(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】弁輪形成デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2020537567
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2019050356
(87)【国際公開番号】W WO2019135011
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513277083
【氏名又は名称】エイチブイアール カーディオ オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ケラネン, オリー
(72)【発明者】
【氏名】ゼルコウスキ, ハンス-ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤング, ヨハネス
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-502494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0069593(US,A1)
【文献】特表2014-523309(JP,A)
【文献】特開2010-253287(JP,A)
【文献】特開2012-071197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁輪形成デバイス(100)であって、
第1の支持リング(101)および第2の支持リング(102)を備え、
前記第1の支持リング(101)および前記第2の支持リング(102)は、軸方向(103)の周りに、第1の構成で、コイルのように配置されるように構成され、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、心臓弁の本来の心臓弁尖(301)の対向する側に配置されるように構成され、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、前記第1の構成において、前記軸方向において第1のピッチ距離(p1)で離間され、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、前記軸方向において前記第1のピッチ距離よりも短い第2ピッチ距離(p2)を有する収縮状態を取るように構成され、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、カテーテル内を前進するための細長い送達構成、および、前記収縮状態である移植形状を有し、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、前記第1の支持リングと、前記第2の支持リングとの間のギャップを減少させ、前記心臓弁尖を挟持するために、前記第1の構成と、前記収縮状態との間を、移行可能に構成され、
前記第1の支持リングおよび/または前記第2の支持リングは形状記憶材料を備え、前記形状記憶材料の活性化によって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが、前記第1の構成から前記収縮状態に移行され、
前記形状記憶材料は、活性化温度に応じて、前記収縮状態をとるように構成さ
れ、
前記弁輪形成デバイスは、除去可能抑止ユニット(110)を備え、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングの少なくとも一部は、前記除去可能抑止ユニットと係合して前記第1のピッチ距離での離間を維持し、前記除去可能抑止ユニットが除去されると、前記収縮状態をとるように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の弁輪形成デバイスであって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが、前記第1の構成から前記収縮状態へと移行されるように、前記第1の支持リングを前記第2の支持リングと連結するように構成される締結ユニット(104、104'、114)を備える、弁輪形成デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の弁輪形成デバイスであって、前記締結ユニットは、前記第1の支持リングおよび/または前記第2の支持リングに組み込まれる、弁輪形成デバイス。
【請求項4】
請求項2に記載の弁輪形成デバイスであって、
前記締結ユニットは、コイル形状ユニット(114)を備え、
前記コイル形状ユニットは、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングに対して相対的に回転されるにように構成され、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが重なるように構成され、それによって、前記回転の際、前記コイル形状ユニットが前記第2の支持リングを前記第1の支持リングに向かって押す、弁輪形成デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の弁輪形成デバイスであって、補剛ユニット(105、105')を備え、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングの少なくとも一部は、前記補剛ユニットを受容するように構成される内部チャネル(106)を備える、弁輪形成デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の弁輪形成デバイスであって、前記補剛ユニットの前記内部チャネルへの挿入によって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングを前記第1の構成から前記収縮状態へと移行させる、弁輪形成デバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の弁輪形成デバイスであって、前記補剛ユニットは、形状記憶材料を含み、前記形状記憶材料の活性化によって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングを前記第1の構成から前記収縮状態に移行させる、弁輪形成デバイス。
【請求項8】
請求項5~
7のいずれかに記載の弁輪形成デバイスであって、少なくとも第1の補剛ユニット(105)および第2の補剛ユニット(105')を備え、前記第1補剛ユニットおよび第2の補剛ユニットは、前記内部チャネルに同時に配置されるように構成される弁輪形成デバイス。
【請求項9】
請求項
8に記載の弁輪形成デバイスであって、前記内部チャネルは、第1のサブルーメン(106)および第2のサブルーメン(106')を備え、前記第1の補剛ユニットは、前記第1のサブルーメンに配置されるように構成され、前記第2の補剛ユニットは、前記第2のサブルーメンに配置されるように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載の弁輪形成デバイスであって、前記第1の補剛ユニットは、前記第2の補剛ユニットと異なる剛性を有する、弁輪形成デバイス。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の弁輪形成デバイスであって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、磁化部(107)を備え、
前記磁化部は、磁化されるよう構成される材料または磁性材料を含み、それにより、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングに作用する前記磁化部からの磁力によって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが、前記第1の構成から前記収縮状態に移行する、弁輪形成デバイス。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれかに記載の弁輪形成デバイスであって、
磁化されるよう構成される材料および/または磁性材料を含む磁化要素(108、108'、113)を備え、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングの少なくとも一部は、前記磁化要素を受容および固定するように構成される受容部(109)を備え、それによって、前記磁化要素が前記受容部に配置されると、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが、前記第1の支持リングおよび第2の支持リングに作用する磁化要素からの磁力によって、前記第1の構成から前記収縮状態に移行するように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項13】
請求項
12に記載の弁輪形成デバイスであって、
前記受容部は、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングに配置される内部チャネル(106)を備え、
前記内部チャネルは、前記磁化要素(113)を受容するように構成され、それによって、前記磁化要素が、前記内部チャネルに配置されると、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングに作用する磁化要素からの磁力によって、前記第1の構成から前記収縮状態に移行するように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の弁輪形成デバイスであって、前記磁化要素は、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングに取り外し可能に接続されるように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれかに記載の弁輪形成デバイスであって、生分解性抑止ユニット(110)を備え、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングの少なくとも一部は、前記抑止ユニットが生分解すると、前記抑止ユニットと係合して前記第1のピッチ距離での離間を維持し、前記収縮状態をとるように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項16】
請求項
14又は請求項
15に記載の弁輪形成デバイスであって、前記抑止ユニットは、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングの外部(111)に取り付けられるか、または内部(112)に配置されるように構成される、弁輪形成デバイス。
【請求項17】
請求項1に記載の弁輪形成デバイスであって、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、カテーテル内に配置されている間規定の温度に維持されるよう構成され、
前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングは、前記カテーテルから排出されるよう構成され、それによって前記活性化温度に達し、前記第1の支持リングおよび前記第2の支持リングが互いに向かって圧縮される、弁輪形成デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、心臓弁修復の分野に関する。より詳細には、本発明は、心臓弁輪に配置するための、弁輪形成リングまたは弁輪形成らせん等の弁輪形成デバイスまたはインプラント、および欠陥のある心臓弁を修復する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患のある僧帽弁および三尖弁は、頻繁に、置換および修復の必要がある。僧帽弁尖および三尖弁尖または支持腱索は、変性して弱体化する場合があり、または、弁輪が広がって弁漏れに至る場合がある。僧帽弁および三尖弁の置換および修復は、弁輪形成リングの補助を伴い、頻繁に行われ、これは、弁輪の直径を小さくするために用いられるか、または他の方法で弁輪の形状を変更するために用いられるか、または弁置換若しくは修復処置中、概して支持構造として補助するために用いられる。弁輪形成リングは、典型的には心臓弁の弁輪の周囲に移植される。
【0003】
従来技術の弁輪形成インプラントの問題は、心臓弁への正しい配置およびインプラントを正しい位置に固定することを達成することである。弁輪形成インプラントのためのデバイスの縫合は、正しい位置に縫合することが困難であるという欠点を有し、それによって、縫合強度が不十分となり、また、非常に時間のかかる処置において、患者にとってのリスクも増大する。さらに、縫合デバイスは、カテーテルベースの処置にとって、十分にコンパクトではないことが多い。弁輪形成インプラントを配置するためのクリップの使用もまた、特に心臓弁のいずれかの側に配置されるべきらせんリングを移植するときに、課題に関連する。固定構造は経時的にデバイスの正しい位置を確保しなければならないため、そのようなインプラントの不十分な固定は、外傷性の影響につながる。したがって、従来技術におけるさらなる問題は、心臓弁の弁輪への信頼性の高い固定を達成することでもある。弁輪形成インプラント何年もの間機能することを意図しているため、この点において長期の安定性に関しては重要である。
【0004】
上記の問題は、患者と医療システムに悲惨な結果をもたらす可能性があり、患者のリスクを増大させる。
【0005】
したがって、改良された弁輪形成インプラントは、利点を有するものであり、特に、上述の問題および妥協点の多く回避することを可能にし、とりわけ、インプラント段階での弁輪形成インプラントの確実な固定を確保し、長期的な機能のため、より複雑さが軽減された処置に加え、患者の安全性を向上させることができる。関連する方法もまた利点を有するものである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の例は、好ましくは、添付の特許請求の範囲に係るデバイスを提供することにより、例えば上記で特定されるような、当技術分野の1つまたは複数の欠陥、欠点または問題を、単独で、または、任意の組み合わせで、軽減、緩和または排除しようとするものである。
【0007】
第1の形態によれば、第1の支持リングおよび第2の支持リングを備える弁輪形成デバイスが提供される。第1の支持リングおよび第2の支持リングは、軸方向の周りに、第1の構成で、コイルのように配置されるように構成され、第1の支持リングおよび第2の支持リングは、心臓弁の本来の心臓弁尖の対向する側に配置されるように構成され、第1の支持リングおよび第2の支持リングは、第1の構成において、軸方向において第1のピッチ距離で離間され、第1の支持リングおよび第2の支持リングは、軸方向において第1のピッチ距離よりも短い第2ピッチ距離を有する収縮状態を取るように構成され、第1の支持リングおよび第2の支持リングは、第1の構成と、心臓弁尖を挟持するための収縮状態との間を、移行可能に構成される。
【0008】
第2形態によれば、欠陥のある心臓弁を修復する方法が提供される。方法は、弁輪形成デバイスの第1の支持リングおよび第2の支持リングを、第1の構成で、コイルのように心臓弁の本来の心臓弁尖の対向する側に配置する配置ステップ、第1の構成における第1の支持リングおよび第2の支持リングの間の第1のピッチ距離を、第1のピッチ距離よりも短い第2ピッチ距離に減少させるように、弁輪形成デバイスの収縮状態を活性化し、それによって第1の支持リングおよび第2の支持リングが互いに向かって移動し、本来の心臓弁尖を挟持する、活性化ステップを含む。
【0009】
本発明のさらなる例は、従属項に規定されており、本開示の第二態様の特徴は、必要な変更を加えて第一の態様の特徴と同様である。
【0010】
本開示のいくつかの例は、弁輪形成インプラントの、心臓弁での容易な配置を提供する。
【0011】
本開示のいくつかの例は、弁輪形成インプラントの、心臓弁での容易な固定を提供する。
【0012】
本開示のいくつかの例により、標的部位に対する弁輪形成の固定に費やす時間をより少なくすることができる。
【0013】
本開示のいくつかの例は、弁輪形成インプラントの長期的な機能および位置の確保を提供する。
【0014】
本開示のいくつかの例により、弁輪または弁尖等の心臓の解剖学的構造を損傷するリスクの低減がもたらされる。
【0015】
本開示のいくつかの例により、心臓の弁輪に対して、弁輪形成インプラントを容易に誘導できるようになる。
【0016】
本開示のいくつかの例により、狭い解剖学的構造中への、弁輪形成インプラントのより確実な移植が可能となる。
【0017】
本開示のいくつかの例により、弁輪形成インプラントの、弁尖の腱索との干渉を避けることが可能となる。
【0018】
「備える/備えている(comprises/comprising)」という用語は、この明細書で用いられるとき、述べられた特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を示すために用いられるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが強調される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施形態が可能である、これらおよび他の態様、並びに、特徴および利点は、添付の図面を参照し、本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、明確になるであろう。
【
図1a】
図1aは、一実施形態に係る、第1の構成において、軸方向における第1のピッチ距離で離間された、第1の支持リングおよび第2の支持リングを有する弁輪形成インプラントまたはデバイスの模式図である。
【
図1b】
図1bは、一実施形態に係る、収縮状態における、軸方向における、第2ピッチ距離で分離された、第1の支持リングおよび第2の支持リングを有する弁輪形成デバイスの模式図である。
【
図2a】
図2aは、一実施形態に係る、第1の構成における、心臓弁に配置された弁輪形成デバイスの模式図である。
【
図2b】
図2bは、一実施形態に係る、収縮状態における、心臓弁に配置された弁輪形成デバイスの模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る弁輪形成デバイスの、側面視における模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る弁輪形成デバイスの、側面視における模式図である。
【
図5a-b】
図5a-bは、一実施形態に係る、内部チャネルを備える弁輪形成デバイスの側面視における模式図である。
【
図5c-f】
図5c-fは、本開示の実施形態に係る、内部チャネルを備える弁輪形成デバイスの、詳細な側面視における模式図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る弁輪形成デバイスの、側面視における模式図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る弁輪形成デバイスの、側面視における模式図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る内部チャネルを備える弁輪形成デバイスの、側面視における模式図である。
【
図9a-b】
図9a-bは、一実施形態に係る弁輪形成デバイスの、側面視における模式図である。
【
図10a-b】
図10a-bは、一実施形態に係る弁輪形成デバイスの、横断面視における模式図である。
【
図11a】
図11aは、一実施形態に係る、欠陥のある心臓弁を修復する方法のフローチャートである。
【
図11b】
図11bは、一実施形態に係る、欠陥のある心臓弁を修復する方法の別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態の説明
以下、本発明の具体的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの例は、この開示が徹底的かつ完全であろうように、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されている。添付図面に示されている実施形態の詳細な説明で用いられる用語は、本発明を限定することを意図したものではない。図面において、同様の番号は同様の要素を指す。
【0021】
以下の説明は、弁輪形成リングのような心臓弁インプラントに適用可能である、本発明の一実施形態に焦点を当てたものである。しかしながら、本発明はこのような適用に限定されるものではなく、例えば置換弁、および他の医療用移植可能デバイスを含む、他の多くの弁輪形成インプラントおよび心臓弁インプラントに適用され得ることが理解されるであろう。
【0022】
図1a-bは、第1の構成において軸方向103の周りにコイルのように配置されるように構成される、第1の支持リング101および第2の支持リング102を備える弁輪形成デバイス100またはインプラントの模式図である。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、
図2a-bに示されるように、心臓弁の本来の心臓弁尖301の対抗する側に配置されるように構成される。
図2aに示されるように、第1の支持リング101は、心臓弁の心房側に配置することができ、第2の支持リング102は、心室側に配置することができる。したがって、第1の支持リング101は、心臓弁の弁輪に沿って延在する。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、コイル形状またはらせん形状のリング形成するように接続される。コイルは、
図2aに概略的に示されるように、その交連302で弁開口(破線)を通って延在する。
図1aおよび2aに示されるように、第1の構成において、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、軸方向103において、第1のピッチ距離(p
1)で離間されている。
図1bおよび2bに示されるように、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、軸方向103において、第1ピッチ距離(p1)よりも短い第2ピッチ距離(p
2)を有する収縮状態を取るように構成されている。ピッチ距離(p
1、p
2)は、軸方向103において、隣接する支持リング101、102の間の離間距離(すなわち、ギャップ)である。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、第1の構成と収縮状態との間を移行可能に構成され、それによって心臓弁尖302を挟持することが可能となる。これにより、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、収縮状態で互いに向かって圧縮されるため、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、心臓弁の対抗する側へと確実に位置決めすることが容易になる。同時に、第1のピッチ距離(p
1)を、弁の対向する側への移動を容易にするための十分な離間を有するように選択することができるため、第1の構成をとるとき、支持リング101、102を、心臓弁の対抗する側の正しい位置に容易に配置することができる。したがって、第1の構成と収縮状態との間を移行可能であり、心臓弁尖を挟持するように構成される第1の支持リング101および第2の支持リング102を備えることによって、より容易な移植手順がもたらされると同時に、弁輪からの位置ずれのリスクの最小化がもたらされる。したがって、処置を、より短い時間で実行することができる。収縮状態で圧縮される支持リング101、102を有することによって、支持リング101、102の近傍での細胞の成長の促進、および、より迅速な治癒もまた、もたらされる。このように、デバイス100は、記載されるように、弁修復処置の長期的な結果をも改善する。
【0023】
さらに以下に説明するように、デバイス100は、第1および第2のリング101、102が、送達カテーテル(図示せず)から排出された後に第1の構成をとるように、形状記憶材料を含むことができる。送達カテーテル内に配置されている間、デバイス100は、細長い形状で伸びていてもよい。あるいは、デバイス100は、標的部位に送達されるときにコイル状の構成で配置されてもよく、その場合、デバイス100は、例えば肋骨の間の切開によって、または胸部を開くことによって、標的部位に移植されてもよい。本開示、および様々な実施例について記載されている関連する利点は、デバイス100のそのような変形例の両方に適用される。
【0024】
弁輪形成デバイス100は、第1の支持リングおよび第2の支持リング101、102が第1の構成から収縮状態に移行されるように、第1の支持リング101を、第2の支持リング102と、連結させるように構成される締結ユニット104、104'、114を含むことができる。
図3は、支持リング101、102を、互いに向かって圧縮するために連結されるように構成される締結ユニット104、104'の模式図を示す。一例では、
図3に模式的に示されているように、締結ユニット104、104'は、第1の支持リング101上に配置された細長い拡張部104、および、第2の支持リング102上に配置された凹部104'を備えるか、またはその逆を備える。拡張部104は、支持リング101、102が、低減されたピッチ距離(p2)で収縮状態に移行されるよう、凹部104'と連結する。締結ユニット104、104'は、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102に組み込まれていてもよい。これにより、強固で確実な締結機構が提供され得る。また、締結ユニット104、104'は、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102と同じ材料で形成されてもよい。
【0025】
図4に模式的に示されるように、締結ユニットは、第1の支持リング101および第2の支持リング102に対して、相対的に回転するように構成され、第1の支持リング101および第2の支持リング102を重ねるように構成される、コイル形状ユニット114を備えることができ、それによって、コイル形状ユニット114が回転するとき、コイル形状ユニット114が、第2の支持リング102を第1の支持リング101に向かって押す。したがって、コイル状ユニット114は、第1の支持リングおよび第2の支持リング101、102が、コイル状ユニット114の、隣接する個々のコイル内で絡み合うような寸法に形成されている。コイル状ユニット114が、第1の支持リング101の上の位置にねじ込まれると、コイル状ユニット114の最も遠位のコイルが最終的に第2の支持リング102を捕らえ、第1のリング101および第2のリング102が互いに向かって押され、それによってピッチ距離が減少する(
図4で矢印によって模式的に示されるように)。第1のリング101および第2のリング102の効率的な圧縮は、このようにして達成され得る。
【0026】
弁輪形成デバイス100は、補剛ユニット105を備えることができ、第1の支持リング101および第2の支持リング102の少なくとも一部は、補剛ユニット105を受容するように構成された内部チャネル106を備えることができる。
図5aは、第1の支持リング101および第2の支持リング102に沿って延在する内部チャネル106の模式図である。
図5bでは、補剛ユニット105は、内部チャネル106に挿入された状態である。このように、補剛ユニット105は、内部チャネル105内に、内部コイルとして配置することもできる。補剛ユニット105の隣接するコイルのピッチ距離は、隣接する第1の支持リング101および第2の支持リング102のピッチ距離に影響を及ぼすよう変化させることができ、補剛ユニット105は、隣接する第1の支持リング101および第2の支持リング102に沿って、延在している。したがって、補剛ユニット105は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に力を加え、それらを、収縮状態に移行することができる(
図5bで、対向する方向を向いた矢印によって模式的に示されるように)。このように、補剛ユニット105によって、第1の支持リング101と第2の支持リング102との間のピッチ距離(p1、p2)の操作がより容易になる。
【0027】
一例では、補剛ユニット105の内部チャネル106へ挿入によって、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成から収縮状態へと移行させることができる。すなわち、補剛ユニット105は、緩和されたヒートセット形状を有することができ、補剛ユニット105の隣接するコイル間の距離は、第2ピッチ距離(p2)に対応するものとできる。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、緩和されたヒートセット形状を有することができ、隣接する第1の支持リング101と第2の支持リング102との間の距離は、第1のピッチ距離(p1)に対応するものとできる。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、十分な柔軟性を有するものとでき(すなわち、補剛ユニット105よりも柔軟性を有する)、補剛ユニット105が、内部チャネル106に挿入されるとき、第1の支持リング101および第2の支持リング102に、第2ピッチ距離(p2)をとるようにさせることもでき、すなわち、収縮状態にさせることもできる。
【0028】
内部チャネル106内に配置されるときに補剛ユニット105によって加えられる強度のため、補剛ユニット105の内部チャネル106への挿入によって、第1の支持リング101および第2の支持リング102の剛性を増加できる。すなわち、剛性が増加するにつれて、一定の距離を離れた第1の支持リング101および第2の支持リング102に行使するために必要とされる力は増加する可能性がある。弁組織に対して第1のリング101および第2のリング102によってもたらされる保持力は、このように増加し、第1の支持リング101と第2の支持リング102との間に配置される弁組織を、より強く矜持することができるようになる。したがって、より確実な固定を提供することができる。一例では、第1の支持リング101と第2の支持リング102との間の距離、すなわちピッチ距離に顕著な影響を及ぼさずに、補剛ユニット105の挿入により、第1の支持リング101および第2の支持リング102の剛性を増加させることもまた、考えられる。上述のように、増加した保持力によっても、弁輪でのデバイス100の十分な固定がもたらされる。剛性は、内部チャネル106の様々な位置に沿って、補剛ユニット105を配置することによって、可変的に変化させることができる。さらなる例では、補剛ユニット105を、第1の支持リング101のみに、または、第2の支持リング102のみに、または、第1の支持リング101の一部のみに、または第2の支持リング102の一部のみに、または、第1の支持リング101の部分および第2のリング102の第2の部分のみに、配置することができる。
【0029】
一例では、補剛ユニット105は、形状記憶材料を含むことができる。形状記憶材料の活性化によって、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成から収縮状態に移行させることができる。したがって、補剛ユニット105は、106の内部の位置に配置されると、能動的に操作され、そのピッチ距離を変化させ、それによって、上記したように第1の支持リング101および第2の支持リング102のピッチ距離(p1、p2)に影響を及ぼすことができる。形状記憶材料は、活性化温度に応じて活性化されるように構成することができる。したがって、補剛ユニット105の温度は、説明したその形状変化に影響及ぼすよう、変更することができる。
【0030】
弁輪形成デバイス100は、第1の補剛ユニット105および第2の補剛ユニット105'を少なくとも備えることができる。第1および第2の補剛ユニット105、105'は、内部チャネル106に同時に配置されるように構成できる。これは、
図5c-dに例示されており、ここで、第1の補剛ユニット105は、内部チャネル106に導入され(
図5c)、第2の補剛ユニット105'は、内部チャネル106に導入されている(
図5d)。
図5c-dは、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102のうち第2のみを示すが、上記に説明するように、第1補剛ユニット105および第2の補剛ユニット105'は、第1の支持リング101および第2の支持リング102の任意の部分に沿って導入できることを理解されたい。第1補剛ユニット105および第2補剛ユニット105'は、順にまたは同時に導入できる。この例は2つの補剛ユニット105、105'のみを示しているが、任意の数の複数の補剛ユニットを、内部チャネル106に導入できることを理解されたい。上述のように、これにより、第1支持リング101および/または第2支持リング102の剛性の段階的かつ可変的な調整、および/または、第1支持リング101および/または第2支持リング102との間の距離、すなわちピッチ距離(p1、p2)の段階的かつ可変的な調整がもたらされる。したがって、第1の支持リング101および第2の支持リング102の保持力は、固定処置の様々なステップの間に、慎重に最適化でき、および/または、デバイス100の様々な変形例を試す必要なしに、様々なタイプの解剖学的構造に対して最適化できる。デバイス100の機構的な特徴は、例えば、変更された心臓弁の血流動態を同時に観察することにより、代わりにその場で(in-situ)最適化することもできる。
【0031】
図5e-fに例示されるように、内部チャネルは、第1のサブルーメン106および第2のサブルーメン106'を備えることができる。第1の補剛ユニット105は、第1のサブルーメン106に配置されるように構成でき(
図5e)、第2の補剛ユニット105'は、第2のサブルーメン106'に配置されるように構成できる(
図5f)。第1補剛ユニット105および第2補剛ユニット105'は、順にまたは同時に導入できる。これにより、上述のように有利な最適化が提供される。さらに、第1補剛ユニット105および第2補剛ユニット105'に対して、専用のサブルーメン106、106'を備えることにより、第1補剛ユニット105および第2補剛ユニット105'の挿入を容易にすることができる。この例は2つのサブルーメン106、106'を示しているが、任意の数の複数のサブルーメンを、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102に配置することができ、それぞれの補剛ユニット105、105'を、様々なアプリケーションへの最適化のために導入できる。
【0032】
第1の補強ユニット105は、第2の補強ユニット105'とは異なる剛性を有するものとできる。これにより、第1の支持リング101および/または第2支持リング102の剛性を容易に変化させることができる。一例では、第1の補強ユニット105は、剛性を徐々に増加させ、および/または、第1の距離であるピッチ距離を減少させて、最初に正確にデバイス100を配置することができ、同時に、第2の補強ユニット105'(第2の補強ユニット105'は、第1の補強ユニット105と比較して増加した剛性を有することができる)を導入することによって、第1の支持リング101および/または第2支持リング102の剛性を顕著に増大させ、および/または、第1の距離と比較してより長い距離であるピッチ距離を減少させ、最終的にデバイス100を所定の位置に固定することができる。このようにして、装置100のより確実で最適化された固定を提供することができる。
【0033】
第1の支持リング101および第2の支持リング102は、磁化されるように構成される材料、または磁性材料を含む磁化部107を備えることができ、それにより、第1の支持リング101および第2の支持リング102に作用する磁化部107からの磁力によって、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成から収縮状態に移行することができる。したがって、磁化部107は、例えば、磁化部107に電磁エネルギーなどのエネルギーを適用し、磁化部107の磁化の程度に影響を与えることによって、磁化されるように構成される材料を含むことができる。例えば、磁化部分107は、磁化されることなく、第1の支持リング101および第2の支持リング102が、第1の構成をとるように、第1の支持リング101および第2の支持リング102の少なくとも一部に接触して配置することができる。次に、エネルギーを適用して、収縮状態に移行するために、磁化吸引力を第1の支持リング101および第2の支持リング102に作用させ(
図6に矢印で模式的に示されているように)、磁化部107を磁化することができる。第1の支持リング101と接触して配置される磁化部107の部分は、第2の支持リング102に配置された磁化部107の部分と比較して異なる磁気極性をとることができ、それによって、両者の間に吸引力が生じる。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、磁化部107を含む材料から少なくとも部分的に形成することができる。あるいは、または、さらに、以下にさらに記載するように、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、磁化要素108、108'、113を受容するように構成することができる。磁化部107を有することによって、第1の支持リングおよび第2の支持リング101、102を、心臓弁への確実な固定のための収縮状態へ容易に移行できるようになる。
【0034】
弁輪形成デバイス100は、磁化されるように構成された材料および/または磁性材料を含む磁化要素108、108'、113を備えることができる。すなわち、磁化要素108、108'、113は、例えば、第1の支持リング101および第2の支持リング102の少なくとも一部と接触して配置されたときなどの、所望の時点で、電磁エネルギーなどのエネルギーを適用することによって、磁化されてもよい。磁化要素108はまた、第1の支持リング101および第2の支持リング102と接触して配置される前に、すでに磁気的に分極されている磁性材料を含むこともできる。したがって、第1の支持リング101および第2の支持リング102の少なくとも一部は、磁化要素108、108'、113を受容して固定するように構成される受容部109を備えることができる。このようにして、磁化要素108、108'、113が受容部109に配置されると、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に作用する、磁化要素108、108'、113からの磁力によって、第1の構成から収縮状態に移行するように構成される。説明するように、磁力は、磁化要素108、108'、113の分極を活性化するためのエネルギーを適用することによって、または既に分極された磁化要素108、108'、113を受容部109に配置することによって、実現され得る。
図7および
図8は、そのような受容部109に配置された磁気要素108、108'、113の模式的な例である。
図7では、磁化要素108、108'は、第1の支持リング101および第2の支持リング102の2つの部分に配置され、反対の磁気分極を有し、それによって、磁場が存在するとき、吸引磁力が第1のリング101および第2のリング102を互いに向かって収縮状態に押す。
【0035】
図8は、模式図であり、ここで、受容部109は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に配置された内部チャネル106を備えることができる。内部チャネル106は、磁化要素113を受容するように構成することができ、これによって、磁化要素113は内部チャネル106に配置され、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に作用する磁化要素113からの磁力によって、第1の構成から収縮状態に移行するように構成される。
【0036】
磁化要素108、108'、113は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に取り外し可能に接続されるように構成できる。したがって、第1の支持リングおよび第2の支持リング101、102が、磁力によって圧縮され、収縮状態になると、例えば、周囲の組織が十分に成長し、治癒したとき、磁化要素108、108'、113を取り外すことが可能であり、これは、例えば、心臓のMRI検査の場合、有利である場合がある。
【0037】
弁輪形成デバイス100は、生分解性抑止ユニット110を備えることができる。第1の支持リング101および第2の支持リング102の少なくとも一部を、抑止ユニット110と係合して、第1のピッチ距離(p1)での離間を維持するように、構成することができる。第1の支持リング101および第2の支持リング102は、抑止ユニット110が生分解すると、第2ピッチ距離(p
2)で、第1の支持リング101と第2の支持リング102とを離間する収縮状態をとるように構成することができる。したがって、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、第2ピッチ距離(p
2)で、収縮状態に対応する緩和されたヒートセット形状を有するように構成することができる。この場合、抑止ユニット110は、
図9aに概略的に示すように、第1の支持リング101および第2の支持リング102に力をかけて離れさせ、第1のピッチ距離(p1)で第1の構成をとるように構成することができる。
図9bに模式的に示されるように、抑止ユニット110が部分的または完全に分解されると、その構造的一体性は、第1の支持リング101および第2の支持リング102を離すのに十分ではなくなり、収縮状態となる。したがって、第1の構成と収縮状態との間の効果的な移行を提供することができる。これにより、第1のピッチ距離(p1)による、組織との望ましくない摩擦または解剖学的構造の部分との絡み合いを回避がもたらされるため、弁の両側でのデバイス100の位置決めも容易になる。抑止ユニット110は生分解性であるとして説明されてきたが、それは他の機構によって取り除かれ得るか、または弱めることもできると考えられる。
【0038】
抑止ユニット110は、
図10aに概略的に示されるように、第1の支持リング101および第2の支持リング102の外部111に取り付けられるように構成することができる。
あるいは、またはさらに、抑止ユニットは、
図10bに概略的に示されるように、第1の支持リング101および第2の支持リング102の内部112に配置されるように構成することもできる。どちらの場合も、抑止ユニット110は、一旦分解すると、第1の支持リング101および第2の支持リング102の上述の圧縮をもたらす。
【0039】
第1の支持リング101および/または第2の支持リング102は、形状記憶材料を含むことができる。この場合、形状記憶材料の活性化により、第1の支持リング101および第2の支持リング102は、第1の構成から収縮状態に移行し、ピッチ距離(p2)が短縮される。形状記憶材料は、活性化温度に応じて収縮状態をとるように構成することができる。デバイス100は、送達カテーテル内に配置されている間(図示せず)、規定の温度に維持することができると考えられる。その後、デバイス100が暖かい組織に曝され、送達カテーテルから排出されると、活性化温度に達し、それによって、第1の支持リング101および第2の支持リング102が互いに向かって圧縮される。
【0040】
第1の支持リング101および/または第2支持リング102は、NiTiNol、または、熱処理手順で規定された形状にヒートセットすることができる別の適切な生体適合性を有する合金などの形状記憶材料を含むことができる。形状記憶材料は、複数の相を有する材料を備えることができ、それによって、上記したように、支持リング101、102の形状を能動的に変化させることができる。形状記憶材料は、外部の相互作用、例えば、デバイス100に伝達され、その形状を変化させることができる、熱および/または電磁エネルギーを提供するようなエネルギー源との相互作用に応じて、所望されるような形状に変化できるような、任意の材料として考えることができる。デバイス100の形状は、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102の曲率の直接の機械的操作によって、例えば、送達デバイスを介して、力またはトルクをデバイス100に伝達することによって、影響を受け得ることも考えられる。言及された様々な形状に影響を及ぼす処置を介して、デバイス100は、カテーテル内の前進のための細長い送達構成と、弁の弁輪に沿ってコイル状構成に配置されたときの初期形状、すなわち第1の構成と、心臓弁の弁輪で固定強度を高めるための、上記の収縮状態のような活性化状態もまた、とることができる。
【0041】
支持リング101、102は、円形、楕円形、菱形、三角形、長方形などの様々な断面を有する、中実のロッドまたは他の中実の細長い構造から形成することができる。支持リング101、102は、上記の断面を有する、中空管または他の中空構造から形成することもできる。支持リング101、102は、異なる材料のいくつかの層、または同じ材料の異なる層を含む、挟まれた積層材料から形成されてもよい。支持リング101、102は、ステントまたはステント状構造、および/または編組材料から形成することができる。支持リング101、102は、互いに編まれた異なる材料の編組から、または同じ材料の編組から形成することができる。上記したように、支持リング101、102は、NiTinol、または別の適切な生体適合性を有する材料から形成することもできる。第1の支持リング101および第2の支持リング102の表面は、他の材料を供することができ、および/または異なる材料で処理することができ、および/または材料が繰り返し曲げられる場合の破壊に対する耐性を高めるように構成することができる。
【0042】
第1の支持リング101および第2の支持リング102は、カテーテル内で前進するための細長い送達構成と、上記の収縮状態での移植形状とを有することができる。
【0043】
欠陥のある心臓弁を修復する方法200を開示する。方法200は、
図2a-bと関連して、
図11aに概略的に示されている。ステップが記載される順序は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、ステップの順序は、特定の手順に応じて変化させることができるものと考えられる。方法200は、弁輪形成デバイス100の第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成で、心臓弁の本来の心臓弁尖の対向する側のコイルとして、配置する配置ステップ201と、弁輪形成デバイスの収縮状態を活性化して、第1の構成における第1の支持リング101と第2の支持リング102との間の第1のピッチ距離(p
1)を、第1ピッチ距離(p1)よりも短い第2ピッチ距離(p
2)へと減少させ、それにより、第1の支持リング101および第2の支持リング102が、互いに向かって動き、本来の心臓弁尖301を挟持する、活性化ステップ202とを含む。
このように、方法200は、弁輪形成デバイス100および
図1~10に関して、上述したように、有利な利点を提供する。このようにして、心臓弁におけるデバイス100の容易でより確実な位置決めが達成される。
【0044】
図11bは、欠陥のある心臓弁を修復する方法200のさらなるフローチャートを示す。方法200のステップが示されている順序は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、方法200のステップが実行される順序は、変更することができるものであると考えられる。方法200は、第1の支持リング101を、第2の支持リング102と、締結ユニット104、104'、114で連結して、それによって、第1の支持リング101および第2の支持リング102が、第1の構成から収縮状態へと移行される連結ステップ203を含むことができる。
【0045】
締結ユニットは、コイル形状ユニット114を備えることができる。方法200は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に対して相対的にコイル形状ユニット114を回転させて、それによって、コイル形状ユニット114が回転すると、コイル形状ユニット114が、第2の支持リング102を第1の支持リング101に向かって押す、回転ステップ204を備えることができる。
【0046】
方法200は、補剛ユニット105を、第1の支持リング101および第2の支持リング102少なくともの一部に配置された内部チャネル106へと挿入して、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成から収縮状態に移行させる、挿入ステップ205を含むことができる。
【0047】
補剛ユニット105は、形状記憶材料を含むことができる。方法200は、形状記憶材料を活性化させて、第1の支持リング101および第2の支持リング102を第1の構成から収縮状態へと-移行する活性化ステップ206を含むことができる。
【0048】
方法200は、第1の補剛ユニット105を内部チャネル106、106'へと挿入し、第1および/または第2の支持リング101、102の剛性を増大させる、挿入ステップ2051を備えることができる。内部チャネルは、単一のチャネルとすることができ、または、
図5c-fに例示されるように、複数のサブルーメン106、106'を含む。方法200は、
図5c-fに関連して上記したように、第2の補剛ユニット105'を内部チャネル106、106'へと挿入して、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102の剛性をさらに増大させる挿入ステップ2052を、さらに含むことができる。このようにして、剛性および関連する第1の支持リング101と第2の支持リング102との間の保持力は、第1補剛ユニット105および第2補剛ユニット105'の挿入によって、段階的に変化させることができる。
【0049】
方法200は、第1の補剛ユニット105を、内部チャネル106、106'へと挿入し、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102との間のピッチ距離を減少させ、例えば、第1の距離に減少する、挿入ステップ2051'を含むことができる。方法200は、第2の補剛ユニット105'を、内部チャネル106、106'へと挿入して、第1の支持リング101および/または第2の支持リング102との間のピッチ距離を、例えば、第2距離にさらに減少させる、挿入ステップ2052'をさらに含むことができる。このように、第1の支持リング101と第2の支持リング102との間の距離を、第1補剛ユニット105および第2補剛ユニット105'の挿入によって、段階的に変化させ、第1の支持リング101と第2の支持リング102との間の保持力を変化させることができる。これより、
図5c-fに関して、さらに説明したような有利な利点がもたらされる。
【0050】
第1の支持リング101および第2の支持リング102は、磁化されるよう構成される材料または磁性材料を備える磁化部107を備えることができる。方法200は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に作用するための、磁化部107からの磁力を適用する適用ステップ208によって、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成から収縮状態へと移行する移行ステップ207を含むことができる。
【0051】
方法200は、磁化要素113を、第1の支持リング101および第2の支持リング102の少なくとも一部に配置された内部チャネル106へと挿入する挿入ステップ209を含むことができる。方法200は、第1の支持リング101および第2の支持リング102に作用するための、磁化要素113からの磁力を適用する適用ステップ211によって、第1の支持リング101および第2の支持リング102を、第1の構成から収縮状態へと移行する移行ステップ210をさらに含むことができる。
【0052】
第1の支持リング101および/または第2支持リング102は、形状記憶材料を含むことができる。方法200は、形状記憶材料を活性化して、第1支持リング101および第2支持リング102を、第1の構成から収縮状態に移行する活性化ステップ212を含むことができる。
【0053】
方法200は、第1の支持リング101および/または第2支持リング102の温度を活性化温度に設定することに応じて、形状記憶材料を活性化する活性化ステップ213を含むことができる。
【0054】
本発明は、特定の実施形態を参照して上記に記載されている。しかしながら、上記以外の他の実施形態は、等しく、本発明の範囲内で可能である。本発明の異なる特徴およびステップは、記載されたもの以外の、他の組み合わせで組み合わされてもよい。発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および形状が例示的なものであることを意味することを容易に理解するであろうし、また、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または形状は、特定の用途、または、本発明の教示が用いられる用途に応じるものであることを容易に理解するであろう。