IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-パック電池 図1
  • 特許-パック電池 図2
  • 特許-パック電池 図3
  • 特許-パック電池 図4
  • 特許-パック電池 図5
  • 特許-パック電池 図6
  • 特許-パック電池 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】パック電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/367 20210101AFI20241224BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241224BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20241224BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241224BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20241224BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20241224BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20241224BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20241224BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/204 401H
H01M50/213
H01M50/227
H01M50/244 Z
H01M50/293
H01M50/342 101
H01M50/35 201
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021535320
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028646
(87)【国際公開番号】W WO2021020329
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019142581
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 健明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 憲作
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-023587(JP,A)
【文献】特開2006-190607(JP,A)
【文献】特開2007-012485(JP,A)
【文献】米国特許第07871719(US,B2)
【文献】特開2012-204296(JP,A)
【文献】特開2001-266818(JP,A)
【文献】特開2008-226518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/342 - 367
H01M 50/204 - 216
H01M 50/227
H01M 50/244
H01M 50/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が設定圧力を超えると開弁する排出弁を端面に有する電池セルを複数列に配置してなる電池ブロックと、
前記電池ブロックの端部に連結してなる耐熱キャップと、
前記電池ブロックを収納してなり、
前記排出弁の排気ガスをケース外に排気する排気開口を有する電池ケースと、
を備えるパック電池であって、
前記電池ブロックは、
前記耐熱キャップを連結してなる第1の端部に、
前記電池セルの前記排出弁を設けてなる弁側端面を配置してなり、
前記耐熱キャップは、
電池ブロック端面との間に第1の排出隙間を設けて配置してなる閉塞プレートと、
前記閉塞プレートの周囲に連結されて、
電池ブロック外周との間に第2の排出隙間を設けて配置してなる周壁と、
前記閉塞プレートの電池ブロック端面側であって、
隣接する前記電池セル端面の間に配置されて、
前記第1の排出隙間を各々の前記電池セルの端面に区画してなる隔壁とを備え、
前記電池セルの弁側端面に排出される排気ガスが、前記第1の排出隙間と前記第2の排出隙間からなる排出隙間を通過して、前記排気開口から外部に排気されるようにしてなることを特徴とするパック電池。
【請求項2】
請求項1に記載されるパック電池であって、
前記電池ブロックが、前記電池セルを定位置に配置してなる電池ホルダを備え、
前記第2の排出隙間が、
前記周壁と前記電池ホルダとの間に設けられてなることを特徴とするパック電池。
【請求項3】
請求項2に記載されるパック電池であって、
前記電池ホルダと前記電池ケースがプラスチック製で、
前記耐熱キャップが、
前記電池ホルダおよび前記電池ケースよりも耐熱温度の高いプラスチック製で、
前記閉塞プレートと前記周壁と前記隔壁とがプラスチックで一体構造に成形されてなることを特徴とするパック電池。
【請求項4】
請求項3に記載されるパック電池であって、
前記耐熱キャップが、
耐熱繊維で補強されてなる繊維強化プラスチックであることを特徴とするパック電池。
【請求項5】
請求項4に記載されるパック電池であって、
前記耐熱繊維が無機繊維であることを特徴とするパック電池。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載されるパック電池であって、
前記電池ブロックが、
第1の端部の端面において、
隣接する前記電池セルを接続してなるリード板を備え、
前記隔壁の先端縁が、
前記リード板の表面に接触してなることを特徴とするパック電池。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれかに記載されるパック電池であって、
前記電池セルが円筒電池であることを特徴とするパック電池。
【請求項8】
請求項7に記載するパック電池であって、
前記隔壁が、
隣接する前記円筒電池の外周にできる谷間に配置されてなることを特徴とするパック電池。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載するパック電池であって、
前記電池セルが非水系電解液二次電池であることを特徴とするパック電池。
【請求項10】
請求項9に記載するパック電池であって、
前記電池セルがリチウムイオン電池であることを特徴とするパック電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースに充電できる電池を内蔵しているパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の電源として使用されるパック電池は、近年、高出力化が一層求められており、単位体積あたりの効率に優れたリチウムイオン電池等の非水系電解液二次電池が採用されている。リチウムイオン電池は、高出力である反面、何らかの原因によって内圧が上昇することがある。電池の内圧上昇に対する安全性を確保するために、設定圧力で開弁して破裂を防止する排出弁が設けられる。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-211909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排出弁は、内圧が設定圧力よりも高くなる状態で開弁するが、この状態で電池は異常な発熱状態にあるので、開弁した排出弁からは高温のガスが勢いよく噴出される。この電池セルを内蔵するパック電池は、電池セルから勢いよく噴射される高温の排気ガスを安全に外部に排出するのが難しい。とくに、非水系電解液二次電池であるリチウムイオン電池の排出弁から噴射される排気ガスは、400℃以上と異常な高温で、しかも勢いよく噴射されることから、排気ガスが外部に高い温度で排出されると種々の弊害がある。さらに、電池セルの排出弁から噴出される超高温の排気ガスは、電池ケースの内部で他の電池セルを加熱して熱暴走を誘発する原因となる。電池ケース内での熱暴走の誘発は、発生する熱エネルギーを飛躍的に増大して安全性を阻害する。
【0005】
本発明は、以上の弊害を防止することを目的として開発されたもので、本発明の主な目的は、開弁する排出弁から噴射される高温の排気ガスによる安全性の低下を防止するパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様のパック電池は、内圧が設定圧力を超えると開弁する排出弁を端面に有する電池セルを複数列に配置してなる電池ブロックと、電池ブロックの端部に連結してなる耐熱キャップと、電池ブロックを収納してなり、排出弁の排気ガスをケース外に排気する排気開口を有する電池ケースとを備えている。電池ブロックは、耐熱キャップを連結してなる第1の端部に、電池セルの排出弁を設けてなる弁側端面を配置している。耐熱キャップは、電池ブロック端面との間に第1の排出隙間を設けて配置してなる閉塞プレートと、閉塞プレートの周囲に連結されて、電池ブロック外周との間に第2の排出隙間を設けて配置してなる周壁と、閉塞プレートの電池ブロック端面側であって、隣接する電池セル端面の間に配置されて、第1の排出隙間を各々の電池セルの端面に区画してなる隔壁とを備え、電池セルの弁側端面に排出される排気ガスが、第1の排出隙間と第2の排出隙間からなる排出隙間を通過して、排気開口から外部に排気されるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパック電池は、電池セルの排出弁から噴射される高温の排気ガスによる弊害を抑制して安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るパック電池の斜視図である。
図2図1に示すパック電池の分解斜視図である。
図3図2に示すパック電池の分解斜視図である。
図4図1に示すパック電池のIV-IV線断面図である。
図5図4に示すパック電池のV-V線断面図である。
図6図1に示すパック電池のVI-VI線断面図である。
図7】耐熱キャップと電池ブロックを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施態様のパック電池は、内圧が設定圧力を超えると開弁する排出弁を端面に有する電池セルを複数列に配置してなる電池ブロックと、電池ブロックの端部に連結してなる耐熱キャップと、電池ブロックを収納してなり、排出弁の排気ガスをケース外に排気する排気開口を有する電池ケースとを備えている。電池ブロックは、耐熱キャップを連結してなる第1の端部に、電池セルの排出弁を設けてなる弁側端面を配置している。耐熱キャップは、電池ブロック端面との間に第1の排出隙間を設けて配置してなる閉塞プレートと、閉塞プレートの周囲に連結されて、電池ブロック外周との間に第2の排出隙間を設けて配置してなる周壁と、閉塞プレートの電池ブロック端面側であって、隣接する電池セル端面の間に配置されて、第1の排出隙間を各々の電池セルの端面に区画してなる隔壁とを備え、電池セルの弁側端面に排出される排気ガスが、第1の排出隙間と第2の排出隙間からなる排出隙間を通過して、排気開口から外部に排気されるようにしている。
【0010】
以上のパック電池は、開弁する排出弁から噴射される高温の排気ガスによる弊害を解消して高い安全性を確保する。それは、以上のパック電池が、排出弁から噴射される高温の排気ガスを、耐熱キャップに衝突させてエネルギーを減衰し、さらに流動方向をコントロールして排気できるからである。この特長は、以上のパック電池が、複数列に電池セルを配置している電池ブロックの第1の端部を、電池セルの排出弁を設けた弁側端面として、この端部に耐熱キャップを連結し、この耐熱キャップには、電池ブロック端面との間に第1の排出隙間を設けて閉塞プレートを配置し、閉塞プレートの周囲には周壁を設けて、この周壁と電池ブロック外周との間には第2の排出隙間を設け、さらに、閉塞プレートの電池ブロック端面側には、隣接する電池セル端面の間に隔壁を設けて、この隔壁で第2の排出隙間を各々の電池セルの端面毎に区画して、電池セルの弁側端面に排出される排気ガスを、第1の排出隙間と第2の排出隙間を通過して排気するからである。とくに、以上のパック電池は、電池ブロックの端部に配置している特定の電池セルが熱暴走して高温の排気ガスを噴出する状態において、端面から排出される排気ガスを、隔壁で区画した第1の排出隙間に噴出して、第2の排出隙間に案内する。この耐熱キャップは、高温の排気ガスを第1の排出隙間から第2の排出隙間に案内し、エネルギーを減衰して排気するが、熱暴走していない隣の電池セルの端面には流動させない。とくに、噴出された直後の400℃を超える高温の排気ガスを、熱暴走していない隣の電池セルの端面には流動させることなく、外部に排気する。このため、電池セルの熱暴走の誘発を防止しながら、排気ガスの運動のエネルギーと熱エネルギーの両方を減衰して外部に排気する。
【0011】
さらに、以上のパック電池は、電池ブロックに耐熱キャップを連結して熱暴走の誘発を防止し、排気ガスのエネルギーを減衰して外部に排出できるので、組み立てが簡単で、能率よく多量生産できる特長も実現する。
【0012】
本発明の第2の実施態様のパック電池は、電池ブロックが、電池セルを定位置に配置してなる電池ホルダを備えて、第2の排出隙間を、周壁と電池ホルダとの間に設けている。
【0013】
本発明の第3の実施態様のパック電池は、電池ホルダと電池ケースがプラスチック製で、耐熱キャップが、電池ホルダおよび電池ケースよりも耐熱温度の高いプラスチック製で、閉塞プレートと周壁と隔壁とをプラスチックで一体構造に成形している。
【0014】
本発明の第4の実施態様のパック電池は、耐熱キャップを、耐熱繊維で補強されてなる繊維強化プラスチックとしている。
【0015】
本発明の第5の実施態様のパック電池は、耐熱繊維を無機繊維としている。
【0016】
本発明の第6の実施態様のパック電池は、電池ブロックが、第1の端部の端面において、隣接する電池セルを接続してなるリード板を備え、隔壁の先端縁が、リード板の表面に接触している。
【0017】
本発明の第7の実施態様のパック電池は、電池セルを円筒電池としている。また、本発明の第8の実施態様のパック電池は、隔壁を、隣接する円筒電池の外周にできる谷間に配置している。
【0018】
本発明の第9の実施態様のパック電池は、電池セルを非水系電解液二次電池としている。さらに、本発明の第10の実施態様のパック電池は、電池セルをリチウムイオン電池としている。
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施態様を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0020】
(実施形態1)
図1図6に示すパック電池100は、電池セル1を複数列に配置している電池ブロック10を電池ケース2内に収納している。電池ケース2は、第1のケースである下ケース2Aと、第1のケースに連結されて、第1のケースの開口部を閉塞している第2ケースである上ケース2Bとからなる。図2図5の電池ブロック10は、複数の電池セル1を同一平面内で2列、4段に配列している。電池ブロック10は、2列の電池セル1を電池ホルダ4で定位置に配置して電池組立11とし、複数の電池組立11を長手方向に多段に並べて連結している。電池ブロック10は、端部に耐熱キャップ8を連結している。耐熱キャップ8は、電池セル1の排出弁から噴出される高温の排気ガスの流動方向をコントロールしてエネルギーを減衰し、さらに排気ガスを排気開口に案内して、電池ケース2の外部に安全に排気する。
【0021】
(電池セル1)
電池セル1は、内圧が設定圧力を超えると開弁する排出弁を弁側端面1aに設けている円筒電池である。円筒電池は、円筒状の金属ケースに電極と電解液を収納している。金属ケースは、底を閉塞している筒状の外装缶の開口部に、封口板を気密に固定して密閉構造としている。外装缶は、金属板を筒状にプレス加工して製作される。封口板は、絶縁材のパッキンを介して外装缶の開口部周縁にカシメ加工して気密に固定される。
【0022】
電池セル1は、図示しないが、金属ケースの内圧が異常に高くなって破損するのを防止するために、封口板に排出弁を設けて、封口板側を弁側端面1aとしている。この電池セル1は、開口して内部のガスなどを排出する排出弁の開口部を封口板に設けている。ただ、電池セル1は、外装缶の封口板に排出弁の開口部を設けることなく、封口板と反対側の端面である底部に排出弁とその開口部を設けて、底部を弁側端面とすることもできる。排出弁は、内圧が設定圧力、たとえば1.5MPaよりも高くなると開弁して、内圧上昇による金属ケースの破壊を防止する。電池セル1は、たとえば内部ショートして異常な状態になると、排出弁が開弁して破裂を防止する。この状態で、電池セル1の温度も非常に高くなっているので、開弁する排出弁から排出されるガスや電解液(噴出物)は異常な高温となっている。とくに、電池セル1をリチウムイオン電池等の非水系電解液二次電池とするパック電池は、排気ガスの温度が400℃以上の異常な高温となる。さらに、リチウムイオン電池は、非水系の電解液を充填していることから、ケース外に高い温度で排出されると、空気中の酸素に触れて発火して、さらに異常な高温となることがある。リチウムイオン電池に限らず、他の電池においても、排出弁は異常な状態で開弁するので、排出弁から噴出される排気ガスは異常な高温となる。したがって、開弁した排出弁から噴出する排気ガスは、エネルギーを減衰してケース外に排気することが、安全性を高く維持することから極めて大切である。
【0023】
(電池ブロック10)
図2図6に示す電池ブロック10は、一方の端部である第1の端部10Aに耐熱キャップ8を連結している。電池ブロック10は、電池セル1の弁側端面1aを、第1の端部10Aに配置している。電池セル1を複数列に配置する電池ブロック10は、すべての電池セル1の弁側端面1aを第1の端部10Aに配置し、あるいはいずれか一つの電池セル1の弁側端面1aを第1の端部10Aに配置して、排気ガスを電池ブロック10の第1の端部10Aから噴出する。図3の電池ブロック10は、複数組の電池組立11を長手方向に連結している。この電池ブロック10は、各々の電池組立11の間に、排気ガスを排出する排気隙間12を設けている。図3の電池ブロック10は、4組の電池組立11を長手方向に連結しているので、3列の排気隙間12を設けている。各々の排気隙間12は、隣接する電池組立11の間に配置されて、各々の電池組立11の電池セル1から排出させる排気ガスを周囲に分散して排気する。
【0024】
電池組立11は、電池ホルダ4で電池セル1を定位置に配置して2列に並べている。電池ホルダ4は、電池セル1を嵌合して定位置に配置する形状に熱可塑性のプラスチックを成形している。電池ホルダ4のプラスチックは、好ましくはポリカーボネートなどの断熱特性に優れたエンジニアリングプラスチックが適している。図3の電池ホルダ4は、電池ケース2の長手方向に伸びる姿勢で電池セル1を2列に配置している。図の電池ブロック10は、電池組立11の間に排気ガスの排気隙間12を設けて、4段に連結している。電池ブロック10は、排気隙間12に配置しているリード板(図示せず)で、電池セル1を直列又は並列に接続している。図の電池ブロック10は、長手方向に2列の電池セル1からなる電池組立11を4段に並べて、2列4段に8本の電池セル1を直列と並列に接続している。図のパック電池100は、2列の電池セル1からなる電池組立11を4段に連結している電池ブロック10を電池ケース2内に配置しているが、本発明のパック電池は、ケースに収納する電池セル1の個数や接続状態を図の構造には特定しない。
【0025】
排気隙間12は、排出弁から噴出される排気ガスを外部に案内し、かつ電池組立11の電池セル1をリード板13で接続する隙間である。排気隙間12は、たとえば1mm~5mm幅で、電池セル1の端面の排出弁から噴出する排気ガスを周囲に拡散して排出する。
【0026】
(電池ケース2)
電池ケース2は、ポリカーボネート等の熱可塑性のプラスチック製で、全体を細長い箱形として、内部には電池ブロック10と、この電池ブロック10に接続している回路基板3とを内蔵している。電池ケース2や電池ホルダ4に使用するポリカーボネートは、低温から高温まで耐え、かつ耐衝撃性に優れている。ただし、本発明は電池ホルダ4や電池ケース2をポリカーボネートに特定するものでなく、広い温度範囲で使用できる他の熱可塑性樹脂、好ましくは、エンジニアリングプラスチックも使用できる。
【0027】
図1図4の電池ケース2は、下ケース2Aと、下ケース2Aの開口部を閉塞している上ケース2Bとからなる。下ケース2Aは、図にあっては細長い長方形の底プレート21の両側に側壁22を設けている溝形で、側壁22の内側に電池ブロック10を配置している。上ケース2Bは、外周縁を下ケース2Aに連結して、下ケース2Aの上方開口部を閉塞している。図4に示す下ケース2Aは、両側の側壁22を円筒電池に沿うように湾曲形状としている。下ケース2Aは、排気ガスを外部に排気する複数の排気開口23を、側壁22の長手方向に離して設けている。図のパック電池100は、電池ブロック10と下ケース2Aとの間に放熱プレート5を配置している。排気開口23は、放熱プレート5の対向位置に、すなわち、放熱プレート5の外側に開口される。このパック電池100は、排気隙間12に噴出される排気ガスを放熱プレート5でエネルギーを減衰して外部に排気できる。排気ガスは、電池ブロック10と放熱プレート5との間に設けた隙間を通過し、さらに放熱プレート5と電池ケース2との間の隙間を通過して排気開口23から外部に排出される。放熱プレート5を有するパック電池100は、排気ガスのエネルギーを放熱プレート5で減衰して排気できるので、さらに高い安全性を確保できる。ただ、本発明のパック電池は、必ずしも放熱プレート5を配置することなく、排気ガスをケース内の隙間から排気開口23に案内して排気することもできる。
【0028】
(耐熱キャップ8)
図2及び図3のパック電池100は、電池ブロック10の第1の端部10Aに噴出される排気ガスのエネルギーを減衰して排気するために、電池ブロック10に耐熱キャップ8を連結している。図のパック電池100は、電池ブロック10の第1の端部10Aに耐熱キャップ8を連結して、他方の端部であって、リード線19を引き出している第2の端部10Bには、電池ホルダ4に一体成形している端面プレート(図示せず)を配置している。端面プレートは、図示しないが内側に断熱プレートを配置し、あるいは排気ガスを拡散する拡散隙間を設けて、高温の排気ガスによる熱障害を防止する構造としている。ただ、図示しないが、電池ブロック10は両端に耐熱キャップ8を連結して耐熱構造とすることができ、また、耐熱キャップ8を連結しない電池ブロック10の端面には、電池セル1の弁側端面1aを配置しないように電池セル1を配置することもできる。
【0029】
耐熱キャップ8は、電池ホルダ4や電池ケース2よりも優れた耐熱特性の熱可塑性のプラスチックを成形して制作される。耐熱特性に優れたプラスチックには、たとえば無機繊維を埋設して補強している繊維強化プラスチック、たとえばPBT等を成形して制作される。耐熱キャップ8は、電池ブロック10の端部に連結されて、電池セル1の弁側端面1aから噴出される排気ガスのエネルギーを減衰し、流動方向を変更する。図2図7に示す耐熱キャップ8は、電池ブロック端面10aと対向して配置している閉塞プレート31と、閉塞プレート31の周囲に連結している周壁32と、閉塞プレート31の電池ブロック端面10a側に配置している隔壁33とからなり、閉塞プレート31と周壁32と隔壁33とを一体構造に成形している。
【0030】
閉塞プレート31は、排出弁から噴出される排気ガスを排出するために、電池ブロック端面10aとの間に第1の排出隙間15Aを設けている。閉塞プレート31は、第1の排出隙間15Aにおいて、排出弁から噴出される排気ガスを内面に衝突させてエネルギーを減衰し、さらに周囲に拡散する。閉塞プレート31と電池ブロック端面10a、正確には閉塞プレート31と電池セル1の端面との間に設けられる第1の排出隙間15Aは、排気ガスをスムーズに排気しながら、排気ガスの運動のエネルギーを減衰できるように、たとえば、0.5mm以上であって3mm以下に接続される。
【0031】
第1の排出隙間15Aを通過する排気ガスは、閉塞プレート31で周囲に拡散されて、周壁32の内側に衝突する。第1の排出隙間15Aには、電池セル1に固定しているリード板13が配置される。リード板13は、電池セル1の端面に溶着して固定される。リード板13は、中央部にスリットを介して溶着部を設けて、溶接部を電池セル1の端面に溶接している。スリットを介して溶接部の外側に設けられる外周部は、電池セル1の端面に溶接されないので、電池セル1の端面に密着することなくわずかな隙間ができる。したがって、第1の排出隙間15Aは、閉塞プレート31とリード板13との間と、リード板13と電池セル端面との間に設けられる。リード板13の両面にできる第1の排出隙間15Aのトータルの幅は、排気ガスをスムーズに排気しながら、狭い隙間を通過させることで排気ガスの運動のエネルギーを減衰できるように、好ましくは前述の範囲に設定される。
【0032】
周壁32は、第1の排出隙間15Aから流入する排気ガスを方向転換して排気するために、電池ブロック10の外周との間に第2の排出隙間15Bを設けている。図5に示す周壁32は、第1の排出隙間15Aから流入する排気ガスを内側に衝突させてエネルギーを減衰し、さらに周囲に飛散させることなく、流動方向を直角に変更して、電池セル1の長手方向に変更する。排気ガスは、周壁32の内面に衝突し、方向転換して運動のエネルギーを減衰して、電池セル1の長手方向に排出される。周壁32は、電池セル1との間に排気ガスを流動させるために、電池セル1の外周面との間に第2の排出隙間15Bを設けている。閉塞プレート31の内側に衝突して第2の排出隙間15Bに流入した排気ガスは、図の矢印のように隔壁33の内側で方向転換されて電池セル1の長手方向に排出される。
【0033】
図6の隔壁33は、閉塞プレート31の内面に垂直に固定されて電池セル1の端面との間に設けている排出隙間15を区画する。隔壁33は、排出弁が開弁した異常電池セル1の弁側端面1aと閉塞プレート31との間に設けている分割排出隙間15aと、隣接電池セル1と閉塞プレート31との間の分割排出隙間15aを区画する。電池セル1は、たとえば内部ショートなどが原因で熱暴走すると、内圧が異常に上昇して排出弁が開弁する。この状態で、排出弁から噴出される排気ガスは異常な高温となる。高温の排気ガスが隣接電池セル1を加熱すると、熱暴走が誘発される原因となる。隔壁33は、高温の排気ガスが隣接電池セル1の端面に流動するのを阻止して、熱暴走の誘発を防止する。隔壁33は、異常電池セル1から噴出される排気ガスが、隣接電池セル1を加熱するのを防止ために設けられるので、電池セル1の間で排出隙間15を区画する。
【0034】
図4の耐熱キャップ8は、第2の排出隙間15Bを、この図において上側を下側よりも広くして、上側により多量の排気ガスを排気する。第2の排出隙間15Bの上側は、電池ホルダ4に嵌合溝4aを設けて、この嵌合溝4aに隔壁33を案内して、隔壁33を定位置に配置している。
【0035】
隔壁33は、噴出される排気ガスが、隣の電池セル1の端面に流れるのを阻止して、排気ガスが隣の電池セル1を加熱するのを抑制する。隔壁33は、閉塞プレート31から第1の排出隙間15Aに突出して設けられて、各々の電池セル端面の間に配置される。図5の耐熱キャップ8は、第1の排出隙間15Aのみでなく第2の排出隙間15Bにも隔壁33を設けて、第1の排出隙間15Aと第2の排出隙間15Bの隔壁33を一枚の板状としている。この耐熱キャップ8は、高温の排気ガスが、隣の電池セル1を加熱するのをさらに効果的に防止して、隣りの電池セル1の熱障害をさらに効果的に抑制できる。ただ、隔壁は、第1の排出隙間15Aにのみ設けて、電池ブロック10の端面において、排気ガスが隣りの電池セル1の端面を加熱するのを防止する構造とすることができる。
【0036】
図5及び図7の耐熱キャップ8は、第1の排出隙間15Aに配置される隔壁33の中央部を低くすると共に、両端部を高くして第2の排出隙間15Bにも伸びる形状としている。閉塞プレート31の内面から突出する隔壁33は、リード板13の表面に接触して第1の排出隙間15Aを電池セル1の間で分割し、両側の隔壁33は、円筒電池外周の谷間に伸びて、電池セル1と周壁32との間に設けている第2の排出隙間15Bを電池セル1の間で分割する。図4の耐熱キャップ8は、図において電池セル1の上側の第2の排出隙間15Bを下側よりも広くしているので、上側の隔壁33の上下幅を下側よりも広くして、上側の隔壁33の下縁を電池ホルダ4に設けた嵌合溝4aに案内している。この隔壁33を電池ホルダ4の嵌合溝4aに案内する構造は、第2の排出隙間15Bをより確実に排気ガスを漏れないように、区画しながら、隔壁33の位置ずれを阻止して、排気ガスが隣りの電池セル1を加熱するのを、さらに確実に抑制できる特徴がある。
【0037】
(放熱プレート5)
図2及び図3のパック電池100は、排気ガスのエネルギーをより効果的に減衰するために、放熱プレート5を配置している。放熱プレート5は、下ケース2Aの内側であって電池ブロック10との間に配置されて、電池セル1から噴出される排気ガスのエネルギーを減衰させる。放熱プレート5は、電池ケース2よりも優れた熱伝導特性の板材が適している。この放熱プレート5は、衝突する排気ガスの熱エネルギーを吸収し、吸収した熱エネルギーを速やかに広い面積に拡散して下ケース2Aに熱伝導し、下ケース2Aが広い面積で熱エネルギーを外部に放熱する。
【0038】
好ましい熱伝導特性の板材として、放熱プレート5には金属板が使用される。とくに、放熱プレート5はアルミニウム(アルミニウム合金を含む)板が適している。アルミニウム板は耐熱性と優れた熱伝導特性があって軽いので、軽量化しながら排気ガスの熱エネルギーを速やかに拡散して効率よく放熱できる。図のパック電池100は、下ケース2Aの側壁22を円筒電池の外周面に沿う形状として、側壁22と電池ブロック10との間に放熱プレート5を配置している。ここに配置される放熱プレート5は、下ケース2Aの底プレート21内面に配置される部分を平面状とし、側壁22の内側に配置される部分を円筒電池の外面に沿う湾曲形状としている。放熱プレート5は内側に電池ブロック10を配置し、電池ブロック10は電池ホルダ4で電池セル1を定位置に配置しているので、放熱プレート5の内側には、電池ブロック10の電池組立11が配置される。内側に湾曲する側壁部は、電池ブロック10をスムーズに案内して定位置に配置でき、かつ側壁部の内面を電池ブロック10の両側面に接触できるように、電池ブロック10の厚さの約半分の高さとしている。側壁部は、湾曲する電池ブロック10の両側面に接触することで、電池ブロック10からの熱伝導を高効率にできるが、側壁部と電池ブロック10との間に空気層ができると、空気層が熱伝導を阻害する。湾曲する側壁部が電池ブロック10の厚さの半分よりも高くなると、放熱プレート5の上縁の開口幅が電池ブロック10の横幅よりも狭くなって、電池ブロック10をスムーズに挿入するのが難しくなるからである。
【0039】
放熱プレート5は、側壁部の内面を電池ブロック10両側の湾曲面に、底面部を電池ブロック10の底面に面接触させて、電池ブロック10の熱エネルギーを効率よく吸収する。さらに、放熱プレート5は外側面を下ケース2Aの内面に面接触されて、吸収した熱エネルギーを下ケース2Aに効率よく熱伝導する。放熱プレート5は、熱伝導特性の優れた金属板としてアルミニウム板を使用するが、アルミニウム以外の金属板、たとえば銅板、あるいは耐熱性があって優れた熱伝導特性の他の板材も使用できる。
【0040】
(耐熱カバー6)
さらに、放熱プレート5の側縁には、電池組立11の間の排気隙間12の開口部を覆う位置に耐熱カバー6を配置している。耐熱カバー6も放熱プレート5と同様に優れた耐熱性と熱伝導特性のアルミニウム等の金属板が適している。図2及び図3のパック電池100は、放熱プレート5と耐熱カバー6を1枚の金属板として両者を一体構造としている。この構造は、放熱プレート5を介して耐熱カバー6を正確に配置に配置できる特徴がある。耐熱カバー6は、電池ブロック10を内側に配置する状態で、折り曲げて排気隙間12の開口部を閉塞するので、折り曲げ自在な金属板とする。耐熱カバー6と放熱プレート5を1枚の金属板とする構造は、耐熱カバー6が折り曲げ自在であって、電池ブロック10の排気隙間12の開口部の理想的な位置に、位置ずれしないように配置できる。
【0041】
耐熱カバー6は、排気隙間12の開口部を十分にカバーできるように、横幅を排気隙間12よりも広くしている。耐熱カバー6の横幅は、例えば、耐熱カバー6よりも1mm以上広く、好ましくは、2mm以上広く、さらに好ましくは3mm以上広くする。広すぎる耐熱カバー6は、円筒電池の表面に沿って折り曲げして、排気隙間12を理想的な状態で閉塞するのが難しくなるので、横幅はたとえば20mm以下、好ましくは15mm以下とする。図3のパック電池100は、4組の電池組立11を連結しているので、各々の電池組立11の間に配置される排気隙間12が3列となる。耐熱カバー6は、各々の排気隙間12の開口部を塞ぐので、図3の放熱プレート5は、側縁に3列の耐熱カバー6を排気隙間12に沿って設けている。すなわち、各々の排気隙間12を独立して閉塞する複数の耐熱カバー6を設けている。
【0042】
耐熱カバー6は、長くして、排気隙間12の開口部の閉塞領域を広くできる。図3のパック電池100は、電池ブロック10の上面に回路基板3を配置して、耐熱カバー6の先端縁を回路基板3の両側縁に接近する長さとし、耐熱カバー6と回路基板3の両方で排気隙間12の開口部をカバーしている。回路基板3は、ガラスエポキシなどの熱硬化性樹脂製で、熱可塑性樹脂の電池ケース2よりも優れた耐熱性がある。この構造のパック電池100は、排気隙間12の開口部のほぼ全周を、電池ケース2よりも優れた耐熱特性の放熱プレート5と、耐熱カバー6と、回路基板3とでカバーしている。耐熱カバー6と回路基板3との間に広い隙間があると、この隙間を排気ガスが通過するので、この隙間はできる限り狭く、たとえば、2mm以下、好ましくは1mm以下として、排気ガスの通過を抑制する。
【0043】
(回路基板3)
回路基板3は、電池セル1に接続されて電池セル1の保護回路を実現する電子部品(図示せず)を実装している。保護回路は、電池セル1の過充電や過放電を防止する回路、あるいは、過電流を防止する回路、あるいは又、温度が異常に上昇する状態で電流を遮断する回路である。
【0044】
以上のパック電池100は、排出弁から噴出される排気ガスを、耐熱キャップ8と放熱プレート5と耐熱カバー6と回路基板3に衝突させてエネルギーを減衰し、さらに拡散して下ケース2Aに設けた排気開口23からケース外に排出する。排気開口23は、排気ガスを放熱プレート5と耐熱カバー6に衝突させて、エネルギーを減衰して拡散した後、電池ケース2の外部に排気するように、放熱プレート5との対向位置に配置している。放熱プレート5との対向位置に配置される排気開口23は、内側に放熱プレート5があって、放熱プレート5で拡散された排気開口23を電池ケース2の外部に排気する。図2及び図3の下ケース2Aは、複数の排気開口23を下ケース2Aの側壁22に長手方向に離して配置している。このパック電池100は、排気隙間12に噴出される排気ガスを放熱プレート5や耐熱カバー6に衝突させて拡散し、拡散された排気ガスをケース内の隙間14を流動させて、排気開口23から電池ケース2の外部に排気する。下ケース2Aは、排気開口23の開口部を閉塞するように、排気ガスで剥離され、あるいは溶融されるラベル7が付着される。このパック電池100は、排気開口23をラベル7で閉塞して、異物が侵入するのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、排気ガスを安全に排気するパック電池に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0046】
100…パック電池
1…電池セル
1a…弁側端面
2…電池ケース
2A…下ケース
2B…上ケース
3…回路基板
4…電池ホルダ
4a…嵌合溝
5…放熱プレート
6…耐熱カバー
7…ラベル
8…耐熱キャップ
10…電池ブロック
10A…第1の端部
10a…電池ブロック端面
10B…第2の端部
11…電池組立
12…排気隙間
13…リード板
14…隙間
15…排出隙間
15A…第1の排出隙間
15a…分割排出隙間
15B…第2の排出隙間
19…リード線
21…底プレート
22…側壁
23…排気開口
31…閉塞プレート
32…周壁
33…隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7