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<図1>
  • 特許-流体圧シリンダ 図1
  • 特許-流体圧シリンダ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
F15B15/14 355A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021020096
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122695
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊雄
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199950(JP,A)
【文献】特開2019-158068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンが設けられたピストンロッドがシリンダチューブ内に往復動可能に設けられた流体圧シリンダであって、
前記シリンダチューブの端部開口部を閉塞し、前記ピストンロッドが挿通する挿通孔が形成された閉塞部材と、
前記閉塞部材に設けられ、前記ピストンロッドを摺動自在に支持する軸受と、
前記閉塞部材と前記ピストンとの間に区画された圧力室と、を備え、
前記閉塞部材は、前記挿通孔の内周面に形成され前記軸受が収容される軸受収容溝を有し、
前記軸受収容溝は、
前記軸受の外周面が当接する溝底部と、
前記圧力室側への前記軸受の抜けを規制する抜止壁と、を有し、
前記抜止壁は、その高さが前記軸受と前記ピストンロッドとの間のクリアランスよりも大きく、
前記軸受は、圧入によって、前記抜止壁を乗り越えて前記軸受収容溝に収容され、
前記抜止壁には、前記軸受を前記溝底部へガイドする第1テーパ部が形成されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記抜止壁には、前記軸受の端面に対向する第2テーパ部が形成され、
前記第2テーパ部の傾斜角が前記第1テーパ部の傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
ピストンが設けられたピストンロッドがシリンダチューブ内に往復動可能に設けられた流体圧シリンダであって、
前記シリンダチューブの端部開口部を閉塞し、前記ピストンロッドが挿通する挿通孔が形成された閉塞部材と、
前記閉塞部材に設けられ、前記ピストンロッドを摺動自在に支持する軸受と、
前記閉塞部材と前記ピストンとの間に区画された圧力室と、を備え、
前記閉塞部材は、前記挿通孔の内周面に形成され前記軸受が収容される軸受収容溝を有し、
前記軸受収容溝は、
前記軸受の外周面が当接する溝底部と、
前記圧力室側への前記軸受の抜けを規制する抜止壁と、
記抜止壁に対向し、前記軸受の軸方向の移動を規制する規制壁と、を有し、
前記抜止壁は、その高さが前記軸受と前記ピストンロッドとの間のクリアランスよりも大きく、
前記規制壁は、その高さが前記抜止壁の高さよりも大きいことを特徴とする流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストンが締結されたピストンロッドがシリンダチューブ内に往復動可能に設けられた流体圧シリンダであって、シリンダチューブの端部開口部を閉塞するシリンダヘッドを備え、シリンダヘッドの内周面に、軸受がスナップリングによって介装される流体圧シリンダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-199950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の流体圧シリンダでは、軸受をシリンダヘッドの内周面に介装するには、軸受の抜けを防止するためのスナップリングを用いる必要がある。このため、流体圧シリンダを構成する部品点数が多い。また、スナップリングを設けるための溝を別途形成しなければならない。このように、特許文献1に記載の流体圧シリンダでは、軸受の抜けを防止するための構造が複雑である。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡素な構造で軸受の抜けを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ピストンが設けられたピストンロッドがシリンダチューブ内に往復動可能に設けられた流体圧シリンダであって、シリンダチューブの端部開口部を閉塞し、ピストンロッドが挿通する挿通孔が形成された閉塞部材と、閉塞部材に設けられ、ピストンロッドを摺動自在に支持する軸受と、閉塞部材とピストンとの間に区画された圧力室と、を備え、閉塞部材は、挿通孔の内周面に形成され軸受が収容される軸受収容溝を有し、軸受収容溝は、軸受の外周面が当接する溝底部と、圧力室側への軸受の抜けを規制する抜止壁と、を有し、抜止壁は、その高さが軸受とピストンロッドとの間のクリアランスよりも大きく、軸受は、圧入によって、抜止壁を乗り越えて軸受収容溝に収容され、抜止壁には、軸受を溝底部へガイドする第1テーパ部が形成されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、圧力室側への軸受の抜けを規制する抜止壁の高さが、軸受とピストンロッドとの間のクリアランスよりも大きいため、軸受が抜止壁を乗り越えて軸受収容溝から抜けることが防止される。したがって、スナップリングを用いることなく、簡素な構成で軸受の抜けを防止することができる。また、軸受は、第1テーパ部によってガイドされながらスムーズに軸受収容溝に圧入されるので、軸受の装着性が向上する。
【0010】
また、本発明は、抜止壁には、軸受の端面に対向する第2テーパ部が形成され、第2テーパ部の傾斜角が第1テーパ部の傾斜角よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、第2テーパ部が形成されない軸受収容溝に比べ、閉塞部材の加工性が向上する。また、第2テーパ部の傾斜角を第1テーパ部の傾斜角よりも大きくすることにより、軸受が抜けにくくなる。
【0012】
また、本発明は、ピストンが設けられたピストンロッドがシリンダチューブ内に往復動可能に設けられた流体圧シリンダであって、シリンダチューブの端部開口部を閉塞し、ピストンロッドが挿通する挿通孔が形成された閉塞部材と、閉塞部材に設けられ、ピストンロッドを摺動自在に支持する軸受と、閉塞部材とピストンとの間に区画された圧力室と、を備え、閉塞部材は、挿通孔の内周面に形成され軸受が収容される軸受収容溝を有し、軸受収容溝は、軸受の外周面が当接する溝底部と、圧力室側への軸受の抜けを規制する抜止壁と、抜止壁に対向し、前記軸受の軸方向の移動を規制する規制壁と、を有し、抜止壁は、その高さが軸受とピストンロッドとの間のクリアランスよりも大きく、規制壁は、その高さが抜止壁の高さよりも大きいことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、圧力室側への軸受の抜けを規制する抜止壁の高さが、軸受とピストンロッドとの間のクリアランスよりも大きいため、軸受が抜止壁を乗り越えて軸受収容溝から抜けることが防止される。したがって、スナップリングを用いることなく、簡素な構成で軸受の抜けを防止することができる。また、軸受の軸方向の位置を規制する規制壁の高さを抜止壁の高さよりも大きくすることにより、抜止壁の高さを低くすることができるので、軸受を軸受収容溝に圧入して装着する際の軸受の変形量を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素な構造で軸受の抜けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダの断面図である。
図2図1における一点鎖線で囲まれた部分Aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧シリンダについて説明する。以下では、流体圧シリンダが作動油を作動流体として駆動する油圧シリンダ100である場合について説明する。図1は、油圧シリンダ100のシリンダヘッド40周辺の断面図である。
【0018】
油圧シリンダ100は、建設機械や産業機械に搭載されるアクチュエータとして用いられるものである。例えば、油圧シリンダ100は、油圧ショベルに搭載されるアームシリンダとして用いられ、油圧シリンダ100が伸縮作動することによって、油圧ショベルのアームが回動する。
【0019】
図1に示すように、油圧シリンダ100は、筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10内に摺動自在に挿通されシリンダチューブ10内を圧力室としてのロッド側室11と反ロッド側室12とに仕切るピストン20と、一端にピストン20が連結され他端がシリンダチューブ10の外部へと延在しシリンダチューブ10内を往復動するピストンロッド30と、シリンダチューブ10の端部開口部を閉塞する閉塞部材としてのシリンダヘッド40と、を備える。
【0020】
シリンダチューブ10の内部は、ピストン20によって圧力室としてのロッド側室11と反ロッド側室12との2つの流体圧室に仕切られる。油圧シリンダ100は、油圧源からロッド側室11又は反ロッド側室12に導かれる作動油圧により軸方向に沿って伸縮作動する。なお、作動油としてオイルの代わりに例えば水溶性代替液等の作動流体を用いてもよい。
【0021】
シリンダヘッド40は、ピストンロッド30が挿通する挿通孔41が貫通して形成された略円筒状の部材である。シリンダヘッド40は、ボルト39を介してシリンダチューブ10の端部に形成されたフランジ部10aに結合される。
【0022】
挿通孔41の内周面には、軸受55、サブシール56、メインシール57及びダストシール58が、外側に向かってこの順に並んで設けられる。これらはピストンロッド30の外周面に摺接し、特に軸受55はピストンロッド30をシリンダチューブ10の軸方向に摺動自在に支持する。また、軸受55は合金等の金属に樹脂を分散させた混合材質からなる円筒状の軸受であるため、一定の可撓性を有する。
【0023】
また、シリンダヘッド40には、ロッド側室11に対して作動油を給排する給排ポート42が設けられる。給排ポート42の一端は、挿通孔41の内周面に開口しており、給排ポート42の他端は、シリンダヘッド40の外面に開口している。給排ポート42の他端には図示しない油圧配管が接続され、油圧配管は切換弁を通じて油圧源又はタンクに接続される。
【0024】
また、シリンダヘッド40には、シリンダチューブ10のフランジ部10aの内周面に嵌合する円筒部45が設けられる。円筒部45の外周面には、シリンダチューブ10とシリンダヘッド40との間をシールするOリング59が設けられる。円筒部45の先端面は、油圧シリンダ100が最も伸長した際にピストン20が当接し、ピストン20及びピストンロッド30の移動を規制する規制面として機能する。
【0025】
また、挿通孔41は、後述のクッションリング34が進入可能な第1挿通孔41aと、第1挿通孔41aよりも内径が小さい第2挿通孔41bと、を有する。第1挿通孔41aは、円筒部45側に設けられ、第2挿通孔41bは、給排ポート42を挟んで第1挿通孔41aとは反対側に設けられる。
【0026】
ピストンロッド30は、先端部に形成されピストン20が締結される小径部31と、小径部31よりも外径が大きくシリンダヘッド40により摺動支持される大径部32と、小径部31と大径部32の間に形成され径方向外側にクッションリング34が配置される中径部33と、を有する。中径部33の外径及びクッションリング34の内径は、大径部32及びピストン20の外径よりも小さく設定されているため、クッションリング34がピストンロッド30から抜け出ることはない。
【0027】
クッションリング34は、シリンダヘッド40の第1挿通孔41aに進入可能な外径を有する筒状部材であり、油圧シリンダ100が最も伸長した状態に至る際にピストンロッド30の移動速度を減速させるために設けられる。
【0028】
次に、上記構成の油圧シリンダ100の作動について説明する。
【0029】
反ロッド側室12に油圧源が連通し、ロッド側室11にタンクが連通すると、反ロッド側室12に作動油が供給され、ロッド側室11の作動油が給排ポート42を通じてタンクへと排出される。これにより、ピストンロッド30が図1の左方向に移動して油圧シリンダ100は伸長作動する。
【0030】
油圧シリンダ100が伸長する際にクッションリング34が第1挿通孔41aに進入するまでは、ロッド側室11の作動油は、大径部32の外周面と第1挿通孔41aの内周面との間に形成される比較的断面積が大きい通路を通じて給排ポート42へ導かれる。このため、ピストンロッド30は、比較的早い速度で移動可能である。
【0031】
油圧シリンダ100がさらに伸長し、クッションリング34が第1挿通孔41aに進入すると、ロッド側室11の作動油は、クッションリング34の内周面と中径部33の外周面との間及びクッションリング34の外周面と第1挿通孔41aの内周面との間に形成される比較的断面積が小さい通路を通じて給排ポート42へ導かれることになる。
【0032】
このように、給排ポート42とロッド側室11とを連通する通路の断面積が小さいと、給排ポート42へ向かう作動油の流れに抵抗が付与され、結果として、ロッド側室11の圧力が上昇し、ピストンロッド30の移動速度は遅くなる。
【0033】
また、クッションリング34が第1挿通孔41aに進入するにつれて、給排ポート42とロッド側室11とを連通する通路の断面積は徐々に小さくなるため、ピストンロッド30の移動速度はさらに遅くなる。このようにして、クッションリング34によるクッション作用が発揮され、ピストン20がシリンダヘッド40に勢いよく衝突してしまうことが防止される。
【0034】
一方、ロッド側室11に油圧源が連通し、反ロッド側室12にタンクが連通すると、ロッド側室11に給排ポート42を通じて作動油が供給され、反ロッド側室12の作動油がタンクへと排出される。これにより、ピストンロッド30が図1の右方向に移動して油圧シリンダ100は収縮作動する。
【0035】
次に、図1及び図2を参照して、第2挿通孔41bについて説明する。
【0036】
図1及び図2に示すように、第2挿通孔41bの内周面には、軸受収容溝51、サブシール収容溝52、メインシール収容溝53及びダストシール収納溝54が外側に向かってこの順に並んで形成される。軸受55、サブシール56、メインシール57及びダストシール58は、それぞれ軸受収容溝51、サブシール収容溝52、メインシール収容溝53及びダストシール収納溝54に収容(装着)される。サブシール56、メインシール57及びダストシール58は、ピストンロッド30の外周面に摺接する。
【0037】
図2に示すように、軸受収容溝51は、軸方向に沿って延在して形成される溝底部511と、溝底部511における軸方向の一方側に設けられ軸受収容溝51を区画する抜止壁512と、溝底部511における軸方向の他方側に設けられ軸受収容溝51を区画する規制壁513と、を有する。
【0038】
溝底部511は、その直径が軸受55の外径とほぼ等しくなるように形成される。これにより、軸受55が軸受収容溝51に収容された状態において、軸受55の外周面は溝底部511に当接する。また、溝底部511は、その直径が第1挿通孔41aの内径よりも小さくなるように形成される。すなわち、第1挿通孔41aは、その内径が軸受55の外径よりも大きくなるように形成される。これにより、軸受55は、圧入されることなく、スムーズに第1挿通孔41aを通過して第2挿通孔41bに入り込むことができる。
【0039】
抜止壁512は、ロッド側室11側への軸受55の抜けを防止するための環状の壁部である。抜止壁512は、溝底部511から径方向に沿って軸線Oに向かって突出して形成される。シリンダヘッド40にピストンロッド30の大径部32が挿通されていない状態において、軸受55は、圧入によって、抜止壁512を乗り越えて軸受収容溝51に収容される。
【0040】
そして、シリンダヘッド40にピストンロッド30の大径部32が挿通された状態において、抜止壁512は、その高さh1が軸受収容溝51に収容された軸受55とピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc1よりも大きい(図2参照)。具体的には、クリアランスc1とは、軸受55の内周面と大径部32の外周面との間の径方向の寸法である。
【0041】
すなわち、シリンダヘッド40にピストンロッド30の大径部32が挿通された状態において、抜止壁512は、その頂点512cとピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc3が軸受55の厚さd(すなわち、軸受55の内周面と軸受55の外周面との間の寸法)よりも小さい(図2参照)。これにより、軸受55は、抜止壁512の頂点512cとピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc3を通過することがないので、軸受55は、抜止壁512を乗り越えて軸受収容溝51から抜けることがない。
【0042】
また、抜止壁512は、その高さh1(すなわち、溝底部511からの抜止壁512の突出量)が軸受55の厚さdよりも小さい。これにより、抜止壁512の高さを低くすることができるので、圧入時の軸受55の変形量を小さく抑えることができる。
【0043】
抜止壁512は、軸受55を溝底部511へガイドする第1テーパ部512aと、軸受55の端面55aに対向する第2テーパ部512bと、を有する。なお、本実施形態では、第1テーパ部512aは、軸方向において、第2テーパ部512bと直接に連続しているが、これに限定されるものではなく、例えば、軸方向に沿って延在する平坦部を介して第2テーパ部512bと間接に連続するようにしてもよい。
【0044】
第1テーパ部512aは、ピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスが外側(反ピストン側)に向かって次第に小さくなるように形成される。これにより、軸受55は、第1テーパ部512aによってガイドされながらスムーズに軸受収容溝51に圧入される。なお、軸受55の圧入しやすさを向上させる観点から、第1テーパ部512aの傾斜角αを60°以下にすることが好ましく、45°以下にすることがより好ましく、30°以下にすることが更に好ましい。なお、本実施形態では、第1テーパ部512aの傾斜角αは、20°である。第1テーパ部512aの端部512dにおける内径は、溝底部511の内径よりも大きい。これにより、軸受55を軸受収容溝51に挿入しやすくなる。
【0045】
一方、第2テーパ部512bは、ピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスが外側に向かって次第に大きくなるように形成される。これにより、第2テーパ部512bが形成されない軸受収容溝51に比べ、シリンダヘッド40の加工がしやすくなる。なお、軸受55を抜けにくくする観点から、第2テーパ部512bの傾斜角βを第1テーパ部512aの傾斜角αよりも大きくすることが好ましい。なお、本実施形態では、第2テーパ部512bの傾斜角βは、30°である。
【0046】
規制壁513は、抜止壁512に対向し、軸受55の軸方向の移動を規制するための環状の壁部である。規制壁513は、溝底部511から径方向に沿って軸線Oに向かって突出して形成される。規制壁513は、その高さh2(すなわち、溝底部511からの規制壁513の突出量)が抜止壁512の高さh1よりも大きい(図2参照)。これにより、抜止壁512の高さを低くすることができるので、圧入時の軸受55の変形量を小さく抑えることができる。
【0047】
そして、シリンダヘッド40にピストンロッド30の大径部32が挿通された状態において、規制壁513は、ピストンロッド30の大径部32と当接しない。規制壁513とピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc2は、軸受55とピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc1と等しい(図2参照)。
【0048】
すなわち、シリンダヘッド40にピストンロッド30の大径部32が挿通された状態において、規制壁513は、ピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc2が軸受55の厚さdよりも小さい(図2参照)。これにより、軸受55は、規制壁513とピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc2を通過することができないため、軸受55は、規制壁513を乗り越えて軸受収容溝51から抜けることがない。
【0049】
以下、本発明の実施形態の構成、作用及び効果をまとめて説明する。
【0050】
本実施形態に係る油圧シリンダ100は、ピストン20が設けられたピストンロッド30がシリンダチューブ10内に往復動可能に設けられた油圧シリンダ100であって、シリンダチューブ10の端部開口部を閉塞し、ピストンロッド30が挿通する挿通孔41が形成されたシリンダヘッド40と、シリンダヘッド40に設けられ、ピストンロッド30を摺動自在に支持する軸受55と、シリンダヘッド40とピストン20との間に区画されたロッド側室11と、を備える。シリンダヘッド40は、挿通孔41の内周面に形成され軸受55が収容される軸受収容溝51を有する。軸受収容溝51は、軸受55の外周面が当接する溝底部511と、ロッド側室11側への軸受55の抜けを規制する抜止壁512と、を有し、抜止壁512は、その高さが軸受55とピストンロッド30との間のクリアランスよりも大きい。
【0051】
この構成によれば、軸受収容溝51は、シリンダヘッド40の挿通孔41の内周面に形成されるので、シリンダヘッド40の挿通孔41にピストンロッド30が挿通されていない状態において、軸受55は、圧入によって軸受収容溝51に収容される。また、ロッド側室11側への軸受55の抜けを規制する抜止壁512の高さh1が、軸受55とピストンロッド30との間のクリアランスc1よりも大きいため、シリンダヘッド40の挿通孔41にピストンロッド30が挿通された状態において、軸受55は、抜止壁512を乗り越えて軸受収容溝51から抜けることがない。したがって、スナップリングを用いることなく、簡素な構成で軸受55の抜けを防止することができる。
【0052】
また、本実施形態において、軸受55は、圧入によって、抜止壁512を経由して軸受収容溝51に収容され、抜止壁512には、軸受55を溝底部511へガイドする第1テーパ部512aが形成される。
【0053】
この構成によれば、軸受55は、第1テーパ部512aによってガイドされながらスムーズに軸受収容溝51に圧入されるので、軸受55の装着性が向上する。
【0054】
また、本実施形態において、抜止壁512には、軸受55の端面に対向する第2テーパ部512bが形成され、第2テーパ部512bの傾斜角βが第1テーパ部512aの傾斜角αよりも大きい。
【0055】
この構成によれば、第2テーパ部512bが形成されない軸受収容溝51に比べ、シリンダヘッド40の加工性が向上する。また、第2テーパ部512bの傾斜角βを第1テーパ部512aの傾斜角αよりも大きくすることにより、軸受55が抜けにくくなる。
【0056】
また、本実施形態において、軸受収容溝51は、抜止壁512に対向し、軸受55の軸方向の移動を規制する規制壁513をさらに有し、規制壁513は、その高さh2が抜止壁512の高さh1よりも大きい。これによれば、抜止壁512の高さを低くすることができるので、圧入時の軸受55の変形量を小さく抑えることができる。
【0057】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0058】
(変形例)
上記実施形態では、抜止壁512は、環状の全周に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、環状の一部に形成されてもよいし、環状に所定の間隔を空けて形成される複数のものであってもよい。
【0059】
上記実施形態では、抜止壁512は、第1テーパ部512a及び第1テーパ部512aに連続する第2テーパ部512bが形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2テーパ部512bが形成されず、第1テーパ部512aのみが形成されてもよい。この場合、第1テーパ部512a及び第2テーパ部512bが形成される抜止壁512に比べ、第2テーパ部512bを形成するためのスペースを省くことができるので、軸受収容溝51の軸方向の小型化を図ることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、規制壁513は、ピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc2が軸受55とピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc1と等しくなるように設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、ピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc2が軸受55とピストンロッド30の大径部32との間のクリアランスc1よりも大きくなるように設けられてもよい。この場合、規制壁513とピストンロッド30の大径部32とが当接することを防止することができる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・シリンダチューブ、20・・・ピストン、30・・・ピストンロッド、40・・・シリンダヘッド(閉塞部材)、51・・・軸受収容溝、55・・・軸受、511・・・溝底部、512・・・抜止壁、513・・・規制壁、512a・・・第1テーパ部、512b・・・第2テーパ部、100・・・油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
図1
図2