(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241224BHJP
G05D 1/244 20240101ALI20241224BHJP
G05D 1/243 20240101ALI20241224BHJP
【FI】
G05D1/43
G05D1/244
G05D1/243
(21)【出願番号】P 2021184123
(22)【出願日】2021-11-11
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520037784
【氏名又は名称】株式会社匠
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田坂 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭博
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元晴
(72)【発明者】
【氏名】舩越 昭充
(72)【発明者】
【氏名】長井 達一郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/177135(WO,A1)
【文献】特開2018-032291(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108455156(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0101971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G05D 1/244
G05D 1/243
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を所定の走行領域に設定される移動始点から移動終点まで搬送する自律走行搬送ロボットと、
格子状に交差される縦横のグリッド線が仮想描写されてなる仮想マップを記憶する記憶装置と、
前記自律走行搬送ロボットの走行領域において前記仮想マップの前記縦横のグリッド線の交点に設けられるマーカと、
前記移動始点と前記移動終点とを特定するとともに、前記移動始点から前記移動終点までの移動経路を作成する管理装置と、を備える搬送システムであって、
前記移動始点と前記移動終点との少なくともいずれか一方の位置が、前記走行領域において前記仮想マップの外側に特定される場合に、前記特定位置と当該特定位置の近傍に位置する前記仮想マップの交点とを連結するように、直線、曲線あるいはそれらの複合線からなる磁気ガイドが設けられ、
前記自律走行搬送ロボットの底面には、前記マーカを読み取るカメラと、前記磁気ガイドを読み取る磁気センサと、が設けられており、
前記管理装置は、前記移動始点と前記移動終点との少なくともいずれか一方の位置が、前記走行領域において前記仮想マップよりも外側に設定される場合に、前記移動始点から前記移動終点までの移動経路として、前記マーカと前記磁気ガイドとを組み合わせることにより決定することを特徴とする搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一定間隔に配置された格子点を結ぶグリッド線が仮想的に描写された移動領域内で移動始点と移動終点とを特定し、自律移動体を前記移動始点から前記移動終点へ移動させるための移動経路を作成し、前記移動経路に沿って自律移動体を移動させるということが記載されている。
【0003】
前記移動経路は、縦横で格子状に交差するグリッド線の任意の交点(マーカポイント)に1つずつマーカが設置されるようになっており、前記自律移動体は、それに搭載されるカメラで前記各マーカを1つずつ認識しながら、あたかも将棋の飛車のように上下左右に移動するように構成されている。
【0004】
なお、前記自律移動体は、前記移動領域内で例えば斜めに移動する場合、階段状に移動するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、前記移動始点と前記移動終点とを前記任意のマーカの位置にしか設定することができない。つまり、前記移動始点および移動終点の設定場所の自由度が低いことが指摘される。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、比較的簡易な構成で、格子状に交差される縦横のグリッド線が仮想描写されてなる仮想マップよりも外側の任意な位置に移動始点や移動終点を設定して、自律走行搬送ロボットを速やかに移動可能とする搬送システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、荷物を所定の走行領域に設定される移動始点から移動終点まで搬送する自律走行搬送ロボットと、格子状に交差される縦横のグリッド線が仮想描写されてなる仮想マップを記憶する記憶装置と、前記自律走行搬送ロボットの走行領域において前記仮想マップの前記縦横のグリッド線の交点に設けられるマーカと、前記移動始点と前記移動終点とを特定するとともに、前記移動始点から前記移動終点までの移動経路を作成する管理装置と、を備える搬送システムであって、前記移動始点と前記移動終点との少なくともいずれか一方の位置が、前記走行領域において前記仮想マップの外側に特定される場合に、前記特定位置と当該特定位置の近傍に位置する前記仮想マップの交点とを連結するように、直線、曲線あるいはそれらの複合線からなる磁気ガイドが設けられ、前記自律走行搬送ロボットの底面には、前記マーカを読み取るカメラと、前記磁気ガイドを読み取る磁気センサと、が設けられており、前記管理装置は、前記移動始点と前記移動終点との少なくともいずれか一方の位置が、前記走行領域において前記仮想マップよりも外側に設定される場合に、前記移動始点から前記移動終点までの移動経路として、前記マーカと前記磁気ガイドとを組み合わせることにより決定することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、前記移動始点と前記移動終点との少なくともいずれか一方の位置が、前記走行領域において前記仮想マップの外側に特定される場合、自律走行搬送ロボットが前記各マーカに従って階段状に移動するだけでなく、直線、曲線あるいはそれらの複合線からなる磁気ガイドに沿って移動することが可能になる。
【0010】
つまり、荷物の受け取り場所になる移動始点や荷物の搬送目的地になる移動終点を、前記仮想マップよりも外側の任意の位置に設定することができるから、前記移動始点および移動終点の設定場所の自由度を向上できるようになる。
【0011】
しかも、前記磁気ガイドおよび前記磁気センサのような比較的簡易な構成要素を追加しているだけであるから、設備コストの上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る搬送システムによれば、比較的簡易な構成で、格子状に交差される縦横のグリッド線が仮想描写されてなる仮想マップよりも外側の任意な位置に移動始点や移動終点を設定して、自律走行搬送ロボットを速やかに移動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る搬送システムの概略構成を示す図である。
【
図2】自律走行搬送ロボットの構成や形状を示す平面図である。
【
図3】自律走行搬送ロボットの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1から
図3に本発明の一実施形態を示している。図中、1は走行領域、2は自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robotの略称)、3は記憶装置、4は管理装置である。
【0016】
走行領域1は、自律走行搬送ロボット2を走行させるための領域であって、例えば倉庫や工場などの構内の床、あるいは私有地の野外道路などとされる。
【0017】
この走行領域1には、例えば
図1に示すような仮想マップ5が設定される。この仮想マップ5は、格子状に交差される縦横のグリッド線6,7が仮想描写されてなる。
【0018】
この縦横のグリッド線6,7の各交点には、マーカ8が設けられている。つまり、マーカ8は、底領域において碁盤目状に設置されている。
【0019】
このマーカ8は、例えばQRコードなどとされ、自律走行搬送ロボット2の走行ガイドとされる。
【0020】
また、走行領域1において仮想マップ5の所定のマーカ8の位置と、仮想マップ5よりも外側の任意の位置(下記する移動終点P2)とが、磁気ガイド10で連結されている。
【0021】
この磁気ガイド10は、例えば磁気テープなどとされ、例えば直線、曲線あるいはそれらの複合線とされる。
【0022】
自律走行搬送ロボット2は、後で詳細に説明するが、公知のように、軌道、誘導体、人の操縦などがなくてもコンピュータにより所定のプログラムに従って自律走行することにより、荷物(図示省略)を走行領域に設定される移動始点P1から移動終点P2まで搬送する機能を有する無人搬送車である。
【0023】
なお、前記荷物は、例えば人以外の物品であって、自律走行搬送ロボット2に搭載可能な大きさや形状とされる。また、移動始点P1は、荷物が配置されている場所で、荷物を受け取る場所とされる。さらに、移動終点P2は、荷物の搬送目的地で、例えば走行領域1において仮想マップ5よりも外側の任意の位置(例えばシュータ9が配置されている場所)とされる。これにより、磁気ガイド10は、シュータ9の配置場所と当該場所の近傍に位置するマーカ8とを結ぶように設置される。この磁気ガイド10の末端が移動終点P2の位置とされる。
【0024】
具体的に、自律走行搬送ロボット2は、例えば
図2および
図3に示すように、車体21、前従動輪23、後従動輪24、左駆動輪25、右駆動輪26、LiDARセンサ27a,27b、制御装置28などを備えている。
【0025】
車体21は、例えば
図2に示すように、平面視で略矩形で前後が円弧状に形成されており、この車体21の上に荷物(図示省略)が搭載されるようになっている。
【0026】
なお、
図2に示すように、車体21の前後方向をX軸、車体21の左右方向をY軸、車体21の中心(P参照)からの首振り角度(向き)をθにしている。
【0027】
この車体21の下面における中心P位置には、下部カメラ11が設置されている。また、車体21の下面における前後位置には、磁気センサ12,13が設置されている。
【0028】
下部カメラ11は、走行領域1に設置されるマーカ8を認識するために設けられている。
【0029】
磁気センサ12,13は、磁気ガイド10を読み取るものであって、自律走行搬送ロボット2の車体21の底面の前後に振り分けて設けられている。
【0030】
前従動輪23および後従動輪24は、それぞれ左右2つの車輪を一組とした構成であって、自由に回動(正回転、逆回転)可能な状態に支持されている。
【0031】
前従動輪23は車体21の前側に設置されており、また、後従動輪24は車体21の後側に設置されている。
【0032】
左駆動輪25は車体21の前後方向の中間で左側に設けられており、また、右駆動輪26は車体21の前後方向の中間で右側に設置されている。
【0033】
左駆動輪25および右駆動輪26は、それぞれ1つの車輪であって、それぞれ別々のモータ25a,26a(
図3のみ記載)により独立して駆動される差動駆動タイプとされている。
【0034】
そして、車体21の下面において左駆動輪25および右駆動輪26の各近傍には、エンコーダ25b,26b(
図3のみ記載)が設けられている。
【0035】
このエンコーダ25b,26bは、左駆動輪25および右駆動輪26の回転方向、回転角度ならびに回転数などを個別に検出するものである。
【0036】
LiDARセンサ27a,27bは、公知のように、レーザー光を使って離れた場所にある物体の形状や距離を測定するものであって、車体21の前側と後側とにおける左右方向の中間に設けられている。
【0037】
エンコーダ25b,26bおよびLiDARセンサ27a,27bの検出出力は、自律走行搬送ロボット2を自律走行させるときなどに利用される。
【0038】
制御装置28は、自律走行搬送ロボット2の各種動作を制御するコンピュータであって、例えば
図3に示すように、インターフェース28aを介して外部に配置される管理装置4と相互通信することが可能になっている。
【0039】
記憶装置3は、仮想マップ5を記憶するもので、公知のハードディスク装置などの外部記憶装置とされる。
【0040】
管理装置4は、自律走行搬送ロボット2の移動始点P1と移動終点P2とを特定する処理と、移動始点P1から移動終点P2までの移動経路Nを作成する処理と、この作成した移動経路Nの情報を自律走行搬送ロボット2の制御装置28に送信する処理と、を少なくとも実行するコンピュータである。
【0041】
この管理装置4は、移動始点P1と移動終点P2との少なくともいずれか一方の位置が、走行領域1において仮想マップ5よりも外側に設定される場合に、移動始点P1から移動終点P2までの移動経路Nとして、マーカ8と磁気ガイド10とを組み合わせることにより決定する。
【0042】
また、この管理装置4は、前記目的地に到達したときに自律走行搬送ロボット2上の荷物をシュータ9に移し替える処理を実行させる。
【0043】
次に、自律走行搬送ロボット2による荷物の搬送に関する動作を説明する。
【0044】
図1に示す例では、移動始点P1は、走行領域1において仮想マップ5のX,Y座標(2,1)に設置されるマーカ8の近傍に特定されていることとし、また、移動終点P2は、走行領域1において仮想マップ5よりも外側でX,Y座標(5,1)に設置されるマーカ8の近傍(磁気ガイド10の末端)に特定されていることとする。なお、移動経路Nについては、マーカ8と磁気ガイド10とを組み合わせることにより決定される。
【0045】
まず、管理装置4は、自律走行搬送ロボット2の移動始点P1と移動終点P2とを特定する処理と、移動始点P1から移動終点P2までの移動経路Nを作成する処理と、この作成した移動経路Nの情報を自律走行搬送ロボット2の制御装置28に送信する処理と、を実行する。
【0046】
自律走行搬送ロボット2の制御装置28は、管理装置4により作成した移動経路Nの情報を受信すると、当該受信した移動経路Nの情報に基づいて移動始点P1に自律走行搬送ロボット2を到達させるように制御する。
【0047】
このときの自律走行搬送ロボット2の自律走行は、制御装置28が走行領域1上に設置されている複数のマーカ8を自律走行搬送ロボット2に設置されている下部カメラ11で逐一認識するとともに、当該認識した結果に基づいて、自律走行搬送ロボット2の実際の移動経路が指定された移動経路Nから外れていないかを確認するようにしている。
【0048】
そして、移動始点P1においては、自律走行搬送ロボット2に荷物を積載する処理を実行する。この積載作業は、作業ロボットまたは作業員などにより行われる。
【0049】
この後、自律走行搬送ロボット2の制御装置28は、移動経路Nの情報に基づいて移動終点P2に自律走行搬送ロボット2を到達させるように制御する。
【0050】
このときの自律走行搬送ロボット2の自律走行は、制御装置28が走行領域1上に設置されている複数のマーカ8を自律走行搬送ロボット2に設置されている下部カメラ11で逐一認識するとともに、当該認識した結果に基づいて、自律走行搬送ロボット2の実際の移動経路が指定された移動経路Nから外れていないかを確認するようにしている。さらに、自律走行搬送ロボット2が移動終点P2の近傍のマーカ8に到達すると、このマーカ8から移動終点P2までは磁気ガイド10を自律走行搬送ロボット2に設置されている磁気センサ12,13で逐一認識するとともに、当該認識した結果に基づいて、自律走行搬送ロボット2の実際の移動経路が管理装置4から指示された移動経路Nから外れていないかを確認するようにしている。
【0051】
このようにして、自律走行搬送ロボット2が荷物の搬送目的地である移動終点P2に到達することにより停止すると、自律走行搬送ロボット2上に積載している荷物をシュータ9に積み替える処理を実行する。この積み替え作業は、作業ロボットまたは作業員などにより行われる。
【0052】
以上説明したように本発明を適用した実施形態によれば、移動始点P1と移動終点P2との少なくともいずれか一方が、走行領域1において仮想マップ5の外側に特定される場合、自律走行搬送ロボット2が各マーカ8に従って階段状に移動するだけでなく、直線、曲線あるいはそれらの複合線からなる磁気ガイド10に沿って移動することが可能になる。
【0053】
つまり、荷物の受け取り場所になる移動始点P1や荷物の搬送目的地になる移動終点P2を、仮想マップ5よりも外側の任意の位置に設定することができるから、移動始点P1および移動終点P2の設定場所の自由度を向上できるようになる。
【0054】
しかも、磁気ガイド10および磁気センサ12,13のような比較的簡易な構成要素を追加しているだけであるから、設備コストの上昇を抑制できる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態で説明した構成は一例であって、それのみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0056】
(1)上記実施形態では、自律走行搬送ロボット2の構成や車体21の外形などについても特に限定されるものではない。
【0057】
(2)上記実施形態では、移動終点P2のみを仮想マップ5よりも外側に特定した例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば図示していないが、移動始点P1を仮想マップ5よりも外側に特定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、搬送システムに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 走行領域
2 自律走行搬送ロボット
21 車体
23 前従動輪
24 後従動輪
25 左駆動輪
25a モータ
25b エンコーダ
26 右駆動輪
26a モータ
26b エンコーダ
27a,27b LiDARセンサ
28 制御装置
28a インターフェース
3 記憶装置
4 管理装置
5 仮想マップ
6 縦グリッド線
7 横グリッド線
8 マーカ
9 シュータ
10 磁気ガイド
11 下部カメラ
12,13 磁気センサ
P 昇降テーブルの中心
P1 移動始点
P2 移動終点
N 移動経路