(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】自動走行方法、作業車両及び自動走行システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2021192228
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 葵
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123829(JP,A)
【文献】特開2020-137483(JP,A)
【文献】特開2019-168812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場において作業車両の自動走行を行う自動走行方法であって、
前記圃場内に、複数の直進経路と当該直進経路を繋ぐ旋回経路とからなる単位経路を複数有する目標走行経路を作成し、前記単位経路において前記旋回経路の旋回開始位置及び旋回終了位置を予め設定する経路作成工程と、
前記目標走行経路に沿って前記作業車両を自動走行させる自動走行工程と、
前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更
して前記旋回経路を変更し、前記目標走行経路を更新する経路変更工程と、を有することを特徴とする自動走行方法。
【請求項2】
前記圃場における畦を特定する畦特定工程を有することを特徴とする請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記経路変更工程は、前記単位経路における変更前の前記旋回開始位置と変更後の前記旋回開始位置との間の変更距離に基づいて、当該単位経路における前記旋回終了位置を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記経路作成工程は、前記直進経路上に前後進切換位置を予め設定すると共に、前記直進経路上で前記前後進切換位置よりも後進した位置に前記旋回開始位置を予め設定し、
前記経路変更工程は、前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記前後進切換位置を変更することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記経路変更工程は、前記単位経路において前記作業車両が前記前後進切換位置に到達した後、当該単位経路において前記旋回開始位置へ到達するまでの後進距離を前記作業車両の所定操作に応じて設定することを特徴とする請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記経路変更工程は、前記単位経路における変更前の前記前後進切換位置と変更後の前記前後進切換位置との間の変更距離に基づいて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更することを特徴とする請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記経路変更工程は、前記単位経路において前記前後進切換位置を変更した場合、変更後の前記前後進切換位置よりも所定の後進距離だけ後進した位置に当該単位経路における前記旋回開始位置を変更することを特徴とする請求項4に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記自動走行工程は、前記作業車両が変更後の前記旋回開始位置に到達したとき、当該旋回開始位置への到達の報知、又は自動走行の停止を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記経路変更工程は、前記単位経路において前記前後進切換位置を畦に向かう方向に変更した場合、前記旋回開始位置及び前記旋回終了位置を変更しないことを特徴とする請求項4~8の何れか1項に記載の自動走行方法。
【請求項10】
圃場において自動走行を行う作業車両であって、
前記圃場内に、複数の直進経路と当該直進経路を繋ぐ旋回経路とからなる単位経路を複数有する目標走行経路を作成し、前記単位経路において前記旋回経路の旋回開始位置及び旋回終了位置を予め設定する経路作成部と、
前記目標走行経路に沿って前記作業車両を自動走行させる走行制御部と、
前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更
して前記旋回経路を変更し、前記目標走行経路を更新するする経路変更部と、
を備えることを特徴とする作業車両。
【請求項11】
圃場において作業車両の自動走行を行う自動走行システムであって、
前記圃場内に、複数の直進経路と当該直進経路を繋ぐ旋回経路とからなる単位経路を複数有する目標走行経路を作成し、前記単位経路において前記旋回経路の旋回開始位置及び旋回終了位置を予め設定する経路作成部と、
前記目標走行経路に沿って前記作業車両を自動走行させる走行制御部と、
前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更
して前記旋回経路を変更し、前記目標走行経路を更新するする経路変更部と、
を備えることを特徴とする自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場において作業車両の自動走行を行う自動走行方法、作業車両及び自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において作業を行う田植機等の作業車両には、測位システムを利用して作業車両の位置情報を取得する測位ユニットを備え、圃場の外周形状を特定して当該外周形状に基づいて目標走行経路を予め設定し、当該目標走行経路に沿って自動走行を行うものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される作業車では、圃場に対して作業を行う作業装置と、走行機体の位置を検出する測位部と、走行機体が走行する作業走行ラインを取得する作業走行ライン取得部とが備えられ、走行機体の位置に基づいて、走行機体が事前に設定された第1設定速度で作業走行ラインに沿って走行するように、走行機体の走行用の変速装置の操作及び走行機体のステアリング操作を自動的に行う自動走行制御部が備えられている。また、この作業車では、作業走行ラインの端部と次の作業走行ラインの端部とを接続する旋回ラインを取得する旋回ライン取得部と、走行機体の位置に基づいて、走行機体が事前に設定された第2設定速度で旋回ラインに沿って走行するように、変速装置の操作及びステアリング操作を自動的に行う自動旋回制御部とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場の外周形状は、作業車両が圃場の外周に沿って走行したときの走行軌跡における位置情報の測定点に基づいて、回帰直線等により特定される。しかし、圃場を構成する畦は、直線的に形成される場合だけでなく、取水口等を設けるために畦際が内側に突出した箇所や奥まった空間が存在するために外側に突出した箇所を有して形成される場合があるので、圃場の外周形状を正確に特定することが困難になっている。そのため、回帰直線等により特定した圃場の外周形状に基づいて、圃場の全体を作業するように直進経路及び旋回経路からなる目標走行経路を予め設定した場合に、この目標走行経路に沿って自動走行すると、取水口等の障害物に接触する可能性や、奥まった空間の走行が除外される可能性がある。即ち、自動走行を行う作業車両では、畦等からなる圃場の外周形状によって作業効率が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、予め設定された目標走行経路に沿って自動走行を行う場合に、圃場の外周形状に拘わらず、効率よく作業を行うことができる自動走行方法、作業車両及び自動走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自動走行方法は、圃場において作業車両の自動走行を行う自動走行方法であって、前記圃場内に、複数の直進経路と当該直進経路を繋ぐ旋回経路とからなる単位経路を複数有する目標走行経路を作成し、前記単位経路において前記旋回経路の旋回開始位置及び旋回終了位置を予め設定する経路作成工程と、前記目標走行経路に沿って前記作業車両を自動走行させる自動走行工程と、前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更する経路変更工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の作業車両は、圃場において自動走行を行う作業車両であって、前記圃場内に、複数の直進経路と当該直進経路を繋ぐ旋回経路とからなる単位経路を複数有する目標走行経路を作成し、前記単位経路において前記旋回経路の旋回開始位置及び旋回終了位置を予め設定する経路作成部と、前記目標走行経路に沿って前記作業車両を自動走行させる走行制御部と、前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更する経路変更部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の自動走行システムは、圃場において作業車両の自動走行を行う自動走行システムであって、前記圃場内に、複数の直進経路と当該直進経路を繋ぐ旋回経路とからなる単位経路を複数有する目標走行経路を作成し、前記単位経路において前記旋回経路の旋回開始位置及び旋回終了位置を予め設定する経路作成部と、前記目標走行経路に沿って前記作業車両を自動走行させる走行制御部と、前記単位経路の前記直進経路を走行している前記作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路における前記旋回開始位置を変更する経路変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予め設定された目標走行経路に沿って自動走行を行う場合に、圃場の外周形状に拘わらず、効率よく作業を行うことができる自動走行方法、作業車両及び自動走行システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る田植機の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る田植機の上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る田植機のブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る田植機が作業する圃場の例を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る田植機が作業する圃場の他の例を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る田植機が作業する圃場の他の例を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る田植機による自動走行で第3旋回動作を行う動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の作業車両は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行しながら植付等の作業を行うものであり、特に、予め設定された目標走行経路60(
図4等参照)に沿って自動走行を行うものである。本発明の作業車両の一実施形態である田植機1について図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、田植機1は、車体部2と、植付部3とを備え、車体部2によって走行しながら植付部3によって苗の植付作業を行うように構成される。田植機1は、制御装置40を備えていて、また、作業者が保有する携帯端末5と通信可能に構成されている。
【0013】
田植機1は、手動走行モード及び自動走行モードの何れかの走行モードが設定される。田植機1は、手動走行モードが設定されている場合、作業者による運転操作具の操作に応じて手動走行を行う。一方、田植機1は、自動走行モードが設定されている場合、携帯端末5によって予め作成された目標走行経路60(
図4等参照)に沿って、制御装置40によって田植機1を自動走行させるように制御する。
【0014】
車体部2は、
図1に示すように、左右方向中央付近で前部に取り付けられるエンジン11及びエンジン11の後方に取り付けられるトランスミッション12と、左右方向両端で前部に回転可能に取り付けられる一対の前輪13と、左右方向両端で後部に回転可能に取り付けられる一対の後輪14とを備える。
【0015】
車体部2は、中央付近に運転席15を備えていて、運転席15の周囲に、操向ハンドル16、変速操作ペダル17及び主変速レバー18等の運転操作具を備え、また、作業操作部19及び表示装置20を備えている(
図3参照)。車体部2は、前部に複数の予備苗台22を備え、また、測位ユニット23を備えている。
【0016】
エンジン11は、各部を駆動する回転動力を発生させるもので、ボンネット24によって上方から覆われている。トランスミッション12は、エンジン11に接続されていて、エンジン11の動力を変速して一対の前輪13及び一対の後輪14へと伝達する。また、トランスミッション12は、車体部2の後部に設けられたパワーテイクオフ軸(PTO軸)25に接続されていて、エンジン11の動力を、PTO軸25を介して植付部3へと伝達する。
【0017】
一対の前輪13及び一対の後輪14は、エンジン11及びトランスミッション12から伝達される動力に応じて回転駆動して車体部2を前方又は後方へ走行させる。また、一対の前輪13は、操向ハンドル16の操作に応じて操舵駆動して車体部2の操向を行う。
【0018】
操向ハンドル16は、作業者が田植機1を操舵するための操作具であり、運転席15の前方に配置され、作業者による操向ハンドル16の回転操作に応じて一対の前輪13へ伝達される操舵が調節される。変速操作ペダル17は、作業者が田植機1の走行速度を調節するための操作具であり、運転席15の前方下部に配置され、作業者による変速操作ペダル17の踏み込み操作に応じて一対の後輪14へ伝達される回転動力が調整される。主変速レバー18は、操向ハンドル16の左側に配置され、作業者による変速操作をトランスミッション12に伝達して、田植機1の前進走行、後進走行及び停止を切り換え、また、前進設定速度又は後進設定速度を切り換える。例えば、主変速レバー18は、「前進」位置、「後進」位置及び「停止」位置の何れかに切り換えられて、前進走行、後進走行及び停止を切り換える。
【0019】
作業操作部19は、植付部3による植付作業を操作するもので、例えば、各条の植付のオン/オフを切り換える条止めスイッチ等を有する。表示装置20は、田植機1の走行や作業に関する各種情報を表示するもので、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成される。
【0020】
複数の予備苗台22は、ボンネット24の左右両側に立設された予備苗台フレームに対して、上下方向に間隔を空けて取り付けられ、植付部3に補充される苗マットが載置される。
【0021】
測位ユニット23は、GNSS等の衛星測位システムを利用して田植機1の位置情報を取得するように構成され、測位アンテナを介して測位衛星から測位信号を受信し、測位信号に基づいて測位ユニット23の位置情報、すなわち、田植機1の位置情報を取得する。
【0022】
植付部3は、車体部2の後方に配置され、昇降リンク機構27を介して車体部2に連結されていて、昇降リンク機構27は、車体部2に対して植付部3を昇降可能にしている。植付部3は、植付入力ケース部28と、複数(例えば、3つ)の植付ユニット29と、苗載台30と、複数のフロート31とを備え、苗を苗載台30から各植付ユニット29へと順次供給して植付作業を行うように構成される。植付入力ケース部28は、トランスミッション12からPTO軸25を介して伝達される動力を複数の植付ユニット29へと伝達するように構成される。
【0023】
複数の植付ユニット29は、左右方向に間隔をおいて配置され、各植付ユニット29は、植付伝動ケース部32と回転ケース部33とを備えている。植付伝動ケース部32は、前部が植付入力ケース部28に連結されていて、植付入力ケース部28を介して動力が伝達される。回転ケース部33は、植付伝動ケース部32の左右両側に設けられ、植付伝動ケース部32の後部に回転可能に取り付けられる。各回転ケース部33の左右方向外側(植付伝動ケース部32側とは反対側)には、2つの植付爪34が取り付けられている。
【0024】
2つの植付爪34は、植付伝動ケース部32に対する回転ケース部33の回転軸から離間した回転ケース部33の両端側で、回転ケース部33に対して回転可能に取り付けられる。回転ケース部33が植付伝動ケース部32に対して回転することで、2つの植付爪34が回転ケース部33の回転軸の周りを回動する。このとき、各植付爪34は、苗載台30の苗マットから苗を掻き取る掻取位置と、圃場に対して苗を植え付ける植付位置とを通過しながら回動する。
【0025】
苗載台30は、複数の植付ユニット29の前上方に配置され、苗マットを載置可能に構成されている。
【0026】
フロート31は、植付部3の下部に揺動可能に設けられ、フロート31の下面が圃場表面に接触することにより、植付部3の植付姿勢が圃場表面に対して安定する。
【0027】
次に、携帯端末5について説明する。携帯端末5は、田植機1の構成要素の一つであって、田植機1を遠隔操作可能な端末であり、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末5と同様の操作装置が運転席15の周囲に備えられてもよい。本発明では、田植機1や携帯端末5によって自動走行システムが構成される。
【0028】
携帯端末5は、
図3に示すように、CPU等のコンピュータで構成される制御装置50を備えていて、制御装置50は、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51や、外部機器と通信を行う通信部52に接続されている。また、携帯端末5は、様々な情報を表示して作業者に出力するための液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成される表示部53を備え、また、作業者からの様々な情報の入力操作を受け付けるための複数の操作キー等で構成される入力部54を備える。表示部53及び入力部54は、別体で構成されてもよく、あるいは、タッチパネル等で一体的に構成されていてもよい。
【0029】
記憶部51は、携帯端末5の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、携帯端末5の各種構成要素及び各種機能を制御する。
【0030】
記憶部51は、田植機1の作業対象である圃場の圃場情報を記憶する。圃場情報は、例えば、圃場の外周形状Aの大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場を構成する作業領域B及び枕地領域Cの大きさ及び位置情報(座標等)等を含む。
【0031】
図4に示すように、圃場の外周形状Aは、田植機1が圃場の外周に沿って走行したときの走行軌跡(各測位点)に基づいて作成され、例えば、各測位点を直線化することで圃場の外周形状Aを構成する各辺が作成される。なお、作業領域Bは、田植機1が目標走行経路60の直進経路62に沿って自動走行しながら植付作業を行う領域であり、枕地領域Cは、目標走行経路60の一の直進経路62から他の直進経路62へと旋回走行するための領域である。枕地領域Cは、圃場の外周形状Aから田植機1の作業幅間隔で2周分を少なくとも含む枕地幅の領域であり、作業領域Bは、枕地領域Cの内側の領域である。なお、田植機1の作業幅や旋回走行の旋回半径は、予め設定されていてよく、また、作業者による携帯端末5の操作に応じて任意に変更可能としてもよい。
【0032】
通信部52は、無線通信アンテナを介して、田植機1の通信部42と通信可能に接続される。制御装置50は、通信部52を制御して田植機1と無線通信を行い、田植機1との間で各種情報を送受信する。
【0033】
携帯端末5の制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、経路作成部55、経路変更部56として動作する。なお、経路作成部55、経路変更部56は、本発明に係る自動走行方法の経路作成工程、経路変更工程を実現するものである。
【0034】
経路作成部55は、作業対象の圃場を自動走行する目標走行経路60を作成して記憶部51に記憶し、通信部52を介して田植機1へ送信する。経路作成部55は、圃場の外周形状Aに基づいて、例えば、記憶部51に記憶された圃場情報に基づいて、
図4に示すように、複数の直進経路62と当該直進経路62を繋ぐ旋回経路63とからなる単位経路61を複数有する目標走行経路60を作成する。なお、
図4において、作業領域Bを自動走行しながら植付作業する目標走行経路60を実線で示し、枕地領域Cを圃場の外周形状Aに沿って周回しながら植付作業する外周経路64を破線で示し、圃場の外側から圃場内に進入する進入経路65を一点鎖線で示す。
【0035】
例えば、経路作成部55は、田植機1の作業幅間隔で圃場内に複数の直進経路62を配列して設定し、一の直進経路62から他の直進経路62(例えば、隣接する直進経路62)へと旋回する旋回経路63を設定する。経路作成部55は、
図4に示すように、各単位経路61の旋回経路63に、旋回を開始する旋回開始位置66と、旋回を終了する旋回終了位置67とを予め設定し、旋回開始位置66は、一の単位経路61の直進経路62上に設定され、旋回終了位置67は、次の単位経路61の直進経路62上に設定される。
【0036】
経路作成部55は、圃場の外周形状Aを構成する各辺のうち、対向する2辺の一方側から他方側へと最短距離で直進するように直進経路62を設定してよい。経路作成部55は、各単位経路61について、直進経路62の終端側の圃場の辺(終端側辺)から、所定の枕地幅だけ離間した位置に旋回開始位置66を予め設定し、次の直進経路62の始端側の圃場の辺(始端側辺)から、所定の枕地幅だけ離間した位置に旋回終了位置67を予め設定してよい。
【0037】
ところで、田植機1では、植付作業済みの作業領域Bへの侵入を抑制すると共に、安全に旋回走行を行うために、田植機1の作業幅間隔で少なくとも2周分を含む枕地幅を有する枕地領域Cを圃場に設けている。この場合、田植機1は、作業領域Bの植付作業を完了した後、
図4の外周経路64に示すように、枕地領域Cを少なくとも2周する周回走行をしながら植付作業を行うことになる。ところが、作業者の意向によって、あるいは、圃場の状況によっては、枕地領域Cの周回走行を減らす場合、例えば、1周だけにする場合がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、経路作成部55は、田植機1が旋回開始位置66を超えて自動前進走行を行って枕地領域C内の植付作業を行うために、
図5に示すように、直進経路62上で、旋回開始位置66よりも前進方向(畦に向かう方向)に進んだ位置(終端側辺に近い位置)に前後進切換位置68を予め設定し、即ち、枕地領域C内に前後進切換位置68を設定する。田植機1は、前後進切換位置68から旋回開始位置66へと後進してから旋回を行うことになり、旋回開始位置66と前後進切換位置68との間の後進距離は、予め設定されていてよく、また、作業者による携帯端末5の操作に応じて任意に変更可能としてもよい。
図5において、前後進切換位置68から自動後進走行を行う後進経路69は、自動前進走行を行う直進経路62からずらした位置に示されているが、直進経路62に沿って重なる位置に設定されていてよい。
【0039】
経路変更部56は、目標走行経路60の各単位経路61に予め設定された旋回開始位置66を、当該単位経路61の直進経路62を走行している田植機1の所定操作に応じて変更して、記憶部51に記憶されている当該目標走行経路60を更新するように構成される。なお、経路変更部56は、旋回開始位置66の変更に伴い、当該旋回開始位置66を始点とする旋回経路63も変更する。
【0040】
圃場の外周形状Aを構成する各辺は、田植機1等の作業車両が圃場の外周に沿って走行したときの走行軌跡(各測位点)を直線化して作成されるが、各辺に沿った圃場の畔は直線的に形成されていない場合があり、例えば、圃場の外周形状Aの辺よりも内側又は外側に張り出していることがある。そのため、圃場の外周形状Aに合わせて目標走行経路60を作成しても、外周形状Aの各辺から所定距離を空けて設定された旋回開始位置66は、圃場の畔に対して適切な位置に設定されていないことがある。
【0041】
そこで、田植機1は、各単位経路61の直進経路62に沿って自動前進走行を行っているとき、前方の畔の形状を特定し、経路変更部56は、畔の形状に合わせて植付作業及び旋回走行を行うように、旋回開始位置66を変更する。
【0042】
例えば、田植機1が、単位経路61において予め設定された旋回開始位置66よりも終端側辺から離間した位置で、自動前進走行を停止して旋回開始操作(例えば、前進操作)に応じて自動旋回走行を行う場合には、経路変更部56は、この旋回走行を開始した位置に旋回開始位置66を変更する。この場合、経路変更部56は、変更前の旋回開始位置66から変更後の旋回開始位置66までの変更距離の分だけ、旋回終了位置67を終端側辺から離間した位置に変更する。
【0043】
あるいは、田植機1が、
図6に示すように、単位経路61において予め設定された前後進切換位置68よりも終端側辺から離間した位置で、自動前進走行を停止して後進操作に応じて直進経路62に沿った後進経路69の自動後進走行を行う場合には、経路変更部56は、後進操作が行われた位置に前後進切換位置68’を変更する。なお、
図6では、圃場の外周形状Aから内側に張り出した畦をハッチングで示し、変更前の直進経路62、旋回経路63、旋回開始位置66、旋回終了位置67及び前後進切換位置68を点線で示す。この場合、経路変更部56は、変更前の前後進切換位置68から変更後の前後進切換位置68’までの変更距離の分だけ、旋回開始位置66’を終端側辺から離間した位置に変更する。若しくは、経路変更部56は、変更された前後進切換位置68’よりも、上記の後進距離だけ終端側辺から離間した位置に旋回開始位置66’を変更する。あるいは、経路変更部56は、自動後進走行の停止操作が行われた位置、又は自動後進走行の停止後に旋回開始操作(例えば、前進操作)が行われた位置に旋回開始位置66’を変更してもよい。前後進切換位置68’の変更により、前後進切換位置68’までの直進経路62’や、前後進切換位置68’から旋回開始位置66’まで自動後進走行を行う後進経路69’も変更されるので、単位経路61’及び目標走行経路60’も変更されることになる。
【0044】
また、経路変更部56は、旋回開始位置66’の変更に伴い、当該旋回開始位置66’を始点とするように旋回経路63’を変更するところ、変更前の旋回開始位置66から変更後の旋回開始位置66’までの変更距離の分だけ、旋回終了位置67’を終端側辺から離間した位置に変更してもよい。なお、田植機1が、予め設定された前後進切換位置68よりも終端側辺に近接する位置で、自動前進走行を停止して後進操作に応じて自動後進走行を行う場合には、経路変更部56は、前後進切換位置68を変更してもよいが、旋回開始位置66や旋回終了位置67を、予め設定された旋回開始位置66や旋回終了位置67よりも終端側辺に近接する位置(例えば、畦に向かう方向の位置)へ変更しない。
【0045】
次に、田植機1に備わる制御装置40について説明する。
図3に示すように、制御装置40は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部41や、外部機器と通信を行う通信部42に接続されている。
【0046】
記憶部41は、田植機1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置40が、記憶部41に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。制御装置40は、例えば、測位ユニット23から田植機1の位置情報を取得する。
【0047】
通信部42は、無線通信アンテナを介して、作業者の保有する携帯端末5等の外部機器と無線通信可能となる。制御装置40は、通信部42を制御して携帯端末5と無線通信を行い、携帯端末5との間で各種情報を送受信する。
【0048】
また、制御装置40は、記憶部41に記憶されたプログラムを実行することにより、走行制御部45として動作する。なお、走行制御部45は、本発明に係る自動走行方法の自動走行工程を実現する。
【0049】
走行制御部45は、田植機1の走行を制御するものである。例えば、走行制御部45は、手動走行モードが設定されている場合、操向ハンドル16、変速操作ペダル17及び主変速レバー18等の運転操作具の操作に応じて、田植機1の車速及び操舵を制御する。
【0050】
また、走行制御部45は、自動走行モードが設定されている場合、圃場に対して設定されている目標走行経路60を携帯端末5から取得し、測位ユニット23から田植機1の位置情報を取得し、位置情報と目標走行経路60とに基づいて、田植機1が目標走行経路60に沿って自動走行を行うように田植機1の操舵を制御する。更に、走行制御部45は、予め設定された自動走行速度となるようにエンジン11やトランスミッション12を制御してもよく、あるいは、変速操作ペダル17及び主変速レバー18の操作状態に応じてエンジン11やトランスミッション12を制御してもよい。
【0051】
例えば、走行制御部45は、主変速レバー18が「前進」位置に操作されている場合、主変速レバー18による前進設定速度と変速操作ペダル17の踏み込み量とに基づく前進走行速度で田植機1が自動前進走行するように制御する。走行制御部45は、主変速レバー18が「後進」位置に操作されている場合、主変速レバー18による後進設定速度と変速操作ペダル17の踏み込み量とに基づく後進走行速度で田植機1が自動後進走行するように制御する。走行制御部45は、主変速レバー18が「停止」位置に操作されている場合、変速操作ペダル17の踏み込み量に拘わらず、田植機1が停止するように制御する。
【0052】
また、走行制御部45は、田植機1が自動前進走行しているときに所定の旋回開始動作が行われた場合、例えば、自動前進走行を停止してから旋回操舵及び前進操作が行われた場合に、設定されている旋回半径で田植機1が自動旋回走行するように制御する。あるいは、走行制御部45は、田植機1が自動前進走行を停止してから自動後進走行を行った後、所定の旋回開始動作が行われた場合、例えば、自動後進走行を停止してから、進操作が行われた場合に、設定されている旋回半径で田植機1が自動旋回走行するように制御する。
【0053】
例えば、複数の直進経路62と当該直進経路62を繋ぐ旋回経路63とからなる単位経路61を複数有する目標走行経路60の自動走行を行う場合、走行制御部45は、先ず、直進経路62に沿って植付作業を行いながら自動前進走行を行うように、田植機1の走行を制御する。携帯端末5の制御装置50は、自動前進走行を行う田植機1の旋回開始位置66への到達を検出すると、旋回開始位置66へ到達したこと等を表示部53による表示等によって報知し、田植機1の停止操作や旋回開始操作を作業者に促す。
【0054】
ここで、通常の第1旋回動作として、予め設定された旋回開始位置66で旋回を行う場合、走行制御部45は、停止操作に応じて自動前進走行を停止し、植付作業を停止した状態で、所定の旋回開始操作に応じて旋回経路63に沿って自動旋回走行を行って、他の直進経路62へ移動するように、田植機1の走行を制御する。
【0055】
一方、田植機1が旋回開始位置66を超えて自動前進走行を行って枕地領域C内の植付作業を行うとき、携帯端末5の制御装置50は、自動前進走行を行う田植機1の前後進切換位置68への到達を検出すると、前後進切換位置68へ到達したこと等を表示部53による表示等によって報知し、田植機1の後進操作を作業者に促す。第2旋回動作として、予め設定された前後進切換位置68で田植機1の前後進を切り換えた後で旋回を行う場合、走行制御部45は、停止操作に応じて自動前進走行を停止し、植付作業を停止した状態で、後進操作に応じて直進経路62に沿った後進経路69の自動後進走行を行うように、田植機1の走行を制御する。
【0056】
また、携帯端末5の制御装置50は、自動後進走行を行う田植機1の旋回開始位置66への到達を検出すると、旋回開始位置66へ到達したこと等を表示部53による表示等によって報知し、田植機1の停止操作や旋回開始操作を作業者に促す。ここで、走行制御部45は、停止操作に応じて自動後進走行を停止し、植付作業を停止した状態で、所定の旋回開始操作に応じて旋回経路63に沿って自動旋回走行を行って、他の直進経路62へ移動するように、田植機1の走行を制御する。
【0057】
また、第3旋回動作として、予め設定された前後進切換位置68よりも終端側辺から離間した位置で田植機1の前後進を切り換えた後で旋回を行う場合にも、走行制御部45は、停止操作に応じて自動前進走行を停止し、植付作業を停止した状態で、後進操作に応じて直進経路62に沿った後進経路69の自動後進走行を行うように、田植機1の走行を制御する。
【0058】
ここで、携帯端末5の経路変更部56が、変更後の前後進切換位置68’に基づいて旋回開始位置66を変更する場合、携帯端末5の制御装置50は、自動後進走行を行う田植機1の、変更後の旋回開始位置66’への到達を検出すると、旋回開始位置66’へ到達したこと等を表示部53による表示等によって報知し、田植機1の停止操作や旋回開始操作を作業者に促す。この場合、走行制御部45は、停止操作に応じて自動後進走行を停止し、植付作業を停止した状態で、所定の旋回開始操作に応じて、変更後の旋回経路63’に沿って自動旋回走行を行って、他の直進経路62’へ移動するように、田植機1の走行を制御する。
【0059】
あるいは、携帯端末5の経路変更部56が、旋回開始操作が行われた位置に旋回開始位置66’を変更する場合、走行制御部45は、設定されている旋回開始位置66に拘わらず、停止操作に応じて自動後進走行を停止し、植付作業を停止した状態で、所定の旋回開始操作に応じて、変更後の旋回経路63’に沿って自動旋回走行を行って、他の直進経路62’へ移動するように、田植機1の走行を制御する。
【0060】
次に、田植機1において第3旋回動作を行って変更した前後進切換位置68に基づいて旋回開始位置66を変更する場合の動作例を
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0061】
先ず、田植機1は、携帯端末5から取得した目標走行経路60に従って自動走行を開始し、目標走行経路60における各単位経路61の直進経路62に沿って自動前進走行を行う(ステップS1)。直進経路62に旋回開始位置66や旋回経路63だけでなく、前後進切換位置68が予め設定されている場合には、次の直進経路62へと旋回する第3旋回動作が可能となる。
【0062】
第3旋回動作では、田植機1による直進経路62の自動前進走行において、予め設定された旋回開始位置66を通過した後、予め設定された前後進切換位置68に到達する前に、田植機1を停止させて(ステップS2)、後進操作が行われたとき(ステップS3)、携帯端末5の経路変更部56は、今回停止した位置に前後進切換位置68’を変更して直進経路62’及び単位経路61’を変更し(ステップS4)、走行制御部45は、直進経路62’に沿った後進経路69’の田植機1の自動後進走行を行う(ステップS5)。
【0063】
また、携帯端末5の経路変更部56は、変更された前後進切換位置68’に基づいて旋回開始位置66’を変更して旋回経路63’を変更し(ステップS6)、後進経路69’の自動後進走行において、走行制御部45は、変更された旋回開始位置66’で停止操作及び旋回開始操作を行うように促す。なお、旋回開始位置66’の変更は、前後進切換位置68’を変更したタイミングと同時に行われてもよい。変更された旋回開始位置66’に到達して停止操作及び旋回開始操作が行われると(ステップS7)、走行制御部45は、変更された旋回経路63’に従って田植機1の自動旋回走行を行う(ステップS8)。
【0064】
上記のように、本実施形態によれば、作業車両である田植機1は、制御装置40及び携帯端末5を備えている。携帯端末5は、制御装置50を備え、制御装置50は、圃場内に、複数の直進経路62と当該直進経路62を繋ぐ旋回経路63とからなる単位経路61を複数有する目標走行経路60を作成し、単位経路61において旋回経路63の旋回開始位置66及び旋回終了位置67を予め設定する経路作成部55として機能する。制御装置40は、目標走行経路60に沿って田植機1を自動走行させる走行制御部45として機能する。また、単位経路61の直進経路62を走行している田植機1の所定操作に応じて、当該単位経路61における旋回開始位置66を変更する経路変更部56として機能する。
【0065】
換言すれば、圃場において田植機1等の作業車両の自動走行を行う本発明の自動走行方法は、圃場内に、複数の直進経路62と当該直進経路62を繋ぐ旋回経路63とからなる単位経路61を複数有する目標走行経路60を作成し、単位経路61において旋回経路63の旋回開始位置66及び旋回終了位置67を予め設定する経路作成工程と、目標走行経路60に沿って作業車両を自動走行させる自動走行工程と、単位経路61の直進経路62を走行している作業車両の所定操作に応じて、当該単位経路61における旋回開始位置66を変更する経路変更工程と、を有する。この自動走行方法では、圃場における畦を特定する畦特定工程を有することにより、作業者は、特定した畦に応じて作業車両を操作することで、単位経路61における旋回開始位置66を変更することができる。
【0066】
これにより、田植機1は、圃場の実際の外周形状が直線的でなく、畦際が内側に突出した箇所や外側に突出した箇所を有している場合でも、圃場の実際の外周形状に合わせて目標走行経路60の旋回開始位置66を設定することができる。そのため、畦際を避ける等、圃場の実際の外周形状に合わせて自動走行を継続させることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0067】
例えば、圃場を1年目に作業する場合に、上記のように圃場の実際の外周形状に合わせて旋回開始位置66等を設定して目標走行経路60を作成すれば、2年目以降では、1年目に作成した目標走行経路60に従って田植機1の自動走行を行うことができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、経路変更部56は、単位経路61における変更前の旋回開始位置66と変更後の旋回開始位置66との間の変更距離に基づいて、当該単位経路61における旋回終了位置67を変更する。
【0069】
これにより、田植機1は、圃場の実際の外周形状が直線的でなく、畦際が内側に突出した箇所や外側に突出した箇所を有している場合でも、圃場の実際の外周形状に合わせて目標走行経路60の旋回終了位置67を設定することができる。そのため、畦際を避ける等、圃場の実際の外周形状に合わせて自動走行を継続させることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、経路作成部55は、直進経路62上に前後進切換位置68を予め設定すると共に、直進経路62上で前後進切換位置68よりも後進した位置に旋回開始位置66を予め設定し、経路変更部56は、単位経路61の直進経路62を走行している田植機1の所定操作に応じて、当該単位経路61における前後進切換位置68を変更する。
【0071】
これにより、田植機1は、植付作業を伴う自動前進走行により圃場の外周に近接してから自動後進走行を行った後で自動旋回走行を行うことにより、枕地領域Cにおける未作業領域を減少することができる。そのため、植付作業を伴う外周走行を少なくすることができるので、作業効率を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、経路変更部56は、単位経路61において田植機1が前後進切換位置68に到達した後、当該単位経路61において旋回開始位置66へ到達するまでの後進距離を田植機1の所定操作に応じて設定する。
【0073】
これにより、田植機1は、植付作業を伴う自動前進走行により圃場の外周に近接してから自動後進走行を行った後で自動旋回走行を行う旋回開始位置66を、作業者による所定操作に応じて設定することができる。そのため、作業者の判断によって適切な旋回開始位置66が設定されるので、自動旋回走行を適切に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0074】
あるいは、本実施形態によれば、経路変更部56は、単位経路61における変更前の前後進切換位置68と変更後の前後進切換位置68との間の変更距離に基づいて、当該単位経路61における旋回開始位置66を変更する。
【0075】
これにより、田植機1は、作業者の操作を要することなく、前後進切換位置68の変更度合いに基づいて、自動旋回走行を行う旋回開始位置66を自動的に設定することができるので、自動旋回走行を適切に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、経路変更部56は、単位経路61において前後進切換位置68を変更した場合、変更後の前後進切換位置68よりも所定の後進距離だけ後進した位置に当該単位経路61における旋回開始位置66を変更する。
【0077】
これにより、田植機1は、作業者の操作を要することなく、予め設定された所定の後進距離に基づいて、自動旋回走行を行う旋回開始位置66を自動的に設定することができるので、自動旋回走行を適切に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、走行制御部45は、田植機1が自動後進走行において変更後の旋回開始位置66に到達したとき、当該旋回開始位置66への到達の報知、又は自動走行の停止を行う。
【0079】
これにより、田植機1は、旋回開始位置66が変更された場合でも、自動後進走行において適切な旋回開始位置66を把握して、自動旋回走行へ移行することができ、作業者の予知しない動作を防ぐことができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、経路変更部56は、単位経路61において前後進切換位置68を畦に向かう方向に変更した場合、旋回開始位置66及び旋回終了位置67を変更しない。
【0081】
これにより、田植機1は、自動前進走行の終了位置が圃場の外周側へシフトされる場合でも、自動旋回走行の旋回経路63を圃場の外周側へシフトさせることがなく、圃場の外周を構成する畦との衝突を抑制することができ、機体の損傷を抑制することができる。
【0082】
また、他の実施形態の田植機1は、前方の畔等の障害物を検知して特定するための畔特定部を備えて構成されてもよい。畦特定部は、例えば、赤外線センサー、レーザーセンサー、超音波センサー等の測距センサーや、CCD等のカメラで構成される。携帯端末5の経路変更部56は、畦特定部で特定される畦と田植機1の機体との距離に基づいて、旋回開始位置66や前後進切換位置68が畦から所定距離を空けて配置されるように、旋回開始位置66や前後進切換位置68を変更する。
【0083】
また、上記した実施形態では、作業車両が田植機1で構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、本発明の作業車両は、コンバインやトラクタ等の他の農作業機械で構成されてもよく、農作業機械以外の他の作業車両で構成されてもよい。
【0084】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動走行方法、作業車両及び自動走行方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 田植機(作業車両)
5 携帯端末
16 操向ハンドル
17 変速操作ペダル
18 主変速レバー
40 制御装置
41 記憶部
45 走行制御部
50 制御装置
51 記憶部
55 経路作成部
56 経路変更部
60 目標走行経路
61 単位経路
62 直進経路
63 旋回経路
66 旋回開始位置
67 旋回終了位置
68 前後進切換位置