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特許7609769改良された耐穿刺性能を有する多層熱可塑性フィルム
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  • 特許-改良された耐穿刺性能を有する多層熱可塑性フィルム 図1
  • 特許-改良された耐穿刺性能を有する多層熱可塑性フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】改良された耐穿刺性能を有する多層熱可塑性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241224BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504809
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019047143
(87)【国際公開番号】W WO2020041233
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/719,842
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】メッツォーラ、ニコラス カルドス
(72)【発明者】
【氏名】ビスワス、サンジブ
(72)【発明者】
【氏名】デグルート、ジャクリン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ギレスビー、デイビット ティー.
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522759(JP,A)
【文献】特表2015-524489(JP,A)
【文献】特表2015-522685(JP,A)
【文献】特表2015-535011(JP,A)
【文献】特開2014-200968(JP,A)
【文献】特開平07-309962(JP,A)
【文献】特開平09-094933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムであって、前記多層熱可塑性フィルムが、ASTM D-792に従って決定される、0.890g/cm~0.910g/cmの密度およびASTM D-1238によって測定される、190℃/2.16kgで測定される0.20g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーで形成された耐穿刺性層を少なくとも含み、前記ポリエチレン系プラストマーが、
5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%と、
2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)および2~2.5のMz/Mw値と、
CEFによって決定される、60~400のコモノマー分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を伴い、40~85℃の単一のSCBDピークを有し、
1.0~5.5のZSVR値と、を有し、
前記多層熱可塑性フィルムは、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸されている、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン系プラストマーが、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgによって測定される0.75g/10分~1g/10分のメルトインデックス(MI)を有する、請求項1に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系プラストマーが、ASTM D-792に従って決定される、0.900g/cm~0.910g/cmの密度を有する、請求項1または2に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項4】
前記耐穿刺性層が、ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントのエチレン/酢酸ビニルコポリマーをさらに含むか、または
前記耐穿刺性層の前記ポリエチレン系プラストマーが、前記ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントの不均一に分岐した超低密度(ultra-low density)ポリエチレンまたは不均一に分岐した超低密度(very-low density)ポリエチレンとブレンドされるか、または
前記耐穿刺性層の前記ポリエチレン系プラストマーが、3~20個の炭素原子の少なくとも1つのα-オレフィンを有するエチレンインターポリマーであるか、または 前記耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーが、エチレン/α-オレフィンコポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項5】
前記エチレン/α-オレフィンコポリマーが、エチレン/1-オクテンコポリマーである、請求項4に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項6】
前記多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層に隣接する第2のポリマー層をさらに含み、前記多層熱可塑性フィルムの前記耐穿刺性層および前記第2のポリマー層が、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項7】
(i)前記第2のポリマー層が、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコールまたは線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物からなる群から選択されるポリマーから形成されるか、または
(ii)前記多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層と前記第2のポリマー層との間に配置された第3のポリマー層をさらに含み、前記多層熱可塑性フィルムの前記耐穿刺性層、前記第2のポリマー層および前記第3のポリマー層が、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸されるか、または
(iii)前記多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層と前記第2のポリマー層との間に配置された第3のポリマー層をさらに含み、前記第2のポリマー層および前記第3のポリマー層が、独立して、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコール、または線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物からなる群から選択されるポリマーから形成される、
請求項6に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項8】
前記多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層と前記第2のポリマー層との間に配置された第3のポリマー層をさらに含み、
(i)前記第2のポリマー層の前記ポリマーが、前記第3のポリマー層の前記ポリマーとは構造的に異なるポリマーであるか、または
(ii)前記第3のポリマー層が、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、第2のポリマー層が、エチレン/α-オレフィンインターポリマーおよび超低密度(ultra-low density)ポリエチレンを含む、請求項7に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項9】
前記二軸延伸多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層に隣接するバリアポリマー層および接着促進タイ層をさらに含み、前記二軸延伸多層熱可塑性フィルムの前記耐穿刺性層ならびにバリアおよびタイ層のセットが、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸されるか、または
前記多層熱可塑性フィルムが、ダブルバブルプロセスによって調製されるか、または 、
前記多層熱可塑性フィルムが、食品物品の包装用であるか、または
前記ポリエチレン系プラストマーが、5.2~5.6の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層熱可塑性フィルム。
【請求項10】
食品を包装するための袋の製造で使用するのに適した熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成する方法であって、前記方法は、
ASTM D-792に従って決定される0.890g/cm~0.910g/cmの密度およびASTM D-1238、条件190℃/2.16kgによって測定される0.20g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーで第1の押出気泡を形成することであって、前記ポリエチレン系プラストマーが、
5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%と、
2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)および2~2.5のMz/Mw値と、
CEFによって決定される、60~400のコモノマー分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する40~85℃の単一のSCBDピークと、
1.0~5.5のZSVR値と、を有する、形成することと、
前記第1の押出気泡を崩壊し、第1の多層構造を形成することと、
前記第1の多層構造を、5℃~50℃の温度を有する第1の水浴に通して、前記第1の多層構造を冷却することであって、前記第1の多層構造が、前記第1の水浴の前記水中で0.5~50秒の滞留時間を有する、冷却することと、
前記第1の多層構造を、80℃~100℃の温度を有する第2の水浴に通して、前記第1の水浴から来る前記第1の多層構造を温めることであって、前記第1の多層構造が、
前記第2の水浴の前記水中で5~50秒の滞留時間を有する、温めることと、
前記第1の多層構造を60℃~120℃の温度に加熱することと、
前記第1の多層構造が前記60℃~120℃の温度に加熱された状態で第2の押出気泡を形成することであって、前記第1の多層構造が、前記第2の押出気泡を形成する際に2:1~10:1のブローアップ比を有する、形成することと、
前記第2の押出気泡を崩壊し、前記熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、多層熱可塑性フィルム、より具体的には、改良された耐穿刺性能を有する多層熱可塑性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
家禽、新鮮な赤身の肉およびチーズなどの食品、ならびに非食品産業および小売商品は、様々な熱収縮フィルム法によって包装されている。熱収縮フィルムには、ブロー収縮フィルムおよび配向収縮フィルムの2つの主なカテゴリがある。ブロー収縮フィルムは、シングルバブルの単純なブロー収縮フィルム押出プロセスによって作製され、配向性収縮フィルムは、ダブルバブル、テープバブル、トラップバブル、またはテンターフレーミングとして知られるより精巧なプロセスによって作製される。熱収縮フィルムは、一軸または二軸配向であり得、様々な他のフィルム属性を所有することが必要とされる。高い収縮応答に加えて、食品包装での使用を成功させるには、比較的高い耐穿刺性も所有する必要がある。
【0003】
収縮包装法は、一般に、熱収縮フィルムから製造された袋(またはスリーブ)内に物品(複数可)を配置し、次に袋を閉じるかまたはヒートシールし、その後、袋を十分な熱に曝露して、袋の収縮および袋と物品との密接な接触を引き起こすことを含む。熱は、加熱された空気、赤外線、温水、燃焼炎などの従来の熱源によって提供することができる。食品の熱収縮包装は、鮮度を保つのに役立ち、魅力的で衛生的であり、包装された食品の品質をより綿密に検査することができる。工業製品および小売商品の熱収縮包装は、代替的に、当該技術分野および本明細書において工業および小売の結束と称され、製品の清潔さを保ち、会計および輸送目的のための結束および照合の便利な手段でもある。
【0004】
配向ポリオレフィンフィルムの二軸熱収縮応答は、最初に製造されたフィルムを機械および横方向の両方で元の寸法の数倍に延伸してフィルムを配向させることによって得られる。延伸は、通常、製造されたフィルムが十分に軟らかいまたは溶融されている間に達成されるが、冷間引抜収縮フィルムは、当該技術分野においても既知である。製造されたフィルムが延伸された後で、延伸された状態のままである間、フィルムの急冷によって、延伸配向が凍結または設定される。その後の熱の適用は、次いで、配向フィルムを弛緩し、実際の収縮温度に応じて、配向フィルムを本質的に元の未延伸寸法に戻す、すなわち、その延伸寸法に対して収縮することができる。
【0005】
したがって、樹脂特性および製造パラメータの影響を受ける配向フィルムの配向ウィンドウおよび収縮応答を明確にする。配向ウィンドウは、樹脂溶融範囲の広さに依存し、したがって、樹脂の短鎖分岐分布に直接関係する。一般に、広い短鎖分岐分布および広い溶融範囲を有するエチレンアルファ-オレフィンインターポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyによって供給されるATTANE(商標)樹脂等の不均一に分岐した超低密度(ultra-low density)ポリエチレン樹脂)は、狭い短鎖分岐分布および狭い溶融範囲を有することを特徴とするエチレンアルファーオレフィンインターポリマー(例えば、Exxon Chemical Corporationによって供給されるEXCEED(商標)およびEXACT(商標)、ならびにThe Dow Chemical Companyによって供給されるAFFINITY(商標)樹脂等の均一に分岐した線状エチレンポリマー)と比較して、より広い配向ウィンドウを示す。
【0006】
配向性ポリオレフィンフィルム収縮は、収縮張力およびフィルム密度に依存する。フィルム収縮は、より低い収縮張力により配向温度が上昇するにつれて減少する。結晶質がトポロジー的制約を提供し、したがって、自由収縮を妨げるため、フィルム収縮はより低い密度(より低い結晶性)で増加する。逆に、所与の延伸比については、収縮張力は、配向温度における樹脂の結晶性に依存する。
【0007】
特定のポリマーが十分に軟らかいまたは溶融する温度は、様々な配向技術において重要な要因であるが、一般に、そのような温度は、当該技術分野において定義されていない。様々なポリマータイプ(これらは常に様々なポリマー結晶性および融点を有する)を開示する配向フィルムに関する開示は、単に、報告された比較に使用される延伸または配向温度を定義しない。Lustigらの米国特許第4,863,769号、EcksteinらのWO95/00333、およびGarzaらのWO94/07954は、そのような開示の2つの例であり、その開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO95/08441から、収縮応答および他の所望の収縮フィルム特性、例えば耐衝撃性に対する密度または結晶性の直接的効果が知られている。すなわち、配向温度がおそらく一定である場合でも、より低い密度のポリマーフィルムは、より高い収縮応答および改良された耐衝撃性を示す。しかしながら、配向温度に対する密度および他の樹脂特性の影響は、周知ではない。従来技術では、適切な延伸または配向条件に関連する一般的な経験則または一般化された教示のみがある。例えば、商業運転では、フィルムが適切に軟らかいまたは溶融する温度は、非晶性ポリマーの場合、そのそれぞれのガラス転移温度をちょうど上回る、または半結晶性ポリマーの場合、そのそれぞれの融点を下回るとよく言われる。異なるポリマーによって構成される多層構造は、これらの範囲をさらに広げることができ、いくつかの成分の融点を上回り、他の成分を下回る延伸が生じることを可能にする。
【0009】
ポリオレフィンの最適配向温度に対する密度および他の樹脂特性の影響は一般に知られていないが、ATTANE(商標)樹脂およびDOWLEX(商標)樹脂などの不均一に分岐したエチレンポリマーが比較的広い配向ウィンドウ(すなわち、溶融または軟化したときに樹脂を実質的に延伸することができる温度範囲)を有することは明らかである。また、軟化温度および例えばセカント係数などの他のフィルム特性は、より低いポリマー密度で減少する傾向があることも明らかである。これらの関係のため、高い収縮応答、広い配向ウィンドウ、高い耐穿刺性、高い弾性率および高い軟化温度を有するフィルム(すなわち、バランスの取れた特性を有する収縮フィルム)は、従来技術では知られていない。すなわち、ポリマー設計者は、耐穿刺性および高弾性率を有するフィルムを提供するために、常に配向ウィンドウを犠牲にする必要がある。より高い弾性率の重要性は、例えば、自動包装操作中の良好な機械加工性および製袋操作中の良好な取り扱いの必要性に関係している。
【0010】
一般的な経験則を超えた(しかしかなり一般化された)教示の例は、米国特許第4,597,920号のGolikeによって提供されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。Golikeは、少なくとも1つのC~C18α-オレフィンを有するエチレンのコポリマーのより低い融点とより高い融点との間の温度で配向を実行する必要があることを教示する。Golikeは、温度差が少なくとも10℃であることを具体的に教示するが、しかしながら、Golikeはまた、使用される特定の設備および技術に応じて、その範囲の下端でポリマーフィルムの裂けが生じ得るため、温度差の全範囲が実用的ではない可能性があることを具体的に開示する。範囲のより高い限界では、Golikeは、ポリマーフィルムが次いで軟らかく溶融した状態にあるため、ポリマーフィルムの構造的完全性が延伸中に低下し始める(および最終的にはより高い温度で破壊する)ことを教示する。米国特許第4,597,920号、カラム4、行52~68~カラム5、行1~6を参照されたい。Golikeによって定義された配向温度範囲(より高いおよびより低いピーク融点に基づく)は、一般に、ポリマーブレンドおよび不均一に分岐したエチレン/α-オレフィンインターポリマー、すなわち2つ以上のDSC融点を有する組成物に適用され、単一のDSC融点のみを有する均一に分岐したエチレン/α-オレフィンインターポリマーには全く適用されない。Golikeはまた、当業者が特定のポリマーの引裂温度を決定できることを示し、約0.920g/cmの密度を有する不均一に分岐したインターポリマーについて、引裂温度は、より低いピーク融点を上回る温度で生じることを開示する。米国特許第4,597,920号、カラム7、実施例4を参照されたい。しかしながら、Golikeは、収縮フィルムの当業者が、所与の延伸速度および比率で延伸温度に関する配向プロセスをどのように最適化して、収縮応答を最大化し、バランスの取れた特性を達成することができるかを教示または示唆しない。
【0011】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるHideoらのEP 0359907 A2は、延伸の開始点におけるフィルム表面温度が、DSCの主な吸熱ピークに関して決定されるように、ポリマーの融解温度を下回る20℃~約30℃の範囲内であるべきであることを教示する。そのような教示は、単一のDSC融解ピークを有する均一に分岐したエチレン/α-オレフィンインターポリマーに適用可能であると考えられるが、規定された範囲は、かなり一般的で広い。さらに、Hideoらは、熱収縮応答、または任意の他の所望の収縮フィルム特性については、特定のインターポリマーの最適配向温度に関していかなる具体的な教示も提供しない。
【0012】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO95/08441は、均一に分岐したエチレン/cc-オレフィンインターポリマーに関する一般化された教示を提供する。この開示の実施例では、いくつかの異なる均一に分岐した実質的に線状のエチレン/α-オレフィンインターポリマーが研究され、1つの不均一に分岐したエチレン/α-オレフィンインターポリマーと比較された。均一に分岐した実質的に線状のエチレン/α-オレフィンインターポリマーは、約0.896~約0.906g/cmで変化した密度を有したが、全てのインターポリマー(0.905g/cmの密度を有するThe Dow Chemical Companyによって供給される不均一に分岐した線状エチレン/α-オレフィンインターポリマー、ATTANE(商標)4203を含む)は、本質的に同じ配向温度で配向された。WO95/08441で報告された結果は、3つの一般的な発見を開示する:(1)同等のポリマー密度では、実質的に線状のエチレン/α-オレフィンインターポリマーおよび不均一に分岐した線状のエチレン/cc-オレフィンインターポリマーは、本質的に同等の収縮応答を有し(15~16ページの実施例21および実施例39を比較)、(2)収縮応答は、より低い密度および一定の配向温度で増加し、および(3)配向温度が増加するにつれて、配向速度が増加する。さらに、WO95/08441に報告されたインターポリマーの実施例および報告されていないDSC融点データの注意深い研究は、WO95/08441に開示された実施例について、所与の延伸速度および比率で、収縮制御層として用いられるポリマーのそれぞれのDSC融点を上回る配向温度で多層フィルム構造を配向することが好ましいことを示す。さらに、WO95/08441における教示または実施例のいずれも、バランスの取れた特性を有する収縮フィルムが得られることを示唆しない。
【0013】
均一に分岐したエチレンポリマーに関する配向情報を説明するが、それぞれの最低延伸温度に対する配向条件を特定せず、バランスの取れた収縮フィルム特性のための要件を教示しない他の開示は、BabrowiczらのEP 0600425 A1およびBabrowiczらのEP 0587502 A2を含み、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
したがって、二軸配向ポリオレフィンのための収縮応答および適切な配向温度に関する一般的な規則および一般的な開示があるが、ポリマータイプの関数としての最適な配向条件に関する具体的な情報はなく、より重要なことに、バランスの取れたまたは最適化された収縮応答、広い配向ウィンドウ、高弾性率、および/または高い耐穿刺性に関する具体的な情報はない。したがって、最大化された収縮応答、配向ウィンドウの増加および、所与の弾性率またはポリマー密度に関して、比較的高い耐穿刺性を有する改良された収縮フィルムを提供することが本開示の目的である。この目的および他の目的は、説明および次の様々なものから明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、ASTM D-792に従って測定される0.890g/cm~0.910g/cmの密度、およびASTM D-1238によって190℃/2.16kgで測定される0.20g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーで形成された耐穿刺性層を少なくとも含む、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを提供する。ポリエチレン系プラストマーは、5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%、2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)、2~2.5のMz/Mwの値を有する。ポリエチレン系プラストマーは、CEFによって決定される、60~400のコモノマー分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する40~85℃の単一のSCBDピークおよび1.0~5.5のZSVR値によってさらに特徴付けられる。多層熱可塑性フィルムは、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。ポリエチレン系プラストマーはまた、ASTM D-1238によって190℃/2.16kgで測定される0.75g/10分~1g/10分のMIを有することができる。ポリエチレン系プラストマーは、ASTM D-792に従って決定される0.900g/cm~0.910g/cmの密度を有することができる。
【0016】
一実施形態では、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーは、3~20個の炭素原子の少なくとも1つのα-オレフィンを有するエチレンインターポリマーである。代替の実施形態では、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。一実施形態では、エチレン/α-オレフィンコポリマーは、エチレン/1-オクテンコポリマーである。耐穿刺性層は、ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントのエチレン/酢酸ビニルコポリマーをさらに含むことができる。あるいは、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーは、ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントの不均一に分岐した超低密度(ultra-low density)ポリエチレンまたは不均一に分岐した超低密度(very-low density)ポリエチレン、または不均一に分岐した線状低密度ポリエチレンと混合される。
【0017】
様々な実施形態について、多層熱可塑性フィルムは、耐穿刺性層に隣接する第2のポリマー層をさらに含むことができ、多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層および第2のポリマー層は、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。様々な実施形態について、第2のポリマー層は、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコールまたは線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物からなる群から選択されるポリマーから形成され得る。加えて、多層熱可塑性フィルムはまた、耐穿刺性層と第2のポリマー層との間に配置された第3のポリマー層をさらに含むことができ、多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層、第2のポリマー層および第3のポリマー層は、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。第2のポリマー層および第3のポリマー層は、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコールまたは線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物からなる群から選択されるポリマーから独立して形成される。一実施形態では、第2のポリマー層のポリマーは、第3のポリマー層のポリマーと構造的に異なるポリマーである。様々な実施形態について、第3のポリマー層は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、第2のポリマー層は、エチレン/α-オレフィンインターポリマーおよび超低密度(ultra-low density)ポリエチレンを含む。
【0018】
本開示の二軸配向ポリマーフィルムはまた、耐穿刺性層または第2の層に隣接するバリアポリマー層およびタイ層を含むこともでき、ここで、二軸配向ポリマーフィルムの耐穿刺性層ならびにバリアおよびタイ層のセットは、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。
【0019】
本明細書に提供される実施形態について、多層熱可塑性フィルムは、ダブルバブルプロセスによって調製することができる。多層熱可塑性フィルムは、食品物品の包装において使用するのに適している。
【0020】
本開示はまた、食品物品を包装するための袋の製造で使用するのに適した、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成する方法を提供する。本方法は、ASTM D-792に従って決定される0.890g/cm~0.910g/cmの密度およびASTM D-1238、条件190℃/2.16kgによって測定される0.20g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーを有する第1の押出気泡を形成することであって、ポリエチレン系プラストマーが、5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%と、2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)および2~2.5のMz/Mw値と、CEFによって決定される、60~400の分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する40~85℃の単一のSCBDピークと、1.0~5.5のZSVR値と、を有する、形成することと、第1の押出気泡を崩壊し、第1の多層構造を形成することと、第1の多層構造を、5℃~50℃の温度を有する第1の水浴に通して、第1の多層構造を冷却することであって、第1の多層構造体が、第1の水浴の水中で0.5~50秒の滞留時間を有する、冷却することと、第1の多層構造を、80℃~100℃の温度を有する第2の水浴に通して、第1の水浴から来る第1の多層構造を温めることであって、第1の多層構造が、第2の水浴の水中で5~50秒の滞留時間を有する、温めることと、第1の多層構造を60℃~120℃の温度に加熱することと、第1の多層構造が60℃~120℃の温度に加熱された状態で第2の押出気泡を形成することであって、第1の構造が、第2の押出気泡を形成する際に2:1~10:1のブローアップ比を有する、形成することと、第2の押出気泡を崩壊し、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ダブルバブルまたはトラップバブルプロセスを使用して多層構造を調製するための装置である。
図2】Affinity(商標)PL 1880G、Affinity(商標)PL 1860GおよびAttane(商標)4203Gの中間分子量分布に関するゲル透過クロマトグラフィー結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルム、その製造方法、およびそれから作製された物品を提供する。本開示の熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムは、0.890g/cm~0.910g/cmの密度および0.2g/10分~1.5g/10分の190℃/2.16kgで測定されるメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーで形成された、穿刺耐性層を少なくとも含む。ポリエチレン系プラストマーは、5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%、2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)および2~2.5のMz/Mw値を有する。組成物は、CEFによって決定される、60~400のコモノマー分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する、40~85 ℃の単一のSCBDピークと、1.0~5.5のZSVR値によってさらに特徴付けられる。本開示の多層熱可塑性フィルムは、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。
【0023】
様々な実施形態について、本開示のポリエチレン系プラストマーは、0.890g/cm~0.910g/cmの密度を有する。好ましくは、本開示のポリエチレン系プラストマーは、0.900g/cm~0.910g/cmの密度を有する。本明細書に提供される密度は、ASTM D-792に従って決定される。
【0024】
ポリマーのメルトインデックスは、ポリマーの分子量に反比例する。したがって、関係は線形ではないが、分子量が高いほど、メルトインデックスは低くなる。様々な実施形態について、本開示のポリエチレン系プラストマーは、0.2g/10分~1.5g/10分の190℃/2.16kg(I)で測定されるメルトインデックス(MI)を有する。好ましくは、本開示のポリエチレン系プラストマーは、0.50g/10分~1.5g/10分の190℃/2.16kg(I)で測定されるMIを有する。より好ましくは、本開示のポリエチレン系プラストマーは、0.75g/10分~1.5g/10分の190℃/2.16kg(I)で測定されるMIを有する。190℃/2.16kgで測定されるMI値は、ASTM D-1238に従って決定される。
【0025】
本開示のポリエチレン系プラストマーの分子量を特徴付けるのに有用な他の測定は、例えば、一般的なASTM D-1238、条件190℃/10kg(I10)などのより高い重量を有するメルトインデックス決定を含む。より高い重量メルトインデックス決定とより低い重量決定との比率は、メルトフロー比として知られており、測定されたI10およびIメルトインデックス値については、メルトフロー比は便利にI10/Iとして示されている。本開示の熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層を調製するために使用される本開示のポリエチレン系プラストマーについて、メルトフロー比は、分子量分布および/または長鎖分岐の程度、すなわち、I10/Iメルトフロー比が高いほど、ポリマー中のより広いMWD、および/またはポリマー中のより長い鎖分岐を示す。MWDおよび長鎖分岐を示すことに加えて、より高いI10/I比はまた、より高いせん断速度(より容易な処理)およびより高い伸長粘度でより低い粘度を示す。本開示のポリエチレン系プラストマーのI10/I比は、6~約15の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、本開示のポリエチレン系プラストマーのI10/I比は、7~約12または約8~10の範囲である。
【0026】
様々な実施形態について、ポリエチレン系プラストマーは、5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%を有する。好ましくは、ポリエチレン系プラストマーは、5.2~5.6の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%を有する。GPC象限の上部25%のlogM25%は、GPCを使用してMWDからの象限を使用して計算される。GPCによるMWDからの象限の計算は次の通りである。プロットされたGPCからの分子量分布(dWf/dLogM対LogM)は、定義上、1に相当する面積を有する。このプロットは、高分子量から低分子量に統合された4つの等価面積セクション(重量分率=0.25)に分割される。各象限について、次の式1A~1Dのとおり、平均logMを決定した(25%、50%、75%、100%):
【数1】
(EQ 1A)
【数2】
(EQ 1B)
【数3】
(EQ 1C)
【数4】
(EQ 1D)
【0027】
ここで、MWD領域は、各dWf/dLogMにおいて、最も高い検出可能なlogMwから最も低い検出可能なlogMwに統合され、各スライス(i)は、幅で0.01LogMwを表す。各象限の平均GPC分子量は、次のように計算される:10^LogM象限そしてこの値は、象限内の各スライス(i)で10^LogMiの平均を取ることによって得られる数学的平均とは異なる。
【0028】
本開示の多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層は、2.5~3の分子量分布(M/M)をさらに含む。数平均分子量(M)の値は、当該技術分野において既知のように、既知の分子量を有するポリスチレンを標準として使用される、示差屈折率検出器を有するゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定されるポリエチレン系プラストマーの分子量の値から決定される。重量平均分子量(M)の値は、静的光散乱、小角度中性子散乱、X線散乱または沈降速度等の既知の技術から決定される。
【0029】
Mzを測定するための方法は、本開示の実施例セクションにおける従来のゲル浸透クロマトグラフィーの説明に見出される。本開示の多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層は、2~2.5の分子量分布(Mz/Mw)をさらに含む。重量平均分子量(M)の値は、上で考察されるように決定される。
【0030】
一実施形態では、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーは、3~20個の炭素原子(C~C20)の少なくとも1つのα-オレフィンを有するエチレンインターポリマーである。耐穿刺性層で使用するために適したポリエチレン系プラストマーは、実質的に線状のエチレンインターポリマー、均一に分岐した線状エチレンインターポリマー、不均一に分岐した線状エチレンインターポリマー(例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低または超低密度(ultra-low or very-low density)ポリエチレン(ULDPEまたはVLDPE))、およびそれらの組み合わせまたは混合物を含む。
【0031】
本開示の耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーの例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,389,086 B2に提供されるものを含むことができる。様々な実施形態について、ポリエチレン系プラストマーは、2グラム/10分未満のメルトインデックス、または代替として、0.2~1.5グラム/10分のメルトインデックス、0.910g/cm以下、例えば0.8602~の0.910g/cmの密度、120ジュール/グラム未満の全融解熱および5ジュール/グラム未満の115℃を超える融解熱を有することができる。加えて、ポリエチレン系プラストマーは、少なくとも2.5、例えば、2.5~3.5の分子量分布(Mw/Mn)、および約45を超え400までのコモノマー分布定数(CDC)を有することができる。ポリエチレン系プラストマーは、いくつかの実施形態では60~400、またはいくつかの他の実施形態では100~300、またはいくつかの他の実施形態では100~200のCDCを有する。ポリエチレン系プラストマーはまた、120全不飽和単位/1,000,000個未満の炭素(C)を有することができる。CDCは、コモノマー分布指数をコモノマー分布形状係数で割って100倍することと定義される。コモノマー分布指数は、コモノマー含量がコモノマー含量の中央値(C中央値)の0.5およびC中央値の1.5が35.0~119.0℃の範囲であるポリマー鎖の全重量分率を表す。コモノマー分布形状係数は、コモノマー分布プロファイルのピーク半分高さ(半値幅)における幅を、ピーク温度(Tp)からのコモノマー分布プロファイルの標準偏差(Stdev)で割った比として定義される。ポリエチレン系プラストマーはまた、上記に提供されるものに加えて、次の特性の任意の組み合わせを有することができる:最大約3本の長鎖分岐/1000個の炭素;20未満のビニリデン不飽和単位/1,000,000C;単一のDSC融解ピーク。一実施形態では、耐穿刺性層に使用することができるポリエチレン系ポリマーは、次のCDCおよびCDI値を有する
【表1】
【0032】
好ましくは、単一部位触媒系を使用して、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーを製造し、プロセス条件に応じて、あるレベルの長鎖分岐(LCB)が系内に見出される。好ましくは、ポリエチレン系プラストマー中のLCBのレベルは、ゼロせん断粘度比(ZSVR)を計算することによって測定される。ZSVRは、当式に従って当量平均分子量における分岐ポリエチレン材料のゼロせん断粘度(ZSV)対線状ポリエチレン材料のZSVの比として定義される:
【数5】
【0033】
ZSV値は、上述した方法により190℃でのクリープ試験から得た。Mwtは、上述したように、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して決定される。線状ポリエチレンのZSVとその分子量との間の相関は、一連の線状ポリエチレン参照試料に基づいて確立された。より低いZSVRは、より低いレベルの長鎖分岐を示す。耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーの好ましいZSVR値は、1.0~5.5、好ましくは2.5~5.5、より好ましくは2.5~3.5または4.5~5.5の値である。実質的に線状のエチレンポリマーは、The Dow Chemical CompanyおよびDupont Dow Elastomersによって、AFFINITY(商標)およびENGAGE(商標)樹脂の名称でそれぞれ販売される。均一に分岐した線状エチレンポリマーは、Mitsui Chemical Corporationによって、TAFMER(商標)の名称で、Exxon Chemical Corporationによって、EXACT(商標)およびEXCEED(商標)樹脂の名称でそれぞれ販売される。不均一に分岐した線状エチレンポリマーは、The Dow Chemical Companyによって、ATTANE (商標)、DOWLEX(商標)およびFLEXOMERの名称で販売される。
【0034】
本明細書で使用される「実質的に線状のエチレンポリマー」という用語は、狭い短鎖分岐分布を有し、および均一コモノマー組み込みに起因する長鎖分岐ならびに短鎖分岐を含有する均一に分岐したエチレン/α-オレフィンインターポリマーを指す。典型的には、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマー(例えば、均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマーまたは均一に分岐した線状エチレンポリマー)である。また、2つ以上の均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマーまたは均一に分岐した線状エチレンポリマーのブレンドであってもよい。2つ以上の均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマーまたは均一に分岐した線状エチレンポリマーのブレンドは、反応器内でその場で形成されたブレンドであってもよく、ポリマーはほぼ同じ密度を有するが、異なる分子量を有する。
【0035】
エチレン/α-オレフィンコポリマーのα-オレフィンは、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどの少なくとも1つのC~C20α-オレフィンである。好ましいα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンを含み、1-オクテンが特に好ましい。最も好ましくは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、エチレンおよびC~C20α-オレフィンコポリマー、特にエチレン/C~C10α-オレフィンコポリマーおよび最も特にエチレン/1-オクテンコポリマーである。他の適切なモノマーは、スチレン、ハロまたはアルキル置換スチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、およびシクロアルケン、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテンを含む。
【0036】
長鎖分岐は、ポリマーの骨格と同じ構造であり、短鎖分岐よりも長い。実質的に線状のポリマー骨格(α-オレフィンポリマーは、平均0.01~3本の長鎖分岐/1000個の炭素で置換される)。本開示で使用するための好ましい実質的に線状のポリマーは、0.01長鎖分岐/1000炭素~1長鎖分岐/1000炭素、より好ましくは0.05長鎖分岐/1000炭素~1長鎖分岐/1000炭素で置換される。
【0037】
長鎖分岐は、本明細書において、少なくとも6個の炭素の鎖長として定義され、それを超える長さは、13C核磁気共鳴分光法を使用して区別することができない。長鎖分岐は、それが結合するポリマー骨格の長さとほぼ同じ長さであり得る。長鎖分岐は、明らかに、コモノマー組み込みに起因する短鎖分岐よりも長い長さである。
【0038】
長鎖分岐の存在は、エチレンホモポリマーでは、13C核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して測定でき、Randall(Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29,V.2&3,p.285-297)に記載されている方法を使用して定量化される。エチレン/1-オクテンインターポリマーを含む、エチレンポリマー中の長鎖分岐の存在を決定するのに有用な他の既知の技術。2つのかかる方法は、低角度レーザー光散乱検出器(GPC-LALLS)と結合したゲル浸透クロマトグラフィーおよび示差粘度計検出器(GPC-DV)と結合したゲル浸透クロマトグラフィーである。
【0039】
「均一に分岐した線状エチレンポリマー」という用語は、コモノマーが所与のポリマー分子内にランダムに分布し、実質的に全てのポリマー分子が同じエチレン対コモノマーのモル比を有する線状エチレンインターポリマーまたは実質的に線状のエチレンインターポリマーに関して従来の意味で使用される。用語は、比較的高い短鎖分岐指数(SCBDI)または組成物分岐指数(CDBI)を特徴とするエチレンインターポリマーを指す。すなわち、インターポリマーは、約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約90%以上のSCBDIを有し、TREF分析において、測定可能な高密度(結晶性)重合性部分を本質的に欠く。
【0040】
インターポリマーのSCBDIは、例えば、Wild et al.,Journal of Polymer Science,Poly.Phys.Ed.,Vol.20, p.441(1982)、または米国特許第4,798,081号、第5,008,204号、またはL.D.Cady著「The Role of Comonomer Type and Distribution in LLDPE Product Performance」、SPE Regional Technical Conference、Quaker Square Hilton、Akron、Ohio、October 1-2、pp.107-119(1985)に記載されており、それらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、好ましいTREF技術は、SCBDI計算においてパージ量を含まない。より好ましくは、インターポリマーおよびSCBDIのモノマー分布は、米国特許第5,292,845号およびJ.C.RandallのRev.Macromol.Chem.Phys.,C29,pp.201-317に記載されている技術に従って13 C NMRを使用して決定され、その両方の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
均一(または狭い)短い分岐分布を指すことに加えて、用語「均一に分岐した線状エチレンインターポリマー」はまた、インターポリマーが長鎖分岐または実質的に線状エチレンインターポリマーを有しないことを意味する。すなわち、エチレンインターポリマーは、「線状」という用語の従来の意味において、長鎖分岐および線状ポリマー骨格の不在を有する。しかしながら、「均一に分岐した線状エチレンポリマー」という用語は、多数の長鎖分岐を有することが当業者に知られている高圧分岐ポリエチレンを指さない。均一(狭い)短い分岐分布(すなわち、均一に分岐した)を提供する重合プロセス(例えば、米国特許第3,645,992号のElstonによって記載されるもの)を使用して、均一に分岐したエチレンポリマーを作製することができる。均一に分岐した線状エチレンポリマーは、ハフニウム、ジルコニウムおよびバナジウム触媒系を使用して、溶液、スラリー、またはガス相プロセス中で調製することができる。
【0042】
すなわち、インターポリマーは、比較的広範な短鎖分岐分布を有する。不均一に分岐した線状エチレンポリマーは、約50%未満、より典型的には約30%未満のSCBDIを有する。
【0043】
不均一に分岐したエチレンポリマーは、線状ポリエチレン技術の実践者の間で周知である不均一に分岐したエチレンポリマーは、従来のジーグラー-ナッタ溶液、スラリーまたはガス相重合プロセスおよび配位金属触媒を使用して調製される。これらの従来のジーグラー-ナッタ型線状ポリエチレンは、均一に分岐しておらず、いかなる長鎖分岐も有さず、したがって、「線状」という用語の従来の意味での線状ポリマー骨格を有する。
【0044】
耐穿刺性層は、ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントのエチレン/酢酸ビニルコポリマーをさらに含むことができる。あるいは、耐穿刺性層のポリエチレン系プラストマーを、ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントの不均一に分岐した超低密度(ultra-low density)ポリエチレンまたは不均一に分岐した超低密度(very-low density)ポリエチレンとブレンドされる。耐穿刺性層組成物のポリエチレン系プラストマーと他のポリオレフィンとのブレンドおよび混合物もまた、実施してもよい。耐穿刺性層組成物のポリエチレン系プラストマーとブレンドするのに適切なポリマーは、天然ポリマーおよび合成ポリマーを含む熱可塑性および非熱可塑性ポリマーを含む。ブレンドのための例示的なポリマーは、ポリプロピレン(衝撃修飾ポリプロピレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ランダムエチレン/プロピレンコポリマーおよびランダムエチレン/プロピレン/ブテンターポリマーの両方)、高圧、フリーラジカルLDPE、ジーグラー-ナッタLLDPE、メタロセンPE、を含む様々なタイプのポリエチレンを含み、複数の反応器PE(ジーグラー-ナッタPEおよびメタロセンPEの「反応器内」ブレンド)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、オレフィンプラストマーおよびエラストマーなどの均質ポリマー、エチレンおよびプロピレン系コポリマー(例えば、VERSIFY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Company)、SURPASS(商標)(Nova Chemicals)、およびVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマーも、耐穿刺性層組成物のポリエチレン系プラストマーを含むブレンドにおいて有用であり得る。
【0045】
本開示の多層熱可塑性フィルムは、10マイクロメートル(μm)~200μmの収縮前の厚さを有し得る。好ましくは、多層熱可塑性フィルムは、30μm~100μmの厚さを有する。本明細書で考察されるように、多層熱可塑性フィルムのポリエチレン系プラストマーは、3μm~90μmの厚さを有する。
【0046】
本明細書で考察される耐穿刺性層を単層として使用することが可能であるが、本開示の多層熱可塑性フィルムはまた、1つ以上の追加の層である。例えば、多層熱可塑性フィルムは、耐穿刺性層に隣接する第2のポリマー層をさらに含み得、多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層および第2のポリマー層は、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。加えて、多層熱可塑性フィルムはまた、耐穿刺性層と第2のポリマー層との間に配置された第3のポリマー層をさらに含み得、多層熱可塑性フィルムの耐穿刺性層、第2のポリマー層および第3のポリマー層は、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。第2のポリマー層および第3のポリマー層は、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコールまたは線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物からなる群から選択されるポリマーから独立して形成される。一実施形態では、第2のポリマー層のポリマーは、第3のポリマー層のポリマーと構造的に異なるポリマーである。様々な実施形態について、第3のポリマー層は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、第2のポリマー層は、エチレン/α-オレフィンインターポリマーおよび超低密度(ultra-low density)ポリエチレンを含む。多層熱可塑性フィルムにおけるこれらの追加の層およびそれらの機能は、本明細書でより完全に論じられる。
【0047】
様々な実施形態について、本開示の多層熱可塑性フィルムは、少なくとも2つの追加の層を含み、ポリエチレン系プラストマーポリエチレンで形成された耐穿刺性層は、多層熱可塑性フィルムの内層を提供する(例えば、少なくとも2つの追加の層の間に配置される)。したがって、耐穿刺性層は、3つ以上の層、より好ましくは3つ~9つの層、さらにより好ましくは3つ~5つまたは3つ~7つの層を有する多層熱可塑性フィルムに使用されることが好ましい。
【0048】
共押出または積層多層フィルム構造(例えば、3層フィルム構造)の場合、本明細書に記載の耐穿刺性層は、構造のコア層、外面層、中間層および/または内側シーラント層として使用することができる一般に、多層フィルム構造について、耐穿刺性層は、全多層フィルム構造の少なくとも10%を含む。多層構造の他の層は、限定されないが、バリア層、および/またはタイ層、および/または構造層を含む。これらの層には様々な材料を使用することができ、そのいくつかは、同じフィルム構造内の複数の層として使用される。これらの材料のいくつかは、箔、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレプタレート(PET)、配向ポリプロピレン(OPP)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、ULDPE、LLDPE、HDPE、MDPE、LMDPE、LDPE、イオノマー、グラフト変性ポリマー(例えば、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン)、および紙を含む。
【0049】
したがって、本開示の耐穿刺性層を有する熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムは、シーラント層組成物(例えば、限定されないが、別のポリマー混合物、少なくとも1つの均一に分岐した実質的に線状のエチレンポリマー、少なくとも1つの均一に分岐した線状エチレンポリマー、または少なくとも1つの不均一に分岐した超または超低密度(ultra or very low density)ポリエチレンなど)、外層(例えば、別のポリマー混合物または少なくとも1つの不均一に分岐した線状低密度または超低密度(ultra-low density)ポリエチレンなど)、および本明細書に提供される耐穿刺性層から形成されるコア層を有する、2~15層構造であってもよい。接着促進タイ層(SK Chemicalから入手可能なPRIMACOR(商標)エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマー、MAHグラフト化エチレンコポリマー(MAH PE)、および/またはエチレン-酢酸ビニル(EVA)コポリマーなど)、ならびに追加の構造層(Affinity(商標)ポリオレフィンプラストマー、Engage(商標)ポリオレフィンエラストマー(いずれもThe Dow Chemical Companyから入手可能)、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、またはこれらのポリマーのうちのいずれかを互いに、またはEVAなどの別のポリマーとのブレンド)は、任意に用いられ得る。
【0050】
多層構造の他の層は、限定されないが、本明細書で考察されるように、バリア層、および/またはタイ層、および/または構造層を含む。これらの層には様々な材料を使用することができ、そのいくつかは、同じフィルム構造内の複数の層として使用される。これらの材料のいくつかは、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、ULDPE、LLDPE、HDPE、MDPE、LMDPE、LDPE、イオノマー、グラフト変性ポリマー(例えば、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン)を含む。
【0051】
可能な多層構造の例は、本開示の耐穿刺性層/MAH PE(タイ)/EVOH/MAH PE(タイ)/PE;本開示の耐穿刺性層/本開示のEVA/耐穿刺性層/EVA/ヒートシーリング層;または本開示の耐穿刺性層/EVA/PVDC/EVA/外層(外層は、本明細書に提供されるプラストマーまたは他のエチレンアルファオレフィンインターポリマーシーラント、PE(例えば、LLDPEまたはULDPE)、EVA、PVDC、EVAまたはシーラント層から選択される)を含む。
【0052】
本明細書に開示される一実施形態では、少なくとも3つの層(例えば、「A/B/A」構造)を含む多層フィルム構造であって、少なくとも1つのコアまたは隠れた層が、本明細書に論じられるように、耐穿刺性層である多層フィルム構造である。一般に、フィルム構造層の比は、コア層がその構造全体の割合に関してフィルム構造を支配するようになる。一実施形態では、本開示の多層熱可塑性フィルムは、2つの外層を有するポリエチレン系プラストマーポリエチレンと共に形成される耐穿刺性層を提供し、耐穿刺性層は、多層熱可塑性フィルムの全重量を基準として10重量パーセント(重量%)~90重量%の多層熱可塑性フィルムを含む。例えば、コア層は、全フィルム構造の少なくとも約33重量%であり得る(例えば、3層フィルム構造において、各「A」外層は、全フィルム構造の33重量%を含み、コア耐穿刺性層(「B」層)は、全フィルム構造の33重量%を含む)。3層フィルム構造において、好ましくは、コア耐穿刺性層は、全フィルム構造の少なくとも約70%を含む。追加の隠れた層はまた、光学特性を損なうことなく、フィルム構造に組み込まれ得る。例えば、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリルアドコポリマーまたは無水物グラフト変性ポリエチレンを含むタイ層または中間層を使用することができ、または、例えば、塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマーまたはエチレンビニルアルコールコポリマーを含むバリア層を使用することができる。より好ましい3層フィルム構造において、各「A」外層は、少なくとも1つの実質的に線状のエチレンポリマーの全フィルム構造の15重量%を含み、「B」耐穿刺性層は、全フィルム構造の70重量%を含む。多層フィルム構造は、(任意の順序で)配向および/または照射されて、改良された耐穿刺性を有する多層収縮フィルム構造を提供することができる。
【0053】
様々な実施形態について、多層フィルム構造のうちの少なくとも1つは、熱封止層であり得る。好ましくは、熱封止層は、少なくとも1つのエチレン-α-オレフィンコポリマー(EAO)とエチレン酢酸ビニルとのブレンド(EAO:EVAブレンド)を含む。適切なα-オレフィンは、C~C10α-オレフィン、例えば、プロペン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1、およびそれらの組み合わせを含む。ヒートシール層は、多層フィルムの最も厚い層であり、フィルムの耐穿刺性に著しく寄与し得る。この層の影響を受ける別の望ましい特性は、ヒートシール温度範囲である。フィルムをヒートシールするための温度範囲は、可能な限り広いことが好ましい。これは、非常に狭い範囲を有するフィルムと比較して、ヒートシール装置の動作のより大きな変動を可能にする。例えば、好適なフィルムは、25℃以上のヒートシールウィンドウを提供する広い温度範囲にわたってヒートシールすることが望ましい。
【0054】
多層フィルム構造はまた、実質的に線状のエチレンポリマー(SLEP)をフィルム内で単独で使用することによって、または例えば、エチレン/酢酸ビニル(EVA)および/またはエチレン/アクリル酸(EAA)などの他の酸素透過性フィルム層と組み合わせて使用することによって、酸素透過性であり得る。これらのフィルムは、好ましくは、良好な酸素透過性、伸縮性、弾性回収性およびヒートシール特性で調製され、卸売業者および小売業者に、任意の従来の形態、例えばストックロールで利用可能にすることができ、また、従来の包装機器で使用することができる。
【0055】
本開示の二軸配向ポリマーフィルムはまた、耐穿刺性層に隣接するバリアポリマー層およびタイ層を含むことができ、耐穿刺性層ならびに二軸配向ポリマーフィルムのバリア層およびタイ層のセットは、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される。
【0056】
別の態様では、多層フィルム構造は、酸素および/または水分バリア層を含むことができる。本明細書で使用される場合、「バリア」または「バリア層」という用語は、水分または酸素分子に対する物理的バリアとして機能する多層フィルムの層を意味する。新鮮な赤身の肉などの酸素感受性材料の包装に有利なバリア層材料は、他のフィルム層と併せて、23℃の温度および0%の相対湿度で、1平方メートル当たり70未満(好ましくは45以下、より好ましくは15以下)の立方センチメートル(cc)の酸素ガス伝達速度(OGTR)を24時間で提供する。酸素バリア層が必要とされるとき、酸素バリア層は、通常、内側のヒートシール層と外側の層との間に挟まれたコア層として、多層フィルムの別個の層として提供されるが、所望のフィルムの様々な特性、例えば、ヒートシール性、靭性、耐摩耗性、耐引裂性、熱収縮性、耐剥離性、剛性、耐湿性、光学特性、印刷性などを追加または修正するための層などの追加の層も含まれ得る。
【0057】
多層熱可塑性フィルムに含まれ得る酸素バリア材料としては、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、金属箔、金属化ポリエステル、ポリアクリロニトリル、シリカオキシド処理ポリマーフィルム、ポリアミドおよび塩化ビニリデンコポリマー(PVDC)を含む。本開示と共に使用するための好ましい酸素バリアポリマーは、塩化ビニリデンコポリマーまたは塩化ビニル(VC-VDCコポリマー)またはメチルアクリレート(MA-VDCコポリマー)、ならびにEVOH等の様々なコモノマーとの塩化ビニリデンコポリマーである。
【0058】
単層または多層フィルム構造の厚さは、変化し得る。しかしながら、本明細書に記載される単層および多層フィルム構造の両方について、厚さは、典型的には、約10マイクロメートル~約200マイクロメートル、好ましくは、約20マイクロメートル~約150マイクロメートル)、特に、約30マイクロメートル~約130マイクロメートルである。
【0059】
本開示の多層フィルム構造はまた、照射架橋を受けることができる。照射架橋プロセスにおいて、本開示の多層フィルム構造は、ブローフィルムプロセスによって製造され得、次いで、ポリマーフィルムを架橋するために最大50メガラッド(Mrad)の照射用量で照射源(ベータまたはガンマ)に曝露され得る。照射架橋は、収縮およびスキン包装のためなど、配向フィルムが所望されるときはいつでも、最終フィルム配向の前または後に誘導することができるが、好ましくは、照射架橋は、最終配向の前に誘導される。本明細書に記載されるフィルム構造を処理するために有用な照射技術は、当業者に既知の技術を含む。好ましくは、照射は、約0.5Mrad~約30Mradの用量レベルで電子ビーム(ベータ)照射装置を使用することによって達成される。本開示の多層フィルム構造から製造される収縮フィルム構造はまた、照射処理の結果として生じるより低い程度の鎖切断に起因して改良された物理的特性を示すことが予想される。
【0060】
本明細書に提供される実施形態について、多層熱可塑性フィルムは、様々なプロセスを使用して調製され得る。例えば、本開示の多層熱可塑性フィルム構造は、従来の単純な気泡または鋳造押出技術を使用し、ならびに「テンターフレーミング」または「ダブルバブル」または「トラップバブル」プロセスなどのより精巧な技術を使用することによって作製することができる。「延伸された」および「配向された」は、当該技術分野で使用され、本明細書では互換的に使用されるが、配向は、実際には、フィルムが、例えば、チューブ上で内部空気圧を押し付けることによって、またはフィルムの端部を引っ張るテンターフレームによって延伸される結果である。
【0061】
単純なバブルフィルムプロセスは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、The Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk-Othmer,Third Edition,John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol.16, pp.416-417 and Vol.18,pp.191-192に記載されている。米国特許第3,456,044号(Pahlke)に記載される「ダブルバブル」プロセスなどの二軸配向フィルムを製造するためのプロセス、および二軸延伸フィルムまたは配向フィルムを調製するための他の適切なプロセスは、米国特許第4,865,902号(Golikeら)、4,352,849号(Mueller)、4,820,557号(Warren)、4,927,708号(Herranら)、4,963,419号(Lustigら)、および4,952,451号(Mueller)に記載されており、これらのそれぞれの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
Pahlkeによって米国特許第3,456,044号に開示されるように、かつ単純なバブル法と比較して、「ダブルバブル」または「トラップバブル」フィルム処理は、フィルムの機械および横方向の両方における配向を著しく増加することができる。増加した配向は、フィルムがその後加熱されるとき、より高い自由収縮値をもたらす。また、Pahlkeの米国特許第3,456,044号およびLustigらの米国特許第5,059,481号(参照により本明細書に組み込まれる)は、低密度ポリエチレンおよび超低密度(ultra low density)ポリエチレン材料が、それぞれ、単純なバブル法によって製造される場合、例えば、両方向で約3%の自由収縮で不良な機械および横収縮特性を示すことを開示する。しかしながら、既知のフィルム材料とは対照的に、特にLustigらの米国特許第5,059,481、4,976,898、および4,863,769によって開示されるものと対照的に、ならびにSmithによって米国特許第5,032,463号に開示されるもの(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)と対照的に、本開示の独自の実質的に線状のエチレンポリマーは、機械および横方向の両方において著しく改良された単純な気泡収縮特性を示す。
【0063】
本開示の熱収縮二軸延伸多層熱可塑性フィルムの形成に使用されるブローアップ比は、2:1~10:1であり得る。当業者により理解されるように、ブローアップ比は、バブル直径をダイ直径で割った式によって計算される。
【0064】
酸化防止剤(例えば、IRGANOX(商標)1010またはIRGANOX(商標)1076(BASFによって供給される)、リン酸塩(例えば、IRGAFOS(商標)168(BASFによっても供給される)、クリング添加剤(例えば、PIB)、SANDOSTAB PEPQ(商標)(Sandozによって供給される)、顔料、着色剤、充填剤などの添加剤も、本開示の熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムに含まれ得る。一般的には必要ではないが、本開示の多層熱可塑性フィルムはまた、限定されないが、未処理および処理の二酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、および粘土、ならびに一次、二次、および置換脂肪酸アミド、離型剤、シリコーンコーティングなどを含む、ブロッキング防止、離型および摩擦係数特性を強化するための添加剤を含み得る。第4級アンモニウム化合物単独、またはエチレン-アクリル酸(EAA)コポリマーまたは他の官能性ポリマーと組み合わせた、さらに他の添加剤もまた、本開示の多層熱可塑性フィルムの帯電防止特性を増強し、本発明の収縮フィルムを、例えば、電子的に感受性の高い商品の重荷物に使用することを可能にするために添加され得る。
【0065】
本開示の多層熱可塑性フィルムは、出願人によって発見された改良された収縮フィルム特性が悪影響を受けない範囲で、リサイクルおよびスクラップ材料ならびに希釈剤ポリマーをさらに含み得る。例示的な希釈剤材料は、例えば、エラストマー、ゴムおよび無水物変性ポリエチレン(例えば、ポリブチレンおよびマレイン酸無水物グラフト化LLDPEおよびHDPE)、ならびに高圧ポリエチレン、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン/アクリル酸(EAA)インターポリマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)インターポリマーおよびエチレン/メタクリレート(EMA)インターポリマー、およびそれらの組み合わせを含む。
【0066】
本開示の多層熱可塑性フィルムは、それらの強度、バリア、および/または収縮特性の向上に有用である。本開示の多層熱可塑性フィルムは、肉、ハム、家禽、ベーコン、チーズなどの原始的および副原始的な切断などの非食品および食品のための様々な包装および保管用途において有用であり得る。好ましくは、多層熱可塑性フィルムは、食品物品の包装での使用に適切である。
【0067】
本開示はまた、食品物品を包装するための袋の製造での使用に適切な熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成する方法を提供する。方法は、ASTM D-792に従って決定される0.890g/cm~0.910g/cmの密度およびASTM D-1238、条件190℃/2.16kgによって測定される0.5g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーを有する第1の押出気泡を形成することを含み、ここで、ポリエチレン系プラスマーは、5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM25%、2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)、および2~2.5のMz/Mw値を有する。組成物は、CEFによって決定される、60~400のコモノマー分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する40~85℃の単一のSCBDピークと、1.0~5.5のZSVR値と、第1の押出気泡を崩壊し、第1の多層構造を形成することと、第1の多層構造を、5℃~50℃の温度を有する第1の水浴に通して、第1の多層構造を冷却することであって、第1の多層構造が、第1の水浴の水中に0.5~50秒の滞留時間を有する、冷却することと、第1の多層構造を、80℃~100℃の温度を有する第2の水浴に通して、第1の水槽から来る第1の多層構造を温めることであって、第1の多層構造が、第2の水浴の水中に5~50秒の滞留時間を有する、温めることと、第1の多層構造を60℃~120℃の温度に加熱することと、第1の多層構造が、60℃~120℃の温度に加熱された状態で第2の押出気泡を形成することであって、前記第1の多層構造が、前記第2の押出気泡を形成する際に2:1~10:1のブローアップ比を有する、形成することと、第2の押出気泡を崩壊し、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成することと、によってさらに特徴付けられる。
【0068】
定義
本開示で列挙される密度値は、ASTM D-792に従って決定され、グラム/立方センチメートル(g/cm)として報告される。
本開示で列挙されるメルトインデックス(MI)値は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kg(Iとして知られる)に従って決定される。メルトインデックスは、ポリマーの分子量に反比例する。したがって、関係は線形ではないが、分子量が高いほど、メルトインデックスは低い。メルトインデックスは、g/10分として報告される。メルトインデックス決定は、I10として知られるASTM D-1238、条件190℃/10kgに従って、さらに高い重みで行うこともできる。
従来の意味で本明細書で定義される「メルトフロー比」という用語は、より高い重量のメルトインデックス決定とより低い重量のメルトインデックス決定との比として定義される。I10およびIのメルトインデックス値を測定した場合、メルトフロー比はI10/Iと便利に指定される。
【0069】
「組成物」という用語は、使用されるとき、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を含む。
【0070】
「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、使用されるとき、2つ以上のポリマーの密接な物理的混合物(すなわち、反応なし)を意味する。ブレンドは、(分子レベルで相分離していない)混和性であっても、そうでなくてもよい。ブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野で知られている他の方法から決定される、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂または化合物)またはマイクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時形成)上で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって影響を受け得る。
【0071】
「線状」という用語は、ポリマーのポリマー骨格が測定可能または実証可能な長鎖分岐を欠き、例えば、ポリマーは、1000炭素当たり0.01未満の長鎖分岐で置換され得るポリマーを指す。
【0072】
「ポリマー」という用語は、同一または異なる種類のモノマーに関わらず、モノマーを重合することにより調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および定義される「インターポリマー」という用語を包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、記載されるようなインターポリマーを示す。
【0073】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。インターポリマーという総称は、通常、2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられるコポリマー、および3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0074】
「エチレン系ポリマー」という用語は、(重合可能モノマーの全量に基づいて)50モルパーセントを超える重合エチレンモノマーを含み、および任意で、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0075】
「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、(重合可能なモノマーの全量に基づいて)50モルパーセントを超える重合エチレンモノマーと、少なくとも1つのα-オレフィンとを含むインターポリマーを指す。
【0076】
「延伸された」および「配向された」は、当該技術分野で使用され、本明細書では互換的に使用されるが、配向は、実際には、フィルムが、例えば、チューブ上で内部空気圧を押し付けることによって、またはフィルムの端部を引っ張るテンターフレームによって延伸される結果である。
【0077】
約40~約140℃、特に約50~約125℃、より具体的には約60~約110℃の範囲内の収縮温度は、本開示において適切である。
【0078】
本明細書では、「残留結晶性」という用語は、特定の延伸温度におけるポリマーフィルムの結晶性を指すために使用される。残留結晶性は、ポリマーの水中急冷圧縮成形フィルム試料の10℃/分での第1の熱のために設定されたパーキン-エルマー DSC 7を使用して決定される。特定の温度におけるインターポリマーの残留結晶性は、部分面積技術を使用して、その温度と完全融解温度との間の融解熱を測定することによっておよび融解熱を292ジュール/グラムで割ることによって決定される。融解熱は、パーキン-エルマー PCシリーズソフトウェアバージョン3.1を使用して部分領域のコンピュータ統合によって決定する。
【0079】
本明細書では、「収縮制御層」という用語は、収縮応答を提供または制御するフィルム層を指すために使用される。そのような層は、全ての熱収縮フィルムに固有である。単層熱収縮フィルムにおいて、収縮制御層は、フィルム自体である。多層熱収縮フィルムにおいて、収縮制御層は、典型的には、コア層または内部フィルム層であり、典型的には、最も厚いフィルム層である。例えば、WO95/08441を参照されたい。
【0080】
本明細書では、「実質的に配向されていない形態」という用語は、通常、通常の製造中にある量の配向がフィルムに付与されるという事実を参照して使用される。したがって、製造ステップ自体が、所望のまたは必要な収縮応答に必要な配向の程度を付与するために使用されないことを意味する。本開示は、製造ステップおよび配向ステップが分離可能であり、同時に生じる動作に概して適用可能であると考えられる。しかしながら、本開示は、好ましくは、管、靴下、ウェブ、または平らなシートの作製を超えて必要とされる、実質的な配向が付与される前に、そのような軟らかさ、溶融、または照射されるかどうかにかかわらず、追加の、別個の配向ステップを対象とする。
【0081】
以下の実施例は、説明の目的のために提供され、本開示のいかなる特定の限定も示唆することを意図していない。
【実施例
【0082】
図1に示す装置を一般的に利用して、上記の詳細な説明に従って、ダブルバブルまたはトラップバブルプロセスを使用して、次の「元の構造」および「発明の構造」を調製する。図1において、要素番号は、装置の次の要素を表す。100-押出機、102-テープ、104-水浴(90℃)、106-ヒーター、108-延伸プロセス。次の実施例では、例えば、冷水噴水(10~20℃)を使用してダイを出ると冷却された一次チューブとして、全ての層を押出した(多層実施例では、共押出した)。次いで、この一次チューブを温水浴(90℃)中で再加熱し、次いで、空気クッションによって達成される二軸方向のために放射ヒーター(60~120℃)によって抽出温度に再加熱し、空気クッション自体は、移動する一次チューブの周囲に同心円状に配置された加熱された多孔質チューブを通る横方向の流れによって加熱された。冷却は、同心エアリングによって達成された。描画点温度、気泡加熱および冷却速度および配向比を一般的に調整して、所望の量の延伸または配向のための気泡安定性およびスループットを最大化した。全ての割合は、特に明記されていない限り、重量パーセントである。
【0083】
「元の構造」は、以下の「A/B/C」多層構造を有して作製され、各層の重量パーセントは、それぞれ40%/30%/30%である。A層(内層)は、Affinity(商標)PL 1880G(The Dow Chemical Company)およびAttane(商標)4203G(The Dow Chemical Company)のそれぞれ70%/30%ブレンドから形成される。層Bは、Elvax(登録商標)470(Dupont)から形成される。層Cは、Affinity(商標)PL 1880G(The Dow Chemical Company)から形成され、耐穿刺性層として機能する。
【0084】
「本発明の構造」は、次の「A/B/C」多層構造を有して作製され、各層の重量パーセントは、それぞれ40%/30%/30%である。A層(内層)は、Affinity(商標)PL 1880G(The Dow Chemical Company)およびAttane(商標)4203G(The Dow Chemical Company)のそれぞれ70%/30%ブレンドから形成される。層Bは、Elvax(登録商標)470(Dupont)から形成される。層Cは、Affinity(商標)PL1860G(The Dow Chemical Company)から形成され、本開示の耐穿刺性層の例として機能する。
【0085】
上記列挙された材料の物理的特性は、表1に見られる
【表2】
【0086】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
クロマトグラフィーシステムは、PolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフであって、Precision Detectors(Now Agilent Technologies) 二角度レーザー光散乱(LS)検出器モデル2040に結合した内部IR5赤外線検出器(IR5)を備えたPolymerChar GPC-IRからなっていた。全ての光散乱測定では、15度の角度が測定目的に使用される。オートサンプラーオーブンコンパートメントを摂氏160度に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150度に設定した。使用されたカラムは、3本のAgilent「Mixed B」30cm 20ミクロン線形混合床カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含んでいた。溶媒源は、窒素注入された使用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は1.0ミリリットル/分であった。
【0087】
標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準のピーク分子量を、(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に説明されているように)。:
【数6】
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0088】
第3次と第5次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。NIST標準NBS 1475が52,000Mwで得られるように、カラム分解能およびバンドの広がり効果を補正するために、Aに対してわずかな調整(約0.415~0.44)を行った。
【0089】
GPCカラムセットの合計プレート計数を、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解された)Eicosaneで行った。
【数7】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数8】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は、24,000超となるべきであり、対称性は、0.98~1.22の間となるべきである。
【0090】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製された、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含む)を添加した。試料を、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解した。
【0091】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、およびMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各々の等間隔のデータ回収点(i)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および式1からの点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用した、式4~6によるPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用した、GPC結果に基づいた。
【数9】
【数10】
【数11】
【0092】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))を狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークと整合することによって各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に較正するために使用された。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量は式7のように計算される。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容される流量補正は、有効流量が見かけ流量の+/-2%以内であるべきである。
【0093】
流量(有効)=流量(見かけ)*(RV(FM較正済み)/RV(FM試料))(式7)
【0094】
GPCによるMWDからの象限の計算
クロマトグラフィーシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正および従来の分子量モーメントの計算および分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に記載されている方法に従って実施された。
【0095】
プロットされたGPCからの分子量分布(dWf/dLogM対LogM)は、定義上、1に相当する面積を有する。このプロットを、高分子量から低分子量に統合した4つの等価面積切片(重量分率=0.25)に分割した。各象限(25%、50%、75%、100%)について、以下の式8A~8Dのとおり、平均logMを決定した。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【0096】
ここで、MWD領域は、各dWf/dLogMにおいて、最も高い検出可能なlogMwから最も低い検出可能なlogMwに統合され、各スライス(i)は、幅で0.01LogMwを表す。各象限の平均GPC分子量は、次のように計算される:10^LogM象限とこの値は、象限内の各スライス(i)で10^LogMiの平均を取ることによって得られる数学的平均とは異なる。
次のGPCグラフ(図2)は、Affinity(商標)PL 1880G、Affinity(商標)PL 1860GおよびAttane(商標)4203Gの中間分子量分布を示す。グレードの平均分子量数を見ると、Affinity(商標)PL 1880GとAffinity(商標)PL 1860Gを比較すると、主な違いがMzで見出され、最後の樹脂中に存在する高分子量分画の影響を受けることに気づくことができる。
【表3】

【表4】
【0097】
各層に1つの押出機を使用した。各押出機を環状共押出ダイに接続し、そこから熱可塑性樹脂を共押出して一次チューブを形成した。各層についての樹脂混合物を、ホッパーから付着した単一スクリュー押出機に供給し、混合物を熱可塑し、三層共押出ダイを通して一次チューブ中に押出した。層Bについての押出機バレル温度は、約120~150℃であり、層Aについてはおよび層Cについては、約140~165℃であった。共押出ダイ温度プロファイルを約160~180℃に設定した。処理条件を100kg/時、初期厚さ500ミクロン、最終厚さ70ミクロンを使用して取得し、第2の気泡延伸前の材料温度は116℃である
【0098】
本開示の耐穿刺性層、この場合はAffinity(商標)PL 1860Gを使用する利点を評価するために、次の穿刺試験を実施した。ASTM F1306.90-ダウ法を使用したシャープエッジ穿刺および丸穿刺試験。
【表5】
【0099】
本発明の構造は、元の構造と比較して、改良された穿刺力および穿刺エネルギーを有することが見出された。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムであって、前記多層熱可塑性フィルムが、0.890g/cm ~0.910g/cm の密度および190℃/2.16kgで測定される0.20g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーで形成された耐穿刺性層を少なくとも含み、前記ポリエチレン系プラストマーが、
5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM 25% と、
2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)および2~2.5のMz/Mw値と、
CEFによって決定される、60~400のコモノマー分布定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する40~85℃の単一のSCBDピークと、
1.0~5.5のZSVR値と、を有し、
前記多層熱可塑性フィルムは、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される、熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルム。
(2) 前記ポリエチレン系プラストマーが、0.75g/10分~1g/10分のASTM D-1238、条件190℃/2.16kgによって測定されるメルトインデックス(MI)を有する、上記(1)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(3) 前記ポリエチレン系プラストマーが、ASTM D-792に従って決定される、0.900g/cm ~0.910g/cm の密度を有する、上記(1)または(2)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(4) 前記耐穿刺性層が、ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントのエチレン/酢酸ビニルコポリマーをさらに含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(5) 前記耐穿刺性層の前記ポリエチレン系プラストマーが、前記ブレンドの重量に基づいて5重量パーセント~50重量パーセントの不均一に分岐した超低密度(ultra-low density)ポリエチレンまたは不均一に分岐した超低密度(very-low density)ポリエチレンとブレンドされる、上記(1)~(3)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(6) 前記耐穿刺性層の前記ポリエチレン系プラストマーが、3~20個の炭素原子の少なくとも1つのα-オレフィンを有するエチレンインターポリマーである、上記(1)~(3)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(7) 前記耐穿刺性層の前記ポリエチレン系プラストマーが、エチレン/α-オレフィンコポリマーである、上記(1)~(3)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(8) 前記エチレン/α-オレフィンコポリマーが、エチレン/1-オクテンコポリマーである、上記(7)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(9) 前記多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層に隣接する第2のポリマー層をさらに含み、前記多層熱可塑性フィルムの前記耐穿刺性層および前記第2のポリマー層が、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される、上記(1)~(8)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(10) 前記第2のポリマー層が、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコールまたは線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物 からなる群から選択されるポリマーから形成される、上記(9)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(11) 前記多層熱可塑性フィルムが、前記耐穿刺性層と前記第2のポリマー層との間に配置された第3のポリマー層をさらに含み、前記多層熱可塑性フィルムの前記耐穿刺性層、前記第2のポリマー層および前記第3のポリマー層が、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される、上記(9)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(12) 前記第2のポリマー層および前記第3のポリマー層が、独立して、超低密度(ultra-low density)ポリエチレン、超低密度(very-low density)ポリエチレン、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンのコポリマー、エチレンビニルアルコールまたは線状低密度ポリエチレングラフト化マレイン酸無水物からなる群から選択されるポリマーから形成される、上記(9)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(13) 前記第2のポリマー層の前記ポリマーが、前記第3のポリマー層の前記ポリマーとは構造的に異なるポリマーである、上記(12)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(14) 前記第3のポリマー層が、エチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、前記第2のポリマー層が、エチレン/α-オレフィンインターポリマーおよび超低密度(ultra-low density)ポリエチレンを含む、上記(12)に記載の多層熱可塑性フィルム。
(15) 前記二軸配向ポリマーフィルムが、前記耐穿刺性層に隣接するバリアポリマー層およびタイ層をさらに含み、前記二軸配向ポリマーフィルムの前記耐穿刺性層ならびにバリアおよびタイ層のセットが、2:1~10:1のブローアップ比で60℃~120℃の温度で二軸延伸される、上記(1)~(14)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(16) 前記多層熱可塑性フィルムが、ダブルバブルプロセスによって調製される、上記(1)~(15)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(17) 前記多層熱可塑性フィルムが、食品物品の包装において使用するのに適している、上記(1)~(16)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(18) 前記ポリエチレン系プラストマーが、5.2~5.6の値を有するGPC象限の上部25%のlogM 25% を有する、上記(1)~(17)のいずれかに記載の多層熱可塑性フィルム。
(19) 食品物品を包装するための袋の製造で使用するのに適した熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成する方法であって、前記方法は、
ASTM D-792に従って決定される0.890g/cm ~0.910g/cm の密度およびASTM D-1238、条件190℃/2.16kgによって測定される0.20g/10分~1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するポリエチレン系プラストマーを有する第1の押出気泡を形成することであって、前記ポリエチレン系プラストマーが、
5.1~5.7の値を有するGPC象限の上部25%のlogM 25% と、
2.5~3の中間分子量分布(Mw/Mn)および2~2.5のMz/Mw値と、
CEFによって決定される、60~400のコモノマー分配定数値および85℃を上回る3%未満の質量分率を有する40~85℃の単一のSCBDピークと、
1.0~5.5のZSVR値と、を有する、形成することと、
前記第1の押出気泡を崩壊し、第1の多層構造を形成することと、
前記第1の多層構造を、5℃~50℃の温度を有する第1の水浴に通して、前記第1の多層構造を冷却することであって、前記第1の多層構造が、前記第1の水浴の前記水中で0.5~50秒の滞留時間を有する、冷却することと、
前記第1の多層構造を、80℃~100℃の温度を有する第2の水浴に通して、前記第1の水浴から来る前記第1の多層構造を温めることであって、前記第1の多層構造が、前記第2の水浴の前記水中で5~50秒の滞留時間を有する、温めることと、
前記第1の多層構造を60℃~120℃の温度に加熱することと、
前記第1の多層構造が前記60℃~120℃の温度に加熱された状態で第2の押出気泡を形成することであって、前記第1の多層構造が、前記第2の押出気泡を形成する際に2:1~10:1のブローアップ比を有する、形成することと、
前記第2の押出気泡を崩壊し、前記熱収縮性二軸延伸多層熱可塑性フィルムを形成することと、を含む、方法。
図1
図2