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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】警報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
G08B17/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021171762
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2023061682
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 英聖
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】岩間 三典
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 智絵
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-113113(JP,A)
【文献】特開平4-209093(JP,A)
【文献】実開昭58-101297(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常を検知する検知器と、移報装置とを備える警報システムであって、
前記検知器は、
前記検知器の状態情報を記憶する記憶部と、
前記検知器の電源が再投入されると、前記状態情報を正常状態を示すものに初期化する初期化部と、
前記電源が再投入されると、前記電源の再投入を前記移報装置に通知する通知部と、
所定のタイミングで前記状態情報を前記移報装置に送信する送信部とを有し、
前記移報装置は、
受信された前記状態情報に応じて外部機器に移報信号を出力する移報出力部と、
前記電源の再投入が通知された時点から所定時間内に受信された前記状態情報に応じた前記移報出力部の処理を制限する制限部とを有する
警報システム。
【請求項2】
前記状態情報は、前記電源が再投入される前に送信され、機器異常状態を示す第1状態情報と、前記電源が再投入された後に送信され、前記初期化された第2状態情報とを含み、
前記移報出力部は、前記第1状態情報が受信されると、前記第1状態情報に応じて前記外部機器に前記移報信号を出力し、
前記制限部は、前記所定時間内に前記第2状態情報が受信されると、前記第2状態情報に応じた前記移報信号の出力停止を禁止する
請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
前記制限部は、前記所定時間内に受信された前記状態情報が機器異常状態を示す場合には、当該状態情報に応じた前記移報信号の出力を許可する
請求項1に記載の警報システム。
【請求項4】
前記送信部は、所定の時間間隔で前記状態情報を含む定期信号を前記移報装置に送信し、
前記移報出力部は、前記所定の時間間隔より長い予め定められた時間継続して前記検知器から前記定期信号が受信されない場合には前記移報信号を出力する
請求項1から3のいずれか1項に記載の警報システム。
【請求項5】
前記送信部は、前記検知器に機器異常が発生すると、前記状態情報を含む機器異常信号を前記移報装置に送信し、
前記移報出力部は、前記機器異常信号が受信されると前記移報信号を出力する
請求項1から4のいずれか1項に記載の警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常を検知する検知器の状態を外部に伝達する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火災警報器の親機と子機との間で各機器が正常に動作しているかどうかを確認するための信号を定期的に送信する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5478316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異常を検知する検知器には、検知器の状態を認識し、この状態を示す信号を移報装置に送信するものがある。しかし、検知器の電源が再投入されると、この検知器により認識されている機器の状態は正常状態に初期化されてしまう。そのため、電源の再投入後すぐに検知器から機器の状態を示す信号が送信される場合には、検知器に機器異常があるか否かに拘わらず、正常状態を示す信号が送信されることになる。この信号を受信すると、移報装置は検知器が正常であると認識し、それに応じて移報信号の出力を停止する等の処理を行う。この処理が行われると、移報信号の出力先では、電源の再投入前に発生した検知器の機器異常を認識することができなくなる。その結果、検知器の機器異常に適切に対処できない虞がある。
【0005】
本発明は、異常を検知する検知器の電源の再投入後においても、電源が再投入される前に発生した検知器の機器異常を認識できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、異常を検知する検知器と、移報装置とを備える警報システムであって、前記検知器は、前記検知器の状態情報を記憶する記憶部と、前記検知器の電源が再投入されると、前記状態情報を正常状態を示すものに初期化する初期化部と、前記電源が再投入されると、前記電源の再投入を前記移報装置に通知する通知部と、所定のタイミングで前記状態情報を前記移報装置に送信する送信部とを有し、前記移報装置は、受信された前記状態情報に応じて外部機器に移報信号を出力する移報出力部と、前記電源の再投入が通知された時点から所定時間内に受信された前記状態情報に応じた前記移報出力部の処理を制限する制限部とを有する警報システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異常を検知する検知器の電源の再投入後においても、電源が再投入される前に発生した検知器の機器異常を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る警報システムの構成の一例を示す図である。
図2】警報器の構成の一例を示す図である。
図3】移報装置の構成の一例を示す図である。
図4】親機に機器異常が発生した場合の動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.構成
図1は、本実施形態に係る警報システム1の構成の一例を示す図である。警報システム1は、グループ内で連動して火災の発生を警報するシステムである。警報システム1は、子機として機能する複数の警報器10(以下、「子機10a」という。)と、親機として機能する警報器10(以下、「親機10b」という。)と、移報装置20とを備える。なお、以下の説明では、子機10aと親機10bとを総称して警報器10ともいう。子機10a、親機10b、及び移報装置20は、同一のグループに属し、無線で接続されている。移報装置20は、警報システム1に含まれない外部機器30に信号線40を介して接続されている。なお、図1に示される子機10aの数は例示であり、これに限定されない。
【0010】
警報器10は、住宅、商業ビル、オフィスビル等の管理対象の建物の天井や壁に設置され、火災を検知して警報を行う。警報器10は、住宅用火災警報器、火災センサ等、火災を検知して警報を行うどのような機器でもよい。火災は、本発明に係る異常の一例である。警報器10は、本発明に係る検知器の一例である。親機10bは、複数の子機10a及び移報装置20と無線通信可能な位置に設置され、子機10aから受信した信号を移報装置20に転送する。
【0011】
移報装置20は、警報器10における火災の検知を示す信号を受信すると、外部機器30に移報出力を行う。また、移報装置20は、警報器10における機器自身の故障など、火災以外の異常の検知を示す信号を受信した場合にも外部機器30に移報出力を行う。この移報出力とは、警報を伝達することをいう。なお、この実施形態では、移報装置20自身は火災の検知を行わない。
【0012】
外部機器30は、例えば管理人室などで管理及び運用され、管理対象の建物の監視を行う制御装置である。外部機器30は、移報装置20から移報出力が行われると、この移報出力に応じた処理を行う。この処理は、例えば移報装置20からの移報出力に応じて建物の管理を行う管理会社のコントロールセンターに信号を送信する処理である。なお、外部機器30は、増設ブザーやフラッシュライト等の警報装置、シャッターや防火戸等の防排煙機器、インターホンシステムの住宅情報盤と接続して運用してもよい。移報出力に応じた処理も、信号を送信する処理に限定されず、どのような処理であってもよい。
【0013】
図2は、警報器10の構成の一例を示す図である。警報器10は、制御部101と、記憶部102と、通信部103と、操作部104と、表示部105と、音出力部106と、火災検知部107と、電源部108とを備える。警報器10の各部は、バス又は電源線を介して接続されている。
【0014】
制御部101は、自機の各部の制御及び各種の処理を行う。制御部101は、例えばCPU等の1又は複数のプロセッサを含み、プロセッサが記憶部102に記憶されたプログラムを実行する。記憶部102は、RAM等の揮発性メモリと、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリには、自機の状態情報が記憶される。状態情報は、自機の状態を示す情報であり、正常状態と機器異常状態のいずれかを示す。また、親機10bの揮発性メモリには、グループ内の全ての警報器10の状態情報が記憶される。不揮発性メモリには、自機の機能を実現するためのプログラム、自機のアドレス、及びグループIDが記憶される。このアドレスは、グループ内の警報器10を一意に識別する番号である。同一グループに属する複数の警報器10には、連続した番号のアドレスが予め設定される。通信部103は、無線通信規格に従って他の機器と無線通信を行うための通信インターフェースである。通信部103は、例えばアンテナと送受信回路とを含む。
【0015】
操作部104は、操作者の操作に用いられる。操作部104は、例えば操作ボタンを含む。表示部105は、各種の情報を表示する。表示部105は、発光色が異なる複数のLEDを含み、各LEDの点灯パターンにより各種の情報を示す。音出力部106は、各種の警報音や音声メッセージを出力する。音出力部106は、例えばスピーカーを含む。火災検知部107は、火災に伴って変化する物理量を測定することにより火災を検知する。火災の検知方式は、例えば光電式又は定温式である。光電式の場合、火災検知部107は周囲の煙濃度を測定して出力する。定温式の場合、火災検知部107は周囲の温度を測定して出力する。なお、火災の検知方式は、光電式や定温式に限定されず、赤外線式、複合式等、火災を検知し得る方式であればどのような方式であってもよい。電源部108は、自機の各部に電力を供給する。電源部108は、例えば電池と電源回路とを含む。以下の説明では、電源部108から電力が供給される状態にすることを電源を投入するといい、電力が供給されない状態にすることを電源を切断するという。
【0016】
警報器10の制御部101は、異常検知部111と、警報制御部112と、更新部113と、送信部114と、通知部115として機能する。これらの機能は、制御部101のプロセッサが記憶部102に記憶されたプログラムを実行して演算を行い又は自機の各部を制御することにより実現される。
【0017】
異常検知部111は、所定の時間間隔で自機の状態を確認し、自機の機器異常を検知する。機器異常の種類には、例えば電池切れ、センサ異常、及び電波異常が含まれる。電池切れは、電池残量が少なくなった状態を示す。センサ異常は、火災検知部107の出力に異常がある状態を示す。電波異常は、自機と他機との間の無線通信に異常がある状態を示す。
【0018】
警報制御部112は、異常検知部111により機器異常が検知されると、表示部105及び音出力部106から機器異常の発生を知らせる警報を出力させる。例えば警報制御部112は、音出力部106から音声メッセージを出力させるとともに、予め決められた点灯パターンに従って表示部105のLEDを点灯させる。
【0019】
更新部113は、異常検知部111により機器異常が検知されると、記憶部102に記憶された状態情報を機器異常を示すものに更新する。また、親機10bの更新部113は、子機10aから受信された機器異常信号又は定期信号に応じて、記憶部102に記憶された子機10aの状態情報を更新する。さらに、更新部113は、電源が再投入されると、記憶部102に記憶された状態情報を正常状態を示すものに初期化する。更新部113は、本発明に係る初期化部の一例である。
【0020】
送信部114は、所定のタイミングで記憶部102に記憶された状態情報を送信する。例えば送信部114は、所定の時間間隔で記憶部102に記憶された状態情報を含む定期信号を送信する。また、送信部114は、異常検知部111により機器異常が検知されると、記憶部102に記憶された状態情報を含む機器異常信号を送信する。
【0021】
通知部115は、電源が再投入されると、移報装置20に電源の再投入を通知する。電源が再投入とは、電源が一端切断された後、再び投入されることをいう。例えば通知部115は、電源が再投入されたことを通知する電池接続信号を送信することにより、移報装置20に電源の再投入を通知する。
【0022】
図3は、移報装置20の構成の一例を示す図である。移報装置20は、制御部201と、記憶部202と、通信部203と、操作部204と、表示部205と、音出力部206と、移報出力部207と、電源部208とを備える。移報装置20の各部は、バス又は電源線を介して接続されている。制御部201、記憶部202、通信部203、操作部204、表示部205、音出力部206、及び電源部208は、それぞれ、基本的には警報器10の制御部101、記憶部102、通信部103、操作部104、表示部105、音出力部106、及び電源部108と同様であるため、その説明を省略する。ただし、記憶部202は、グループ内で発生した火災等の異常情報を受信するために必要なグループID等の情報を記憶する。
【0023】
移報出力部207は、警報器10に機器異常が発生すると、機器異常の発生を伝える移報信号を外部機器30に出力する。移報出力部207は、外部機器30に接続されている接点を含む。この接点は、例えばブレーク接点であり、通常時は閉状態である。なお、この例では、移報出力部207は有接点リレーを有するが、無接点リレーを有してもよい。
【0024】
制御部201は、受信部211と、警報制御部212と、接点制御部213と、制限部214として機能する。これらの機能は、制御部201のプロセッサが記憶部202に記憶されたプログラムを実行して演算を行い又は自機の各部を制御することにより実現される。
【0025】
受信部211は、機器異常信号及び定期信号を受信する。受信部211は、子機10a又は親機10bからこれらの信号を直接受信してもよいし、親機10bにより転送された信号を受信してもよい。
【0026】
警報制御部212は、受信部211にて受信された信号によりグループ内の少なくとも1の警報器10に機器異常が発生したことが示される場合には、表示部205から機器異常に関する警報を出力させる。このとき、警報制御部212は、機器異常の種類によって異なる警報を表示させてもよい。例えば警報制御部212は、機器異常の種類毎に予め決められた異なる点灯パターンに従って表示部205に含まれるLEDを点灯させる。
【0027】
接点制御部213は、受信部211にて受信された信号に応じて移報出力部207の接点を制御する。例えば接点制御部213は、接点と対になるコイルの電磁力を利用して接点の接続状態を切り替える。接点制御部213は、受信部211にて受信された信号によりグループ内の少なくとも1の警報器10に機器異常が発生したことが示される場合には、移報出力部207の接点の接続状態を切り替えて、警報器10に機器異常が発生したことを伝える移報信号を移報出力部207から外部機器30に出力させる。また、接点制御部213は、受信部211にて受信された信号によりグループ内の全ての警報器10の状態が正常に戻ったことが示される場合には、移報出力部207の接点の接続状態を切り替えて、この移報信号の出力を停止させる。
【0028】
制限部214は、親機10bから電源の再投入が通知された時点を基準に禁止時間を設定し、禁止時間内に受信された信号に応じた移報出力部207の処理を制限する。例えば制限部214は、禁止時間内に受信された信号を無効にし、その信号に応じた処理を禁止する。禁止時間は、例えば親機10bの電源の再投入後初めて送信される初回の定期信号が受信される時点を含むように予め設定される。禁止時間は、本発明に係る所定時間の一例である。また、制限部214は、禁止時間の経過後に受信された信号については、その信号に応じた処理を許可する。
【0029】
2.動作
図4は、親機10bに機器異常が発生した場合の動作の一例を示すシーケンス図である。この動作は、親機10bが自機の機器異常を検知したことを契機に開始される。
【0030】
ステップS11において、親機10bの異常検知部111は、自機で機器異常が発生すると、この機器異常を検知する。具体的には、異常検知部111は、所定の時間間隔で、自機の状態を確認する。ここでは、親機10bにおいて電池切れが発生した例を挙げて説明する。異常検知部111は、所定の時間間隔で、電池の電圧値が予め定められた親機10bの動作電圧値以上であるか否かを判定する。電池の電圧値が動作電圧値未満であると所定回数連続して判定されると、異常検知部111は電池切れを検知する。
【0031】
ステップS12において、親機10bの警報制御部112は、表示部105及び音出力部106から機器異常の発生を知らせる警報を出力させる。このとき、警報制御部112は、機器異常の種類によって異なる警報を出力させる。この例では、電池切れが検知されるため、警報制御部112は、「電池切れです」という音声メッセージを音出力部106から出力させるとともに、表示部105のLEDを所定の点滅周期で1回点滅させる。
【0032】
ステップS13において、親機10bの更新部113は、記憶部102に記憶された親機10bの状態情報を機器異常を示すものに更新する。この例では、記憶部102に記憶された親機10bの状態情報が電池切れを示すものに更新される。なお、記憶部102には、親機10bの状態情報の他に、グループ内に含まれる子機10aの状態情報が記憶されているが、この例では、子機10aの状態情報は正常状態を示すものとする。
【0033】
ステップS14において、親機10bの送信部114は、記憶部102に記憶された親機10bの状態情報を含む機器異常信号を無線で送信する。なお、ステップS12~S14の処理は、どの処理が先に行われてもよいし、並行して行われてもよい。この機器異常信号には、異常の種類を示す情報が含まれる。また、この機器異常信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器に異常が発生したかが分かるように、親機10bのアドレスとグループIDが付加される。この機器異常信号に含まれる状態情報は本発明に係る第1状態情報の一例である。移報装置20の受信部211は、機器異常信号に含まれるグループIDと記憶部202に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから転送された機器異常信号を受信する。
【0034】
ステップS15において、移報装置20の警報制御部212は、表示部205から警報器10の機器異常の発生を知らせる警報を出力させる。この例では、異常の種類が電池切れであるため、警報制御部212は、表示部205のLEDを所定の点滅周期で1回点滅させる。
【0035】
ステップS16において、移報装置20の接点制御部213は、移報出力部207の接点を制御することにより、警報器10の機器異常の発生を伝える移報信号を移報出力部207から外部機器30に出力させる。この移報信号の出力はその機器異常が回復するまで継続される。例えば通常時、接点は閉状態であり、外部機器30には電流が流れている。しかし、機器異常信号を受信すると、接点制御部213は接点を開状態に切り替える。接点が開状態に切り替わると、接点の両端の導通が失われ、外部機器30に電流が流れなくなる。これにより、外部機器30は警報器10に機器異常が発生したことを認識する。そして、外部機器30は、例えば警報器10の機器異常の発生を示す信号を管理会社のコントロールセンターに送信する。これにより、管理会社は、管理対象の建物に設置された警報器10に機器異常が発生したことを認識し、作業者が管理対象の建物に移動して機器異常の対処を行うことができる。
【0036】
ここで、作業者が到着する前に管理対象の建物に居る一般利用者が親機10bの電池の抜き差しを行い、親機10bが一時的に電池切れの状態から回復したものとする。親機10bは警報器10の状態情報を有しているが、この状態情報は記憶部102の揮発性メモリに記憶されているため、電池の抜き差しにより電源が切断されると消去される。ステップS17において親機10bの電源が再投入されると、ステップS18において親機10bの更新部113は、記憶部102に記憶された状態情報を初期化する。この初期化により、記憶部102の揮発性メモリには、グループ内に含まれる全ての警報器10について正常状態を示す状態情報が記憶される。
【0037】
ステップS19において、親機10bの通知部115は、電源が再投入されたことを通知する電池接続信号を無線で送信する。この電池接続信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器の電源が再投入されたかが分かるように、親機10bのアドレスとグループIDが付加される。移報装置20の受信部211は、電池接続信号に含まれるグループIDと記憶部202に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから送信された電池接続信号を受信する。
【0038】
ステップS20において、移報装置20の制限部214は、電池接続信号を受信した時点を基準に、親機10bから受信した定期信号に応じた処理を制限する禁止時間を設定する。禁止時間は、例えば電池接続信号を受信した時点から第1時間である。
【0039】
ステップS21において、親機10bの送信部114は、電池接続信号を送信してから第2時間経過すると、初回の定期信号を無線で送信する。ここで、上述した第1時間は、第2時間より長い時間であって、電池接続信号が送信されてから2回目の定期信号が送信されるまでの時間より短い時間に予め設定される。上述したように、親機10bの電源の再投入により、状態情報が初期化され、記憶部102には全ての警報器10について正常状態を示す状態情報が記憶されている。したがって、初回の定期信号には全ての警報器10について正常状態を示す状態情報が含まれる。この定期信号に含まれる状態情報は本発明に係る第2状態情報の一例である。また、定期信号には、同じグループに属する他の機器に対して、どの機器が定期信号の送信元であるかが分かるように、親機10bのアドレスとグループIDが付加される。移報装置20の受信部211は、電池接続信号に含まれるグループIDと記憶部202に記憶されたグループIDとが一致するため、親機10bから送信された定期信号を受信する。
【0040】
ステップS22において、移報装置20の制限部214は、初回の定期信号が禁止時間内に受信されるため、この定期信号に応じた移報出力部207の処理を制限する。例えば制限部214は、移報出力部207から移報信号が出力されている場合には、受信部211により受信された定期信号を破棄して、この定期信号に含まれる状態情報に応じた移報信号の出力停止を禁止する。定期信号が破棄されると、接点制御部213により定期信号に応じた接点の制御が行われない。接点制御部213による接点の制御が行われないと、移報出力部207の接点の接続状態は変化しないため、移報信号の出力が継続される。
【0041】
初回の定期信号が送信された時点から第3時間が経過すると、親機10bから移報装置20に次の定期信号が送信される(ステップS23)。ここでは、作業者が到着し、作業者により親機10bの電池が交換され、初回の定期送信が送信されてから次の定期信号が送信されるまでの間に、全ての警報器10が正常状態に戻ったものとする。この場合、次の定期信号には全ての警報器10について正常状態を示す状態情報が含まれる。移報装置20の制限部214は、次の定期信号が禁止時間の経過後に受信されるため、この定期信号に応じた移報出力部207の処理を許可する。これにより、この定期信号に応じた処理が実施される(ステップS24)。例えば制限部214は、この定期信号を破棄せずに接点制御部213に供給させる。移報出力部207から移報信号が出力されている場合、接点制御部213は、移報出力部207からの移報信号の出力を停止させる。例えば接点制御部213は、移報出力部207の接点を通常の閉状態に切り替える。接点が閉状態に切り替わると、接点の両端が導通し、外部機器30に電流が流れる。これにより、外部機器30側では警報器10の機器異常が回復したことが認識される。
【0042】
一般に、管理会社は、警報器10に機器異常が発生した場合には、作業者が警報器10の設置場所に移動して機器異常に対処し、警報器10が正常状態に戻ったことを確認する必要がある。そのため、警報器10が正常状態に戻ったことを作業者が確認するまでは、移報装置20からの移報信号の出力が継続されているのが好ましい。上述した実施形態によれば、親機10bに発生した機器異常に応じて移報装置20から移報信号が出力されている間に、親機10bの電源が再投入された場合にも、親機10bから禁止時間内に受信された定期信号によらず移報信号の出力が継続される。そのため、管理会社は、親機10bの電源の再投入後においても、親機10bの電源が投入される前に発生した親機10bの機器異常を認識し、適切に対処することができる。
【0043】
3.変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態は、以下の変形例のように変形して実施されてもよい。実施形態と変形例とは、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。同様に、以下の変形例は、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。
【0044】
変形例1
上述した実施形態において、移報装置20が親機10bの機器異常を検知してもよい。上述したように、親機10bは、所定の時間間隔で移報装置20に定期信号を送信している。この定期信号が所定の時間間隔で送信されなくなった場合、親機10bに機器異常が発生したといえる。そこで、移報装置20は、所定の時間間隔より長い予め定められた時間継続して親機10bから定期信号が受信されない場合には、親機10bの機器異常を検知する。親機10bの機器異常を検知すると、移報装置20は上述したステップS15以降の処理を行う。ステップS16では、警報器10の機器異常の発生を伝える移報信号が外部機器30に出力される。この変形例であっても、親機10bの電源の再投入後に、親機10bにおいて電源が再投入される前に発生した機器異常を認識することができる。
【0045】
変形例2
上述した実施形態において、移報装置20は、子機10aの機器異常に応じて移報信号を出力してもよい。子機10aの異常検知部111が機器異常を検知すると、子機10aの警報制御部112は機器異常の発生を知らせる警報を出力させる。子機10aの更新部113は記憶部102に記憶された状態情報を機器異常を示すものに更新する。子機10aの送信部114は、記憶部102に記憶された状態情報を含む機器異常信号を無線で送信する。この機器異常信号が受信されると、親機10bの更新部113は、記憶部102に記憶されたこの子機10aの状態情報を機器異常を示すものに更新する。また、親機10bの送信部114は、機器異常信号を移報装置20に無線で転送する。移報装置20は、この機器異常信号が受信されると、ステップS15以降の処理を行う。ステップS16では、警報器10の機器異常の発生を伝える移報信号が外部機器30に出力される。ステップS18では記憶部102に記憶された状態情報が初期化されるため、ステップS21では機器異常が発生した子機10aについて正常状態を示す状態情報を含む定期信号が送信される。しかし、上述した実施形態と同様に、ステップS22では、この定期信号に応じた処理が制限されるため、移報信号の出力が継続される。
【0046】
また、子機10aの送信部114は、所定の時間間隔で定期信号を無線で送信する。この所定の時間間隔は、親機10bと移報装置20との間の定期信号の送信間隔より短い。この定期信号には、記憶部102に記憶された子機10aの状態情報が含まれる。子機10aから受信された定期信号に機器異常を示す状態情報が含まれる場合、親機10bの警報制御部112は、表示部105及び音出力部106から子機10aにおける機器異常の発生を知らせる警報を出力させてもよい。また、親機10bの更新部113は、定期信号に応じて、記憶部102に記憶されたこの子機10aの状態情報を更新する。例えば定期信号に機器異常を示す状態情報が含まれる場合、更新部113は、記憶部102に記憶されたこの子機10aの状態情報を機器異常を示すものに更新する。親機10bの送信部114は、前回定期信号が送信されてから所定の時間間隔が経過すると、定期信号を移報装置20に無線で転送する。この定期信号には、記憶部102に記憶されたグループ内の警報器10の状態情報が含まれる。移報装置20は、この定期信号を受信すると、定期信号に含まれる状態情報により少なくとも1の警報器10に機器異常が発生したことが示される場合には、ステップS15以降の処理を行う。ステップS16では、警報器10の機器異常の発生を伝える移報信号が外部機器30に出力される。ステップS18では記憶部102に記憶された状態情報が初期化されるため、ステップS21では機器異常が発生した子機10aについて正常状態を示す状態情報を含む定期信号が送信される。しかし、上述した実施形態と同様に、ステップS22では、この定期信号に応じた処理が制限されるため、移報信号の出力が継続される。
【0047】
この変形例によれば、子機10aに機器異常が発生した後、親機10bの電源が再投入されたことにより子機10aが正常であることを示す定期信号が親機10bから送信されても、移報装置20からの移報信号の出力が継続されるため、子機10aに機器異常があるにも拘わらず、子機10aが正常状態であると誤認識されるのを防ぐことができる。
【0048】
変形例3
上述した実施形態において、禁止時間内に受信された定期信号であってもその内容によっては定期信号に応じた処理が行われてもよい。例えば親機10bの電源が再投入されてから親機10bから電池接続信号が送信されるまでの間に、子機10aから親機10bに機器異常信号が送信された場合を想定する。この場合、この機器異常信号により親機10bの記憶部102に記憶されたこの子機10aの状態情報が機器異常を示すものに更新されるため、初回の定期信号には機器異常を示す状態情報が含まれる。移報装置20の制限部214は、禁止時間内に初回の定期信号が受信された場合でも、この定期信号に含まれる状態情報が機器異常を示すときは、定期信号に応じた移報信号の出力を許可してもよい。制限部214により移報信号の出力が許可されると、警報器10の機器異常の発生を伝える移報信号が移報出力部207から外部機器30に出力される。
【0049】
また、親機10bの電源が再投入されてから親機10bから電池接続信号が送信されるまでの間に、親機10bの機器異常が検知された場合を想定する。この場合、この機器異常の検知により親機10bの記憶部102に記憶された親機10bの状態情報が機器異常を示すものに更新されるため、初回の定期信号には機器異常を示す状態情報が含まれる。移報装置20の制限部214は、禁止時間内に初回の定期信号を受信した場合でも、この定期信号に含まれる状態情報が機器異常を示すときは、定期信号に応じた移報信号の出力を許可してもよい。制限部214により移報信号の出力が許可されると、警報器10の機器異常の発生を伝える移報信号が移報出力部207から外部機器30に出力される。
【0050】
このように、禁止時間内に受信された定期信号に含まれる状態情報が正常状態を示す場合にはその定期信号に応じた処理が行われず、機器異常を示す場合にはその状態情報に応じた処理が行われてもよい。この変形例によれば、親機10bの電源が再投入されてから親機10bから電池接続信号が送信されるまでの間に警報器10に機器異常が発生した場合に、外部機器30側にこの機器異常の発生を伝えることができる。
【0051】
変形例4
上述した実施形態において、子機10aの無線通信の範囲内に移報装置20が設置されている場合には、子機10aから送信された信号がそのまま移報装置20に到達する。この場合、移報装置20は、子機10aから直接信号を受信し、受信した信号に応じて処理を行ってもよい。
【0052】
変形例5
本発明に係る火災検知器は、警報器10に限定されず、必ずしも警報を行わなくてもよい。例えば火災検知器は、警報機能を有さない感知器や火災センサであってもよい。
【0053】
変形例6
上述した実施形態において、警報システム1の構成は上述した例に限定されない。警報システム1は、上述した装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。例えば警報システム1は、必ずしも子機10aと親機10bとを含まなくてもよく、これらの区別がない複数の警報器10を含んでもよい。警報器10及び移報装置20の構成も、上述した構成を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の構成を含まずに構成されてもよい。移報出力部207は、移報出力部207の機能を実現し得る回路構成であれば、どのような回路構成であってもよい。移報出力部207は、上述した回路要素を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の回路要素を含まずに構成されてもよい。例えば移報出力部207の接点はメーク接点又はトランスファ接点であってもよいし、移報出力部207が複数の接点を有していてもよい。移報出力部207の接点がメーク接点である場合、通常時、接点は開状態であり、外部機器30には電流が流れない。しかし、機器異常信号を受信すると、接点制御部213は接点を閉状態に切り替える。接点が閉状態に切り替わると、接点の両端が導通し、外部機器30に電流が流れる。これにより、外部機器30は警報器10に機器異常が発生したことを認識する。また、移報信号の出力を停止する際には、接点制御部213は、移報出力部207の接点を通常の開状態に切り替える。接点が開状態に切り替わると、接点の両端の導通が失われ、外部機器30に電流が流れなくなる。これにより、外部機器30側では警報器10の機器異常が回復したことが認識される。上述した実施形態のように移報出力部207の接点がブレーク接点である場合には、外部機器30に電流が流れなくなることにより、機器異常が発生したことを伝える移報信号が出力される。一方、この変形例のように移報出力部207の接点がメーク接点である場合には、外部機器30に電流が流れることにより、機器異常が発生したことを伝える移報信号が出力される。また、親機10bにおいてグループ内の警報器10の状態情報が記憶される先は、必ずしも揮発性メモリでなくてもよく、不揮発性メモリであってもよい。この構成であっても、親機10bの電源が再投入されたことを契機に不揮発性メモリに記憶された状態情報が正常状態を示すものに初期化される場合には、上述した実施形態と同様の課題が生じ得るため、上述した実施形態と同様の処理が行われてもよい。
【0054】
上述した実施形態において、警報器10の制御部101は、DSP、ASIC、PLD、FPGA等の回路を含み、警報器10の機能の少なくとも一部はこの回路により実現されてもよい。同様に、移報装置20の制御部201もこの回路を含み、移報装置20の機能の少なくとも一部はこの回路により実現されてもよい。
【0055】
変形例7
上述した実施形態において、警報システム1の動作は上述した例に限定されない。警報システム1の処理手順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよい。また、警報システム1の一部の処理手順が省略されてもよい。
【0056】
変形例8
本発明の別の形態は、警報システム1、子機10a、親機10b、及び移報装置20のうち少なくともいずれかにおいて行われる処理のステップを有する方法を提供してもよい。また、本発明のさらに別の形態は、子機10a、親機10b、及び移報装置20において実行されるプログラムを提供してもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネット等を介したダウンロードによって提供されてもよい。
【0057】
変形例9
本発明は、火災以外の現象の発生を警報するシステムに適用されてもよい。この変形例では、警報器10は、ガス警報器、人感センサ等の火災以外の現象を検知して警報を行うものであってもよい。ガス警報器、人感センサ等の火災以外の現象を検知して警報を行うものも、本発明に係る検知器の一例である。要するに、本発明に係る検知器は、異常を検知するものであれば、どのような機器であってもよい。この異常は、火災に限定されず、ガス漏れ、不審者の侵入等、どのような異常であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:警報システム、10:警報器、20:移報装置、30:外部機器、111:異常検知部、112:警報制御部、113:更新部、114:送信部、115:通知部、207:移報出力部、211:受信部、212:警報制御部、213:接点制御部、214:制限部
図1
図2
図3
図4