(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】カバー付き容器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 51/18 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B65D51/18
(21)【出願番号】P 2021103183
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2024-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
(72)【発明者】
【氏名】畑 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】植村 周平
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-512895(JP,A)
【文献】国際公開第2012/087168(WO,A1)
【文献】特表2002-526332(JP,A)
【文献】実公昭36-032076(JP,Y1)
【文献】中国実用新案第201395355(CN,Y)
【文献】独国実用新案第29924839(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器と、
前記容器の外面の少なくとも一部を覆うシート状のカバーとを備え、
前記カバーは、紙製の基材と、当該基材の一対の主面のうちの前記容器側に位置する主面に設けられた接着剤層とを含み、
前記容器は、筒状の周壁と、前記周壁の軸方向に位置する上壁および下壁とを有し、
前記上壁は、前記内容物を取り出すための取出し部が設けられた天板部を含み、
前記上壁と前記周壁とを接続する部分の前記容器には、前記軸方向と、前記軸方向と直交する方向との双方において外側に向けて突出する環状突部が設けられ、
前記カバーは、前記上壁と前記環状突部の内周面および上面とを覆う上壁側カバー部と、前記周壁の前記環状突部寄りの端部と前記環状突部の外周面および下面とを覆う周壁側カバー部とを有し、
前記上壁側カバー部は、前記環状突部の内周面および前記天板部の外面に沿うように凹状に曲成された凹状部を含み、
前記周壁側カバー部は、前記環状突部の下面に少なくとも沿うように絞られた絞り部を含み、
前記絞り部には、当該絞り部を設けるために前記カバーが折り曲げられることで形成された重なり部が、前記周壁の周方向に沿って複数位置し、
前記複数の重なり部の各々において、前記接着剤層が設けられた側の前記基材の主面同士が当該接着剤層によって接着されることにより、前記絞り部が前記環状突部の下面によって係止され、これにより前記カバーが、前記容器に対して非接着の状態で前記容器に取付けられている、カバー付き容器。
【請求項2】
前記環状突部の下面を覆う部分の前記絞り部の、前記周壁の周方向と直交する方向における長さが、少なくとも1.0mm以上である、請求項1に記載のカバー付き容器。
【請求項3】
前記環状突部の内周面を覆う部分の前記凹状部の、前記周壁の周方向と直交する方向における長さが、少なくとも1.0mm以上である、請求項1または2に記載のカバー付き容器。
【請求項4】
前記凹状部が、前記天板部の外面に当接している、請求項1から3のいずれかに記載のカバー付き容器。
【請求項5】
筒状の周壁と、前記周壁の軸方向に位置する上壁および下壁とを有し、前記上壁が、内容物を取り出すための取出し部が設けられた天板部を含むとともに、前記軸方向と、前記軸方向と直交する方向との双方において外側に向けて突出する環状突部が前記上壁と前記周壁とを接続する部分に設けられてなる容器が準備される工程と、
紙製の基材と、当該基材の一対の主面のうちの片面に設けられた接着剤層とを有し、前記上壁よりも大きい外形を有するシート状のカバーが準備される工程と、
前記接着剤層が設けられた側の前記基材の主面が前記天板部に対向するように、前記カバーが前記容器に対して位置決めされて配置される工程と、
前記カバーが前記容器に対して位置決めされて配置された状態において、前記環状突部の内周面に沿う形状を有する内側押圧治具によって前記カバーが前記天板部側に向けて押圧されることにより、前記カバーの周縁の一部が前記環状突部の内周面と前記内側押圧治具との間に挟まれることで前記カバーが前記環状突部の内周面に沿うように折り曲げられる工程と、
前記カバーが前記環状突部の内周面に沿うように折り曲げられた状態において、前記内側押圧治具による前記カバーの前記天板部側に向けての押圧が維持されつつ、前記環状突部の外周面に沿う形状を有するリング状の外側押圧治具が前記カバーの折り曲げられた部分を前記環状突部の外周面側へ巻き込むように前記周壁に外挿されることにより、前記カバーの周縁の一部が前記環状突部の外周面と前記外側押圧治具との間に挟まれることで前記カバーが前記環状突部の外周面に沿うように折り返されつつ前記カバーの折り返された部分に前記周壁の周方向に沿って複数の重なり部が形成される工程と、
前記複数の重なり部が形成された状態において、前記内側押圧治具による前記カバーの前記天板部側に向けての押圧が維持されつつ、前記容器の一部に沿う形状を有する固定用治具によって前記カバーの折り返された部分のうちの前記環状突部の下面および前記周壁の前記環状突部寄りの端部のうちの少なくとも一部に対応する部分が外側から前記固定用治具によって前記容器側に向けて押圧されることにより、前記固定用治具によって押圧された部分の前記基材の主面同士が前記接着剤層によって接着されることで前記カバーに絞り部が形成され、これによって前記絞り部が前記環状突部の下面によって係止されることにより、前記カバーが、前記容器に対して非接着の状態で当該容器に取付けられる工程とを備える、カバー付き容器の製造方法。
【請求項6】
前記カバーが前記容器に対して非接着の状態で当該容器に取付けられる工程において、前記絞り部が前記環状突部の下面および前記周壁の前記環状突部寄りの端部のうちの一部のみに対応して形成されるように、前記カバーの折り返された部分のうちの前記環状突部の下面および前記周壁の前記環状突部寄りの端部のうちの一部に対応する部分のみが、前記固定用治具によって局所的に前記容器側に向けて押圧される、請求項5に記載のカバー付き容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品または飲料等を内部に収容する容器と、容器の外面の少なくとも一部を覆うシート状のカバーとを備えたカバー付き容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品または飲料等を内部に収容する容器には、その上壁に内容物を取り出すための取出し部が設けられている。この取出し部が設けられた部分近傍の容器の外面は、衛生面の観点から清潔に保たれていることが望ましい。たとえば、収容された飲料を飲む場合には、取出し部を含む上壁の一部および周壁の一部に口が直接触れることがある。しかしながら、容器には、輸送時および貯蔵時等において異物が付着することがあり、容器の外面の衛生状態は必ずしも良好とはいえない場合がある。
【0003】
そのため、容器に設けられた取出し部およびその近傍を良好な衛生状態に維持する目的で、容器の上壁側の端部をカバーで覆うことが行なわれている。このカバーとしては、基材が金属製のものやプラスチック製のもの、紙製のもの等が知られているが、環境負荷の低減やコスト削減の観点からは、基材が紙製のものを用いることが好ましい。
【0004】
基材が紙製であるカバーを容器に固定するために、たとえば特開2001-122316号公報(特許文献1)や特開2000-264357号公報(特許文献2)に開示されたカバー付き容器においては、カバーに設けられた接着剤層が容器の周壁の一部に接着されており、たとえば特開2000-117339号公報(特許文献3)に開示されたカバー付き容器においては、容器の周壁の上端部に設けられた括れ部にカバーが嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-122316号公報
【文献】特開2000-264357号公報
【文献】特開2000-117339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カバーを容器に接着した場合には、カバーを容器から取り外すに際して、容器の取出し部の周りに接着剤層が付着した状態で残ってしまうおそれがある。また、カバーを容器の括れ部に嵌め込んだ場合にも、これのみでは十分な固定力が得られず、カバーが容器から容易に脱落してしまうおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、接着剤を容器に付着させることなく、カバーが容器に取付けられた状態を安定的に維持することができ、これにより従来よりも衛生面の改善が図られたカバー付き容器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づくカバー付き容器は、内容物を収容する容器と、上記容器の外面の少なくとも一部を覆うシート状のカバーとを備えている。上記カバーは、紙製の基材と、当該基材の一対の主面のうちの上記容器側に位置する主面に設けられた接着剤層とを含んでいる。上記容器は、筒状の周壁と、上記周壁の軸方向に位置する上壁および下壁とを有している。上記上壁は、上記内容物を取り出すための取出し部が設けられた天板部を含んでいる。上記上壁と上記周壁とを接続する部分の上記容器には、上記軸方向と、上記軸方向と直交する方向との双方において外側に向けて突出する環状突部が設けられている。上記カバーは、上記上壁と上記環状突部の内周面および上面とを覆う上壁側カバー部と、上記周壁の上記環状突部寄りの端部と上記環状突部の外周面および下面とを覆う周壁側カバー部とを有している。上記上壁側カバー部は、上記環状突部の内周面および上記天板部の外面に沿うように凹状に曲成された凹状部を含んでいる。上記周壁側カバー部は、上記環状突部の下面に少なくとも沿うように絞られた絞り部を含んでいる。上記絞り部には、当該絞り部を設けるために上記カバーが折り曲げられることで形成された重なり部が、上記周壁の周方向に沿って複数位置している。上記本発明に基づくカバー付き容器にあっては、上記複数の重なり部の各々において、上記接着剤層が設けられた側の上記基材の主面同士が当該接着剤層によって接着されることにより、上記絞り部が上記環状突部の下面によって係止され、これにより上記カバーが、上記容器に対して非接着の状態で上記容器に取付けられている。
【0009】
上記本発明に基づくカバー付き容器にあっては、上記環状突部の下面を覆う部分の上記絞り部の、上記周壁の周方向と直交する方向における長さが、少なくとも1.0mm以上であることが好ましい。
【0010】
上記本発明に基づくカバー付き容器にあっては、上記環状突部の内周面を覆う部分の上記凹状部の、上記周壁の周方向と直交する方向における長さが、少なくとも1.0mm以上であることが好ましい。
【0011】
上記本発明に基づくカバー付き容器にあっては、上記凹状部が、上記天板部の外面に当接していることが好ましい。
【0012】
本発明に基づくカバー付き容器の製造方法は、以下の工程を備えている。
(a)筒状の周壁と、上記周壁の軸方向に位置する上壁および下壁とを有し、上記上壁が、内容物を取り出すための取出し部が設けられた天板部を含むとともに、上記軸方向と、上記軸方向と直交する方向との双方において外側に向けて突出する環状突部が上記上壁と上記周壁とを接続する部分に設けられてなる容器が準備される工程。
(b)紙製の基材と、当該基材の一対の主面のうちの片面に設けられた接着剤層とを有し、上記上壁よりも大きい外形を有するシート状のカバーが準備される工程。
(c)上記接着剤層が設けられた側の上記基材の主面が上記天板部に対向するように、上記カバーが上記容器に対して位置決めされて配置される工程。
(d)上記カバーが上記容器に対して位置決めされて配置された状態において、上記環状突部の内周面に沿う形状を有する内側押圧治具によって上記カバーが上記天板部側に向けて押圧されることにより、上記カバーの周縁の一部が上記環状突部の内周面と上記内側押圧治具との間に挟まれることで上記カバーが上記環状突部の内周面に沿うように折り曲げられる工程。
(e)上記カバーが上記環状突部の内周面に沿うように折り曲げられた状態において、上記内側押圧治具による上記カバーの上記天板部側に向けての押圧が維持されつつ、上記環状突部の外周面に沿う形状を有するリング状の外側押圧治具が上記カバーの折り曲げられた部分を上記環状突部の外周面側へ巻き込むように上記周壁に外挿されることにより、上記カバーの周縁の一部が上記環状突部の外周面と上記外側押圧治具との間に挟まれることで上記カバーが上記環状突部の外周面に沿うように折り返されつつ上記カバーの折り返された部分に上記周壁の周方向に沿って複数の重なり部が形成される工程。
(f)上記複数の重なり部が形成された状態において、上記内側押圧治具による上記カバーの上記天板部側に向けての押圧が維持されつつ、上記容器の一部に沿う形状を有する固定用治具によって上記カバーの折り返された部分のうちの上記環状突部の下面および上記周壁の上記環状突部寄りの端部のうちの少なくとも一部に対応する部分が外側から上記固定用治具によって上記容器側に向けて押圧されることにより、上記固定用治具によって押圧された部分の上記基材の主面同士が上記接着剤層によって接着されることで上記カバーに絞り部が形成され、これによって上記絞り部が上記環状突部の下面によって係止されることにより、上記カバーが、上記容器に対して非接着の状態で当該容器に取付けられる工程。
【0013】
上記本発明に基づくカバー付き容器の製造方法にあっては、上記カバーが上記容器に対して非接着の状態で当該容器に取付けられる工程において、上記絞り部が上記環状突部の下面および上記周壁の上記環状突部寄りの端部のうちの一部のみに対応して形成されるように、上記カバーの折り返された部分のうちの上記環状突部の下面および上記周壁の上記環状突部寄りの端部のうちの一部に対応する部分のみが、上記固定用治具によって局所的に上記容器側に向けて押圧されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着剤を容器に付着させることなく、カバーが容器に取付けられた状態を安定的に維持することができ、これにより従来よりも衛生面の改善が図られたカバー付き容器およびその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係るカバー付き容器を示す斜視図である。
【
図2】
図1中に示すII-II線に沿った模式断面図である。
【
図3】
図1に示すカバー付き容器において、カバーが容器に取付けられる前の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図2中に示すIV-IV線に沿った模式断面図である。
【
図5】
図1に示すカバー付き容器を積載した状態を示す模式断面図である。
【
図6】実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示すフロー図である。
【
図7】実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。
【
図8】実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。
【
図9】実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。
【
図10】実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。
【
図11】実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。
【
図12】変形例1に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。
【
図13】変形例1に係る実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。
【
図14】変形例2に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。
【
図15】変形例3に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。
【
図16】変形例4に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。
【
図17】変形例5に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るカバー付き容器の斜視図である。
図2は、
図1中に示すII-II線に沿った模式断面図である。
図3は、
図1に示すカバー付き容器において、カバーが容器に取付けられる前の状態を示す斜視図である。
図4は、
図2中に示すIV-IV線に沿った模式断面図である。まず、これら
図1ないし
図4を参照して、本実施の形態に係るカバー付き容器1の構成について説明する。
【0018】
図1ないし
図3に示すように、本実施の形態に係るカバー付き容器1は、軸方向の一端および他端が閉塞された中空略円柱状の容器10と、容器10の上壁11側の一部を覆うカバー20とを備えている。
【0019】
容器10は、食品または飲料等を内部に収容するためのものであり、筒状の周壁13と、周壁13の軸方向に位置する上壁11および下壁12とを有している。また、容器10の上壁11と周壁13とを接続する部分には、周壁13の軸方向と、当該軸方向と直交する方向との双方において外側に向けて突出する環状突部11bが設けられている。周壁13の下端部は、下壁12と接続し、周壁13の上端部は、環状突部11bによって上壁11と接続している。容器10は、たとえばアルミニウムまたはスチール等の金属からなる所謂2ピース缶もしくは3ピース缶と呼ばれる缶容器である。なお、容器10の材質は、特に金属に限定されるものではなく、プラスチック等であってもよい。容器10の形状は、特に中空円柱状に限定されるものではなく、たとえば中空角柱状等であってもよい。
【0020】
図2および
図3に示すように、上壁11は、内容物を取り出すための取出し部11a1(
図3参照)が外面に設けられた天板部11aを含んでいる。取出し部11a1としては、
図3に示すような天板部11aの一部が開口するステイオンタブ型のほか、タブを引き上げることで天板部11aのほぼ全域が開口するもの、天板部11aの一部にシール蓋が貼られているもの等を用いることができる。なお、
図3を除く図においては、取出し部11a1の図示を省略している。
【0021】
環状突部11bは、たとえば飲料缶もしくは食品缶等においては、容器10を構成する上蓋部材と胴部材とが巻締加工されることによって設けられる。具体的には、胴部材の上蓋部材側端部に上蓋部材が被せられ、上蓋部材の周縁部が胴部材の開口縁部に重ね合わされて、双方が巻締加工される。これにより、胴部材の上蓋部材側端部が上蓋部材によって閉塞されるとともに、当該巻締加工された部分が環状突部11bを構成し、上蓋部材のうちの巻締加工された部分以外の部分が上壁11を構成し、胴部材のうちの巻締加工された部分以外の部分が周壁13を構成するようになる。なお、全ての図においては、環状突部11bにおける巻締構造の図示を省略している。
【0022】
図2に示すように、環状突部11bは、相対して位置する内周面11b1および外周面11b3と、相対して位置する上面11b2および下面11b4とを有している。内周面11b1の下端は、天板部11aの外面の周縁に接続しており、内周面11b1の上端は、上面11b2の内側周縁に接続している。外周面11b3の上端は、上面11b2の外側周縁に接続しており、外周面11b3の下端は、下面11b4の外側周縁に接続している。なお、下面11b4の内側周縁は、周壁13の外面に接続している。
【0023】
周壁13は、括れ部13aと、筒状部13bとを含んでいる。括れ部13aは、筒状部13bに対して縮径した部分であり、周壁13の環状突部11b寄りの端部において周壁13の周方向に沿って延びるように位置している。筒状部13bは、容器10の軸方向において括れ部13aと下壁12とを接続している。
【0024】
括れ部13aは、基部13a1と、傾斜部13a2とを有している。基部13a1の外面の上端は、環状突部11bの下面11b4の内側周縁に接続している。基部13a1は、容器10の軸方向に沿って延在している。傾斜部13a2の外面の下端は、周壁13の筒状部13bの外面の上端に接続している。傾斜部13a2は、容器10の軸方向に対してその下端が外側に迫り出すように傾斜している。なお、基部13a1の外面の下端は、傾斜部13a2の外面の上端に接続している。
【0025】
図1ないし
図3に示すように、カバー20は、容器10の上端を覆うことにより、輸送時および貯蔵時等において容器10の上端に異物が付着することを防止するためのものである。カバー20は、紙製の基材20aと、基材20aの一対の主面のうちの一方に設けられた接着剤層20bとを含んでいる。基材20aを紙製とすることにより、これをプラスチック製とした場合に比べて廃棄が容易かつ安価なカバーとすることができる。
【0026】
基材20aは、パルプ由来であればよく、純白紙、クラフト紙、もしくはセロファンのいずれであってもよい。セロファンが用いられた場合には、基材20aを透明にすることができる。基材20aには、ニス層もしくはデザイン印刷層が設けられてもよい。また、基材20aの米坪は、30g/m2以上160g/m2以下であることが好ましい。このようにすれば、カバー20が必要以上に変形したり、カバー20に意図しない折り込み等が形成されてしまったりすることが効果的に防止できることになり、カバー20が容器10から容易に脱落してしまうことが抑制可能になる。なお、基材20aの厚みは、純白紙もしくはクラフト紙等の一般的な洋紙が用いられる場合には30μm以上150μm以下であることが好ましく、セロファンが用いられる場合には20μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0027】
接着剤層20bは、熱接着性を有するものであることが好ましい。より詳細には、接着剤層20bは、熱接着性を有する樹脂である、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、アクリル系、ポリエステル系等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。接着剤層20bは、特に70℃~100℃程度の低温で熱接着可能である、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体等のアクリル酸系共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等であることがさらに好ましい。
【0028】
また、接着剤層20bは、溶融押出コーティングにより基材20aへ積層されることにより形成されるものでもよいが、エマルジョンもしくはディスパージョンの分散液状で塗布されるもの(例えば、三井化学(株)のポリオレフィン水性ディスパージョン「商品名:ケミパール」、住友精化(株)の共重合ナイロンもしくはエチレン酢酸ビニル共重合体等の水系エマルジョン「商品名:セポルジョン」)またはポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を含むものであることが好ましい。このようにすれば、リサイクルの際に紙繊維の解離がし易くなり、基材20aのリサイクル適性が向上する。
【0029】
また、接着剤層20bは、熱接着性のものに限定されず、水や加湿により活性化して接着する、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂やでんぷん等からなるもの、または、接着剤層同士を合わせた時に接着するコールドシール剤と呼ばれるゴム系の接着剤層であってもよい。
【0030】
接着剤層20bの厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上15μm以下であることがさらに好ましく、また、3μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
なお、基材20aには、プライマーもしくはアンカー剤が塗布されてもよく、また、基材20aを構成するパルプ等の繊維に、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等の樹脂繊維が少量(5%以下)混抄されてもよい。このようにすれば、接着剤層20bの基材20aへの接着性を向上させることができる。
【0032】
また、上述したように、接着剤層20bは基材20aの一方の主面にのみ設けられており、他方の主面には設けられていない。このように構成することにより、後述するカバー付き容器の製造方法において、加熱された治具等が熱可塑性樹脂等からなる接着剤層20bに直接触れないようにすることができる。なお、接着剤層20bとして用いられる接着剤の種類もしくは加熱された治具等の表面温度等が適宜選択もしくは設定されれば、基材20aの一対の主面の両方に接着剤層20bが設けられてもよい。
【0033】
図3に示すように、容器10に取付ける前のカバー20は、容器10の上壁11よりも大きい外形を有するシート状のものである。カバー20は、接着剤層20bが設けられた側の基材20aの主面が容器10の天板部11aに対向するように配置される。後述する製造方法に従ってカバー20が図中矢印AR1方向に向けて容器10を覆うように取付けられることにより、カバー付き容器1は、
図1に示す状態となる。
【0034】
なお、本実施の形態においては、平面視した場合のカバー20の外形が円形のものを用いているが、これに限られず、楕円形状のもののほか、たとえば正方形もしくは正5角形等の正多角形のもの、あるいはこれらの角が曲線形状とされたもの等であってもよい。また、カバー20の外縁の周方向における一箇所もしくは複数箇所に、タブ状の突出片が設けられてもよく、このようにすれば、カバー20を容器10から容易に取り外すことができる。また、上記タブ状の突出片には、切込みやミシン目が施されていてもよく、このようにすれば、さらに容易にカバー20を容器10から取り外すことができる。
【0035】
図1および
図2に示すように、カバー20は、容器10の上壁11を覆う上壁側カバー部21と、容器10の周壁13を覆う周壁側カバー部22とを有している。
【0036】
上壁側カバー部21は、容器10の上壁11の天板部11aの外面と、環状突部11bの内周面11b1および上面11b2とを覆っている。上壁側カバー部21は、天板部11aの外面および環状突部11bの内周面11b1を覆うことによって凹状部21aを形成している。
【0037】
より詳細には、凹状部21aは、底部21a1と、側部21a2とを有している。底部21a1は、天板部11aの外面に沿うようにこれを覆っている。側部21a2は、環状突部11bの内周面11b1に沿うようにこれを覆っている。底部21a1の周縁は、側部21a2の下端に接続されており、側部21a2の上端は、環状突部11bの上面11b2を覆う部分のカバー20に接続されている。
【0038】
このように構成することにより、凹状に曲成された凹状部21aが、カバー20の上壁側カバー部21に形成されることになる。したがって、凹状部21aの側部21a2が環状突部11bの内周面11b1に対して引っ掛けられた状態となるため、上壁側カバー部21が、容器10に対して係止されることになる。
【0039】
ここで、環状突部11bの内周面11b1を覆う部分の凹状部21aである側部21a2の、容器10の周壁13の周方向と直交する方向(すなわち容器10の軸方向)における長さL1(
図2参照)が、少なくとも1.0mm以上であれば、上述した環状突部11bによる上壁側カバー部21の係止を十分に強固なものとすることができる。
【0040】
周壁側カバー部22は、容器10の環状突部11bの外周面11b3および下面11b4と、容器10の周壁13の括れ部13aの外面の一部とを覆っている。周壁側カバー部22は、環状突部11bの下面11b4と、括れ部13aの外面の一部とを覆うことによって絞り部22aを形成している。
【0041】
より詳細には、絞り部22aは、基部22a1と、傾斜部22a2とを有している。基部22a1は、環状突部11bの下面11b4および括れ部13aの基部13a1の外面を覆っている。傾斜部22a2は、括れ部13aの傾斜部13a2の外面を覆っている。基部22a1の上端は、環状突部11bの外周面11b3を覆う部分のカバー20に接続されており、基部22a1の下端は、傾斜部22a2の上端に接続されている。
【0042】
このように構成することにより、縮径した形状を有する絞り部22aが、カバー20の周壁側カバー部22に形成されることになる。したがって、絞り部22aが環状突部11bの下面11b4に対して引っ掛けられた状態となるため、周壁側カバー部22が、容器10に対して係止されることになる。
【0043】
また、本実施の形態においては、
図2に示すように、絞り部22aのうちの基部22a1において、その環状突部11b寄りの部分のみが、特に容器10の周壁13に近づくように局所的に変形されている。より具体的には、当該部分における基部22a1と容器10との間の隙間は、当該部分を除く基部22a1と容器10との間の隙間、および、傾斜部22a2と容器10との間の隙間に比べて小さくなっている。このように構成することにより、基部22a1の上端側の部分が環状突部11bの下面11b4に対して確実に引っ掛けられた状態となるため、周壁側カバー部22が、容器10の軸方向に沿ってより強固に環状突部11bの下面11b4に引っ掛けられることになる。
【0044】
また、本実施の形態においては、環状突部11bの下面11b4の径方向の寸法は1.0mmであるが、当該寸法は、0.8mm以上5.0mm以下であればよい。容器10が飲料缶もしくは食品缶である場合には、当該寸法を0.8mm以上2.0mm以下とすることにより、周壁側カバー部22の容器10に対する装着性をよくすることができる。
【0045】
ここで、環状突部11bの下面11b4と、括れ部13aの外面とを覆う部分の絞り部22aの、容器10の周壁13の周方向と直交する方向(すなわち容器10の軸方向および径方向)における長さL2(
図2参照)が、少なくとも1.0mm以上であれば、上述した環状突部11bによる周壁側カバー部22の係止を十分に強固なものとすることができる。なお、容器10が、上述した巻締加工された飲料缶もしくは食品缶等であり、かつその環状突部11bの下面11b4の径方向の寸法が0.8mm以上2.0mm以下である場合にあっては、長さL2は2.0mm以上10mm以下であることが好ましく、3.0mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0046】
なお、絞り部22aの傾斜部22a2は、上述したように、括れ部13aの傾斜部13a2の外面は覆うものの、周壁13の筒状部13bは覆わないものとしている。このようにすれば、本実施の形態に係るカバー付き容器1が複数並べられて搬送される場合等において各々の周壁13同士が接触した際にも、各々の絞り部22a同士が接触し、それに起因してカバー20が容器10から意図せず外れること、およびカバー20が破損することを抑制することができる。
【0047】
図1および
図4に示すように、絞り部22aには、当該絞り部22aを設けるためにカバー20が折り曲げられることによって形成された重なり部22apが設けられている。この重なり部22apは、カバー20が折り曲げられる際に、その余剰部が互いに重ね合わされることで形成されるものであり、周壁13の周方向に沿って複数位置している。
【0048】
なお、
図1および
図4においては、複数の重なり部22apが一定の間隔で規則的に形成されているが、重なり部22apの大きさ、形成される位置、間隔、折り曲げ状態の向きおよび形状等は、規則的なものに限定されず、様々な形状等が混在して形成されるものでもよい。複数の重なり部22apを規則的に形成するためには、たとえば、カバー20の重なり部形成予定位置においてカバー20が折れ曲がるように、当該重なり部形成予定位置に予め折り曲げのための罫線を施しておくこと等が想定される。
【0049】
複数の重なり部22apの各々においては、接着剤層20bが設けられた側の基材20aの主面同士が、当該接着剤層20bによって接着されている。ここで、接着剤層20bによって接着された複数の重なり部22apの各々には、後述する外側押圧治具110(
図9参照)による仮接着工程(
図6におけるS5工程)において接着された部分が含まれており、また、この仮接着工程において接着された部分の一部には、さらに後述する固定用治具120(
図11参照)による本接着工程(
図6におけるS7工程)において接着されることにより、より強固に基材20aの主面同士が接着された部分が含まれている。なお、
図4においては、このうちの本接着工程において接着された部分の重なり部22apの断面が示されている。
【0050】
これにより、折り曲げられた後のカバー20の周壁側カバー部22の形状が、当該複数の重なり部22apに対応する部分に位置する接着剤層20bによって維持されることになる。特に、これら複数の重なり部22apに対応する部分に位置する接着剤層20bにより、絞り部22aが、上述した縮径した形状に維持されることになり、これによって絞り部22aが環状突部11bの下面11b4によって係止されることになる。
【0051】
上述したように、本実施の形態に係るカバー付き容器1おいては、上壁側カバー部21に凹状部21aが形成されており、周壁側カバー部22に絞り部22aが形成されている。そして、それらの各々においてカバー20は、容器10に対して係止されている。このように構成することにより、容器10の環状突部11bは、カバー20により、凹状部21aが設けられた上壁側カバー部21と、絞り部22aが設けられた周壁側カバー部22との両側から挟み込まれることになる。
【0052】
そのため、本実施の形態に係るカバー付き容器1とすることにより、この挟み込みにより、凹状部21aが形成されずに絞り部22aのみによってカバー20が容器10に対して係止された従来のカバー付き容器に比べ、カバー20が容器10から意図せずに脱落することが効果的に防止できることになる。
【0053】
一方で、カバー20は、その基材20aの一対の主面のうちの容器10が位置する側の主面に接着剤層20bが設けられたものであるため、当該接着剤層20bは、上述した複数の重なり部22apに対応する部分のみならず、容器10の周壁13の周方向にわたって全周に位置している。しかしながら、容器10の周壁13に直接的に対向する部分の接着剤層20bは、容器10に対して非接着の状態にある。これにより、カバー20に設けられた接着剤層20bが、容器10の取出し部11a1の周りに付着することが回避できることになる。なお、上述した非接着の状態とは、容器10に対してカバー20が容易に取り外し可能である疑似接着状態を含む状態である。
【0054】
したがって、以上において説明した本実施の形態に係るカバー付き容器1とすることにより、接着剤を容器10に付着させることなく、カバー20が容器10に取付けられた状態を安定的に維持することができ、これにより従来よりも衛生面の改善が図られたカバー付き容器とすることができる。
【0055】
なお、本実施の形態に係るカバー付き容器1においては、上述したように、上壁側カバー部21に凹状部21aが形成されている。そのため、環状突部11bに対応する部分を除き、上壁側カバー部21が、カバー付き容器1の最外部から後退した位置に配置されることになるため、カバー付き容器1の輸送時および貯蔵時等において、周囲の物体と接触すること等によって上壁側カバー部21自体が破損してしまうことが、効果的に防止できることになる。
【0056】
図5は、
図1に示すカバー付き容器を積載した状態を示す模式断面図である。以下、この
図5と前述の
図2とを参照して、本実施の形態に係るカバー付き容器1を積載した場合について説明する。
【0057】
図2および
図5に示すように、本実施の形態に係るカバー付き容器1においては、容器10の下壁12に、環状かつ突状の脚部12aが設けられている。この脚部12aは、容器10に設けられた環状突部11bよりも径方向内側に配置されている。
【0058】
したがって、
図5に示すように、一方のカバー付き容器1を他方のカバー付き容器1の鉛直上方に配置し、一方のカバー付き容器1の脚部12aを他方のカバー付き容器1の環状突部11bに内挿することにより、これらカバー付き容器1を安定的に積載することができる。
【0059】
また、このとき、他方のカバー付き容器1のカバー20の上壁側カバー部21は、当該他方のカバー付き容器1の容器10と一方のカバー付き容器1の容器10とによって挟まれることになるが、上述したように、当該上壁側カバー部21には、凹状部21aが設けられているため、一方のカバー付き容器1の脚部12aが他方のカバー付き容器1の環状突部11bに内挿される際に、当該上壁側カバー部21がこれを阻害することもない。
【0060】
このように、本実施の形態に係るカバー付き容器1とすることにより、その輸送時や貯蔵時等における良好な移載性が確保できることになり、カバーを備えていない容器とした場合に比して遜色のない移載性を確保することができる。
【0061】
図6は、本実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を説明するためのフロー図であり、
図7ないし
図11は、当該カバー付き容器の製造方法を説明するための模式断面図である。次に、これら
図6ないし
図11を参照して、本実施の形態に係るカバー付き容器1の製造方法について具体的に説明する。
【0062】
図6に示すように、本実施の形態に係るカバー付き容器1の製造方法においては、まず、容器10が準備され(S1工程)、次に、容器10の上壁11よりも大きい外形を有するカバー20が準備される(S2工程)。
【0063】
次に、
図6および
図7に示すように、容器10に対してカバー20が位置決めされる(S3工程)。より詳細には、容器10が受け台130上に配置されるとともに、カバー20が、その熱接着性の接着剤層20bが設けられた側の基材20aの主面が容器10の上壁11の天板部11aに対向するように配置される。ここで、カバー20は、接着剤層20bが設けられていない側の基材20aの主面が内側押圧治具100によって吸着されることにより、当該内側押圧治具100によって保持されている。内側押圧治具100は、その少なくとも一部に環状突部11bの内周面11b1および上面11b2に沿う形状を有しており、その表面は約150℃に加熱されている。
【0064】
ここで、内側押圧治具100のうちカバー20と当接する面には、図示しない複数の吸着孔が設けられており、当該吸着孔が図示しない減圧機構に接続されることにより、カバー20が内側押圧治具100によって吸着されている。なお、内側押圧治具100によるカバー20の保持は、吸着に限定されず、たとえばクランプ等による挟み込みであってもよい。
【0065】
次に、
図6および
図8に示すように、内側押圧治具100によってカバー20が押圧される(S4工程)。より詳細には、カバー20が、必要に応じてその表面が加熱された内側押圧治具100によって図中矢印AR2方向に向けて押圧される。これにより、カバー20の周縁の一部が容器10の環状突部11bの内周面11b1および上面11b2と内側押圧治具100とによって挟まれることになり、これに伴ってカバー20が環状突部11bの内周面11b1および上面11b2に沿うように折り曲げられる。その際、カバー20のうちの環状突部11bの上面11b2に沿った部分においては、環状突部11bの周方向に沿って複数の重なり部22apが形成される。
【0066】
次に、
図6および
図9に示すように、外側押圧治具110がカバー20および容器10へ外挿される(S5工程)。より詳細には、内側押圧治具100によるカバー20の押圧が維持されつつ、容器10の環状突部11bの外周面11b3に沿う形状を有するリング状の外側押圧治具110が、カバー20の折り曲げられた部分を環状突部11bの外周面11b3側へ巻き込むように、図中矢印AR3方向に向けて周壁13に外挿される。これにより、カバー20の折り曲げられた部分の一部が容器10の環状突部11bの外周面11b3と外側押圧治具110とによって挟まれることになり、これに伴ってカバー20が環状突部11bの外周面11b3に沿うように折り返される。
【0067】
このとき、カバー20の折り返された部分には、周壁13の周方向に沿って複数の重なり部22apが形成される。ここで、外側押圧治具110は、その表面が約150℃に加熱されており、この熱が伝わることにより、複数の重なり部22apの各々において、熱接着性の接着剤層20bが設けられた側の基材20aの主面同士が、当該接着剤層20bによって仮接着される。その際、カバー20のうちの周縁部分(先端部分)においては、絞り部22aの傾斜部22a2の一部が形成される。なお、基材20aの材質もしくは折り目のつき易さ等によっては上記仮接着が不要な場合があるものの、上記仮接着を行なうことにより、複数の重なり部22apの各々が形成された状態を確実に維持することができる。
【0068】
次に、
図6および
図10に示すように、外側押圧治具110のカバー20および容器10への外挿が解除される(S6工程)。より詳細には、内側押圧治具100によるカバー20の押圧が維持されつつ、外側押圧治具110が図中AR4方向に向けて後退することにより、外側押圧治具110の周壁13への外挿が解除される。
【0069】
次に、
図6および
図11に示すように、固定用治具120によってカバー20が押圧される(S7工程)。より詳細には、内側押圧治具100によるカバー20の押圧が維持されつつ、カバー20の折り返された部分のうちの周壁13の括れ部13aの少なくとも一部に対応する部分が、一対の固定用治具120によって図中AR5方向に向けて全周にわたって挟み込まれるようにして押圧される。このとき、一対の固定用治具120によるカバー20の押圧は、括れ部13aの環状突部11b寄りの端部に沿うように局所的に行なわれる。
【0070】
ここで、一対の固定用治具120の各々は、平面視半円形の切り欠き部を有しており、この切り欠き部の端面が、容器10の周壁13の括れ部13aに沿う形状を有している。また、一対の固定用治具120の各々は、その表面が約160℃に加熱されている。この熱が伝わることにより、カバー20の周壁側カバー部22に設けられた重なり部22apのうち、一対の固定用治具120によって押圧された部分において、当該部分に位置する基材20aの主面同士が、接着剤層20bによって本接着されることになる。その際、カバー20のうちの本接着された部分およびその近傍の部分において絞り部22aの基部22a1が形成されるとともに、絞り部22aの傾斜部22a2の残る部分が形成される。これにより、絞り部22aが環状突部11bの下面11b4および括れ部13aの少なくとも一部を覆うことになり、結果として絞り部22aの基部22a1が環状突部11bの下面11b4によって係止されることになる。したがって、この工程を経ることにより、カバー20が、容器10に対して非接着の状態で容器10に取付けられることになる。
【0071】
なお、一対の固定用治具120の各々の表面温度は、外側押圧治具110の表面温度より高いほうが好ましいが、外側押圧治具110の表面温度と同じであってもよく、また、押圧する時間を長くすることにより、一対の固定用治具120の各々の表面温度をさらに低くすることもできる。一対の固定用治具120の各々の表面温度は、基材20aの厚みもしくは接着剤層20bの接着温度等によって適宜変更可能である。また、固定用治具120は、上述した構成のものに限られず、その配置数や形状は、括れ部13aを略全周にわたって押圧することができれば、適宜変更が可能である。
【0072】
以上において説明した本実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を用いてカバー付き容器1を製造することにより、接着剤を容器10に付着させることなく、カバー20が容器10に取付けられた状態を安定的に維持することができ、これにより従来よりも衛生面の改善が図られたカバー付き容器1を容易に製造することが可能になる。
【0073】
なお、上述した本実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法においては、カバー20の接着剤層20bが熱接着性のものとしたが、接着剤層20bは、熱接着性のものに限定されず、たとえば水や加湿により活性化して接着するもの等であってもよい。
【0074】
(変形例1)
図12は、変形例1に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。
図13は、変形例1に係る実施の形態に係るカバー付き容器の製造方法を示す模式断面図である。以下、これら
図12および
図13を参照して、上述した実施の形態に基づいた変形例1に係るカバー付き容器1Aおよびその製造方法について説明する。
【0075】
図12に示すように、本変形例に係るカバー付き容器1Aは、上述した実施の形態に係るカバー付き容器1と比較した場合に、カバー20の周壁側カバー部22に設けられた絞り部22aの構成のみが相違している。
【0076】
具体的には、本変形例に係るカバー付き容器1Aにおいては、カバー20に設けられた絞り部22aのうちの基部22a1および傾斜部22a2の全体にわたって、カバー20と容器10との間の隙間がほぼ同じになるように構成されている。これは、
図13に示すように、本変形例に係るカバー付き容器の製造方法において、カバー20が一対の固定用治具120によって図中AR6方向に向けて押圧されるに際し、固定用治具120として、その押圧面の形状が括れ部13aのほぼ全体に沿うように形成されていることによる。このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果を得ることができる。
【0077】
(変形例2)
図14は、変形例2に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。以下、この
図14を参照して、上述した実施の形態に基づいた変形例2に係るカバー付き容器1Bについて説明する。
【0078】
図14に示すように、本変形例に係るカバー付き容器1Bは、上述した実施の形態に係るカバー付き容器1と比較した場合に、カバー20の周壁側カバー部22に設けられた絞り部22aの構成のみが相違している。
【0079】
具体的には、本変形例に係るカバー付き容器1Bにおいては、カバー20に設けられた絞り部22aが、環状突部11bの下面11b4を覆う部分の基部22a1のみを有しており、上述した実施の形態に係るカバー付き容器1の絞り部22aが有していた、括れ部13aの基部13a1の外面を覆う部分の基部22a1、および、括れ部13aの傾斜部13a2の外面を覆う傾斜部22a2を有していない。
【0080】
このように構成した場合にも、環状突部11bの下面11b4を覆う部分の絞り部22aの上述した長さL2が1.0mm以上とされることにより、環状突部11bの下面11b4による周壁側カバー部22の係止が行なえることになる。また、上述したような構成の絞り部22aは、たとえば、絞り部22aの基部22a1に対応する部分が、上述した固定用治具120の先端によって環状突部11bの下面11b4に沿って折り曲げられるように押し込まれること等によって得ることができる。
【0081】
したがって、このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果を得ることができることになり、さらには、カバー20が小さくなることにより、材料コストを削減する効果を得ることもできる。
【0082】
(変形例3)
図15は、変形例3に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。以下、この
図15を参照して、上述した実施の形態に基づいた変形例3に係るカバー付き容器1Cについて説明する。
【0083】
図15に示すように、本変形例に係るカバー付き容器1Cは、上述した実施の形態に係るカバー付き容器1と比較した場合に、カバー20の上壁側カバー部21に設けられた凹状部21aの構成のみが相違している。
【0084】
具体的には、本変形例に係るカバー付き容器1Cにおいては、凹状部21aの底部21a1が、容器10の上壁11の天板部11aの外面に当接している。より詳細には、天板部11aのうちの取出し部11a1(不図示)が設けられた部分においては、凹状部21aの底部21a1は取出し部11a1の外面に当接し、天板部11aのうちの取出し部11a1が設けられていない部分においては、凹状部21aの底部21a1は天板部11aの外面に当接する。
【0085】
このように構成した場合には、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られるばかりでなく、底部21a1と天板部11aとの間に隙間が設けられることがなくなるため、カバー付き容器1Cの輸送時および貯蔵時等において、周囲の物体と接触すること等によって上壁側カバー部21自体が破損してしまうことが、より確実に防止できることになる。
【0086】
(変形例4)
図16は、変形例4に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。以下、この
図16を参照して、上述した実施の形態に基づいた変形例4に係るカバー付き容器1Dについて説明する。
【0087】
図16に示すように、本変形例に係るカバー付き容器1Dは、上述した実施の形態に係るカバー付き容器1と比較した場合に、容器10の周壁13およびカバー20の周壁側カバー部22の絞り部22aの構成のみが相違している。
【0088】
具体的には、本変形例に係るカバー付き容器1Dにおいては、容器10の周壁13が、括れ部13aを含んでおらず、筒状部13bのみを含んでおり、筒状部13bの外面の上端は、環状突部11bの下面11b4の内側周縁に接続している。また、周壁側カバー部22の絞り部22aが、傾斜部22a2を有しておらず、基部22a1のみを有している。
【0089】
本変形例に係るカバー付き容器1Dにおいては、周壁側カバー部22の絞り部22aの基部22a1は、環状突部11bの下面11b4および筒状部13bの上端部の外面を覆うように形成されている。ここで、環状突部11bの下面11b4および筒状部13bの上端部の外面を覆う部分の絞り部22aの、容器10の周壁13の周方向と直交する方向における長さ(すなわち
図2において示す長さL2)は、少なくとも1.0mm以上であることが好ましい。
【0090】
絞り部22aの基部22a1は、その環状突部11b寄りの部分のみが、特に容器10の周壁13に近づくように局所的に変形されている。より具体的には、当該部分における基部22a1と容器10との間の隙間は、当該部分を除く基部22a1と容器10との間の隙間に比べて小さくなっている。なお、絞り部22aの基部22a1のうちの当該局所的に変形されている部分およびその近傍の部分は、上述した固定用治具120(
図11参照)による本接着工程(
図6におけるS7工程)において、固定用治具120によって局所的に押圧されることで形成された部分である。このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られる。
【0091】
(変形例5)
図17は、変形例5に係るカバー付き容器を示す模式断面図である。以下、この
図17を参照して、上述した実施の形態に基づいた変形例5に係るカバー付き容器1Eについて説明する。
【0092】
図17に示すように、本変形例に係るカバー付き容器1Eは、上述した実施の形態に係るカバー付き容器1と比較した場合に、容器10の周壁13およびカバー20の周壁側カバー部22の絞り部22aの構成のみが相違している。
【0093】
具体的には、本変形例に係るカバー付き容器1Eにおいては、容器10の周壁13の括れ部13aが、基部13a1を含んでおらず、傾斜部13a2のみを含んでおり、傾斜部13a2の外面の上端は、環状突部11bの下面11b4の内側周縁に接続している。また、周壁側カバー部22の絞り部22aの基部22a1は、環状突部11bの下面11b4のみを覆っている。ここで、環状突部11bの下面11b4と、括れ部13aの外面とを覆う部分の絞り部22aの、容器10の周壁13の周方向と直交する方向における長さ(すなわち
図2において示す長さL2)は、少なくとも1.0mm以上であることが好ましい。このように構成した場合にも、上述した実施の形態において説明した効果に準じた効果が得られる。
【0094】
(その他の形態等)
上述した実施の形態およびその変形例に示すように、カバー20の形状に関して種々説明してきたが、カバー20は、その周壁側カバー部22の絞り部22aが、周壁13の筒状部13bの上端側の一部まで覆うように延長されていてもよく、また、絞り部22aが周壁13の括れ部13aの基部13a1の下端までしか覆っていなくても(すなわち、括れ部13aの傾斜部13a2を覆う傾斜部22a2を有していなくても)よい。
【0095】
また、上述した実施の形態およびその変形例においては、上壁11を構成する上蓋部材の周縁部と周壁13を構成する胴部材の開口縁部とが巻締加工されることによって環状突部11bが設けられるものとした上で、当該巻締構造部を具体的に図示せずに上壁11、周壁13および環状突部11bが一体に構成されたものとして図示を行なったが、環状突部11bは巻締加工によって設けられるものでなくてもよい。いずれにしても、上壁11と周壁13とを接続する部分の容器10に環状突部11bが設けられ、その下面11b4にカバー20の絞り部22aが係止されていればよい。
【0096】
また、上述した実施の形態およびその変形例においては、容器10として、下壁12に設けられた脚部12aが環状突部11bよりも径方向内側に配置されたものを図示して説明を行なったが、容器10としては、脚部12aが環状突部11bよりも径方向外側に配置されたものであってもよい。
【0097】
また、上述した実施の形態およびその変形例において開示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0098】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0099】
1,1A~1E カバー付き容器、10 容器、11 上壁、11a 天板部、11a1 取出し部、11b 環状突部、11b1 内周面、11b2 上面、11b3 外周面、11b4 下面、12 下壁、12a 脚部、13 周壁、13a 括れ部、13a1 基部、13a2 傾斜部、13b 筒状部、20 カバー、20a 基材、20b 接着剤層、21 上壁側カバー部、21a 凹状部、21a1 底部、21a2 側部、22 周壁側カバー部、22a 絞り部、22a1 基部、22a2 傾斜部、22ap 重なり部、100 内側押圧治具、110 外側押圧治具、120 固定用治具、130 受け台。