(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】粉塵除去システム
(51)【国際特許分類】
B03C 3/02 20060101AFI20241224BHJP
F24F 8/30 20210101ALI20241224BHJP
B03C 3/155 20060101ALI20241224BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B03C3/02 Z
F24F8/30
B03C3/155 A
A61L9/16 Z
(21)【出願番号】P 2021051777
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】598038603
【氏名又は名称】藤田商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】古川 修三
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小谷 朋央貴
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 明
(72)【発明者】
【氏名】臼田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 良二
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-131881(JP,A)
【文献】特開2017-203582(JP,A)
【文献】特開2011-21792(JP,A)
【文献】特開2007-284985(JP,A)
【文献】特開昭49-82155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
F24F 1/00-13/32
A61L 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、
前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、
を具備
し、
前記床材は、
吸着した粉塵のアレルゲンを不活性化させる抗アレルゲン性を有する、
粉塵除去システム。
【請求項2】
施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、
前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、
を具備し、
前記床放電装置は、
当該床放電装置により帯電した前記床材の除電を行うことができる、
粉塵除去システム。
【請求項3】
施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、
前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、
前記所定領域の入口に設けられ、粉塵を除去可能な除塵装置と、
を具備し、
前記除塵装置は、
除電可能なイオンを発生させるイオン発生部と、
前記イオンを含む空気を吹き出すことで除塵が可能な送風部と、
を具備する、
粉塵除去システム。
【請求項4】
施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、
前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、
少なくとも前記所定領域の空調を行う空調機と、
を具備し、
前記空調機は、
前記所定領域に導入される空気から粉塵を除去可能なフィルターを具備する、
粉塵除去システム。
【請求項5】
前記床材は、
帯電し難く形成された制電部と、
前記制電部が設けられた部分とは異なる部分に設けられ、帯電し易く形成された帯電部と、
を具備し、
前記床放電装置は、前記床材のうち前記帯電部を帯電させる、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の粉塵除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設内の粉塵を除去する粉塵除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施設の利用者に付着した粉塵を除去するための技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、エアシャワー室内の利用者に清浄空気を吹き付けて粉塵を除去するエアシャワーが記載されている。
【0004】
ここで、エアシャワーによる空気の吹き付けを行った場合でも、利用者に付着した粉塵を取り切れないことが考えられる。この場合、利用者が移動することで、施設内へ粉塵の侵入を許してしまうことが考えられる。そこで、粉塵を効果的に除去可能な粉塵除去システムが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、粉塵を効果的に除去可能な粉塵除去システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、を具備し、前記床材は、吸着した粉塵のアレルゲンを不活性化させる抗アレルゲン性を有するものである。
【0009】
請求項2においては、施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、を具備し、前記床放電装置は、当該床放電装置により帯電した前記床材の除電を行うことができるものである。
【0010】
請求項3においては、施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、前記所定領域の入口に設けられ、粉塵を除去可能な除塵装置と、を具備し、前記除塵装置は、除電可能なイオンを発生させるイオン発生部と、前記イオンを含む空気を吹き出すことで除塵が可能な送風部と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、施設内の所定領域の通路に設けられた床材と、前記床材に粉塵を吸着させるように、当該床材を帯電させる床放電装置と、少なくとも前記所定領域の空調を行う空調機と、を具備し、前記空調機は、前記所定領域に導入される空気から粉塵を除去可能なフィルターを具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記床材は、帯電し難く形成された制電部と、前記制電部が設けられた部分とは異なる部分に設けられ、帯電し易く形成された帯電部と、を具備し、前記床放電装置は、前記床材のうち前記帯電部を帯電させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、粉塵を効果的に除去することができる。また、アレルゲンを含む粉塵を、床材に吸着させた状態で効率的に不活性化させることができる。
【0016】
請求項2においては、粉塵を効果的に除去することができる。また、床材を掃除する際には除電することで、粉塵を除去し易くすることができる。
【0017】
請求項3においては、粉塵を効果的に除去することができる。また、床材を通行する前の段階で、利用者に付着した粉塵を除去することができる。
【0018】
請求項4においては、粉塵を効果的に除去することができる。また、粉塵を含んだ空気が所定領域に導入されることを抑制することができる。
【0019】
請求項5においては、帯電部に粉塵を吸着させることを可能としながらも、利用者が帯電することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)本発明の第一実施形態に係る粉塵除去システムが設置される施設を模式的に示した側面図。(b)花粉対策フロアを模式的に示した平面図。
【
図4】(a)床材を示した分解平面図。(b)床材及び床放電装置を示した平面図。
【
図5】粉塵除去システムが実行する制御を示したフローチャート。
【
図6】粉塵除去システムによる除塵の様子を模式的に示した斜視図。
【
図7】フロアマットを帯電させた状態を示した模式図。(b)フロアマットを除電した状態を示す模式図。
【
図8】第二実施形態に係るフロアマット及び床放電装置を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の第一実施形態に係る粉塵除去システム10について説明する。また、以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0023】
まず、
図1を用いて、粉塵除去システム10が設置される施設1について説明する。施設1は、利用者が利用可能な空間を有する。
図1(a)に示すように、施設1の内部は、複数のフロアごとに階層が分かれている。本実施形態では、施設1を、ホテル等の宿泊施設とした例を示している。施設1は、各フロア間の移動に利用されるエレベーターを備える。本実施形態では、2台のエレベーターを設置した例を示している。各フロアには、エレベーター出入口2、エレベーターホール3、客室4及び通路5が設けられている。
【0024】
図1(b)及び
図2に示すエレベーター出入口2は、エレベーターの乗り降りを行うためのものである。エレベーター出入口2は、エレベーターの台数に応じた数(本実施形態では2つ)設けられる。
【0025】
図1(b)及び
図2に示すエレベーターホール3は、エレベーターの乗り降りを行う空間である。エレベーターホール3は、2つのエレベーター出入口2と面している。
【0026】
図1(b)に示す客室4は、利用者(宿泊客)が滞在する空間である。客室4は、各フロアに複数設けられている。
【0027】
図1(b)及び
図2に示す通路5は、エレベーターホール3と客室4との間を通行するためのものである。通路5は、エレベーターホール3の出入口と、各客室4の出入口と、に面している。通路5は、一方向(前後方向)に延びるように形成される。
【0028】
施設1の利用者は、1階のフロアのエレベーターホール3からエレベーターに乗り、目的階のフロアのエレベーターホール3で降りると共に、通路5を通行して所定の客室4へ入室する。
【0029】
次に、
図1から
図4までを用いて、粉塵除去システム10について説明する。粉塵除去システム10は、施設1の内部に侵入する粉塵を除去するものである。ここで、粉塵とは、花粉等の空気中に浮遊する粒子を指す。粉塵には、花粉の他に砂塵や微小なホコリ、PM2.5(粒径2.5μm以下の粒子状物質)等の粒子が含まれる。スギやヒノキ等の花粉は、アレルギー症状(花粉症)の原因となるアレルゲン(アレル物質)を含む。このため、例えば利用者の衣服等に付着した花粉が客室4の内部に侵入した場合、花粉症を抱える利用者は快適に過ごせないことが考えられる。
【0030】
粉塵除去システム10は、施設1の各フロアのうち、客室4への花粉の侵入を予防する措置がとられた特定のフロア(以下では「花粉対策フロア6」と称する。)に設置される。具体的には、粉塵除去システム10は、花粉対策フロア6のエレベーターホール3及び通路5に設置される。粉塵除去システム10は、花粉対策フロア6の客室4の内部に、外からの花粉が侵入することを抑制することができる。粉塵除去システム10は、人感センサ20、エアシャワー30、床材40、床放電装置50、空調機60及び制御部70を具備する。
【0031】
図2及び
図3に示す人感センサ20は、粉塵除去システム10の動作に用いられる情報を検知するものである。人感センサ20には、第一の人感センサ21及び第二の人感センサ22が含まれる。
【0032】
第一の人感センサ21は、花粉対策フロア6のエレベーターホール3において、エレベーター出入口2を介してエレベーターから降りる利用者の有無を検知可能なセンサである。第一の人感センサ21としては、例えば赤外線や超音波を用いて人を検知するものを採用可能である。第一の人感センサ21は、2つのエレベーター出入口2のそれぞれから降りる利用者を検知可能なように、エレベーターホール3に配置される。
【0033】
第二の人感センサ22は、花粉対策フロア6のエレベーターホール3から通路5へ向かう利用者の有無を検知可能なセンサである。第二の人感センサ22としては、第一の人感センサ21と同様な構成のセンサを採用可能である。第二の人感センサ22は、エレベーターホール3の通路5側の出入口の近傍に設置される。
【0034】
図1から
図3までに示すエアシャワー30は、利用者の衣服等に付着した粉塵を、吹き出された風により除去するものである。エアシャワー30は、門(ゲート)型に形成される。エアシャワー30は、利用者が通過する領域を挟んで、互いに間隔を空けて一対設けられる。エアシャワー30は、正面視で(対向方向に見て)上下に長尺な略矩形状に形成される。エアシャワー30は、エレベーターホール3の通路5側の出入口に設置される。エアシャワー30は、例えばHEPAフィルタ等のフィルタが組み込まれ、清浄化した空気を吹き出す構成を採用可能である。エアシャワー30は、送風部31、イオン発生部32、吸気部33、花粉センサ34及び微小粒子センサ35を具備する。
【0035】
送風部31は、利用者に向けて空気を吹き出す部分である。送風部31は、適宜のファンの動作により発生した風を吹き出す。送風部31は、例えば5~20m/sの風速で送風を実行可能である。送風部31は、エアシャワー30の利用者を向く面(正面)に複数形成される。本実施形態では、上下に間隔を空けた3つの送風部31を2列(合計6つ)設けた例を示している。なお、送風部31の数は上述した例に限られず、任意の数を設定可能である。
【0036】
イオン発生部32は、イオン(正イオン及び負イオン)を発生するものである。イオン発生部32としては、コロナ放電により正イオン及び負イオンを発生させる構成を採用可能である。具体的には、イオン発生部32は、一対の電極に電圧を印加することで起こるコロナ放電により、空気中の分子(例えば水分子)を電気的に分解し、正イオン(水素イオン(H+))及び負イオン(酸素イオン(O2
-))を発生させる。
【0037】
イオン発生部32により発生させるイオンとしては、水素イオン(H+)及び酸素イオン(O2
-)に限られず、適宜の正イオン及び負イオンを採用可能である。また、イオンとしては、正イオン及び負イオンの周りに空気中の水分子を集合させたクラスターイオンも採用可能である。イオン発生部32は、送風部31により吹き出される空気にイオンを含ませることができるように、エアシャワー30の内部に設けられる。イオン発生部32は、例えば送風部31の近傍に配置される。
【0038】
ここで、利用者の衣服等が静電気を帯びている(帯電している)場合、衣服等が粉塵を引き寄せることで、エアシャワー30による除塵を行い難くなることが考えられる。そこで、イオン発生部32により発生させたイオン(正イオン及び負イオン)により、利用者の衣服等の除電を行う(帯電した部分を電気的に中和させる)ことで静電気を除去し、エアシャワー30による除塵を行い易くすることができる。
【0039】
吸気部33は、空気と共に粉塵を吸い込む部分である。吸気部33は、適宜のファンの動作により空気を吸い込む。吸気部33は、エアシャワー30の正面において、送風部31よりも下方に設けられる。吸気部33としては、粉塵を捕集する適宜のフィルタが組み込まれたものを採用可能である。吸気部33に吸い込まれることで、送風部31により利用者の衣服等から吹き飛ばされた粉塵が除去される。
【0040】
花粉センサ34は、空気中の花粉の量を測定可能なセンサである。花粉センサ34としては、当該花粉センサ34の内部に取り込んだ花粉を光学的に検知するものを採用可能である。花粉センサ34は、吸気部33の内側に設けられる。
【0041】
微小粒子センサ35は、PM2.5等の空気中の微小粒子の量を測定可能なセンサである。微小粒子センサ35としては、当該微小粒子センサ35の内部に取り込んだ微小粒子を光学的に検知するものを採用可能である。微小粒子センサ35は、吸気部33の内側に設けられる。
【0042】
図1(b)、
図2及び
図4に示す床材40は、通路5の床を構成するものである。床材40は、通路5の全体に設けられる。床材40は、捨て貼り41、絶縁シート42及びフロアマット43を具備する。
【0043】
図4(a)に示す捨て貼り41は、床材40の下地を構成するものである。捨て貼り41は、床を構成する構造体(床スラブ等)の上に設けられる。捨て貼り41としては、適宜の板状の部材を採用可能である。
【0044】
絶縁シート42は、絶縁性を有するシート状の部材である。絶縁シート42は、捨て貼り41の上面に設けられる。絶縁シート42は、適宜の絶縁性を有する材料で形成される。
【0045】
フロアマット43は、床材40の表面(上面)を構成するものである。フロアマット43は、絶縁シート42の上面に設けられる。フロアマット43は、比較的帯電し易い素材で形成される。具体的には、フロアマット43は、絶縁性を有すると共に負に帯電し易い(マイナスの電気を帯び易い)化学繊維により形成される。フロアマット43の素材としては、例えば「JIS A 1455(床材及び床の帯電防止性能-測定・評価方法)」に準拠して評価される評価値(グレード)が、4(帯電防止性能があるとは言えない床材および床)に該当し、かつ、帯電し易いもの(ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、アクリル等)を採用可能である。
【0046】
フロアマット43は、花粉等の粉塵のアレルゲンを不活性化させる抗アレルゲン性を有する。フロアマット43に抗アレルゲン性を付与する方法としては、例えばフロアマット43に適宜の不活性化剤を付着させる方法を採用可能である。不活性化剤としては、光触媒によりアレルゲンを不活性化させるものや、アレルゲンを不活性化させる成分を含む薬剤を採用可能である。抗アレルゲン性を有するフロアマット43に接した花粉は、アレルゲンが不活性化される。
【0047】
図2、
図3及び
図4(b)に示す床放電装置50は、フロアマット43を帯電させたり除電を行うことが可能なものである。床放電装置50は、フロアマット43の幅方向(左右方向)両端側に位置するように、一対設けられる。また、床放電装置50は、通路の長手方向に所定の間隔(例えば20メートル間隔)を空けて複数設けられる。床放電装置50は、帯電用放電装置51及び除電用放電装置52を具備する。
【0048】
帯電用放電装置51は、コロナ放電により負イオンを放出することで、フロアマット43を帯電させるものである。帯電用放電装置51は、イオン発生部32と概ね同様に、電極に電圧を印加することで空気中の分子(例えば水分子)を電気的に分解し、正イオン(水素イオン)及び負イオン(酸素イオン)を発生させる。
【0049】
ここで、帯電用放電装置51は、上記発生させたイオンのうち、主として負イオンを放出させるようにコロナ放電を実行する。帯電用放電装置51としては、負イオンを放出可能な適宜の構成を採用可能である。
【0050】
除電用放電装置52は、コロナ放電により正イオンを放出することで、帯電した状態のフロアマット43の除電を行うものである。除電用放電装置52は、帯電用放電装置51と同様に正イオン(水素イオン)及び負イオン(酸素イオン)を発生させる。
【0051】
ここで、除電用放電装置52は、上記発生させたイオンのうち、主として正イオンを放出させるようにコロナ放電を実行する。除電用放電装置52としては、正イオンを放出可能な適宜の構成を採用可能である。
【0052】
図3及び
図6に示す空調機60は、花粉対策フロア6に空気を導入(供給)可能なものである。空調機60は、例えば壁部に埋め込まれるように設置される。空調機60は、空気を送り出す給気部(不図示)や空気を取り込む取込部(不図示)を有する。給気部及び取込部は、エレベーターホール3、客室4及び通路5等の適宜の位置に設けられる。また、取込部を、外気を取り込み可能なものとしてもよい。空調機60としては、ビル用マルチエアコン室内機や、外調機等の種々の空調機を採用可能である。
【0053】
空調機60を動作させることで、花粉対策フロア6内の空気を換気することができる。空調機60には、空気中の粉塵やウィルス等を取り除くことが可能な、例えばHEPAフィルタ等のフィルタが組み込まれている。これにより、空調機60により花粉対策フロア6に供給される空気を清浄化することができる。
【0054】
制御部70は、各種の情報の処理が可能なものである。制御部70は、主としてCPU等の演算処理装置や、RAMやROM、HDD等の記憶装置等により構成される。制御部70は、人感センサ20、エアシャワー30、床放電装置50及び空調機60と通信可能に接続されている。制御部70を設置する場所としては、種々の場所を採用可能である。例えば、制御部70をエアシャワー30に設けてもよく、施設1内の適宜の場所(例えば事務室等)に設置してもよい。
【0055】
粉塵除去システム10は、制御部70の制御によりエアシャワー30、床放電装置50及び空調機60を動作させることで、花粉対策フロア6の客室4に外からの花粉が侵入することを抑制する。以下では、
図5のフローチャートを用いて、粉塵除去システム10が実行可能な動作について説明する。
【0056】
まず、ステップS10に示すように、制御部70は、第一の人感センサ21による利用者の検知に基づきエアシャワー30を起動する。すなわち、制御部70は、第一の人感センサ21が利用者を検知した場合に、エレベーターから利用者が降りたと推定し、エアシャワー30の送風部31、イオン発生部32及び吸気部33を動作させる。
【0057】
また、ステップS11に示すように、エアシャワー30は、エレベーターホール3に侵入した利用者を除電すると共に除塵する(
図6を参照)。すなわち、エアシャワー30は、イオン発生部32から発生したイオン(正イオン及び負イオン)で利用者の衣服等を除電すると共に、送風部31から吹き出された風で利用者の衣服等に付着した粉塵を吹き飛ばす。上記粉塵は、吸気部33に吸い込まれる。このようにして、エアシャワー30により利用者の衣服等に付着した花粉等の粉塵を除去することができる。
【0058】
ここで、制御部70は、エアシャワー30の動作中の花粉センサ34や微小粒子センサ35の検知結果に基づいて、送風部31、イオン発生部32及び吸気部33を動作を制御することができる。具体的には、制御部70は、花粉センサ34や微小粒子センサ35の検知結果が大きい場合には、送風部31や吸気部33の出力を上げる制御を実行可能である。また、制御部70は、花粉センサ34や微小粒子センサ35の検知結果が小さい場合には、送風部31や吸気部33の出力を下げる制御を実行可能である。制御部70は、エアシャワー30の起動から所定時間(例えば5秒~10秒程度)が経過すれば、エアシャワー30の動作を停止する。
【0059】
また、ステップS12に示すように、制御部70は、第二の人感センサ22による利用者の検知に基づき帯電用放電装置51を起動する。すなわち、制御部70は、第二の人感センサ22が利用者を検知した場合に、エレベーターホール3から通路5へ利用者が向かうと推定し、帯電用放電装置51を起動し負イオンを発生させる(
図6を参照)。
【0060】
帯電用放電装置51により負イオンを発生させたことで、
図7(a)に示すように、フロアマット43を負に帯電させる(静電気を帯びた状態にする)ことができる。これにより、エアシャワー30によっては除去しきれなかった花粉等の粉塵が利用者の歩行に伴い床材40の上に落ちた場合でも、フロアマット43に引き寄せると共に吸着することができる。これにより、花粉が再び飛散することを抑制することができる。また、花粉等のアレルゲンを含む粉塵を、フロアマット43に吸着させた状態で効率的に不活性化させることができる。
【0061】
制御部70は、フロアマット43の帯電量を測定可能な適宜の静電気センサ(不図示)の測定結果に基づき、フロアマット43が所定の帯電量となるまで帯電用放電装置51の動作を継続させる制御を実行可能である。上記フロアマット43の帯電量としては、花粉等の粉塵を好適に吸着させる観点から適宜設定可能である。なお、このような態様に代えて、所定時間が経過するまで帯電用放電装置51を起動させる制御も採用可能である。
【0062】
本実施形態では、フロアマット43の下方に絶縁シート42を設けているので、フロアマット43に溜まった静電気が逃げ難い。このため、帯電用放電装置51を起動した後は、フロアマット43が帯電した状態がしばらく継続する。
【0063】
上述したように、本実施形態においては、他のフロアから花粉対策フロア6へ侵入した利用者がエレベーターホール3や通路5を通過するごとに、エアシャワー30や帯電用放電装置51を起動する。
【0064】
また、ステップS13に示すように、制御部70は、床材40の掃除を行う際には除電用放電装置52を起動する。すなわち、制御部70は、フロアマット43が吸着した花粉等の粉塵を掃除により除去する際に、除電用放電装置52を起動し正イオンを発生させる。制御部70は、所定の操作部(不図示)による操作を契機として、除電用放電装置52の起動を実行可能である。床材40の掃除は、例えば1日に1回(午前中等に)行われる。
【0065】
除電用放電装置52により正イオンを発生させたことで、
図7(b)に示すように、負に帯電した(静電気を帯びた)フロアマット43を中和させ、除電を行うことができる。このように、制御部70は、帯電用放電装置51と除電用放電装置52とを起動することで、フロアマット43を帯電させた状態と、フロアマット43を帯電させない状態(除電した状態)と、を切り替えることができる。
【0066】
上述したようにフロアマット43を除電することで、フロアマット43から粉塵を引き離し易くなる。このため、フロアマット43を除電することで、フロアマット43(床材40)の掃除を行い易くすることができる。また、本実施形態では、抗アレルゲン性を有するフロアマット43により粉塵(花粉)が不活性化されるので、仮に掃除の際に粉塵が舞い散っても花粉症疾患者への影響が少ない。
【0067】
上記フロアマット43の掃除は、適宜の掃除機等を使用可能である。フロアマット43の掃除を行うことにより、花粉対策フロア6へ持ち込まれた粉塵のうち、エアシャワー30によって除去しきれず、フロアマット43に吸着された粉塵を除去することができる。
【0068】
以上のように、本発明の第一実施形態に係る粉塵除去システム10は、
施設1内の所定領域(花粉対策フロア6)の通路5に設けられた床材40と、
前記床材40に粉塵を吸着させるように、当該床材40を帯電させる床放電装置50と、
を具備するものである。
【0069】
このような構成により、粉塵を効果的に除去することができる。すなわち、床材40を帯電させることで、利用者に付着した花粉等の粉塵が床材40に落ちた場合に、床材40に粉塵を引き寄せると共に吸着させることができる。これにより、床材40に吸着させた粉塵を効果的に除去することができる。
【0070】
また、前記床材40は、
吸着した粉塵のアレルゲンを不活性化させる抗アレルゲン性を有するものである。
【0071】
このような構成により、花粉等のアレルゲンを含む粉塵を、床材40に吸着させた状態で効率的に不活性化させることができる。
【0072】
また、前記床放電装置50は、
当該床放電装置50により帯電した前記床材40の除電を行うことができるものである。
【0073】
このような構成により、床材40を掃除する際には除電することで、粉塵を除去し易くすることができる。
【0074】
また、前記所定領域(花粉対策フロア6)の入口に設けられ、粉塵を除去可能な除塵装置(エアシャワー30)を更に具備し、
前記除塵装置(エアシャワー30)は、
除電可能なイオンを発生させるイオン発生部32と、
前記イオンを含む空気を吹き出すことで除塵が可能な送風部31と、
を具備するものである。
【0075】
このような構成により、床材40を通行する前の段階で、利用者に付着した粉塵を除去することができる。また、イオン発生部32よる除電を行った状態で、送風部31による除塵を行うことで、効果的な除塵が可能となる。
【0076】
また、粉塵除去システム10は、
少なくとも前記所定領域(花粉対策フロア6)の空調を行う空調機60を更に具備し、
前記空調機60は、
前記所定領域(花粉対策フロア6)に導入される空気から粉塵を除去可能なフィルターを具備するものである。
【0077】
このような構成により、粉塵を含んだ空気が所定領域(花粉対策フロア6)に導入されることを抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態に係る花粉対策フロア6は、本発明に係る所定領域の一形態である。
また、本実施形態に係るエアシャワー30は、本発明に係る除塵装置の一形態である。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0080】
例えば、上記第一実施形態では、帯電用放電装置51によりフロアマット43の全体を帯電させた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、
図8に示す本発明の第二実施形態に係るフロアマット43Aの構成を採用してもよい。
【0081】
第二実施形態に係るフロアマット43Aは、当該フロアマット43Aの一部を帯電させない構成とした点で、第一実施形態に係るフロアマット43とは異なる。なお、以下では、主として第一実施形態に係るフロアマット43と異なる点について説明する。また、第一実施形態に係るフロアマット43と共通する点は、第一実施形態と同様な符号を付すと共に、説明を適宜省略する。
【0082】
フロアマット43Aは、第一実施形態に係るフロアマット43と同様、床材40の表面(上面)を構成するものである。フロアマット43Aは、抗アレルゲン処理が施されている。フロアマット43Aは、制電部44及び帯電部45を具備する。
【0083】
制電部44は、フロアマット43のうち帯電し難い部分である。制電部44は、主としてフロアマット43Aの幅方向中央部に設けられる。また、制電部44は、フロアマット43Aの幅方向中央部に加えて、通路5における客室4の出入口(
図8に示すドア4a)の前の部分にも設けられる。制電部44の幅寸法は、帯電部45の幅寸法よりも大きく形成される。
【0084】
制電部44は、比較的帯電し難い素材で形成される。具体的には、制電部44の素材としては、例えば「JIS L 1021‐16:2007(繊維製床敷物試験方法-第16部:帯電性-歩行試験方法)」に準拠して測定される帯電性を示す値が、3kV以下(好ましくは1kV以下)となるものを採用可能である。また、制電部44の素材としては、例えば「JIS A 1455(床材及び床の帯電防止性能-測定・評価方法)」に準拠して評価される評価値(グレード)が、1(極めて高い帯電防止性能を持つ床材および床)、2(比較的高い帯電防止性能を持つ床材および床)、3(帯電防止性能を持つ床材および床)のいずれかに該当するものを採用可能である。本実施形態では、制電部44を適宜の帯電防止加工が施された化学繊維や金属繊維(メタルファイバー)等の導電性を有する素材により形成している。
【0085】
制電部44の下方は、制電部44からの静電気を逃し易い構成とされている。例えば、制電部44の下には絶縁シート42を設けず、適宜の導電性を有する下地を設けるようにしてもよい。
【0086】
帯電部45は、フロアマット43のうち、制電部44よりも帯電し易い部分である。帯電部45は、客室4の出入口の前の部分を除いて、フロアマット43Aの幅方向両側に設けられる。帯電部45は、第一実施形態に係るフロアマット43と同様、比較的帯電し易い素材で形成される。帯電部45は、床放電装置50(帯電用放電装置51及び除電用放電装置52)により、帯電した状態と除電された状態とに切り替えられる。
【0087】
上述の如きフロアマット43Aを用いた場合には、帯電用放電装置51による帯電を行う場合、制電部44は帯電せず、主として帯電部45のみが帯電する。このように、帯電部45を帯電させることで、帯電部45に粉塵を引き寄せると共に吸着させることができる。
【0088】
また、フロアマット43Aを用いた場合には、通路5において利用者が通行し易い位置に設けられた制電部44を帯電させないことで、制電部44の上を歩く利用者の衣服等が帯電することを抑制することができる。これにより、利用者の衣服等に溜まった静電気により、利用者が客室4のドアノブに触れた際に痛みを伴う放電が発生するようなことを抑制することができる。
【0089】
以上のように、本発明の第二実施形態に係る前記床材40(フロアマット43A)は、
帯電し難く形成された制電部44と、
前記制電部44が設けられた部分とは異なる部分に設けられ、帯電し易く形成された帯電部45と、
を具備し、
前記床放電装置50は、前記床材40のうち前記帯電部45を帯電させるものである。
【0090】
このような構成により、帯電部45に粉塵を吸着させることを可能としながらも、利用者が帯電することを抑制することができる。
【0091】
なお、本発明に係る粉塵除去システム10は、上記各実施形態で説明した例に限られず、種々の建物の内部空間に設置可能である。
【0092】
例えば、上記各実施形態では、粉塵除去システム10を、人感センサ20の検知に基づいて、エアシャワー30及び床放電装置50を起動させる構成としたが、このような態様に限られない。例えば、利用者のエレベーターの操作等に基づいて、利用者が花粉対策フロア6の客室4を利用することが推定される場合には、制御部70が、利用者がエレベーターホール3や通路5を通過する時刻を予測し、適宜のタイミングでエアシャワー30及び床放電装置50を起動させる構成を採用可能である。
【0093】
また、本実施形態では、エアシャワー30の動作中の花粉センサ34や微小粒子センサ35の検知結果に基づいて、送風部31及び吸気部33の出力の強弱を制御する構成としたが、このような態様に限られない。例えば、送風部31及び吸気部33の出力は一定とし、花粉センサ34や微小粒子センサ35の検知結果に基づいて、エアシャワー30の動作時間を延長したり短縮するような制御を行うようにしてもよい。
【0094】
また、本実施形態では、床材40の掃除を行う際に除電用放電装置52を起動し、フロアマット43の除電を行う構成としたが、フロアマット43の除電を行うタイミングとしては、床材40の掃除を行う際に限られず、適宜のタイミングを採用可能である。
【0095】
また、本実施形態では、帯電用放電装置51及び除電用放電装置52の2種類の装置を用いてフロアマット43(フロアマット43A)帯電した状態と除電された状態とに切り替える構成としたが、このような態様に限られない。例えば、帯電用放電装置51及び除電用放電装置52を、1つの装置で兼用するようにしてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、エアシャワー30を設けた例を示したが、このような態様に限られず、エアシャワー30を設けないようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、施設1を宿泊施設とした例を示したが、このような態様に限られず、施設1としては、オフィスビルや集合住宅等の種々の施設を採用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 施設
10 粉塵除去システム
30 エアシャワー
40 床材
50 床放電装置
60 空調機
70 制御部