(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】抵抗溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/20 20060101AFI20241224BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20241224BHJP
F16B 19/06 20060101ALI20241224BHJP
B23K 103/20 20060101ALN20241224BHJP
【FI】
B23K11/20
B23K11/11 520
B23K11/11 540
F16B19/06
B23K103:20
(21)【出願番号】P 2021047557
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 励一
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-201679(JP,A)
【文献】特開2009-285678(JP,A)
【文献】特開2008-284570(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0022498(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
F16B 5/04
F16B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部及び軸部を有し、鉄系金属からなるエレメントを用いて、非鉄金属からなる第1部材と、鉄系金属からなる第2部材と、を接合する抵抗溶接方法であって、
前記軸部を前記第1部材に当接させて、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材の順に重ね合わせる工程と、
一対の電極により、前記エレメント、前記第1部材及び前記第2部材を挟持して加圧するとともに、前記一対の電極のうち少なくとも前記エレメントに近い側の電極の周囲に配置された外部加圧治具により、前記エレメン
トを加圧する工程と、
前記一対の電極及び前記外部加圧治具による加圧を維持しながら、前記一対の電極の通電により前記第1部材を溶融させ、更に前記エレメントを前記第1部材に貫通させて、前記エレメント及び前記第2部材を溶接する工程と、
を備えることを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項2】
前記外部加圧治具により、前記エレメン
トを加圧する際の加圧力は、前記一対の電極により前記エレメント、前記第1部材及び前記第2部材を挟持して加圧する際の加圧力よりも大きい、請求項1に記載の抵抗溶接方法。
【請求項3】
頭部及び軸部を有し、鉄系金属からなるエレメントを用いて、非鉄金属からなる第1部材と、鉄系金属からなる第2部材と、鉄系金属からなる第3部材と、を接合する抵抗溶接方法であって、
前記軸部を前記第1部材に当接させて、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材、前記第3部材の順に重ね合わせる工程と、
一対の電極により、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材を挟持して加圧するとともに、前記一対の電極のうち、少なくとも前記エレメントに近い側の電極の周囲に配置された外部加圧治具により、前記エレメン
トを加圧する工程と、
前記一対の電極及び前記外部加圧治具による加圧を維持しながら、前記一対の電極の通電により前記第1部材を溶融させ、更に前記エレメントを前記第1部材に貫通させて、前記エレメント、前記第2部材及び前記第3部材を溶接する工程と、
を備えることを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項4】
前記外部加圧治具により、前記エレメン
トを加圧する際の加圧力は、前記一対の電極により前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材を挟持して加圧する際の加圧力よりも大きい、請求項3に記載の抵抗溶接方法。
【請求項5】
前記外部加圧治具は、前記一対の電極におけるそれぞれの周囲に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の抵抗溶接方法。
【請求項6】
前記外部加圧治具により、前記エレメント及び前記第1部材の両方を加圧する、請求項1~5のいずれか1項に記載の抵抗溶接方法。
【請求項7】
前記外部加圧治具は、前記エレメントの頭部における、前記軸部よりも径方向外側の部分を加圧する、請求項1~6のいずれか1項に記載の抵抗溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接方法に関し、特に、非鉄金属からなる部材と鉄系金属からなる部材との異種金属同士を接合する抵抗溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムやマグネシウムなどの非鉄金属と鉄系金属との接合は、従来用いられているスポット溶接で直接接合することが困難であり、SPR(Self-Piercing Riveted)などのリベットによる機械締結で接合する手法が一般的に用いられる。近年、非鉄金属の一部をフランジ付鋼製リベット(以下、「エレメント」という。)により鉄系金属に置換し、エレメントと鉄系金属とを抵抗溶接することで、間接的に異種金属同士を接合する手法が提案されている。特に、生産性の観点から、エレメントによる置換と鉄系金属との接合を一工程で行う手法が注目されている。
【0003】
エレメントによる置換と鉄系金属との接合を一工程で行う手法として、例えば特許文献1には、頭部と、頭部に一端部が連結された軸部と、頭部の軸部側の面に形成された溝部と、を有するリベット(上記「エレメント」に相当)を、加圧通電しながら第1部材から突出させ、加熱軟化又は溶解した第1部材を溝部に流入させながら、軸部を第1部材に挿入してリベットと第2部材を接合する異種接合部材の製造方法が開示されている。そして、当該製造方法によれば、溶解した第1部材がリベットの周囲に流れ出すことを抑制し、バリの発生を抑制できるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、第2部材上に第1部材を重ね合わせ、第1部材の上にリベットを設置し、電極チップによりリベット及び第2部材に対して加圧及び通電し、第一の工程にて抵抗発熱によりリベットを第1部材へ貫入させ、第二の工程にてリベット-第2部材間に溶融部を形成する異材接合方法が開示されている。そして、当該接合方法によれば、接合時にエアを吹きつけることで溶融金属がリベットからはみ出すことを防止できるとされている。
【0005】
さらに、特許文献3には、無加熱で、溶接時の第2圧力より大きい圧力とした第1圧力により、鋼材とは異なる材料から構成された第2部品の表面側からボタン部品(上記「エレメント」に相当)を押し込んだ後、第2圧力とし、貫通させたボタン部品の先端部と、鋼材からなる第1部品とを、抵抗スポット溶接により溶接する接合方法が開示されている。そして、当該接合方法によれば、コストの上昇を招くことなく、鋼材からなる構造体に対してアルミニウム材料などの異種金属材料の構造体がより高い強度で接合できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-43258号公報
【文献】特開2020-69499号公報
【文献】特開2018-61968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記特許文献1~3に示すような従来の手法では、エレメント及び鉄系金属間において所望の(すなわち、高強度の)溶融部が形成されにくく、その一方で、所望の溶融部を形成するためには大入熱の通電が必要であり、その場合にあっては溶接不良が多発するおそれがあることがわかった。
【0008】
具体的に、例えば、特許文献1及や2に開示されている異種接合方法は、加熱軟化又は溶解した第1部材内に、溝部を有するリベットが挿入されることにより、加熱軟化又は溶解した第1部材を該溝部に流入させながら、該軸部を第1部材に挿入することで、リベットと第2部材をスポット溶接するものであるが、加熱軟化又は溶解した第1部材が該溝部に流入することにより、リベットが上方へ押し上げられることで、リベットと第2部材において所望とする溶融部の形成が阻害されるおそれがあることがわかった。
【0009】
また、特許文献3に開示されている接合方法は、無加熱の状態で、鋼材とは異なる材料から構成された第2部品の表面側からボタン部品を強制的に押し込むものであるため、ボタン部品の周囲の第2部品が上方に反ってしまうことで、溶接時にボタン部品が上方へ押し上げられやすく、ボタン部品と第1部品において所望とする溶融部の形成が阻害されるおそれがあることもわかった。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄系金属からなるエレメントと鉄系金属からなる部材との間で、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成して、溶接不良を防止できる抵抗溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の上記目的は、抵抗溶接方法に係る下記[1]又は[2]の構成により達成される。
【0012】
[1] 頭部及び軸部を有し、鉄系金属からなるエレメントを用いて、非鉄金属からなる第1部材と、鉄系金属からなる第2部材と、を接合する抵抗溶接方法であって、
前記軸部を前記第1部材に当接させて、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材の順に重ね合わせる工程と、
一対の電極により、前記エレメント、前記第1部材及び前記第2部材を挟持して加圧するとともに、前記一対の電極のうち少なくとも前記エレメントに近い側の電極の周囲に配置された外部加圧治具により、前記エレメント及び前記第1部材のうち少なくとも一方を加圧する工程と、
前記一対の電極及び前記外部加圧治具による加圧を維持しながら、前記一対の電極の通電により前記第1部材を溶融させ、更に前記エレメントを前記第1部材に貫通させて、前記エレメント及び前記第2部材を溶接する工程と、
を備えることを特徴とする抵抗溶接方法。
【0013】
[2] 頭部及び軸部を有し、鉄系金属からなるエレメントを用いて、非鉄金属からなる第1部材と、鉄系金属からなる第2部材と、鉄系金属からなる第3部材と、を接合する抵抗溶接方法であって、
前記軸部を前記第1部材に当接させて、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材、前記第3部材の順に重ね合わせる工程と、
一対の電極により、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材を挟持して加圧するとともに、前記一対の電極のうち、少なくとも前記エレメントに近い側の電極の周囲に配置された外部加圧治具により、前記エレメント及び前記第1部材のうち少なくとも一方を加圧する工程と、
前記一対の電極及び前記外部加圧治具による加圧を維持しながら、前記一対の電極の通電により前記第1部材を溶融させ、更に前記エレメントを前記第1部材に貫通させて、前記エレメント、前記第2部材及び前記第3部材を溶接する工程と、
を備えることを特徴とする抵抗溶接方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抵抗溶接方法によれば、電極の周囲に配置された外部加圧治具により、溶接時において、エレメント又及び非鉄金属からなる部材の少なくとも一方を加圧することにより、溶接の際に溶融した非鉄金属からなる部材がエレメントを押し上げるのを抑制するため、鉄系金属からなるエレメントと鉄系金属からなる部材との間で、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成して、溶接不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
図1(a)は、エレメント、第1部材、第2部材の順に重ね合わせ、一対の電極によりエレメント、第1部材及び第2部材を挟持して加圧するとともに、一対の電極におけるそれぞれの周囲に配置された外部加圧治具により、エレメントを加圧する状態を示す概略断面図である。また、
図1(b)は、一対の電極間における通電により、エレメントと第2部材を溶接した状態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、一例であるエレメントの斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、外部加圧治具に係る構成の第1例を示す斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、外部加圧治具に係る構成の第2例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、溶接時における、経過時間に対する加圧力及び溶接電流の関係の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
図5(a)は、エレメント、第1部材、第2部材の順に重ね合わせ、一対の電極によりエレメント、第1部材及び第2部材を挟持して加圧するとともに、一対の電極のうちエレメントに近い側の電極の周囲にのみ配置された外部加圧治具により、エレメントを加圧する状態を示す概略断面図である。また、
図5(b)は、一対の電極間における通電により、エレメントと第2部材を溶接した状態を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
図6(a)は、エレメント、第1部材、第2部材の順に重ね合わせ、一対の電極によりエレメント、第1部材及び第2部材を挟持して加圧するとともに、一対の電極におけるそれぞれの周囲に配置された外部加圧治具により、エレメントの頭部の周囲における第1部材を加圧する状態を示す概略断面図である。また、
図6(b)は、一対の電極間における通電により、エレメントと第2部材を溶接した状態を示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
図7(a)は、エレメント、第1部材、第2部材の順に重ね合わせ、一対の電極によりエレメント、第1部材及び第2部材を挟持して加圧するとともに、一対の電極におけるそれぞれの周囲に配置された外部加圧治具により、エレメント、及びエレメントの頭部の周囲における第1部材の両方を加圧する状態を示す概略断面図である。また、
図7(b)は、一対の電極間における通電により、エレメントと第2部材を溶接した状態を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、第5実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
図8(a)は、エレメント、第1部材、第2部材、第3部材の順に重ね合わせ、一対の電極によりエレメント、第1部材、第2部材及び第3部材を挟持して加圧するとともに、一対の電極におけるそれぞれの周囲に配置された外部加圧治具により、エレメントを加圧する状態を示す概略断面図である。また、
図8(b)は、一対の電極間における通電により、エレメント、第2部材及び第3部材を溶接した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る抵抗溶接方法の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る抵抗溶接方法について、
図1~4を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
【0018】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、
図1に示すように、アルミニウムやマグネシウムなどの非鉄金属からなる第1部材20と、鉄系金属からなる第2部材30とを重ね合わせ、鉄系金属からなるエレメント40を用いて接合することで、異材溶接継手10を形成する抵抗溶接方法である。なお、以下の説明では、エレメント40、第1部材20、第2部材30の順に重ね合わされた積層体において、エレメント40側を「上側」、第2部材30側を「下側」とする。
【0019】
本実施形態で使用される第1部材20及び第2部材30は、その板厚が、それぞれt1、t2の平板状部材であり、穴あけやリベット打込みなどの前処理は施されていない。
なお、第1部材20の材質は、純鉄や鉄合金を含む鉄系材料であれば、特に制限されるものでなく、例えば、軟鋼、炭素鋼、ステンレス鋼などが例として挙げられる。また、第2部材30の材質は、上記鉄系金属よりも低融点の非鉄金属であれば、特に制限されるものでなく、例えば、純アルミニウム、純マグネシウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金などが例として挙げられる。
【0020】
エレメント40は、鉄系金属からなり、
図2に一例として示すように、略円盤状の頭部41と、頭部41の一方の面から突出するように形成された略円錐台形状の軸部42と、頭部41の一方の面における外縁部近傍に設けられた環状突起部43と、軸部42と環状突起部43の間に形成された環状の溝部44と、を備える。
【0021】
図2に示すように、頭部41の直径D
hは、軸部42の根元の直径D
sより大きく形成されている。このように、エレメント40をその断面視(
図1で示すエレメント40を参照)で略T字状に形成することで、溶接完了後に、第2部材30とエレメント40の頭部41によって挟持される第1部材20への拘束力を高めることができる。
【0022】
軸部42は、根元から先端部に向かって先細りの略円錐台形状であり、これにより、エレメント40が後述する抵抗溶接の際に、第1部材20への進入が容易になる。
また、溝部44は、抵抗溶接の際に、溶融した第1部材20が流れ込む貯留部として作用する。なお、
図1に示すように、環状突起部43の下面から軸部42の先端までの長さLは、第1部材20の厚さt
1以上に設計されている。これにより、後述するように、第1部材20を挟持した状態で、エレメント40の軸部42と第2部材30とが当接することができ、これら部材の間で確実に溶接を行うことができる。
【0023】
頭部41の形状は、特に限定されず、丸頭、平頭、皿頭、更には、必要に応じて多角形形状なども採用することができる。また、軸部42の形状も、
図2に示すような円錐台形状に限定されず、円柱状、円錐形状などであってもよい。
【0024】
エレメント40の材質は、純鉄や鉄合金を含む鉄系材料であれば、特に制限されるものでなく、例えば、軟鋼、炭素鋼、ステンレス鋼などが例として挙げられる。
【0025】
一対の電極50は、抵抗スポット溶接用電極であり、エレメント40、第1部材20及び第2部材30を介して、互いに対向配置された上側電極51と下側電極52とを備える。
【0026】
さらに、一対の電極50のそれぞれの周囲には、エレメント40、第1部材20及び第2部材30を介して、上下に対向配置された一対の外部加圧治具60が配置されている。外部加圧治具60は、上側電極51の周囲に配置された、略円環状の上側外部加圧治具61と、下側電極52の周囲に配置された、略円環状の下側外部加圧治具62とを備える。
なお、上側外部加圧治具61は、
図3Aに示すような円環状(例えば同心円断面パイプ)として全周を加圧する構成に限定されず、例えば、図示は省略するが周方向で複数に分割されて多点で加圧する構成とされてもよく、又は
図3Bに示すようなアーム状の構成であってもよい。また、下側外部加圧治具62についても、上記した上側外部加圧治具61の場合と同様である。
【0027】
続いて、異材溶接継手10の抵抗溶接方法について、
図1及び
図4を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、まず、
図1(a)に示すように、異材溶接継手10の構成部材である第1部材20と第2部材30とを重ね合わせ、更にエレメント40の軸部42を第1部材20に当接させて、溶接前の状態とする。
【0029】
次に、上側電極51及び上側外部加圧治具61を、それぞれエレメント40の頭部41上面に当接させるとともに、下側電極52及び下側外部加圧治具62を、それぞれ第2部材30の下面に当接させて、一対の電極50及び一対の外部加圧治具60により、第1部材20を介してエレメント40と第2部材30とを挟持する。
なお、上側外部加圧治具61におけるエレメント40との当接部分は、エレメント40における軸部42よりも径方向外側の部分、換言すれば、環状突起部43又は溝部44に相当する部分であることが好ましい。これにより、エレメント40における環状突起部43又は溝部44を上側から押さえることができ、後述するように、エレメント40が第1部材20へ進入する際に、第1部材20の変形に伴う反発力が生じる作用や、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用により、エレメント40が押し上げられるのをより効果的に抑制することができる。
【0030】
続いて、上側電極51を加圧力F1で加圧するとともに、本実施形態では特に上側外部加圧治具61を加圧力F1より大きな加圧力F2で加圧して、エレメント40、第1部材20及び第2部材30を加圧する。
【0031】
本実施形態では、上側外部加圧治具61の加圧力F
2は、上側電極51の加圧力F
1より大きいとして説明したが、加圧力F
1と加圧力F
2の大きさは、溶接条件に応じて変更可能であり、加圧力F
1が加圧力F
2より大きくてもよく、また同じ大きさであってよい。なお、
図4では、加圧力F
1=加圧力F
2の例を示している。
【0032】
そして、
図4に示すように、所定のスクイズ時間T
1で保持させた後、一対の電極50(上側電極51及び下側電極52)及び一対の外部加圧治具60(上側外部加圧治具61及び下側外部加圧治具62)による加圧を維持しながら、一対の電極50間に、本溶接時の第2電流I
2より小さな第1電流I
1を流して(第一通電)、エレメント40や第2部材30よりも溶融温度が低い第1部材20を溶融させ、溶融池(図示せず)を形成する。
【0033】
これにより、加圧力F
1及びF
2の合計の力で加圧されるエレメント40は、その軸部42が第1部材20の溶融池内に進入し、第1部材20を貫通するまで下側に移動し、軸部42の先端が第2部材30に当接する。なお、
図4に示すように、最初は小さな第1電流I
1で通電するようにしたのは、最初から大きな電流で通電させると、第1部材20が一気に溶融して液滴が周囲に飛散するそれがあるためである。また、エレメント40の軸部42が第1部材20の溶融池内に進入することで、溶融池から溢れた液滴は、エレメント40の環状の溝部44に収容され、バリの発生が抑制される。
【0034】
ここで、エレメント40が第1部材20へ進入する際に、第1部材20の変形に伴う反発力が生じる作用や、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用により、軸部42の先端が第2部材30から離間する方向(すなわち、
図1において上方向)の力が作用する。すなわち、溶接の際に溶融した第1部材20により、エレメントを押し上げようとする力が働く。しかし、エレメント40は、上側電極51と下側電極52により挟持されて加圧されているだけでなく、その周囲に配置された上側外部加圧治具61と下側外部加圧治具62により挟持されて加圧された状態であるため、エレメント40が押し上げられるのが抑制され、溶接時において軸部42の先端と第2部材30との当接状態は良好に維持される。特に、本実施形態において、上側外部加圧治具61は、エレメント40における軸部42よりも径方向外側の部分を加圧しているため、より効果的にエレメント40の上方向への移動を抑制することができ、軸部42の先端と第2部材30との当接状態をより確実なものとすることが可能となる。
【0035】
そして、
図1(b)及び
図4に示すように、更に一対の電極50及び一対の外部加圧治具60による加圧を維持しながら、上側電極51と下側電極52との間に本溶接電流である第2電流I
2を流して(第二通電)、通常のスポット溶接方法により、軸部42の先端と第2部材30との間で溶融部22を形成し、エレメント40と第2部材30を溶接することで、鉄系金属同士の接合を行う。最後に、所定のホールド時間T
2分だけ保持して溶接を終了する。
【0036】
以上、第1実施形態に係る抵抗溶接方法によれば、第1部材20を挟んでエレメント40と第2部材30が、一対の電極50による加圧力に加え、その周囲に配置された一対の外部加圧治具60による加圧力も付加された状態で溶接されており、従来の一対の電極50による加圧力のみによる場合と比較して、上述した作用によりエレメント40が第1部材20へ進入する際にエレメント40が押し上げられるのを効果的に抑制するため、大入熱の通電を行わなくても、所望とする高強度の溶融部を形成することが可能となる。よって、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成することができるため、溶接不良も防止することができる。
【0037】
なお、本実施形態で説明したような、上側外部加圧治具61の加圧力F2が、上側電極51の加圧力F1より大きければ、エレメント40が第1部材20に進入する際におけるエレメント40が押し上げられる作用をより効果的に抑制できるため、特に好ましい。
【0038】
また、第1部材20の溶融による液滴がエレメント40の溝部44内に入り込むことで、溶接電流が溝部44内の液滴に分流して溶融部22が形成されにくい状態となる場合がある。そこで、溶接電流が溝部44内の液滴に分流することを抑制するため、上側電極51の直径Duは、軸部42の根元の直径Dsと略同等とするのが好ましい。また、エレメント40と第1部材20の接触面に、例えば、接着剤などを塗布して分流を抑制することでも解決可能である。さらに、下側電極52の直径Ddは、特に限定されないが、下側外部加圧治具62との干渉を防止するため、上側電極51の直径Duと略同等とするのが好ましい。
【0039】
さらに、上述したように、外部加圧治具60によりエレメント40を加圧する場合においては、外部加圧治具60は、エレメント40の頭部41における、軸部42よりも径方向外側の部分を加圧することが好ましく、これにより、エレメント40における環状突起部43又は溝部44を上側から押さえることができ、溶接の際に溶融した第1部材20が溝部44に流入して、エレメント40が押し上げられるのをより効果的に抑制できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る抵抗溶接方法について、
図5を参照して説明する。
図5は、第2実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
【0041】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第1施形態に係る抵抗溶接方法と異なり、下側電極53の直径Ddが、エレメント40の頭部41の直径Dhと略同じ大きさに形成されており、下側外部加圧治具62を備えていない構成を備える。すなわち、下側電極53が、第1実施形態における下側電極52と下側外部加圧治具62の両機能を備えている。
【0042】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、まず、
図5(a)に示すように、異材溶接継手10の構成部材である第1部材20と第2部材30とを重ね合わせ、更にエレメント40の軸部42を第1部材20に当接させて、溶接前の状態とする。
【0043】
次に、上側電極51及び上側外部加圧治具61を、それぞれエレメント40の頭部41上面に当接させるとともに、下側電極53を第2部材30の下面に当接させて、一対の電極50(上側電極51及び下側電極53)及び外部加圧治具60(上側外部加圧治具61)により、第1部材20を介してエレメント40と第2部材30とを挟持する。
なお、本実施形態においても第1実施形態と同様、上側外部加圧治具61におけるエレメント40との当接部分は、エレメント40における軸部42よりも径方向外側の部分、換言すれば、環状突起部43又は溝部44に相当する部分としている。
【0044】
そして、上側電極51及び上側外部加圧治具61をそれぞれ加圧力F1、F2で加圧する。
【0045】
次いで、一対の電極50及び外部加圧治具60による加圧を維持しながら、第1実施形態と同様、一対の電極50間に、第1電流I1及び第2電流I2を順に流して、最終的に、軸部42の先端と第2部材30との間で溶融部22を形成し、エレメント40と第2部材30を溶接することで、鉄系金属同士の接合を行う。
【0046】
その他の部分については、第1実施形態の抵抗溶接方法と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0047】
以上、第2実施形態に係る抵抗溶接方法によれば、第1実施形態と同様、第1部材20を挟んでエレメント40と第2部材30が、一対の電極50による加圧力に加え、その周囲に配置された一対の外部加圧治具60による加圧力も付加された状態で溶接されており、従来の一対の電極50による加圧力のみによる場合と比較して、上述した作用、具体的には、エレメント40の進入時に第1部材20の変形に伴う反発力が生じたり、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用によりエレメント40が第1部材20に進入する際にエレメント40が押し上げられるのが効果的に抑制されるため、大入熱の通電を行わなくても、所望とする高強度の溶融部を形成することが可能となる。よって、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成することができるため、溶接不良も防止することができる。
【0048】
なお、下側電極53は、上側電極51による加圧力F1及び上側外部加圧治具61による加圧力F2の両方を受けており、第1実施形態における下側電極52と下側外部加圧治具62の両方役割を担う。本実施形態に係る抵抗溶接方法では、下側外部加圧治具62を備えないため、抵抗溶接機構の簡素化とコスト削減が可能となる。
【0049】
一方、上述した第1実施形態に係る抵抗溶接方法では、一対の電極50のうちエレメント40に近い側の電極(すなわち上側電極51)の周囲だけでなく、一対の電極50のうちエレメント40から遠い側の電極(すなわち下側電極52)の周囲にも、外部加圧治具60が配置されている。このような構成によれば、上側電極51による加圧力F1と上側外部加圧治具61による加圧力F2を受けつつも、下側電極52の先端径を上側電極51の先端径とほぼ同等にすることができるため、一対の電極50において上側と下側の電極サイズの違いによる抵抗溶接時の通電面積の増加を極力抑えることが可能となり、ナゲット径を確保するために必要な電流値を少なくすることが可能となる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る抵抗溶接方法について、
図6を参照して説明する。
図6は、第3実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
【0051】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第1施形態に係る抵抗溶接方法と異なり、外部加圧治具60がエレメント40を加圧するのではなく、第1部材20を加圧している。
【0052】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、まず、
図6(a)に示すように、異材溶接継手10の構成部材である第1部材20と第2部材30とを重ね合わせ、更にエレメント40の軸部42を第1部材20に当接させて、溶接前の状態とする。
【0053】
次に、上側電極51をエレメント40の頭部41上面に当接させ、かつ、上側外部加圧治具61を第1部材20の上面に当接させるとともに、下側電極52及び下側外部加圧治具62を、それぞれ第2部材30の下面に当接させて、一対の電極50(上側電極51及び下側電極52)及び一対の外部加圧治具60(上側外部加圧治具61及び下側外部加圧治具62)により、第1部材20を介してエレメント40と第2部材30とを挟持する。
なお、上側外部加圧治具61は、エレメント40ではなく第1部材20を加圧するため、円環状の上側外部加圧治具61の内径は、頭部41の直径Dhより大きく形成されている。また、上側外部加圧治具61に対向配置された下側外部加圧治具62の内径も、上側外部加圧治具61の内径と略同じ大きさに形成されている。
【0054】
そして、上側電極51及び上側外部加圧治具61をそれぞれ加圧力F1、F2で加圧する。
【0055】
次いで、一対の電極50及び一対の外部加圧治具60による加圧を維持しながら、第1実施形態と同様、一対の電極50間に、第1電流I1及び第2電流I2を順に流して、最終的に、軸部42の先端と第2部材30との間で溶融部22を形成し、エレメント40と第2部材30を溶接することで、鉄系金属同士の接合を行う。
【0056】
その他の部分については、第1実施形態の抵抗溶接方法と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0057】
以上、第3実施形態に係る抵抗溶接方法によれば、第1実施形態と同様、第1部材20を挟んでエレメント40と第2部材30が、一対の電極50による加圧力に加え、その周囲に配置された一対の外部加圧治具60による加圧力も付加された状態で溶接されており、従来の一対の電極50による加圧力のみによる場合と比較して、上述した作用、具体的には、エレメント40の進入時に第1部材20の変形に伴う反発力が生じたり、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用によりエレメント40が第1部材20に進入する際にエレメント40が押し上げられるのが効果的に抑制されるため、大入熱の通電を行わなくても、所望とする高強度の溶融部を形成することが可能となる。よって、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成することができるため、溶接不良も防止することができる。
【0058】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る抵抗溶接方法について、
図7を参照して説明する。
図7は、第4実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
【0059】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第1実施形態に係る抵抗溶接方法と第3実施形態に係る抵抗溶接方法とを組み合わせた溶接方法である。そして、第1実施形態や第3実施形態と同様、エレメント40、第1部材20及び第2部材30を挟持して加圧しながら溶接する、上側電極51及び下側電極52を備える。なお、上側電極51及び下側電極52の形状や作用は、第1実施形態の抵抗溶接方法の場合と同様である。
【0060】
また、上側電極51及び下側電極52の径方向外側には、それぞれ略円環状に形成された外部加圧治具60が設けられている。外部加圧治具60は、上側外部加圧治具61と、下側外部加圧治具62からなる。
さらに、上側外部加圧治具61は、エレメント40の軸部42よりも径方向外側の部分に当接してエレメント40を加圧する第1上側外部加圧治具61aと、エレメント40の頭部41の周囲における第1部材20を加圧する第2上側外部加圧治具61bとを備える。すなわち、上側外部加圧治具61は、略同心円状に2重に配置された第1上側外部加圧治具61aと第2上側外部加圧治具61bとからなる。
【0061】
下側外部加圧治具62は、下側電極52の周囲を囲んで径方向外側に略円環状に形成されており、第1上側外部加圧治具61a及び第2上側外部加圧治具61bに対向するように、第2部材30との当接面積が大きく形成されている。
【0062】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、上側電極51、第1上側外部加圧治具61a及び第2上側外部加圧治具61bと、下側電極52及び下側外部加圧治具62とにより、エレメント40、第1部材20及び第2部材30を挟持する。そして、上側電極51を加圧力F1で、第1上側外部加圧治具61aを加圧力F2で、第2上側外部加圧治具61bを加圧力F4で加圧し、一対の電極50及び一対の外部加圧治具60による加圧を維持しながら、上側電極51及び下側電極52間に、第1電流I1、次いで第2電流I2の順に通電することで、第1部材20を溶融し、エレメント40の軸部42と第2部材30との間に溶融部22を形成して、エレメント40と第2部材30とを溶接する。
【0063】
その他の部分については、第1実施形態の抵抗溶接方法と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0064】
以上、第4実施形態に係る抵抗溶接方法によれば、第1実施形態や第3実施形態と同様、第1部材20を挟んでエレメント40と第2部材30が、一対の電極50による加圧力に加え、その周囲に配置された一対の外部加圧治具60による加圧力も付加された状態で溶接されており、従来の一対の電極50による加圧力のみによる場合と比較して、上述した作用、具体的には、エレメント40の進入時に第1部材20の変形に伴う反発力が生じたり、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用により、エレメント40が第1部材20に進入する際にエレメント40が押し上げられるのが効果的に抑制されるため、大入熱の通電を行わなくても、所望とする高強度の溶融部を形成することが可能となる。よって、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成することができるため、溶接不良も防止することができる。
【0065】
特に、第3実施形態においては、外部加圧治具60により、エレメント40及び第1部材20の両方を加圧するため、エレメント40が第1部材20に進入する際にエレメント40が押し上げられる作用を特に効果的に抑制できる。
【0066】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る抵抗溶接方法について、
図8を参照して説明する。
図8は、第5実施形態に係る抵抗溶接方法により異材溶接継手を形成する工程を示す概略断面図である。
【0067】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、第1実施形態の抵抗溶接方法と同様の溶接方法であるが、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの非鉄金属からなる第1部材20と、鉄系金属からなる第2部材30と、鉄系金属からなる第3部材35とを重ね合わせ、鉄系金属からなるエレメント40を用いて接合することで、異材溶接継手10を形成する抵抗溶接方法である。なお、第1実施形態の異材溶接継手10が2枚重ねであるのに対して、本実施形態の異材溶接継手10は3枚重ねである点で異なる。
【0068】
本実施形態に係る抵抗溶接方法は、上側電極51及び上側外部加圧治具61と、下側電極52及び下側外部加圧治具62とにより、エレメント40、第1部材20,第2部材30及び第3部材35を挟持する。そして、上側電極51を加圧力F1で、上側外部加圧治具61を加圧力F2で加圧し、一対の電極50及び一対の外部加圧治具60による加圧を維持しながら、上側電極51及び下側電極52間に、第1電流I1、次いで第2電流I2の順に通電することで、第1部材20を溶融し、エレメント40の軸部42、第2部材30及び第3部材35との間に溶融部22を形成して、エレメント40、第2部材30及び第3部材35とを溶接する。
【0069】
その他の部分については、第1実施形態の抵抗溶接方法と同様であるため、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0070】
以上、第5実施形態に係る抵抗溶接方法によれば、第1実施形態と同様、第1部材20を挟んでエレメント40、第2部材30及び第3部材35が、一対の電極50による加圧力に加え、その周囲に配置された一対の外部加圧治具60による加圧力も付加された状態で溶接されており、従来の一対の電極50による加圧力のみによる場合と比較して、上述した作用、具体的には、エレメント40の進入時に第1部材20の変形に伴う反発力が生じたり、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用により、エレメント40が第1部材20に進入する際にエレメント40が押し上げられるのが効果的に抑制されるため、大入熱の通電を行わなくても、所望とする高強度の溶融部を形成することが可能となる。よって、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成することができるため、溶接不良も防止することができる。
【0071】
なお、上記の説明では、第2部材30は鉄系金属からなるとして説明したが、非鉄金属から構成されてもよい。すなわち、第1部材20及び第2部材30の両方が非鉄金属からなる場合である。その場合、エレメント40における環状突起部43の下面から軸部42の先端までの長さLは、第1部材20の厚さt1及び第2部材30の厚さt2の合計厚さに設計される。これにより、第1部材20及び第2部材30を挟持した状態で、エレメント40の軸部42と第3部材35とが当接することができ、これら部材の間で確実に溶接を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、異材溶接継手10が3枚重ねの場合であるが、それ以上、すなわち4枚重ね以上とすることもできる。なお、4枚重ねの場合における異材溶接継手10は、上側から、非鉄金属、鉄系金属、鉄系金属、鉄系金属の順であるか、又は、上側から、非鉄金属、非鉄金属、非鉄金属、鉄系金属の順となる。
【0073】
以上、第1~第5実施形態について詳細に説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0074】
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
【0075】
(1) 頭部及び軸部を有し、鉄系金属からなるエレメントを用いて、非鉄金属からなる第1部材と、鉄系金属からなる第2部材と、を接合する抵抗溶接方法であって、
前記軸部を前記第1部材に当接させて、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材の順に重ね合わせる工程と、
一対の電極により、前記エレメント、前記第1部材及び前記第2部材を挟持して加圧するとともに、前記一対の電極のうち少なくとも前記エレメントに近い側の電極の周囲に配置された外部加圧治具により、前記エレメント及び前記第1部材のうち少なくとも一方を加圧する工程と、
前記一対の電極及び前記外部加圧治具による加圧を維持しながら、前記一対の電極の通電により前記第1部材を溶融させ、更に前記エレメントを前記第1部材に貫通させて、前記エレメント及び前記第2部材を溶接する工程と、
を備えることを特徴とする抵抗溶接方法。
この構成によれば、電極50の周囲に配置された外部加圧治具60により、溶接時において、エレメント40又及び非鉄金属からなる第1部材20の少なくとも一方を加圧することにより、溶接の際に溶融した第1部材20がエレメント40を押し上げるのを抑制するため、鉄系金属からなるエレメント40と鉄系金属からなる第2部材30との間で、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成して、溶接不良を防止できる。
【0076】
(2) 前記外部加圧治具により、前記エレメント又は前記第1部材を加圧する際の加圧力は、前記一対の電極により前記エレメント、前記第1部材及び前記第2部材を挟持して加圧する際の加圧力よりも大きい、上記(1)に記載の抵抗溶接方法。
この構成によれば、エレメント40が第1部材20に進入する際におけるエレメント40が押し上げられる作用をより効果的に抑制できる。
【0077】
(3) 頭部及び軸部を有し、鉄系金属からなるエレメントを用いて、非鉄金属からなる第1部材と、鉄系金属からなる第2部材と、鉄系金属からなる第3部材と、を接合する抵抗溶接方法であって、
前記軸部を前記第1部材に当接させて、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材、前記第3部材の順に重ね合わせる工程と、
一対の電極により、前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材を挟持して加圧するとともに、前記一対の電極のうち、少なくとも前記エレメントに近い側の電極の周囲に配置された外部加圧治具により、前記エレメント及び前記第1部材のうち少なくとも一方を加圧する工程と、
前記一対の電極及び前記外部加圧治具による加圧を維持しながら、前記一対の電極の通電により前記第1部材を溶融させ、更に前記エレメントを前記第1部材に貫通させて、前記エレメント、前記第2部材及び前記第3部材を溶接する工程と、
を備えることを特徴とする抵抗溶接方法。
この構成によれば、電極50の周囲に配置された外部加圧治具60により、溶接時において、エレメント40又及び非鉄金属からなる第1部材20の少なくとも一方を加圧することにより、溶接の際に溶融した第1部材20がエレメント40を押し上げるのを抑制するため、鉄系金属からなるエレメント40と鉄系金属からなる第2部材30及び第3部材35との間で、比較的入熱量を抑えた通電条件で所望の溶融部を形成して、溶接不良を防止できる。
【0078】
(4) 前記外部加圧治具により、前記エレメント又は前記第1部材を加圧する際の加圧力は、前記一対の電極により前記エレメント、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材を挟持して加圧する際の加圧力よりも大きい、上記(3)に記載の抵抗溶接方法。
この構成によれば、エレメント40が第1部材20に進入する際におけるエレメント40が押し上げられる作用をより効果的に抑制できる。
【0079】
(5) 前記外部加圧治具は、前記一対の電極におけるそれぞれの周囲に配置される、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の抵抗溶接方法。
この構成によれば、上側電極51による加圧力F1と上側外部加圧治具61による加圧力F2を受けつつも、下側電極52の先端径を上側電極51の先端径とほぼ同等にすることができるため、一対の電極50において上側と下側の電極サイズの違いによる抵抗溶接時の通電面積の増加を極力抑えることが可能となり、ナゲット径を確保するために必要な電流値を少なくすることが可能となる。
【0080】
(6) 前記外部加圧治具により、前記エレメント及び前記第1部材の両方を加圧する、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の抵抗溶接方法。
この構成によれば、エレメント40が第1部材20に進入する際にエレメント40が押し上げられる作用を特に効果的に抑制できる。
【0081】
(7) 前記外部加圧治具により前記エレメントを加圧する場合において、
前記外部加圧治具は、前記エレメントの頭部における、前記軸部よりも径方向外側の部分を加圧する、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の抵抗溶接方法。
この構成によれば、エレメント40における環状突起部43又は溝部44を上側から押さえることができ、エレメント40が第1部材20へ進入する際に、第1部材20の変形に伴う反発力が生じる作用や、エレメント40の溝部44内に、第1部材20の溶融による液滴が入り込む作用により、エレメント40が押し上げられるのをより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 異材溶接継手
20 第1部材
30 第2部材
35 第3部材
40 エレメント
41 頭部
42 軸部
50 一対の電極
51 上側電極(エレメントに近い側の電極)
60 一対の外部加圧治具
F1 電極の加圧力
F2、F4 外部加圧治具の加圧力