(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】修飾された糸状菌宿主細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 1/15 20060101AFI20241224BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20241224BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/38 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/40 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/42 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/26 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20241224BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20241224BHJP
C07K 14/37 20060101ALI20241224BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C12N1/15 ZNA
C12N9/02
C12N15/53
C12N9/00
C12N9/38
C12N9/40
C12N9/42
C12N9/26
C12N9/90
C12N9/10
C07K14/37
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2021529853
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 US2019063415
(87)【国際公開番号】W WO2020112881
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】マイケル レイ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ヨコムスン
(72)【発明者】
【氏名】井上 千穂
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/067599(WO,A1)
【文献】特表2018-520661(JP,A)
【文献】国際公開第2013/028544(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/001049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
C12N 9/00-99
C12N 15/00-90
C07K 14/00-825
C12P 21/00-08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の分
泌ポリペプチドを産生する突然変異糸状菌宿主細胞であって、
前記突然変異糸状菌宿主細胞が、目的の前記分
泌ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物を含み、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、非突然変異親細胞と比べて、修飾されるか、切断されるか、部分的に若しくは完全に不活性化されるか、低下したレベルで存在するか、又は除去され、且つ前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/若しくはVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフを含み;且つ前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び/又は配列番号26に示される成熟アミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、
前記宿主細胞の属が、トリコデルマ(Trichoderma)又はアスペルギルス(Aspergillus)である、突然変異糸状菌宿主細胞。
【請求項2】
アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アキュレティヌス(Aspergillus aculetinus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・フェティデュス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・リュウキュウエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスベルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)である、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項4】
目的の前記分泌ポリペプチドが、天然又は異種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、配列番号1、配列番号4、配列番号7及び/又は配列番号10に示されるゲノムDNA配列に対して少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる遺伝子によってコードされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項6】
前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、配列番号2、配列番号5、配列番号8及び/又は配列番号11に示されるcDNA配列に対して少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる遺伝子によってコードされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項7】
前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、前記コード遺伝子のナンセンス若しくはフレームシフト突然変異により、前記コード遺伝子の部分的若しくは完全な欠失により、又は前記コード遺伝子のサイレンシングにより、修飾されるか、切断されるか、部分的若しくは完全に不活性化されるか、非突然変異親細胞と比べて低下したレベルで存在するか、又は除去される、請求項1~6のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項8】
非突然変異親宿主細胞と比べて、目的の分泌ポリペプチドの改善された収率を有する突然変異糸状菌宿主細胞を産生する方法であって、特定の順序でなく、
a)糸状菌宿主細胞を、目的の前記分泌ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物で形質転換するステップと;
b)推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼを修飾するか、切断するか、部分的に若しくは完全に不活性化するか、そのレベルを低下させるか、又は除去するため、前記宿主細胞を突然変異させるステップと、を含み、ここで前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/若しくはVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフを含み;且つ前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び/又は配列番号26に示される成熟アミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、
前記宿主細胞の属が、トリコデルマ(Trichoderma)又はアスペルギルス(Aspergillus)である、方法。
【請求項9】
前記糸状菌宿主細胞が、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アキュレティヌス(Aspergillus aculetinus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・フェティデュス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・リュウキュウエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスベルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記糸状菌宿主細胞が、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
目的の前記分泌ポリペプチドが、酵素である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、配列番号1、配列番号4、配列番号7及び/又は配列番号10で示されるゲノムDNA配列に対して少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる遺伝子によってコードされる、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、配列番号2、配列番号5、配列番号8及び/又は配列番号11で示されるcDNA配列に対して少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる遺伝子によってコードされる、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、前記コード遺伝子のナンセンス若しくはフレームシフト突然変異により、前記コード遺伝子の部分的若しくは完全な欠失により、又は前記コード遺伝子のサイレンシングにより、修飾されるか、切断されるか、部分的若しくは完全に不活性化されるか、非突然変異親細胞と比べて低下したレベルで存在するか、又は除去される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
目的の分泌ポリペプチドを産生する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の突然変異糸状菌宿主細胞を前記分泌ポリペプチドの前記産生に対して実用的な条件下で培養するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に対する参照
本願は、コンピュータで読み込み可能な形式の配列表を含む。コンピュータで読み込み可能な形式は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、修飾された糸状菌細胞及びかかる細胞を産生するための方法、並びにその中で目的の分泌ポリペプチドを産生する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糸状菌宿主細胞は、目的の多種多様なポリペプチドの工業生産を意図して広範に利用される。強力な研究努力は、糸状菌宿主細胞における目的のポリペプチドの産生を改善する、特に生産性及び/又は収率を改善することを対象とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、酵素産生宿主細胞内で予測された推定上のステロイドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を修飾することにより、酵素の改善された生産性及び/又は収率がもたらされることを見出した。
【0005】
したがって、第1の態様では、本発明は、目的の分泌ポリペプチドを産生する突然変異糸状菌宿主細胞であって、ここで推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、非突然変異親細胞と比べて、修飾されるか、切断されるか、部分的に若しくは完全に不活性化されるか、低下したレベルで存在するか、又は除去され、且つ前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/若しくはVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフを含み;好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも2つ;より好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも3つ又は4つを含み;最も好ましくは、保存されたモチーフの5つ全部を含む、突然変異糸状菌宿主細胞を対象とする。
【0006】
推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼを修飾するか、切断するか、不活性化するか、そのレベルを低下させるか、又は完全に除去することは、当該技術分野で公知の任意の好適な方法、例えば、前記遺伝子の天然プロモーターの異種プロモーター、好ましくは調節性プロモーターとの置換によりコード遺伝子の発現を低減することにより、実施されてもよい。推定上のステロイドデヒドロゲナーゼのレベルを低下させるための別の方法としては、ユビキチンドメインなどの不安定化ドメインをタンパク質に加え、それによりタンパク質の半減期を減少させることであり得る。さらに、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼを不活性化するか、そのレベルを低下させるか、又は完全に除去するための別の方法は、1つ以上のステロイドデヒドロゲナーゼ阻害剤を同時発現させるか又は添加することである。発現を完全に除去するための便宜的方法の例が、遺伝子欠失、遺伝子置換又は遺伝子中断であり、それは例えば、ナンセンス突然変異をコード配列に導入することによる。コード配列を修飾するための別の方法としては、コード配列の一部を欠失させるか、又はコード配列を突然変異させることによりイントロンプロセシングを改変させるかのいずれかにより、内部欠失を導入することであり得る。さらに、推定上のステロイドデヒドロゲナーゼを不活性化するための別の方法としては、RNA干渉若しくはsiRNAを用いてその発現を抑制するか、又はプロモーターを有し、おそらくは推定上のステロイドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の末端の方への転写の方向を有するターミネーターが欠如した構築物であって、RNAポリメラーゼの衝突、又はmRNA分子の相補的配列を伴った形成が原因で生じ得るmRNAの不安定化に起因し、推定上のステロイドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写の立体的妨害をもたらすものの挿入であり得る。
【0007】
したがって、第2の態様では、本発明は、非突然変異親宿主細胞と比べて、目的の分泌ポリペプチドの改善された収率を有する突然変異糸状菌宿主細胞を産生する方法であって、特定の順序でなく、
a)糸状菌宿主細胞を、目的の分泌ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物で形質転換するステップと;
b)推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼを修飾するか、切断するか、部分的に若しくは完全に不活性化するか、そのレベルを低下させるか、又は除去するため、宿主細胞を突然変異させるステップと、を含み、ここで前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/若しくはVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフ;好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも2つ;より好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも3つ若しくは4つを含み;最も好ましくは、保存されたモチーフの5つ全部を含む、方法に関する。
【0008】
本発明の最終的態様は、目的の分泌ポリペプチドを産生する方法であって、
a)いずれかの先行する請求項に記載の突然変異糸状菌宿主細胞を分泌ポリペプチドの産生に対して実用的な条件下で培養するステップと;任意選択的には、
b)目的の分泌ポリペプチドを回収するステップと、
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】pNJOC577のプラスミドマップを示す。
【
図2】pNJOC383のプラスミドマップを示す。
【
図3A】配列番号3、6、9及び12において同定された4つの推定上のステロイドデヒドロゲナーゼの複数の整列化を示す。同一残基が黒色ボックスにより示される。4つのタンパク質のうちの3つにおいて保存された残基が灰色ボックスにより示される。タンパク質は、デフォルトパラメータを有するMUSCLEアルゴリズムバージョン3.8.31を用いて整列される(Edgar,R.C.(2004).Nucleic Acids Research,32(5),1792-1797)。
【
図4】pNJOC569のプラスミドマップを示す。
【
図5】NJOC587株(対照)及びNJOC618-81D株(ステロイドデヒドロゲナーゼ突然変異体)における相対的なリゾチームの生産性/収率(LSU(F)/ml)を示す。発酵終了時の対照におけるLSU(F)/mlデータは、データを正規化するために使用された。図面では、伝統的な小数点の代わりの小数セパレータとして、コンマが使用されている。
【
図6】pTmmD-Tl_リパーゼのプラスミドマップを示す。
【
図7】NJOC600-2A株(対照)及びNJOC609-1A株(ステロイドデヒドロゲナーゼ突然変異体)における相対的なリパーゼの生産性/収率(LU(LXP)/ml)を示す。発酵終了時の対照におけるLU(LXP)/mlデータは、データを正規化するために使用された。図面では、伝統的な小数点の代わりの小数セパレータとして、コンマが使用されている。
【
図8】pSMai326のプラスミドマップを示す。
【
図9】NJOC608-1B株(対照)及びNJOC617-77C株(ステロイドデヒドロゲナーゼ突然変異体)における相対的なキサンタナーゼの生産性/収率を示す。発酵終了時の対照におけるキサンタナーゼの収率は、データを正規化するために使用された。図面では、伝統的な小数点の代わりの小数セパレータとして、コンマが使用されている。
【
図10】pTmmD-Mf_リゾチームのプラスミドマップを示す。
【
図11】NJOC601-5A株(対照)及びNJOC610-2B株(ステロイドデヒドロゲナーゼ突然変異体)における相対的なM.f.リゾチームの生産性/収率(LSU(A)/ml)を示す。発酵終了時の対照におけるリゾチームの収率は、データを正規化するために使用された。図面では、伝統的な小数点の代わりの小数セパレータとして、コンマが使用されている。
【
図12】pIHAR473のプラスミドマップを示す。
【
図13】pAT3631のプラスミドマップを示す。
【
図14】AT3091株(対照)及びAT3944株(ステロイドデヒドロゲナーゼ突然変異体)における相対的なフィターゼの生産性/収率を示す。発酵終了時の対照におけるフィターゼの収率は、データを正規化するために使用された。図面では、伝統的な小数点の代わりの小数セパレータとして、コンマが使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
cDNA:「cDNA」という用語は、真核細胞又は原核細胞から得られる成熟したスプライシングされたmRNA分子からの逆転写により調製されることが可能であるDNA分子を意味する。cDNAは、対応するゲノムDNA中に存在し得るイントロン配列を欠いている。初期の一次RNA転写物は、成熟型のスプライシングされたmRNAとして出現する前にスプライシングを含む一連のステップを介して処理されるmRNAの前駆体である。
【0011】
コード配列:「コード配列」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接規定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、一般に、オープンリーディングフレームによって決定されるが、これは、ATG、GTG、又はTTGなどの開始コドンで開始し、TAA、TAG、又はTGAなどの終止コドンで終了する。コード配列は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、又はこれらの組合せのいずれであってもよい。
【0012】
制御配列:「制御配列」という用語は、本発明の成熟型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を意味する。各制御配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して在来(すなわち、同じ遺伝子に由来する)若しくは外来の(すなわち、異なる遺伝子に由来する)ものであっても、又は、相互に在来若しくは外来のものであってもよい。このような制御配列としては、これらに限定されないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターが挙げられる。少なくとも、制御配列は、プロモーター、並びに、転写及び翻訳終止シグナルを含む。制御配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコード領域と制御配列の連結を促進させる特定の制限部位を導入する目的で、リンカーを備えていてもよい。
【0013】
発現:「発現」という用語は、限定するものではないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾及び分泌物を含むポリペプチドの生成に関与するいずれかのステップを含む。
【0014】
発現ベクター:「発現ベクター」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、また、その発現をもたらす制御配列に作動可能にリンクされている直鎖又は環状DNA分子を含む。
【0015】
宿主細胞:「宿主細胞」という用語は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物又は発現ベクターによる形質転換、形質移入、形質導入などに対する感受性を有するあらゆる細胞型を意味する。「宿主細胞」という用語は、複製の最中に生じる突然変異による親細胞と同じではない親細胞のあらゆる子孫を包含する。
【0016】
単離された:「単離された」という用語は、自然界においては生じない形態又は環境にある物質を意味する。単離された物質の非限定的な例としては、(1)いずれかの非天然物質、(2)限定するものではないが、自然界において関連している天然構成成分の1種又は複数種若しくは全てから少なくとも部分的に取り出されたいずれかの酵素、変異体、核酸、タンパク質、ペプチド若しくは補因子を含むいずれかの物質;(3)自然界において見出される物質に対して人為的に修飾されたいずれかの物質;又は、(4)自然界で関連する他の成分に対して物質量の増加により修飾されたいずれかの物質(例えば、宿主細胞中の組み換え産物;物質をコードする遺伝子の複数のコピー;物質をコードする遺伝子と自然界で関連するプロモーターより強力なプロモーターの使用)が挙げられる。単離された物質は、発酵ブロスサンプル中に存在してもよい。
【0017】
成熟ポリペプチド:用語「成熟ポリペプチド」は、翻訳及び任意の翻訳後修飾、例えば、N末端プロセシング、C末端切断、グリコシル化、リン酸化などに後続する最終形態におけるポリペプチドを意味する。宿主細胞が、同じポリヌクレオチドによって発現される2つ以上の異なる成熟ポリペプチド(即ち、異なるC末端及び/又はN末端アミノ酸を有する)の混合物を生成することがあることは当該技術分野で公知である。異なる宿主細胞がポリペプチドを別々に処理し、それ故、ポリヌクレオチドを発現する1つの宿主細胞が、同じポリヌクレオチドを発現する別の宿主細胞に対して、異なる成熟ポリペプチド(例えば、異なるC末端及び/又はN末端アミノ酸を有する)を生成することがあることも当該技術分野で公知である。
【0018】
成熟ポリペプチドコード配列:用語「成熟ポリペプチドコード配列」は、成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0019】
核酸構築物:用語「核酸構築物」は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又は1つ以上の制御配列を含む、通常では天然に存在しないと思われる様式若しくは合成様式で核酸のセグメントを有するように修飾される、一本鎖又は二本鎖のいずれかの核酸分子を意味する。
【0020】
作動可能に連結される:用語「作動可能に連結される」は、制御配列が、ポリヌクレオチドのコード配列に対して、コード配列の発現を誘導するように適切な位置に配置される場合の立体配置を意味する。
【0021】
配列同一性:2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の関連性は、「配列同一性」というパラメータによって表される。本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を用いて判定される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティ及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識された「最長の同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性割合として用いられ、以下のように算出される:
(同等の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)
【0022】
本発明の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(前述のEMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(前述のNeedleman and Wunsch,1970)を用いて判定される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティ及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識された「最長の同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性割合として用いられ、以下のように算出される:
(同等のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)
【0023】
宿主細胞
本発明は、目的の異種ポリペプチドの産生及び分泌を誘導する1つ以上の制御配列に作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞に関する。
【0024】
ポリヌクレオチドを含む構築物又はベクターは、前述の通り、染色体組込み体又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように宿主細胞に導入される。用語「宿主細胞」は、複製中に生じる突然変異が理由で親細胞と同一でない、親細胞の任意の子孫を包含する。宿主細胞の選択は、多くはポリペプチドをコードする遺伝子及びその供給源に依存することになる。
【0025】
宿主細胞は、真菌細胞であってもよい。「真菌」は、本明細書で用いられるとき、アスコミコタ門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)、並びに卵菌門(Oomycota)及びすべての栄養胞子形成菌を含む(Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UKによる定義の通り)。
【0026】
本発明の真菌宿主細胞は、糸状菌細胞である。「糸状菌」は、真菌亜門(Eumycota)及び卵菌亜門(Oomycota)のすべての糸状形態を含む(Hawksworth et al.,1995,上記による定義の通り)。糸状菌は、一般に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖からなる菌糸体壁によって特徴づけられる。栄養増殖は、菌糸伸長によるもので、炭素異化作用は、偏性好気性である。
【0027】
糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ブジェルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コプリナス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ケカビ(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)、パンカビ(Neurospora)、パエキロミケス(Paecilomyces)、アオカビ(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレウロタス(Pleurotus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロマイセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、ホウロクタケ(Trametes)、又はトリコデルマ(Trichoderma)細胞であってもよい。
【0028】
例えば、糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アキュレティヌス(Aspergillus aculetinus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・フェティデュス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・リュウキュウエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスベルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、ブジェルカンデラ・アダスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベスセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンズランジカム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トロピクム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナタム(Chrysosporium zonatum)、ウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、イチョウタケ(Coriolus hirsutus)、フザリウム・バクトリディオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クロックウェレンス(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼアム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・べネナタム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(mucor miehei)、ミセリオフテラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、アカバンカビ(neurospora crassa)、ペニシリウム・パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、プレウロタス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞であってもよい。
【0029】
真菌細胞は、本質的に公知の様式でのプロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、及び細胞壁の再生を含むプロセスにより形質転換されてもよい。アスペルギルス(Aspergillus)及びトリコデルマ(Trichoderma)宿主細胞の形質転換に適した方法は、欧州特許第238023号明細書、Yelton et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:1470-1474、及びChristensen et al.,1988,Bio/Technology 6:1419-1422に記載されている。フザリウム(Fusarium)種の形質転換に適した方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147-156、及び国際公開第96/00787号パンフレットによって記載されている。
【0030】
一態様では、本発明は、目的の分泌ポリペプチドを産生する突然変異糸状菌宿主細胞であって、ここで推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、修飾されるか、切断されるか、部分的に若しくは完全に不活性化されるか、非突然変異親細胞と比べて低下したレベルで存在するか又は除去され、且つ前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/若しくはVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフを含み;好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも2つ;より好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも3つ若しくは4つを含み;最も好ましくは、保存されたモチーフの5つ全部を含む、突然変異糸状菌宿主細胞に関する。
【0031】
本発明の態様の好ましい実施形態では、糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ブジェルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コプリナス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ケカビ(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)、パンカビ(Neurospora)、パエキロミケス(Paecilomyces)、アオカビ(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレウロタス(Pleurotus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロマイセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、ホウロクタケ(Trametes)、又はトリコデルマ(Trichoderma)からなる群から選択される属に属し;さらにより好ましくは、糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アキュレティヌス(Aspergillus aculetinus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・フェティデュス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・リュウキュウエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスベルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、ブジェルカンデラ・アダスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベスセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)クリソスポリウム・クイーンズランジカム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トロピクム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナタム(Chrysosporium zonatum)、ウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、イチョウタケ(Coriolus hirsutus)、フザリウム・バクトリディオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クロックウェレンス(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼアム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・べネナタム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(mucor miehei)、ミセリオフテラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、アカバンカビ(neurospora crassa)、ペニシリウム・パープロゲナム(Penicillium purpurogenum)、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアータ(Phlebia radiata)、プレウロタス・エリンギ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0032】
好ましくは、目的の分泌ポリペプチドは、天然又は異種であり;好ましくは、分泌ポリペプチドは、酵素であり;好ましくは、酵素は、ヒドロラーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、リアーゼ、オキシドレダクターゼ、又はトランスフェラーゼ、例えば、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エンドグルカナーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、又はβ-キシロシダーゼである。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼは、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び/又は配列番号12で示される成熟アミノ酸配列に対して少なくとも60%同一なアミノ酸配列;配列番号3、配列番号6、配列番号9及び/又は配列番号12で示される成熟アミノ酸配列に対して、好ましくは少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は最も好ましくは少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0034】
好ましくは、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼは、配列番号1、配列番号4、配列番号7及び/又は配列番号10で示されるゲノムDNA配列に対して少なくとも60%同一なヌクレオチド配列;配列番号1、配列番号4、配列番号7及び/又は配列番号10で示されるゲノムDNA配列に対して、好ましくは少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は最も好ましくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる遺伝子によってコードされる。
【0035】
或いは、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼは、配列番号2、配列番号5、配列番号8及び/又は配列番号11で示されるcDNA配列に対して少なくとも60%同一なヌクレオチド配列;配列番号2、配列番号5、配列番号8及び/又は配列番号11で示されるcDNA配列に対して、好ましくは少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は最も好ましくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる遺伝子によってコードされる。
【0036】
好ましい実施形態では、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼは、コード遺伝子のナンセンス若しくはフレームシフト突然変異により、コード遺伝子の部分的若しくは完全な欠失により、又はコード遺伝子のサイレンシングにより、修飾されているか、切断されているか、部分的若しくは完全に不活性化されているか、非突然変異親細胞と比べて低下したレベルで存在しているか、又は除去されている。
【0037】
第2の態様では、本発明は、非突然変異親宿主細胞と比べて、目的の分泌ポリペプチドの改善された収率を有する突然変異糸状菌宿主細胞を産生する方法であって、特定の順序でなく、
a)糸状菌宿主細胞を、目的の分泌ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物で形質転換するステップと;
b)推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼを修飾するか、切断するか、部分的に若しくは完全に不活性化するか、そのレベルを低下させるか、又は除去するため、宿主細胞を突然変異させるステップと、を含み、ここで前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/若しくはVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフ;好ましくは保存されたモチーフの少なくとも2つ;より好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも3つ若しくは4つを含み;最も好ましくは、保存されたモチーフの5つ全部を含む、
方法に関する。
【0038】
核酸構築物
本発明はまた、制御配列と適合性の条件下で、好適な宿主細胞におけるコード配列の発現を指令する1つ又は複数の制御配列に作動可能にリンクされた、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物にも関する。
【0039】
ポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現をもたらすために様々な方法で操作してもよい。ベクターに挿入する前のポリヌクレオチドの操作は、発現ベクターに応じて望ましいか、又は必要となり得る。組換えDNA法を使用してポリヌクレオチドを修飾する技術は、当技術分野で公知である。
【0040】
制御配列は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のための宿主細胞によって認識されるポリヌクレオチドであるプロモーターであり得る。プロモーターは、ポリペプチドの発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、ミュータント、切断及びハイブリッドプロモーターを含む宿主細胞において転写活性を示すいずれかのポリヌクレオチドであり得、並びに、宿主細胞に対して相同性又は非相同性である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られ得る。
【0041】
糸状真菌宿主細胞において本発明の核酸構築物の転写を指令する好適なプロモーターの例としては、以下:アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ(amdS)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)中性α-アミラーゼ(例えば、amyB)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)酸安定α-アミラーゼ(asaA)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)又はアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)アルカリ性タンパク分解酵素(alpA)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ(tpiA)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(国際公開第96/00787号パンフレット)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ(国際公開第00/56900号パンフレット)、フザリウム・ベネナツム・ダリア(Fusarium venenatum Daria)(国際公開第00/56900号パンフレット)、フザリウム・ベネナツム・クイン(Fusarium venenatum Quinn)(国際公開第00/56900号パンフレット)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)β-グルコシダーゼ、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼI、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼIII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)β-キシロシダーゼ、及びトリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)翻訳伸長因子、並びに、NA2-tpiプロモーター(非翻訳リーダーが、アスペルギルス属(Aspergillus)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーで置換された、アスペルギルス属(Aspergillus)中性α-アミラーゼ遺伝子由来の修飾プロモーター;非限定的例としては、非翻訳リーダーがアスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーで置換された、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)中性α-アミラーゼ遺伝子由来の修飾プロモーターが挙げられる)の遺伝子から得られるプロモーター;並びに、その突然変異体、切断及びハイブリッドプロモーターがある。その他のプロモーターは、米国特許第6,011,147号明細書に記載されている。
【0042】
制御配列はまた、宿主細胞によって認識されて転写を終結させる転写ターミネーターであり得る。ターミネーターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’-末端に作動可能にリンクする。本発明においては、宿主細胞において機能するいずれかのターミネーターが用いられ得る。
【0043】
糸状真菌宿主細胞の好ましいターミネーターは、下記の遺伝子から得られる:アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ、アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)α-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)β-グルコシダーゼ、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼI、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼI、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼIII、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)β-キシロシダーゼ、並びに、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)翻訳伸長因子。
【0044】
制御配列は、プロモーターの下流で、且つ遺伝子のコード配列の上流のmRNA安定化領域であってもよく、これは、遺伝子の発現を増大させる。
【0045】
制御配列はまた、リーダー、すなわち、mRNAの非翻訳領域であってもよく、これは、宿主細胞による翻訳にとって重要である。リーダーは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’-末端に作動可能にリンクさせる。宿主細胞において機能性であれば、どんなリーダーを用いてもよい。
【0046】
糸状真菌宿主細胞の好ましいリーダーは、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ及びアスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られる。
【0047】
制御配列はまた、ポリヌクレオチドの3’-末端に作動可能にリンクし、転写された場合に、ポリアデノシン残基を転写mRNAに負荷するシグナルとして宿主細胞により認識される配列であるポリアデニル化配列であり得る。宿主細胞において機能するポリアデニル化配列のいずれかが用いられ得る。
【0048】
糸状真菌宿主細胞の好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)α-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られる。
【0049】
制御配列はまた、ポリペプチドのN-末端にリンクしたシグナルペプチドをコードし、及び、ポリペプチドを細胞の分泌経路に送るシグナルペプチドコード領域であり得る。ポリヌクレオチドのコード配列の5’-末端は、ポリペプチドをコードするコード配列のセグメントと共に、翻訳読み枠に元々リンクしたシグナルペプチドコード配列を本質的に含有し得る。又は、コード配列の5’-末端は、コード配列に対して外来性のシグナルペプチドコード配列を含有し得る。コード配列がシグナルペプチドコード配列を元々含有していない場合には、外来性のシグナルペプチドコード配列が必要とされる場合がある。又は、外来性のシグナルペプチドコード配列は単に、ポリペプチドの分泌を増強するために天然シグナルペプチドコード配列を置き換えてもよい。しかしながら、発現ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に送るいずれかのシグナルペプチドコード配列がもちいられてもよい。
【0050】
糸状真菌宿主細胞の効果的なシグナルペプチドコード配列は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)中性アミラーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)エンドグルカナーゼV、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)リパーゼ及びリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコード配列である。
【0051】
制御配列はまた、ポリペプチドのN-末端でプロペプチド位置をコードするプロペプチドコード配列であり得る。得られたポリペプチドは、酵素原又はプロポリペプチド(又は、いくつかの場合においてチモーゲン)として公知である。プロポリペプチドは、一般に非活性であり、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒又は自己触媒切断によって活性ポリペプチドに転換されることが可能である。プロペプチドコード配列は、古草菌(Bacillus subtilis)アルカリ性タンパク分解酵素(aprE)、古草菌(Bacillus subtilis)中性タンパク分解酵素(nprT)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)ラッカーゼ(国際公開第95/33836号パンフレット)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)α-因子の遺伝子から得られ得る。
【0052】
シグナルペプチド及びプロペプチド配列の両方が存在する場合、プロペプチド配列はポリペプチドのN-末端に隣接して位置されており、また、シグナルペプチド配列は、プロペプチド配列のN-末端に隣接して位置されている。
【0053】
宿主細胞の増殖に対してポリペプチドの発現を調節する調節配列を付加することが望ましい場合もある。調節配列の例は、調節化合物の存在を含む化学的又は物理的刺激に応じて、遺伝子の発現をオンオフさせるものである。糸状菌においては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)TAKAα-アミラーゼプロモーター、及びアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼプロモーター、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼIプロモーター及びトリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼIIプロモーターが用いられ得る。調節配列の他の例は、遺伝子増幅を可能とするものである。真核系において、これらの調節配列は、メトトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び、重金属を伴って増幅されるメタロチオネイン遺伝子を含む。これらの事例において、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、調節配列と作動可能にリンクしているであろう。
【0054】
発現ベクター
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド、プロモーター、並びに、転写及び翻訳終止シグナルを含む組換え発現ベクターに関する。種々のヌクレオチド及び制御配列が一緒になって、このような部位でポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの挿入又は置換を可能とするために1つ又は複数の好都合な制限部位を含み得る組換え発現ベクターが生成される。又は、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む核酸構築物を発現に適切なベクターに挿入することにより発現され得る。発現ベクターの形成において、コード配列は、コード配列が、発現に適切な制御配列と作動可能にリンクするようベクター中に位置されている。
【0055】
組換え発現ベクターは、組換えDNA法に簡便に供されることが可能であり、ポリヌクレオチドの発現をもたらすことが可能であるいずれかのベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)であり得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞に対するベクターの親和性に応じることとなる。ベクターは、直鎖又は閉鎖された環状プラスミドであり得る。
【0056】
ベクターは、例えばプラスミド、染色体外要素、微小染色体又は人工染色体といった、自己複製ベクター(すなわち、染色体外のエンティティとして存在し、その複製が染色体複製とは無関係なベクター)であり得る。ベクターは、自己複製を確実とするための何らかの手段を含有し得る。又は、ベクターは、宿主細胞に導入された際に、ゲノム中に統合され、及び、中に統合された染色体と一緒に複製されるものであり得る。しかも、単一のベクター若しくはプラスミド、又は、一緒になって、宿主細胞のゲノムに導入される全DNAを含有する2つ以上のベクター若しくはプラスミド、又は、トランスポゾンが用いられてもよい。
【0057】
ベクターは、形質転換、形質移入、形質導入などされた細胞の選択を容易とする1つ又は複数の選択マーカーを含有することが好ましい。選択マーカーは、その生成物が、殺生剤又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体に対する原栄養性などをもたらす遺伝子である。
【0058】
ー
糸状真菌宿主細胞に使用される選択マーカーとして、限定するものではないが、adeA(ホスホリボシルアミノイミダゾール-スクシノカルボキサミドシンターゼ)、adeB(ホスホリボシル-アミノイミダゾールシンターゼ)、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、及びtrpC(アントラニル酸シンターゼ)、並びにこれらの同等物が挙げられる。アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)amdS及びpyrG遺伝子並びにストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)bar遺伝子が、アスペルギルス属(Aspergillus)細胞での使用に好ましい。adeA、adeB、amdS、hph、及びpyrG遺伝子が、トリコデルマ属(Trichoderma)細胞での使用に好ましい。
【0059】
選択マーカーは、国際公開第2010/039889号パンフレットに記載されている通り、二重選択マーカー系であってもよい。一態様では、二重選択マーカーは、hph-tk二重選択マーカー系である。
【0060】
ベクターは、宿主細胞のゲノムへのベクターの統合、又は、ゲノムとは無関係の細胞中のベクターの自律複製を許容する要素を含有することが好ましい。
【0061】
宿主細胞ゲノムへの統合に関して、ベクターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列、又は、相同的若しくは非相同的組換えによるゲノムへの統合に係るベクターのいずれかの他の要素に依存し得る。又は、ベクターは、染色体における正確な位置での宿主細胞のゲノムへの相同的組換えによる統合をもたらす追加のポリヌクレオチドを含有していてもよい。正確な位置で統合される可能性を高めるために、統合要素は、相同的組換えの確率を高めるために対応する標的配列に対して高度の配列同一性を有する、100~10,000塩基対、400~10,000塩基対及び800~10,000塩基対などの十分な数の核酸を含有しているべきである。統合要素は、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同的であるいずれかの配列であり得る。さらに、統合要素は、非コーディング又はコーディングポリヌクレオチドであり得る。他方で、ベクターは、非相同的組換えにより宿主細胞のゲノムに統合され得る。
【0062】
部位特異的ゲノム組込みを保証するための別の効率的方法は、国際公開第2012/160093号パンフレット及び米国特許出願公開第2018/0037897号明細書に記載の通り、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)フリッパーゼ(FLP)及びFRTフリッパーゼ認識配列を使用する、発現カセットの部位特異的な標的化された組込みにおけるゲノム遺伝子座の各々に挿入される、FRT部位、例えばFRT-F及びFRT-F3の使用である。
【0063】
自律複製に関して、ベクターは、対象の宿主細胞におけるベクターの自律的な複製を可能とする複製起点をさらに含んでいてもよい。複製起点は、細胞において機能する自律複製を媒介するいずれかのプラスミドレプリケータであり得る。「複製起点」又は「プラスミドレプリケータ」という用語は、インビボでのプラスミド又はベクターの複製を可能とするポリヌクレオチドを意味する。
【0064】
糸状真菌細胞において有用な複製起点の例は、AMA1及びANS1(Gems et al.,1991,Gene 98:61-67;Cullen et al.,1987,Nucleic Acids Res.15:9163-9175;国際公開第00/24883号パンフレット)である。AMA1遺伝子の単離及びAMA1遺伝子を含むプラスミド又はベクターの構築は、国際公開第00/24883号パンフレットに開示されている方法に従って達成可能である。
【0065】
本発明のポリヌクレオチドの2つ以上のコピーが宿主細胞に挿入されて、ポリペプチドの生成が高められてもよい。ポリヌクレオチドのコピーの数は、配列の少なくとも1つの追加のコピーを宿主細胞ゲノムに統合することにより、又は、増幅可能な選択マーカー遺伝子をポリヌクレオチドに含めることにより増加させることが可能であり、ここで、選択マーカー遺伝子の増幅されたコピー、したがって、ポリヌクレオチドの追加のコピーを含有する細胞は、適切な選択可能な薬剤中で細胞を培養することにより選択可能である。
【0066】
上記の要素を連結して本発明の組換え発現ベクターを構築するために用いられる手法は、当業者に周知である(例えば、前述のSambrook et al.,1989を参照のこと)。
【0067】
活性の除去又は低減
本発明はまた、推定上のステロイドデヒドロゲナーゼを修飾するか、切断するか、部分的に若しくは完全に不活性化するか、そのレベルを低下させるか、又は除去するため、宿主細胞を突然変異させるステップを含む方法であって、ここで前記推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼが、YGAR及び/又はVPHS[W/Y]F及び/若しくはQC[A/V/S]RRL及び/若しくはLKKYTLP及び/若しくはCPHYTから選択される少なくとも1つの保存されたアミノ酸モチーフ;好ましくは保存されたモチーフの少なくとも2つ;より好ましくは、保存されたモチーフの少なくとも3つ若しくは4つを含み;最も好ましくは、保存されたモチーフの5つ全部を含む、方法に関する。
【0068】
突然変異細胞は、当該技術分野で周知の方法、例えば、挿入、破壊、置換、又は欠失を用いて、ポリヌクレオチド又はその相同体の発現を低減又は除去することにより構築されてもよい。好ましい態様では、ポリヌクレオチドの発現は、改変、低減又は除去される。改変、低減又は除去されるべきポリヌクレオチドは、例えば、活性にとって必須であるコード領域又はその一部、又はコード領域の発現にとって必要とされる調節エレメントにおいて、突然変異又は修飾されてもよい。かかる調節又は制御配列の例が、プロモーター配列又はその機能的部分、即ちポリヌクレオチドの発現に影響するのに十分な部分であってもよい。可能な修飾についての他の制御配列として、限定はされないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナルペプチド配列、転写ターミネーター、及び転写活性化因子が挙げられる。
【0069】
ポリヌクレオチドの修飾又は不活性化は、親細胞に突然変異誘発を施し、ポリヌクレオチドの発現が低減又は除去されている場合の突然変異細胞について選択することにより実施されてもよい。突然変異誘発は、特定であっても又はランダムであってもよいが、例えば、好適な物理的若しくは化学的突然変異誘発剤の使用により、好適なオリゴヌクレオチドの使用により、又はDNA配列にPCR生成突然変異誘発を施すことにより、実施されてもよい。さらに、突然変異誘発は、これらの突然変異誘発剤の任意の組み合わせの使用により実施されてもよい。
【0070】
本目的に適した物理的又は化学的突然変異誘発剤の例として、紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、O-メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホン酸(EMS)、重亜硫酸ナトリウム、ギ酸、及びヌクレオチド類似体が挙げられる。
【0071】
かかる薬剤が使用されるとき、突然変異誘発は、典型的には、突然変異誘発対象の親細胞を、好適な条件下で選択された突然変異誘発剤の存在下でインキュベートし、遺伝子の発現低下又は無発現を示す突然変異細胞についてスクリーニング及び/又は選択することにより実施される。
【0072】
ポリヌクレオチド又はその相同体の修飾又は不活性化は、遺伝子又はその転写若しくは翻訳に必要とされる調節エレメントにおける1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換、又は欠失により、達成されてもよい。例えば、ヌクレオチドは、停止コドンの導入、開始コドンの除去、又はオープンリーディングフレームにおける変化又はイントロンプロセシングをもたらすように、挿入又は除去されてもよい。かかる修飾又は不活性化は、当該技術分野で公知の方法に従い、部位特異的突然変異誘発又はPCR生成突然変異誘発により、達成されてもよい。原則的に修飾は、インビボで、即ち直接的に修飾対象のポリヌクレオチドを発現する細胞上で実施されてもよいが、修飾が以下に例示のようにインビトロで実施されることが好ましい。
【0073】
標的化遺伝子を欠失させるか又は破壊するための方法は、例えば、Miller,et al(1985.Mol.Cell.Biol.5:1714-1721);国際公開第90/00192号パンフレット;May,G.(1992.Applied Molecular Genetics of Filamentous Fungi.J.R.Kinghorn and G.Turner,eds.,Blackie Academic and Professional,pp.1-25);及びTurner,G.(1994.Vectors for Genetic Manipulation.S.D.Martinelli and J.R.Kinghorn,eds.,Elsevier,pp.641-665)により記載されている。
【0074】
ポリヌクレオチドの発現を除去又は低減するための便宜的方法の例は、遺伝子置換、遺伝子欠失、遺伝子編集又は遺伝子破壊の技術に基づく。例えば、遺伝子破壊法において、内因性ポリヌクレオチドに対応する核酸配列は、欠損核酸配列を生成するため、インビトロで突然変異誘発され、次いで欠損遺伝子を生成するため、親細胞に形質転換される。相同組換えにより、欠損核酸配列は、内因性ポリヌクレオチドを置換する。欠損ポリヌクレオチドが、ポリヌクレオチドが修飾又は破壊されている形質転換体の選択に使用されてもよいマーカーもコードすることが望ましいことがある。一態様では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のような選択可能マーカーで破壊される。
【0075】
本発明はまた、細胞内で活性を有するポリペプチドの発現を阻害する方法であって、二本鎖RNA(dsRNA)分子を細胞に投与するか又は細胞内で発現させることを含み、ここでdsRNAが、ポリヌクレオチド又はその相同体の部分配列を含む、方法に関する。好ましい態様では、dsRNAは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25又はそれ以上の二本鎖ヌクレオチド長である。
【0076】
dsRNAは、好ましくは低分子干渉RNA(siRNA)又はマイクロRNA(miRNA)である。好ましい態様では、dsRNAは、転写を阻害するための低分子干渉RNAである。別の好ましい態様では、dsRNAは、翻訳を阻害するためのマイクロRNAである。
【0077】
本発明はまた、細胞内でポリペプチドの発現を阻害するための、配列番号1及び/又は配列番号4及び/又は配列番号7及び/又は配列番号10の成熟ポリペプチドコード配列の一部を含むような二本鎖RNA(dsRNA)分子に関する。本発明は任意の特定の作用機構によって制限されないが、dsRNAは、細胞に侵入し、類似又は同一配列の一本鎖RNA(ssRNA)、例えば内因性mRNAの分解を引き起こし得る。細胞がdsRNAに曝露されるとき、相同性遺伝子からのmRNAは、RNA干渉(RNAi)と称されるプロセスにより選択的に分解されるが;例えば米国特許第号5,190,931明細書を参照されたし。
【0078】
本発明のdsRNAは、遺伝子サイレンシングにおいて使用され得る。一態様では、本発明は、本発明のdsRNAiを用いてRNAを選択的に分解するための方法を提供する。本方法は、インビトロ、生体外又はインビボで実施されてもよい。一態様では、dsRNA分子は、細胞、臓器又は動物において機能欠失突然変異を作製するため、使用され得る。RNAを選択的に分解するため、dsRNA分子を作製し、使用するための方法は、当該技術分野で周知であり;例えば、米国特許第6,489,127号明細書;米国特許第6,506,559号明細書;米国特許第6,511,824号明細書及び米国特許第6,515,109号明細書を参照されたし。
【0079】
プロテアーゼ欠損突然変異細胞は、異種分泌ポリペプチドの発現用の宿主細胞として特に有用である。
【0080】
目的の生成物の培養及び精製のために使用される方法は、当該技術分野で公知の方法により実施されてもよい。
【0081】
産生方法
宿主細胞は、技術分野において既知である方法を用いてポリペプチドの生成に好適な栄養培地中で培養される。例えば、細胞は、好適な培地中並びにポリペプチドの発現及び/又は単離が許容される条件下で行われる、振盪フラスコ培養により、及び、実験用若しくは産業用発酵槽における小規模若しくは大規模発酵(連続式、バッチ式、フェドバッチ式又は固体状発酵を含む)により培養され得る。培養は、炭素及び窒素源及び無機塩を含む好適な栄養培地において、技術分野において公知である手法を用いて行われる。好適な媒体は、商業的な供給者から入手可能であるか、又は、公開された組成に従って調製され得る(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)。ポリペプチドが栄養培地に分泌される場合、ポリペプチドは培地から直接回収可能である。ポリペプチドが分泌されない場合、細胞ライセートから回収可能である。
【0082】
ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的な技術分野において公知である方法を用いて検出され得る。これらの検出方法として、限定するものではないが、特定の抗体の使用、酵素産物の形成、又は、酵素基質の消失などが挙げられる。例えば、酵素アッセイを用いてポリペプチドの活性を判定してもよい。
【0083】
ポリペプチドは技術分野において公知である方法を用いて回収され得る。例えば、ポリペプチドは、特にこれらに限定されないが、収集、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿を含む従来の手法により栄養培地から回収され得る。一態様では、ポリペプチドを含む発酵ブロスを回収する。
【0084】
ポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドを得るために、特にこれらに限定されないが、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動的手法(例えば、分取等電点電気泳動)、較差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE、又は、抽出(例えば、Protein Purification,Janson及びRyden編,VCH Publishers,New York,1989を参照のこと)を含む技術分野において公知である多様な手法によって精製され得る。
【0085】
代替的な態様においては、ポリペプチドは回収されず、ポリペプチドを発現する本発明の宿主細胞がポリペプチドのソースとして用いられ得る。
【0086】
本発明の一態様は、目的の分泌ポリペプチドを産生する方法であって、
a)いずれかの先行する請求項に記載の突然変異糸状菌宿主細胞を分泌ポリペプチドの産生に対して実用的な条件下で培養するステップと;任意選択的には、
b)目的の分泌ポリペプチドを回収するステップと、
を含む方法に関する。
【0087】
好ましい実施形態では、糸状菌宿主細胞は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ブジェルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コプリナス(Coprinus)、コリオルス(Coriolus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フザリウム(Fusarium)、フミコラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ケカビ(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)、パンカビ(Neurospora)、パエキロミケス(Paecilomyces)、アオカビ(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、フレビア(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、プレウロタス(Pleurotus)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロマイセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、ホウロクタケ(Trametes)及びトリコデルマ(Trichoderma)からなる群から選択される属に属し;さらにより好ましくは、糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス(Aspergillus)細胞;好ましくは、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アキュレティヌス(Aspergillus aculetinus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、アスペルギルス・フェティデュス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・リュウキュウエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスベルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)である。
【0088】
好ましくは、目的の分泌ポリペプチドは、酵素であり;好ましくは、酵素は、ヒドロラーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、リアーゼ、オキシドレダクターゼ、又はトランスフェラーゼ、例えば、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エンドグルカナーゼ、エステラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、マンノシダーゼ、ムタナーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、又はβ-キシロシダーゼである。
【実施例】
【0089】
糸状菌株
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)BTR213は、国際公開第2013/086633号パンフレットに記載されている。
【0090】
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株frt4new-1940-1996-2012-12-1は、T.リーセイ(T.reesei)BTR213のku70破壊及びパラセルシンシンテターゼ(parS)欠失株である。セロビオヒドロラーゼI(cbh1)、セロビオヒドロラーゼII(cbh2)、エンドグルカナーゼI(eg1)、及びキシラナーゼII(xyn2)遺伝子は、この株において欠失させており、国際公開第2012/160093号パンフレット及び米国特許出願公開第2018/0037897号明細書に記載の通り、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)フリッパーゼ(FLP)及びフリッパーゼ認識配列FRT-F及びFRT-F3を使用し、発現カセットの部位特異的な標的化組込みのため、これら4つの遺伝子座の各々に挿入されたFRT部位(FRT-F及びFRT-F3)を有する。エンドグルカナーゼII遺伝子(eg2)及びエンドグルカナーゼIII遺伝子(eg3)は、この株において同様に欠失させる。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)シトシンデアミナーゼ(fcyA)遺伝子を、4つの遺伝子座の各々にFRT-F部位とFRT-F3部位との間に挿入し、5-フルオロシトシン(5-FC)に対する対抗選択として使用する。
【0091】
培地及び溶液
COVEプレートは、342.30gのスクロース、25gのDifco(商標)ノーブル寒天、20mlのCOVE塩溶液、10mMアセトアミド、15mM塩化セシウム及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0092】
COVE2プレートは、30gのスクロース、20mlのCOVE塩溶液、10mlの1Mアセトアミド、25gのDifco(商標)ノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0093】
5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレートは、20mlのCOVE塩溶液、10mlの1Mアセトアミド、25gのDifco(商標)ノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。オートクレーブ後、40mlの50%(w/v)グルコース(滅菌)を添加した。溶液を50℃に冷却し、5-FCを添加し、最終濃度を75μg/mlにした。
【0094】
COVE塩溶液は、26gのKCl、26gのMgSO4・7H2O、76gのKH2PO4、50mlのCOVE微量金属溶液、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0095】
COVE微量金属溶液は、0.04gのNa2B4O7・10H2O、0.4gのCuSO4・5H2O、1.2gのFeSO4・7H2O、0.7gのMnSO4・H2O、0.8gのNa2MoO2・2H2O、10gのZnSO4・7H2O、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0096】
発酵バッチ培地は、24gのデキストロース、40gの脱脂大豆、8gの(NH4)2SO4、3gのK2HPO4、8gのK2SO4、3gのCaCO3、8gのMgSO4・7H2O、1gのクエン酸、8.8mlの85%リン酸、1mlの消泡剤、14.7mlの微量金属溶液、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0097】
PDAプレートは、39gのDifco(商標)ポテトデキストロース寒天及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0098】
PDA+1Mスクロースプレートは、39gのDifco(商標)ポテトデキストロース寒天、342.30gのスクロース及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0099】
PEG緩衝液は、脱イオン水中、50%ポリエチレングリコール(PEG)4000、10mMトリス-HCl、pH7.5、及び10mM CaCl2からなった。溶液をフィルター滅菌した。
【0100】
サンプル緩衝液(pH7.5)は、0.1Mトリス-HCl、0.1M NaCl及び0.01%トリトンX100からなった。溶液をフィルター滅菌した。振盪フラスコ培地は、20gのグリセロール、10gの脱脂大豆、1.5gの(NH4)2SO4、2gのKH2PO4、0.2gのCaCl2、0.4gのMgSO4・7H2O、0.2mlの微量金属溶液、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0101】
1.2Mソルビトールは、218.4gのソルビトール及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0102】
STCは、脱イオン水中、1Mソルビトール、10mMトリス-HCl、pH7.5、及び50mM CaCl2からなった。溶液をフィルター滅菌した。
【0103】
TBE緩衝液は、10.8gのトリス塩基、5gのホウ酸、4mlの0.5M EDTA、pH8、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0104】
TE緩衝液は、1Mトリス-HCl、pH8.0及び0.5M EDTA、pH8.0からなる。
【0105】
微量金属溶液は、26.1gのFeSO4・7H2O、5.5gのZnSO4・7H2O、6.6gのMnSO4・H2O、2.6gのCuSO4・5H2O、2gのクエン酸、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0106】
1.5μMの5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(FdU)を有するトリコデルマ(Trichoderma)最少培地(TrMM)プレートは、20mlのCOVE塩溶液、0.6gのCaCl2・2H2O、6gの(NH4)2SO4、25gのDifco(商標)ノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。オートクレーブ後、40mlの滅菌50%(w/v)グルコースを添加した。培地を50℃に冷却し、FdU(滅菌)を添加し、最終濃度を1.5μMにした。
【0107】
2xYT+Ampプレートは、16gのBacto(商標)トリプトン、10gのBacto(商標)酵母抽出物、5gのNaCl、15gのBacto(商標)寒天、100mg/mlでの1mlのアンピシリン(フィルター滅菌し、オートクレーブ後、添加した)、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0108】
YP培地は、脱イオン水中、1%Bacto(商標)酵母抽出物及び2%Bacto(商標)ペプトンからなった。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0109】
YPD培地は、1%Bacto(商標)酵母抽出物、2%Bacto(商標)ペプトン及び2%グルコースからなった。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0110】
発酵フィード培地は、1190gのグルコース、14.2mlの85%H3PO4及び486gのH2Oからなった。溶液をオートクレーブにより滅菌した。
【0111】
実施例1:トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)からのゲノムDNA抽出
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)を、250mlの整流振盪フラスコ内の50mlのYPD培地中で、200rpmで撹拌しながら28℃で2日間成長させた。MIRACLOTH(登録商標)(EMD Chemicals Inc.)系列の漏斗を使用し、培養由来の菌糸を収集し、圧搾乾燥し、次に予備冷却した乳鉢及び乳棒に移した。各菌糸調製物を微粉に粉砕し、液体窒素で凍結維持した。全部で1~2gの粉末を50mlのチューブに移し、DNEASY(登録商標)Plant Maxiキット(QIAGEN Inc.)を使用し、粉砕した菌糸体粉末からゲノムDNAを抽出した。65℃に予熱した5mlの緩衝液AP1(QIAGEN Inc.)、続いて10μlのリボヌクレアーゼAの100mg/mlの保存液(QIAGEN Inc.)を50mlのチューブに添加し、65℃で2~3時間インキュベートした。全部で1.8mlのAP2緩衝液(QIAGEN Inc.)を添加し、3000~5000×gで5分間遠心分離した。50mlの収集管内に設けたQIAshredder Maxiスピンカラム(QIAGEN Inc.)に上清をデカントし、スイングアウトローター内、室温(15~25℃)、3000~5000×gで5分間遠心分離した。収集管における通過画分を、ペレットを妨害することなく、新しい50mlのチューブに移した。体積が1.5mlの緩衝液AP3/E(QIAGEN Inc.)を清澄化された可溶化液に添加し、ボルテックスにより直ぐに混合した。形成することがある任意の沈殿物を含むサンプル(最大15ml)を、50mlの収集管内に設けたDNEASY(登録商標)Maxiスピンカラム(QIAGEN Inc.)にピペッティングし、スイングアウトローター内、室温(15~25℃)、3000~5000×gで5分間遠心分離した。通過画分を廃棄した。12mlの緩衝液AW(QIAGEN Inc.)をDNEASY(登録商標)Maxiスピンカラムに添加し、3000~5000×gで10分間遠心分離し、膜を乾燥させた。通過画分と収集管を廃棄した。DNEASY(登録商標)Maxiスピンカラムを新しい50mlのチューブに移した。65℃に予熱した0.5mlの緩衝液AE(QIAGEN Inc.)をDNEASY(登録商標)Maxiスピンカラム膜上に直接的にピペッティングし、室温(15~25℃)で5分間インキュベートし、次に3000~5000×gで5分間遠心分離し、ゲノムDNAを溶出させた。ゲノムDNAの濃度及び純度を、260nm及び280nmでの吸光度を測定することにより判定した。
【0112】
実施例2:トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)のプロトプラストの作製及び形質転換
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)のプロトプラストの調製及び形質転換を、Penttila et al.,1987,Gene 61:155-164に類似するプロトコルを用いて実施した。つまり、T.リーセイ(T.reesei)を、2つの振盪フラスコ(各々は25mlのYPD培地を含有する)内で、90rpmで穏やかに撹拌しながら27℃で17時間培養した。菌糸を、真空駆動ディスポーザブル濾過システム(Millipore)を使用する濾過により収集し、脱イオン水で2回、そして1.2Mソルビトールで2回洗浄した。洗浄された菌糸を、5mg/mlのYatalase(商標)(Takara Bio USA,Inc.)及び0.5mg/mlのChitinase(Sigma Chemical Co.)を含有する30mlの1.2Mソルビトールに、75~90rpmでゆっくりと振とうさせながら34℃で60~75分間懸濁することにより、プロトプラストを作製した。プロトプラストを834×gで6分間の遠心分離により収集し、冷却1.2Mソルビトールで2回洗浄した。血球計数器を使用し、プロトプラストを計数し、最終濃度が1×108個のプロトプラスト/mlのSTCに再懸濁した。
【0113】
約1~10μgのDNAを100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。ハイグロマイシンB耐性マーカー(hph)を含有するDNAの場合、内容物をPDA+1Mスクロースプレート上に拡散させ、30℃で一晩インキュベートした。翌日、PDA+ハイグロマイシンBからなるオーバーレイを最終濃度が10μg/mlのハイグロマイシンBに添加し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。
【0114】
実施例3:推定上のステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子(配列番号1)の修飾に対するプラスミド(pNJOC577;配列番号13)の構築
推定上のステロイドデヒドロゲナーゼドメインをコードする領域内のいくつかの連続アミノ酸の切断又は内部欠失のいずれかをもたらす突然変異の導入による、TrA1331W(配列番号1)によってコードされるタンパク質の修飾を意図したプラスミドを、5’標的化領域、hph(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)及びtk(HSV-1チミジンキナーゼ)カセット、hph及びtkカセットの切除のために使用されるべきリピート、並びに3’標的化領域を、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs(登録商標),Inc.)を用いて(HindIII及びSacIで直線化された)pUC19にクローニングすることにより構築した。5’標的化領域、hph及びtkカセット、hph及びtkカセットの切除用のリピート及び3’標的化領域を、プライマーセット:
oNJ587(配列番号19)+oNJ605(配列番号20)、
oNJ610(配列番号25)+oNJ611(配列番号26)、
oNJ606(配列番号21)+oNJ607(配列番号22)、及び
oNJ608(配列番号23)+oNJ609(配列番号24)
を使用してPCR増幅した。
【0115】
Phusion(登録商標)Hot Start II DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、増幅反応を実施した。PCRは、鋳型として、5ngのpJfyS1579-41-11(国際公開第2010/039840号パンフレット)(hph/tkカセットに対する鋳型)又は50ngのBTR213ゲノムDNA(国際公開第2013/086633号パンフレット)からなり、1×HF緩衝液、200μMの各dNTP、500nMのフォワードプライマー、500nMのリバースプライマー、1単位のPhusion(登録商標)Hot Start II DNAポリメラーゼ及び滅菌ミリ-Q(登録商標)H
2Oを添加し、最終体積を50μlにした。98℃で3分間の1サイクル;98℃で10秒間、65℃で30秒間及び72℃で30秒間(リピート断片)又は2.5分間での各々の35サイクル;及び72℃で5分間の1サイクルとしてプログラムされたBio-Rad C1000 Touch(商標)サーマルサイクラー(Bio-Rad Laboratories)内で、反応物をインキュベートした。サーモサイクリング後、PCR産物をTBE緩衝液中で1%アガロースゲル電気泳動により分離し、異なるPCR産物に対応するバンド(2354bp、4395bp、322bp及び1986bp)をゲルから切除し、NucleoSpin(登録商標)Gel及びPCRクリーンアップキット(Macherey-Nagel)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、精製した。pUC19を、5μgのpUC19、HindIII-HF(New England Biolabs(登録商標),Inc.)及びSacI-HF(New England Biolabs(登録商標),Inc.)の各々20単位、1×CutSmart(登録商標)緩衝液(New England Biolabs(登録商標),Inc.)及び滅菌ミリ-Q(登録商標)H
2Oからなる50μlの反応物中、HindIII及びSacIで消化し、最終体積を50μlにした。反応物を37℃でインキュベートし、次にTBE緩衝液中で1%アガロースゲル電気泳動を施した。2645bpのpUC19 HindIII/SacI断片をゲルから切除し、NucleoSpin(登録商標)Gel及びPCRクリーンアップキット(Macherey-Nagel)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、精製した。1×NEBuilder(登録商標)HiFi Assembly Master Mix及び各々が0.04ピコモルのPCR産物からなる総体積30μLのNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mixキット(New England Biolabs)を使用し、PCR産物とpUC19 HindIII/SacI断片とを一緒に融合した。反応物を50℃で45分間インキュベートし、次に氷上に置いた。1μLの反応物を使用し、60μLのStellar(商標)コンピテント細胞(Clontech Laboratories,Inc.)を製造業者の使用説明書に従って形質転換した。形質転換反応物を2つの2xYT+Ampプレート上に拡散させ、37℃で一晩インキュベートした。推定上の形質転換体コロニーを選択プレートから単離し、プラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を使用し、各々から調製し、PvuIIでの消化により断片の適切な挿入についてスクリーニングした。制限酵素消化時に予想されたバンドパターン(4991bp、3362bp、2364bp、439bp及び370bp)を生じるプラスミドDNAを使用し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をpNJOC577プラスミド(配列番号13)のモデルにマッピングした。Basic Variant Detectionモジュールを使用し、任意の一塩基多型の存在を検出した。予想されたヌクレオチド配列を有するプラスミドをpNJOC577と名付けた(
図1)。
【0116】
実施例4:TrA1331Wによってコードされるタンパク質の修飾を伴うトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株の構築(NJOC586)
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)frt4new-1940-1996-2012-12-1プロトプラストを実施例2に記載のように作製した。pNJOC577(8871bpのPmeI断片)からの約2~4μgの直線化TrA1331W修飾カセットを100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、内容物をPDA+1Mスクロースプレート上に拡散させ、30℃で一晩インキュベートした。翌日、PDA+ハイグロマイシンBからなるオーバーレイを最終濃度10μg/mlのハイグロマイシンBに添加し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。次いで、ハイグロマイシン耐性形質転換体をPDAプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。形質転換体を、胞子PCRにより、TrA1331修飾カセットの正確な組込みについてスクリーニングした。各形質転換体においては、滅菌した1μlの接種ループを用いて胞子を収集し、薄壁PCRチューブ内の20μlの希釈緩衝液(PHIRE(商標)Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)に懸濁した。各胞子懸濁液をPCR反応における鋳型として使用し、TrA1331W遺伝子座でのTrA1331W修飾カセットの組込みについてスクリーニングした。各形質転換体に対して2通りのPCRを実施し;1つが組込みの5’部位に対して、1つが組込みの3’部位に対してであった。5’組込みのスクリーニングは、組込み部位の上流領域にアニーリングするプライマー、並びにhph及びtkカセット内部の領域にアニーリングするプライマーを用いて実施した。3’組込みのスクリーニングは、組込み部位の下流領域にアニーリングするプライマー、並びにhph及びtkカセット内部の領域にアニーリングするプライマーを用いて実施した。各PCR反応は、1μlの胞子懸濁液、10ピコモルの各プライマー、10μlの2xPHIRE(商標)Plant PCR緩衝液(PHIRE(商標)Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)、0.4μlのPHIRE(商標)Hot Start II DNAポリメラーゼ(PHIRE(商標)Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)及びH2Oからなり、最終体積を20μlにした。サーモサイクリングを製造業者の使用説明書に従って実施した。TBE緩衝液を使用し、1%アガロースゲル電気泳動により、PCR産物を分析した。次に、所望されるPCR産物をもたらす形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を実施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子を新しいPDAプレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。上記の5’及び3’組込み検証用PCRを反復し、TBE緩衝液を使用し、1%アガロースゲル電気泳動により、PCR産物を分析した。TrA1331W修飾構築物pNJOC577は、直接リピートによって隣接されたhph及びHSV-1 tkカセットを有し、hph及びHSV-1 tkカセットからの自発性ループ及びクリーンなTrA1331W修飾の生成を2つのリピート間の相同組換えを介して促進する。TrA1331W修飾カセットの正確な組込みによる形質転換体からの胞子をH2O中で収集し、希釈物を、1.5μMの5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(FdU)を含有するTrMMプレート上に拡散させ、30℃で5日間インキュベートし、hph及びHSV-1 tkカセットを失っている単離物の同定を容易にした。次に、FdU耐性単離物をPDAプレートに移し、hph及びHSV-1 tkカセットの欠如を胞子PCRにより検証した。この胞子PCRでは、3つのプライマー、即ち、hph及びtkカセットの上流領域にアニーリングする1つのプライマー、3’組込み部位の外部領域にアニーリングする1つのプライマー、並びにhph及びtkカセットの内部領域にアニーリングする1つのプライマーを添加した。プライマーは、hph及びtkカセットが依然として存在するか否かに応じて、短いPCR産物又は長いPCR産物を生成するように設計した。次に、hph及びtkカセットを失っている形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を実施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子を新しいPDAプレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。TrA1331W遺伝子における所望される突然変異の存在を確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単離物に対し、ゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をTrA1331W遺伝子(配列番号1)のモデルにマッピングした。Basic Variant Detectionモジュールを使用し、所望される突然変異の存在を検証した。所望される突然変異を有する単離物の1つをNJOC586と名付け、さらなる試験用に保存した。
【0117】
実施例5:pNJOC383によるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株frt4new-1940-1996-2012-12-1の形質転換
実施例2に記載の通り、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)frt4new-1940-1996-2012-12-1プロトプラストを作製した。約1~10μgのpNJOC383(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたアクレモニウム・アルカロフィラム(Acremonium alcalophilum)CBS114.92リゾチーム発現カセットを有するプラスミド;配列番号14及び
図2)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC587と名付け、さらなる試験用に保存した。
【0118】
実施例6:pNJOC383によるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)TrA1331W修飾株(NJOC586)の形質転換
実施例2に記載の通り、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)NJOC586プロトプラストを作製した。約1~10μgのpNJOC383(配列番号14;
図2)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2に移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC588と名付け、さらなる試験用に保存した。
【0119】
実施例7:リゾチーム活性アッセイ(LSU(F)/ml)
発酵からの全培養液を、30℃でのロティサリーミキサー内で約2時間混合した。全培養液の混合後、すべてのサンプルを前希釈用緩衝液(pre-dilution buffer)で100倍に希釈し、次にロティサリーミキサーを再び使用して約2時間混合した。次いで、100倍の前希釈サンプルを、10倍段階希釈により、0.1Mトリス-HCl、0.1M NaCl、0.01%トリトンX100緩衝液、pH7.5(サンプル緩衝液)で10000倍に希釈し、続いて希釈サンプルの1/9に至る3倍段階希釈を行った。この方法を、Beckman Coulter Biomek FX及びSpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices製)と併用した。リゾチーム標準を、サンプル緩衝液で、0.05LSU(F)/mlの濃度から0.002LSU(F)/mlの濃度にかけて希釈した。全部で50μlの標準を含む各希釈物を96ウェル平底プレートに移した。25ug/mlのフルオレセインコンジュゲート細胞壁基質溶液50μLを各ウェルに添加し、次に周囲温度で45分間インキュベートした。インキュベーション中、反応速度を、15分間隔で96ウェルプレートにおいて485nm(励起)/528nm(放射)で監視した。サンプル濃度を、作成した検量線からの外挿により判定した。
【0120】
実施例8:実験室規模発酵は、TrA1331Wによってコードされるタンパク質の修飾により、リゾチームの生産性/収率の増加がもたらされることを示した
4コピーのリゾチームを発現するNJOC587株及びNJOC588株を、2リットル発酵において評価した。各株を、2つのPDAプレート上、30℃で5~7日間成長させた。3つの500ml振盪フラスコであって、各々が100mlの振盪フラスコ培地を含有するものに、PDAプレートから1つの振盪フラスコあたり2つのプラグを接種した。振盪フラスコを、200rpmでのオービタルシェーカー上、28℃で48時間インキュベートした。培養物を発酵用の種として使用した。
【0121】
全部で150mlの各々の種培養物を使用し、1.5リットルの発酵バッチ培地を含有する3リットルのガラス被覆発酵槽(Applikon Biotechnology)に接種した。発酵槽を28℃の温度で維持し、Applikon 1030制御システムを使用し、pHを3.5+/-0.1のセットポイントに制御した。空気を2.5L/分の速度で容器に加え、300~1100rpmで回転するRushton羽根車により、培養液を撹拌した。オートクレーブしたグルコース及びリン酸からなる発酵フィード培地を、0~14g/L/時間の速度で約7日の期間かけて投与した。全培養液の一定分量を5日目、6日目及び7日目に採取し、5~10℃で貯蔵してから、リゾチーム活性アッセイにおける処理にかけた。
【0122】
リゾチーム発現レベルを、実施例7に記載のように測定した。NJOC588株において、NJOC587と比べて増加したリゾチーム発現が認められ、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子の前記修飾がリゾチーム発現にとって有利であることが示された。
【0123】
実施例9:TrA1331Wコード化タンパク質(配列番号3)の相同体の同定
TrA1331Wによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号3)を使用し、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)及びフザリウム・べネナタム(Fusarium venenatum)のゲノム内の遺伝子によってコードされるタンパク質の相同体についてのBLAST検索(E値:1.00e-5及び語長:5)を実施した。各生物に対して得た単一のBLASTヒットを表1に提示する:
【0124】
【0125】
異なるタンパク質間のパーセント同一性を、上記のようにNeedleman-Wunschアルゴリズムを用いて算出した。タンパク質間の同一性を表2にまとめる。
【0126】
【0127】
表2によると、タンパク質は、約39%~約70%の同一性を範囲とする有意な配列同一性を共有する(最高のパーセント同一性が、より密接に関連したA.ニガー(A.niger)タンパク質とコウジカビ(A.oryzae)タンパク質との間で認められるのは想定通りであった)。
【0128】
タンパク質間の関連性をさらに検討するため、デフォルトパラメータを有するMUSCLEアルゴリズムバージョン3.8.31を用いて、タンパク質を整列した(Edgar,R.C.(2004).Nucleic Acids Research,32(5),1792-1797)。この複数の配列アラインメントからの結果を
図3に示す。タンパク質は、高度に保存されたアミノ酸モチーフ、例えば、YGAR及び/又はVPHS[W/Y]F及び/又はQC[A/V/S]RRL及び/又はLKKYTLP及び/又はCPHYTモチーフのいくつかのストレッチ/ブロックが示される
図3に示すように、有意なアミノ酸配列同一性を共有した。まとめると、結果は、推定上の酵素が異なる真菌宿主において類似機能を果たす可能性が高いことを示す。
【0129】
実施例10:推定上のステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子(配列番号1)の欠失に対するプラスミド(pNJOC569;配列番号27)の構築
TrA1331W(配列番号1)によってコードされる全タンパク質の欠失に対するプラスミドを、5’標的化領域、hph(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)及びtk(HSV-1チミジンキナーゼ)カセット、hph及びtkカセットの切除のために使用されるべきリピート、並びに3’標的化領域を、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs(登録商標),Inc.)を用いて(HindIII及びSacIで直線化された)pUC19にクローニングすることにより構築した。5’標的化領域、hph及びtkカセット、hph及びtkカセットの切除のためのリピート、並びに3’標的化領域を、プライマーセット:
oNJ587(配列番号19)+oNJ588(配列番号28)、
oNJ595(配列番号29)+oNJ596(配列番号30)、
oNJ592(配列番号31)+oNJ593(配列番号32)、及び
oNJ589(配列番号33)+oNJ590(配列番号34)
を使用してPCR増幅した。
【0130】
Phusion(登録商標)Hot Start II DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、増幅反応を実施した。PCRは、鋳型として、5ngのpJfyS1579-41-11(国際公開第2010/039840号パンフレット)(hph/tkカセットに対する鋳型)又は50ngのBTR213ゲノムDNA(国際公開第2013/086633号パンフレット)からなり、1×HF緩衝液、200μMの各dNTP、500nMのフォワードプライマー、500nMのリバースプライマー、1単位のPhusion(登録商標)Hot Start II DNAポリメラーゼ及び滅菌ミリ-Q(登録商標)H
2Oを添加し、最終体積を50μlにした。98℃で3分間の1サイクル;98℃で10秒間、65℃で30秒間及び72℃で30秒間(リピート断片)又は2.5分間での各々の35サイクル;及び72℃で5分間の1サイクルとしてプログラムされたBio-Rad C1000 Touch(商標)サーマルサイクラー(Bio-Rad Laboratories)内で、反応物をインキュベートした。サーモサイクリング後、PCR産物をTBE緩衝液中で1%アガロースゲル電気泳動により分離し、異なるPCR産物に対応するバンド(1587bp、4405bp、354bp及び1571bp)をゲルから切除し、NucleoSpin(登録商標)Gel及びPCRクリーンアップキット(Macherey-Nagel)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、精製した。pUC19を、5μgのpUC19、HindIII-HF(New England Biolabs(登録商標),Inc.)及びSacI-HF(New England Biolabs(登録商標),Inc.)の各々20単位、1×CutSmart(登録商標)緩衝液(New England Biolabs(登録商標),Inc.)及び滅菌ミリ-Q(登録商標)H
2Oからなる50μlの反応物中、HindIII及びSacIで消化し、最終体積を50μlにした。反応物を37℃でインキュベートし、次にTBE緩衝液中で1%アガロースゲル電気泳動を施した。2645bpのpUC19 HindIII/SacI断片をゲルから切除し、NucleoSpin(登録商標)Gel及びPCRクリーンアップキット(Macherey-Nagel)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、精製した。1×NEBuilder(登録商標)HiFi Assembly Master Mix及び各々が0.04ピコモルのPCR産物からなる総体積30μLのNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mixキット(New England Biolabs)を使用し、PCR産物とpUC19 HindIII/SacI断片とを一緒に融合した。反応物を50℃で45分間インキュベートし、次に氷上に置いた。1μLの反応物を使用し、60μLのStellar(商標)コンピテント細胞(Clontech Laboratories,Inc.)を製造業者の使用説明書に従って形質転換した。形質転換反応物を2つの2xYT+Ampプレート上に拡散させ、37℃で一晩インキュベートした。推定上の形質転換体コロニーを選択プレートから単離し、プラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を使用し、各々から調製し、PvuIIでの消化により断片の適切な挿入についてスクリーニングした。制限酵素消化時に予想されたバンドパターン(4224bp、3117bp、2364bp、370bp、296bp)を生じるプラスミドDNAを使用し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をpNJOC569プラスミド(配列番号27)のモデルにマッピングした。Basic Variant Detectionモジュールを使用し、任意の一塩基多型の存在を検出した。予想されたヌクレオチド配列を有するプラスミドをpNJOC569と名付けた(
図4)。
【0131】
実施例11:推定上のステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子の欠失を伴うトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株の構築(NJOC584-5D8A)
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)frt4new-1940-1996-2012-12-1プロトプラストを実施例2に記載のように作製した。pNJOC569(7716bpPmeI断片)からの約2~4μgの直線化TrA1331W欠失カセットを100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、内容物をPDA+1Mスクロースプレート上に拡散させ、30℃で一晩インキュベートした。翌日、PDA+ハイグロマイシンBからなるオーバーレイを最終濃度10μg/mlのハイグロマイシンBに添加し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。次いで、ハイグロマイシン耐性形質転換体をPDAプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。形質転換体を、胞子PCRにより、TrA1331欠失カセットの正確な組込みについてスクリーニングした。各形質転換体においては、滅菌した1μlの接種ループを用いて胞子を収集し、薄壁PCRチューブ内の20μlの希釈緩衝液(PHIRE(商標)Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)に懸濁した。各胞子懸濁液をPCR反応における鋳型として使用し、TrA1331W遺伝子座でのTrA1331W欠失カセットの組込みについてスクリーニングした。各形質転換体に対して2通りのPCRを実施し;1つが組込みの5’部位に対して、1つが組込みの3’部位に対してであった。5’組込みのスクリーニングは、組込み部位の上流領域にアニーリングするプライマー(oNJ632、配列番号35)、並びにhph及びtkカセット内部の領域にアニーリングするプライマー(AgJg685、配列番号36)を用いて実施した。3’組込みのスクリーニングは、組込み部位の下流領域にアニーリングするプライマー(oNJ633、配列番号37)、並びにhph及びtkカセット内部の領域にアニーリングするプライマー(AgJg604、配列番号38)を用いて実施した。各PCR反応は、1μlの胞子懸濁液、10ピコモルの各プライマー、10μlの2xPHIRE(商標)Plant PCR緩衝液(PHIRE(商標)Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)、0.4μlのPHIRE(商標)Hot Start II DNAポリメラーゼ(PHIRE(商標)Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)及びH2Oからなり、最終体積を20μlにした。サーモサイクリングを製造業者の使用説明書に従って実施した。TBE緩衝液を使用し、1%アガロースゲル電気泳動により、PCR産物を分析した。次に、所望されるPCR産物をもたらす形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を実施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子を新しいPDAプレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。上記の5’及び3’組込み検証用PCRを反復し、TBE緩衝液を使用し、1%アガロースゲル電気泳動により、PCR産物を分析した。pNJOC569からのTrA1331W欠失構築物は、直接リピートによって隣接されたhph及びHSV-1 tkカセットを有し、hph及びHSV-1 tkカセットからの自発性ループ及びクリ-ンなTrA1331W欠失の生成を2つのリピート間の相同組換えを介して促進する。TrA1331W修飾カセットの正確な組込みによる形質転換体からの胞子をH2O中で収集し、希釈物を、1.5μMの5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(FdU)を含有するTrMMプレート上に拡散させ、30℃で5日間インキュベートし、hph及びHSV-1 tkカセットを失っている単離物の同定を容易にした。次に、FdU耐性単離物をPDAプレートに移し、hph及びHSV-1 tkカセットの欠如を胞子PCRにより検証した。この胞子PCRでは、3つのプライマー、即ち、hph及びtkカセットの上流領域にアニーリングする1つのプライマー、3’組込み部位の外部領域にアニーリングする1つのプライマー、並びにhph及びtkカセットの内部領域にアニーリングする1つのプライマーを添加した。プライマーは、hph及びtkカセットが依然として存在するか否かに応じて、短いPCR産物又は長いPCR産物を生成するように設計した。次に、hph及びtkカセットを失っている形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を実施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子を新しいPDAプレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。TrA1331W遺伝子における所望される欠失の存在を確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単離物に対し、ゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をTrA1331W遺伝子(配列番号1)のモデルにマッピングした。InDel及びStructural Variantモジュールにより、所望される欠失の存在を検証した。所望される欠失を有する単離物の1つをNJOC584-5D8Aと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0132】
実施例12:pNJOC383によるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株NJOC584-5D8Aの形質転換
実施例2に記載の通り、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)NJOC584-5D8Aプロトプラストを作製した。約1~10μgのpNJOC383(配列番号14及び
図2)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC618-81Dと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0133】
実施例13:実験室規模発酵は、TrA1331Wによってコードされるタンパク質の欠失により、リゾチームの生産性/収率の増加ももたらされることを示した
4コピーのリゾチームを発現するNJOC587株(対照)及びNJOC618-81D株を、2リットル発酵において評価した。各株を、2つのPDAプレート上、30℃で5~7日間成長させた。3つの500ml振盪フラスコであって、各々が100mlの振盪フラスコ培地を含有するものに、PDAプレートから1つの振盪フラスコあたり2つのプラグを接種した。振盪フラスコを、200rpmでのオービタルシェーカー上、28℃で48時間インキュベートした。培養物を発酵用の種として使用した。
【0134】
全部で150mlの各々の種培養物を使用し、1.5リットルの発酵バッチ培地を含有する3リットルのガラス被覆発酵槽(Applikon Biotechnology)に接種した。発酵槽を28℃の温度で維持し、Applikon 1030制御システムを使用し、pHを3.5+/-0.1のセットポイントに制御した。空気を2.5L/分の速度で容器に加え、300~1100rpmで回転するRushton羽根車により、培養液を撹拌した。オートクレーブしたグルコース及びリン酸からなる発酵フィード培地を、0~14g/L/時間の速度で約7日の期間かけて投与した。全培養液の一定分量を5日目、6日目及び7日目に採取し、5~10℃で貯蔵してから、リゾチーム活性アッセイにおける処理にかけた。
【0135】
リゾチーム発現レベルを、実施例7に記載のように測定した。アッセイしたすべての時点で、ステロイドデヒドロゲナーゼ欠失株NJOC618-81Dにおいて、NJOC587と比べて増加したリゾチーム発現が認められた(
図5)。結果によると、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子の不活性化がリゾチーム発現にとって有利であることが示された。
【0136】
実施例14:pTmmD-Tl_リパーゼによるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株frt4new-1940-1996-2012-12-1の形質転換
実施例2に記載の通り、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)frt4new-1940-1996-2012-12-1プロトプラストを作製した。約1~10μgのpTmmD-Tl_リパーゼ(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)HL703リパーゼ変異体発現カセット;配列番号39及び
図6)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC600-2Aと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0137】
実施例15:pTmmD-Tl_リパーゼによるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株NJOC586の形質転換
実施例2に記載の通り、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)NJOC586プロトプラストを作製した。約1~10μgのpTmmD-Tl_リパーゼ(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)HL703リパーゼ変異体発現カセット;配列番号39及び
図6)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC609-1Aと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0138】
実施例16:リパーゼLU(LXP)/mlの活性アッセイ
この方法を、Beckman Coulter Biomek FX及びSpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices製)と併用した。
【0139】
培養上清を、0.05M MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸))、10mM CaCl2、0.01%トリトンX100緩衝液、pH7.5(サンプル緩衝液)で適切に希釈し、続いて希釈サンプルの0倍~1/3倍~1/9倍に至る段階希釈を行った。Lipex標準を、サンプル緩衝液で、4.0LU(LXP)/mlの濃度から0.197LU(LXP)/mlの濃度にかけて希釈した。全部で20μlの標準を含む各希釈物を96ウェル平底プレートに移した。pNP-パルミチン酸基質溶液(pNPPストックは、9.99%EtOH中、7.8mMのpNP-パルミチン酸塩であった-使用液は、1リットルあたり、500mlの0.1M MOPS(pH7.5)、20mlのpNPPストック、100mlの10%トリトンX100、14.7mlの680mM CaCl2であり、H2Oにより最大体積にした)200μLを各ウェルに添加し、次に周囲温度で30分間インキュベートした。インキュベーション中、反応速度を、20分の期間にわたり、96ウェルプレートにおいて、405nmの光学密度で測定した。サンプル濃度を、作成した検量線からの外挿により判定した。
【0140】
実施例17:実験室規模発酵は、TrA1331Wによってコードされるタンパク質の欠失により、リパーゼの生産性/収率の増加ももたらされることを示した
4コピーのリゾチームを発現するNJOC600-2A株(対照)及びNJOC609-1A株を、2リットル発酵において評価した。各株を、2つのPDAプレート上、30℃で5~7日間成長させた。3つの500ml振盪フラスコであって、各々が100mlの振盪フラスコ培地を含有するものに、PDAプレートから1つの振盪フラスコあたり2つのプラグを接種した。振盪フラスコを、200rpmでのオービタルシェーカー上、28℃で48時間インキュベートした。培養物を発酵用の種として使用した。
【0141】
全部で150mlの各々の種培養物を使用し、1.5リットルの発酵バッチ培地を含有する3リットルのガラス被覆発酵槽(Applikon Biotechnology)に接種した。発酵槽を28℃の温度で維持し、Applikon 1030制御システムを使用し、pHを4.5+/-0.1のセットポイントに制御した。空気を2.5L/分の速度で容器に加え、300~1100rpmで回転するRushton羽根車により、培養液を撹拌した。オートクレーブしたグルコース及びリン酸からなる発酵フィード培地を、0~15g/L/時間の速度で約5日の期間かけて投与した。サンプル(上清)を2日目、3日目、4日目及び5日目に収集し、5℃で貯蔵してから、リパーゼ活性アッセイにおける処理にかけた。
【0142】
リパーゼ発現レベルを実施例16に記載のように測定した。アッセイしたすべての時点で、ステロイドデヒドロゲナーゼ欠失株NJOC609-1Aにおいて、NJOC600-2A対照と比べて増加したリパーゼ発現が認められた(
図7)(45%~132%間の範囲の改善)。結果によると、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子の不活性化がリパーゼ発現にとって有利であることが示された。
【0143】
実施例18:pSMai326によるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株frt4new-1940-1996-2012-12-1の形質転換
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)frt4new-1940-1996-2012-12-1プロトプラストを実施例2に記載のように作製した。約1~10μgのpSMai326(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)キサンタナーゼ変異体発現カセットを有するプラスミド;配列番号40及び
図8)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC608-1Bと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0144】
実施例19:pSMai326によるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株NJOC586の形質転換
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)NJOC586プロトプラストを実施例2に記載のように作製した。約1~10μgのpSMai326(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)キサンタナーゼ変異体発現カセットを有するプラスミド;配列番号40及び
図8)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC617-77Cと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0145】
実施例20:キサンタナーゼXGU(A)活性アッセイ
この方法をThermo Arena 30アナライザ上で実行した。サンプルを、0.1M ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、0.056M NaOH、4mM CaCl2 2H2O、0.025%Brij(登録商標)L23 pH7緩衝液(希釈緩衝液)で適切に希釈した。希釈物をキサンタナーゼ標準にし、希釈緩衝液を使用し、7ポイント曲線を作成した。20μLの各サンプル及び標準を、125μlの0.1M ACES、0.056M NaOH(アッセイ緩衝液)及び50μlの基質(0.1%(w/v)の修飾キサンタンガム、0.48%(v/v)のエタノール、0.1M ACES、0.06M NaOH)に添加し、50℃で1200秒間インキュベートした。100μLの停止剤(50g/Lの酒石酸カリウムナトリウム、20g/LのPAHBAH(4-ヒドロキシベンズヒドラジド)、5.52g/Lの酢酸ビスマス(III)、0.5M NaOH)を各反応物に添加し、50℃で1200秒間インキュベートした。405nmでエンドポイント測定を行った。サンプル活性を、作成した検量線からの外挿により判定した。
【0146】
実施例21:実験室規模発酵は、TrA1331Wによってコードされるタンパク質の欠失により、キサンタナーゼの生産性/収率の増加ももたらされることを示した
4コピーのリゾチームを発現するNJOC608-1B株(対照)及びNJOC617-77C株を、2リットル発酵において評価した。各株を、2つのPDAプレート上、30℃で5~7日間成長させた。3つの500ml振盪フラスコであって、各々が100mlの振盪フラスコ培地を含有するものに、PDAプレートから1つの振盪フラスコあたり2つのプラグを接種した。振盪フラスコを、200rpmでのオービタルシェーカー上、28℃で48時間インキュベートした。培養物を発酵用の種として使用した。
【0147】
全部で150mlの各々の種培養物を使用し、1.5リットルの発酵バッチ培地を含有する3リットルのガラス被覆発酵槽(Applikon Biotechnology)に接種した。発酵槽を28℃の温度で維持し、Applikon 1030制御システムを使用し、pHを4.5+/-0.1のセットポイントに制御した。空気を2.5L/分の速度で容器に加え、300~1100rpmで回転するRushton羽根車により、培養液を撹拌した。オートクレーブしたグルコース及びリン酸からなる発酵フィード培地を、0~15g/L/時間の速度で約7日の期間かけて投与した。サンプル(上清)を2~7日目に収集し、5℃で貯蔵してから、キサンタナーゼ活性アッセイにおける処理にかけた。
【0148】
リパーゼ発現レベルを実施例20に記載のように測定した。アッセイしたすべての時点で、ステロイドデヒドロゲナーゼ欠失株NJOC617-77Cにおいて、NJOC608-1B対照と比べて増加したキサンタナーゼ発現が認められた(
図9)(7~28%の改善)。結果によると、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子の不活性化がキサンタナーゼ発現にとって有利であることが示された。
【0149】
実施例22:pTmmD-Mf_リゾチームによるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株frt4new-1940-1996-2012-12-1の形質転換
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)frt4new-1940-1996-2012-12-1プロトプラストを実施例2に記載のように作製した。約1~10μgのpTmmD-Mf_リゾチーム(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたミセリオフトラ・フェルグシイ(Myceliophthora fergusii)リゾチーム発現カセットを有するプラスミド;配列番号41及び
図10)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子をCOVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC601-5Aと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0150】
実施例23:pTmmD-Mf_リゾチームによるトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)株NJOC586の形質転換
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)NJOC586プロトプラストを実施例2に記載のように作製した。約1~10μgのpTmmD-Mf_リゾチーム(宿主株中にFRT-F及びFRT-F3部位を有する4つの遺伝子座でのFLP媒介性組込みのため、FRT-F及びFRT-F3部位によって隣接されたミセリオフトラ・フェルグシイ(Myceliophthora fergusii)リゾチーム発現カセットを有するプラスミド;配列番号41及び
図10)を、100μlのプロトプラスト溶液に添加し、緩やかに混合した。PEG緩衝液(250μl)を添加し、反応物を混合し、34℃で30分間インキュベートした。次に、STC(1ml)を添加し、amdSの選択のため、内容物をCOVEプレート上に拡散させた。プレートを30℃で7~9日間インキュベートした。各COVEプレートからの形質転換体からの胞子を、75μg/mlの5-フルオロシトシン(5-FC)(Sigma Chemical Co.)を含有するCOVE2グルコースプレート上に移し、30℃で5~7日間インキュベートした。5-FCを含有するCOVE2グルコースプレート上の形質転換体からの胞子を、5-FCを含有する新しいCOVE2グルコースプレートに移し、30℃で5~7日間インキュベートした。次に、いくつかの形質転換体に対し、PDA+1Mスクロースプレート上で単一胞子単離を施した。プレートを30℃で3~5日間インキュベートした。各コロニーからの胞子を、COVE2プレートに移し、プレートを30℃で5~7日間インキュベートした。cbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座でのpNJOC383からのリゾチーム発現カセットの組込みを確認するため、実施例2に記載の通り、いくつかの単一胞子単離物においてゲノムDNAを調製し、対合末端の配列決定ライブラリーを作成するために使用し、NEXTSEQ(商標)500システム(Illumina Inc.)上で2×150bpの化学を用いて配列決定した。CLC Genomics Workbenchバージョン11.0.1(QIAGEN)を用いて、配列分析を実施した。Trim Reads moduleを使用し、読み取り値をトリミングした。高ストリンジェンシー設定での参照モジュールに対してMap Readを使用し、読み取り値をcbh1、cbh2、eg1及びxyn2遺伝子座(配列番号15~18)のモデルにマッピングした。4つすべての部位で正確な組込みを有する単離物の1つをNJOC610-2Bと名付け、さらなる試験用に保存した。
【0151】
実施例24:リゾチームLSU(A)活性アッセイ
この方法を、Beckman Coulter Biomek FX及びSpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices製)と併用した。全培養液サンプルを、0.1M酢酸塩、50mM NaCl、0.01%トリトンX100緩衝液、pH4.5(サンプル緩衝液)で適切に希釈し、続いて希釈サンプルの0倍~1/3倍~1/9倍に至る段階希釈を行った。リゾチーム標準を、サンプル緩衝液で、50LSU(A)/mlの濃度から2.469LSU(A)/mlの濃度にかけて希釈した。全部で20μlの標準を含む各希釈物を96ウェル平底プレートに移した。0.26g/Lのマイクロコッカス・リゾディクティクス(Micrococcus lysodeikticus)基質溶液200μlを各ウェルに添加し、次に周囲温度で75分間インキュベートした。インキュベーションの完了時、96ウェルプレートにおいて、450nmの光学密度が得られた。サンプル濃度を、作成した検量線からの外挿により判定した。
【0152】
実施例25:実験室規模発酵は、TrA1331Wによってコードされるタンパク質の欠失により、M.f.リゾチームの生産性/収率の増加ももたらされることを示した
4コピーのリゾチームを発現するNJOC601-5A株(対照)及びNJOC610-2B株を、2リットル発酵において評価した。各株を、2つのPDAプレート上、30℃で5~7日間成長させた。3つの500ml振盪フラスコであって、各々が100mlの振盪フラスコ培地を含有するものに、PDAプレートから1つの振盪フラスコあたり2つのプラグを接種した。振盪フラスコを、200rpmでのオービタルシェーカー上、28℃で48時間インキュベートした。培養物を発酵用の種として使用した。
【0153】
全部で150mlの各々の種培養物を使用し、1.5リットルの発酵バッチ培地を含有する3リットルのガラス被覆発酵槽(Applikon Biotechnology)に接種した。発酵槽を28℃の温度で維持し、Applikon 1030制御システムを使用し、pHを3.5+/-0.1のセットポイントに制御した。空気を2.5L/分の速度で容器に加え、300~1100rpmで回転するRushton羽根車により、培養液を撹拌した。オートクレーブしたグルコース及びリン酸からなる発酵フィード培地を、0~15g/L/時間の速度で約7日の期間かけて投与した。全培養液の一定分量を4日目、5日目、6日目及び7日目に採取し、5℃~10℃で貯蔵してから、リゾチーム活性(LSU(A))アッセイにおける処理にかけた。
【0154】
リパーゼ発現レベルを実施例24に記載のように測定した。アッセイしたすべての時点で、ステロイドデヒドロゲナーゼ欠失株NJOC610-2Bにおいて、NJOC601-5A対照と比べて増加したM.f.リゾチーム発現が認められた(
図11)(6~47%の改善)。結果によると、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼをコードするTrA1331W遺伝子の不活性化がM.f.リゾチーム発現にとって有利であることが示された。
【0155】
実施例(アスペルギルス・ニガー(ASPERGILLUS NIGER))
材料及び方法
特に指定のない限り、DNAの操作及び形質転換を、Sambrook et al.(1989)Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor lab.,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel,F.M.et al.(eds.)“Current protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,1995;Harwood,C.R.,and Cutting,S.M.(eds.)“Molecular Biological Methods for Bacillus”.John Wiley and Sons,1990に記載のような分子生物学の標準的方法を用いて実施した。
【0156】
購入した材料(大腸菌(E.coli)及びキット)
大腸菌(E.coli)DH5α(東洋紡)をプラスミド構築及び増幅のために使用した。Qiagenプラスミドキット(Qiagen)を用いて、増幅したプラスミドを回収した。DNAライゲーションキット(タカラ)又はT4 DNAリガーゼ(Boehringer Mannheim)を用いて、ライゲーションを行った。Expanded TM PCRシステム(Boehringer Mannheim)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した。PCR断片の精製及びアガロースゲルからのDNA断片の抽出のため、QIAquick(商標)Gel抽出キット(Qiagen)を使用した。
【0157】
酵素
DNA操作のための酵素(例えば、制限エンドヌクレアーゼ、リガーゼなど)は、New England Biolabs,Inc.から入手可能であり、製造者の指示に従って使用した。
【0158】
プラスミド
pBluescript II SK-(Stratagene#212206)
A.ニデュランス(A.nidulans)グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター(Pgpd)及びA.ニデュランス(A.nidulans)トリプトファンシンターゼターミネーター(TtrpC)によって駆動されるA.ニデュランス(A.nidulans)pyrG遺伝子及び単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を宿す、pHUda801(国際公開第2012/160093号パンフレット)の誘導体であるpHUda963は、国際公開第2012/160093号パンフレット中の実施例4に記載されている。
【0159】
アクレモニウム・アルカロフィルス(Acremonium alcalophilus)リゾチーム(Aaリゾチーム)遺伝子を宿すpJaL1470は、国際公開第2015144936A1号パンフレットに記載されている。
【0160】
微生物株
発現宿主株アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)C5553及びM1816(pyrG-表現型/C5553のウリジン栄養要求性)はNovozymesにより単離され、国際公開第2012/160093号パンフレット中の実施例14に記載の土壌から単離されたアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)NN049184の誘導体である。C5553及びM1816は、アミログリコシダーゼ(amyloglycosidase)活性の発現を破壊するように遺伝子組換えしている。
【0161】
培地
COVE微量金属溶液は、0.04gのNaB4O7・10H2O、0.4gのCuSO4・5H2O、1.2gのFeSO4・7H2O、0.7gのMnSO4・H2O、0.8gのNa2MoO2・2H2O、10gのZnSO4・7H2O、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0162】
50×COVE塩溶液は、26gのKCl、26gのMgSO4・7H2O、76gのKH2PO4、50mlのCOVE微量金属溶液、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0163】
COVE培地は、342.3gのスクロース、20mlの50×COVE塩溶液、10mlの1Mアセトアミド、10mlの1.5M CsCl2、25gのノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0164】
COVE-N-Glyプレートは、218gのソルビトール、10gのグリセロール、2.02gのKNO3、50mlのCOVE塩溶液、25gのノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0165】
COVE-N(tf)は、342.3gのスクロース、3gのNaNO3、20mlのCOVE塩溶液、30gのノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0166】
COVE-N上層アガロースは、342.3gのスクロース、3gのNaNO3、20mlのCOVE塩溶液、10gの低溶融アガロース、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0167】
COVE-Nは、30gのスクロース、3gのNaNO3、20mlのCOVE塩溶液、30gのノーブル寒天、及び脱イオン水からなり、1リットルにした。
【0168】
STC緩衝液は、0.8Mソルビトール、25mMトリス、pH8、及び25mM CaCl2からなった。
【0169】
STPC緩衝液は、STC緩衝液中、40%PEG4000からなった。
【0170】
LB培地は、10gのトリプトン、5gの酵母エキス、5gの塩化ナトリウム、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
【0171】
LBプラスアンピシリンプレートは、10gのトリプトン、5gの酵母エキス、5gの塩化ナトリウム、15gのバクト(Bacto)寒天、1ml当たり100μgのアンピシリン、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
【0172】
YPG培地は、10gの酵母エキス、20gのバクト(Bacto)ペプトン、20gのグルコース、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
【0173】
SOC培地は、20gのトリプトン、5gの酵母エキス、0.5gのNaCl、10mlの250mM KCl、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
【0174】
TAEバッファーは、4.84gのトリス塩基、1.14mlの氷酢酸、2mlの0.5M EDTApH8.0、及び1リットルまでの脱イオン水から構成された。
【0175】
アスペルギルス(Aspergillus)の形質転換
アスペルギルス(Aspergillus)種の形質転換は、酵母形質転換のための一般的方法を用いて達成することができる。本発明における好ましい手順は、下記の通りである。
【0176】
10mMウリジンで補充した100mlのYPG培地に、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)宿主株を接種し、32℃、80rpmで16時間インキュベートした。ペレットを収集し、0.6M KClで洗浄した後、1ml当たり20mgの最終濃度で市販のβ-グルカナーゼ製品(GLUCANEX(商標)、Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を含有する20mlの0.6M KClに再懸濁させた。プロトプラストが形成されるまで、懸濁液を32℃、80rpmでインキュベートし、続いてSTCバッファーで2回洗浄した。
【0177】
プロトプラストをヘマトメータで計数してから、STC:STPC:DMSOの8:2:0.1溶液に再懸濁させ、最終濃度2.5×107プロトプラスト/mlに調節した。約4μgのプラスミドDNAを100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、穏やかに混合した後、氷上で30分間インキュベートした。1mlのSPTCを添加し、プロトプラスト懸濁液を37℃で20分間インキュベートした。10mlの50℃のCove又はCove-N上層アガロースの添加後、反応物をCove又はCove-N(tf)寒天プレート上に注ぎ、プレートを30℃で5日間インキュベートした。
【0178】
【0179】
3ステップサイクル:
1.前変性:94℃、2分
2.変性:94℃、15秒
3.アニーリング:Tm-[5~10]℃*、30秒
4.伸長:68℃、1分/kb
5.全体で35サイクルにわたる反復ステップ#2~4
【0180】
Aaリゾチーム産生用の実験室規模タンク培養
発酵はフェドバッチ発酵として実施した(H.Pedersen 2000,Appl Microbiol Biotechnol,53:272-277)。選択した株を液体培地中で前培養し、次いで酵素産生のさらなる培養のため、成長した菌糸をタンクに移した。酵素産生を阻止する、過量でないグルコース及びアンモニウムの供給と共に、34℃、pH4.75で8日間培養した。培養液を酵素アッセイ用に使用した。
【0181】
配列
配列番号4:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ステロイドデヒドロゲナーゼゲノムDNA配列
配列番号5:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ステロイドデヒドロゲナーゼコード配列(又はcDNA)
配列番号6:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ステロイドデヒドロゲナーゼアミノ酸配列
【0182】
実施例26 アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)におけるステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の破壊
ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊プラスミドpIhar473の構築
プラスミドpIhar473を、選択可能マーカーとしてのA.ニデュランス(A.nidulans)オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrG)とそのターミネーターリピートによって分離された、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子における5’及び3’隣接領域、及びヒト単純ヘルペスウイルス1(herpes simplex virus 1)(HSV-1)チミジンキナーゼ遺伝子を有するように構築した。HSV-1チミジンキナーゼ遺伝子は、ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の3’隣接領域の3’側に存在し、ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の遺伝子座を正確に標的にしないアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)形質転換体の対抗選択を可能にする。プラスミドは、下記のようないくつかのステップで構築した。
【0183】
A.ニガー(A.niger)ステロイドデヒドロゲナーゼの3’隣接領域を有するPCR産物は、以下のプライマー:
配列番号42:プライマーIH1232-3’steD-F:
5’-aactctctcctctagaTTATGTAGCATGAGACCAGCGGGGA-3’
配列番号43:プライマーIH1233-3’steD-R:
5’-acaggagaattcttaattaaAGTCCGGGGTGGGGAGTTTTCAGGC-3’
を使用して作製した。
【0184】
所望される断片を、材料及び方法に記載のような約100ngのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)NN049184のゲノムDNAからなる反応物中でPCRにより増幅した。94℃で2分間の1サイクル;各々が94℃で15秒間、55℃で30秒間、及び68℃で2分間の35サイクル;並びに4℃保持としてプログラムしたBio-Rad(登録商標)C1000 Touch(商標)サーマルサイクラー内で反応物をインキュベートした。得られた1,500bpのPCR断片を、TAE緩衝液を使用し、0.8%アガロースゲル電気泳動により精製し、ゲルから切除し、QIAQUICK(登録商標)ゲル抽出キットを使用して抽出した。
【0185】
プラスミドpHUda963を、XbaI及びPacI(New England Biolabs Inc.)で消化し、TAE緩衝液を使用し、0.8%アガロースゲル電気泳動により精製し、ここで8,153bpの断片をゲルから切除し、QIAQUICK(登録商標)ゲル抽出キットを使用して抽出した。8,153bpの断片を、In-Fusionキット(Clontech Laboratories,Inc.)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、1,500bpのPCR断片にライゲートした。1μLの反応混合物をDH5α化学的コンピテント大腸菌(E.Coli)細胞内に形質転換した。形質転換体を、LB+アンピシリンプレート上に拡散させ、37℃で一晩インキュベートした。QIAミニ-プレップキットを使用し、プラスミドDNAをいくつかの形質転換体から精製した。プラスミドDNAを、適切な制限酵素の使用により適切なライゲーションについてスクリーニングし、続いてTAE緩衝液を使用し、0.8%アガロースゲル電気泳動を行った。1つのプラスミドをpIhar473-3’steDと名付けた。
【0186】
A.ニガー(A.niger)ステロイドデヒドロゲナーゼの5’隣接領域を有するPCR産物は、以下のプライマー:
配列番号44:プライマーIH1230-5’steD-F:
5’-gtggcggccgcgtttaaacATCCCTATTTTAAATACCGAGTATG-3’
配列番号45:プライマーIH1231-5’steD-R:
5’-tcagtcacccggatccctaATGGTGGCAGTCGTGTTGGATGCCT-3’
を使用して作製した。
【0187】
所望される断片を、材料及び方法に記載のような約100ngのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)NN049184のゲノムDNAからなる反応物中でPCRにより増幅した。94℃で2分間の1サイクル;各々が94℃で15秒間、55℃で30秒間、及び68℃で2分間の35サイクル;並びに4℃保持としてプログラムしたBio-Rad(登録商標)C1000 Touch(商標)サーマルサイクラー内で反応物をインキュベートした。1,500bpのPCR断片を、TAE緩衝液を使用し、0.8%アガロースゲル電気泳動により精製し、ゲルから切除し、QIAQUICK(登録商標)ゲル抽出キットを使用して抽出した。
【0188】
プラスミドpIhar473-3’steDを、PmeI及びBamHI(New England Biolabs Inc.)で消化し、TAE緩衝液を使用し、0.8%アガロースゲル電気泳動により精製し、ここで9,653bpの断片をゲルから切除し、QIAQUICK(登録商標)ゲル抽出キットを使用して抽出した。9,653bpの断片を、In-Fusionキット(Clontech Laboratories,Inc.)を使用し、製造業者の使用説明書に従い、1,500bpのPCR断片にライゲートした。5μLのライゲーション混合物をDH5α化学的コンピテント大腸菌(E.Coli)細胞内に形質転換した。形質転換体を、LB+アンピシリンプレート上に拡散させ、37℃で一晩インキュベートした。QIAミニ-プレップキットを使用し、プラスミドDNAをいくつかの形質転換体から精製した。プラスミドDNAを、適切な制限酵素の使用により適切なライゲーションについてスクリーニングし、続いてTAE緩衝液を使用し、0.8%アガロースゲル電気泳動を行った。1つのプラスミドをpIhar473と名付けた(配列番号46、
図12)。
【0189】
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株M1816におけるステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の破壊
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株M1816のプロトプラストは、10mMウリジンで補充した100mlのYPG培地においてこの株を32℃で16時間にわたり80rpmで穏やかに攪拌しながら培養することにより調製した。ペレットを収集し、0.6M KClで洗浄した後、1ml当たり20mgの最終濃度で市販のβ-グルカナーゼ製品(GLUCANEX(商標)、Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)を含有する20mlの0.6M KClに再懸濁させた。プロトプラストが形成されるまで、懸濁液を32℃、80rpmでインキュベートした。MIRACLOTH(登録商標)でライニングした漏斗を介して50mlの無菌プラスチック製遠心管中にプロトプラストを濾過した後、0.6M KClで洗浄して、捕捉したプロトプラストを抽出した。合わせた濾過物及び上清を2,000rpmで15分間の遠心分離により収集した。上清を廃棄し、ペレットを10~25mlのSTCで洗浄し、2,000rpmで10分間再度遠心分離し、続いてSTCバッファーで2回洗浄した。プロトプラストをヘマトメータで計数してから、STC:STPC:DMSOの8:2:0.1溶液に再懸濁させ、最終濃度2.5×107プロトプラスト/mlに調節した。
【0190】
約4μgのplhar473を1mlのプロトプラスト懸濁液に添加し、穏やかに混合した後、氷上で30分間インキュベートした。3mlのSPTCを添加し、プロトプラスト懸濁液を37℃で20分間インキュベートした。12mlの50℃のCOVE-Nトップアガロースを添加後、混合物をCOVE-Nプレートに注ぎ、これらのプレートを30℃で7日間インキュベートした。増殖した形質転換体を、plhar473に存在する単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を発現する細胞を殺傷する薬剤である、1.5uM5-フルオロ-2-デオキシウリジン(FdU)で補充したCOVE-Nプレートに無菌爪楊枝で移した。単一の胞子単離物をCOVE-N-glyプレートに移した。
【0191】
ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子を破壊する、plhar473を含有するアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株M1816の形質転換体候補をサザン分析によりスクリーニングした。胞子精製形質転換体の各々を3mlのYPG培地で培養し、200rpmで振盪しながら30℃で2日間インキュベートした。MIRACLOTH(登録商標)でライニングした漏斗を用いて、バイオマスを収集した。粉砕した菌糸体を、FastDNA SPIN Kit for Soil(MP Biomedicals)を用いたゲノムDNA調製に製造者の指示に従って供した。
【0192】
ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子座の破壊を確認するために、サザンブロット分析を実施した。各形質転換体からの5μgのゲノムDNAをSpeIで消化した。ゲノムDNA消化反応物は、5μgのゲノムDNA、1μlのSpeI、2μlの10×NEB CutSmartバッファー、及び20μlまでの水から構成された。ゲノムDNA消化物を37℃で約16時間インキュベートした。消化物は、TAEバッファーを用いた0.8%アガロースゲル電気泳動に付し、TURBOBLOTTER(登録商標)を用いて、hybond N+(GE Healthcare Life Sciences,Manchester,NH,USA)上に、製造者の推奨事項に従い約1時間ブロッティングした。この膜を481bpジゴキシゲニン標識アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ステロイドデヒドロゲナーゼプローブとハイブリダイズしたが、このプローブは、以下に示すプライマーIH1252-ste-proF(センス)及びIH1253-ste-500R(アンチセンス)を用いたPCRによるジゴキシゲニン-11-dUTPの組み込みにより合成したものである。
配列番号47:プライマーIH1252-ste-proF:
5’-ATACTCTCCGTCAGCATCCTGCCAG-3’
配列番号48:プライマーIH1253-ste-500R:
5’-CTGCTCCTTCGATCCATAAGGCAAC-3’
【0193】
増幅反応物(50μl)は、最終容量50μlで、200μMのPCR DIG Labeling Mix(Roche Applied Science,Palo Alto,CA,USA)、plhar473を使用するKOD-Plus(TOYOBO)による0.5μMのプライマーから構成された。増幅反応物をBio-Rad(登録商標)C1000 Touch(商標)Thermal Cyclerにおいてインキュベートしたが、これは、94℃で2分を1サイクル;各々が94℃で15秒、55℃で30秒、及び68℃で30秒を30サイクル、並びに4℃での保持のようにプログラムした。PCR産物は、TAEバッファーを用いた0.8%アガロースゲル電気泳動により精製し、ここで、0.5kb断片をゲルから切除した後、QIAQUICK(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて抽出した。変性プローブをDIG Easy Hybバッファーに直接添加し、42℃で一晩ハイブリダイゼーションを実施した。ハイブリダイゼーション後洗浄(各々、2×SSCで2回、室温、5分、及び0.1×SSCで2回、68℃、15分)後、DIG検出システム及びCPD-Star(Roche)を使用し、製造業者のプロトコルに従い、化学発光検出を実施した。DIG標識DNA分子量マーカーII(Roche)を標準マーカーとして使用した。ステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子座に正確な組込みをもたらす474P2-1株及び474P2-5株(ハイブリダイズバンドは5118bpから7612bpで変化した)を、後の実験用に選択した。
【0194】
実施例27:474P2-1及び474P2-5におけるAaリゾチームの発現
amdS選択マーカーを伴うAaリゾチーム遺伝子のA.ニガー(A.niger)474P2-1及び474P2-5への染色体挿入(国際公開第2015144936A1号パンフレットに記載のpJaL1470)を、国際公開第2012/160093号パンフレットに記載のように実施した。Aaリゾチーム発現プラスミドは、flpリコンビナーゼにより、マンノシルトランスフェラーゼ(alg2)、グルコキナーゼ(gukA)、酸安定性アミラーゼ(asaA)及びマルチ銅オキシダーゼ(mcoH)である、4つの予め指定された遺伝子座が標的にされた。
【0195】
Aaリゾチーム遺伝子の参照ステロイドデヒドロゲナーゼ-野生型A.ニガー(A.niger)C5553への染色体挿入も実施した。十分に成長した株を精製し、サザンブロッティング分析にかけ、Aaリゾチーム遺伝子がmcoH、gukA、asaA及びalg2遺伝子座に正確に導入されるか否かを確認した。非放射性プローブを作製するための以下のプライマーセットを使用し、選択された形質転換体を分析した。
【0196】
プロモーター領域の場合:
配列番号49:HTJP-324 AAGGGATGCAAGACCAAACC
配列番号50:HTJP-325 TGAAGAATTTGTGTTGTCTGAG
【0197】
選択された形質転換体から抽出したゲノムDNAをSpeIで消化し、次にプロモーター領域で探索した。正しい遺伝子導入事象により、SpeI及びMluI消化による6.7kb(alg2)、2.9kb(mcoH)、6.7kb(gukA)及び2.7kb(asaA)のサイズでのハイブリダイズシグナルが認められ、上記の探索を行った。
【0198】
mcoH、gukA、asaA及びalg2遺伝子座での遺伝子の4コピーの正しい組込み事象が仮定される株の中で、各宿主(1470-474P2-1、1470-474P2-5、1470-C5553-13)からのリゾチームを有する1つの株を選択した。
【0199】
実施例28:酵素産生時のステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊の効果
474P2-1、474P2-5及びC5553からの1つの株を実験室規模タンク内で発酵させ、それらの酵素活性(LSU(F)/ml活性)を実施例7に記載の材料及び方法に従って測定し);結果を下表に示す。ステロイドデヒドロゲナーゼ破壊株は、ガラス発酵槽内で参照ステロイドデヒドロゲナーゼ-野生型株よりも約1.1倍高いリゾチーム(LSU(F)/ml)活性を示した(表3)。
【0200】
【0201】
実施例(アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae))
微生物株
AT3091株は、国際公開第2006037328号パンフレットの配列番号4に記載のシトロバクター・ブラアキィ(Citrobacter braakii)フィターゼを発現している。この株は、国際公開第2012160093号パンフレットに記載のFLP組込み系を用いて、4つの別々の染色体上の4つの特定の遺伝子座にタンデムな逆方向リピートとして挿入されている、シトロバクター・ブラアキィ(Citrobacter braakii)フィターゼの8つの遺伝子コピーを有する。AT3091株を作出するために使用される宿主は、国際公開第2018167153号パンフレットの実施例4に記載のJaL1903に由来する。
【0202】
コウジカビ(A.oryzae)株における実験室規模タンク培養
発酵は、フェドバッチ発酵として実施し(H.Pedersen 2000,Appl Microbiol Biotechnol,53:272-277)、ここでは選択された株を液体培地中で前培養し、次に成長した菌糸をタンクに移し、さらなる培養及び酵素産生に備えた。培養は34℃で8日間実施した。pHを制御するため、アンモニアを使用した。pHは、バッチ段階中、6で保持し、フェドバッチでは、pH5.4で保持した。マルトースシロップで栄養した。培養液を酵素アッセイに使用した。
【0203】
国際公開第2006037328号パンフレットの実施例4に記載のように、フィターゼ活性測定を実施した。
【0204】
実施例29-切断されたステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子を有するフィターゼ発現株の構築及び試験
配列番号7(ゲノム)及び配列番号8(cDNA)によってコードされるコウジカビ(A.oryzae)ステロイドデヒドロゲナーゼ(配列番号9)の切断されたステロイドデヒドロゲナーゼを作製し、T.リーセイ(T.reesei)ステロイドデヒドロゲナーゼ突然変異体(NJOC586)に類似させるため、停止コドンをアミノ酸位置Y234で、コドンTATをTAGに突然変異させることにより導入した。
【0205】
停止コドンを導入するため、オリゴヌクレオチド媒介性CRISPR遺伝子編集を、Noedvig et al.Fungal Genetics and Biology 115(2018)78-89に記載のように、Cas9をIncriptaから提供されたMad7と置換する改良を伴い、実施した。
【0206】
突然変異に使用されるオリゴoAT3303は、アンチセンスの配向であり、以下の配列(配列番号51)を有する:
【化1】
【0207】
Mad7複合体によるさらなる切断を阻止するため、PAM部位に突然変異が導入された2つの下線のヌクレオチド及び太字のヌクレオチドは、Y234に対応するコドンを停止コドンに変更した。
【0208】
CRISPR-Mad7プラスミドpAT3631(
図13、配列番号52)は、1)cas9遺伝子をmad7遺伝子と交換し、2)pyrGマーカー遺伝子をbar遺伝子(ビアラホスに対する耐性を与える)と置換し(Thompson et al.1987,EMBO J 6:2519-2523)、且つ3)wAプロトスペーサーを、標的配列の直ぐ上流にPAM部位TTTCを有する、対応する染色体配列を標的化するプロトスペーサーTCTCTCAAGAAGTACACCCTT(配列番号53)と置換するといった方法でのpAT1153(国際公開第19046703号パンフレット、実施例25)の修飾により構築した。
【0209】
AT3091のアスペルギルス(Aspergillus)形質転換を、Christensen et al.,1988,Biotechnology 6:1419-1422に従って実施した。要するに、コウジカビ(A.oryzae)菌糸をリッチな栄養培養液中で成長させた。菌糸を濾過により培養液から分離した。酵素製剤Glucanex(登録商標)(Novozymes A/S)を、リン酸ナトリウムでpH5.0に緩衝化された1.2M MgSO4などの浸透圧安定化緩衝液中の菌糸に添加した。懸濁液を撹拌しながら37℃で60分間インキュベートした。プロトプラストをMiracloth(登録商標)(Calbiochem Inc.)を通して濾過し、菌糸細片を除去した。プロトプラストを収集し、STCで2回洗浄した。次に、プロトプラストを200~1000μlのSTCに再懸濁した。
【0210】
AT3091の形質転換の場合、1μgのプラスミドpAT3631及び100ピコモルの修復オリゴoAT3303を100μlのプロトプラスト懸濁液に添加し、次に200μlのPEG緩衝液を添加した。混合物を室温で20分間インキュベートした。プロトプラストを収集し、1.2Mソルビトールで2回洗浄し、200μlの1.2Mソルビトールに再懸濁した。炭素源としての1.0Mスクロースと窒素源としての10mM尿素と100mg/lのビアラホスを含有する最少培地寒天プレート(Cove,1966,Biochem.Biophys.Acta.113:51-56)上で形質転換体を選択するとき、bar遺伝子を含有する形質転換体を、ビアラホスに対する耐性を与えるそれらの能力について選択した。37℃での増殖から5~7日後、安定な形質転換体は、勢いよく成長し、胞子形成するコロニーとして出現した。形質転換体は、CRISPR-mad7プラスミドが失われる、非選択プレート(即ちビアラホスを有しない)上の分生子柄を通じて1回精製した。
【0211】
予想された突然変異を検証するため、選択された形質転換体に対して以下のプライマー:
oAT3163:CTAGCAGTCTCAATCGC(配列番号54)
oAT3164:TTGACCGTGACAAAGAC(配列番号55)
を用いてPCRを実施し、得られた404bpのPCR産物を、PCR用に用いられるプライマーを用いて配列決定した。停止コドンが導入されている1つの形質転換体AT3944を、実験室タンク発酵において選択した。
【0212】
AT3091及びAT3944及びフィターゼ活性の発酵を、下記方法のように実施した。117.4時間から発酵の終了まで、AT3944のフィターゼ活性は、1.4%~6.9%より高かった(182.7時間後、約3%より高い状態で終了、
図14)。結果は、推定上の天然ステロイドデヒドロゲナーゼの不活性化が、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)におけるフィターゼ発現に対する正の影響を有することを示す。
【0213】
本明細書中で説明及び主張される発明は、本明細書に開示される特定の態様により範囲が限定されるべきでない。というのは、これらの態様が本発明のいくつかの態様を例示するものとして意図されるからである。いずれかの均等な態様は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。当然ながら、本発明の様々な修飾は、本明細書中で示され、説明される場合に加えて、前記説明から当業者が理解できることになろう。かかる修飾はまた、貼付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。矛盾が生じる場合には、定義を含む本開示が制御する。
【配列表】