(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】電動式建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
E02F9/20 C
(21)【出願番号】P 2021058546
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】宝 河
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】土方 聖二
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 遼
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150728(JP,A)
【文献】特開2003-155760(JP,A)
【文献】特開2015-178747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0341193(US,A1)
【文献】特開2006-083990(JP,A)
【文献】国際公開第2021/059337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20 - 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型の第1油圧ポンプと、
電源から電力が供給され、前記第1油圧ポンプを駆動する第1電動モータと、
前記第1油圧ポンプの吐出油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータにより駆動される複数の被駆動体の動作を指示する複数の操作装置と、
前記複数の操作装置の操作により前記第1油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブとを備えた電動式建設機械において、
固定容量型の第2油圧ポンプと、
前記電源から電力が供給され、前記第2油圧ポンプを駆動する第2電動モータと、
前記第1油圧ポンプの吐出油と前記第2油圧ポンプの吐出油を合流して前記コントロールバルブに供給する圧油供給路と、
前記圧油供給路の圧油の圧力を前記第1及び第2油圧ポンプからなるポンプ装置の吐出圧として検出する圧力センサと、
前記操作装置の操作と前記圧力センサによって検出された前記吐出圧とに基づいて、前記第1油圧ポンプの容量と、前記第1電動モータ及び前記第2電動モータの回転数とを制御する車体コントローラとを備え、
前記車体コントローラは、
前記吐出圧が第1閾値よりも低いときは、前記第1及び第2油圧ポンプのうち少なくとも前記第1油圧ポンプを駆動し、前記吐出圧が前記第1閾値以上にあるときは、前記第2油圧ポンプのみを駆動するように前記第1及び第2電動モータを制御するとともに、
前記吐出圧が前記第1閾値よりも低い第2閾値以上にあるときは、前記吐出圧が上昇するにしたがって前記第1及び第2油圧ポンプからなる前記ポンプ装置の吐出流量が連続的に減少し、前記ポンプ装置の出力を予め設定した最大出力以下に制限する出力制限制御を行うように、前記第1油圧ポンプの容量と前記第1及び第2電動モータの回転数を制御することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の電動式建設機械において、
前記車体コントローラは、
前記吐出圧が前記第1閾値よりも低いときは、前記第2油圧ポンプを停止し、前記第1油圧ポンプのみを駆動し、前記吐出圧が前記第1閾値以上にあるときは、前記第1油圧ポンプを停止し、前記第2油圧ポンプのみを駆動するよう前記第1及び第2電動モータを制御するとともに、
前記吐出圧が前記第2閾値と前記第1閾値との間にあるときは、前記第1油圧ポンプの出力が前記出力制限制御の最大出力を超えないように前記第1油圧ポンプの容量と前記第1電動モータの回転数を制御し、
前記吐出圧が前記第1閾値以上にあるときは、前記第2油圧ポンプの出力が前記出力制限制御の最大出力を超えないように前記第2電動モータの回転数を制御することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項3】
請求項1記載の電動式建設機械において、
前記圧油供給路は、
前記第1油圧ポンプに接続された第1油路と、
前記第2油圧ポンプに接続された第2油路と、
前記第1油路及び第2油路を前記コントロールバルブに接続する第3油路と、
前記第1油路に配置され、前記第1油圧ポンプの停止時に、前記第3油路から前記第1油圧ポンプへの圧油の逆流を防止するチェック弁とを備えることを特徴とする電動式建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の電動式建設機械において、
アキュムレータと、
前記アキュムレータを前記圧油供給路に接続する圧油補給路と、
前記圧油補給路に配置され、開位置と閉位置に切り換え可能な電磁切換弁とを更に備え、
前記車体コントローラは、
前記吐出圧が前記第1閾値よりも低いときは、前記電磁切換弁を前記閉位置に保持する閉指令を出力し、前記吐出圧が前記第1閾値以上になると、前記電磁切換弁を前記閉位置から前記開位置に切り換える開指令を出力することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項5】
請求項1記載の電動式建設機械において、
前記車体コントローラは、
前記吐出圧が前記第1閾値よりも低いときは、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプの両方を駆動し、前記吐出圧が前記第1閾値以上にあるときは、前記第1油圧ポンプを停止し、前記第2油圧ポンプの駆動を継続するよう前記第1及び第2電動モータを制御するとともに、
前記吐出圧が前記第2閾値と前記第1閾値との間にあるときは、第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプの合計出力が前記出力制限制御の最大出力を超えないように前記第1油圧ポンプの容量と前記第1及び第2電動モータの回転数を制御し、
前記吐出圧が前記第1閾値以上にあるときは、前記第2油圧ポンプの出力が前記出力制限制御の最大出力を超えないように前記第2電動モータの回転数を制御することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項6】
請求項1記載の電動式建設機械において、
前記第1閾値は、前記出力制限制御の特性図において、前記最大出力を示す等出力線の最大曲率点の圧力よりも高く、最大吐出圧の3/5の圧力よりも低い値に設定されていることを特徴とする電動式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を動力源とした電動式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化ガスの排出を抑えるため、従来の油圧ショベル等の建設機械のエンジンを電動モータに置き換えた電動式建設機械が開発・製品化されている。
【0003】
特許文献1は、走行モードと掘削モードと掘削エコモードの3種類の作業モードを設定するモード切替手段を備え、走行モードにおいては電動モータの回転数を第1の回転数に設定し、掘削モードにおいては電動モータの回転数を第1の回転数よりも小さな第2の回転数に設定し、掘削エコモードにおいては電動モータの回転数を第2の回転数より更に小さな第3の回転数に設定することで、電動モータの使用電力の無駄を削減し、省エネルギー化を図る技術を記載している。また、特許文献1は、作業モードに応じて電動モータの回転数だけでなく、電動モータの出力をも変更することに言及している。
【0004】
特許文献2は、ポンプ効率が高い領域でエンジンを稼働させ、油圧ポンプの効率を高めることを課題とし、エンジン回転数を横軸に持つエンジンのトルク線図上で、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとが釣り合うマッチング点が移動するようにエンジンを制御するエンジンの制御装置において、エンジンの回転数が低くなり油圧ポンプの容量が大きくなるトルク線図上の領域に、目標トルク線を設定し、この目標トルク線上の点でマッチングするように、エンジンを制御する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5851843号公報
【文献】特開2004-150304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように特許文献1では、電動式建設機械において、作業モードに応じて電動モータの回転数又は回転数と出力を変更することにより、電動モータの消費電力を削減し、省エネルギー化を図ることを提案している。
【0007】
しかし、電動モータの回転数又は回転数と出力を低下させた場合は、確かに電動モータの消費電力は低減するが、それだけでは、建設機械の力不足により作業効率が低下するなど、建設機械の掘削力等の本来の性能が損なわれてしまう可能性があり、真に省エネルギー化を実現したと言うことはできない。
【0008】
特許文献2では、エンジンの回転数が低くなり油圧ポンプの容量が大きくなるトルク線図上の領域に設定した目標トルク線上の点でマッチングするように、エンジンを制御しているため、ポンプ効率を高くすることができる。
【0009】
しかし、この提案技術もエンジン回転数を低くしており、建設機械の力不足により作業効率が低下するなど、建設機械の掘削力等の本来の性能が損なわれてしまう可能性がある。また、特許文献2は「エンジンの制御装置」を発明として提案しており、原動機としてエンジンの代わりに電動モータを使用することは意図していない。仮に原動機としてエンジンの代わりに電動モータを使用したとしても、目標トルク線上のマッチング点まで電動モータの出力を下げる必要があるため、掘削等の作業で油圧ポンプの油圧負荷が増加すると、電動モータが油圧ポンプの油圧負荷を支えられなくなり、システムが成立しなくなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、電動モータが油圧ポンプを駆動するときの油圧ポンプのポンプ効率を改善し、建設機械の本来の性能を損なうことなく、省エネルギー化を実現することできる電動式建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明は、可変容量型の第1油圧ポンプと、電源から電力が供給され、前記第1油圧ポンプを駆動する第1電動モータと、前記第1油圧ポンプの吐出油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータにより駆動される複数の被駆動体の動作を指示する複数の操作装置と、前記複数の操作装置の操作により前記第1油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブとを備えた電動式建設機械において、固定容量型の第2油圧ポンプと、前記電源から電力が供給され、前記第2油圧ポンプを駆動する第2電動モータと、前記第1油圧ポンプの吐出油と前記第2油圧ポンプの吐出油を合流して前記コントロールバルブに供給する圧油供給路と、前記圧油供給路の圧油の圧力を前記第1及び第2油圧ポンプからなるポンプ装置の吐出圧として検出する圧力センサと、前記操作装置の操作と前記圧力センサによって検出された前記吐出圧とに基づいて、前記第1油圧ポンプの容量と、前記第1電動モータ及び前記第2電動モータの回転数とを制御する車体コントローラとを備え、前記車体コントローラは、前記吐出圧が第1閾値よりも低いときは、前記第1及び第2油圧ポンプのうち少なくとも前記第1油圧ポンプを駆動し、前記吐出圧が前記第1閾値以上にあるときは、前記第2油圧ポンプのみを駆動するように前記第1及び第2電動モータを制御するとともに、前記吐出圧が前記第1閾値よりも低い第2閾値以上にあるときは、前記吐出圧が上昇するにしたがって前記第1及び第2油圧ポンプからなる前記ポンプ装置の吐出流量が連続的に減少し、前記ポンプ装置の出力を予め設定した最大出力以下に制限する出力制限制御を行うように、前記第1油圧ポンプの容量と前記第1及び第2電動モータの回転数を制御するものとする。
【0012】
このように第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの動作範囲を分け、第1及び第2油圧ポンプからなるポンプ装置の吐出圧に基づいて第1油圧ポンプの容量と第1電動モータ及び第2電動モータの回転数を制御することにより、第1及び第2油圧ポンプのそれぞれの動作領域において第1及び第2油圧ポンプはポンプ容量(流量)が大きくポンプ効率が高い領域で動作する頻度が増加し、1つのポンプで出力制限制御を行う場合に比べて第1及び第2電動モータの消費電力の無駄を削減し、省エネルギー化を実現することができる。また、建設機械の力不足による作業効率の低下を抑制することができる。これにより電動モータが油圧ポンプを駆動するときの油圧ポンプのポンプ効率を改善し、建設機械の本来の性能を損なうことなく、省エネルギー化を実現することできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電動モータが油圧ポンプを駆動するときの油圧ポンプのポンプ効率を改善し、建設機械の本来の性能を損なうことなく、省エネルギー化を実現することできる、
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電動式建設機械の一例としてクローラ型の油圧ショベルを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の電動式建設機械に搭載される油圧システムとその制御システムを含む全体システムを示す図である。
【
図3A】従来の油圧システムの出力制限制御の特性図にポンプ等効率線を重ねて示す図である。
【
図3B】第1の実施形態の油圧システムの出力制限制御の特性図にポンプ等効率線を重ねて示す図である。
【
図3C】第1の実施形態の油圧システムで使用する固定容量型の第2油圧ポンプの吐出圧の全範囲にわたって駆動した場合の流量特性にポンプ等効率線を重ねて示す図である。
【
図4】第1の実施形態の車体コントローラのアルゴリズムを示す図である。
【
図5A】目標容量演算部の目標容量の演算テーブルに設定された吐出圧と目標容量との関係を示す図である。
【
図5B】制限回転数演算部の第1電動モータの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【
図5C】要求回転数制限部の要求回転数の演算テーブルに設定された第1ポンプの要求回転数N1reqと修正回転数N1corとの関係を示す図である。
【
図6A】要求回転数制限部の要求回転数の制限回転数の演算テーブルに設定された第2ポンプの要求回転数N2reqと修正回転数N2corとの関係を示す図である。
【
図6B】制限回転数演算部の第2電動モータの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【
図7A】可変ポンプ制御部により第1ポンプと第1電動モータが制御されるときの第1ポンプの動作特性を示す図である。
【
図7B】固定ポンプ制御部により第2電動モータが制御されるときの第2ポンプの動作特性を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態の電動式建設機械に搭載される油圧システムとその制御システムを含む全体システムを示す図である。
【
図9】車体コントローラに設定された電磁切換弁を切り換える制御ロジックを示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態の電動式建設機械に搭載される油圧システムとその制御システムを含む全体システムを示す図である。
【
図11】本発明の第3実施形態の動作原理を示す
図3Bと同様な図である
【
図12】第3の実施形態の車体コントローラのアルゴリズムを示す図である。
【
図13A】目標容量演算部の目標容量の演算テーブルに設定された吐出圧と目標容量との関係を示す図である。
【
図13B】制限回転数演算部の第1電動モータの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【
図14】制限回転数演算部の第2電動モータの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【
図15A】可変ポンプ制御部により第1ポンプと第1電動モータが制御されるときの第1ポンプの動作特性を示す図である。
【
図15B】固定ポンプ制御部により第2電動モータが制御されるときの第2ポンプの動作特性を示す図である。
【
図16A】第1の実施形態の変形例において、可変ポンプ制御部の制限回転数演算部に設定した吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【
図16B】第1の実施形態の変形例において、固定ポンプ制御部に設定した吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
<第1の実施形態>
~建設機械~
図1は、本発明に係る電動式建設機械の一例としてクローラ型の油圧ショベルを示す図である。なお、本発明は、クローラ型の油圧ショベルに限らず、ホイール型の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の電動式建設機械にも適用可能である。
【0016】
図1において、油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動するブーム100a、アーム100b及びバケット100cからなる多関節型のフロント装置100Aと、上部旋回体100d及び下部走行体100eからなる車体100Bとで構成され、フロント装置100Aのブーム100aの基端は上部旋回体100dの前部に垂直方向に回動可能に支持され、上部旋回体100dは下部走行体100e上に旋回可能に搭載されている。ブーム100a、アーム100b、バケット100c、上部旋回体100d及び下部走行体100eはそれぞれブームシリンダ103a、アームシリンダ103b、バケットシリンダ103c、旋回モータ103d、左右の走行モータ103e,103fによりそれぞれ駆動される。ブーム100a、アーム100b、バケット100c、上部旋回体100dの動作はフロント・旋回用の操作レバー装置104a,104b(
図2参照)により生成される操作パイロット圧により指示され、下部走行体1eの動作は走行用の操作レバー/ペダル装置105a,105b(
図2参照)によって生成される操作パイロット圧により指示される。
【0017】
~全体システム(油圧システムと制御システム)~
図2は、本実施形態の電動式建設機械に搭載される油圧システムとその制御システムを含む全体システムを示す図である。油圧システムは符号200で示され、制御システムは符号300で示されている。
【0018】
本実施形態において、油圧システム200は、可変容量型の第1油圧ポンプ1aと、電源であるバッテリ8から電力が供給され、第1油圧ポンプ1aを駆動する第1電動モータ2aと、第1油圧ポンプ1aの吐出油により駆動される複数の油圧アクチュエータ(前述したブームシリンダ103a、アームシリンダ103b、バケットシリンダ103c、旋回モータ103d、左右の走行モータ103e,103f)と、複数の油圧アクチュエータ103a~103fにより駆動される複数の被駆動体である上述したブーム100a、アーム100b、バケット100c、上部旋回体100d及び下部走行体1eの動作を指示する操作装置(前述した操作レバー装置104a,104b及び操作レバー/ペダル装置105a,105b)と、第1油圧ポンプ1aの吐出油が供給され、操作装置104a,104b,105a,105bの操作に応じて複数の油圧アクチュエータ103a~103fに供給される圧油を制御する複数のスプール弁を内蔵したコントロールバルブ4とを備えている。
【0019】
第1油圧ポンプ1aはレギュレータ7を備え、レギュレータ7は第1油圧ポンプ1aの容量(例えば斜板の傾転)を可変に調整する。
【0020】
油圧システム200は、また、固定容量型の第2油圧ポンプ1bと、電源であるバッテリ8から電力が供給され、第2油圧ポンプ1bを駆動する第2電動モータ2bと、第1油圧ポンプ1aの吐出油と第2油圧ポンプ1bの吐出油を合流してコントロールバルブ4に供給する圧油供給路5とを備えている。
【0021】
圧油供給路5は、第1油圧ポンプ1aに接続された第1油路5aと、第2油圧ポンプ1bに接続された第2油路5bと、第1油路5a及び第2油路5bをコントロールバルブ4に接続する第3油路5cと、第1油路5aに配置され、第1油圧ポンプ1aの停止時に、第3油路5cから第1油圧ポンプ1aへの圧油の逆流を防止するチェック弁6とを有している。
【0022】
制御システム300は、圧油供給路5の圧油の圧力を第1及び第2油圧ポンプ1a,1bからなるポンプ装置1の吐出圧として検出する圧力センサ10と、操作装置104a,104b,105a,105bの操作パイロット圧のうち最も高い圧力を取り出すシャトル弁ブロック11と、このシャトル弁ブロック11によって取り出された操作パイロット圧を検出する圧力センサ12と、バッテリ8の直流電流を三相交流に変換し、第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数を制御する第1及び第2インバータ15a,15bと、車体コントローラ20とを備えている。
【0023】
圧力センサ10は圧油供給路5の第3油路5cに設けられ、第3油路5cを流れる圧油の圧力を第1及び第2油圧ポンプ1a,1bからなるポンプ装置1の吐出圧として検出する。なお、「第1及び第2油圧ポンプ1a,1bからなるポンプ装置1」とは、説明の便宜上そのように定義したが、「ポンプ装置1」を構成する第1及び第2油圧ポンプ1a,1bは機械的に一体の装置である必要はなく、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bはそれぞれ個別のポンプであってもよい。
【0024】
シャトル弁ブロック11と圧力センサ12は、シャトル弁ブロック11によって取り出された操作装置104a,104b,105a,105bの操作パイロット圧のうち最も高い圧力を圧力センサ12が検出することで、操作装置104a,104b,105a,105bの操作を検出する。
【0025】
車体コントローラ20は、シャトル弁ブロック11と圧力センサ12によって検出された操作装置104a,104b,105a,105bの操作と、圧力センサ10によって検出された吐出圧に基づいて、第1油圧ポンプ1aの容量と第1電動モータ2a及び第2電動モータ2bの回転数を制御する。
【0026】
~動作原理~
本発明の動作原理を
図3A、
図3B及び
図3Cを用いて説明する。なお、以下において、「油圧ポンプ」は適宜単に「ポンプ」と言う。
【0027】
図3Aは、従来の油圧システムの出力制限制御の特性図にポンプ等効率線を重ねて示す図であり、
図3Bは、本実施形態の油圧システムの出力制限制御の特性図にポンプ等効率線を重ねて示す図である。従来の油圧システムでは油圧ポンプは1つ(可変容量型の油圧ポンプ)であり、本実施形態ではポンプは2つ(可変容量型の第1ポンプ1aと固定容量型の第2ポンプ1b)である。
図3Cは、本実施形態の油圧システムで使用する固定容量型の第2ポンプ1bの吐出圧の全範囲にわたって駆動した場合の流量特性にポンプ等効率線を重ねて示す図である。
【0028】
図3A~
図3Cにおいて、横軸はそれぞれのポンプの吐出圧であり、縦軸はそれぞれのポンプの吐出流量である。2つのポンプを使用する本実施形態では、横軸の吐出圧はそれらの吐出油が流れる第3油路5cの圧力である。
図3Aの場合も
図3Bの場合も必要なポンプ出力は同じであるが、そのポンプ出力を
図3Aでは1つのポンプで発生し、
図3Bでは2つのポンプで発生する。
【0029】
符号Aで示される曲線は等出力線であり、横軸に示されるPL0(第2閾値)は出力制限制御の開始圧力である。Pmaxは油圧システムに備えられるメインリリーフ弁(図示せず)で決まる圧油供給路5の最大圧力(最大ポンプ吐出圧)である。縦軸のQ1maxは、第1ポンプ1aの容量が最大で、第1ポンプ1aが基準回転数(例えば1800rpm)で駆動されるときの吐出流量である。
【0030】
エンジンで駆動される可変容量型のポンプを備える油圧ショベルでは、掘削など高負荷時にはエンジンストールを防ぐため、吐出圧が高くなるにしたがってポンプの容量(流量)を制限している。具体的には、エンジン出力、補機の負荷及びポンプの効率(ポンプ効率)から許容される最大出力Mを設定し、吐出圧がPL0以上になると、吐出圧が高くなるにしたがって流量を減少させ、ポンプの出力が最大出力Mを超えないように(ポンプの吐出流量がM/吐出圧で算出される最大流量を超えないように)ポンプの容量(流量)を制御することで、ポンプの出力をMに制限している。この制御は一般に馬力制限制御(本明細書では出力制限制御という)と呼ばれている。この出力制限制御の最大出力Mが、
図3Aに示した等出力線Aで示されている。ポンプの吐出圧の全範囲で、ポンプの流量が常に等出力線Aの内側(原点側)にあれば、ポンプ出力はMを超えることがなく、エンジンストールを防ぐことができる。
【0031】
電動モータで駆動されるポンプの場合も同様であり、
図3Aに示すように等出力線Aを設定することで、ポンプの出力が最大出力Mを超えないようにポンプの容量と回転数を制御する。これにより掘削等の作業で油圧ポンプの油圧負荷が増加するとき、電動モータがポンプの油圧負荷を支えられなくなることを防止し、効率良く掘削等の作業を行うことができる。
【0032】
一方、ポンプの効率は容積効率及びトルク効率で規定される値であり、ポンプ容量が大きいほど容積効率及びトルク効率が良くなり、ポンプ効率が高くなることが知られており(例えば上述した特許文献2「特開2004-150304号公報」参照)、
図3Aに示すように、中間的な吐出圧で流量(容量)が大きいときにポンプ効率が最も高くなり、吐出圧と流量が低い領域ではポンプ効率は低下する。
【0033】
図3Bにおいて、縦軸に示されるQ2maxは、本実施形態における固定容量型の第2ポンプ1bが基準回転数(例えば1800rpm)で駆動されるときの流量(基準流量)である。第2ポンプ1bは
図3Cに示すように、吐出圧の全範囲にわたって基準回転数で駆動される場合は、常に一定の流量Q2maxを吐出する。横軸に示されるPL(第1閾値)は、本実施形態において第1及び第2ポンプ1a,1bの駆動形態を切り換える圧力(以下切り換え圧力と言う)である。
【0034】
本発明では、
図3Bに示すように、第1及び第2ポンプの動作範囲を分け、吐出圧がPLよりも低いときは、第1及び第2ポンプ1a,1bのうち少なくとも第1ポンプ1aを駆動し、吐出圧がPL以上にあるときは、第2ポンプ1bのみを駆動するように第1及び第2電動モータ2a,2bを制御する。また、吐出圧がPL0(第2閾値)以上にあるときは、吐出圧が上昇するにしたがって第1及び第2ポンプポンプ1a,1bからなるポンプ装置1の吐出流量が連続的に減少し、ポンプ装置1の出力を予め設定した最大出力M以下に制限する出力制限制御を行うように、第1ポンプ1aの容量と、第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数(第1ポンプ1a及び第2ポンプ1bの回転数)を制御する。
【0035】
1つのポンプで出力制限制御を行った場合は、ポンプ効率が高い領域が出力制限制御が行われる領域と重なるため、相対的にポンプ効率が低い領域でポンプを駆動せざるを得ないが、適切な動作範囲を持つ2つのポンプ(第1及び第2ポンプ1a,1b)を選んで上記のように動作させれば、出力制限制御を行っても、ポンプ効率が高い領域を使うことができる。
【0036】
これにより、第1及び第2ポンプ1a,1bのそれぞれの動作領域において、第1及び第2ポンプ1a,1bは容量(流量)が大きくポンプ効率が高い領域で動作する頻度が増加し、1つのポンプで出力制限制御を行う場合に比べて第1及び第2電動モータ2a,2bの消費電力の無駄を削減し、省エネルギー化を実現でき、しかも建設機械の力不足による作業効率の低下を抑制することができる。
【0037】
ここで、第2ポンプ1bの固定容量は、吐出圧がPLを超えたときの等出力線A上の動作点付近に基準流量を持つように設定する。
【0038】
また、切り換え圧力PLは、作業負荷によって変化する負荷圧力の分布や使用するポンプの効率の特性を考慮し、第1及び第2ポンプ1a,1bが一つのポンプ1として出力制限制御を行うときのポンプ効率が最適になるように設定すればよい。具体的には、出力制限制御の特性図を示す
図3Bにおいて、等出力線AはQ=M/Pで表される双曲線であり、切り換え圧力PL(第1閾値)は、等出力線Aの最大曲率点Xでの圧力よりも高く、最大吐出圧Pmaxの3/5の圧力よりも低い値に設定設定されることが好ましい。本実施形態では、一例として、切り換え圧力PLは最大吐出圧Pmaxの1/2に設定される。
【0039】
このように第2ポンプ1bの固定容量や切り換え圧力PL(第1閾値)を設定することにより、ポンプ効率の最適化が図れるとともに、等出力線A上の流量変化が小さい領域で第1ポンプ1aから第2ポンプ1bへの切り換えが行われるため、ポンプ切り換え時の吐出流量の変動を抑え、ポンプの切り換えをスムーズに行うことができる。
【0040】
~車体コントローラ~
車体コントローラ20は、上述した動作原理を実現するよう第1ポンプ1aの容量と、第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数(第1ポンプ1a及び第2ポンプ1bの回転数)を制御する。
【0041】
より詳しくは、車体コントローラ20は、圧力センサ10によって検出された吐出圧がPL(第1閾値)よりも低いときは、第1及び第2ポンプ1a,1bのうち少なくとも第1ポンプ1aを駆動し、吐出圧がPL(第1閾値)以上にあるときは、第2ポンプ1bのみを駆動するように第1及び第2電動モータ2a,2bを制御する。また、車体コントローラ20は、吐出圧がPL0(第2閾値)以上にあるときは、吐出圧が上昇するしたがって第1及び第2ポンプポンプ1a,1bからなるポンプ装置1の吐出流量が連続的に減少し、ポンプ装置1の出力を予め設定した最大出力M以下に制限する出力制限制御を行うように、第1ポンプ1aの容量と、第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数(第1ポンプ1a及び第2ポンプ1bの回転数)を制御する。
【0042】
また、上記制御を実現するため、本実施形態においては、車体コントローラ20は、吐出圧がPL(第1閾値)よりも低いときは、第2ポンプ1bを停止し、第1ポンプ1aのみを駆動し、吐出圧がPL(第1閾値)以上にあるときは、第1ポンプ1aを停止し、第2ポンプ1bのみを駆動するよう第1及び第2電動モータ2a,2bを制御する。車体コントローラ20は、吐出圧がPL0(第2閾値)とPL(第1閾値)との間にあるときは、第1ポンプ1aの出力が出力制限制御の最大出力Mを超えないように第1ポンプ1aの容量と第1電動モータ2aの回転数を制御し、吐出圧がPL(第1閾値)以上にあるときは、第2ポンプ1bの出力が出力制限制御の最大出力Mを超えないように第2電動モータの回転数を制御する。
【0043】
図4は、上述した制御を行う車体コントローラ20のアルゴリズムを示す図である。このアルゴリズムは車体コントローラ20内で繰り返し実行される。
【0044】
車体コントローラ20は、要求流量演算部20aと、可変ポンプ制御部20bと、固定ポンプ制御部20cとを有している。以下順番に説明する。
【0045】
要求流量演算部20a
要求流量演算部20aは要求流量の演算テーブルを備え、圧力センサ12によって検出された操作パイロット圧Piを入力し、操作パイロット圧Piに応じた目標流量Qreqを演算する。目標流量Qreqは2つのポンプ1a,1bを合わせた目標流量である。要求流量の演算テーブルには、操作パイロット圧Piが上昇するにしたがって目標流量Qreqが増大するように、操作パイロット圧Piと目標流量Qreqとの関係が設定されている。
【0046】
可変ポンプ制御部20b
可変ポンプ制御部20bは、第1ポンプ1aの目標容量演算部50と、第1電動モータ2aの制限回転数演算部51と、除算部53と、第1電動モータ2aの要求回転数制限部54と、最小値選択部55とを有している。
【0047】
目標容量演算部50は、第1ポンプ1aの目標容量の演算テーブルを備え、圧力センサ10によって検出された第3油路5cの圧力を第1ポンプ1aの吐出圧Psとして入力し、吐出圧Psに応じた第1ポンプ1aの目標容量q1を演算する。第1ポンプ1aの目標容量q1は容量指令としてレギュレータ7に出力される。また、第1ポンプ1aの目標容量q1は、除算部53に送られる。
【0048】
図5Aは、目標容量の演算テーブルに設定された吐出圧と目標容量との関係を示す図である。目標容量の演算テーブルには、吐出圧Psが0からPL0までにある間は、目標容量q1は最大容量qmaxで一定あり、吐出圧PsがPL0からPLまでにある間は、目標容量q1は最大容量qmaxから容量qaまで徐々に減少し、吐出圧PsがPL間から最大Pmaxまでにある間は、目標容量q1は容量qaで一定となるように、吐出圧Psと目標容量q1との関係が設定されている。容量qaは後述する第2ポンプ1bの固定容量q2に等しい値に設定されている。
【0049】
制限回転数演算部51は、第1電動モータ2aの制限回転数の演算テーブルを備え、圧力センサ10によって検出された第3油路5cの圧力を第1ポンプ1aの吐出圧Psとして入力し、吐出圧Ps に応じた第1電動モータ2aの制限回転数N1を演算する。
【0050】
図5Bは、第1電動モータ2aの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。制限回転数の演算テーブルには、吐出圧Psが0からPL0までにある間は、制限回転数N1は出力制限制御の最大回転数N1amaxで一定あり、吐出圧PsがPL0からPLまでにある間は、制限回転数N1は最大回転数N1amaxから中間回転数Na1まで徐々に減少し、吐出圧PsがPLからPmaxまでにある間は、制限回転数N1はゼロとなる(第1電動モータ2aが停止する)ように、吐出圧Psと制限回転数N1との関係が設定されている。
【0051】
ここで、吐出圧PsがPL0にあるとき、第1ポンプ1aは
図5Aの最大容量qmaxにあり、第1電動モータ2aは
図5Bの最大回転数N1amaxにあり、第1ポンプ1aは
図3Bの最大流量Q1maxを吐出する。このときのqmax及びN1amaxとQ1maxとの関係は以下の式で表される。
【0052】
Q1max=qmax×N1amax
また、吐出圧PsがPLまで低下すると、第1ポンプ1aは
図5Aの容量qaにあり、第1電動モータ2aは
図5Bの中間回転数Na1にあり、第1ポンプ1aは
図3Bの流量Q2max(第2ポンプ1bの基準流量)と等しい流量を吐出する。このときのqa及びNa1とQ2maxとの関係は以下の式で表される。
【0053】
Q2max=qa×Na1
N1amaxは第1電動モータ2aの基準回転数(例えば1800rpm)である。
【0054】
吐出圧PsがPL0からPLまで変化する間の第1ポンプ1aの容量q1と第1電動モータ2aの制限回転数N1の変化割合は、吐出圧Psと制限回転数N1との積(出力)が
図3Bの等出力曲線A上の最大出力Mに等しくなるように設定されている。
【0055】
除算部53は、要求流量演算部20aで演算された目標流量Qreqを目標容量演算部50で演算された第1ポンプ1aの目標容量q1で除算し、第1ポンプ1aの要求回転数N1reqを演算する。
【0056】
要求回転数制限部54は、第1電動モータ2aの要求回転数の制限テーブルを備え、除算部53によって演算された第1ポンプ1aの要求回転数N1reqを入力し、要求回転数N1reqの最小値と最大値を制限した修正回転数N1corを演算する。
【0057】
図5Cは、要求回転数の演算テーブルに設定された第1ポンプ1aの要求回転数N1reqと修正回転数N1corとの関係を示す図である。要求回転数の制限テーブルには、要求回転数N1reqがゼロから回転数N0までにある間は、修正回転数N1corはゼロnであり、要求回転数N1reqがN0から回転数Nrまでにある間は、要求回転数N1reqが増大するにしたがって修正回転数N1corも増大し、要求回転数N1reqが回転数Nrを超えると、修正回転数N1corは許容最大回転数N1maxで一定となるように要求回転数N1reqと修正回転数N1corとの関係が設定されている。
【0058】
図5Bに示した出力制限制御の最大回転数N1amxは、許容最大回転数N1maxよりもわずかに小さい値に設定されている。N1amxはN1maxと等しい値に設定してもよい。
【0059】
最小値選択部55は、制限回転数演算部51で演算された制限回転数N1と要求回転数制限部54で演算された修正回転数N1corの小さい方の値を第1電動モータ2aの目標回転数指令として選択し、その目標回転数指令を第1電動モータ2aのインバータ3aに出力する。
【0060】
これにより吐出圧PsがPL0からPLまでにある間、N1cor<N1の範囲では、第1ポンプ1aは
図3Bの等出力線Aの内側で動作し、N1cor≧N1の範囲では、第1ポンプ1aは
図3Bの等出力線A上で動作する。
【0061】
吐出圧がPL0以下のとき、吐出圧とポンプ容量の積で表される出力は等出力線Aの最大出力Mより小さく、第1ポンプ1aは
図3Bの吐出圧がPL0以下の領域で要求流量に応じて動作する。
【0062】
固定ポンプ制御部20c
固定ポンプ制御部20cは、除算部56と、第2電動モータ2bの要求回転数制限部57と、第2電動モータ2bの制限回転数演算部58と、最小値選択部59とを有している。
【0063】
除算部56は、要求流量演算部20aで演算された目標流量Qreqを第2ポンプ1bの固定容量q2で除算し、第2ポンプ1bの要求回転数N2reqを演算する。
【0064】
要求回転数制限部57は、第2電動モータ2bの要求回転数の制限テーブルを備え、除算部56によって演算された第2ポンプ1bの要求回転数N2reqを入力し、要求回転数N2reqの最小値と最大値を制限した修正回転数N2corを演算する。
【0065】
図6Aは、要求回転数の制限回転数の演算テーブルに設定された第2ポンプ1bの要求回転数N2reqと修正回転数N2corとの関係を示す図である。要求回転数の制限テーブルには、第1電動モータ2aの要求回転数制限部54と同様、要求回転数N2reqがゼロから回転数N0までにある間は、修正回転数N2corはゼロであり、要求回転数N2reqがN0から回転数Nrまでにある間は、要求回転数N2reqが増大するにしたがって修正回転数N2corも増大し、要求回転数N2reqが回転数Nrを超えると、修正回転数N2corは許容最大回転数N2maxで一定となるように要求回転数N2reqと修正回転数N2corとの関係が設定されている。
【0066】
制限回転数演算部58は、第2電動モータ2bの制限回転数の演算テーブルを備え、圧力センサ10によって検出された第3油路5cの圧力を第2ポンプ1bの吐出圧Psとして入力し、吐出圧Ps に応じた第2電動モータ2bの制限回転数N2を演算する。
【0067】
図6Bは、第2電動モータ2bの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。制限回転数の演算テーブルには、吐出圧Psが0からPLまでにある間は、制限回転数N2はゼロであり、吐出圧PsがPLからPmaxまでにある間は、制限回転数N2は出力制限制御の最大回転数N2bmaxから出力制限制御の最小回転数N2minまで徐々に減少するように、吐出圧Psと制限回転数N2との関係が設定されている。
【0068】
ここで、吐出圧PsがPLにあるとき、固定容量q2の第2ポンプ1bは
図3Bの最大流量Q1maxを吐出する。このときのN2bmaxとQ1maxとの関係は以下の式で表される。
【0069】
Q2max=q2×N2bmax
N2bmaxは許容最大回転数N2maxよりわずかに小さい値に設定されている。N2bmaxはN2maxと等しい値に設定してもよい。
【0070】
また、吐出圧PsがPmaxにあるとき、固定容量q2の第2ポンプ1bは
図3Bの最小流量Q2minを吐出する。このときのN2minとQ2minとの関係は以下の式で表される。
【0071】
Q2min=q2×N2min
吐出圧PsがPLからPmaxまで変化する間の第2電動モータ2bの制限回転数N2の変化割合は、吐出圧Psと制限回転数N2との積(出力)が
図3Bの等出力線A上の最大出力Mに等しくなるように設定されている。
【0072】
最小値選択部59は、制限回転数演算部58で演算された第2電動モータ2bの制限回転数N2と要求回転数制限部57で演算された修正回転数N2corの小さい方の値を第2電動モータ2bの目標回転数指令として選択し、その目標回転数指令を第2電動モータ2bのインバータ3bに出力する。
【0073】
これにより吐出圧PsがゼロからPLまでにある間、第2ポンプ1bの吐出流量はゼロとなり、PLからPmaxまでにある間、N2cor<N2の範囲では、第2ポンプ1bは
図3Bの等出力線Aの内側で動作し、N2cor≧N2の範囲では、第2ポンプ1bは
図3Bの等出力線A上で動作する。
【0074】
図7Aは、可変ポンプ制御部20bにより第1ポンプ1aと第1電動モータ2aが制御されるときの第1ポンプ1aの動作特性を示す図である。
図7Bは、固定ポンプ制御部20cにより第2電動モータ2bが制御されるときの第2ポンプ1bの動作特性を示す図である。
【0075】
図7Aにおいて、吐出圧PsがPL0からPLまでにある間は、第1ポンプ1aの出力は等出力線A上の最大出力Mに制限され、吐出圧PsがPLになると、第1ポンプ1aは停止する。
【0076】
図7Bにおいて、吐出圧PsがゼロからPL0までにある間は、第2ポンプ1bは停止しており、吐出圧PsがPLになると、第2ポンプ1bは回転を開始し、吐出圧PsがPLからPmaxまでにある間、第2ポンプ1bの出力は等出力線A上の最大出力Mに制限される。
【0077】
このように動作する第1ポンプ1aと第2ポンプ1bの動作特性を合成することで、
図3Bに示した動作特性が得られる。
【0078】
~効果~
本実施形態によれば以下の効果が得られる。
【0079】
1.本実施形態において、車体コントローラ20は、圧油供給路5の圧油の圧力(吐出圧)がPLよりも低いときは、第1及び第2ポンプ1a,1bのうち少なくとも第1ポンプ1aを駆動し、吐出圧がPL以上になると、第2ポンプ1bのみを駆動するように第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数を制御する。また、車体コントローラ20は、吐出圧がPL0(第2閾値)以上になると第1及び第2ポンプポンプ1a,1bが1つのポンプとして出力制限制御を行うように、第1ポンプ1aの容量と、第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数(第1ポンプ1a及び第2ポンプ1bの回転数)を制御する。
【0080】
これにより第1及び第2ポンプ1a,1bのそれぞれの動作領域において、第1及び第2ポンプ1a,1bはポンプ容量(流量)が大きくポンプ効率が高い領域で動作する頻度が増加し、1つのポンプで
図3Aに示すように出力制限制御を行う場合に比べて第1及び第2電動モータ2a,2bの消費電力の無駄を削減し、省エネルギー化を実現することができる。また、建設機械の力不足による作業効率の低下を抑制することができる。
【0081】
このように本実施形態によれば、電動モータが駆動する油圧ポンプのポンプ効率を改善し、建設機械の本来の性能を損なうことなく、省エネルギー化を実現することできる。
【0082】
2.また、本実施形態においては、電源としてバッテリ8を用いており、上述した省エネルギー化によりバッテリ8の消費電力が減少し、建設機械の稼働時間を長期化することができる。
【0083】
なお、電源として商用電源を用いた場合は、使用電力量が減るため、電力料金を安価にすることができる。
【0084】
3.また、本実施形態においては、第2ポンプ1bの固定容量は、吐出圧がPLを超えたときの等出力線A上の動作点付近に基準流量を持つように設定されている。また、切り換え圧力PLは、等出力線Aの最大曲率点Xでの圧力よりも高く、最大吐出圧Pmaxの3/5の圧力よりも低い値に設定設定され、一例として、切り換え圧力PLは最大吐出圧Pmaxの1/2に設定されている。これによりポンプ効率の最適化が図れるとともに、等出力線A上の流量変化が小さい領域で第1ポンプ1aから第2ポンプ1bへの切り換えが行われるため、ポンプ切り換え時の吐出流量の変動を抑え、ポンプの切り換えをスムーズに行うことができる。
【0085】
4.更に、本実施形態においては、第1ポンプ1aの圧油供給路である第1油路5aに、第1ポンプ1aの停止時に、第3油路5cから第1ポンプ1aへの圧油の逆流を防止するチェック弁6を設置した。これにより吐出圧がPL(第1閾値)を超え、第1ポンプ1aを停止して第2ポンプ1bを駆動するとき、第2ポンプ1bの吐出油が第1ポンプ1aに逆流することを防止し、第2ポンプ1bの吐出油の全量をアクチュエータに供給することができる。
【0086】
<変形例>
上記の実施形態では、
図5B及び
図5Cに示したように、可変ポンプ制御部20bの制限回転数演算部51において、吐出圧PsがPmaxまで上昇すると、制限回転数N1はステップ的にゼロに減少し(第1電動モータ2aが停止し)、固定ポンプ制御部20cの制限回転数演算部58において、吐出圧PsがPLになると、制限回転数N2はステップ的にN2bmaxに増加するように、吐出圧Psと制限回転数N1,N2との関係を設定した。しかし、制限回転数N1,N2は、切り換え圧力PLにおいて、それぞれ、所定の変化率で変化するように設定してもよい。
【0087】
図16A及び
図16Bは、そのように制限回転数N1,N2を設定した場合の吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【0088】
制限回転数演算部51の制限回転数の演算テーブルには、
図16Aに示すように、吐出圧PsがPL以上になると、制限回転数N1が中間回転数Naから斜線H1に沿って減少するように吐出圧Psと制限回転数N1との関係が設定されている。また、制限回転数演算部58の制限回転数の演算テーブルには、
図16Bに示すように、吐出圧PsがPL以上になると、制限回転数N1がゼロから斜線H2に沿って増加するように吐出圧Psと制限回転数N2との関係が設定されている。斜線H1のN1の変化率と斜線H2の変化率は、N1とそのときの第1ポンプ1aの目標容量q1との積(=流量)と、第2ポンプ1bの固定容量q2との積(=流量)との和が
図3Bに示す等出力線A上の流量に一致するように設定される。これにより吐出圧PsがPLを超え、油圧ポンプが第1ポンプ1aから第2ポンプ1bに切り換わるときの流量変動を更に抑えることができる。
【0089】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を
図8及び
図9を用いて説明する。
【0090】
図8、本発明の第2の実施形態の電動式建設機械に搭載される油圧システムとその制御システムを含む全体システムを示す図である。油圧システムは符号200Aで示され、制御システムは符号300でA示されている。車体コントローラは符号20Aで示されている。
【0091】
本実施形態において、油圧システム200Aは、
図2に示す第1の実施形態の油圧システム200の構成要素に加えて、アキュムレータ60と、アキュムレータ60を圧油供給路5の第3油路5cに接続する圧油補給路61と、圧油補給路61に配置され、開位置と閉位置に切り換え可能な電磁切換弁62とを更に備えている。
【0092】
また、油圧システム200Aは、圧油補給路61と並列に設けられ、ブーム101a(
図1参照)の慣性負荷でブーム下げ方向に駆動されることのあるブームシリンダ103aのボトム側をアキュムレータ60に接続する圧油回収路63と、この圧油回収路63に設置され、ブームシリンダ103aのボトム側の圧力が圧油補給路61の圧力以上になったときに開弁し、ブームシリンダ103aのボトム側の圧油の一部をアキュムレータ60に回収し蓄圧するチェック弁64とを備えている。
【0093】
圧油回収路63に接続される油圧アクチュエータは、被駆動部材の慣性負荷で駆動されることのあるアクチュエータであれば、ブームシリンダ103a以外のアクチュエータ、例えば
図1に示されるアームシリンダ103b、旋回モータ103d、或いはそれらの組み合わせなど、それ以外のアクチュエータであってもよい。
【0094】
図9は、車体コントローラ20Aに設定された電磁切換弁62を切り換える制御ロジックを示す図である。
【0095】
車体コントローラ20Aは、電磁切換弁62の切り換え圧力として、前述した切り換え圧力(第1閾値)PLに等しい圧力を設定し、圧油供給路5の第3油路5cの圧力である吐出圧が第1閾値PLよりも低いときは、電磁切換弁62を閉位置に保持する閉指令を出力し、吐出圧が第3閾値PL以上になると、電磁切換弁62を閉位置から開位置に切り換える開指令を出力する。
【0096】
このように構成した本実施形態においては、圧油供給路5の第3油路5cの圧力が切り換え圧力PL(第1閾値)を超え、第1ポンプ1aを停止し、第2ポンプ1bのみを駆動するよう第1及び第2電動モータ2a,2bを制御するとき、それと同時に、車体コントローラ20Aは電磁切換弁62に開指令を出力して電磁切換弁62を開位置に切り換え、アキュムレータ60の蓄圧された圧油を圧油供給路5に合流させる。これによりコントロールバルブ4に圧油を供給する油圧ポンプが第1ポンプ1aから第2ポンプ1bに切り換わる際の圧力変動が吸収され、第1及び第2ポンプ1a,1bの切り換えを更にスムーズに行うことができる。
【0097】
また、アキュムレータ60は、油圧シリンダ103aから排出され、回収した圧油を利用して蓄圧するため、特別な油圧源を必要とせず、省エネルギー化が図れる。
【0098】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態を
図10~
図15Bを用いて説明する。
【0099】
~全体システム(油圧システムと制御システム)~
図10は、本発明の第3実施形態の電動式建設機械に搭載される油圧システムとその制御システムを含む全体システムを示す図である。
【0100】
図10において、車体コントローラは符号20Bで示され、車体コントローラ20Bを含む制御システムが符号300Bで示されている。本実施形態では、車体コントローラ20Bのアルゴリズムが第1の実施形態と異なっている。それ以外の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0101】
~動作原理~
図11は、本実施形態の油圧システムの出力制限制御の特性図にポンプ等効率線を重ねて示す、
図3Bと同様な図である
本実施形態では、吐出圧がPLは以下であるときは第1ポンプ1aと第2ポンプ1bの両方が駆動され、吐出圧がPLを超えると、第1ポンプ1aが停止し、第2ポンプ1bのみが駆動されるように第1及び第2電動モータ2a,2bを制御する。
【0102】
このように2つのポンプ1a,1bの動作領域を分けた場合でも、吐出圧がPLを超えたときは第1ポンプ1aを駆動せず、吐出圧がPLを超えたときの等出力線A上の動作点付近に基準流量を持つ固定容量型の第2ポンプのみを駆動し、吐出圧がPL以下のときは、第1ポンプ1aだけでなく、第2ポンプ1bも駆動する。これにより第1及び第2ポンプ1a,1bのそれぞれの動作領域において、第1及び第2ポンプ1a,1bはポンプ容量(流量)が大きくポンプ効率が高い領域で動作する頻度が更に増加する。
【0103】
また、本実施形態では、第2ポンプ1bは全吐出範囲で動作するため、切り換え圧力PLにおいて第1ポンプ1aが停止するポンプ切り換え時に吐出流量の変動は発生せず、ポンプの切り換えを極めてスムーズに行うことができる。
【0104】
~車体コントローラ~
車体コントローラ20Bは、上述した動作原理を実現するよう第1ポンプ1aの容量と、第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数(第1ポンプ1a及び第2ポンプ1bの回転数)を制御する。
【0105】
より詳しくは、車体コントローラ20Bは、圧油供給路5の圧油の圧力(吐出圧)が切り換え圧力PL(第1閾値)よりも低いときは、第1ポンプ1aと第2ポンプ1bの両方を駆動し、吐出圧がPL(第1閾値)以上にあるときは、第1ポンプ1aを停止し、第2ポンプ1bの駆動を継続するよう第1及び第2電動モータ2a,2bを制御する。また、車体コントローラは、吐出圧がPL0(第2閾値)とPL(第1閾値)との間にあるときは、第1ポンプ1aと第2ポンプ1bの合計出力が出力制限制御の最大出力Mを超えないように第1ポンプ1aの容量と第1及び第2電動モータ2a,2bの回転数を制御し、吐出圧がPL(第1閾値)以上にあるときは、第2ポンプ1bの出力が出力制限制御の最大出力Mを超えないように第2電動モータ2bの回転数を制御する。
【0106】
図12は、上述した動作原理を実現する車体コントローラ20Bのアルゴリズムを示す図である。
【0107】
図12において、本実施形態は、
図4に示す第1の実施形態のアルゴリズムに対し、以下の点で相違している。
【0108】
1.可変ポンプ制御部20Bbにおいて、第1電動モータ2aの制限回転数演算部51に代えて制限回転数演算部51Bを備え、かつ第1の実施の形態になかった減算部52を備え、減算部52の演算値が除算部53に入力される点。
【0109】
2.固定ポンプ制御部20Bcにおいて、第2電動モータ2bの制限回転数演算部58に代えて制限回転数演算部58Bを備えている点。
【0110】
図13Aは、可変ポンプ制御部20Bbにおける第1ポンプ1aの目標容量演算部50の目標容量の演算テーブルに設定された吐出圧と目標容量との関係を示す図である。
図13Aは第1の実施形態の
図5Aと同じであるが、第1電動モータ2aの制限回転数演算部51Bに係わる説明の理解を容易にするため再掲したものである。
【0111】
図13Bは、制限回転数演算部51Bの第1電動モータ2aの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【0112】
図13Bにおいて、制限回転数演算部51Bの制限回転数の演算テーブルには、吐出圧Psが0からPL0までにある間は、制限回転数N1は出力制限制御の最大回転数Ncmaxで一定あり、吐出圧PsがPL0からPLまでにある間は、制限回転数N1は最大回転数Ncmaxからゼロまで減少する(第1電動モータ2aが停止する)ように、吐出圧Psと制限回転数N1との関係が設定されている。
【0113】
ここで、吐出圧PsがPL0にあるとき、第1ポンプ1aは
図13Aの最大容量qmaxにあり、第1電動モータ2aは
図13Bの最大回転数Ncmaxにあり、第1ポンプ1aは
図11の最大流量Q1max-Q2maxを吐出する。Q1max-Q2maxをQ3maxで表わすと(Q3max=Q1max-Q2max),このときのqmax及びNcmaxとQ3maxとの関係は以下の式で表される。
【0114】
Q3max=qmax×Ncmax
すなわち、Ncmaxは、第1の実施形態の最大回転数N1amax(
図5B)よりも小さく、Q3max=qmax×Ncmaxで表わされる値である。
【0115】
また、吐出圧PsがPLにあるとき、第1ポンプ1aは
図13Aの容量qaにあり、第1電動モータ2aの回転数は
図13Bに示すようにゼロとなり、
図11の第2ポンプ1bの流量Q2maxの動作点において、第1ポンプ1aの吐出流量はゼロとなる。
【0116】
吐出圧PsがPL0からPLまで変化する間の第1ポンプ1aの容量q1と第1電動モータ2aの制限回転数N1の変化割合は、吐出圧Psと制限回転数N1との積(出力)が
図3Bの等出力線A上の最大出力Mに等しくなるように設定されている。
【0117】
減算部52は、要求流量演算部20aで演算された目標流量Qreqから固定容量型の第2ポンプ1bが基準回転数で駆動されるときの流量(基準流量)Q2maxを減算し、第1ポンプ1aの要求される目標流量Qreq1を演算する。除算部53は、その目標流量Qreq1を目標容量演算部50で演算された第1ポンプ1aの目標容量q1で除算し、第1ポンプ1aの要求回転数N1reqを演算する。
【0118】
要求回転数制限部54は、除算部53によって演算された第1ポンプ1aの要求回転数N1reqを入力し、要求回転数N1reqの最小値と最大値を制限した修正回転数N1corを演算する。要求回転数制限部54の演算内容は第1の実施形態の要求回転数制限部54と同じである。
【0119】
図14は、制限回転数演算部58Bの第2電動モータ2bの制限回転数の演算テーブルに設定された吐出圧と制限回転数との関係を示す図である。
【0120】
図14において、制限回転数の演算テーブルには、吐出圧Psが0からPLまでにある間は、制限回転数N2は出力制限制御の最大回転数N2bmaxで一定であり、吐出圧PsがPLからPmaxまでにある間は、制限回転数N2はN2bmaxから出力制限制御の最小回転数N2minまで徐々に減少するように、吐出圧Psと制限回転数N2との関係が設定されている。
【0121】
ここで、吐出圧PsがPLにあるとき、第2電動モータ2bは
図14の最大回転数N2bmaxにあり、固定容量q2の第2ポンプ1bは
図11の最大流量Q2maxを吐出する。このときのN2bmaxとQ2maxとの関係は以下の式で表される。
【0122】
Q2max=q2×N2bmax
また、吐出圧PsがPmaxにあるとき、第2電動モータ2bは
図14の最小回転数N2minにあり、固定容量q2の第2ポンプ1bは
図11の最小流量Q2minを吐出する。そのときのNbminとQ2minとの関係は以下の式で表される。
【0123】
Q2min=q2×N2min
吐出圧PsがPLからPmaxまで変化する間の第2電動モータ2bの制限回転数N2の変化割合は、吐出圧Psと制限回転数N2との積(出力)が
図11の等出力線A上の最大出力Mに等しくなるように設定されている。
【0124】
要求回転数制限部57の演算内容は第1の実施形態の要求回転数制限部57と同じである。
【0125】
図15Aは、可変ポンプ制御部20Bbにより第1ポンプ1aと第1電動モータ2aが制御されるときの第1ポンプ1aの動作特性を示す図である。
図15Bは、固定ポンプ制御部20Bcにより第2電動モータ2bが制御されるときの第2ポンプ1bの動作特性を示す図である。
【0126】
図15Aにおいて、吐出圧PsがゼロからPL0までにある間は、第1ポンプ1aはQ3max(=Q1max-Q2max)を最大流量とし、Q3max以下の流量を吐出し、吐出圧PsがPL0からPLまでにある間は、第1ポンプ1aの出力は等出力線A上の最大出力Mに制限され、吐出圧PsがPLになると、第1ポンプ1aは停止する。
【0127】
図15Bにおいて、吐出圧PsがゼロからPLまでにある間は、第2ポンプ1bは最大流量Q2maxの流量を吐出し、吐出圧PsがPLになると、第2ポンプ1bは等出力線A上で動作し始め、吐出圧PsがPLからPmaxまでにある間、第2ポンプ1bの出力は等出力線A上の最大出力Mに制限される。
【0128】
このように動作する第1ポンプ1aと第2ポンプ1bの動作特性を合成することで、
図11に示す動作特性が得られる。
【0129】
このように構成した本実施形態においては、吐出圧がPL以上になると第1ポンプ1aを駆動せず、吐出圧がPL以上のときの等出力線A上の動作点付近に基準流量を持つ固定容量型の第2ポンプのみを駆動し、吐出圧がPLよりも低いときは、第1ポンプ1aだけでなく、第2ポンプ1bも駆動する。これにより第1及び第2ポンプ1a,1bのそれぞれの動作領域において、第1及び第2ポンプ1a,1bはポンプ容量(流量)が大きくポンプ効率が高い領域で動作する頻度が一層増加し、建設機械の本来の性能を損なうことなく、省エネルギー化を実現することできる。
【0130】
また、本実施形態では、第2ポンプ1bは全吐出範囲で動作するため、切り換え圧力PLにおいて第1ポンプ1aが停止するポンプ切り換え時に吐出流量の変動は発生せず、ポンプの切り換えを極めてスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0131】
1a 第1油圧ポンプ
1b 第2油圧ポンプ
2a 第1電動モータ
2b 第2電動モータ
4 コントロールバルブ
5 圧油供給路
5a 第1油路
5b 第2油路
5c 第3油路
6 チェック弁
7 レギュレータ
8 バッテリ(電源)
10 圧力センサ
11 シャトル弁ブロック
12 圧力センサ
20,20A,20B 車体コントローラ
20a 要求流量演算部
20b 可変ポンプ制御部
20c 固定ポンプ制御部
50 第1ポンプ1aの目標容量演算部
51 第1電動モータ2aの制限回転数演算部
52 減算部
53 除算部
54 第1電動モータ2aの要求回転数制限部
55 最小値選択部
60 アキュムレータ
61 圧油補給路
62 電磁切換弁
63 圧油回収油路
64 チェック弁
103a~103f 複数の油圧アクチュエータ
104a,104b,105a,105b 複数の操作装置
A 等出力線
M 出力制限制御の最大出力
PL 第1閾値
PL0 第2閾値
X 最大曲率点