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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2792 20220101AFI20241224BHJP
【FI】
H02K1/2792
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021075638
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169918
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174451(JP,A)
【文献】特開2019-068729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータであって、
前記モータの回転軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられた第1磁石部と、
前記周方向に沿って環状に設けられ、前記回転軸に平行な軸方向において前記第1磁石部に重なって配置された第2磁石部と、
前記回転軸に垂直な径方向において前記第1磁石部に対向して配置されたコイル部と、
を備え、
前記第1磁石部には、前記第1磁石部からの磁束が前記コイル部に集まるように、前記径方向に沿った磁化方向を有する第1主磁石と、前記周方向に沿った磁化方向を有する第1副磁石とを含んだ複数の磁石がハルバッハ配列で並んで配置され、
前記第2磁石部には、前記第2磁石部からの磁束が前記第1磁石部に集まるように、前記軸方向に沿った磁化方向を有する第2主磁石と、前記周方向に沿った磁化方向を有する第2副磁石とを含んだ複数の磁石がハルバッハ配列で並んで配置され、
前記第2主磁石は、前記軸方向において前記第1主磁石に重なって配置され、
前記第2副磁石は、前記軸方向において前記第1副磁石に重なって配置されている、
モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記周方向に沿った前記第1副磁石の長さは、前記周方向に沿った前記第1主磁石の長さよりも短い、モータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータであって、
前記軸方向に沿った前記第2磁石部の厚みは、前記軸方向に沿った前記第1磁石部の厚みよりも薄い、モータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータであって、
前記コイル部は、前記回転軸と前記第1磁石部との間に配置されている、モータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータであって、
前記第2磁石部は、前記軸方向における前記第1磁石部の両側に配置されている、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状に配置された複数の磁石と、複数の磁石の内側に配置されたコイルとを備えるモータが開示されている。このモータでは、磁石からの磁束がコイルに集まるように、モータの径方向に沿った磁化方向を有する磁石と、モータの周方向に沿った磁化方向を有する磁石とがハルバッハ配列で並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-024379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したモータのように、ハルバッハ配列で並んだ複数の磁石を有するモータでは、モータの径方向に沿った磁化方向を有する磁石からモータの軸方向に沿って磁束の漏れが生じることがある。漏れた磁束は、モータのトルクに寄与しないばかりか、モータの周辺に配置されるセンサに悪影響を与える可能性がある。そのため、ハルバッハ配列で並んだ磁石からモータの軸方向に沿って磁束が漏れることを抑制する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、モータが提供される。このモータは、前記モータの回転軸を中心とした周方向に沿って環状に設けられた第1磁石部と、前記周方向に沿って環状に設けられ、前記回転軸に平行な軸方向において前記第1磁石部に重なって配置された第2磁石部と、前記回転軸に垂直な径方向において前記第1磁石部に対向して配置されたコイル部と、を備える。前記第1磁石部には、前記第1磁石部からの磁束が前記コイル部に集まるように、前記径方向に沿った磁化方向を有する第1主磁石と、前記周方向に沿った磁化方向を有する第1副磁石とを含んだ複数の磁石がハルバッハ配列で並んで配置され、前記第2磁石部には、前記第2磁石部からの磁束が前記第1磁石部に集まるように、前記軸方向に沿った磁化方向を有する第2主磁石と、前記周方向に沿った磁化方向を有する第2副磁石とを含んだ複数の磁石がハルバッハ配列で並んで配置され、前記第2主磁石は、前記軸方向において前記第1主磁石に重なって配置され、前記第2副磁石は、前記軸方向において前記第1副磁石に重なって配置されている。
この形態のモータによれば、第2磁石部が軸方向において第1磁石部に重なって配置されているので、第1主磁石から流れ出る磁束が軸方向に沿って漏れることを抑制し、第1主磁石からコイル部に向かう磁束を多くすることができる。そのため、モータから軸方向に沿って磁束が漏れることを抑制でき、さらに、モータの発生させるトルクを大きくすることができる。
(2)上記形態のモータにおいて、前記周方向に沿った前記第1副磁石の長さは、前記周方向に沿った前記第1主磁石の長さよりも短くてもよい。
この形態のモータによれば、周方向に沿った第1副磁石の長さが周方向に沿った第1主磁石の長さ以上の形態に比べて、第1磁石部からの磁束をコイル部に向けて効果的に集めることができる。
(3)上記形態のモータにおいて、前記軸方向に沿った前記第2磁石部の厚みは、前記軸方向に沿った前記第1磁石部の厚みよりも薄くてもよい。
この形態のモータによれば、軸方向においてモータが大型化することを抑制できる。
(4)上記形態のモータにおいて、前記コイル部は、前記回転軸と前記第1磁石部との間に配置されてもよい。
この形態のモータによれば、モータから径方向に沿って磁束が漏れることを抑制できる。
(5)上記形態のモータにおいて、前記第2磁石部は、前記軸方向における前記第1磁石部の両側に配置されてもよい。
この形態のモータによれば、第1主磁石から流れ出る磁束が軸方向に沿って漏れることをより効果的に抑制できる。
本開示は、モータ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、永久磁石型ロータ等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のモータの概略構成を示す説明図。
図2図1におけるII-II線断面図。
図3】界磁磁石部の構成を示す説明図。
図4】第2磁石部の厚みとモータのトルクとの関係を示すグラフ。
図5】第1実施形態の界磁磁石部が発生させる磁界を模式的に示す第1の説明図。
図6】第1実施形態の界磁磁石部が発生させる磁界を模式的に示す第2の説明図。
図7】比較例の界磁磁石部が発生させる磁界を模式的に示す第1の説明図。
図8】比較例の界磁磁石部が発生させる磁界を模式的に示す第2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態におけるモータ10の概略構成を示す説明図である。図2は、図1におけるII-II線断面図である。図1には、モータ10の回転軸RXに沿った断面が表されている。図1に示すように、モータ10は、ロータ100と、ステータ200とを備えている。ロータ100は、モータ10に設けられた図示されていないベアリングによって支持されており、回転軸RXを中心にして回転する。以下の説明では、回転軸RXに沿ってロータ100の一端から他端に向かう方向のことを軸方向ADと呼び、回転軸RXに直交し、回転軸RXから外側に向かう方向のことを径方向RDと呼ぶ。また、ロータ100の回転方向に沿った方向のことを周方向CDと呼ぶ。これらの方向AD,RD,CDは、各図において適宜図示した。
【0009】
本実施形態では、モータ10は、バーニアモータとして構成されている。つまり、本実施形態では、モータ10は、ステータ200の極対数Zsと、ロータ100の極対数Zrと、ティース数pとの関係が下式(1)を満たすように構成されている。
Zs=Zr±p ・・・(1)
【0010】
本実施形態では、モータ10は、アウターロータ型のモータとして構成されている。つまり、本実施形態では、ロータ100は、ステータ200に対して径方向RDの外側に配置されている。ロータ100は、ロータカップ110と、ロータコア120と、界磁磁石部130とを備えている。
【0011】
ロータカップ110は、有底筒状に構成されている。ロータカップ110は、円筒部111と、底面部112と、出力部113とを有している。円筒部111は、回転軸RXを中心とする円筒形状を有している。底面部112は、軸方向ADにおける円筒部111の一端を塞ぐように設けられている。底面部112の中央部分には貫通孔が設けられている。出力部113は、円筒部111の内側に配置されている。出力部113は、回転軸RXを中心とする円筒形状を有している。出力部113は、底面部112の貫通孔の周縁部から突き出すように設けられている。出力部113には、ロータ100とともに回転する物体OBが接続される。以下の説明では、モータ10の底面部112側のことを下側と呼び、底面部112とは反対側のことを上側と呼ぶ。
【0012】
ロータコア120は、円筒部111の内壁面に固定されている。ロータコア120は、回転軸RXを中心とした円筒形状を有している。本実施形態では、ロータコア120は、軸方向ADに沿って積層された複数の電磁鋼板によって構成されている。
【0013】
界磁磁石部130は、ロータコア120の内壁面に固定されている。界磁磁石部130は、第1磁石部140と、第2磁石部150とを有している。本実施形態では、第1磁石部140に対して軸方向ADの上側、および、第1磁石部140に対して軸方向ADの下側に、上下対称に2個の第2磁石部150が設けられている。第1磁石部140は、回転軸RXを中心にして円環状に並んで配置された複数の永久磁石によって構成されている。各第2磁石部150は、回転軸RXを中心にして円環状に並んで配置された複数の永久磁石によって構成されている。各第2磁石部150は、軸方向ADにおいて第1磁石部140に重なって配置されている。以下の説明では、永久磁石のことを単に磁石と呼ぶ。第1磁石部140の磁石の具体的な配置、および、第2磁石部150の磁石の具体的な配置については後述する。
【0014】
ステータ200は、界磁磁石部130の内側に配置されている。ステータ200は、ステータケース210と、ステータコア220と、界磁コイル部230とを備えている。ステータケース210は、回転軸RXを中心とする円筒形状を有している。
【0015】
ステータコア220は、ステータケース210の外壁面に固定されている。ステータコア220は、ステータケース210を囲むように設けられている。本実施形態では、ステータコア220は、軸方向ADに沿って積層された複数の電磁鋼板によって構成されている。図2に示すように、本実施形態では、ステータコア220は、径方向RDの外側に向けて突き出した12個のティース225を有している。12個のティース225は、周方向CDに沿って等間隔で配置されている。
【0016】
図1に示すように、界磁コイル部230は、回転軸RXと界磁磁石部130との間に配置されている。界磁コイル部230は、径方向RDにおいて第1磁石部140に対向して配置されている。本実施形態では、界磁コイル部230は、12個のコイル235を有している。各コイル235は、ティース225に巻き回されている。12個のコイル235は、U相、V相、W相の三相を構成するように、図示されていない電源に電気的に接続されている。
【0017】
電源から界磁コイル部230の各コイル235に電流が供給されることによって、界磁コイル部230は、磁界を発生させる。界磁コイル部230の発生させる磁界と、界磁磁石部130の発生させる磁界との磁気的な相互作用によって、出力部113に接続された物体OBにトルクが伝えられる。
【0018】
図3は、界磁磁石部130の構成を示す説明図である。図3には、径方向RDの内側から視た界磁磁石部130の一部が表されている。図3では、ステータ200等の図示は省略されている。図3に示すように、第1磁石部140は、径方向RDに沿った磁化方向MDを有する第1主磁石141と、周方向CDに沿った磁化方向MDを有する第1副磁石142とを有している。磁化方向MDとは、磁石の内部をS極からN極に向かって磁束が流れる方向のことを意味する。図3には、各磁石の磁化方向MDが矢印で表されている。図2に示すように、本実施形態では、第1磁石部140は、20個の第1主磁石141と、20個の第1副磁石142とを有している。
【0019】
図3に示すように、第1磁石部140には、第1磁石部140から流れ出る磁束が径方向RDの内側に集中するように、第1主磁石141と第1副磁石142とがハルバッハ配列で並んで配置されている。より具体的には、本実施形態では、第1主磁石141と第1副磁石142とが周方向CDに沿って交互に配置されている。第1副磁石142を挟んで隣り合う2つの第1主磁石141の磁化方向MDの向きは互いに反対向きである。第1主磁石141を挟んで隣り合う2つの第1副磁石142の磁化方向MDの向きは互いに反対向きである。径方向RDの内側に向かう磁化方向MDを有する第1主磁石141に隣り合って配置された第1副磁石142は、この第1主磁石141に向かう磁化方向MDを有している。径方向RDの外側に向かう磁化方向MDを有する第1主磁石141に隣り合って配置された第1副磁石142は、この第1主磁石141とは反対側に向かう磁化方向MDを有している。
【0020】
第2磁石部150は、軸方向ADに沿った磁化方向MDを有する第2主磁石151と、周方向CDに沿った磁化方向MDを有する第2副磁石152とを有している。第2主磁石151は、軸方向ADにおいて第1主磁石141に重なるように配置されており、第2副磁石152は、軸方向ADにおいて第1副磁石142に重なるように配置されている。本実施形態では、第1磁石部140に対して軸方向ADの上側に配置された第2磁石部150は、20個の第2主磁石151と、20個の第2副磁石152とを有している。第1磁石部140に対して軸方向ADの下側に配置された第2磁石部150は、20個の第2主磁石151と、20個の第2副磁石152とを有している。
【0021】
第2磁石部150には、第2磁石部150から流れ出る磁束が第1磁石部140側に集中するように、第2主磁石151と第2副磁石152とがハルバッハ配列で並んで配置されている。より具体的には、本実施形態では、第2主磁石151と第2副磁石152とが周方向CDに沿って交互に配置されている。第2副磁石152を挟んで隣り合う2つの第2主磁石151の磁化方向MDの向きは互いに反対向きである。第2主磁石151を挟んで隣り合う2つの第2副磁石152の磁化方向MDの向きは互いに反対向きである。第1主磁石141に向かう磁化方向MDを有する第2主磁石151に隣り合って配置された第2副磁石152は、この第2主磁石151に向かう磁化方向MDを有している。第1主磁石141とは反対側に向かう磁化方向MDを有する第2主磁石151に隣り合って配置された第2副磁石152は、この第2主磁石151とは反対側に向かう磁化方向MDを有している。
【0022】
本実施形態では、周方向CDに沿った第1副磁石142の長さLs1は、周方向CDに沿った第1主磁石141の長さLm1よりも短い。径方向RDに沿った第1副磁石142の幅は、径方向RDに沿った第1主磁石141の幅と同じである。軸方向ADに沿った第1副磁石142の厚みts1は、軸方向ADに沿った第1主磁石141の厚みtm1と同じである。周方向CDに沿った第1副磁石142の長さLs1を周方向CDに沿った第1主磁石141の長さLm1よりも短くすることによって、第1磁石部140から流れ出る磁束を径方向RDの内側に効果的に集中させることができる。
【0023】
本実施形態では、軸方向ADに沿って視て、第2主磁石151の外周縁は、第1主磁石141の外周縁に重なる。軸方向ADに沿って視て、第2副磁石152の外周縁は、第1副磁石142の外周縁に重なる。周方向CDに沿った第2副磁石152の長さLs2は、周方向CDに沿った第2主磁石151の長さLm2よりも短い。径方向RDに沿った第2副磁石152の幅は、径方向RDに沿った第2主磁石151の幅と同じである。軸方向ADに沿った第2副磁石152の厚みts2は、軸方向ADに沿った第2主磁石151の厚みtm2と同じである。周方向CDに沿った第2副磁石152の長さLs2を周方向CDに沿った第2主磁石151の長さLm2よりも短くすることによって、第2磁石部150から流れ出る磁束を第1磁石部140に効果的に集中させることができる。
【0024】
本実施形態では、軸方向ADに沿った第2磁石部150の厚みは、軸方向ADに沿った第1磁石部140の厚みよりも薄い。つまり、軸方向ADに沿った第2主磁石151の厚みtm2は、軸方向ADに沿った第1主磁石141の厚みtm1よりも薄い。軸方向ADに沿った第2副磁石152の厚みts2は、軸方向ADに沿った第1副磁石142の厚みtm2よりも薄い。
【0025】
本実施形態では、第1主磁石141および第1副磁石142は、接着剤によってロータコア120の内壁面に接着されている。第2主磁石151は、接着剤によって第1主磁石141に接着されており、第2副磁石152は、接着剤によって第1副磁石142に接着されている。各磁石141,142,151,152を接着するための接着剤として、例えば、シアノアクリレート系接着剤とエポキシ系接着剤とを混合した接着剤を用いることができる。
【0026】
図4は、第2磁石部150の厚みとモータ10の出力するトルクTqとの関係を示すグラフである。図4において、横軸は第2磁石部150の厚みを表しており、縦軸はトルクを表している。図4には、参考として、第2磁石部150の厚みがゼロの場合、換言すれば、第2磁石部150が設けられていない場合のモータ10のトルクTq0が破線で表されている。図4に示すように、第2磁石部150の厚みが大きくなるほど、モータ10の出力するトルクTqは大きくなる。第2磁石部150の厚みが大きくなるほど、トルクTqの傾きは小さくなる。
【0027】
図5は、本実施形態における界磁磁石部130が発生させる磁界を模式的に示す第1の説明図である。図6は、本実施形態における界磁磁石部130が発生させる磁界を模式的に示す第2の説明図である。図7は、比較例における界磁磁石部130bが発生させる磁界を模式的に示す第1の説明図である。図8は、比較例における界磁磁石部130bが発生させる磁界を模式的に示す第2の説明図である。比較例の界磁磁石部130bには、第2磁石部150が設けられていない。図5から図8には、磁束密度ベクトルが矢印で表されている。図7および図8に示すように、第2磁石部150が設けられていない界磁磁石部130bでは、第1主磁石141から界磁コイル部230に向かって流れずに軸方向ADに沿って流れる磁束の漏れが生じている。漏れた磁束は、モータ10のトルクに寄与しない。さらに、漏れた磁束は、モータ10の周辺に配置されたセンサに悪影響を及ぼす可能性がある。これに対して、本実施形態では、図5に示すように、界磁コイル部230を向く磁化方向を有する第1主磁石141に対して軸方向ADの上側には、この第1主磁石141を向く磁化方向を有する第2主磁石151が配置されているので、第1主磁石141から界磁コイル部230に向かわずに軸方向ADの上側に向かって磁束が漏れることが抑制されている。図5には表されていないが、界磁コイル部230を向く磁化方向を有する第1主磁石141に対して軸方向ADの下側にも、この第1主磁石141を向く磁化方向を有する第2主磁石151が配置されているので、第1主磁石141から界磁コイル部230に向かわずに軸方向ADの下側に向かって磁束が漏れることが抑制されている。さらに、本実施形態では、図6に示すように、第2副磁石152の内部には、第1主磁石141を向く磁化方向を有する第2主磁石151に向かう、周方向CDに沿った磁束の流れが生じており、この磁束は、第2主磁石151から、第1主磁石141、界磁コイル部230の順に流れる。
【0028】
以上で説明した本実施形態におけるモータ10によれば、界磁コイル部230に磁束が集められるようにハルバッハ配列で並んで配置された第1主磁石141と第1副磁石142とを有する第1磁石部140の上下に、第1磁石部140に磁束が集められるようにハルバッハ配列で並んで配置された第2主磁石151と第2副磁石152とを有する第2磁石部150が配置されているので、第1磁石部140から軸方向ADに沿って漏れる磁束の量を少なくして、界磁コイル部230に向かう磁束の量を多くすることができる。さらに、第2磁石部150からの磁束が、界磁コイル部230を向く磁化方向を有する第1主磁石141に集まるので、界磁コイル部230に向かう磁束の量をさらに多くすることができる。そのため、モータ10から軸方向ADに沿って磁束が漏れることを抑制することができ、かつ、モータ10のトルクを大きくすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、周方向CDに沿った第1副磁石142の長さLs1は、周方向CDに沿った第1主磁石141の長さLm1よりも短い。そのため、周方向CDに沿った第1副磁石142の長さLs1が周方向CDに沿った第1主磁石141の長さLm1以上の形態に比べて、第1磁石部140からの磁束を界磁コイル部230に向けて効果的に集めることができる。
【0030】
また、本実施形態では、第2磁石部150の厚みは、第1磁石部140の厚みよりも薄い。そのため、軸方向ADにおいてロータ100が大型化することや、軸方向ADにおいてモータ10が大型化することを抑制できる。
【0031】
また、本実施形態では、第1磁石部140からの磁束は、径方向RDの内側に配置された界磁コイル部230に集められる。そのため、モータ10から径方向RDに沿って磁束が漏れることを抑制できる。
【0032】
また、本実施形態では、軸方向ADにおける第1磁石部140の両側に第2磁石部150が配置されている。そのため、第1磁石部140から流れ出た磁束が軸方向ADに沿って漏れることを効果的に抑制できる。
【0033】
B.他の実施形態:
(B1)上述した実施形態のモータ10は、バーニアモータとして構成されている。これに対して、モータ10は、例えば、誘導モータや同期モータ等のバーニアモータ以外のモータとして構成されてもよい。
【0034】
(B2)上述した実施形態のモータ10は、アウターロータ型のモータとして構成されている。これに対して、モータ10は、インナーロータ型のモータとして構成されてもよい。つまり、回転軸RXとステータ200との間にロータ100が配置されてもよい。
【0035】
(B3)上述した実施形態のモータ10では、界磁磁石部130は、ロータコア120の内壁面に固定されている。これに対して、界磁磁石部130は、ロータコア120に埋め込まれてもよい。
【0036】
(B4)上述した実施形態のモータ10では、界磁磁石部130はロータ100に設けられ、界磁コイル部230はステータ200に設けられている。これに対して、ロータ100に界磁コイル部230が設けられ、ステータ200に界磁磁石部130が設けられてもよい。
【0037】
(B5)上述した実施形態のモータ10では、周方向CDに沿った第1副磁石142の長さLs1は、周方向CDに沿った第1主磁石141の長さLm1よりも短い。これに対して、周方向CDに沿った第1副磁石142の長さLs1は、周方向CDに沿った第1主磁石141の長さLm1以上でもよい。
【0038】
(B6)上述した実施形態のモータ10において、軸方向ADに沿った第2磁石部150の各磁石151,152の厚みtm2,ts2は、軸方向ADに沿った第1磁石部140の各磁石141,142の厚みtm1,ts1よりも小さい。これに対して、軸方向ADに沿った第2磁石部150の各磁石151,152の厚みtm2,ts2は、軸方向ADに沿った第1磁石部140の各磁石141,142の厚みtm1,ts1以上でもよい。
【0039】
(B7)上述した実施形態のモータ10において、第2磁石部150は、軸方向ADにおいて第1磁石部140の両側に設けられている。これに対して、第2磁石部150は、軸方向ADにおいて第1磁石部140の片側にのみ設けられてもよい。例えば、第1磁石部140に対して軸方向ADの下側に第2磁石部150が設けられずに、第1磁石部140に対して軸方向ADの上側に第2磁石部150が設けられてもよい。あるいは、第1磁石部140に対して軸方向ADの上側に第2磁石部150が設けられずに、第1磁石部140に対して軸方向ADの下側に第2磁石部150が設けられてもよい。この場合であっても、第1主磁石141から流れ出た磁束が、第2磁石部150が設けられた側に漏れることを抑制できる。
【0040】
(B8)上述した実施形態のモータ10において、第1磁石部140および第2磁石部150には、周方向CDに隣り合う磁石の磁化方向が90度異なるハルバッハ配列で複数の磁石が配置されている。これに対して、第1磁石部140および第2磁石部150には、周方向CDに隣り合う磁石の磁化方向が45度異なるハルバッハ配列で複数の磁石が配置されてもよい。
【0041】
(B9)上述した実施形態のモータ10において、第1磁石部140および第2磁石部150は、それぞれ、1組の磁極を有する複数の磁石が円環状に配置されることによって構成されている。これに対して、第1磁石部140と第2磁石部150とのうちの少なくとも一方は、2組以上の磁極を有するリング磁石で構成されてもよい。この場合、リング磁石のうちの1組の磁極を構成する部分のことを磁石と呼ぶ。
【0042】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…モータ、100…ロータ、110…ロータカップ、111…円筒部、112…底面部、113…出力部、120…ロータコア、130…界磁磁石部、140…第1磁石部、141…第1主磁石、142…第1副磁石、150…第2磁石部、151…第2主磁石、152…第2副磁石、200…ステータ、210…ステータケース、220…ステータコア、225…ティース、230…界磁コイル部、235…コイル
図1
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