸させ、不織布担持物とし、各評価に用いた。
ここで、用いた不織布担持体は、坪量45.0±4.5 g/m2、厚さ0.60±0.20 mm、大きさ3cm×5cm(SHクレープ45、池田紙業社製)及び坪量60.0±6.0 g/m2、厚さ0.54±0.06 mm、大きさ3cm×5cm(RB8260P、池田紙業社製)である。
【0068】
<製造方法>
(液状一時染毛剤組成物の調製)
液状一時染毛剤組成物は、以下に示す製造方法a、b又はcによって製造した。
・製造方法a
成分(C)の存在下、成分(A)、成分(B)及び成分(D)をビーズミル(ナノミルNM-L、淺田鉄工社製)を用いて解砕した。その後、解砕された前記混合物に対して、成分(E)、その他の成分を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得た。なお、実施例14、24、25、比較例3については、成分(D)を添加せず上記同様に調製した。また、比較例1、2については、成分(B)、成分(D)、成分(E)を添加せず上記同様に調製した。
・製造方法b
成分(C)の存在下、成分(B)及び成分(D)をビーズミル(ナノミルNM-L、淺田鉄工社製)を用いて解砕した。その後解砕された前記組成物に対して、成分(A)を添加、混合し、更に、成分(E)、他の成分を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得た。なお、比較例4については、成分(C)に成分(A)を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得た。
・製造方法c
成分(C)の存在下、成分(A)をビーズミル(ナノミルNM-L、淺田鉄工社製)を用いて解砕した。同様にして、成分(C)の存在下、成分(B)及び成分(D)も解砕した。その後、解砕された成分(A)及び成分(C)の混合物と、解砕された成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の混合物とを混合し、成分(E)、他の成分を添加、混合して液状一時染毛剤組成物を得た。
【0069】
(不織布担持体の調製)
不織布を2種用いる場合には、2種のそれぞれを4層ずつ計8層重ね、不織布を1種のみ用いる場合は、その1種を8層重ねた後、接合して用いた。不織布層の接合には、超音波シールの接合方法を用いた。
【0070】
(不織布担持物の調製)
均一に混合された液状一時染毛剤組成物を不織布担持体上に滴下して含侵させた。不織布担持体に保持させた液状一時染毛剤組成物の量は、不織布担持体の坪量に対して333%に調整した。
【0071】
<評価方法>
(評価用毛束)
化学的処理履歴の無い日本人直毛で長さ25cm、重さ1gの毛束を作製した。この毛束を、以下に処方を示すモデルシャンプーで洗浄した。タオルドライを行った後にドライヤー(パナソニック社製、ヘアドライヤーイオニティ:EH-NE67)で1分間乾かした後の毛束を評価に用いた。
【0072】
(保存後の発色性変化の抑制効果の評価方法)
製造直後の液状一時染毛剤組成物を担持した不織布担持物を用いて、上述の評価用毛束に対し、各組成物0.3gを毛束の根元から毛先にかけて塗り伸ばした。なお、実施例12、比較例2の液状一時染毛剤組成物については、不織布担持体に含浸させることなく、そのまま指で評価用毛束に各組成物0.3gを毛束の根元から毛先にかけて塗り伸ばした。塗布後、室温で放置し、毛束を十分に乾燥させて、これを基準品とした。
一方、液状一時染毛剤組成物を担持した不織布担持物(実施例12、比較例2については液状一時染毛剤組成物)を密閉状態にし、60℃に設定した恒温槽(EYELA windy oven)内に7日間保存した。その後、恒温槽からサンプルを取り出し、室温で3時間静置して調温した。その保存後サンプルを、同様にして、評価用毛束に対し塗り伸ばし、乾燥させた。評価用毛束における結束された側の一端(上部)から毛先(下部)における発色(強度)を、基準品と比較して、目視観察することにより評価した。評価はパネラー5名による下記の4段階視覚評価とし、その合計点を表中に示した。
4点:基準品と同等の発色(強度)を示す
3点:基準品に対して、発色(強度)が僅かに低下する
2点:基準品に対して、発色(強度)が低下する
1点:基準品に対して、発色(強度)が大幅に低下する
【0073】
(発色性)
着色毛束の発色性について、パネラー5名により下記の4段階視覚評価を行い、その合計点を表中に示した。
4点:元髪の色が隠蔽され、十分に発色している
3点:元髪の色がやや隠蔽され、発色している
2点:元髪の色があまり隠蔽されず、あまり発色していない
1点:全く発色していない
【0074】
(速乾性)
液状一時染毛剤組成物を担持した不織布担持物を用いて、上記に示す評価用毛束に対し、各組成物0.3gを毛束の根元から毛先にかけて塗り伸ばした。なお、実施例12、比較例2の液状一時染毛剤組成物については、不織布担持体に含浸させることなく、そのまま指で評価用毛束に各組成物0.3gを毛束の根元から毛先にかけて塗り伸ばした。塗布後、くし(貝印社製、HK0103 B's セットコームL)を1秒間に1回、合計5回通した後、室温で放置し、乾燥させた。毛束を指で触った際の毛束の状態から乾燥の速さを評価した。評価はパネラー5名による下記の4段階視覚評価とし、その合計点を表中に示した。
4点:乾きが早い
3点:乾きがやや早い
2点:乾きがあまり早くない
1点:乾きが遅い
【0075】
(感触)
速乾性を評価した後の乾燥した着色毛束にさらにくし(貝印社製、HK0103 B's セットコームL)を1秒間に1回、合計10回通した。毛束を指で触り、以下の基準で指へのべたつきやごわつきのなさを評価した。評価はパネラー5名による下記の4段階評価とし、その合計点を表中に示した。
4点:べたつきやごわつきを感じず、すべりが良い
3点:べたつきやごわつきをほとんど感じず、ややすべりが良い
2点:ややべたつきやごわつきを感じ、ややすべりが悪い
1点:べたつきやごわつきを感じ、すべりが悪い
【0076】
(塗布性)
液状一時染毛剤組成物を担持した不織布担持物(実施例12、比較例2については液状一時染毛剤組成物を不織布担持体に含浸させていないため未評価)による塗布性を、評価用毛束における結束された側の一端(上部)から毛先(下部)における仕上がりを目視で観察することにより評価した。評価はパネラー5名による下記の4段階評価とし、その合計点を表中に示した。
4点:上部から下部にかけて、仕上がりが均一である
3点:上部から下部にかけて、仕上がりがやや均一である
2点:上部から下部にかけて、仕上がりがあまり均一でない
1点:上部から下部にかけて、仕上がりが均一でない
【0077】
(再分散性の評価方法)
液状一時染毛剤組成物を密閉容器(遠沈管)に保管し、60℃に設定した恒温槽(EYELA windy oven)内に7日間保存した。その後、恒温槽からサンプルを取り出し、室温で3時間静置して調温した。保存後、サンプルを30秒間振とうさせた後、沈降物の状態を目視で観察することにより再分散性を評価した。評価はパネラー5名による下記の4段階評価とし、その合計点を表中に示した。
4点:沈殿物が残っておらず、均一に混合されている
3点:沈殿物がほとんど残っておらず、ほとんど均一に混合されている
2点:沈殿物はあまり残っていないが、均一に混合されていない
1点:沈殿物が多量に残っており、均一に混合されていない
【0078】
【0079】
【0080】
*1:タイペークCR-50(石原産業社製)
*2:BC赤色202号K(癸巳化成社製)
*3:C43-1810 SUNCROMA ULTRAMARINE BLUE(Sun Chemical社製)
*4:UNIPURE BLUE LC685(Sensient Cosmetic Technologies社製;紺青50%、タルク50%)
*5:TAROX 合成酸化鉄 R-516P(チタン工業社製)
*6:TAROX 合成酸化鉄 LL-100P(チタン工業社製)
*7:セオラスRC-N30(旭化成社製;結晶セルロース75質量%、マルトデキストリン20質量%、キサンタンガム5質量%)
*8:セオラスRC-A591NF(旭化成社製;結晶セルロース89質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム5質量%)
*9:セオラスPH101(旭化成社製)
*10:プラスサイズ L-75CB(互応化学工業社製)
*11:SHクレープ45(池田紙業社製)
*12:RB8260P(池田紙業社製)
*16:CLOISONNE SUPER GREEN(BASF社製)
*17:Colorona Fine Gold MP-20(メルク社製)
*18:RonaFlair Balance Gold(メルク社製)
*19:Timiron Splendid Gold(メルク社製)
*20:Timiron Liquid Silver(メルク社製;オキシ塩化ビスマス70質量%、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル30質量%)
*21:ルビスコールK30(BASF社製)
【0081】
実施例30~38
前述の製造方法a、b又はcによって液状一時染毛剤組成物を製造し、60℃で7日間保存後に毛髪に塗り伸ばしたところ、いずれも良好な発色性を示した。
【0082】
【0083】
【0084】
*1:タイペークCR-50(石原産業社製)
*7:セオラスRC-N30(旭化成社製;結晶セルロース75質量%、マルトデキストリン20質量%、キサンタンガム5質量%)
*10:プラスサイズ L-75CB(互応化学工業社製)
*11:SHクレープ45(池田紙業社製)
*12:RB8260P(池田紙業社製)
*13:C2-5 Ti2 CR-50(大東化成社製)
*14:C2-2 Ti2 CR-50(大東化成社製)
*15:C2-5 YELLOW LL-100P(大東化成社製)
*22:Xirona Golden Sky(メルク社製)
*23:REFLECKS MULTIDIMENSIONS SHIFTING SAPPHIRE(BASF社製)
*24:RB7360M(池田紙業社製;レーヨン70質量%、PP/PE30質量%)
【0085】
処方例1~5
以下に本発明の処方例を示す。各処方例は、前記実施例の製造方法aによって製造することができ、保存後も良好な発色を示す。
【0086】
【0087】
*1:タイペークCR-50(石原産業社製)
*3:C43-1810 SUNCROMA ULTRAMARINE BLUE(Sun Chemical社製)
*4:UNIPURE BLUE LC685(Sensient Cosmetic Technologies社製;紺青50%、タルク50%)
*7:セオラスRC-N30(旭化成社製;結晶セルロース75質量%、マルトデキストリン20質量%、キサンタンガム5質量%)
*11:SHクレープ45(池田紙業社製)
*25:KDH-60X(ダイワボウ ポリテック社製;レーヨン質量70%、PET30質量%)
*26:RH3-40B(ダイワボウ ポリテック社製;レーヨン80質量%、PP/PE20質量%)
*27:コットエースC060S/A01(ユニチカ社製;コットン)
*28:エスコットC060P/A01(ユニチカ社製;コットン50質量%、PET/PE50質量%)
*29:SG-56N(伊野紙社製;パルプ85質量%、PET15質量%)
*30:HJ-33(伊野紙社製;パルプ75質量%、PP/PE 25質量%)