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特許7609794高分子量ポリエチレンから製造される射出成形医療デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】高分子量ポリエチレンから製造される射出成形医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20241224BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20241224BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20241224BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L29/04 100
A61L31/04 110
C08F10/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021555619
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020024124
(87)【国際公開番号】W WO2020198098
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】62/823,166
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】バルケンホルスト,ライナー
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0051771(US,A1)
【文献】国際公開第2003/070824(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0154094(US,A1)
【文献】国際公開第2019/035083(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/153037(WO,A1)
【文献】Polymers,2017年,Vol.10, No.36,pp.1-15
【文献】Specialty Injection Molding GUR UHMW-PE,2014年
【文献】GUR ultra-high molecular weight polyethylene (PE-UHMW),2001年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61L 29/00-29/18
A61L 31/00-31/18
C08F 10/00-10/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形ポリマー物品を含む医療デバイスであって、前記ポリマー物品は高分子量ポリエチレンポリマーを含み、前記高分子量ポリエチレンポリマーは、190℃及び21.6kgの荷重においてISO試験1133によって測定して約0.8g/10分より高く、約3g/10分未満のメルトフローインデックスを有し、前記高分子量ポリエチレンは、ISO試験1628-3にしたがって試験した場合に約400cm/gより大きい粘度数を有する上記医療デバイス。
【請求項2】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、約0.9g/10分~約2.0g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、約450cm/gより大きく、約900cm/g未満の粘度数を有する、請求項1~2のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ASTM試験D4020にしたがって約300,000g/モルより高い分子量を有する、請求項1~3のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ASTM試験D4020にしたがって約350,000g/モル~約5,000,000g/モルの分子量を有する、請求項4に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ISO試験1183-1、方法Aにしたがって試験した場合に、約0.93g/cm~約0.97g/cmの比重を有する、請求項1~5のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ISO試験10993の試験要件の少なくとも幾つかを満足する、請求項1~6のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、全身毒性についてISO試験10993-11に合格し、皮内反応性についてISO試験10993-10に合格し、2週間筋肉移植についてISO試験10993-6に合格し、細胞毒性についてISO試験10993-5に合格し、遺伝毒性についてISO試験10993-3に合格し、溶血性についてISO試験10993-4に合格し、そして物理化学的性質についてUSP試験661に合格する、請求項7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記射出成形ポリマー物品が、約70重量%より多い量の前記高分子量ポリエチレンポリマーを含む、請求項1~8のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記射出成形ポリマー物品が、約90重量%より多い量の前記高分子量ポリエチレンポリマーを含む、請求項1~9のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、エチレンと、プロピレン、ブチレン、又はそれらの混合物を含む少なくとも1種類のモノマーとのコポリマーを含む、請求項1~10のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記成形ポリマー物品が活性医薬成分を更に含む、請求項1~11のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記ポリマー物品が造影剤を更に含む、請求項1~12のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記ポリマー物品が人工器官を含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記ポリマー物品がインプラントを含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記ポリマー物品が管状の形状を有する、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記ポリマー物品が、チップ、RFIDタグ、手術器具、神経刺激装置、又はポンプ中に組み込まれている、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記ポリマー物品が、栄養チューブ、カテーテル、拡張可能なバルーン、ステント、心臓弁、人工内耳、頭蓋-顎顔面インプラント、合成軟骨、胃リング、血管クランプ、動脈瘤クリップ、脊椎プラグ、人工関節用のベースプレートステムキャップ、筋肉インプラント、鼻咽頭インプラント、喉頭インプラント、口腔粘膜インサート、子宮内避妊用具、膣内リング、又は歯科用繊維を含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記ポリマー物品が、薬物送達デバイス、経皮パッチ、又は皮下インプラントを含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項20】
請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイスであって、患者に移植されるものである、前記医療デバイス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年3月25日の出願日を有する米国仮特許出願第62/823,166号(参照により本明細書に組み込まれる)に基づき、それに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリエチレンは、部分的にはその所望の特性の独特の組み合わせのために、種々の用途において非常に有用なエンジニアリング材料として確立されるようになった。例えば、高分子量ポリエチレンポリマー粒子は、他の熱可塑性ポリマーと比較して、向上した耐摩耗性、耐化学薬品性、潤滑性、衝撃強度、応力亀裂抵抗性、熱撓み温度、耐摩耗性、及び高い応力速度におけるエネルギー吸収能力を示し得る。
【0003】
[0003]高分子量ポリエチレンポリマーは、一般に線状ポリエチレンポリマーを包含し、非常に高い重合度によって他のポリエチレングレードと区別することができる。実際、高い重合度は、これらのポリマーが溶融したときに良好に流動せず、実際に0グラム/10分のメルトフローインデックスを示し得ることの原因である。したがって、これらのポリマーを物品に成形するためには、加圧焼結及びラム押出のような特別な加工方法が使用される。
【0004】
[0004]しかしながら、上記のような高分子量ポリエチレンポリマーは種々の優れた特性を有しており、これによりそれらは多くの用途のために望ましいものである。例えば、高分子量ポリエチレンポリマーは、非常に低い温度においても保持される非常に高い衝撃強度を有し得る。実際、ISO試験179によるノッチ付き衝撃強さ試験にかけた際に破断しない高分子量ポリエチレンポリマーを製造することができる。
【0005】
[0005]高分子量ポリエチレンポリマーはまた、比較的広い操作温度範囲を有していて、非常に耐摩耗性である。更に、高分子量ポリエチレンは、鋼材と同程度又はそれより良好であり得る大きな耐摩耗性を有する。
【0006】
[0006]高分子量ポリエチレンポリマーは、生体適合性であるように製造することもできる。而して、このポリマーは、これまで整形外科インプラントのような種々の医療デバイスを製造するために使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]しかしながら、医療製品を製造するために射出成形することができる高分子量ポリエチレンポリマーに対する必要性が存在する。例えば、高分子量ポリエチレンポリマーを射出成形する能力は、より小さな医療デバイスを製造するか、又は他の形態では種々の異なるタイプの医療製品をより効率的に製造するために、このポリマーを使用することを可能にし得る。而して、低流動性のポリエチレンポリマーによって示される特性の多くを依然として保持する、射出成形することができる高分子量ポリエチレンポリマーに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本発明は、概して、医療製品を製造するのによく適した高分子量ポリエチレンポリマー組成物に関する。例えば、本高分子量ポリエチレンポリマーは生体適合性であり、インプラント、人工器官、薬物送達デバイスなどをはじめとする全ての異なるタイプの医療用途のために使用することができる。本発明によれば、高分子量ポリエチレンポリマーは、医療製品を製造するための射出成形プロセスにおいてポリマーを使用するのに十分なメルトフロー特性を有するように配合される。
【0009】
[0009]例えば一実施形態においては、本発明は、射出成形ポリマー物品を含む医療デバイスに関する。ポリマー物品は、高分子量ポリエチレンポリマーを含む。本高分子量ポリエチレンポリマーは、190℃及び21.6kgの荷重においてISO試験1133にしたがって測定した場合に、約0.8g/10分より高く、例えば約0.9g/10分より高くて、一般に約3g/10分未満、例えば約2g/10分未満のメルトフローインデックスを有する。また、本高分子量ポリエチレンポリマーはまた、ISO試験1628-3にしたがって試験した場合に、約400cm/gより大きく、例えば約500cm/gより大きくて、一般に約900cm/gより小さい粘度数を有し得る。本高分子量ポリエチレンポリマーは、例えば、約350,000g/モルより高く、例えば約500,000g/モル~約5,000,000g/モルの分子量を有し得る。本明細書中で使用する分子量は、ASTM試験D4020にしたがって求められる。本高分子量ポリエチレンポリマーは、ISO試験1183-1方法Aにしたがって試験した場合に約0.93~約0.97g/cmの比重を有し得る。
【0010】
[00010]本高分子量ポリエチレンポリマーは生体適合性であり、ISO試験10993の試験要件を満足するように製造することができる。例えば、本高分子量ポリエチレンポリマーは、全身毒性についてISO試験10993-11に合格することができ、皮内反応性についてISO試験10993-10に合格することができ、2週間筋肉移植についてISO試験10993-6に合格することができ、細胞毒性についてISO試験10993-5に合格することができ、遺伝毒性についてISO試験10993-3に合格することができ、溶血性についてISO試験10993-4に合格することができ、物理化学的性質についてUSP試験661に合格することができる。
【0011】
[00011]本発明のポリマー物品は、主として高分子量ポリエチレンポリマーから製造することができる。例えば、本ポリマー物品には、約70重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量、例えば約90重量%より多い量、例えば約95重量%より多い量の高分子量ポリエチレンポリマーを含ませることができる。本高分子量ポリエチレンポリマーは、ホモポリマーであってよく、又はコポリマーを含んでいてよいる。例えば一実施形態においては、本高分子量ポリエチレンポリマーは、エチレンと、プロピレン、ブチレン、又はそれらの混合物を含む少なくとも1種類のモノマーとのコポリマーであってよい。一実施形態においては、本高分子量ポリエチレンポリマーを使用して物品を製造し、次に架橋することができる。
【0012】
[00012]本ポリマー物品には、高分子量ポリエチレンポリマーに加えて種々の他の成分を含ませることができる。例えば、本ポリマー物品に、活性医薬成分、造影剤、補強材料などを含ませることができる。
【0013】
[00013]本高分子量ポリエチレンポリマーから全ての異なるタイプの医療デバイスを製造することができる。例えば、医療デバイスは、人工器官又はインプラントを含み得る。一実施形態においては、医療デバイスは、液体を搬送するため、又はワイヤのような電気素子を被覆するための管状の形状を有し得る。
【0014】
[00014]一実施形態においては、本ポリマー物品は、チップ、RFIDデバイス、ポンプ、外科用器具、又は神経刺激装置に組み込むことができる。他の実施形態においては、本ポリマー物品は、栄養チューブ、カテーテル、拡張可能なバルーン、ステント(stint)、心臓弁、人工内耳、頭蓋-顎顔面インプラント、合成軟骨、胃リング、血管クランプ、動脈瘤クリップ、脊椎プラグ、人工関節用のベースプレートステムキャップ、筋肉インプラント、鼻咽頭インプラント、喉頭インプラント、口腔粘膜インサート、子宮内避妊用具、膣内リング、又は歯科用繊維を含み得る。更に別の実施形態においては、医療デバイスは薬物送達デバイス、経皮パッチ、又は皮下インプラントを含み得る。
【0015】
[00015]本発明はまた、医療製品を射出成形する方法に関する。更に別の実施形態においては、本発明は、上記記載の医療デバイスを患者に移植する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[00016]下記において本発明の他の特徴及び態様をより詳細に議論する。
[00017]本議論は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定するものとしては意図されないことが当業者に理解される。
【0017】
[00018]概して、本発明は、生体適合性であるだけでなく、射出成形によって溶融加工することもできる高分子量ポリエチレンポリマーを含むポリエチレン組成物に関する。本ポリエチレンポリマー組成物は、全ての異なるタイプの医療製品を製造するのによく適している。本ポリマー組成物は射出成形することができるので、本ポリエチレンポリマー組成物は、射出成形が生産効率に関して有利性を与えるか又は種々の他の利点及び有利性を与える小型医療デバイス又は他の医療物品を製造するのに特によく適している。
【0018】
[00019]ポリマー組成物中に存在するポリエチレンポリマーは、依然として射出成形することが可能でありながら、可能な限り高い分子量を有する。例えば、本ポリエチレンポリマーは、少なくとも約0.5g/10分、例えば少なくとも約0.7g/10分、例えば少なくとも約0.9g/10分、例えば少なくとも約1.1g/10分、例えば少なくとも約1.3g/10分で、一般に約2.5g/10分、例えば約2.3g/10分未満、例えば約2g/10分未満、例えば約1.8g/10分未満のメルトフローレートを有する高分子量ポリエチレンポリマーである。メルトフローインデックスは、190℃の温度及び21.6kgの荷重において、ISO試験1133にしたがって測定される。
【0019】
[00020]本高分子量ポリエチレンポリマーは高純度のものであり、生体適合性である。より特には、本発明の組成物中のポリエチレンポリマーは、ISO試験10993の要件の少なくとも大部分に合格する。例えば、本ポリエチレンポリマーは、全身毒性についてISO試験10993-11に合格し、皮内反応性についてISO試験10993-10に合格し、2週間筋肉移植についてISO試験10993-6に合格し、細胞毒性についてISO試験10993-5に合格し、遺伝毒性についてISO試験10993-3に合格し、溶血性についてISO試験10993-4に合格し、そして物理化学的性質についてUSP試験661に合格する。
【0020】
[00021]高分子量ポリエチレンは、ホモポリマー、コポリマー、又はそれらのブレンドであってよい。一実施形態においては、ポリエチレンはホモポリマーであってよい。
[00022]別の実施形態においては、ポリエチレンはコポリマーであってもよい。例えば、ポリエチレンは、エチレンと、3~16個の炭素原子、例えば3~10個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含む他のオレフィンとのコポリマーであってよい。これらの他のオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチルペント-1-エン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、4-ビニルシクロヘキス-1-エン、1,5-シクロオクタジエン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネンのようなポリエンコモノマーも、本発明において利用可能である。しかしながら、存在する場合、コポリマー中の1種類又は複数の非エチレン性モノマーの量は、約10モル%未満、例えば約5モル%未満、例えば約2.5モル%未満、例えば約1モル%未満であり得、ここでモル%はポリマー中のモノマーの総モル数に基づく。
【0021】
[00023]一実施形態においては、ポリエチレンは二峰性の分子量分布を示していてよい。例えば、二峰性分布とは、一般に、ゲル浸透クロマトグラフィー曲線上で別個のより高い分子量及び別個のより低い分子量(例えば2つの別個のピーク)を有するポリマーを指す。他の実施形態においては、ポリエチレンは、ポリエチレンが多峰性(例えば、三峰性、四峰性など)分布を示すように2つより多い分子量分布ピークを示してもよい。或いは、ポリエチレンは、サイズ排除クロマトグラフィー又はゲル浸透クロマトグラフィー曲線が少なくとも2つの別個のピークを示さず、代わりに個々の成分ピークよりも広い1つの別個のピークを示すように、ポリエチレンがより高分子量の成分及びより低分子量の成分のブレンドから構成される広い分子量分布を示してもよい。
【0022】
[00024]一実施形態においては、本組成物は、それぞれが異なる分子量及び/又は分子量分布を有する1種類より多いポリエチレンポリマーから構成されていてもよい。例えば、分子量分布は、上記に与えた平均分子量の仕様内であってよい。
【0023】
[00025]更に、本組成物は、1種類以上のポリエチレンポリマー又はコポリマーと、ポリプロピレン又はポリブチレンのような他の熱可塑性ポリマーとのブレンドから構成されていてもよい。しかしながら、組成物中の1種類又は複数の非ポリエチレンポリマーの量は、約10重量%未満、例えば約5重量%未満、例えば約2.5重量%未満、例えば約1重量%未満であり得、ここで重量%は組成物の全重量を基準とする。
【0024】
[00026]当該技術において公知の任意の方法を利用してポリエチレンを合成することができる。高分子量ポリエチレン粉末は、通常は、エチレンモノマー、又は場合により1種類以上の他の1-オレフィンコモノマーとの接触重合によって製造され、最終ポリマー中の1-オレフィン含量はエチレン含量の10%以下であり、不均一触媒及び助触媒としての有機アルミニウム又はマグネシウム化合物を有する。エチレンは、通常は比較的低い温度及び圧力において気相又はスラリー相中で重合される。重合反応は、50℃~100℃の間の温度、及び0.02~2MPaの範囲の圧力において行うことができる。
【0025】
[00027]ポリエチレンの分子量は、水素を加えることによって調節することができる。分子量を微調整するために、温度及び/又は共触媒のタイプ及び濃度の変更を使用することができる。更に、この反応は、壁の汚れ及び生成物の汚染を回避するために、帯電防止剤の存在下で行うことができる。
【0026】
[00028]好適な触媒系としてはチーグラー・ナッタタイプの触媒が挙げられるが、これらに限定されない。通常は、チーグラー・ナッタタイプの触媒は、周期律表の第4~8族の遷移金属化合物と、周期律表の第1~3族からの金属のアルキル又は水素化誘導体との組み合わせによって誘導される。使用される遷移金属誘導体は、通常は金属ハロゲン化物又はエステル或いはそれらの組み合わせを含む。代表的なチーグラー・ナッタ触媒としては、例えばアルミニウム又はマグネシウムアルキル、及びチタン、バナジウム、又はクロムハロゲン化物又はエステルなど(しかしながらこれらに限定されない)の有機アルミニウム又はマグネシウム化合物の反応生成物をベースとするものが挙げられる。不均一触媒は、非担持であるか、或いはシリカ又は塩化マグネシウムのような多孔質微粒子材料上に担持されていてよい。かかる担体は、触媒の合成中に加えることができ、又は触媒合成自体の化学反応生成物として得ることができる。
【0027】
[00029]一実施形態においては、好適な触媒系は、チタン(IV)化合物とトリアルキルアルミニウム化合物とを、不活性有機溶媒中、-40℃~100℃、好ましくは好ましくは-20℃~50℃の範囲の温度で反応させることによって得ることができる。出発物質の濃度は、チタン(IV)化合物については0.1~9モル/L、好ましくは0.2~5モル/Lの範囲、トリアルキルアルミニウム化合物については0.01~1モル/L、好ましくは0.02~0.2モル/Lの範囲である。チタン成分は、0.1分~60分、好ましくは1分~30分の時間をかけてアルミニウム成分に加え、最終混合物中のチタンとアルミニウムとのモル比は1:0.01~1:4の範囲である。
【0028】
[00030]他の実施形態においては、好適な触媒系は、不活性有機溶媒中、-40℃~200℃、好ましくは-20℃~150℃の範囲の温度におけるチタン(IV)化合物とトリアルキルアルミニウム化合物との1段階又は2段階反応によって得られる。第1の工程においては、チタン(IV)化合物を、1:0.1~1:0.8の範囲のチタン:アルミニウムのモル比を用いて、-40℃~100℃、好ましくは-20℃~50℃の範囲の温度でトリアルキルアルミニウム化合物と反応させる。出発物質の濃度は、チタン(IV)化合物については0.1~9.1モル/L、好ましくは5~9.1モル/Lの範囲であり、トリアルキルアルミニウム化合物については0.05~1モル/L、好ましくは0.1~0.9モル/Lの範囲である。チタン成分は、0.1分~800分、好ましくは30分~600分の時間をかけてアルミニウム化合物に加える。適用される場合には、第2の工程において、第1の工程で得られた反応生成物を、1:0.01~1:5の範囲のチタン:アルミニウムのモル比を用いて、-10℃~150℃、好ましくは10℃~130℃の範囲の温度でトリアルキルアルミニウム化合物で処理する。
【0029】
[00031]更に他の実施形態においては、好適な触媒系は、第1の反応段階において、マグネシウムアルコラートを、不活性炭化水素中、50℃~100℃の温度で塩化チタンと反応させる手順によって得られる。第2の反応段階においては、形成された反応混合物を、110~200℃の温度で、塩化アルキルを発生させながら、更なる塩化アルキルが発生しなくなるまで約10~100時間の熱処理にかけ、次に固体を、炭化水素で数回洗浄することによって可溶性の反応生成物から遊離させる。
【0030】
[00032]更なる実施形態においては、例えば、商業的に入手できる触媒系のSylopol 5917のようなシリカ上に担持された触媒を使用することもできる。
[00033]かかる触媒系を使用すると、重合は、通常は、懸濁液中で、低圧及び低温において、連続又はバッチの1つ又は複数の工程で行う。重合温度は、通常は30℃~130℃の範囲、好ましくは50℃~90℃の範囲であり、エチレン分圧は、通常は10MPa未満、好ましくは0.05~5MPaである。Al:Ti(助触媒:触媒)の比が0.01~100:1の範囲、より好ましくは0.03~50:1の範囲であるような、例えばイソプレニルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムなど(しかしながらこれらに限定されない)のトリアルキルアルミニウムが助触媒として使用される。溶媒は、チーグラータイプの重合のために通常使用される不活性有機溶媒である。例は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキセン、オクタン、ノナン、デカン、それらの異性体、及びそれらの混合物である。ポリマーの分子量は、水素を供給することによって制御される。水素分圧とエチレン分圧との比は、0~50の範囲、好ましくは0~10の範囲である。ポリマーを単離し、窒素下において流動床乾燥機中で乾燥させる。溶媒は、高沸点溶媒を使用する場合には水蒸気蒸留によって除去することができる。長鎖脂肪酸の塩を安定剤として加えることができる。代表例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸亜鉛である。
【0031】
[00034]場合により、フィリップス触媒、メタロセン、及びポストメタロセンのような他の触媒を使用することができる。一般に、アルモキサン又はアルキルアルミニウム或いはアルキルマグネシウム化合物のような助触媒も使用される。例えば、Fritzscheらの米国特許出願公開第2002/0040113号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)は、高分子量ポリエチレンを製造するための幾つかの触媒系を議論している。他の好適な触媒系としては、国際特許公開第WO2012/004675号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなフェノラートエーテルリガンドの第4族金属錯体が挙げられる。
【0032】
[00035]本発明において使用するポリエチレンは、ASTM試験D4020にしたがって求めて、少なくとも100,000g/モル又はそれより高く、例えば少なくとも約200,000g/モル、例えば少なくとも約300,000g/モル、例えば少なくとも約350,000g/モル、例えば少なくとも約450,000g/モル、例えば少なくとも約500,000g/モル、例えば少なくとも約600,000g/モル、例えば約1,000,000g/モルより高く、例えば約1,500,000g/モルより高く、例えば約2,000,000g/モルより高く、一般に約5,000,000g/モル未満、例えば約3,000,000g/モル未満、例えば約1,000,000g/モル未満の平均分子量を有していてよい。例えば、ポリマーの平均分子量は、約300,000g/モルより高く、約5,000,000g/モル未満であってよく、それらの間の25,000g/モルの全ての増分を含む。
【0033】
[00036]ポリエチレンは、マイクロパウダーのような粉末の形態で製造することができる。例えば、ポリエチレン粉末は自由流動性粉末であってよい。ポリエチレン粉末は、多葉(ポップコーン様)の形態を有していてよい。粉末は、2,000μm以下、例えば約10から約1,500μm、例えば約50μm~約650μm、例えば約50~約400μm、例えば約50~約200μmの平均粒径d50を有していてよい。好ましくは、合成されたままのポリマーが所望の粒径を有する。しかしながら、合成されたままのポリマーが所望の値より大きい粒径を有する場合には、粒子を所望の粒径に粉砕することができる。粉末の粒径は、ISO-13320にしたがうレーザー回折法を利用して測定することができる。
【0034】
[00037]ポリエチレンは、ISO-1628-3部にしたがい、0.0002g/mLのデカヒドロナフタレン中の濃度を使用して求めて、少なくとも100mL/g、例えば少なくとも200mL/g、例えば少なくとも300mL/g、例えば少なくとも400mL/g、例えば少なくとも500mL/g、乃至約2,000mL/g未満、例えば約1,500mL/g未満、例えば約1,000mL/g未満、例えば約800mL/g未満、例えば約600mL/g未満の粘度数を有していてよい。
【0035】
[00038]ポリエチレンは、約70重量%より多く、例えば約75重量%より多く、例えば約80重量%より多く、例えば約85重量%より多く、例えば約90重量%より多く、例えば約95重量%より多く、例えば約98重量%より多くて、約100重量%未満、例えば約98重量%未満、例えば約95重量%未満の量で組成物中に存在させることができる。上記の量は、単一の高分子量ポリエチレンポリマーを指すことができ、又は複数の高分子量ポリエチレンポリマーのブレンドを指すことができる。しかしながら、一実施形態においては、単一の高分子量ポリエチレンポリマーのみを使用してポリマー物品を製造する。
【0036】
[00039]上記記載のように、本高分子量ポリエチレンポリマーは一般に高純度のものである。この点に関し、本高分子量ポリエチレンポリマーは、約500ppm未満、例えば約250ppm未満、例えば約100ppm未満、例えば約50ppm未満、例えば約10ppm未満の灰分含有量を有していてよい。本高分子量ポリエチレンポリマーは、一般に、ISO試験1183にしたがって試験した場合に、一般に約0.93g/cmより大きく、例えば約0.94g/cmより大きく、例えば約0.95g/cmより大きくて、一般に約0.97g/cm未満の比重を有していてよい。
【0037】
[00040]本ポリマー組成物及びそれから製造されるポリマー物品にはまた、例えば、酸化防止剤、UV安定剤、光安定剤、熱安定剤、強化繊維又はフィラー、滑剤、蛍光増白剤、着色剤、離型剤、架橋剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤などのような他の公知の添加剤を含ませることができる。一実施形態においては、ポリマー物品中に存在する全てのポリマー添加剤が生体適合性である。
【0038】
[00041]酸化防止剤は、幾つかの実施形態においては、貯蔵、輸送、及び/又は実装中(in vivo及び/又はex vivo)における本明細書に記載のポリエチレン組成物の酸化及び/又は化学分解を軽減することができる。本明細書に記載されるポリエチレン組成物と組み合わせて使用するのに好適な酸化防止剤の例としては、幾つかの実施形態においては、アスコルビン酸、グルタチオン、リポ酸、尿酸、レスベラトロール、フラボノイド、カロテン(例えばβ-カロテン)、カロテノイド、トコフェロール(例えばα-トコフェロール)、トコトリエノール、ユビキノール、メラトニン、第2級芳香族アミン、ベンゾフラノン、ヒンダードフェノール、ポリフェノール、ヒンダードアミン、有機リン化合物、チオエステル、ベンゾエート、ラクトン、ヒドロキシルアミン、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
[00042]強化フィラーは、幾つかの実施形態においては中でも本明細書に記載のポリエチレン組成物の機械的強度を増大させることができる。本明細書に記載のポリエチレン組成物と組み合わせて使用するのに好適な強化フィラーの例としては、ガラス球、ガラス繊維、バイオガラス、グラファイト、アルミニウム粉末、タルク、チョーク、シリケート、カーボネート、炭酸カルシウム、アルミナ三水和物、大理石ダスト、セメントダスト、クレー、長石、ヒュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタネート、ガラス微小球、炭素繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、木粉、カーボンブラックなど、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
[00043]本明細書に記載されるポリエチレン組成物と組み合わせて使用するのに好適な顔料及び/又は色素の例としては、幾つかの実施形態においては、無機系着色剤、有機系着色剤など、及びそれらの任意の組合せを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0041】
[00044]本明細書に記載のポリエチレン組成物と組み合わせて使用するのに好適な抗ファウリング剤の例としては、幾つかの実施形態においては、スルホアミド、ペニシリン、セファロソリン、カルバペネム、キノロン、オキサゾリドン、第4級アンモニウム化合物、貴金属(例えば、銀、金、銅など)、アミン含有ポリマーなど、及び及びそれらの任意の組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
[00045]これらの添加剤は、単独か、又はそれらの任意の組み合わせで使用することができる。一般に、他に示していない限りにおいて、添加剤を使用する場合には、添加剤は、少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.1重量%、例えば少なくとも約0.25重量%、例えば少なくとも約0.5重量%、例えば少なくとも約1重量%で、一般に約20重量%未満、例えば約10重量%未満、例えば約5重量%未満、例えば約4重量%未満、例えば約2重量%未満の量で存在させることができる。存在させる場合には添加剤を含む全ての成分の重量%の合計は100重量%である。
【0043】
[00046]一実施形態においては、ポリエチレンポリマー組成物には、活性医薬成分及び/又は少なくとも1種類の造影剤を含ませることができる。活性医薬成分は、ポリマー物品上に表面被覆することができ、又はポリマーと均一に混合することができる。一般に、任意の好適な活性医薬成分をポリマー物品中に組み込むことができる。
【0044】
[00047]電磁放射線と相互作用する造影剤もポリマー物品中に組み込むことができ、これによりポリマー物品をX線又は他の造影システムによってより良好に識別することができる。本明細書に記載されるポリエチレン組成物と組み合わせて使用するのに好適な造影剤の例としては、幾つかの実施形態においては、磁気共鳴造影剤(例えば、硫酸バリウム、酸化鉄粒子、ガドリニウム化合物、エルビウム化合物、ガドリニウムエンドフラーレン、及びガドリニウムエンドナノチューブ)、X線造影剤(例えば、硫酸バリウム、ヨウ素化合物、及びヨウ素エンドナノチューブ)、超音波造影剤(例えば、ペルフルオロカーボン及び気泡)、近赤外線造影剤(例えば、カーボンナノチューブ、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、及び金ナノシェル)、ビスマス化合物、タングステン化合物など、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。一般に、造影剤は、約0.01重量%~約5重量%の量でポリマー組成物中に存在させることができる。
【0045】
[00048]本発明のポリマー組成物を使用して、多数の異なるタイプの医療製品を製造することができる。例えば、本ポリエチレンポリマー組成物を使用して、人工器官、インプラントなどを製造することができる。また、本ポリマー組成物を使用して、医療デバイス、及びカテーテル、吸入器などのような全ての異なるタイプの管状デバイスを製造することができる。
【0046】
[00049]本発明にしたがって製造することができる医療製品の例としては、チップ、RFIDタグ、チューブ、ポンプ、供給チューブ、カテーテル、血管カテーテル、プロテーゼ、拡張可能なバルーン、ステント、心臓弁、神経刺激装置、人工内耳、頭蓋-顎顔面インプラント、合成軟骨、胃リング、外科用器具、血管クランプ、動脈瘤クランプ、関節融合システムと組み合わせて使用するための脊椎プラグ、人工関節において使用するためのベースプレート、筋肉インプラント、鼻咽頭インプラント、喉頭インプラント、薬物送達デバイス、経皮パッチ、皮下インプラント、口腔粘膜インサート、子宮内避妊用具、膣内リング、歯科用繊維、股関節インプラント、脛骨インプラント、手首用インプラント、手用インプラント、それらの部品などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
[00050]幾つかの実施形態においては、本発明の成形ポリエチレン部品は、内部容積を画定する少なくとも1つの壁部を含み、少なくとも1つの壁部は本明細書に記載されるポリエチレン組成物を含む導管であってよい。
【0048】
[00051]幾つかの実施形態においては、導管成形ポリエチレン部品は、流体が内部容積を通って流れることを可能にするように設計することができる。例えば、ポンプ、チューブ、栄養チューブ、カテーテル、血管カテーテル、ステント、心臓弁、外科用器具(例えば、外科用吸引器具)、鼻咽頭インプラント、及び喉頭インプラントのようなバイオメディカルデバイスに、それぞれ、流体が内部容積を通って流れることを可能にするように設計された少なくとも1つの導管成形ポリエチレン部品を含ませることができる。
【0049】
[00052]幾つかの実施形態においては、導管成形ポリエチレン部品は、内部容積内に配置された少なくとも1つのワイヤを有し得る。非限定的な例として、幾つかの実施形態においては、バイオメディカルデバイス(例えばペースメーカー)に、その付近に配置された導管成形ポリエチレン部品を有する少なくとも1つのワイヤを含ませることができる。
【0050】
[00053]幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される成形ポリエチレン部品は、バイオメディカルデバイス(例えば頭蓋-顎顔面インプラント)の主要構成要素であってよい。幾つかの例においては、成形ポリエチレン部品のポリエチレン構成要素にポリエチレン及び生体吸収性ポリマーを含ませて、実装した際に生体吸収性ポリマーが吸収されてポリエチレン組成物中に空隙を残すようにすることができる。
【0051】
[00054]幾つかの実施形態においては、本発明の成形ポリエチレン部品でバイオメディカルデバイスの他の部品を実質的に包み込む(encase)ことができる。幾つかの実施形態においては、エンケースメント(encasement)は、患者の中に移植されたときに、周囲の組織を主として成形ポリエチレン部品に曝露させることができるようなものであってよい。幾つかの実施形態においては、エンケースメントは、少なくとも部分的に包み込む他の部品の周りに本明細書に記載されるポリエチレン組成物をオーバーモールド、熱成形、又は収縮包装することによって達成することができる。幾つかの実施形態においては、エンケースメントは、バイオメディカルデバイス及び/又はその部品をその中に配置するのに適切な寸法にされた成形ポリエチレン部品を形成することによって達成することができる。
【0052】
[00055]非限定的な例として、幾つかの実施形態においては、バイオメディカルデバイス、例えば人工内耳又はRFIDタグを、成形ポリエチレン部品で実質的に包み込んで、成形ポリエチレン部品が実質的にバイオメディカルデバイスの周囲に配置された被覆に近似するようにすることができる。別の非限定的な例として、バイオメディカルデバイス、例えばペースメーカー又は神経刺激装置に、実質的にその周りに配置された被覆(この被覆は本明細書中に記載されるポリエチレン組成物を含む)を有するワイヤを含む成形ポリエチレン部品を含ませることができる。他の非限定的な例として、神経刺激装置のための電源に、例えばオーバーモールド、熱成形、又は収縮包装によって達成される、電源を実質的に包み込む成形ポリエチレン部品を含ませることができる。
【0053】
[00056]幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される成形ポリエチレン部品は、薬物送達デバイス又はその一部であってよい。幾つかの実施形態においては、経皮パッチに裏材、薬物添加層、及び剥離層を含ませることができ、ここで成形ポリエチレン成分が薬物添加層及び/又は剥離層であってよい。非限定的な例として、薬物添加層が成形ポリエチレン部品であってよく、剥離層が第2のポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニルのようなエチレンコポリマー)を含んでいてよい。幾つかの場合においては、成形ポリエチレン部品にポリエチレン及び第2のポリマーを含ませることができる。幾つかの場合においては、薬物添加層及び剥離層が異なる組成を有する成形ポリエチレン部品であってよい。
【0054】
[00057]経皮パッチの例と同様に、他の薬物送達デバイスに成形ポリエチレン部品を含ませることができる。例えば、上記の薬物添加層に類似したコアと、上記の剥離層に類似したシースとを有する膣リングである。他の例においては、多層構造を有するロッド又はシートのような皮下インプラントが、薬物添加層に類似する少なくとも1つの層及び上記の剥離層に類似する少なくとも1つの層を有し得る。
【0055】
[00058]本発明の高分子量ポリエチレンポリマー組成物は、種々の異なる技術を使用して医療製品に形成することができる。しかしながら、本ポリマー組成物は、射出成形に特に良く適している。
【0056】
[00059]溶融成形の間、ポリマー組成物は、一般に約100℃より高く約300℃まで温度に加熱することができる。一実施形態においては、ポリマー組成物は、ポリマー物品を形成し後に架橋することができる。例えば一実施形態においては、ポリマー組成物に約0.001重量%~約1重量%の量の架橋剤を含ませることができる。使用することができる架橋剤としては、例えばペルオキシド又はシランが挙げられる。ポリマーは、電子ビーム架橋又はガンマ線照射を使用して架橋することができる。
【実施例
【0057】
[00060]以下の実施例は、本発明によるポリマー組成物の射出成形を示す。
[00061]本発明にしたがって高分子量ポリエチレンポリマーを配合する。高分子量ポリエチレンポリマーは、190℃及び21.6kgの荷重において試験した場合に1.1g/10分のメルトフローレートを有していた。ポリエチレンポリマーは500mL/gの粘度数を有していた。
【0058】
[00062]高分子量ポリマーが射出成形することができることを示すために、射出成形を使用してポリマーをISO引張棒材に成形した。
[00063]射出成形中、全ショット重量は25グラムであった。射出成形装置は、ゾーン1が52℃、ゾーン2が188℃、ゾーン3が238℃、ゾーン4が274℃、ノズルが260℃になるように運転した。金型温度は70℃であった。射出速度は25mm/秒であり、射出圧力は686バールであった。
【0059】
[00064]射出成形中、保持時間は12秒、冷却時間は35秒、スクリュー回復時間は15.7秒であった。サイクル時間は63秒、スクリュー回転速度は225rpm、背圧は69barであった。
【0060】
[00065]ISO引張棒材が成功裏に射出成形された。引張棒材を、ISO試験11542-2にしたがって伸び応力に関して試験した。引張棒材は、0.05MPa未満の伸び応力を有していた。
【0061】
[00066]本発明に対するこれら及び他の修正及び変形は、添付の特許請求の範囲におい
てより詳細に示される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者は、上記の記載が単に例としてであり、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを理解する。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
射出成形ポリマー物品を含む医療デバイスであって、前記ポリマー物品は高分子量ポリエチレンポリマーを含み、前記高分子量ポリエチレンポリマーは、190℃及び21.6kgの荷重においてISO試験1133によって測定して約0.8g/10分より高く、約3g/10分未満のメルトフローインデックスを有し、前記高分子量ポリエチレンは、ISO試験1628-3にしたがって試験した場合に約400cm/gより大きい粘度数を有する上記医療デバイス。
[請求項2]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、約0.9g/10分~約2.0g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
[請求項3]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、約450cm/gより大きく、約900cm/g未満の粘度数を有する、請求項1~2のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項4]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ASTM試験D4020にしたがって約300,000g/モルより高い分子量を有する、請求項1~3のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項5]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ASTM試験D4020にしたがって約350,000g/モル~約5,000,000g/モルの分子量を有する、請求項4に記載の医療デバイス。
[請求項6]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ISO試験1183-1、方法Aにしたがって試験した場合に、約0.93g/cm~約0.97g/cmの比重を有する、請求項1~5のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項7]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、ISO試験10993の試験要件の少なくとも幾つかを満足する、請求項1~6のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項8]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、全身毒性についてISO試験10993-11に合格し、皮内反応性についてISO試験10993-10に合格し、2週間筋肉移植についてISO試験10993-6に合格し、細胞毒性についてISO試験10993-5に合格し、遺伝毒性についてISO試験10993-3に合格し、溶血性についてISO試験10993-4に合格し、そして物理化学的性質についてUSP試験661に合格する、請求項7に記載の医療デバイス。
[請求項9]
前記射出成形ポリマー物品が、約70重量%より多い量の前記高分子量ポリエチレンポリマーを含む、請求項1~8のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項10]
前記射出成形ポリマー物品が、約90重量%より多い量の前記高分子量ポリエチレンポリマーを含む、請求項1~9のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項11]
前記高分子量ポリエチレンポリマーが、エチレンと、プロピレン、ブチレン、又はそれらの混合物を含む少なくとも1種類のモノマーとのコポリマーを含む、請求項1~10のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項12]
前記成形ポリマー物品が活性医薬成分を更に含む、請求項1~11のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項13]
前記ポリマー物品が造影剤を更に含む、請求項1~12のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項14]
前記ポリマー物品が人工器官を含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項15]
前記ポリマー物品がインプラントを含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項16]
前記ポリマー物品が管状の形状を有する、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項17]
前記ポリマー物品が、チップ、RFIDタグ、手術器具、神経刺激装置、又はポンプ中に組み込まれている、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項18]
前記ポリマー物品が、栄養チューブ、カテーテル、拡張可能なバルーン、ステント、心臓弁、人工内耳、頭蓋-顎顔面インプラント、合成軟骨、胃リング、血管クランプ、動脈瘤クリップ、脊椎プラグ、人工関節用のベースプレートステムキャップ、筋肉インプラント、鼻咽頭インプラント、喉頭インプラント、口腔粘膜インサート、子宮内避妊用具、膣内リング、又は歯科用繊維を含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項19]
前記ポリマー物品が、薬物送達デバイス、経皮パッチ、又は皮下インプラントを含む、請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイス。
[請求項20]
請求項1~13のいずれかに記載の医療デバイスを患者に移植すること;
を含む方法。