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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】情報取得システムの光学パターン
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241224BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60J1/00 H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021551523
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2020057474
(87)【国際公開番号】W WO2020187994
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】62/820,363
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/866,217
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/886,060
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ボグスロウスキー,カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】ポーレン,マルクス ヴァルター
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/015086(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/073528(WO,A1)
【文献】特開平05-279090(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110782(WO,A1)
【文献】特開2016-168996(JP,A)
【文献】実開平05-060915(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00-23/00,27/00-29/00,
B32B 17/06-17/10,
B60J 1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報取得システム用視野領域を有するグレージングであって、上記視野領域は、屈折力パターンを提供するように形成され、この屈折力パターンにおいては、情報が収集される距離に基づいて、上記視野領域に亘って屈折力が変化し、ここで上記屈折力は透過屈折力であり、
上記屈折力パターンは、ズーム領域を含み、このズーム領域は、上記情報取得システム用視野領域の大部分の屈折力とは異なる屈折力を有する、
グレージング。
【請求項2】
上記屈折力パターンは、上記視野領域における屈折力の勾配変化を含む、請求項1に記載のグレージング。
【請求項3】
上記屈折力パターンは、上記視野領域の垂直軸に沿った屈折力の変化を含む、請求項1に記載のグレージング。
【請求項4】
上記屈折力パターンは、上記垂直軸に沿って上方に向かって屈折力が減少する、請求項3に記載のグレージング。
【請求項5】
上記屈折力パターンは、上記視野領域の水平軸に沿った屈折力の変化を含む、請求項1に記載のグレージング。
【請求項6】
上記屈折力が、上記視野領域の上記水平軸に沿って実質的に対称である、請求項5に記載のグレージング。
【請求項7】
上記屈折力パターンは、フィルムによって形成されている、請求項1に記載のグレージング。
【請求項8】
上記フィルムはホログラフィックフィルムである、請求項に記載のグレージング。
【請求項9】
上記屈折力パターンは、グレージングの厚さの変化によって形成されている、請求項1に記載のグレージング。
【請求項10】
上記グレージングは、第1のガラス基板、第2のガラス基板、およびポリマー中間膜、を含み、
上記のグレージングの厚さの変化は、ポリマー中間膜の厚さ変化による、請求項に記載のグレージング。
【請求項11】
上記グレージングは、第1のガラス基板および第2のガラス基板を含み、
上記屈折力パターンは、第1のガラス基板および第2のガラス基板の少なくとも一方における局所的な曲率によって決定される。請求項1に記載のグレージング。
【請求項12】
上記グレージングは、第1のガラス基板および第2のガラス基板を含み、
上記屈折力パターンは、第1のガラス基板および第2のガラス基板の少なくとも一方の屈折率の差によって決定される、請求項1に記載のグレージング。
【請求項13】
上記グレージングは、視野領域の少なくとも一部の上に形成されたレンズをさらに含み、このレンズは、視野領域に屈折力パターンを提供するように形成されている、請求項1に記載のグレージング。
【請求項14】
上記屈折力パターンは、凹レンズもしくは凸レンズを含む、請求項1に記載のグレージング。
【請求項15】
上記屈折力パターンは、正および負の屈折力を含む、請求項1に記載のグレージング。
【請求項16】
視野領域を通して情報取得システムが情報を収集するように構成された当該視野領域を備えたグレージングを提供し、
上記視野領域内に屈折力のパターンを提供し、ここで上記屈折力は透過屈折力であり、上記屈折力パターンは、ズーム領域を含み、このズーム領域は、上記情報取得システム用視野領域の大部分の屈折力とは異なる屈折力を有する、
グレージングの製造方法。
【請求項17】
上記の情報取得システム用視野領域内に屈折力のパターンを提供することは、
未硬化樹脂を視野領域内のグレージングに塗布し、
上記未硬化樹脂を成形して所望のレンズ構造を形成し、
上記樹脂を硬化する、ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記グレージングは曲率を有する、請求項1に記載のグレージング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年3月19日に出願された「情報取得システムの光学パターン」と題する米国仮特許出願第62/820,363号、2019年6月25日に出願された「情報取得システムの光学パターン」と題する米国仮特許出願第62/866,217号、2019年8月13日に出願された「情報取得システムの光学パターン」と題する米国仮特許出願第62/886,060号、の優先権を主張し、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、視野領域を有する車両用グレージングに関し、この視野領域を通して情報取得システムが情報を収集する。情報収集のための視野領域は、該視野領域内に屈折力のパターンを提供するように形成される。
【背景技術】
【0003】
自動運転車を含む車両の安全性能と快適性を向上させるために、情報取得システムが車両内側に取り付けられることがある。情報取得システムは、典型的には、種々の電気的センサーおよび/またはカメラを使用する、画像システム、衝突防止システム、ブレーキ支援システム、運転支援システム、および/または、自動運転システム、を含み得る。
【0004】
情報取得システムにおける電気的センサーまたはカメラは、通常、車両用ラミネートウインドシールドの内側面に直接に取り付けられ、あるいは、ウインドシールドの近くに配置される。センサーまたはカメラは、ウインドシールドを通して、赤外線、近赤外線、レーザーレーダー、および//または可視光を、放出および/または検出することにより、車外の状態に関する情報ないしデータを収集する。
【0005】
車両用ラミネートウインドシールドの周囲の不透明なプリント領域に加えて、車外から見たときに電気的センサーやカメラを視界から隠すために、不透明な層(例えば、暗色セラミックプリントおよび/または銀プリント)が、外側ガラス(第1のガラス)の内側面S2あるいは内側ガラス(第2のガラス)の外側面S4の上に印刷され得る。電気的センサーないしカメラを視界から隠すためのこのような不透明プリント領域は、開口部(すなわち、不透明プリントのない局所領域)を有し得、これにより、情報取得システムが、カメラ用開口部を通して車外から情報を収集することができる。
【0006】
自動運転技術は、光学センサーを幅広く利用し、かつ、優れた画質に依存する。ウインドシールドや他の車両ウィンドウの表面の欠陥は、光学的歪みを引き起こし、最適な画質を得る上での懸念となり得る。製造において再現性のある情報取得システム用の視野領域が、情報収集のための信頼できる表面を提供するために、当技術分野で必要とされている。
【0007】
我々が提案する態様および好ましい態様は、以下ならびに添付の請求項に記載されている。1つまたは複数のセンサーおよび/またはカメラを含むような情報取得システムと組み合わせたグレージングは、提案の一態様である。
【0008】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものであって、本開示の1つまたは複数の例示的な態様を示し、詳細な説明とともに、本開示の原理および実施を説明するのに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1a】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図。
図1b】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図(図1aのA-A’線に沿った断面)。
図1c】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図(図1aのA-A’線に沿った断面)。
図2a】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図。
図2b】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図(図2aのA-A’線に沿った断面)。
図2c】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図(図2aのA-A’線に沿った断面)。
図3】本開示の例示的な態様による、屈折力パターンを有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図。
図4】本開示の例示的な態様による、ズーム領域を有する情報取得システム用視野領域を有するグレージングを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
車両の自動化された安全操作や自動運転の一部であり得る高解像度情報取得システムは、広いカメラ用開口部の中に最小の光学歪みまたは所望の屈折力パターンを備えたグレージングを必要とし得る。情報取得システムは、一般的なガラスグレージングの機能によって制限される屈折力を必要とすることがある。従って、ガラスグレージングの光学的品質を改善することが望まれる。
【0011】
本開示の目的のために、図の参照を含め、「第1面」は、ガラス製品の外側ガラス基板表面を指すことがある。「第4面」は、自動車用ラミネートガラス製品の内側ガラス基板表面を指すことがある。「第2面」は、第1面と反対側のガラス基板表面であり得、「第3面」は、第4面と反対側のガラス基板表面であり得る。ラミネートガラスグレージングにおいては、第2面と第3面とがラミネートグレージング内で互いに対向し得る。
【0012】
カメラおよびセンサー、すなわち情報取得システムは、車両での利用が増えており、電子機器に対する良好な保護および環境条件を提供するために、車両内に配置することが好ましいことがあり得る。情報取得システムが車両内側に配置されている場合、情報取得システムは、ある面、通常はガラスウィンドウを通してデータを収集することになり得る。情報取得システムは、ウインドシールド、サイドウィンドウ、ピラー、またはリアウィンドウ、を含む任意の適当なガラスの後方に配置、あるいは、これに取り付けられ得る。ガラスウィンドウは、カメラやセンサーにきれいな視野面を提供するために、歪みが最小であることが好ましいものであり得る。技術の発展に伴い、より強力でより遠距離のカメラやセンサーが利用可能になり、これらは、ガラスウィンドウの歪みにより敏感になり得る。さらに、収集された情報を利用するために、より詳細で鮮明な画像が要求され得る。これは、カメラやセンサーが、ウインドシールドなどの少なくとも2枚のガラス基板を含み得るラミネートガラス構造体の後ろに配置されている場合に、特に重要であり得る。
【0013】
光学歪みは、単一の板ガラス構造またはラミネートガラス構造で発生し得る。ガラスの曲率は、正の屈折力を有する凸レンズ効果および/または負の屈折力を有する凹レンズ効果によって、屈折力の変化を生成し得る。屈折力は、凸レンズ//凹レンズの焦点距離の逆数として定義され、通常はミリジオプター(「mdpt」)で表される。屈折力は、レンズの形状に応じて正または負のmdptになり得る。一般的なラミネートグレージングでは、屈折力は、情報取得システム用視野領域において-200?200mdptから-400?400mdptの外側までの範囲であり得る。屈折力は、好ましくは-200?200mdptであり、より好ましくは-100mdpt?100mdpt、さらには好ましくは-60?60mdptであり得る。
【0014】
光学歪みは、ECE-R43(国連欧州経済委員会(UN/ECE)の規制第43条_安全グレージング材料の承認と車両への設置に関する統一規定)で定義されているように測定され得る。また、屈折力は、ISRA Labscan-Screen2D検査装置を用いて測定され得る。光学フィルタの設定は、2mmの物理的な長さに対応する、3/2/0であり得る。適当なマスキングフィルタ設定も、6/5/5/Rのように適用され得る。透過光学系の水平方向または垂直方向の屈折力は、屈折力パターンの目的、位置ないし分布の設計、または、情報取得システム、に応じて測定され得る。いくつかの実施形態では、グレージングがラミネートグレージングである場合に、ラミネートグレージングの透過屈折力が測定され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、情報取得システムは、様々な程度の屈折力で異なって動作し得る。例えば、屈折力によって定義され、かつこれを通して情報が収集されるレンズは、情報取得システムによってどの程度の距離の情報を収集するかに基づいて、それぞれ異なるように最適化され得る。他の特徴の中でも、本開示は、ガラス製品の中に、改善された性能の情報取得システム用視野領域を提供する。ガラス製品は、単一の板ガラスまたはラミネートグレージングであり得る。ガラス製品は、情報取得システムによって情報を収集するための領域を含み得、好ましくは、情報取得システム用視野領域にわたる屈折力パターンを含み得る。屈折力は、情報取得システムが情報を収集する距離、を含む種々の要因に基づいて最適化され得る。
【0016】
ガラスは、フロート法によるガラス製造を含む、製造方法や加工方法による歪みを含み得る。製造中にガラスに形成される、抜き取り線、連(コード)、および、熱履歴の変動は、屈折率の不均一性、厚さの変動、表面粗さの変動、またはこれらの組み合わせを含み得、ガラスの透過歪みに寄与し得る。製造および工程のパラメータに応じて、ガラス表面は、表面のうねりや曲率が変化することがある。ラミネートグレージングのように複数のガラス基板を組み合わせた場合、1つの基板がレンズとして機能し、別のガラス基板の歪みを増幅するため、屈折力および歪みが増加することがある。
【0017】
さらに、ガラスは、不透明プリントによって形成された歪みを含み得る。例えば、平坦なガラスシートは、熱曲げ処理温度(例えば、ISO 16293-1:2008で定義されている、ソーダライムガラスの場合は580°Cを超える温度)で曲げられ、車両ウィンドウに適した円筒形や球形を含む必要な3次元形状に形成される。不透明プリントは、例えば、熱曲げ前に平坦なガラスシートにスクリーン印刷することによって印刷され得る。スクリーン印刷された不透明プリントは、高い機械的耐久性を有する堅固なプリントを形成するように、熱曲げ工程中に580°Cから700°Cで焼成される。このような製造工程において、黒色セラミックペーストなどの不透明プリント材料と、透明または半透明のソーダライムシリカガラス材料を含み得るガラスシートと、の間で、光吸収、弾性率、熱膨張係数、などの異なる物理的特性が示され得る。例えば、黒色セラミックプリントは、曲げ炉内でガラスシートよりもより多くの熱を吸収し、その結果、ガラスシート内に不均一な温度分布が生じる。黒色プリント領域付近のガラスシートの温度は、プリントから離れた領域のガラスシートの温度よりも局所的に高くなり得る。さらに、黒色セラミックプリントとソーダライムシリカガラスシートとの間に熱膨張係数(CTE)の差が存在し、その結果、温度が冷えた後に局所的な曲率や残留応力の変化が生じ、これが屈折率に影響し得る。少なくともこれらの理由から、不透明プリント付近の光学的歪みは、熱曲げ工程の後に形成され得る。
【0018】
屈折力と局所表面曲率との関係は、単純化すると、式(I)で与えられ得る。
【0019】
【数1】
【0020】
ここでfは焦点距離、nは屈折率、r1は第1のガラス基板の局所曲率半径、r2は第2のガラス基板の曲率半径、tは局所レンズの厚さである。式(I)によれば、屈折力は、第1のガラス基板の局所曲率半径r1と第2のガラス基板の曲率半径r2、すなわちラミネート後の第1面と第4面の局所曲率半径、の関数である、ことが判る。光学歪みは、屈折力のゼロ以外の値であり得る。
【0021】
また、ガラスの歪みは、加熱差の局所的な領域で作成され得る。例えば、発熱性銀線を含む加熱機構が、情報取得システム用視野領域に存在し得る。加熱機構は、霜や霧から領域をクリアに保つために使用され得る。銀は、一般にガラス基板上に線状にスクリーン印刷され得、熱を提供して情報取得システム用視野領域をクリアにするように、後から電気的接続が設けられる。銀プリントは、第2面、第3面、および/または、第4面の上にあり得る。好ましくは、銀プリントは第4面上にあり得る。銀のないガラスの領域と比べて銀の放熱性が高いため、ガラス曲げ工程中に熱的不均一が生じ得る。温度の局所的な変化によって、印刷された銀線の付近に望ましくないプロファイルの偏りが生じ得、これにより、情報取得システム用視野領域に歪みが生じ得る。
【0022】
グレージングの屈折力は、ガラス製造を含む処理工程に影響されることがあり、これにより、再現性のある屈折力が提供されないことがある。屈折力パターンの製造再現性は、確定できる情報取得システム用視野領域を提供するために望ましいものであり得る。光学歪みは、曲げもしくは不透明プリントを伴わずにガラスに形成され得、好ましくは所望の屈折力および屈折力パターンを提供するように制御された工程で決定され得るので、不透明プリントの境界の有無にかかわらず屈折力を制御することが望ましいものであり得る。従って、グレージング製造中に繰り返しまたは再現可能に形成され得る、少なくとも1つの屈折力値、または視野領域の異なる領域に2つ以上の屈折力値を有する視野領域を提供することが望ましいものであり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、情報取得システムの視界の要求を満たすために、少なくとも1つの屈折力値または複数の屈折力値を有する屈折力(または歪み)のパターンを提供することが好ましいものであり得る。車両周辺の環境から情報を完全に収集するために、情報取得システムは、車両の近くおよび遠くを含む、種々の距離からデータを収集し得る。種々の距離に焦点を合わせるために必要なレンズは、好ましくは、異なる屈折力を有する領域を有し得る。例えば、正の屈折力は、情報取得システムの近くの可視性を増加させ得、負の屈折力は、情報取得システムから遠くの可視性を増加させ得る。単一の屈折力値を有する視野領域は、屈折力により制限された情報収集のために被写界深度を有し得る。情報取得システムは、視野領域の屈折力で可能な焦点距離に制限され得る。最適な屈折力は、屈折力がパターンを形成し得るように、車両の近くおよび遠くで情報が収集される情報取得システム用視野領域内で変化することが好ましいものであり得る。屈折力のパターンは、任意の適当なパターンであり得る。例えば、パターンは、情報取得システム用視野領域における、屈折力の漸進的ないし勾配的な変化、あるいは屈折力のステップ的な変化、を含み得る。ステップ的な変化は、2つの屈折力値の間で徐々には変化しない屈折力のシフトであり得る。
【0024】
好ましい屈折力パターンは、種々の要因に依存し得、この要因としては、情報取得システムの所望のデータ収集の視野範囲および方向、車両のサイズ、車両内または車両上の情報取得システムの位置、車両におけるグレージングの設置角度、を含み得る。情報取得システムによって情報が収集される視界には、車両に近い領域と車両から遠い領域とが含ま得る。情報が収集される視野領域の屈折力は、情報が収集される距離に基づいて別々に最適化され得、これは、情報取得システム用視野領域内で変化し得る。車両のサイズ、車両に対する情報取得システムの位置、および、車両周辺の環境は、情報取得システムと車外から収集される情報との間の距離および最適な屈折力にさらに影響し得る。
【0025】
情報取得システムは、最適な屈折力が垂直軸および/または水平軸を横切って実質的に対称あるいは非対称であり得るように設置され得る。いくつかの実施形態では、屈折力パターンが、情報取得システム用視野領域内で垂直軸に沿った変化を含むことが好ましいものであり得る。いくつかの実施形態では、屈折力は、好ましくは、水平軸に沿って変化し得、屈折力が情報取得システム用視野領域内で一側から他側へと変化する。例えば、いくつかの実施形態では、屈折力は、視野領域の中心点から左側および右側に向かって増加し得る。さらなる実施形態では、パターンは、垂直軸および水平軸の双方に沿った屈折力の変化を伴うように形成され得る。さらに、パターンは、どちらの軸にも無関係に形成し得る。
【0026】
特定の実施形態では、垂直軸に沿った屈折力の変化は、好ましくは、情報取得システム用視野領域の底部から垂直軸に沿って上方へ向かって値が減少していく屈折力を含み得る。情報取得システムは、車両に近い地面から情報を収集することがあり、近くの情報の収集のための改良されたレンズを提供するように、情報取得システム用視野領域の下部で正の屈折力が好ましいものとなり得る。より強い正の屈折力は、近距離での情報取得システムの明瞭さを向上させ得る。このような屈折力は、情報取得システム用視野領域のエッジ部で好ましいものとなり得、ここでは、情報取得システムが車両の近くから情報を収集していることがあり得、この結果、視野領域は、水平軸に沿った屈折力の変化を含み得る。さらなる実施形態は、垂直軸に沿った屈折力の変化を含み得、屈折力が、情報取得システム用視野領域の中心と比較して視野領域の上部に向かって増加する。いくつかの実施形態では、例えば、信号機に関する情報を収集し得る視野領域の上部に向かって、より強い正の屈折力を提供することが好ましいものであり得る。
【0027】
情報取得システム用視野領域は、正および負の屈折力の一方または双方を含む屈折力パターンを有し得る。情報取得システムは、近くおよび遠くの情報の収集のために種々の設定を含み得、これは所望の屈折力パターンに影響し得る。負の屈折力は、距離のある視界に良好な視認性を与え得、ここでは、ある焦点距離が好ましい。情報取得システムは、例えば今後の交通状況または障害物の判定を含む種々の目的のために、遠くから情報を収集することがあり得る。従って、情報取得システム用視野領域の一部では、より負である屈折力が望ましいものであり得る。近い範囲から情報を収集するためには、正の屈折力が望ましいものであり得る。例えば、情報取得システム用視野領域の一部は、車両の前方近くあるいは車両の側方近くの収集に使用され得る。屈折力は、例えば、情報取得システム用視野領域内のガラス形状つまりレンズによって影響を受け得る。レンズは、好ましい屈折力パターンを得るために任意の適当なレンズ形状を含み得る。いくつかの実施形態では、ガラスの視野領域は、凹レンズ、凸レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、メニスカスレンズ、非球面レンズ、を含む、任意の適当な形状を有し得る。さらに、屈折力は、視野領域の周囲に不透明プリントがあるかどうか、つまり不透明プリントが視野領域の周囲に位置するかどうか、によって影響され得る。これらの要因のプロセス制御または屈折力を制御する他の方法は、再現性のある屈折力パターンを提供し得る。
【0028】
屈折力は、プリント、フィルム、および/または、マスク、の配置を含み得る任意の適当な手段によってパターン化され得る。不透明プリントは、第1面、第2面、第3面、および/または、第4面、を含む任意のガラス面に形成され得る。好ましくは、不透明プリントは第2面および/または第4面上にある。特定の実施形態では、プリントは平坦なガラス上に形成され得、このガラスが後で曲げられ得る。屈折力パターンは、情報取得システム用視野領域に少なくとも部分的に隣接する少なくとも1つのプリントによって形成され得る。例えば、プリントは、情報取得システム用視野領域の周囲の境界を形成し得、プリントの背後の車両内側をマスクしあるいは遮蔽し得る。不透明エナメル黒色プリントは、局所的な加熱差を引き起こし得、プリントの周囲の曲率に影響を与える。不透明プリントの位置は、屈折力に特定の変化を与え得る。印刷された面を上方へ向けた状態でガラス基板が熱処理される場合、第2面もしくは第3面上のプリントは負の屈折力を提供し得、一方、第1面もしくは第4面上のプリントは正の屈折力を提供し得る。従って、プリントの周囲に屈折力パターンを提供するために、印刷パターンが利用され得る。印刷面からの屈折力は、製造工程に依存することがあり得る。例えば、下向きの印刷面を有するガラス基板の加熱および曲げは、最終的な曲げガラスにおける印刷領域周囲の屈折力を変化させ得る。印刷されたガラス表面に沿ったプリントのエッジの位置は、不透明プリントによって完全にまたは部分的に縁取られた視野領域の屈折力パターンに影響を与え得る。例えば、プリントと視野領域との間の距離は、視野領域における曲率および屈折力の変化がどの程度であるか、に影響を与え得る。さらに、視野領域は、第2面もしくは第4面のように、黒色プリントで縁取られていないエッジまたは1つの黒色プリントのみを含むエッジを含み得る。製造中に、情報取得システム用視野領域に特定のパターンの光学的歪みを提供するために、プリントが適用され得る。
【0029】
さらなる実施形態では、屈折力は、グレージング中にラミネートされた、またはグレージングに貼着された、例えばホログラフィックフィルムを含むフィルムによって影響され得る。ホログラフィックフィルムは、屈折力を変更するために提供され得、屈折力は、ホログラフィックフィルムの拡大力によって影響され得る。ホログラフィックフィルムは、ガラス基板の間にラミネートされ、あるいはグレージングの外面に貼着され得、情報取得システム用視野領域の一部もしくは全体に提供され得る。ホログラフィックフィルムがグレージングにラミネートされている場合、フィルムは、第2面、第4面に隣接して、あるいは、ポリマー中間膜の間に、あり得る。ラミネートされるホログラフィックフィルムは、体積ホログラムを含み得、第4面のような外側ガラス表面に貼着されるホログラフィックフィルムは、体積ホログラムもしくは表面ホログラムを含み得る。さらに、ホログラフィック部分を含むフィルムが、情報取得システム用視野領域の一部または全部に提供されてもよく、 ホログラフィック部分が、情報取得システム用視野領域全体に提供されていなくてもよい。ホログラフィックフィルムは、正または負の屈折力、または正と負の双方の屈折力を含むパターンを提供するために、利用され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、屈折力の所望のパターンを提供するために、マスクが使用され得る。不透明プリントは、情報取得システムの取付システムを含む、プリント後方の車両内側を隠すのに寄与し得るので、情報取得システム用視野領域の一部または全部の周囲に不透明プリントを含めることが好ましいものであり得る。不透明プリントによる屈折力の変化は、一部には、ガラスの曲げ工程によって発生し得る。最終的な屈折力を補正し、最適な屈折力パターンを提供するために、マスクが使用され得る。例えば、マスクは、第4面に接着された黒色または暗色のポリマーフィルムを含み得る。マスクは、情報取得システムから不透明プリントによる屈折力のいくらかの変化を隠し、屈折力の所望のパターンを残し得る。このような設計では、情報取得システム周囲の印刷されたフレームないし境界は、マスクが配置されることとなる情報取得システム用視野領域よりも大きくなり得る。そして、マスクは、情報取得システム用視野領域に侵入することなく、光学歪みの望ましくない変化を隠し得る。さらに、マスクは、グレージングにラミネートされ得、屈折力に変化を生じさせ得る。マスクがグレージングにラミネートされている場合、マスクがラミネートの厚さを局所的に増加させるため、グレージングの厚さが局所的に変化し得る。厚さの増加は、ラミネートされたマスクが視野領域の境界を提供することとなる視野領域を含めて、ラミネートマスク周囲の相対的に薄いラミネートにおいて負の屈折力を生成し得る。
【0031】
厚さおよび屈折力の変化は、ガラスの曲率および屈折力の変化を引き起こし得るポリマー中間膜の厚さの変化によって、さらに形成され得る。中間膜の厚さの変化は、中間膜厚さの局所的な増加、中間膜の一部のより厚い中間膜への置き換え、中間膜の層の局所的な追加、を含む任意の適当な手段によって形成され得る。ラミネートグレージングを形成するように第1のガラス基板および第2のガラス基板を付ける接着剤であり得るポリマー中間膜は、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、および/または、イオノマー材料、を含む任意の適当な材料を含み得る。ポリマー中間膜は、ガラスラミネート全体に亘って均一または不均一な厚さを含み得る。このように、ポリマー中間膜がより厚いまたはより薄い深さを有する局所領域が存在し得、これは、ガラスの曲率および屈折力の変化を引き起こし得る。中間膜の厚さの変化は、視野領域の少なくとも一部における屈折力の変化および屈折力パターンを提供するように、情報取得システム用視野領域内に含まれ得る。厚さ変化を有する中間膜構造は、情報取得システム用視野領域の外側にさらに延びていることもあり得、延びていないこともあり得る。さらなる実施形態は、中間膜材料の一部を、異なる厚さを有する別の中間膜と交換することを含み得る。例えば、ポリマー中間膜の一部分が主中間膜部分から除去され、ポリマー中間膜の厚さの局所変化を提供するために、異なるポリマー中間膜と交換され得る。交換されるポリマー中間膜は、情報取得システム用視野領域の一部であることもあり、あるいは視野領域全体にわたることもある。中間膜の厚さが周囲の中間膜よりも局所的に大きい場合は、正の屈折力が達成され得、厚さが局所的に小さい場合は、負の屈折力が形成され得る。情報取得システム用視野領域の中で中間膜の一部を交換することで、厚さおよび屈折力に差異を与え得る。屈折力の相違、またはパターンは、徐々の変化あるいは段階的な変化であり得る。さらなる実施形態では、屈折力は、ポリマー中間膜の一部を追加もしくは除去することによって、パターン化され得る。ポリマー中間膜は、負の屈折力を有することが望まれる領域に中間膜が薄くなるように中間膜が除去された部分を有し得、および/または、正の屈折力を有することが望まれる領域に追加の中間膜が追加され得る。さらなる実施形態は、追加の厚さが好ましいグレージングの一部に非接着性中間膜を含み得る。非接着性中間膜は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む任意の適当な材料であり得、好ましくは接着剤層の間に挟まれ得る。
【0032】
さらに別の実施形態では、屈折力パターンは、グレージング製造工程中に形成され得る。例えば、ガラス熱処理は、ガラスの冷却を含み、これが、所望の屈折力を提供するように制御され得る。例えば、急速なガラスの冷却は、屈折力の変化をもたらし、より正の屈折力を形成し得る。さらなる例では、ガラスは、局所的な焼入れや加熱などのように、局所的に熱処理され得る。
【0033】
ラミネーション工程中、ガラス基板とポリマー中間膜は、所望の温度および圧力(例えば、100~160℃および10~15バール)でオートクレーブ処理される。中間膜は、単一層、または、防音特性を含み得る三層構造などの複数のサブ層を有し得る。ラミネート工程中に構造体が加熱されるに従い、ポリマー中間膜は軟化を始め得る。次に、圧力によって基板が互い押されるに従い、軟化した材料がガラス基板間の空間に充満し得る。ラミネート工程中の局所的な圧力が、ガラス基板間の距離を制御することにより、ラミネートグレージングの屈折力を局所的に変化させ得る。局所的な圧力は、圧力およびこの圧力が加わる場所に応じて、視野領域に正または負のレンズを提供し得る。圧力が、ガラス基板間のポリマー中間膜が利用し得るスペースを制限し、厚さおよび屈折力の局所的な変化が形成され得る。屈折力の変化は、屈折力の好ましいパターンを提供するために形成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、研磨が、屈折力に影響を与えるように実施され得る。正および/または負の屈折力は、ガラス表面の研磨によって引き起こされ得る。研磨は、機械的研磨および/または化学的研磨を含む、任意の適当な工程を含み得る。化学的研磨は、例えば、化学エッチングを含み得る。フッ化水素酸溶液、硝酸溶液、硫酸溶液、フッ化アンモニウム溶液またはフッ化水素アンモニウム、あるいはこれらの任意の組み合わせ、などの任意の適当な化学エッチング材料が使用され得る。どのようなガラス表面でも、屈折力パターンを作成するために研磨され得る。研磨は、マスキングを用いて、あるいは用いずに、適用され得る。研磨によりガラス基板の厚さが薄くなり得、これにより負のレンズおよび負の屈折力が生成され得、一方、目的の領域の周囲を研磨すると、目的の領域に正のレンズおよび正の屈折力が生成され得る。
【0035】
特定の実施形態では、屈折力は、情報取得システムの領域にレンズを適用することによってパターン化され得る。所望の屈折力パターンを提供し得るレンズ形状を有するようにレンズが形成され得る。例えば、正の屈折力を提供するために凸レンズが形成され得、負の屈折力を提供するために凹レンズが形成され得る。レンズ形状は、視野領域全体に亘る屈折力の範囲を提供するように形成され得る。全てが正、全てが負、あるいは、正と負の混合、となった屈折力の強度が可変のレンズが形成され得る。例えば、可変屈折力を提供する可変レンズ形状を有するように、凹レンズが形成され得る。従って、本明細書に開示されるレンズは、情報取得システムのための可変焦点レンズを提供し得る。
【0036】
レンズ形状は、第1面を考慮しながら、所望の光学パターンを提供するように形成され得る。第1面は、歪みを含み得る湾曲形状を有し得る。視野領域を通過する光は、第1面、および、正および/または負の屈折力を有し得るレンズ形状、によって影響を受け得る。第1面とレンズとの組み合わせが、一緒に視野領域内に所望の光学パターンを提供し得るので、レンズは、ガラスおよびレンズを通して所望の屈折力が形成され得るように、相補的な面を提供するように形成され得る。例えば、第2面上の不透明なプリントは、第1面上に局所的に負の屈折力を提供し得、これは、より弱い負、中性、または正、の屈折力になり得るように、レンズによって補償され得る。さらに、第4面上の平坦な表面は、屈折力値を制御するレンズとして第1面を提供し得る。従って、第1面が所望の屈折力を提供する場合、レンズは、平坦または部分的に平坦な表面を有するように形成され得る。
【0037】
レンズは、視野領域の一部または全部をカバーし得る。さらに、レンズのエッジは、グレージング上の不透明プリントと重なっていてもよく、これにより、補正構造のエッジが車両の外部から見えなくなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、レンズがグレージング上に形成され得る。本明細書に記載のように、レンズは、所望のレンズ形状を有する型によって形成され得る。型は、任意の適当な材料であり得、型は、充填樹脂に付着しないものであり得、これにより、ガラスないしレンズ表面を傷付けることなく、硬化した樹脂から型を除去できる。型は、非接着性材料であり得、あるいは、ニッケルなどの非接着性材料でコーティングされたものであり得る。さらに、型は、本明細書に記載のように、レンズを提供するために、任意の適当な二次元ないし三次元形状あるいは形状の組み合わせであり得る。ガラス表面上に樹脂レンズを形成するために、いくつかの実施形態では、樹脂材料がガラス表面上に配置され、かつ型で覆われ得る。樹脂は、次いで、任意の適当な手段によって硬化され得る。さらなる実施形態では、型は注入口を含み得、これにより、型がガラス表面上に配置され、次に樹脂材料で満たされ得る。
【0039】
特定の実施形態では、充填材料は、樹脂を含み得、樹脂は、紫外線(UV)硬化型、熱硬化型、化学硬化型であり得る。樹脂は低い収縮率を有するものであり得、しかし、型は、硬化プロセスの結果の収縮を吸収するように形成され得る。樹脂材料は、当該樹脂材料が上に形成されるガラス基板の屈折率と好ましくは等しい屈折率を有し得る。例えば、限定ではないが、ソーダライムガラス基板は、可視光波長で約1.52の屈折率を有し得る。樹脂の屈折率がガラス基板の屈折率と適合する場合は、これらを透過した光が、樹脂とガラスとの界面で反射され得ない。屈折率は一般に光の波長ないし周波数に依存するので、樹脂の屈折率は、少なくともある範囲の波長、あるいは、カメラないしセンサーで使用され得る特定の波長において、ガラス基板の屈折率に適合し得る。樹脂とグレージングの屈折率が適合しているか実質的に適合している場合、光は、反射せずに、あるいは、僅かな反射でもって、ガラスグレージングおよび樹脂を自由に透過し得る。樹脂は、非限定的な例として、ノーランド・プロダクツ・インコーポレーテッドからのNorland Optical Adhesive61を含み得る。
【0040】
樹脂は、任意の適当な手段によって硬化され得る。例えば、特定のUV硬化型の実施形態では、樹脂は、成形型を通したUV照射によって硬化され得る。型は、樹脂を硬化させるために使用される波長のUV光に対して透明であり得る。樹脂はまた、ガラス基材あるいはラミネートガラス製品を通して与えられるUV光によって硬化され得る。ラミネートガラス製品においては、樹脂は、380nmを超える波長への曝露で硬化するように選択され得る。ポリマー中間膜はUV吸収性であり得、非吸収の波長がポリマー中間膜を通して樹脂を硬化させ得る。さらなる実施形態では、UV光源の案内にプリズムが使用され得、型内の樹脂に光を導く導波路としてガラス基板が使用される。
【0041】
特定の実施形態では、硬化した樹脂の上に、硬質コーティングが形成され得る。このような硬質コーティングは、樹脂上に保護層を提供し得る。いくつかの実施形態では、カメラまたはセンサーの面に防曇表面を提供するために、防曇フィルムが樹脂上に提供され得る。
【0042】
屈折力のパターンは、本明細書に記載されているものを含む、任意の適当な方法、または任意の方法の組み合わせ、によって形成され得る。屈折力パターンは、好ましくは、正および/または負の屈折力を含み得る。正および負の屈折力が望ましい場合に、正および負の屈折力が、情報取得システム用視野領域全体に亘って等しい量または均一なパターンで存在し得、あるいは、存在し得ない。望ましい屈折力は、好ましくは、ガラス基板の曲率によって定義され得る。曲率は、本明細書で式(I)によって記載のように、屈折力に関連し得る。いくつかの実施形態では、屈折力は、ガラスの屈折率によって定義され得る。式(I)は、特定の屈折率から生じ得る屈折力を定義し得る。さらに、グレージングは、いくらかのゼロではない屈折力を有し得、本明細書に記載される方法を含む任意の適当な方法が、このゼロではない屈折力をさらに変化させることによって、光学パターンを形成し得る。これは、正の屈折力を生成せずに負の屈折力をより正にすること、または、負の屈折力を生成せずに正の屈折力をより負にすること、を含み得る。本明細書で使用するように、正の屈折力は、隣接する屈折力値よりも相対的により正の屈折力に関連し得、負の屈折力は、隣接する屈折力値よりも相対的により負の屈折力に関連し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、グレージングは、複数の情報取得システム用視野領域を有し得る。情報取得システムは、ステレオカメラシステムのような単一システムの一部である場合とそうでない場合とがあり得る。各々の情報取得システムは、グレージングの背後で異なる点に配置され得、個別の視野領域を必要とし得る。異なるシステムおよび/またはグレージングの背後での異なる場所は、異なる好ましい屈折力パターンを有し得る。従って、単一のグレージングが、別個の屈折力パターンを有し得る複数の視野領域を含み得る。グレージング内に複数の視野領域がある場合に、グレージング上の不透明プリントを含む障害物によって視野領域が分離されていてもよく、分離されていなくてもよい。複数の視野領域は、1つの屈折力パターンの単一レンズを有し得、あるいは、各視野領域に適した屈折力パターンを有する複数のレンズを有し得る。単一レンズは、複数の視野領域に亘って、同じ屈折力パターン、あるいは異なる屈折力パターン、を有し得る。
【0044】
光がグレージングを通過して情報取得システムに到達するときに、一部の光がガラス表面で反射し、情報取得システムに二重画像つまりゴースト画像が形成され得る。ゴースト画像の強度は、グレージングのより強いレンズつまりより強い屈折力によって増加し得る。従って、第1面および/または第4面に反射防止コーティングを設けることが好ましいものであり得る。反射防止コーティングは、情報取得システムによって認識されるゴースト画像を最小限とし、システムの性能を改善し得る。
【0045】
図1(a)は、情報取得システム用視野領域106を有するグレージング101を示している。図示の情報取得システム用視野領域106は、不透明プリント103によって囲まれており、屈折力の変化104を含む。図1(a)に示すように、視野領域106は、垂直軸A-A’および水平軸C-C’の双方に沿った屈折力の変化104を含み得る。図1(b),(c)は、垂直軸A-A’に沿った情報取得システム用視野領域106の特定の実施形態を示している。情報取得システム130の視野108は、視野領域106を通って延びる。図1(b)では、不透明プリント103が第1のガラス基板121上に示されているが、ここでは、ポリマー中間膜127と不透明プリント103とが、第1のガラス基板121と第2のガラス基板124との間にラミネートされている。図1(c)では、不透明プリント103は、第1のガラス基板121上に示されている。不透明プリント103は、視野108と整列していてもしなくてもよく、いくつかの実施形態では、プリント103は、例えば、視野108よりも大きな開口部を提供し得る。図1(c)はさらに、第2のガラス基板124上に形成されたレンズ140を示している。レンズ140は、垂直軸および/または水平軸を横切る屈折力の変化を含む、視野領域106内に所望の屈折力または屈折力パターンを提供する曲率を有し得る。
【0046】
図2(a)に示されるように、例示的な情報取得システム用視野領域106は、屈折力変化の個別領域205,206を含む屈折力パターン204を有し得る。図2(b),(c)は、垂直軸A-A’に沿った例示的な視野領域106の特定の実施形態を示している。図2(b)においては、不透明プリント103は、第1のガラス基板121上にあるように示されており、不透明プリント203は、第2のガラス基板124上に示されている。第1のガラス基板121上の不透明プリント103、特にラミネート内部のガラス面(第2面)上の不透明プリント103は、負の屈折力205を形成し得、一方、第2のガラス基板124上の不透明プリント203、特に外側のガラス面(第4面)上の不透明プリント203は、正の屈折力205を形成し得る。従って、屈折力のパターン204は、より正の屈折力およびより負の屈折力の双方で形成することができる。図2(c)はさらに、屈折力パターン204に影響し得るレンズ240を含むことを示している。レンズ240は、例えば、視野領域106内に凸レンズ部分と凹レンズ部分の双方を提供し得る。屈折力パターン204は、フィルムまたはマスクの配置、製造プロセスの制御、所望の厚さパターンを有する中間膜、研磨、レンズの形成など、本明細書に開示される任意の適当な方法により、不透明プリント103,203によらずに達成し得る。
【0047】
図3はさらに、水平軸C-C’に沿った変化を有する例示的な屈折力パターン304を示している。屈折力パターン304は、本明細書に開示される任意の方法によって形成され得る。
【0048】
さらなる実施形態では、パターンは、情報取得システム用視野領域の大部分とは異なる屈折力を有する局所的な領域、すなわちズーム領域、を含み得る。このようなズーム領域は、情報取得システムがズームインまたはズームアウトして遠方からまたは近方から情報を収集するためのレンズを提供するように、正または負の屈折力を含み得る。
【0049】
局所的なズーム領域は、情報取得システムに複数のビューを提供し得、利用可能な各ビューから情報取得システムが情報を収集し得る。情報の集合体は、車両の周囲の情報を提供するようにシステムによって使用され得る。ズーム領域は、任意の適当な寸法および形状であり得る。特定の実施形態では、ズーム領域は、形状が円形であり得、情報取得システム用視野領域の一部を占める。ズーム領域は、屈折力が徐々に変化する境界、あるいは、視野領域の周囲部分から屈折力がステップ的に変化する境界、を有し得る。いくつかの実施形態では、視野領域は、複数のズーム領域を含み得、これらは同じまたは異なる屈折力を有し得る。例えば、情報取得システム用視野領域は、ズームアウト領域およびズームイン領域を含み得る。いくつかのさらなる実施形態では、情報取得システム用視野領域内の複数のズーム領域が、同じまたは実質的に同じ屈折力を有し得る。図4に示すように、ズーム領域404は、情報取得システム用視野領域106内にあり得る。
【0050】
好ましくは、ズーム領域404は、情報取得システム用視野領域106の任意の適当な領域内に配置され得、所望のズーム方向、ならびに、ズーム領域404が近距離の情報収集を強化するのか遠距離の情報収集を強化するのか、に依存し得る。さらに、ズーム領域404の寸法は、視野領域106の寸法に依存し得、より大きな視野領域106は視野領域106内により大きなズーム領域を許容し得る。ズーム領域404はさらに、近距離または遠距離から所望の量の情報を収集するように、寸法設定され得る。負の屈折力は、遠距離からの情報の収集を容易にするために使用され得、正の屈折力は、近距離において情報を収集するために情報取得システムに提供され得る。
【0051】
情報取得システム用視野領域106内のズーム領域404は、本明細書に開示される方法によって形成され得る。特定の実施形態では、ズーム領域404は、グレージング101内にラミネートされた、またはグレージング101に貼り付けられたホログラフィックフィルム、などのフィルムによって形成され得る。ホログラフィックフィルムがグレージング101内にラミネートされている場合、非ホログラフィックフィルムが、ズーム領域404外側の情報取得システム用視野領域106を覆い得る。非ホログラフィックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを含み得、これはズーム領域404において除去された部分を有する。ホログラフィックフィルムは、非ホログラフィックフィルムのない部分に提供され得、グレージング101にラミネートされたホログラフィックズーム領域を与える。さらなる実施形態では、ホログラフィックフィルムは、グレージング101の第4面に接着され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、レンズが、ズーム領域404において第4面に適用され得る。レンズは、ズーム領域404に所望のレンズ形状を提供するように形成され得る。グレージング101における追加の厚さが、さらに、レンズが局所的に形成されるズーム領域404を提供し得る。追加の厚さは、ラミネートフィルムを含むこと、あるいは、中間膜材料のより厚い領域を含むこと、によって形成され得る。
【0053】
さらなる実施形態では、グレージングの第1のガラス基板および第2のガラス基板の少なくとも一方の屈折率の差ないし局所的な変化が、屈折力の局所的な差を提供し得る。いくつかの実施形態では、周囲領域とは異なる屈折力を有するズーム領域404を提供するように、グレージング101とは異なる屈折率を有する材料がグレージング101に貼り付けられ得る。異なる屈折率を有する材料は、フィルムやコーティングを含む任意の適当な形態で提供され得る。特定の実施形態では、異なる屈折率を有する材料は、視野領域106内のグレージング101内にラミネートされ得る。屈折力(1/f)は、本明細書に開示される式(I)に従って屈折率を用いて決定され得る。
【0054】
本開示の上記の説明は、当業者が本開示を作成または使用できるようにするために提供されている。本開示に対する種々の修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に規定される共通の原理は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、他の変形に適用され得る。さらに、図面に関連する上記の説明は、例を説明するものであり、実施可能な特許請求の範囲内における唯一の例を表すものではない。
【0055】
さらに、説明された態様および/または実施形態の要素は単数形で説明またはクレームされ得るが、単数形への限定が明示的に述べられていない限り、複数形も含まれる。さらに、特に明記しない限り、任意の態様および/または実施形態のすべてまたは一部を、他の任意の態様および/または実施形態のすべてまたは一部と共に利用することができる。従って、本開示は、本明細書で説明される例および設計に限定されず、本明細書で開示される原理および新規の特徴に一致する最も広い範囲が与えられる。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4