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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】吹付資材、吹付層形成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/23 20180101AFI20241224BHJP
   A01G 24/15 20180101ALI20241224BHJP
   A01G 24/25 20180101ALI20241224BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20241224BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A01G24/23
A01G24/15
A01G24/25
A01G24/42
A01G7/00 602C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021149327
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042169
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】高山 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】板川 暢
(72)【発明者】
【氏名】高木 賢二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康生
(72)【発明者】
【氏名】間中 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一喜
(72)【発明者】
【氏名】堂本 聖司
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-187228(JP,A)
【文献】特開2003-289721(JP,A)
【文献】特開平11-280081(JP,A)
【文献】特開2002-218840(JP,A)
【文献】特開平08-308376(JP,A)
【文献】特開平05-009937(JP,A)
【文献】特開平10-174518(JP,A)
【文献】特開2009-055875(JP,A)
【文献】特開2005-194698(JP,A)
【文献】特開2015-048610(JP,A)
【文献】特許第4048800(JP,B1)
【文献】特開2003-261872(JP,A)
【文献】国際公開第02/014612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/23
A01G 24/15
A01G 24/25
A01G 24/42
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生基材と、保水性資材とを含み、
前記保水性資材は、ケイ酸塩粘土鉱物及びバイオチャーを含み、
前記バイオチャーの含有量が、体積比で前記ケイ酸塩粘土鉱物の含有量以上であり、
前記保水性資材は、黒土の含有量が、前記植生基材と前記保水性資材との合計体積100%のうち5%以下である、吹付資材。
【請求項2】
更に浸透剤を含む、請求項1記載の吹付資材。
【請求項3】
記バイオチャーの含有量は、前記植生基材と前記保水性資材との合計体積100%のうち1%~60%を占める量である、請求項1又は2記載の吹付資材。
【請求項4】
記バイオチャーの含有量は、前記ケイ酸塩粘土鉱物の含有量よりも体積比で大きい、請求項1~3のいずれか一項記載の吹付資材。
【請求項5】
更に肥料を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の吹付資材。
【請求項6】
更に接着剤を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の吹付資材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の吹付資材を対象面に吹き付けて吹付層を形成する、吹付層形成方法。
【請求項8】
前記対象面が法面である、請求項7記載の吹付層形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付資材、及び、吹付層形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌や岩盤表面の緑化方法として植生基材吹付工が知られている。植生基材吹付工は種子を含ませた植生基材を対象面に吹き付けて種子を発芽させるものであるが、吹付施工後の植生基材が日射や風に晒されることが続くと、表面から水が蒸発して乾燥状態となり、種子が発芽不全に陥ることがある。そのため降雨が少ない時期にはそのリスクが大きいので緑化工事を控えることが望ましいが、他の工程との関係でやむなく実施することがある。その結果、緑化不成立での手直し工事が発生することがあった。
【0003】
乾燥の原因としては、植生基材として汎用されるバーク堆肥の保水性が低いこと、及び、乾燥した場合に撥水性を生じてしまい、吸水が困難になってしまうことが挙げられる。そこで撥水性を抑制するために、界面活性剤を含有させた吹付資材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4048800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、撥水性を抑制した土壌に水が浸透したとしても、保水性が不十分であると水が蒸発するのが早く、植物が生存しにくい。本発明は、土壌や岩盤表面の緑化を目的として施工した場合に保水性が高い吹付層を得られる吹付資材を提供することを目的とする。また、この吹付資材を利用する吹付層形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、植生基材と、保水性資材とを含み、保水性資材は、ケイ酸塩粘土鉱物及びバイオチャーの少なくとも一方を含み、保水性資材は、黒土の含有量が、植生基材と保水性資材との合計体積100%のうち5%以下である、吹付資材を提供する。
【0007】
この吹付資材は保水性資材を含んでいるので、この吹付資材を吹付けて得られる吹付層は保水性が高いものとなり、乾燥しにくく、植物が生育しやすい。そして、この吹付資材を用いれば乾燥しやすい時期でも緑化工事を行うことができる。
【0008】
この吹付資材は、更に浸透剤を含んでいてもよい。浸透剤を含んでいると、この吹付資材を吹付けて得られる吹付層は水を吸収しやすくなる。すなわち、撥水性が抑制される。また、保水性資材はバイオチャーを含み、バイオチャーの含有量は、植生基材と保水性資材との合計体積100%のうち1%~60%を占める量であってもよい。
【0009】
この吹付資材において、保水性資材はケイ酸塩粘土鉱物及びバイオチャーを含み、バイオチャーの含有量は、ケイ酸塩粘土鉱物の含有量よりも体積比で大きいことが好ましい。また、この吹付資材は更に肥料を含んでいてもよく、接着剤を含んでいてもよい。接着剤は吹付資材の粒子間を接着する働きをするので、この吹付資材を法面に吹き付けた場合に吹付層が滑り落ちることを防止することができる。
【0010】
また本発明は、上記の吹付資材を対象面に吹き付けて吹付層を形成する吹付層形成方法を提供する。ここで対象面は、法面であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、土壌や岩盤表面の緑化を目的として施工した場合に保水性が高い吹付層を得られる吹付資材を提供することができる。また、この吹付資材を利用する吹付層形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態の吹付資材は、土壌や岩盤表面の緑化、あるいはコンクリート等の表面の緑化を目的として、水平面や法面に吹き付けることにより植生の基盤となる吹付層を形成するものである。本実施形態の吹付資材は種子を含んでいるので、吹付層から種子が発芽し、植物体が生長することで対象面が緑化する。
【0013】
本実施形態の吹付資材は、植生基材と、保水性資材と、接着剤と、種子とを含む。この吹付資材は更に肥料を含んでいてもよい。また、この吹付資材は、水の浸透性を高めるために浸透剤を含んでいてもよい。
【0014】
植生基材は、植物の生育に必要な保水性を有するものであることが好ましく、また、有機質の資材であることが好ましい。植生基材としては、バーク堆肥や、バーク堆肥と腐葉土、ピートモス、ヤシ繊維等のうちの少なくとも一種との混合物が挙げられる。植生基材の乾燥比重は、0.05~0.45g/cmであることが好ましく、0.15~0.3g/cmであることがより好ましい。
【0015】
保水性資材は、植生基材よりも保水性が高い材料である。保水性資材は無機質の資材でも有機質の資材でもよく、例えばケイ酸塩粘土鉱物、バイオチャー、ヤシ繊維、ピートモス、木材繊維、無機多孔質資材、セラミック資材が挙げられる。保水性資材はこれらのなかでも、ケイ酸塩粘土鉱物又はバイオチャーのいずれか一方を含む。また、ケイ酸塩粘土鉱物及びバイオチャーの両方を含むことが好ましい。ケイ酸塩粘土鉱物はケイ酸が豊富であることから、イネ科植物のようにケイ酸要求性が高い植物において植物体の強度や耐病性の向上等が見込まれる。
【0016】
ケイ酸塩粘土鉱物としては、ゼオライト、カオリナイト、スメクタイト等が挙げられる。これらの中でも、スメクタイトの一種である、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトが好ましい。ベントナイトは水を強く吸着することで水の蒸発を抑制し、吹付資材の乾燥を遅らせる効果がある。ベントナイトは、吸水による膨潤の程度が小さい種類が好ましく、この観点からカルシウム型ベントナイトが好ましい。特に、吹付資材を法面に適用する場合には吸水による膨潤の程度が小さいことが好ましい。
【0017】
ケイ酸塩粘土鉱物の含有量は、植生基材と保水性資材との合計体積100%のうち0.01%~50%を占める量であることが好ましく、0.1%~25%を占める量であることがより好ましく、0.5%~15%を占める量であることが更に好ましい。
【0018】
バイオチャー(植物炭)は有機物の炭化物である。バイオチャーは一般に多孔質であるので、その微細な空隙に保水することで蒸発を抑制するとともに、植物に水を提供することができる。また当該空隙は、植物の根が呼吸できる空間になると同時に、微生物も利用可能であり、有用微生物の増加が期待できる。バイオチャーとしては、例えば、もみ殻燻炭、ヤシ殻炭、木炭、竹炭が挙げられる。バイオチャーは土中で分解されにくいので、本実施形態の吹付資材の構成材料として用いると、植物が大気中から吸収した二酸化炭素を土中に貯留する効果が見込まれる。
【0019】
吹付資材におけるバイオチャーの含有量は、植生基材と保水性資材との合計体積100%のうち1%~60%を占める量であることが好ましく、5%~50%を占める量であることがより好ましく、10%~40%を占める量であることが更に好ましい。特に、バイオチャーとしてもみ殻燻炭を用いる場合は、もみ殻燻炭はpHが8~9のアルカリ性資材であるので、含有量をこれらの上限値を超えないものとすることが好ましい。また、pHが高い土壌では、在来種よりも外来種のセイタカアワダチソウ(外来生物法で要注意外来生物に指定されている。)等が侵入しやすくなる危険性がある。
【0020】
ケイ酸塩粘土鉱物とバイオチャーとの含有量の相対比としては、撥水性を抑制する(水の浸透性を高める)観点から、バイオチャーの含有量が体積比でケイ酸塩粘土鉱物の1倍~40倍であってもよく、1.5倍~20倍であってもよく、2倍~10倍であってもよい。
【0021】
保水性資材としては黒土を含んでいてもよいが、本実施形態の吹付資材において、黒土の含有量は、植生基材と保水性資材との合計体積100%のうち5%以下である。この含有量が5%を超えると、保水性が低下する傾向がある。
【0022】
肥料は、通常の植物の肥料として用いられるものであれば種類は問わない。混合量としては、例えば、吹付資材を吹き付けて吹付層を形成したときに、吹付層の面積を基準として50g/m~150g/mとなる量で混合することが好ましい。植生基材及び保水性資材の合計重量を100%としたとき、1%~5%の重量で混合することが好ましい。
【0023】
接着剤は、吹付資材を法面に適用して吹付層を形成した場合に、吹付層が滑り落ちないように吹付資材中の粒子同士を接着するものである。接着剤は有機高分子であることが好ましく、特にポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリビニルアルコールが好ましい。接着剤の含有量は、植生基材及び保水性資材の合計体積を100%としたとき、0.05%~2%であってもよく。0.1%~1%であってもよい。
【0024】
浸透剤は、吹付層の水の浸透性を高める(撥水性を抑制する)ためのものである。吹付層の水の浸透性が高いと降雨時に雨水が浸透しやすく、保水性が発揮される状態になりやすい。浸透剤は界面活性剤であることが好ましく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれも用いることができる。浸透剤は、混合性の観点から液体であることが好ましく、配合量としては、植生基材及び保水性資材の合計体積を基準として0.01mL/L~2.5mL/Lであってもよく、0.03mL/L~0.25mL/Lであってもよい。
【0025】
撥水性の程度は、撥水度試験で求めることができる。例えばWDPT法(Bisdom et al.,1993)に従い、0.5mLの水滴が浸透する時間を記録することで求めることができる。WDPT法では、シャーレ上に対象資材を広げ、対象資材の乾燥度を最も高い撥水性を示す値に設定する(例:体積含水率20%)。そして、水滴浸透時間(単位:秒)の程度によって以下の五段階の撥水度(WR0~WR4)で評価する。
・5秒未満:WR0(撥水性なし)
・5秒~60秒未満:WR1(わずかな撥水性)
・60秒~600秒未満:WR2(強い撥水性)
・600秒~3600秒:WR3(顕著な撥水性)
・3600秒超:WR4(極度の撥水性)
【0026】
種子としては、イネ科草本類、マメ科草木本類、カバノキ科、バラ科等の木本類種子等が挙げられる。種子の配合量は、緑化目標、地域、工期等を勘案して決定する。
【0027】
吹付資材の吹付けの施工手順としては、始めに各種の資材を混合する。例えばモルタル等吹付機のタンクに植生基材と、保水性資材と、接着剤と、浸透剤と、肥料と、種子を投入し、混合する。これにより吹付資材が調整される。混合する資材の投入順はいずれであってもよく、任意の資材の投入を遅らせてもよい。例えば、種子は、種子以外の資材を十分に混合した後に投入してもよい。
【0028】
吹付け先である対象面は、水平面であってもよく法面であってもよい。法面である場合は、勾配が最大1:0.6であってもよい。対象面にラス網等の滑り止め部材を設け、吹付資材をポンプで圧送し、ノズルから吐出させて滑り止め部材上に吹付ける。吹付厚は、基板の岩質、土質勾配、供用植物種等の施工条件により3cm~10cmの範囲で決定される。このようにして対象面に吹付層を形成することができる。
【0029】
土壌や岩盤表面の緑化を目的とする植生基材吹付工が従来知られているが、吹付施工後の植生基材が日射や風に晒されることが続くと、表面から水が蒸発して乾燥状態となり、種子が発芽不全に陥ることがあった。そのため降雨が少ない時期にはそのリスクが大きいので緑化工事を控えることが望ましいが、他の工程との関係でやむなく実施することがあった。その結果、緑化不成立での手直し工事が発生することがあった。
【0030】
吹付層の保水性が不十分であると水が蒸発するのが早く、植物が生育しにくい。特に法面では保水性が不十分であると降雨があっても水が流出しやすい。この点、本実施形態の吹付資材は保水性資材を含んでいるので、この吹付資材を吹付けて得られる吹付層は保水性が高いものとなる。したがって当該吹付層によれば、従来の植生基材よりも乾燥条件下での保水性が高くなり、植物の生存期間を延ばすことができる。また、当該吹付層は乾燥しにくいので、本実施形態の吹付資材を用いれば乾燥しやすい時期でも緑化工事を行うことができる。したがって、季節に関わらず工期を自由に設定することができる。
【0031】
本実施形態の吹付資材は浸透剤を含んでいるので、吹付層は水を吸収しやすくなっており、少量の降雨でも効率的に吸水できる。また、本実施形態の吹付資材は接着剤を含んでおり吹付層の粒子同士が接着されるので、吹付層が滑り落ちる虞がある法面にも適用可能である。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では吹付資材が種子を含む態様を示したが、種子を含まないものとし、吹付層を形成した後に種子を播種したり、種子等を付着させた緑化シート等を敷設したりする態様としてもよい。また、吹付層には種子を播種する代わりに苗を植えてもよい。また、吹き付ける対象面は、土壌や岩盤のほか、コンクリートやモルタルであってもよい。
【実施例
【0033】
以下、実験例を挙げて本発明の吹付資材の保水性と撥水性を評価したことを示す。なお、本発明は下記実験例に限定されるものではない。
【0034】
<保水性の検討>
1.125リットルの容器(150mm×150mm×50mm)を用意した。以下に示す植生基材と保水性資材とを表1(実験例1~24)に示した体積比でそれぞれ混合し、更に、これらの体積を100%としたときの体積が0.2%となる量の接着剤を混合して改質植生基材を用意した。各実験例において、容器の体積の1.5倍量の改質植生基材を充填した。実験例一つあたり、種子を150個播種した。
【0035】
(使用材料)
[1]植生基材(バーク堆肥を主成分とするもの:商品名『フジミソイル』、富士見工業社製、乾燥かさ密度0.18g/cm
[2]保水性資材
・ベントナイト(カルシウム型ベントナイト:商品名『ベントナイト粒』、アグリクリエイト社製)
・黒土(商品名『黒土』、刀川平和農園社製)
・もみ殻燻炭(商品名『グリーンパワーバイオ炭』、関西産業社製)
・ヤシ殻炭(商品名『ハイプロC』、キングコール社製)
・ヤシ繊維(商品名『ココユーキ』、DIA社製)
・ピートモス(商品名『ピートモス』、刀川平和農園社製)
・木材繊維(商品名『DWファイバー』、大建工業社製)
[3]接着剤(酢酸ビニル-エチレン共重合体:商品名『ルナゾールパウダーS』、ジャパンコーティングレジン社製)
[4]種子(アニュアルライグラスの種子)
【0036】
播種した各容器を気温25℃、湿度55%の人工気象室に静置して、明暗周期及び吸水周期を12時間として生育した。播種後14日経過後、又は、45%以上(半数±5%)の発芽が確認された時点で、給水を停止した。その後、試験体の芝草が半数以上萎れるまでにかかった日数を、乾燥条件下における生存日数として記録した。結果を表1に示す。
【0037】
表1に示した結果によれば、保水性資材としてベントナイトやバイオチャー(もみ殻燻炭、ヤシ殻炭)を混合した場合(実験例2~5,13~18)は、植生基材のみの場合(実験例1)よりも植物生存日数が増加したことが分かる。また、保水性資材としてココピート、ピートモス、木材繊維を用いた場合(実験例19~24)は、ベントナイトやバイオチャーを用いた場合ほどには植物生存日数の延長効果が高くなかった。また、保水性資材として黒土を5%混合した場合(実験例6)は、植生基材のみの場合(実験例1)よりも植物生存日数が増加したが、5%を超えて混合した場合(実験例7~12)は植物生存日数が減少した。これは、改質植生基材中の空隙が減少して保水量が低下したことが原因と考えられる。
【0038】
<保水性、及び、撥水性の検討>
保水性向上効果と併せて、撥水抑制効果の有無についても検討した。上記の保水性の検討で用いたのと同じ植生基材及び保水性材料(ベントナイト、もみ殻燻炭)を用いて、表2に示した体積比でそれぞれ混合し、更に、これらの体積を100%としたときの体積が0.2%となる量の接着剤を混合し、更に、植生基材及び保水性材料の合計体積を基準として0.063mL/Lとなる量で浸透剤(非イオン性界面活性剤:商品名『グッドタッチ』、丸和バイオケミカル社製)を混合して改質植生基材を用意した。上記の保水性の検討で用いたのと同じ容器で同様に改質植生基材を充填し、播種した。
【0039】
播種した各容器を気温25℃、湿度55%の人工気象室に静置して、明暗周期を12時間として生育した。播種後14日経過後、又は、45%以上(半数±5%)の発芽が確認された時点で、給水を停止した。その後、試験体の芝草が半数以上萎れるまでにかかった日数を、乾燥条件下における生存日数として記録した。結果を表2に示す。
【0040】
また、各改質植生基材を別途シャーレ(直径7cm)に充填して、水滴浸透時間を計測した。撥水度試験はWDPT法に従い、0.5mLの水滴が浸透するのに要する時間を記録することで行った。乾燥条件としては、改質していない植生基材が予備試験において最も高い撥水性を示した体積含水率20%とした。結果を表2に示す。なお、表2において「水滴浸透時間」は、小数点以下第一位を四捨五入した整数値で示している。
【0041】
表2に示した結果によれば、保水性資材としてベントナイト及びもみ殻燻炭を混合した場合(実験例26~34)はいずれも植生基材のみの場合(実験例25)よりも植物生存日数が増加したことが分かる。また、もみ殻燻炭の混合割合を増やすと(実験例26~28、29~31、32~34)水の浸透性が増す(撥水性の抑制度合いが高まる)ことが分かる。ベントナイトの量がもみ殻燻炭の量よりも多い場合(実験例29、32)、撥水性が高まることが分かる。なお、実験例32では、一定期間経過後も規定の発芽率に到達しなかった(発芽率40.8%)。これはベントナイト量の増加により撥水性が高まったこと、及び、ベントナイトが局所的に集中することで遮水部の形成が確認され、種子の水分吸収が阻害されたことが原因と考えられる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば法面の緑化工として利用することができる。